自動運転車には欠かせないオートパイロットとは

自動運転車に関するニュースをTVや新聞などで目にする機会が増えましたが、その中でたまにでてくる「オートパイロット」という言葉をご存知でしょうか?

オートパイロットとは、乗り物全般を人の手によるものではなく、機械やコンピューターによって自動的に操縦する装置のことを指しています。

一般的にオートパイロットと呼ばれる装置は、旅客機を始めとした航空機によく用いられ、次いで船舶や自動車にも導入されているものです。航空機が主要な足となっているアメリカでは、オートパイロットの機能は切っても切り離せない存在となっていますが、自動車にオートパイロットの機能を搭載する場合、公道での走行はそれなりに高度な技術が必要となります。

航空機は初期値と経路を設定すれば、人間の手を介さず自動で目的地に到達しますが、自動車が街中を走る場合は、行き交う人や障害物などを認識しなければなりません。そのためコンピューターによる処理項目が膨大に増えてしまいます。

近年ではコンピューターやソフトウェア開発の発達に伴い、自動運転の技術が着実に進化したことで、テスラモーターズ社(以下「テスラ社」)が公道での走行を可能にしたオートパイロット技術を世に送り出すことに成功しました。アメリカでは、自動運転技術で世界のトップに立ちたいという想いを強めているため、今後も更に技術が進化し続けるでしょう。

今回は自動車業界でも話題となっている、オートパイロットの技術を詳しくご紹介します。

テスラのモデルS

Photo credit: mariordo59

テスラモーターズのオートパイロット機能とは

テスラ社は電気自動車の開発に早くから注目し、ガソリン車を超えることを証明したいと願った起業家たちにより、2003年に設立されました。

その期待を裏切らない開発力は、力強いトルク、加速によるパワー、ゼロ・エミッションを可能にするなどの成果に現れています。世代が新しくなる度に低価格化も実現。庶民にも手が届きやすい電気自動車の販売を目指して、テスラ社の社員は、技術力の向上とコストダウンに努めています。

そのテスラ社が最も力を注いでいる技術が、クルマの自動運転を可能にしたオートパイロット機能です。

テスラ社の主力商品である「モデルS」

テスラ社は2012年に、世界初のプレミアムEVセダンである「モデルS」の販売を開始しました。

モデルSはセダンの快適さと利便性を満たし、約5秒で時速100kmまで加速するなどの優れた性能により、自動車業界の度肝を抜き大きな話題に。完全にフラットな形状のバッテリーパックはシャシーと一体化しており、車の重心が下がり気味のため、卓越したロードホールディングとハンドリングを可能にしています。

アメリカでの道路交通安全局による安全運転の評価では5つ星を獲得し、まさにガソリン車と変わらない性能を持って、世の自動車業界に一石を投じました。そして、このモデルSとコンピューター制御によるオートパイロットの機能は相性が良く、現在も市販化を目指して公道での走行試験を繰り返しています。

モデルSに搭載しているオートパイロット機能について

モデルSのオートパイロット機能は、フォワードビューカメラ、ミリ波レーダー、360度超音波センサーなどを駆使して自動運転を実現しています。また、リアルタイムの交通情報と組み合わせることで、道路の状況に影響されないドライブが可能に。

車線変更は方向指示器の操作1つで行えるようになり、目的地に到着すれば自動的に駐車するなど驚きの機能性を満たしています。安全機能に関しては、一時停止標識、信号、通行人を常にカメラやレーダーで監視し、意図しない車線変更などを車内で警告してくれるので安心です。

日本の国土交通省は、このオートパイロットの機能を承認したため、テスラ社だけでなく国内の自動車メーカーも自動運転の開発に力を注ぐようになりました。しかしながら、「自動運転」を名乗っても、方向指示などはドライバーが行うものが大半のため、「完全自動」を実現することが自動車メーカーの今後のチャレンジとなっています。

この完全自動化を目指すにはソフトウェアの開発力が不可欠なので、現在の自動車メーカーでは機械系のエンジニアの他に、プログラマーなどIT系のエンジニアの採用に着手しています。

アメリカの運輸省高速道交通安全局(NHTSA)が定める自律走行車の基準

テスラ社のオートパイロットの技術は、アメリカの運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が定める自律走行車の技術基準として、レベル2のカテゴリーに位置しています。以下の内容は、段階別に自動運転の機能性を説明したものです

【レベル0】

自動運転システムや自律走行を可能にする装置などが、自動車に搭載されていないものを示している段階です。

【レベル1】

横滑り防止機能や、衝突を予測してブレーキが作動するなどの機能が、自動車に搭載されている段階を示しています。このような機能は、ドライバーの運転を支援することを目的としたものに限定されるため、ハンドリングなどクルマ自体をコントロールする能力はありません。スバル(富士重工業)の「アイサイト」などがこの段階に含まれます。

【レベル2】

車内のコントロールシステムが機能し、ドライバーは一定の範囲内でそのシステムに運転を任せられる段階です。オートパイロットは前方のクルマと距離を保ちながら運転することを可能にしているため、この段階に位置しています。

【レベル3】

レベル3になると、複雑な状況であっても人間が関与せずに自動で運転を可能にしなければなりません。加速・ハンドリング・ブレーキなどをシステムがすべて行い、一方で、緊急時などやむを得ない状況の場合はドライバーが対応するといった状態です。

この段階に該当するシステムは現時点で市販化に至っておりません。日本の国内自動車メーカーは、東京オリンピックが開催する2020年までに、このレベル3の段階を目指して開発に着手しています。

【レベル4】

完全に自動運転を可能にしている状態です。加速・ハンドリング・ブレーキなどをシステムがすべて行い、ドライバーが運転にまったく関与しない状態を示しています。安全に関わる運転操作をシステムや外部に委ね、有人・無人に関わらず走行が可能です。こちらもレベル3の段階と同様に市販化には至っておらず、このレベルを目指して各社が技術向上に努めています。

オートパイロットによる自動運転中の車内の様子

テスラ社のオートパイロット機能が搭載しているモデルSでは、運転席から見えるメーターパネルに「車線」と「前方車両」を認識している画像が表示され、これらを確認した後でレバーを2回押して自動運転モードに切り替えます。

自動運転中はハンドルに手を置いて運転することが基本ですが、手を放して走行することも可能です。ステアリングを少しでも左右に切ったり、ブレーキを踏み込んだりすると、自動的にオートパイロットの機能が解除されます。

運転中における車内の様子

YouTubeなどの動画サイトで、自動運転の様子が記録されているものがありますが、搭乗者はほとんどハンドルに手を置いてない状態で運転しています。ブレーキのタイミングも徐々にスピードを落としていく感じなので、車内に大きなショックが伝わることもなく、快適に走行可能です。

また驚くことに、道路の凹凸なども自動で感知してハンドル操作で回避してくれるため、途中でシステムを解除するという手間も省略しています。

右折や左折、車線変更などの指示について

オートパイロットのシステムでは、方向指示は基本的に人間が出さなければなりませんが、ウィンカーレバーの操作を行うだけなので非常に簡単です。

ウィンカーを出すと360度超音波センサーが働き、周囲の状況を確認します。進行方向に歩行者などがいると車内で知らせてくれるため、そのまま停止するかドライバーが対応しなければなりません。システムに頼りすぎず、周囲の状況は常に自分で確認することを推奨しているようです。

車線変更に関しても、右左折時と同様に自分で指示を出す必要があります。指示を出した後、近接車両がなければ自動で行ってくれますが、オートパイロットのシステムは後方車両を把握するレーダーがないため、基本的にドライバーが後ろを確認しなければなりません。テスラ社からのコメントでも、車線変更に関してはドライバーが後方車両を目視で確認することを推奨しています。

オートパイロットによる自動駐車機能について

停止している自動車の間に駐車スペースを自動で見つけると、メーターパネルに「P」のマークが点灯します。そして、ディスプレイに表示されている駐車開始ボタンをタップすると、後は自動で駐車を行ってくれます。ほとんどの人が苦手とする、縦列駐車も非常にスムーズです。

他のクルマに対して5cmの間隔を保って駐車するため、運転が苦手な人でもクルマを傷つけることなく駐車することができます。ただし、縦列駐車からの発進は自分の判断で行わなくてはならないため、こちらはドライバーの技量に頼ることになります。

オートパイロットの機能は自動運転ではない?

アメリカでも度々議論となっているようですが、テスラ社のオートパイロットのシステムは「自動運転」ではないと評価する技術者も。

テスラ社のイーロン・マスクCEOは、「オートパイロットのシステムは、車両が混雑し、車線がハッキリ示された道で最大の効果を発揮する」とコメントしています。高速道路のような道なら満足に機能するかもしれませんが、公道の砂利道のような場所では上手く機能しないというのです。

またマスク氏は、オートパイロットは雨や雪の環境では機能性が低下するとも述べています。他にも、このシステムはカーナビゲーションと連携していないため、ドライバーが眠ってしまった場合、道案内が機能しないという指摘さえあります。これらの要因が、オートパイロットを自動運転技術の「レベル2」の段階に留めている理由となっています。

オートパイロットによる死亡事故が発生

今年の5月7日、テスラ社のオートパイロット機能中に、運転者の死亡事故が起こるというニュースが話題となりました。

事故の状況は、被害者側のクルマ上部がほぼ大破している状態で、かなりのスピードで衝突したことが伺えます。衝突した相手が大型トレーラーという不利な点はあったにせよ、モデルSのパフォーマンス・データを解析すると、速度制限が65mph(約103km/h)の区間を、74mph(約119km/h)の速度で走行していたという驚きの結果が出ました。

事故が起きた原因は現在も調査中とされていますが、先にも述べたスピードオーバーや、前方の障害物を感知するレーダーが反応しなかった点から、致命的な欠陥があるのではないかと問題視する評論家もいるようです。テスラ社によると、オートパイロットの走行記録は約2億kmに達しているため、今回の死亡事故は同社にとってまさに寝耳に水の出来事でした。

この事故により、現状のオートパイロット機能はあくまで「運転を支援する領域」に留まっているもので、決して「運転のすべてを委ねている状態」ではないことが理解できます。国内の自動車メーカーはこの点を弁えて自動運転の開発を行っており、慎重に技術革新を進めている様子です。

また日本では、ステアリングから15秒以上手を放して走行することを禁止しているため、法律の観点からも自動運転の技術を見直す必要があります。今回、テスラ社は致命的な死亡事故を引き起こしましたが、いずれ原因を突き止め、徹底したシステムの改善を行うはずです。

先にも述べた通り、アメリカは自動運転の技術で世界のトップに立ちたいという強い思想があるため、今後もシステムの開発に力を注ぐでしょう。また、アメリカの自動車メーカーはGoogleとの連携も視野に入れているため、地図機能、人工知能、ソフトウェア開発などのサポートにより、ここ数年でますます自動運転の技術が進化することが考えられます。

まとめ

自動運転、オートパイロットと聞くと「完全に車が自動で走行してくれるもの」を想像していた方もいらっしゃかたもしれませんが、今使われているオートパイロットがさすものや、自動運転の現状がわかっていただけたのではないでしょうか?

少なくとも現在のオートパイロット機能はあくまで「運転を支援する領域」に留まっているものだということを、まずは押さえていただければ十分です。

先日、大きな事故を起こしたオートパイロットの機能ですが、依然としてその技術には注目が集まっています。様々な問題を解決し、自動運転技術のレベル4に達することができれば、高齢者や障害を持つ方の大きな助けとなるはずです。無人運転も可能になる世界が、そう遠くない将来やってくるかもしれません。

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