オープンなしくみで日本の物流を変える。グローバルカンパニー・ハネウェルの視線の先にあるもの

オープンなしくみで日本の物流を変える。グローバルカンパニー・ハネウェルの視線の先にあるもの
インタビュイー:
日本ハネウェル株式会社
代表取締役社長 西巻宏(にしまき・ひろし)さま

業界を支える、ハネウェル4つの事業

まずは西巻様のご経歴とハネウェルの事業について、簡単にご紹介いただけますでしょうか。

私は大学を卒業後、日系の事務機器のメーカーに20年ほど在籍していました。そこで、ヨーロッパに10年、アメリカに4年近く赴任し、日本の事務機器のデジタル化に伴う、販売マーケティングを担当。帰国後は医療機器の販売やマーケティング責任者を務め、2014年の11月にハネウェルに参画しました。

ハネウェルのビジネスは大きく4つございます。

1つめは、航空機に関するさまざまな装置や部品、フライトシミュレーションのシステム関係、燃費の効率化が行える運送システムなど、航空宇宙産業向け製品とソリューションを展開する、エアロスペース事業です。防衛用航空機への搭載実績もございますし、最近ではデンソーさんと空飛ぶ車の開発にも取り組んでいます。

2つめがパフォーマンスマテリアルズという、化学製品関連の商品です。薬品を包むフィルムや、家庭用の害虫駆除スプレーの中身としても使われていますし、セブンイレブンに納品している冷凍冷蔵庫の冷媒については、CO2の削減と燃費が非常に良いという理由で採用いただいております。また、プロセスソリューションという名で、化学工場をはじめ、さまざまな工場で安全や生産性を管理する統合的なシステムも提供しています。これは、「この工場は安全上の問題がある」「生産がストップしている」など、工場に関する情報を一元管理できるシステムです。

3つめは、ビルに関する安全やセキュリティ、メンテナンスを支援するビルディングテクノジー製品の提供です。

アメリカのホテルに行くと気付かれると思いますが、温度調整やサーモスタッドに弊社の製品が採用されています。昔から使われていますので、古いホテルにはほとんど採用されています。日本でも国際的なホテルでは、照明や空調にハネウェル指定の製品が使われています。それ以外にも、防犯カメラや入退室のセキュリティーシステム、火事が起きた時や煙が発生した時にビルのどこで火災が発生したかをすぐに感知できる火災システムもございます。

4つめが、セーフティー&プロダクティビティ ソリューションズです。これは、物流から製造工場まで、作業員の安全と生産性を向上する製品およびサービスを提供するビジネスです。生産性向上の中には、物流、製造、小売流通、ヘルスケアの4つの大きなマーケットがあります。様々な場面で疲れわれているバーコードやQRコードを確実に読み取るスキャナーや業務上厳しい環境で使用されるハンディ端末を提供させていただいております。また安全性向上については有毒ガスが発生する場所———半導体の製造工場や化学工場、製紙工場といった場所は、必ずと言っていいほど有毒ガスが発生しますが、それを感知するシステムを提供しているのが弊社です。また、カメラ付きのヘルメット、防刃手袋など、作業員の方の安全性を高める個人保護具製品も提供しております。

グローバルカンパニー・ハネウェルの強み

ハネウェルはフォーチュン100のグローバルカンパニーですので、純粋な日本企業とは少し角度の異なる戦術をお持ちかと思うのですが、日本へのローカライズをしているのでしょうか、それとも日本は単独の戦略を持っているのでしょうか。

売上の約半分は本拠点があるアメリカが占めていますが、最近では、中国、インド、中近東、中南米あたりがGDPの成長とともに物流や各産業で伸びています。ハネウェル全体としては5%ほど成長しているものの、日本においてはまだまだシェアが低い状態です。

2000年初頭まで合弁会社でしたが、2005年に独立して100%ハネウェルの資本になったことを機に、ハネウェルが持っているテクノロジーとサービスを日本でも活かしていこうという機運が高まりました。日本の市場はすでに成熟していますので、その市場でいかに他社と差別化を図り、成長に結びつけにいくかを考えなくてはなりません。そういう意味でも日本は重要な拠点なのです。

日本は独特の文化や言語がございますので、アメリカの製品をそっくりそのまま導入するわけにはいきません。日本語対応はもちろんのこと、お客様に受け入れてもらえるように、その他のサービスもすべて丁寧にローカライズする必要があるのです。そのためにも、さまざまな分野のパートナー企業を交えてエコシステムを作り、提供していきたいと考えています。それに、今は内需が下がってきていますので、日本企業が海外に進出する機会は増えて行くと予想されます。ハネウェルはグローバルカンパニーですし、いくつもの拠点を所有していますから、各地で培った技術面やノウハウ、市場開拓など、多面的なフォローも可能です。

スマートドライブさんも海外展開をお考えとのことですが、私どもの企業は現地にスタッフがおり、現地でビジネスを展開しておりますので、ビジネスの立ち上がりを迅速にサポートできると思います。

プロダクトの翻訳は、Google翻訳や機械による翻訳ですと機械的ですし、表現がストレートすぎるものになるため、日本の方だと満足されませんよね。文脈も含めて翻訳して欲しいなど、品質に関してはシビアな印象があります。同じような話で、ハードウェアの品質に対しても日本人にフィットさせるために苦労されたことはございますか。

欧米ではがっちりとしている、堅牢性が高いものが好まれます。しかし日本では、とくにB2Bの業務系製品ですが、軽い、薄い、見栄えがいいものが好まれる傾向にあります。この時点でも、だいぶ異なりますよね。日本はiPhoneの導入率がもっとも高いと言われていますが、この傾向を明確に表した結果と言ってもいいでしょう。

ハネウェルでは、そうした国内のニーズを確実に捉え、中国にある企画開発製造部門で日本向けの製品開発をしています。

世の中のトレンドに合わせたサービスを提供する

物流倉庫などで使用されている従来のハンドスキャナーと、ハネウェル様のハンドスキャナーとでは思想が大きく違いますよね。

世の中のトレンドは、「買う」から「使う」へと移行しつつあります。カーシェアに代表されるように、B2C向けのサービスではすでにこの考えが一般化していますよね。この流れは今後B2B向けのサービスにもやってきますし、従来のビジネスモデルもこれから大幅に変化していくでしょう。

大手企業ですと、要求要件のレベルが非常に高いうえ、きめ細かく、業務が複雑です。しかし資金力があるので、一部をSIerに対応させることもできる。しかし中小企業は、コスト重視でシステムに業務を合わせていく方向性へと変流ではないでしょうか。

 

「自社の業務にシステムをカスタマイズして欲しい」ではなく、「自社の業務をなるべくシステムに合わせる」。これは、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)やSFA(セールス・フォース・オートメーション)の導入時に言われていた話と近いものを感じます。

とくに日本は労働集約型で、人が介在する作業や業務が非常に多い。日本人はどんな作業も器用にこなしてしまうので、合理的な動きがなかなか浸透しづらいと言いますか、きめ細やかな仕事に慣れすぎて気づかないのです。

欧米ですと、人件費が高い割にすぐやめる、多国籍の人たちが働いているので言語はバラバラ…。そうした環境下で業務の統一性を図るために、システムが必要になるのです。国内でも今後、労働人口が減っていけば、必然的に外国人労働者の採用が増えていきます。ですので、B2B領域においてもシステムに業務を合わせる必要性は高まってくるでしょう。

 

そうですね、人口が減っていく中で生産性をどのように上げていくかを早急に考えるべきですよね。賃上げは、あくまで一時しのぎにしかなりませんし。
購入から利用へ変化していくという話がありましたが、ハネウェルのハンディ端末で使用されているOSはAndroidです。ソフトウェアのアップデート費用はかからないということでしょうか?

その通りです。コストをかけず、広く導入していただきたいと思っております。

 

利用者にとっては非常にありがたいと思います。ちなみに、この分野で競合はございますか。

新たなマネタイズの方法やアプリケーションを含めると、まだまだ少ないようです。先ほど申し上げたように、大手企業であれば、SIer独自のシステムをお客様と一緒に要件定義しながら開発しますので、他社も入り込みやすいのですが、中小企業にはあまりフォーカスされていないようです。

なぜなら、中小企業は大手企業と比べると資金的な余裕もノウハウもないことが多い。ただ、彼らの業務フローを俯瞰して見ると、機能を限定したり、業務をシンプルにしたりできる部分が意外とあります。ここにイノベーションの必要性があるため、私たちは着目しているのです。

たとえば、100ある機能の中で実際に利用しているのは50だけ、残りはあってもいいけど使わないという場合、機能を50に絞れば、コストも安くなるし、シンプルで使いやすくなるでしょう。そこをしっかり伝え、業務効率を向上する方法を教えてあげるべきなのです。

 

大手企業は資金的な余裕もあるのでシステム化することができますが、このままでは電子化の流れの中で、中小企業が取り残されてしまうのではないでしょうか。

タクシーに乗ると、ドライバーさんが手書きで運行記録を記入している姿を目にしませんか。サンバイザーの所にメモ帳とボールペンがあって、信号が止まった時に、何時に乗車して何時に降車した、区間はどこどこで料金はいくらなどの情報を記している、あの作業です。たとえば、この運行記録を自動化して、ドライバーさんには自身の体調や運転の管理に集中させることで、よりお客様の安全を確保していくことができるはずです。そういう部分を私たちがサポートしていくべきだと思っています。

「業務用のiPhone」というコンセプトで業務効率の改善を推進

スマートドライブは御社のハンディ端末と連携させていただいておりますが、私たち以外にもパートナー様はいらっしゃるのでしょうか。

倉庫の在庫管理システムや、食品の賞味期限を管理するシステムとも連携し、棚卸しの業務が簡略化できるようにしています。また、店舗内の導線を管理するシステムとも連携が可能です。

スマートドライブのデバイスで収集したデータは、ハネウェルのハンディ端末を介してデータ送信できますが、同じように店舗で使用されているさまざまなIoTデータを弊社のスマートデバイスで集約することもできます。

車にはドラレコやデジタコなど取り付けることができるデバイスがたくさんありますよね。配達中のドライバーはいくつもの端末を腰につけて作業していますが、一つに集約させて情報を一元化すべきです。それが私たちの考える業務用のiPhone」というコンセプトです。個人のみなさまもiPhoneやAndroidに数々のアプリを入れていると思いますが、それを業務用に落とし込みたいのです。

 

その発想は素晴らしいですね。今後さらに多様なデータを取り扱うようになると、バーコードスキャンには端末A、車両の位置情報には端末B、電子決済をするときは端末Cというように、業務用端末を何個も持つことになってしまいますし。

そうですね。業務用のアプリを入れておくことで、ハネウェルのスマートデバイス1つですみますから、端末の管理も楽ですし、より作業を効率化させることができます。

スマートドライブとのパートナーシップで「安全と効率」を実現

「安全効率」という観点で、今後スマートドライブと取り組めることはございますか。

タクシー業界や運送業界など、車両を使った事業は交通事故のリスクがつきものです。人命に関わる仕事でもありますし、ドライバーの健康管理や車両管理など、さまざまな課題を一緒に解決してきたいですね。その取り組み方も、AはAじゃないと売れない、BはBだと売れない、でもAとBを合わせてCにすればお客様に価値を提供できるという形で。ハネウェルが持っているソリューションだけでなく、スマートドライブなどのパートナー企業と、お互いの強みを掛け合わせてより大きな価値を提案してきたい。

ハードウェアビジネスは、新しく良いものがリリースされると、型の古いものの値段が安くなるという宿命があります。新しく出たものが売れれば、見た目も機能も変わらない類似品が出回るようになりますし。ハードウェアはあくまで活用するものです。ですので、その先の価値を提供できなければ、最終的にお客様のメリットには結びつきません。

スマートドライブは分析にも力を入れているとのことですが、そこが数年後、コアな部分になっていくのではないでしょうか。

これから先、ビジネスの源流となるのはハードウェアではなくデータです。いかにデータを集め、お客様が必要とする価値に作り上げていくか。そこがビジネスの核心になっていくでしょう。なので、双方で集めたデータを多角的にアウトプットして、お客様に今までにない、多大で貴重な価値を提供していきたい。そのためにも、スマートドライブとの連携を皮切りに、パートナー企業様の共創や協業を積極的に進めていきたいと思います。

ありがとうございます。集めたデータを組み合わせて、世の中にもっと大きな価値を提供していきましょう!

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