自動運転に求める大切な2つのこと

画像参照元:レスポンス

こんにちは!モーターエンジニアのYOSHIです。
つい昨年まで自動車メーカーにて「走る・曲がる・止まる」といった車両運動性能に関するシャシーエンジニアをやっていた経験から、今回はメーカーの内部から見た自動運転という切り口で書いてみようと思います。

運転支援システムの長所

画像参照元: オートックワン

日産セレナに搭載されているプロパイロットシステム(運転支援技術)の評判がすこぶる良いです。現時点で唯一装着しているセレナの販売台数も7か月で6.5万代台と、日産の国内販売の稼ぎ頭となっています。ただ、プロパイロットシステムの装着率約55%とのことで、思ったよりも装着率が低いなという印象を受けましたが、まだまだ認知が足りていないのかもしれません(もしかするとメーカーオプションでプラス24万円との価格がネックかもしれませんが)。

このプロパイロットシステム、クルーズコントロールによる車速維持に加え、コーナーでハンドル操作からも解放されるのは、長距離移動をするドライバーへは、絶大な疲労軽減として役に立ちますよね。ただこれには、ハンドルに手をのせておく必要がありますので(保持している力をセンサーが読み取っていて無負荷だとシステムがキャンセルされます)、両手放しで別のことをするのはNG。いわゆる”完全な自動運転”ではありません。この点を誤解されないよう、メーカーもディーラーも、ユーザーへの呼びかけを頻繁にしていますので、耳タコとおっしゃるかたもいるのではないでしょうか。

この運転支援技術(レベル3といいます:人と車が50%ずつ責任を追う)とは、とある条件下のときに、アクセル、ブレーキ、ハンドル操作をドライバーの代わりに行ってくれるというシステムです。ある条件とは、高速道路上で同一レーン内、かつ白線が認識できる状況(夜間の雨や雪道は適用外)であれば、一定速走行や前車への追従走行、渋滞列までに自動ブレーキにて停車、をクルマが自動でコントロールしてくれます。

というのも、先日(2016年11月)起きました、「プロパイロットシステム」の体感として試乗走行中の追突事故については、この条件を満たしていませんでした。自動でブレーキがかかるエマージェンシーブレーキが働くものだと誤認してしまったディーラー営業マンが、試乗していたドライバーにブレーキを踏まずに進んでも大丈夫、と指示。その時間は、暗い夜間でかつ雨が降っており、システムは保障していない条件の下で、事故が起きました(しかも追突されたクルマは黒だったようです)。この一つの誤認事故の影響で、「自動運転のついたクルマが止まらずに事故を起こした」という風評がおきかねない状況は、非常に残念でなりません。

自動運転開発の現在

画像参照元: Waymo

そもそも自動運転技術は、何十年も前から自動車メーカーで取り組まれており、どのメーカーもテストコースのような環境であれば、ハンドルを握らないで走行をするデモンストレーションはできるレベルまでできていました。(実は私も10年以上前、筆者の私も日産のテストコース勤務時代に、某国の要人達をテストコースでもてなすという、超極秘イベントに遭遇したことがあります)

自動運転といっても全てが真新しいことではなく、これまでに存在していた、いくつかの既存制御技術を合わせて作り上げています。車間距離をカメラ等で判別し、前車との距離を保ちながら車速調整するクルーズコントロール制御と、走行レーンの左右の白線を認識し、ウインカー操作をしていないのに逸脱しそうになった時に、ドライバーへ警報音やバイブレーションで注意喚起をする機能など、すでに存在していました。自動運転はそれらの既存技術に、ステアリング操作への制御を加えて、新しいものを生みだした、という訳です。

ここ数年は、もともと自動車メーカーではない企業が、自動運転(レベル4:100%車が責任を追う)のビジネス戦略として、積極的に開発を続けています。とくにシリコンバレー近辺では、Google(現 Waymo)および複数のベンチャー企業や大学研究期間が、小型無人車やトレーラーによる公道実験を今日もしています。ソフトウェア開発に関しては、やはり彼らの方が技術的にも長けており、従来の自動車メーカーは苦戦を強いることになるのではと予想できます。が、自動車メーカーでなければできない部分があると考えます。

自動運転に求めること

参照元: MarketWatch

もし自動運転(レベル4)が実現するならば、我々にとって大切なことってなんでしょう?

交通事故が起きないこと?もちろん「安全性」は大前提ですよね。
人は疲れや不注意によってどうしてもミスが起きてしまいます。その点を、何度やっても同じ答えを出してくれるクルマ側(コンピュータ)に運転判断を委ねる。無事故(避けきれないミスは除く)でいたいですよね。 「安全」は、各自動車メーカーやIT企業がこぞって日々研究しているジャンルです。自動運転環境での交通ルールをもとにした『秩序』を守らせて、交通渋滞を減らし、事故を無くし、完全な交通世界に近づけること。これは必ず実現すると考えられます。

もう一つは?それは「快適性」です。
(※ここでいう快適性は、空調や車室内の明るさのことではありません)

乗り物の一つの役割として「ヒトが快適にかつ速やかに目的地へ移動できる」ことです。
行きたいところへ「安全に」「快適に」移動できる、これが自動運転にもとめたい2大目標です。

たとえばコーナーに入ったときの車両の横方向のぐらつき(ロール変化)を抑制はどうやっておこなうのでしょうか?それは、コーナーに入るかなり手前から、ヒトが気付かないくらい、ゆっくりとハンドル操作する必要があります。たとえばブレーキ、人が不快・恐怖を感じないレベルがどこで、どのように制動力を利かせたらよいでしょうか。これも、官能評価や実験を何十年も積みかさねてきた自動車メーカーでないとなかなかできませんよね。しかも各自動車メーカーそれぞれで勘所があって、それらは1,2年では決して身につかないノウハウの塊です。

現時点の自動運転で、この「快適性」まで言及して開発できているメーカーがあるか?というとおそらくNOなのでは?と推測します。

まとめ

画像参照元: WIRED

運転支援システム(レベル3)や自動運転(レベル4)を開発するうえで、今後「安全性」と「快適性」を高次元で実現していくことは、どのメーカーも努力をしていくと思います。しかも、仕向け地(欧州市場か日本市場など)によってそのレベルも変わってくるでしょうし、それぞれの国に対応した適合が必要になってくるでしょう。”自動運転システムがついていることが価値”の時代から、”自動運転の中身で選ぶ”ようになる時代が、そう遠くないうちに来ます。

スマホアプリなどで無人の自動走行車を呼ぶことができるとしたら、そのときに各メーカーの自動運転車を好きに選べるとしたら、あなたはどこのメーカーを選びますか?車のブランドだったり、清潔な車内だったり、セキュリティだったり。はたまた車に乗り込んだらおしぼりとお茶とお茶菓子がそっと出てきたら?考えるだけでもわくわくしますよね!

「ヒトが快適にかつ速やかに目的地へ移動する」。そこでは日本流の“おもてなし“が効いてくるのかもしれませんね!

 

ライター:吉川賢一
肩書:モーターエンジニア&ジャーナリスト、兼YouTubeクリエイターYOSHI
12年間、日産自動車にて操縦安定性-乗心地の性能技術開発を担当。
自動車のありたい姿「長時間乗っても疲れず安心できる」をテーマに操安-心地性能を開発。
10年後の次世代車両の先行開発を経て、プロジェクト業務にてV37スカイラインやフーガ等のFR高級車開発に従事。
車両評価スキル、および実験計画スキルを元に、業務遂行マネジメント力も習得。
その後、一般には知られていないクルマや業界の「本音と建前」を楽しく情報発信し、世の中に貢献して行きたいと考え、2016年10月末に日産自動車を退職。
モーターエンジニア&ジャーナリストのキャリア形成を目指している。

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