電気自動車が一歩前進!主要メーカーが高速充電ネットワークを設置

世界各国の自動車メーカーが一斉にEV(電気自動車)の大規模量販化に向けて動き出しました。

いよいよ次世代の自動車用パワーユニットとして「モーターとバッテリー」が主流になりそうな流れですが、その裏では実用性を向上させるための「超高速充電」プロジェクトが活発に進んでいます。

今回はEV関連の最新トレンドを紹介していきましょう。

電気自動車のネックは「充電時間」

電気自動車

Photo credit: mariordo59

自動車の燃料が無くなってきたら、ガソリンスタンドでガソリンや軽油を給油して、また走り出す。タクシーなど一部にLPG(液化石油ガス)を使うものも実用化されており、大きな町にはLPGスタンドもありますが、理屈としてはガソリンスタンドと同じです。

つい一昔前までは、それが当たり前でした。

しかし、2000年代に入って三菱 i-MiEV、テスラ ロードスター、日産 リーフといった実用量産EV(電気自動車)が登場するようになると、少しずつ世界が変わってきました。

EVを販売しているディーラーはもちろん、駐車スペースのある場所には充電スタンドが設けられるようになってきます。家庭にも200V電源を使ったEV用充電器の設置に、補助金が出るようになったのです。

最初は街に充電スタンドができても「誰が使うのか」と、物好きを探すような目で見ていました。それでも補助金もあって庶民の手が届く価格になったEVは少しずつ数を増やし、今では街で見かけることもだんだん珍しくなくなりつつあります。

しかしそんな今でも、EVには「充電時間」という重大な課題があります。

普通の車がガソリンスタンドに寄って給油だけするなら、かかる時間はせいぜい5分ほど。それがEVだと、フル充電にならない80%までの急速充電でも30分はかかります。(日産リーフの例)

充電時間に弱点を持ったEVと、インフラ問題を抱えたFCV

EVとFCV

Photo credit: Toyota Motor Europe

そのため、新エネルギーを使った次世代車のエネルギーをどうするかは、真っ二つに分かれていました。

動力自体はモーターを使うとして、そこに電気を供給するのに、バッテリーを使うEVと、燃料電池を使うFCV(燃料電池車)です。

FCVはこれまでトヨタとホンダが推進してきており、トヨタは2014年まで並行してEVの開発・販売も行っていたものを生産終了。FCVに一本化して、新型FCVのMIRAIを2014年11月にデビューさせました。

トヨタが実用化した燃料電池は固体高分子形燃料電池 (PEFC)と呼ばれる方式で、気体である水素を冷却して液化した上に圧縮。水素スタンドでこの液化圧縮水素を充填すれば、ガソリンスタンドと同じ時間でエネルギー補充が可能になり、車内に大きく頑丈な水素タンクを設けたとしても、充電に時間のかかるEVより圧倒的優位だと宣伝したのです。

しかし、肝心の水素は液化・圧縮に多大なエネルギーを要するため、そのエネルギーを使ってそのまま充電した方が無駄が無いという考え方もあり、特にEV推進派からは「燃料電池は馬鹿げている」(Bloombergに掲載されたイーロン・マスクのコメント)と批判されました。

それでも日本では経済産業省などを中心に「水素・燃料電池戦略」を打ち出し、そのロードマップで2020年まで4万台ものFCVを普及させる目標を掲げていましたから、トヨタやホンダはそれに対応したわけです。

ただし、水素を補充するための水素ステーションの整備や、圧縮冷却水素を運搬するためのインフラ整備が進みません。現在でも水素ステーションは大都市圏にしか整備されておらず、地方では乗ろうにも乗れない状況です。

環境先進地域としてFCVを推進していたはずの米カリフォルニア州でさえ水素ステーションの整備が遅れ、FCVはすっかり行き詰まってしまったのでした。

中国のEV優遇政策とドイツ自動車界の大転換

Volkswagen Golf GTE Sport - IAA 2015

Photo credit: avda-foto

一方、その間に中国は国内産業で得意としているリチウウイオンバッテリー事業や、それを活かしたEVやPHV(プラグインハイブリッド車)事業へ、積極的な優遇政策を行いました。

また米国で発覚した排ガス検査不正事件の直後、クリーンディーゼルやダウンサイジングターボで今後の排ガス規制を乗り切れないと判断したのか、ドイツのVW(フォルクスワーゲン)が2025年までに、30車種のEVを投入すると宣言しています。

これに同じドイツのBMWやメルセデス・ベンツも追従し、ドイツの自動車メーカーは一斉にEVやPHVに舵を切りました。

とどめにドイツ連邦議会で「2030年までに内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)を搭載した新車の販売を禁止する」と決議されるに至り、今後10~20年でインフラ整備の間に合う新エネルギー車が急に必要になったのです。

急激に増加する充電スタンドとバッテリー工場

テスラ ギガファクトリー

Photo credit: Steve Jurvetson

EVを今後の自動車の主力にする流れが主流になったとなれば、充電スタンドは急激に増えてくるでしょう。電力需要もEVの増加と比例して増えていきますので、太陽光発電などのクリーンエネルギーだけではなく、各種発電所をフル動員する必要が出てくるはずです。

この1点でやはりFCVの方が良かったのではないかと考えるのは早計で、先に書いたように液化圧縮水素を作るためにも電力が必要ですから、新たな仕組みの構築は不可欠でしょう。充電スタンドへの送電は水素を運ぶよりインフラ整備での困難は少ないため、充電スタンドを増やして急速にEVを普及させることは、FCVほど難しくはありません。

不足するであろうリチウウイオン電池の生産は、テスラが米ネバダ州に建設中のギガファクトリーや、中国にVWが建設を計画するバッテリー工場、メルセデス・ベンツも中国にバッテリー建設を計画しているほか、各社がヨーロッパやアジアなど各地にバッテリー工場を急速に建設しようとしています。

そうした動きがあまり聞こえてこないのが日本や韓国の自動車メーカーで、このままでは世界の主流から取り残されてしまうかもしれません。

2016年11月になってトヨタがマツダと共同でEV事業への復帰を表明しましたが、どうしてもヨーロッパや中国メーカーからは遅れを取っているような印象です。

充電時間をどうする?

さて、2020年代中盤には販売される車のかなりの割合がEVやPHVになるとして、バッテリー工場や充電スタンドの増加は急ピッチで進められるとします。

さらに、これまでEVのネックの1つだった走行距離も、発売されたばかりのシボレー Bolt EVが低価格帯量販EVとしては最長の383kmを達成。2017年末に登場するテスラ モデル3も同程度の走行距離を持つとされ、差し当たりシティコミュター以上の実用でも支障の無いレベルには達してきました。

残る問題は「充電時間」ですが、これも各充電規格で「充電容量をアップして充電時間を短縮する」という、極めてシンプルな対策を打ち出したのです。

2017年より超高速充電ネットワークが開始

Photo credit: Kārlis Dambrāns

Photo credit: Kārlis Dambrāns

この高速充電で最初に動いたのは、いくつかあるEV充電規格の中でも欧米で普及している「Combo」(コンボ)規格です。

なお、現在どのような充電規格があるかは、EVsmartブログ「EV急速充電器メーカー一覧と選び方」に非常に詳しい解説がありますので、関心がある方はこちらの記事を合わせてチェックしてみてください。

このコンボ方式を採用しているBMW、メルセデス・ベンツ、欧州フォード、フォルクスワーゲンが参加して、まずヨーロッパ内400箇所で従来を上回る最大350kWの充電ネットワークを構成することになりました( 参照 : TechCrunch Japan 「BMW、ダイムラー、フォード、VWがヨーロッパに高速充電ネットワークを設置へ」)。

実現すれば最短5分で150kmの走行が可能になる見通しで、2020年までにはこの充電ネットワークを数千箇所に拡大する計画です。

一方、主に日本製EVで採用されている「CHAdeMO」(チャデモ)規格でも2020年頃までに現状の50kwから150kwへ、その後はコンボ規格と同じく350kw化していくロードマップを策定しています。コンボとチャデモは異なる規格とはいえ、新設される充電規格はその両方が使えるデュアルタイプが多いことから、チャデモもロードマップの前倒しを迫られるのかもしれません。

またこの充電ネットワークに限らず、2017年は「電気自動車の充電時間」という課題に対する改善策が急速に進むかもしれません。電気自動車の充電ステーションを提供するEVgoはMAXで350kWの充電ステーションを作ると公式サイトで発表。現在利用できる高速充電器より7倍高速で充電できるというこのプロジェクトは、2017年6月までに完了するとしています。

また電気自動車の雄・テスラCEOのイーロンマスク氏もTwitter上でのやりとりで新たな充電システム「スーパーチャージャー3」の構想をほのめかしたという報道も。現在のスーパーチャージャー(120kW / 80%の充電に約40分ほどかかるとされている)から大きく進化することが予想されており、今後の動向から目が離せません。

EV時代へ向け次々突破されるハードル

こうした一連の動きは、VWの排ガス検査不正事件と、同社がEVメーカーへと大転換を図ったことで一気に加速しました。それまでも「いつかは次世代車が登場するのだろう」という漠然とした予感はあったのですが、いよいよ必要性に迫られる時期が到来したということです。

ただ、その波はまだ日本にまで押し寄せていないようで、未だにEVやFCVの「欠点探し」をしてはまだまだ未来の話、という保守的な論調も多いように思えます。そうこうしているうちに世界はEV化に向かって着実に進んでおり、これまで欠点と言われていた部分が、本気を出せば着実に乗り越えられるものであるような印象を受けます。

日本において、車メーカーのみならず、ユーザーという立場の一般人にとってもこれは大きな社会インフラの転換を目撃していくことになりそうです。EVの世界においては、先日本メディアでも取り上げたようにイーロンマスクが車だけでなく家も含めオール電化でコネクテッドにする構想(詳しくは「テスラの発電する屋根など、今注目されるHEMSとは?」をご覧ください)をもとに事業を進めています。

各社・各国の今後の動向にはますます目が離せないですね。

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