【対談】ヒトもモノもつながることが新たな価値を生む– IoTが描く未来図 後編

【対談】ヒトもモノもつながることが新たな価値を生む– IoTが描く未来図 後編

前編に引き続き、今回もゲストは株式会社ローランド・ベルガーで代表取締役社長・工学博士を務める長島聡様です。

移動の課題を解決し、動きたくなる・動きやすくなる社会を実現するためにローランド・ベルガーが立ち上げた社内ベンチャー、『みんなでうごこう!』。(2018年11月発足)後編では、『みんなでうごこう!』や長島様が大事にされている考え方、そして現在から今後の取り組みについてお話を伺います。

前編はこちら

さまざまな都市と人がつながるために

北川:「前編でお話しされていた翻訳機能は、『みんなでうごこう!』のコンセプトと近いですか?」

長島:「そうですね、社内ベンチャーでも繋いだり、翻訳したりするという役割に注力していますし、各プロジェクトの中では、『ローランド・ベルガーは何を一番にやるべきか』を常に念頭に置きながら動いています。
地方への移動増加や観光客の誘致も含め、地方の活性化への取り組みはすでに各地で行われています。ただ、色々な場所で、取り組んでいるため、互いに知らぬ間に起きていることも多いです。要は、ある地方の繁栄を思う100人以上の人が、それぞれ街のために別々に動いているので、いつ・どのエリアで何が行われているか、全然見えないということ。そんな状態なので、『今から3時間後に近くでこんなイベントがあるらしい』という情報が耳に入ることはほとんどありません。そうやって貴重な機会が次々と流れてしまうのは非常にもったいないですし、それをどのように見える化して、人の流れを変えるようなインパクトを作るか。そして、どう繋げていくべきかを考えるのが私たちの使命だと思っています。
『みんなでうごこう!』では、ひとつの都市だけでなく、10、20のさまざまな都市と色々な形で動き始めています。
各地域にいるプレイヤーは地域の特色はもちろん、考え方も実施していることも異なりますので、いま何をやっていて、どんな効果があるか。もう一歩良くするためにはどんなことを加えるべきかを整理します。それぞれの取り組みを1つづつカード(ソリューションメニュー)にして集めていきます。これをやっておくと、次の地域に向き合った時に、こことここが繋がらないとか、この部分の密度が足りないとか、このカードを使うと変わるのではないかとか、何をすべきかが見え、どこを足し算・引き算すべきかが明確になっていきます。人がいまやっていることを集めて、つないで、密度を上げていく― それに挑戦しているのが『みんなでうごこう!』です。」



埋もれた可能性を輝かせるために

北川:「先日、ある岡山の企業様を訪問したんですが、車両を数多くお持ちのせいか、テレマティクスやIoTに関する知識が非常に高く、自社ですでに様々なサービスを契約して活用したりして、やっていることは都会の企業と変わらないと思ったんです。ただ、お話を伺っていると、もっと手前でこういうことができる、もっとこういうこと発信してくれれば色々紹介できるのに、みたいなことが多くて。素晴らしいアセットやマインドを持っているのに、つながらないから形になりづらい。そうした企業が地方には多いように思います。」

長島:「インダストリー4.0というコンセプトが広がってきたのは、たしか2014年ぐらいだったでしょうか。そこでは製造業のデジタル化、つまり、インターネットでなんでも繋ぐというような話が出てきました。『みんなでうごこう!』を実行する中で思ったのは、今後、人や会社をインターネットに繋げるようにならないかなと。それらがつながれば、この人はこんな得意技を持っている、この会社はこんな強みがあるという情報がどんどん頭の中に入ってきて、格段と視野が広がります。
さらに地域のアセットにもつながれば、稼働率も含め、この場所は人口が何人で、どんな人たちが来て、どんな特色を持っていてという情報がすぐわかるようになり、人の移動密度をマネジメントできるようになるんじゃないかと思っているんです。そうすることで、新たなルートを作ったり、イベントを宣伝したり、よりメリハリのついた地方の活性化が可能になりますし、それが一般化して飽きがきたら密度から外れたところをプロデュースすることもできる。そんな、今まではできなかったことが実現できると思うんです。」

北川:「スマートドライブでも、車だけではなくさまざまなシーンで使えるように色々な取り組みを行っています。移動というテーマは外せませんが、弊社開発のデバイス以外にも様々なデバイスと連携を進めていますし、移動を最適化するための、センサーデータプラットフォームという立ち位置になれればと思っています。IoTのパワーはまだまだ未知数ですよね。」

「移動」は経済を回す原動力

長島:「私は、『移動は経済を回す』と信じていまして。移動送料が増える=そこに住む人たちの収入も上がる、少なからずともそういう相関関係はあるはずなんです。
その一方で、世の中的には、VRもあればチャットもあるしフェイスタイムもあるし、移動しなければお金もかからないし便利だ、みたいな会話がされている。でも、それだと感覚が鈍るし、経済も回らないし、なんか違うんじゃないかって思うんですよ。なので、移動ならではの価値をクローズアップしてもっと訴求していかなければと思っています。」

北川:「移動は人間の根源的な欲求なので、0になることはないと信じていますが、移動の価値をもっとフィーチャーして効率化できるといいですよね。それは私たちのコンセプトでもあります。」

長島:「移動は健康とも繋がるじゃないですか。いま、高齢者の間で、座ったままでボールを打ち合う棒サッカーというスポーツが人気なんですけど、座ったままなのに結構、足腰が鍛えられるらしいんですよ。そして何よりもみなさん楽しんでいる。それがもっとも大事なことです。健康寿命が上がれば心身ともに生き生きしてきますし、そういう人がたくさんいる社会って魅力的ですよね。なので、動くことをどうマネージするか、どう増やして行くかを考えていくべきだと思うのです。」

北川:「スマートドライブは移動体のIoTセンサーデータプラットフォームを目指していますが、移動にフォーカスする中で、移動のデータ分析は色々なものに紐づくと気づきました。事故リスクの予測だけではなく、将来的には移動から派生する様々な予測分析ができるようになると思っています。その実現のためには、ローランド・ベルガー社が触媒となって足元から一緒にプロジェクトを始めることによって、どこと繋がれば実現可能かを一緒に考えられるといいですね。」

長島:「いま、スマートドライブ社にはとあるプロジェクトでお声かけさせていますよね。それは、そのクライアント様からいただいた2つの依頼がフィットすると感じたからなんです。依頼内容のひとつが、社用車にコストがかかりすぎているし、稼働率が悪いから改善したい。それによって全体的なコストの適正化を行いたいということ。もうひとつは、今までひたすら自走してきたので、他者と交流しながら新しい価値を生み出していきたいということでした。
そこで私たちは、単純に社用車の台数を減らすだけじゃなく、移動中の付加価値、移動している中で役に立つことを見つけていきませんかと提案しました。それに、せっかくなら、色々な領域の人たちを巻き込んでみんなでやったら楽しいし可能性が広がるんじゃないかと考えたんですよ。そこで、スマートドライブをはじめ、様々な会社に声をかけました。彼らと組めば、部品メーカーが既存の世界から一歩踏み出し、新しいビジネスを考える時の刺激になる、そして乗るたびに何か新たな刺激が降ってくるというような状況が作れるだろうと思ったからです。
普通だったら専用の画面に情報を入力して、きちんと手順を踏みながら設定するところを、ビジネスのチャット上で配車依頼のスタンプを送るだけで完了する。そんな取り組みを部品メーカーの方と進めて行くと、『そんな方法もあるんですね!』という感嘆の声が上がりますし、刺激を受けて、じゃあこんなこともできるんじゃないかというアイデアも広がる。プロジェクトはどんどん活性化していきます。」

北川:「面白いですね。いままではSIerに頼んで専用のモノを作る時代でしたが、こうした取り組みによって、今後はモジュール化されたものを組み合わせていくフェーズに移行していくのではないでしょうか。
スマートドライブ自身は、自社サービスやネームを前面に押し出すのではなく、インテルさんのように気づいたら様々な製品の中にチップとして組み込まれているとか、意外と知らないところで裏側のシステムを支えているとか、移動のカテゴリの中で影の力持ちみたいな存在になれればいいなと思っています。まさに、長島さんがお話しされた組み合わせ中のひとつとして活用いただければ幸いです。」

長島:「スマートドライブはモジュールとして確立されていますし、続々と機能拡充もされていますので、さまざまなニーズにフィットできる、非常に素晴らしいIoTサービスだと思っています。」

得意技が企業とヒトを惹きつける

北川:「ちなみに、スマートドライブのサービスで改善すべきところはありますか。」

長島:「そうですね…サービス自体は素晴らしいと思っています。ただし、前々から私自身が懸念していることがひとつ。全般的に言えることですが、効率化はGDPを下げる要因になるという問題意識があるんですよね。給料をあげようと世間では言っていても効率化によって人手を減らそうとしていますし、シェアリングが流行っていますが車を減らせば製造する人に影響が及びます。
状況を変えるには、減らした分を拡大再生産するという感覚を持たねばなりません。たとえば、管理していた車を200台から180台に、20台分を減らしたとしましょう。その20台分にかけていたコストを浮いたままにせず、そこにかけていたコストでより大きい価値を生めば、新たに“生産”されます。」

北川:「いまだと大企業のほとんどが利益を投資せず、内部留保にされてしまいますもんね。」

長島:「そうなんです。サプライヤー取引が減ると自社の利益は上がりますが、それは考え方として正しいとは思えません。工程改善をしたら、そこで生まれた余剰分や持ちえる得意技を生かして新しいモノを生み出していくべきです。それが新たな価値となり、次のプロジェクトが立ち上がるきっかけにもなりますので、私たちはモジュールを組み合わせる時にその部分もセットでプロデュースしていかなくてはならないと思っています。」

北川:「スマートドライブも、一視点だけのソリューションではなく、全体感を見ることができるようにしていきたいです。」

長島:「得意技があれば次のステージに行って、新たな議論が始まるはずです。ですので、要素技術を突き詰め、さらに磨きをかけていって欲しい。キラリと光る要素技術を持っていれば、それだけで他の要素技術を引き付けますから、自然と繋がりが広がっていきますよ。」

北川:「私たちスマートドライブも技に磨きをかけて繋がりを増やし、さらなるバリューを生み出していきたいと思います。本日はありがとうございました!」

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