脅威の技術力!NVIDIAが開発を手掛ける自動運転システムとは

「NVIDIA」と聞いてパッとどんな会社か想像がつく方はどれくらいいらっしゃるでしょうか? おそらくほとんどの方は聞いたことがないのではないかと思います。

アメリカの「NVIDIA Corporation(エヌビディアコーポレーション)」は、カリフォルニア州サンタクララに本社を持つ半導体メーカーで、主にGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を開発し販売している会社です。

パソコンを自作している方や高画質の3Dゲームを好む方の間では有名なグラフィックボード(ビデオカード)である「NVIDIA GeForce」シリーズを主力製品としており、パソコンのグラフィック性能を強化する周辺機器ブランドとして多くのユーザーに愛用されています。

 

ゲーム開発業界ではその名を知らない人はいないと言われ、特にグラフィック処理性能を重視する3Dゲームにおいて、各ゲームメーカーはNVIDIAが提供するGPUの進化に合わせて開発を進めているところも多いほどです。

そんなGPUの筆頭メーカーとして20年以上の歴史を持つNVIDIAですが、意外なことに自動運転システムの開発にも力を入れています。大手自動車メーカーであるアウディと長年提携し、「見て、考えて、学習する」自動車の実現を目指してデジタル技術の向上に注力。AI車載コンピューティングのプラットフォームとして、アウディだけでなく他の大手自動車メーカーからも注目を集めています。

今回はNVIDIAが歩んできた自動運転システムの変遷と、その技術・開発力をご紹介します。

 

自動運転システムの開発に関わるNVIDIAの歴史

1993年に誕生したNVIDIA

 

NVIDIAは1993年にジェンスン・ファン(社長兼CEO)、クリス・マラコウスキー(副社長)、カーティス・プリームによって設立されました。

3D描写機能を持つGPUの開発を手掛ける企業として現在も最先端を走り続けており、PlayStationやXboxなどのゲーム機を販売しているSony、Microsoftといった大手メーカーとも共同で開発を行い、2005年にはSony Playstation 3向けにプロセッサの提供も発表しています。

加えてディープラーニング研究の分野にも進出しており、「機械学習・自然言語処理・画像認識・自動運転車」といったAI(人工知能)を発展させる技術開発にも熱心です。

ディープラーニングとは、コンピューターに深層学習機能を持たせることで、画像や音声、テキストといった膨大データを高速で分析し、その意味を把握することが可能となるシステムを意味しています。コンピューターが人間と同じように複雑な状況を認識できるシステムのため、様々な業界においてその技術力の進化が熱望され、活用の仕方によっては他社を圧倒する事業の優位性を確立できるようになります。

そしてNVIDIAにおけるディープラーニング研究の延長上にあるのが自動運転システムの開発です。クルマの運転は人間でも非常に複雑な状況に置かれるため、知識と経験がモノを言う活動領域となります。人間の持つ視覚・聴覚・判断力などをフル活用する必要があり、ただ画像認識や空間処理を行うだけのシステムでは、到底「自動運転」のレベルに達することはできません。

AI開発の分野でも最も難易度が高い研究なので、各メーカーがこの先進技術に果敢に挑み始め、その一つにグラフィック処理のノウハウを持つNVIDIAも名乗りを上げたといったところです。

 

NVIDIAの自動運転システム開発

 

NVIDIAは、まずドイツの自動車メーカーであるアウディと共同開発を始めます。提携が本格化したのは2010年頃で、アウディのクルマに搭載されているナビゲーションおよび娯楽用システムにNVIDIAのGPUが採用されました。その後もアウディとの関係はより親密となり、現在は「Audi Connect」サービスと共に優れた情報・娯楽用システム(インフォテインメントシステム)を提供し、NVIDIAが持つ高度な技術力が活用されています。

NVIDIAは「Tegra」という統合型モバイルプロセッサを2008年に販売しており、現在はスマホやタブレット、クルマのナビゲーションシステムなどに実装されています。グラフィック処理が高性能なのはもちろんのこと、省電力でチップの大きさも最小のため、各メーカーからも絶賛されているプロセッサとして有名です。

そしてアウディは最新のモバイルプロセッサである「Tegra X1」を自社の自動運転システムに実装することを明言しており、その動向に業界からも注目を集めています。

Tegra X1をNVIDIAでは「モバイルスーパーチップ」と呼び、仕様として「NVIDIA Maxwell 256コア GPU」「64-bit CPU」「4Kビデオ機能」を搭載するなど、一枚の小さいチップに最新の技術を集約。販売時にはiPhoneに搭載されていた64-bitチップである「Apple A8X」の性能よりも上回ると言われていたほどなので、このプロセッサがいかに凄いかを物語っています。

またNVIDIAはアウディだけでなく、自動運転システム開発ではトップクラスの技術を持つテスラモーターズともパートナーとなり、他にもメルセデス・ベンツ、ボルボ、本田技研工業、BMW、ラクスジェンなどにも技術提供を行っています。

 

充実した専門領域を確立しているNVIDIAの開発部門

ハイスペックな自動走行システムの中身

 

NVIDIAの社長兼CEOであるジェンスン・ファン氏は「未来のクルマは最先端のコンピューターになる」とコメント。スマホやタブレットと同様に、自走する端末としての役割を担うだろうと予測しています。

同社の自動運転システム製品である「NVIDIA DRIVE PX 2」は、Tegra X1を1~2つ実装するAI車載コンピューターです。NVIDIA DRIVE PX 2を使用すれば自律走行に必要となる複雑な判断・分析もAIが自動的に行ってくれます。

この車載機器はNVIDIAが研究を進めるディープラーニングを駆使し、車両を囲む状況を全方位にわたって認識を行い、他の車両との距離や位置を正確に把握。それにより安全で心地の良い運転を可能にしています。機能性は他の企業を圧倒するほど高い水準を誇っており、ディープラーニングはもとよりセンサーフュージョン、サラウンドビジョンを組み合わせることで更なるドライビングの向上を実現しました。

またNVIDIA DRIVE PX 2は複数のカメラやセンサーからのデータを融合でき、静的および動的物体の把握が可能です。

日頃のドライビングデータをNVDIAのデータセンターへ送信する仕組みも整備されており、機械に学習させることにより更なる運転技術の向上が図れます。これをNVIDIAが誇るAIスーパーコンピューターである「NVIDIA DGX-1」と組み合わせることにより、学習機能の向上とトレーニング時間が短縮され、より正確な結果を取得することができるのです。

この最新のテクノロジーには優れた地図作成システムも搭載されており、自動車メーカー・地図製作会社・新興企業での利用を想定して開発が進められています。

 

NVIDIAの恐るべし技術力

 

NVIDIAの技術力はそれだけにとどまりません。

他にも、データセンターに置かれている「NVIDIA Tesla GPU」を利用し、普段のアプリケーションの性能を10倍に引き出すことで、高精度の地図作成を可能にするというシステムを確立。

従来の地図製作は車両で記録した走行データをオフラインで処理する必要がありましたが、NVIDIAの地図製作システムではデータセンターへダイレクトに送信してクラウド上で処理してしまうため、時間の短縮と高い効率性を実現しています。

ハードウェア面だけでなくソフトウェア面でも「NVIDIA DriveWorks」という開発キット(SDK)の提供を行っており、各メーカーに在籍する開発者に向けたアプリケーションを構築する環境をサポート。

こうした自動運転システム、ディープラーニング、ソフトウェア開発の充実した専門領域がNVIDIAで確立されているため、ただ自動運転を可能にするだけでなく、AIなど他の分野の技術力向上にも活用できる仕組みが整っています。GoogleやAppleも自動運転システムの開発に取り組んでいますが、NVIDIAも競合ライバルとして、侮れない存在であると言えるかもしれません。

 

NVIDIAが自動運転車の生産を手掛ける日が来る?

 

各大手自動車メーカーの自動運転システムをサポートしているNVIDIAですが、社内開発でオリジナルの自動運転車を試作して実験を行っています。

 

同社はあくまで単独のプロジェクトと発言しており、どの自動車メーカーも関与していないそうですが、狭い通路での走行、一般公道の走行、高速道路(ハイウェイ)での走行が実現している試作車なので、将来的に自社製品あるいはコンセプトカーとして発表する日が来るかもしれません。

NVIDIAだけでなくGoogleやAppleも同じ状況にあり、世界各国で開催しているモーターショーに大手IT企業の商品がラインナップする日も、そう遠い未来の話ではないと予測できます。大手自動車メーカーの真のライバルが、数年後には一変する可能性すらあるのです。

Googleはすでにドライバー不要の自動運転システムを確立しており、自社でオリジナルの自動運転車を開発しています。現在は大手自動車メーカーとの提携を装っていますが、いつか自動車市場を獲得して追い抜いてしまうことは容易に想像できるでしょう。

先にも述べたジェンスン・ファンCEOによる「クルマは最先端のコンピューター」と発言する内容からも分かる通り、各IT企業では未来のクルマのビジョンがしっかりと描けている状態です。

特にEV(電気自動車)はコンピューターとの相性が良いため、この分野での開発が進化すれば、今まで大手自動車メーカーに供給していた部品メーカーがIT企業に目を向けるはず。まさに革命とも言える転換期でもあるので、これから数年の自動車業界の動向はますます目が離せない状態が続くかもしれません。

 

ディープラーニングを活用したAIシステムの今後

 

自動運転システムの確立には不可欠な技術であるディープラーニング。「AI」「学習機能」「データ分析」などと聞くと何だか難しそうと感じるかもしれませんが、基本はソフトウェアの開発なのでパソコン一台あれば誰でもその世界に触れることができます。

近年ではNVIDIAやIntelなどの先進企業が開発するGPU・CPU性能が強化されたことにより、一般の方でも安易に開発環境を手に入れることができるようになりました。ディープラーニングは誰でも恩恵が受けられる技術領域なのです。

一部の専門家の間では、ディープラーニングのAIシステムは認識・分類・分析は可能でも人間のような応用力がないと懸念されています。「このままテクノロジーが進化すればAIにより人類が滅ぶ」と理論物理学者であるスティーヴン・ホーキング氏は警鐘を鳴らしていますが、対照的に人間の頭脳領域まで達するには永遠に不可能だとコメントしている学者まで多様に存在します。

自動運転システムのAIに関しても応用力を求めるのではなく、何を得意とするのかを人間側がしっかり見極める必要があるでしょう。そのためには、走行時の環境、事故の状況、人間の運転経験などの膨大なデータを正確に集めなくてはなりません。

また企業だけでなく、各個人も自動運転システムの向上に貢献するため、車載カメラなどから走行データを送信し協力する必要があります。ディープラーニングは一部の優れたエンジニアが手掛ける技術ではなく、一般の方でも開発に参加できる最も身近な先進技術でもあるのです。

 

これからはIT企業が車を販売する時代が到来?

 

3Dゲームなどを趣味としている方にはお馴染みのNVIDIAですが、他にも様々な事業を展開し世間を騒がせています。パソコン周辺機器の開発を手掛ける企業が、将来自動運転車を販売する可能性があるというのも面白い傾向かもしれません。

GoogleやAppleはすでに自動運転車の開発に着手していますが、NVDIAや他の新興企業もそこに名を連ねれば、より自動車業界も活性化される未来が待っているはずです。

営業車の事故率と保険料を下げる仕組みとは?

関連記事

SNSで最新記事をご購読ください
TOP