自動車とコンピュータの今昔 – 電子制御化されていない自動車

テクノロジーが急速に発展した現代において、販売されている車のほとんどがコンピューターによって何らかの制御が行われています。

今の時代であれば「そんなの当たり前」だと思われるかもしれませんが、1990年代まではまだ、そうした「コンピューターの支配下」に置かれていない車も数多く販売されていました。

今回は車の歴史をテーマに、現在の車とは少し違う付き合い方をご紹介したいと思います。

車にコンピューターが導入されたキッカケ

電子制御と車

Photo credit: ars666

冒頭でも触れたとおり、いま新車で販売されている車はまず間違いなくコンピューター制御によって動いています。

例外は昔の車を複製したレプリカなど、ごく一部にすぎないでしょう。

車のコンピューター制御は1960年代から、国産車であれば1970年にいすゞ  117クーペの一部に導入されたのが始まりです。初期の電子制御は、エンジンに燃料を噴射する「インジェクター」という装置を操作するためのものでした。

1970年代後半からはスポーツカーや高級車だけでなく、量産大衆車にも装備されるようになっていきます。

当時は排気ガスに含まれる有害ガスが問題とされた時期です。また、中東での戦争の影響で、石油の輸入に支障が出てガソリン代も跳ね上がるオイルショックが起きた時期でもありました。

そうした理由で、低燃費、かつ有毒ガスの少ないエンジンが必要になったのです。燃費を良くしながらパワーも出て、かつ不完全燃焼で排ガスに有毒物質が生じるのを防ぐため、燃料を調節することが求められました。

その相反する内容を、アクセルの踏み加減や速度など、車両状況に対応してコントロールするためコンピューターが導入されました。

今ではエンジンだけではなく、ハンドルやオートマチックミッション、ブレーキなど、全てがコンピューターで統合して制御されるよう、進化しています。

機械式と電子制御

そうしたコンピューター制御のことを電子制御と呼びます。

燃料調整に使えば「電子制御式燃料噴射装置」と呼び、アクセル操作に使えば「電子制御スロットル」と呼びます。車に詳しい人たちは、それぞれ「インジェクション」、「電スロ」と訳したり、略したりしますね。

それに対して、昔ながらのコンピューターによる制御を介さないメカニズムは「機械式」と呼ばれます。

機械式の場合は調整用のツマミなどがついていたり、部品を組み替えることで最適化しますので、電子制御に比べると少し面倒です。しかし、電子制御がまだ高コストだった頃には、軽自動車やコンパクトカーで機械式の車はだいぶ後まで残りました。1990年代までは一切コンピューターの無い、機械式の車がまだ数多くあったのです。

もちろん性能は電子制御に劣りますが、性能より安価であることが求められた時代では、それで良かったのでした。

次第に電子制御のメカニズムが大量生産されるようになると、安い車でも機械式を続けることで、部品を別に作るコストが生じます。それならいっそ、全部電子制御に統一してしまえば、全体的に車が安くなるため、2000年頃を境に機械式の車が日本から消えていったのでした。

生き残った「機械式」の車に乗ってみる

機械式のクルマは1990年代まで作られていたので、2016年現在でもまだ現役のものが残っています。

趣味性の高いヒストリックカーや、オーナーが特別に愛着を持っている車は特にそうです。これらはエコカー減税があろうとも、国から補助金が出ようとも、買い替えの対象になりませんでした。

筆者が乗りついできた、ダイハツの古い軽自動車もそんな1台です。

1989年式ですから、もう27年オチの古い車で距離計も5桁しか無いので、実際には何十万km走っているのかわかりません。そんな歴史ある古い車ですが、機械式でコンピューター制御が入っていないエンジンは、今でも好調を保っています。

エンジンだけではなく、5速ギアのマニュアルミッションですからギアチェンジは手動で、コンピューターは不要です。

今の車には標準装備が当たり前の、横滑り装置や、凍結路面などでブレーキがロックしないABSも無いので、コンピューターは必要ありません。

エンジンオイルが少なくなったり、サイドブレーキを引きっぱなしにしていれば警告灯くらいは点灯しますが、それも機械的にスイッチが入るだけです。

現在の車では、何か異常があれば場合によってはコンピューターが「セイフティモード」を選択します。それでパワーダウンしたり、エンジンをかからないようにしてしまいますが、そうした制御もありません。

こうした車は「自分で動かしている」という濃厚な気分が味わえる一方で、コストを極力かけずに乗るには、付き合い方も少し独特です。

「機械式」はエンジンのかけ方から違う

Photo credit: Bill Selak

最近車に乗るようになった人だと、そもそも「エンジンをかけるためにキーをひねる」という動作をしたことが無い人もいるのではないでしょうか?

現在は電波を飛ばすキーを持ったまま車内に入れば、車が自動的に待機モードに入り、スタートボタンを押せばエンジンが始動するものが増えています。

そのためキーを取り出して差し込み、エンジンスターターを動かすためキーをひねる、という動作すら面倒に思う人もいるでしょう。

それも電子制御されているエンジンならば簡単ですが、機械式はさらに面倒なのです。

機械式の車の多くは「チョーク」という、エンジンに入れる燃料と空気の割合を変える装置を持っています。

これがエンジンの暖まり具合によって、その熱で自動的に調整される仕組みの「オートチョーク」なら楽です。それすらも手動になっている「マニュアルチョーク」の場合は、チョークのノブを引いて、最初はエンジンに空気より少し濃い目の燃料を入れる必要があります。

筆者がマニュアルチョークのクルマに乗っている時は、以下の「儀式」がありました。

まずキーをひねり、燃料タンクが置いてある後ろから燃料ポンプが動いている音を確認します。次に、チョークのノブを引いて、1~2回軽くアクセルを踏んで燃料をエンジンに送るのです。

それからキーをさらにひねり、エンジンスターターを始動させますが、新しいクルマのように一発でエンジンはかかりません。エンジンスターターの「キュルルルル」という音を聞きながら、アクセルを少し踏んだり緩めたりして、エンジンの中でガソリンが爆発する音を待ちます。

スターター音の中にエンジンの爆発音が聞こえてくれば、そこでゆっくりとアクセルを踏み足して、ひねり加えていたキーを戻すのです。

そのままエンストせずエンジンの回転が上がっていけば大成功! そのまま高回転までアクセルを踏み、1度大きく空ぶかしをします。

勢い良くエンジンと排気音が鳴り響けば、やっと「今日もクルマが目覚めてくれた!」と、感激と安心に包まれるのです。

古い機械式のクルマは、毎回エンジンをかけるたびに、こうした喜びを与えてくれます。

車がどんどんと便利になる昨今ではあまり想像がつかないかもしれませんが、ほんの十数年前まではこれが主流だったんです。

機械式のクルマを安定して安く乗るなら

万事このような形で、コンピューターがやるべき事を人間が行いますから、乗り方にも工夫が必要です。なるべく維持費も安く、故障も無く安定したコンディションを保とうと思えば、なおさらだと思います。

まず普通に走っていても、現在の車と違って、コンピューターが勝手にアクセルを踏んだ量や、燃料の量を調整してはくれません。あくまでアクセルを踏めば踏んだだけ、燃料が入っていきます。燃費を良くしようと思えば、ドライバー自身が燃費を意識したアクセル操作をしなければいけません。

アクセルを踏む量は、車が減速せず速度を保てる最低限だけ。アクセルを戻す時も、再加速が必要にならないよう、道路の先に注意しながら考えます。

今の車はアクセルを完全に緩めれば燃料をカットして燃費を良くしますが、そのような機能もありません。そのため、アクセルを踏んだり緩めたりして無駄に燃料を消費せず、極力一定に保つのがとても重要です。

オイルや電気製品にも気を使う

エンジンオイルも、今の車が入れるものとは少し違います。

ディーラーなどで入れる純正オイルは、0W-20や0W-30など、温度が低くてもサラサラで柔らかい、というより水のようなオイルを使います。

高性能車では別ですが、一般の車ならそうした柔らかいオイルの方が抵抗が少なく、燃費がいいからです。これは部品の組み立て精度が上がったので、柔らかいオイルを入れても問題無い、ということでもあります。

しかし、古い車の場合は元々それほどの精度が無いのと、使い込んで部品がすり減り、オイルがにじみ出る隙間なども大きいです。そのためある程度固いオイルを入れないと、にじみ出たオイルがガソリンと一緒に燃焼して白煙を吹いたり、オイルが異常に減ったりします。

古い車なら、ターボが無ければ最低でも5W-30、ターボ車なら10W-40は入れてあげたいですね。燃費は多少落ちますが、その方がエンジンも長持ちするので、トータルの維持費では安上がりです。

電気製品も同様で、発電能力が今の車ほどありませんから、シガーソケットから電源を取る電気製品は控えめにする必要があります。「オルタネーター」と呼ばれる発電機やバッテリーも、経年劣化で弱っていることが多いです。

分解整備を受けて機能を取り戻した「リビルド品」に交換してあげれば、エンジンに送られる電気も安定しますから、結果的に燃費も良くなります。

最終的には、面倒を見てくれるお店も不可欠

Photo credit: USAG- Humphreys

ここまでの説明で、わずか十数年の間でも車がどのように変わったのか(いかに便利になったかが)わかっていただけたのではないでしょうか?

「あえて古い車にも乗ってみたい」という方向けに、最後にひとつ、大切なことがあります。それは、古い車でも面倒を見てくれる、柔軟な対応をしてくれる車屋さんを見つけておくことです。

そのメーカーの系列販売店(ディーラー)では、古い車のサポートを打ち切り、整備や修理ができないことも少なくありません。そうした販売店出身の整備士がメインの整備工場なども、同様です。

いわば古くてコンピューターが入っていない車というのは、整備する側からすれば滅多に相手にしないイレギュラーにほかなりません。

しかし、中にはそうしたイレギュラーへの対応に慣れたレストア(古いクルマの復元)や、レース用車両の整備をメインにした車屋さんもあります。そうした車屋さんとお付き合いしておくと、日頃の工賃は少し高めでも、結果的にたくさんお金のかかるトラブルは避けやすくなります。

車の歴史を知ることで、より充実した車ライフを!

ここ数年は自動運転車をはじめ、テクノロジーの発展とともにものすごいスピードで進化し続けている車。車がどのように変わってきたのか、昔の車と比較してみると当たり前のように思っていたことが実はすごい発明だったということや、知らなかった機能に気づくきっかけにもなります。

いろいろな車や車関連のサービスがある今だからこそ、車について理解して自分に合ったものを選んでください。

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