自動運転車に向けた、各社の運転支援システム開発状況まとめ

自動運転車に向けた、各社の運転支援システム開発状況まとめ

「自動運転」とはよく目にする言葉ですが、現在本当の意味での自動運転、つまり「ドライバーがいなくても出発から到着まで車が全自動で行ってくれること」を実用化して販売しているメーカーは皆無です。

今はまだそのはるか手前の「運転支援システム」の段階。とはいえ、その技術はどんどん進歩してきています。

今回は各社がどのような運転支援技術を開発しているのか、紹介します。

フォードの自動運転システム

自動運転車の研究開発に積極的に投資をしている企業の1つが、フォードです。

現状でフォードのもっとも優れた運転支援システムはヨーロッパで販売されている「モンデオ」(北米名フォージュン)に搭載されている歩行者検出機能付き自動ブレーキ機能。

レーダーとカメラを併用して歩行者や障害物の至近距離を通過しそうな時に警告し、ドライバーが何も対応しない場合は自動ブレーキを作動させるというものです。

スピードが約80km/h以下の好天時にしか使えないなど性能に限界はあり、まだまだこれからの技術ではありますが、安価なファミリーセダンに採用されたということで評価されました。

加えてフォーカスなどには「アクティブ・パークアシスト」や「フロント&リバースセンシングシステム」が搭載されています。

前者は超音波センサーで駐車スペースを検知、自動でステアリング操作を行って縦列駐車を支援するもの。後者は前後の障害物を知らせるシステムです。

さらに長距離高速巡航時に前方の車両と一定の車間距離を保つため加減速を自動で行う「アダプティブ・クルーズコントロール」や、車線逸脱警報装置も一部車種に装備しています。

フォードから間もなく登場する次世代技術

Photo credit: Kārlis Dambrāns

加えて今後2年で次世代の運転支援システム実用化を目指していることを発表。その目玉が後退時の自動ブレーキです。

後退時にドライバーから見えない位置に歩行者や障害物があれば警告を行うシステムは多いですが、これを無視した際に自動でブレーキをかける装置をフォードは目指しています。

さらに前方で停止していたり低速で極端に速度差のある車を回避する際に、ハンドリングをサポートする「衝突回避操舵支援システム」もあります。

緊急時のパニックで正常な運転が不可能になったドライバーに代わり、車そのものが主導権を握る装置で、一時的に自動運転に近いことを行うものです。

この「衝突回避操舵支援システム」はまだ導入前段階ですが、緊急回避操作というのは冷静な操作ばかりではなく、周囲の交通状況や路面状況の把握を行い、瞬時に正しい判断をくださねばなりません。

そのためには相当高度なセンサーを搭載しないと、回避した途端に対向車や他の障害物に衝突するなど、かえって二次被害を拡大させる懸念があります。その懸念をクリアするだけの技術をフォードは持ちつつあるということなのでしょう。

道路を逆走した時に音声と視覚で警告する逆走警告システムも近い将来搭載されるとのこと。フォードは日本から撤退してしまいましたのでこの新機能を日本で見る機会はありませんが、日本でも問題になることの多い逆走。システムで制御できるに越したことはないですよね。

ここからは、フォード以外の運転システムの現状とこれからについてもご紹介します。

GMの運転支援システム

Photo credit: Michel Curi

新型EV (電気自動車) のシボレー Bolt (ボルト)で自動運転の実証実験車を作り、提携した配車サービス「Lyft」で無人配車サービスを行おうとしているのがGMです。

しかし運転支援システムに関しては保守的。高速道路で前走者との車間をセンサーで検知して距離を置き、車線を逸脱しないようスロットルやステアリングを制御する「クルーズコントロールタイプ」の運転支援もこれから市販車に装備します。

既にテスラ以外に日産が新型セレナで市販しているのと同じ程度のシステムで、2017年にキャデラックへ搭載して、北米と中国で発売するのが初採用の予定です。

自動ブレーキの採用も進んでいませんでしたが、2022年までに北米で販売される主要自動車メーカー10社が、車両総重量約3,850kg以下の新車全てに自動ブレーキ装備が義務付けられますので、いずれ装備が進むでしょう。

テスラの運転支援システム

Photo credit: cdorobek

言わずと知れた、世界でもっとも運転支援システムを搭載した車を販売し、走らせているメーカーがテスラです。

現状では「オートパイロット」の名とは裏腹に、現在でもまだドライバーがハンドルを握っている必要のあるレベル2自動運転、つまり「運転支援システム」のレベルに留まっています。

それでもセンサーが機能する範囲であればかなり高度な自動運転をしているのは事実であり、今後のテスラ車にはさらに高度な「オートパイロット2.0」が搭載される予定です。

これでテスラはレベル3と言われるような、いつでも運転可能なドライバーが乗車している必要はあるものの、ハンドルを握っている必要までは無い、極めて「自動運転」に近いレベルに到達します。

具体的には危険回避操舵や車線変更を伴う追い越し機能などが実装されるので、ドライバーが瞬時にコントロールを取り戻す必要性が無いレベルに到達するのです。

ただし、実際そこまで達するのはオートパイロット2.0搭載後、1年ほどかけて実走データを取り込み、システムが熟成されてからになります。

トヨタの運転支援システム

Photo credit: Amila Tennakoon

オートクルーズや自動ブレーキ、車線逸脱防止など他メーカーも採用している技術を除けばトヨタが先進的なのは「ITS Connect」と呼ばれる、インフラ協調型システムです。

同様のシステムを搭載した車との車車間通信、またはITS対応機器を装備した道路側の設備と交信する路車間通信により、ドライバーや車のセンサーの死角になる部分、あるいは視界外の遠距離情報を入手します。

それによって検知距離が非常に限られたり、悪天候では十分な能力を発揮しない車側のセンサーでは得られない情報を使えるというメリットがありますが、問題が無いわけではありません。

ITSインフラが整備されないことには意味が無いシステムなので、クラウンなどITS Connect採用車が存在するにも関わらず、現在では東京や愛知県など一部地域でしか使えないのです。

とはいえ自動運転の実用化にはITSの充実も不可欠ですから、現状でトヨタ以外の採用があまり進んでいないこのシステムも、時間をかけてインフラを整備していくことになるでしょう。

日産の運転支援システム

Photo credit: Automobile Italia

日本初、そして世界で初めてミニバンによるレベル2自動運転を、高速道路ながら達成しているのが日産です。

2016年に発売された新型セレナの「プロパイロット」がそれですが、安価なファミリー向け小型ミニバンで初採用というところに意義があるいえるでしょう。

日産がアピールしているのは「全方位運転支援システム」で、360度全方位の人・車・障害物をリアルタイムで把握し、回避する技術を持っています。

必要とあれば自動でブレーキをかけたりステアリング操作を行う事ができますから、まだ全てが販売されている車に搭載されていないにせよ、最初に紹介したフォードの次世代技術程度はほとんど持っていることになります。

メルセデス・ベンツの運転支援システム

Photo credit: Kārlis Dambrāns

日本でもっとも長距離巡行する機会が多い乗用車がファミリー向け小型ミニバンであれば、ドイツの場合はビジネスにせよプライベートにせよアウトバーンを疾走するセダンやクーペということになるのではないでしょうか。

メルセデス・ベンツの新型Eクラスで初採用され、今後採用が拡大していくであろう「インテリジェントドライブ」は日産のプロパイロットよりさらに高度な機能を持っています。

中でも象徴的なのは高速道路で追い越しのための車線変更を自動で行う機能と、縦列駐車支援システムです。

高速道路に限って言えばレベル3自動運転に限りなく近い運転支援を受けられますが、センサーの検知範囲とブレーキ性能の限界により、アウトバーンの一部に未だに残る速度無制限区間でも出せる速度は制限されます。

BMWの運転支援システム

Photo credit: Kārlis Dambrāns

オートクルーズや車線変更アシスト、自動ブレーキなどは他の主要メーカー同様に採用しているBMWですが、特徴的なのが2016年5月から日本でも販売している新型7シリーズから採用した「リモート・コントロール・パーキング」です。

幅の広い駐車スペース(車幅の1.5倍ですから、7シリーズでは3m弱)が必要などかなり限定的ではありますが、BMW専用ディスプレイ・キーを使って外からリモコン操作で駐車できます。

乗車していなくても駐車できるという意味で面白い運転支援システムですが、それだけ広ければ普通に止めた方が早いかもしれないという意味で、今はまだ技術アピールに過ぎないでしょう。

それだけ、似たようなものが多い運転支援システムでの差別化が大変だということでもあります。

フォルクスワーゲングループの運転支援転システム

Photo credit: Automobile Italia

グループ内でもフォルクスワーゲンがパーキングアシスト関連、アウディが自動運転や運転支援装置と開発を分担しているフォルクスワーゲングループ。

運転支援に関しては取り立てて「世界初」と呼べるような技術はあまり無いのですが、特徴的なのはフォルクスワーゲンが2020年の市販を目指して開発中のEVコンセプトカー「I.D.」に採用する駐車支援システムです。

駐車場入り口の指定位置に止まれば、アプリを使って立体駐車場で自動的に駐車スペースを探しますが、駐車場側に対応インフラが必要なのが現状の課題となっています。

ホンダの運転支援システム

Photo credit: Dennis Jarvis

レベル2自動運転にまで達してはいないものの「Honda SENSING」と統合されて呼ばれる安全運転支援システムの採用を随時拡大しています。

特徴的なのが前の車が停止していたり、障害物がある時の「誤発進抑制機能」や、先行車の発進を知らせる「先行車発進お知らせ機能」です。

前者は自動ブレーキの応用ですが、後者は渋滞や事故の原因になりがちな「先行車の発進見落とし」と、それに伴い慌てて急発進してしまう問題を抑制する効果があります。

運転支援システムとしては非常に地味ではありますがドライバー視点に立った非常に役立つ機能で、このあたりはさすがホンダ!といったところです。

スバルの運転支援システム

Photo credit: nubobo

「アイサイト」で自動ブレーキや映像解析技術が高い評価を受けているスバルですが、意外にもレベル2自動運転に近い運転支援システムには慎重でした。

例えば車線を逸脱せず中央をキープするレーンキープは、フォルクスワーゲンなどが既に60km/h以下の中低速域でも作動するのに対し、スバルはそれ以上の速度でしか作動しませんでした。

それが2017年デビュー予定の次世代アイサイト搭載車からようやく可能になり、自動車線変更やカーブでの減速などへの対応は2020年を予定しています。

買収してでもモノにする大メーカーと、そこまで踏み込めない小メーカー

最後に紹介したスバルは、自社で優れた技術を持っていても、それをなかなか市販ベースに載せられないのが中小メーカーの難点である、という事実を証明しているようでした。

スバル以外の日本メーカーも大なり小なり同じような状況で、トヨタや日産ほど先進技術を市販ベースに載せられず、簡易的な自動ブレーキやオートクルーズサポートに留まる例が多くなっています。

大手メーカーであれば自力開発、あるいは技術力が無ければGMのように技術を持つ企業を買収してでも先進のシステムをモノにしていくのとは対象的です。

運転システムに限りませんが、企業規模や取り扱い車種の問題でこうした先進技術を市販車に搭載するための開発コストを負担できないメーカーは、大メーカー傘下となって生き残りを図る傾向が一層強まるのではないでしょうか。

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