世界が注目している?中国で進むスマートシティの取組とは

世界が注目している?中国で進むスマートシティの取組とは

IoTやビッグデータなどの先端テクノロジーを活用して各インフラサービスを効率的の運営・管理し、そのうえ環境にも配慮しつつ市民生活の質を高める。そのようにして持続可能な経済発展を目指すのがスマートシティ構想です。すでに世界中でプロジェクトが動き出しているスマートシティですが、中でも100を超える都市で具体的かつ活発に取り組みが進んでいるのが世界第2位の経済大国の中国です。

今回は、今や先進国となりつつある中国における、スマートシティ/スーパーシティ構想やその概念について、具体的な事例を交えて詳しく解説します。

実は先進国?中国のスマートシティ/スーパーシティ構想

 

スマートシティ構想は、2050年には約95億人を超える世界人口予想を受け、エネルギー消費の爆発的増加を懸念したことから、IoTなどの先端テクノロジー活用による省電力・省エネ化により、限りある資源を次世代に残していこうという考えから生まれたものです。そして、人口増加が著しい中国においては、かなり早い段階からスマートシティへの取組が動き出しており、2006年の「第11次五ヶ年計画」ではエネルギー消費量20%減など、具体的な目標値がすでに盛り込まれていました。

 

2010年には、パイロット都市として、後に紹介する武漢市・深セン市でスマートシティ建設が開始すると、次のように中国は国を挙げてスマートシティ構想を具体化するスピードを速めました。

 

  • 2011年・・・第12次五ヶ年計画を交付、高効率エネルギー産業の開発や、スマートグリッド設備の建設を明言。
  • 2012年・・・スマートシティ開発プログラム へ参加する都市の登録資格要件の制定。
  • 2014年・・・国務院、「全国新都市計画」を発表、同8月「スマートシティの健全な発展の促進に関する指導意見」を交付。
  • 2016年・・・第13次五ヶ年計画を公布、初めてスマートシティの取り組みを計画内で明言。IoTやビッグデータなどを発展させた、都市インフラのスマート化や公共サービスの利便化。

 

その結果、中国国内で2018年時点における建設中のスマートシティは500を超えます。これは世界一の経済大国アメリカの約12倍に相当し、ヨーロッパ各国はもちろん、成長著しいインドや日本では足元にも及ばない、スマートシティ先進国へと成長したのです。

出展:環太平洋ビジネス情報「スーパーシティ開発で先行する中国

 

 

スマートシティの開発においては、高度なIT技術を持つ民間企業との連携が不可欠ですが、政府による強固な主導体制の元、スマートシティ開発の主力として同国の4巨人企業、「PATH」が積極的に参加したことが大きいと言えるでしょう。「PATH」とは、平安(Pingan)・アリババ(Alibaba)・テンセント(Tencent)・ファーウェイ(Huawei)の頭文字をとった総称です。これら巨大企業が業種の壁を越え、政府と協力体制を築き上げてきたことで中国はスマートシティ構想の旗手になり得たのです。

中国におけるスマートシティの概念

スマートシティ構想は、世界中の国々が取組みを進めていますが、なぜ中国だけが諸国を圧倒的に引き離すほどの成長を遂げたのでしょうか。それは日本や欧米とは大きく異なる中国ならではの国内事情に秘密がありました。

2000年代に入り、中国経済は飛躍的に発展します。併せてエネルギーや交通インフラが整備され、大都市部における市民の生活水準が飛躍的に向上しました。しかし、あまりに広大な国土ゆえ地方都市では同じような発展ができず、各インフラを一から整備する資金も資源もノウハウも足りないまま、大都市と地方との生活格差が深刻な問題となってしまいます。

そんな中、少ない資金で効率の良いエネルギー消費や、シームレスな移動を可能とするスマートシティ構想が、元々インフラ整備の行き届いていた欧米・韓国・日本より、必要性や実現性の面において見事、「国内事情にハマった」のです。

“移動”に焦点を絞って、もう少し分かりやすく解説しましょう。家から目的地まで電車やバスなど既存のインフラでスムーズに移動できる日本で、「より一層スマートな移動を提供します」と声高に叫んでも、市民の琴線にはなかなか触れないもの。一方、地方ではバス・電車の数時間待ちや日常的な遅延が当たり前、都市部では自動車が集中し大渋滞が頻発する…そんな社会問題を抱えていた中国では、「もっとスマートに移動できますよ」と号令をかければ、多くの都市や企業が手を上げるのも至極当然のことかもしれません。

スマートシティという概念自体が異なるわけではなく、スマートシティ化によってもたらされる市民生活の向上が望まれていること、そして参画によって企業のビジネスチャンスが望めること、それが中国と他国との違いです。

具体化・実用化が著しい中国のスマートシティ事例

前項まで、中国においてスマートシティの実現スピードが早い理由について解説しました。この項では、現在、絶賛進行中である具体的なスマートシティ開発事案について代表的な事例を紹介しましょう。

事例1:国家をあげての大プロジェクト!河北省・雄安新区

日本や欧米各国と比較して中央政府の求心力が強い中国において、その成功例と言えるのが、習近平総書記肝いりの「千年大系」として2017年、保定市の雄県・安新県・容城県などに設置された、国家級新区「雄安新区」です。

同地区はもともと果樹園が広がるのどかなエリアでしたが、先端テクノロジーを有するIT企業の誘致や研究機関を集積する計画が現在進行中であり、130km離れた北京市の非首都機能(教育・医療・行政の一部)の移転先となる予定です。一種の「学術研究都市」のようなものかと思いきや、スマートシティ化も着々と進んでおり、同地区内では百度(バイドゥ)が主導し、ホンダ・BMWなど自動車大手が参画する「アポロ計画」による自動運転バスが巡回。

また、目を移せば自動小型清掃車がゆっくりと動きながら地面を掃除し、雨水循環システムを採用しリサイクル可能な素材でできた建物が建っています。この建物は最新IT技術を取り入れられるよう、10年スパンでの建て直しを前提としています。

レストランやマクドナルド、スターバックス、書店、映画館など、生活に必要とされる店舗が一通りそろった街の中でもっとも観光客から注目を集めているのが、アリババに次ぐ中国ネット通販2位の位置を占める、京東集団の「無人スーパー」です。店頭にあるQRコードを「微信(ウィーチャット)」のアプリで読み込んで顔写真を登録すれば、顔認証によりゲートが開きます。そのまま入店して品物を手に取り出口に行くと、商品に貼られたRFIDタグを読み取り、顔認証と組み合わせてウィーチャットで支払いが完了。

現時点ではまだハコモノ優先ですが、国内大手企業だけでなく日系企業であるパナソニックや日立製作所も事務所を開設したり、2020年には首都・北京との間で「京雄都市間鉄道」が開通予定だったりするなど、中国政府は2050年に人口1000万人のスマートシティが出来上がるとしています。

事例2:新型コロナからの復興!河北省・武漢市

最近ではすっかり「新型コロナ発祥の街」というイメージが先行している武漢市ですが、パイロット都市として中国政府が真っ先に目を付けた都市でもあります。2020年4月には、テンセントが投資強化による連携を表明しました。同社は、デジタル行政・スマート教育・スマートモビリティ・AI・セキュリティの分野で武漢市と緊密に連携し、

  • テンセントスマート教育基地・テンセントスマートモビリティ基地の設立。
  • 自動車産業デジタル化のための人材育成。
  • コネクテッドカー分野におけるイノベーションやインキュベーション促進。

などの推進により、今後3年以内に湖北省での人員規模を現在の4倍に拡大するとしています。

また、中国で次世代高速通信規格「5G」の基地局建設が活発ですが、省経済情報技術局によると、河北省は新型コロナで疲弊した経済復興の起爆剤とすべく、省都武漢市を中心として5G向け基地局を今年度内に5万局設置する計画です。

通信インフラの整備こそ、IT技術をフル活用するスマートシティ建設の肝となります。首都・北京ですら3万局の設置計画に留まっていますから、同省がいかに武漢市のスマートシティ化に力を入れているかが良くわかるでしょう。

事例3:IT特区として飛躍中!広東省・深セン市

深セン市を中心とする珠江デルタは、長らく世界の工場として中国経済を牽引していましたが、労働力不足と賃金上昇を背景に労働集約型産業の国際競争力低下が顕著になっていました。

そんな中、深セン市はファーウェイ・ZTE・テンセン・DJIなどの国内大手企業を担い手に、イノベーションによる産業高度化で成果を上げ、アップル・マイクロソフト・クアルコムなど海外企業の誘致に成功。「アジアのシリコンバレー」と呼ばれる発展を遂げました。

深セン市が、わずか30年で30万人の人口から1,400万人を超える大都市に発展を遂げた理由はスピード感です。他国・他地区だと数週間以上かかる試作品開発も、深センに持ち込めば数日で完成するとさえ言われています。業界内で「深センスピード」とも呼ばれる圧倒的な製造速度は、金融・通信・運輸・IT業界にも共通しており、政府によるスピーディーなベンチャー企業支援施策により、現在では5万を超えるファンドが新技術開発に48兆円超の資金を投じています。

その結果、深セン市は先進技術を提供する世界的IT都市であると同時に、無人店舗の普及とキャッシュレス化や顔認証による決済の導入、無人運転システムを用いた「アルファバス」の運行など、IoTと生活インフラが密に結び付いた最先端技術を実感できる、スマートシティとしてもすでに機能し始めています。

このように深セン市の爆発的成長は留まることを知りませんが、その秘訣である「深センスピード」を支えているのは、近年参入した大企業でも国際的ベンチャーでもなく、「作坊」と呼ばれる小規模・零細の工場にほかなりません。作坊は、元来中国の得意技である「大規模・大量生産・薄利多売」には不向きですが、精密なIT機器などを短期間かつ正確無比に作り上げる能力に長けており、この特徴は日本のいわゆる町工場にも共通します。

深セン市は今や中国、いや世界経済を牽引する存在まで発展しており、日本も乗り遅れまいと2018年、ジェトロによる日中関係機関との提携を行い、深セン市でスタートアップ起業を支援するプロジェクトを開始しました。

日本も全く同じようにとは言いませんが、国内の町工場に注目して資金を投資することで、「日本ならではのスマートシティ」を形作るヒントが見えてくるかもしれません。

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