【対談】地に足のついた、交通まちづくりを行うために必要なこととは?–後編

【対談】地に足のついた、交通まちづくりを行うために必要なこととは?–後編

海外ではスマートシティ構想が具体的に進み始めています。一方で国内に目を向けると、各地で実証実験が行われているものの、成果としてはまだ現れていないようです。 後編では、実際に海外のさまざまな取り組みに携わり、成功へと導いてきた株式会社PTVグループジャパンの代表取締役である端野良彦さまに、前編に続き日本国内でスマートシティ構想を実現するために必要なことについて教えていただきました。

スマートシティ構想を加速させるには

菅谷: 日本では、地域活性化の観点を含めて、スマートシティへの取り組みが盛んになってきました。地域ごとによって課題は異なるものの、よく耳にするのが、同じ地域内で一部に車が集中して渋滞が起きる場所と、全然人が集まらなくて、過疎化が進んでいる場所が二極化しているということ。

高齢化が進み、若年層が都会へ流出したこともその要因の一つです。最近では、運転に不安のある高齢者は免許証を返納すべきという風潮にありますが、返納した場合、高齢者を含む交通弱者に対してどのような交通手段を提供すべきかを考えなくてはなりません。

ここで少し弊社のビジネスについて説明させてください。スマートドライブのビジネスは三つのレイヤーで形成されています。データを取り組むデータインのレイヤー、データを集めてデータの活用を考えるプラットフォームのレイヤー、そのデータ活用に基づいてどんなサービスを展開するのかという、データアウトプットのレイヤーです。

スマートシティの文脈でいうと、自社のセンサーを使って、各地域の住民の行動データを集めたり、安全運転によってポイントが付与されたりするサービスを展開しています。ですから、安全運転を促す仕組みを作りつつ、リアルタイムのデータに基づいて、どういう形でインセンティブを与えると行動を変えられるのかというアサンプション(仮定)を作ることができます。それを御社のサービスと掛け合わせて、いろんなシミュレーションしていくことは可能でしょうか。

端野: たとえば、シンガポールで実施しているロードプライシング。人が集中する都市に車が入る際は課金をして人を減らすとか、混雑に応じて1時間ごとに料金を変えることによって流入を調整しています。

今まではアプリやロガーを使ってリアルタイムに施策を講じることができず、ゲートを作るしか料金の徴収方法がありませんでした。しかし、今後は個人個人にインセンティブを与えるなど、よりきめ細やかなコントロールによって、渋滞を緩和することが可能になるでしょう。ただ、それを実行するには、道路の幅や混雑具合、信号のタイミングなど、都市構造を把握するための分析が必要となります。そのうえで、警察や地域と連携をしながら移動と住みやすさの快適性を上げていくべきでしょう。

菅谷: 弊社では、安全運転に限らず、例えば、通過した場所によってポイントを付与する仕組みも構築できます。そうすると人の流れを誘導することができますが、長い目で見ると根本的なインフラを変えていく必要がある。行動変容とインフラの変更、その掛け合わせによって、本当に効果を得られるのではないでしょうか。

端野: 日本における都市の問題は、行政のよってスタンスが違うことです。新しい技術に非協力的な都市もあるし、横浜市や柏市のように、新しいことを積極的に取り入れる都市もある。そして、さまざまな方法でPoC(概念実証)を進めはしても、実施して結果を見て満足してしまう。それが何よりも大きな問題です。

国交省の発表によれば、現在、ライドシェアリングサービスが全国で100箇所以上設置されているといいます。しかしそれが、1週間〜1カ月の期間で“やってみた”という成果だけで、その後の改善・改良が進んでいない。当然ながら、地域ごとに必要性や仕組み、そこに住んでいる人々の行動もそれぞれ異なりますので、『1カ月間実施しました』という結果だけでは、今後の参考データにはなり得ません。

観光地であれば観光による特性が、過疎化であれば人口密度に関する問題があるし、それぞれのケースによって課題と解決方法は異なるもの。それぞれの課題をもっと深堀りし、解決に向けて試行錯誤し、地域に根付いた事例を作っていくべきです。

菅谷: その深掘りの部分で、御社の製品やサービスはどのように活用されていますか。

端野: PTVは、MaaSやライドシェアリングが広がる前に、人の移動を柔軟にシミュレーションできるツールとしてソフトウェアを提供してきました。

PTVのソフトウェアを使うことで、社会実験を実施する前に、何10、何100パターンすべての方法をシミュレーション上で分析できるので、事業者の立場であれば、そこで損益分岐点を付け、役所であれば、交通弱者をどれだけカバーできるかを把握し、必要台数や必要なサービスを求めることができます。立場の違い、妥協点を見つけることによって、実際にサービスインをする時に、適正な車両台数、適正なサービス内容、適正な金額設定ができる。それが、弊社が持つソフトウェアの強みです。このソフトウェアを活用した成功事例がヨーロッパではいくつもございますので、日本でも同じようなシステム作りができればと考えています。スマートドライブとの連携によってそうしたシステムを構築できれば、利用者の立場に立った“本当の”MaaSが進められるのではないでしょうか。

菅谷: 技術ありきではなくて、本当に利用できるMaaSが。

端野: 現状、「日本ではこんなことがMaaSでできました」という発表だけになっていて、利用者視点で何かが改善できていない。そこが非常に残念だなって思いますね。

菅谷: 内閣府が掲げているスーパーシティ構想に考え方が近いですよね。スーパーシティ構想についての報告書を拝見すると、住民の参加が大事であること、技術開発側・供給側の目線ではなく課題解決が重要であるといったことが書かれています。まさにそういったお話ではないでしょうか。

端野: MaaSにスマートシティ。これらの構想を推進するには、民・官が連携して地域に根付き、利用者の立場に立ったうえで計画を練ることが成功のカギです。

菅谷: 利用者の立場に立つという観点でも、弊社のサービスを生かせるかと思います。

単にデータを集めるだけではなく、利用者自身にメリットがある形でそれらに取り組みを推進できるサービスとして構築していますし。そこへ御社のサービスや技術を補完いただければ、一気にコマを進めることができるのではないでしょうか。

端野: そうですね、フレッシュな情報で一人ひとりへアプローチができるスマートドライブの仕組みは、今までにない新しい取り組みです。データを活用することで、その都市にマッチした行動を誘導できる、より良いサービスが提供できると期待しています

移動はマルチモーダルで考える

菅谷: 人の行動は断片的なものではなく、繋がったひとつの流れとして考えるべきだと思うのですが、いかがでしょう。

端野: 例えば、自動運転のライドシェアを展開するとしても、それ単体で考えてはいけません。スマートシティやMaaSと一言に言っても、見方は立場によって変わります。鉄道会社が展開するMaaSは、電車グループ会社が所有するバスだけ、とか。しかし、実際の人の移動を想像すれば、自転車シェアリング、カーシェアリングも利用する可能性があります。

日本のカーシェアリングは借りた場所に必ず返却する必要があったりしますが、ヨーロッパでは乗り捨て型のカーシェアリングも広がりを見せています。乗り捨て型シェアリングサービスが国内でも普及すれば、ある人がA地点からB地点に行くまで、「徒歩自転車シェアリング鉄道カーシェアリング徒歩」という流れで、最終目的地まで向かうことも考えられる。このようなマルチモーダル、つまり、複数モードで移動することも考えてサービスを構築すべきです。こうした複数の移動も弊社のソフトウェアで統合的に分析できますし、そこへスマートドライブのシステムを追加すれば、「この乗り物を使うとポイントが付与される」というようにインセンティブを与えられるでしょう。

そうすることで、各地域が理想とする利用の均衡化が可能になります。自転車シェアリングサービスを設置したけど利用者がいない、とりあえずカーシェアリングのステーションを増やしたけど利用頻度が低いなど、実施したのに使われないのは世界でもよくあること。それをスマートドライブのシステムで、人の行動を満遍なく分散させることによって、渋滞や混雑を未然に防ぐことができるのではないでしょうか。

スマートドライブとPTVの連携にはシナジーもありますし、PTVのシステムでより詳細な分析ができるので方向性が見つけられる気がしますね。

菅谷: PTVの強みは、バーチャルの実証実験を何100回も実施できることです。実際にインフラを変えるには、時間も資金もかかりますが、もっとも有効な手段を短期間で大量に実証実験できるので、コストをかけず、効率的に最善策が得られます。非常に素晴らしいシステムですよね。

端野: 結果を見せることで地域住民や関係者にも施策を訴えやすいんです。

技術者は何百メートルという具体的な数値で渋滞を表現しますが、地域住民は、「A駅からあのコンビニまではいつも渋滞している」と、普段から感覚的に物事を見ています。ただ、施策を講じる際はなんとなくではうまくいきません。そのため、映像や分析結果を視覚的に見せることで、関係者たちのマインドを同じ方向へ持って行くことが重要なのです。そうやって、改革や新しいシステムを突き進めていきたいですね。

 

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