東南アジアのモビリティ事情〜マレーシアの今を現地担当者に聞いてみた〜

東南アジアのモビリティ事情〜マレーシアの今を現地担当者に聞いてみた〜

2019年11月、事業の拡大とさらなる移動の進化を後押しすべく、スマートドライブがマレーシアに拠点を立ち上げました。実際に現地で海外事業開発ディレクターとして活動する丸井達郎さんより、マレーシアのモビリティ事情を伺いました。

マレーシアの交通事情

タイのバンコクやインドネシアのジャカルタは東南アジアでも交通渋滞がひどいことで有名です。噂によると、一時間に数センチ程度しか動けないこともあるとか。2019年9月にアジア開発銀行(ADB)が発表した資料によると、アジア諸国で交通渋滞が深刻な都市として、マレーシアのクアラルンプールが2位に上がっていました。実際に、11月から住んでいる丸井さんは、どのように感じますか。

丸井:マレーシアはアメリカなどと同じように車社会です。乗用車の総台数は東南アジアでインドネシアに続いて2位、1,000人あたりの乗用車の数は東南アジアの中では群を抜いて多い国です。。渋滞は大きな社会課題となっており、特に朝と夕方の通勤時間帯のクアラルンプール中心地はとくに渋滞がひどく、近くの目的地に到着するまで1時間かかることもあります。

2017年の新車販売台数は58万台、生産台数は50万台。マレーシア政府は2020年までに省エネルギー車(EEV:Energy Efficient Vehicle)の地域拠点を目指しています。2017年7月にはクアラルンプールで大量輸送システム(MRT)が開通しましたが、そもそも、首都のクアラルンプール以外は公共交通機関があまり整っておらず、移動は基本的に自動車。自動車登録台数は2012年から累計1,000万台以上、2016年には1,300万台と増え続け、自動車を保有する世帯は全体の8割です。

丸井:移動に関しては配車サービスのGrabが社会の移動インフラとして浸透しています。、どこへ行くのもアプリ一つで車が来て移動ができます。Grabのような非常な便利なサービスが発達している一方、ここ数年で全線開通した都心のモノレールをはじめとした公共交通機関が渋滞解消の解消には繋がっていません。、将来的にはGrabと電車など、あらゆるモビリティを組み合わせて、より効率的な移動が実現されていくのではないでしょうか。

交通渋滞に関しては、今後スマートドライブのビジネスで解決に導くことができるのではないかと考えています。車が多いと事故のリスクも高まりますし、しっかりと車両管理が行えれば混雑する時間帯を避けて移動するなど、渋滞を緩和する方法が考えられますし。また、盗難も多発していますので、盗難を抑止できるソリューションのニーズも高いです。

マレーシアにおけるモビリティの課題

渋滞と盗難以外にはどのような課題があるでしょうか。

丸井:渋滞と盗難に続いて、CO2の排出量を含む環境問題も考えなくてはなりません。マレーシアは人口が少ないから総体的に見ると排出量が低いかもしれません。しかし東南アジア全体で見ると現在の状況は持続可能な状態とは言い難いものです。

マレーシアは、2014年に発表された国家自動車政策(NAP)でEEVの生産拠点にすること発表しています。EEV規格は排気量に応じた燃費効率が設けられており、各メーカーが発売する新モデルも燃費のよいEEVが主流になりつつあるようです。小型車と省エネ車が中心に売れているのも、環境問題に対する意識が高まっているからかもしれません。

とはいえ、首都クアラルンプールの交通渋滞が経済成長の阻害要因になっていますよね。世界銀行の調査によると、2015年の時点で年間の損失額が200リンギット(日本円でおよそ6580億円)に達したそうです。世界銀行はマレーシア経済に関する報告書で、2014年の首都の渋滞コストが貨物の遅配のみで国内総生産(GDP)の1.0~1.8%に相当したと指摘していますし、これに混雑中の燃料消費や大気汚染による経済的損失などを含めた同国の総合的な渋滞コストはGDPの1.1~2.2%に達するとか。

丸井:そうですね、今後の経済成長を促すためにも、モビリティ領域を彼らのデジタル産業として成長させていくべきです。Grabのような新しい企業を生み出し、その技術を対外国に対して輸出できるように、マレーシアの方たちがしっかり技術を身につけていくべきだと考えていますし、そこに対して私たちができることもあわせて事業展開を進めていくべきだと感じています。

マレーシア企業の課題

丸井さんはおよそ1ヵ月前よりマレーシアに行かれています。実際にマレーシアの企業とお話しする中でどのような課題があると感じましたか。

丸井:現在、私はマレーシアでビジネスデベロップメントとしてその土地の企業様にお会いしたり、実際に生活をすることでスマートドライブの技術がどのような形で貢献できるかを考えたり、リサーチしたりしています。

マレーシア政府はデジタル産業の成長に多額の投資をしていますし、イノベーションが起こりやすい新たな取り組みには特区を作るなど、積極的に支援をされています。そうした背景もあり、マレーシアの拠点は立ち上げからまだ1カ月ですが、非常に多くのご相談やお引合せをいただいていますね。みなさん、モビリティやテクノロジーに対する感度が高いと感じます。具体的には、政府関連企業様とのコラボレーションだったり、財閥企業のバックアップでビジネス開発の機会を得たり、現地の日系企業とコラボレーションしたり…あらゆる可能性に向けて動き始めている感じです。

なるほど。マレーシアは2017年に世界で初めて「Grab」や「Uber」と言った配車アプリサービスを合法化した国です。アプリ上で緊急連絡ボタン設置を義務付けるなど、安全面に考慮した法改正も行われました。そういう点でも、新たなモビリティサービスへの意識の高さが伺えます。また、政府は同年には国内のデータセンターや地元のフィンテック企業への投資を拡大し、サポートしていました。そういう点でもデジタル化政策への前向きな姿勢が伺えます。

丸井:現在はGrabのようなマレーシアのスタートアップ企業が東南アジア〜アジア全域に渡ってサービスを提供していますので、モビリティデータの活用が直接、経済の成長や課題解決に大きなインパクトをもたらすことを現地の方々も理解しています。ですから、今後本格的にデータやテクノロジーを活用したサービスが生まれていくと思いますね。

マレーシアの企業は具体的にどのような課題を持っているのでしょうか。

丸井:政府としてはスマートシティや持続可能的な輸送システムの実現など、まちづくりや都市開発の分野に関して方法を探っている政府系の企業は多くあります。法人の車両管理も大変強いニーズがあります。スマートドライブが日本でビジネスをしているフリートマネジメントや、MaaS関連の新しいサービスを創出したいと積極的に動いている企業もいます。たとえば、スマートドライブのデバイスやデータプラットフォームを使って、今までになかったような、Grabに匹敵するような新たなサービスを一緒に開発をしたい、またはそういった取り組みをしたいと言われますね。

マレーシアの企業様の大きな経営課題として離職率、人件費高騰、採用難が挙げられます。営業の生産性を上げたい、車両管理を徹底して事故を減らしたいというニーズはもちろんですが、社員により楽しく、安全に働いてももらう仕組みの提供が必要です。私どもが提供する安全運転に応じてポイントが貯まる仕組みで従業員向けベネフィットを提供できればフリートをマネジメントするだけでなく、福利厚生の側面を強化できれば非常に可能性のある分野だと感じています。ピンポイントな課題へのご相談あれば街全体を効率化したいという大きなテーマの話も受けるなど、ニーズは多岐に渡りますので、私たちもどこが短期的、中長期的にどこに貢献できるかを考えてお話ししています。

それは現地の企業、マレーシアに進出している日系企業、どちらの課題ですか?

丸井:今の時点では、マレーシアの現地企業とそれほど多くお会いしているわけではありませんが、現地企業の方がテーマの大きい話が多い印象です。

スマートドライブが今後マレーシアで実現したいこと

2019年12月10日、マレーシアの政府機関「マレーシア・デジタルエコノミー公社(MDEC)」が日本の起業家や投資家の招致を強化する意向のプレスリリースを発表しました。マレーシアでは現在、「ASEAN諸国におけるデジタル経済のハブとなる」ことを目標に掲げ、日本との関係性を育てていきたいと言っています。デジタル化に積極的なマレーシアにおいて、丸井さんは今後どのようにサービスを展開していきたいと思っていますか。

丸井:現在のビジネスプランニングのフェーズから、いち早く具体化に向けて駒を進めていきたいですね。次のフェーズは、領域を定めて、そこに必要な開発リソースと開発体制をマレーシア現地で整備すること。ローカルのお客様のニーズに合わせてソフトウェア、ハードウェアを開発できるように、マレーシアのエンジニアを採用して実際に開発へ進める土台を築きたいと考えています。

そのためにはまず、私たちがどこに注力して、どのようなビジネスモデルでマレーシアの事業を進めていくのかを早急に固めていかなくてはなりません。そこから必要な人員のリソースと開発体制を整備し、具体的な実行プランに落とし込み、戦略を立てて、戦術部分を設計する。来年の春ごろからこのようなオペレーションを実行していく予定です。

 

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