スマホさえあれば充分!?ドライブレコーダーアプリ「NEXAR」の可能性

画期的なサービスの登場によって、スマホ1台あれば様々な問題が解決されるような時代になってきた近年。自動車に関してもスマホでできることが増えてきています。

その一例がドライブレコーダーです。ドライブレコーダーは小型カメラと記憶媒体、それに事故の衝撃を検知するGセンサーがあれば成り立ちます。それに通信機能まであれば事故通報までできるというもので、そうなるとスマホを転用するのは自然な流れ。

今回は今注目されている、アメリカ発のアプリ「NEXAR」について紹介します。

カーナビもドライブレコーダーも駆逐するスマホ

スマホカーナビアプリ

Photo credit: Vernon Chan

かつて携帯電話が高機能カメラを搭載するようになり、コンパクトデジタルカメラを脅かしましたが自動車関連機器についてもその兆候はありました。優れたカメラ機能はガラケーを駆逐したスマホに受け継がれ、そのスマホがまたガラケー以上に高性能な上に「アプリを入れればできない事はない」といわんばかりに、様々な問題を解決してくれます。

このような流れの中で、カーナビ(特に後付け簡易カーナビのPND)もカーナビアプリを入れたスマホで済ませる人が出てきているのが現状です。スマホにはGセンサー(加速度センサー)も内蔵されており、カメラで撮影した動画はマイクロSDでも、あるいはLTE回線を用いてオンラインに転送・保存することができます。

そうなれば、ドライブレコーダー(以下、ドラレコ)のスマホアプリが登場するのも自然な流れだったでしょう。元より通信機能がついていますから、アップデートが自由自在という意味では専用機材であるドラレコより優れています。

しかも有料アプリだけではなく無料アプリまであるのですから、いくらドラレコが安くとも、スマホ以上の機能が無いものは早晩活躍の場を失うのもまた自然の流れでしょう。

使うスマホは機種変更して余ったものを再利用してもほいですし、ネットワークに関しても MVNOの台頭で通信料も低下の一途を辿っています。(MVNOなどに関しては「広がるIoT革命。普及拡大には何が必要か?」もご参照ください)

 

単なるドラレコを超えたスマホアプリ

 

昔のドラレコは単に撮影した映像をSDカードなど記憶媒体に記録するだけでしたが、最近ではモニターつきで映像の確認可能、さらに映像解析を行って前走車との距離検知や車線逸脱検知を行い、警告を発するものまであります。

高機能ドラレコともなれば、映像解析ではなく搭載されたレーザーセンサーを使い、直接前走車との距離測定までやってのけるのです。

それに対してスマホのドラレコアプリはどうかと言えば、さすがにレーザーセンサーまではついていないものの、当然ディスプレイを使った映像チェックは可能ですし、無料アプリでもソフトウェアで可能な限りの機能を実現しています。

例として、無料ドラレコアプリで機能も充実している”損保ジャパン日本興亜の「Safety Sight」では、以下のような機能を実現しています。

  • 前方車両接近アラート(映像解析で検知した前走車との車間距離警告)
  • 前方車両発進お知らせ(同、停止時に車間距離が開くと警告)
  • ドライブレコーダー(Gセンサーで検知した事故衝撃の前後10秒を自動録画)
  • 緊急連絡先自動表示(同、警察・消防・保険会社の連絡先を表示)
  • 交通標語通知(GPS情報からその地域の交通標語を読み上げ)
  • 安全運転診断(Gセンサーから危険な操作を記録)
  • 走行履歴の記録(地図上に表示)

機種にもよりますが、スマホの方がドラレコより重くて大きいので固定場所や固定方法に工夫は必要ですが、それを除けばスマホアプリもかなりの高機能です。スマホの機能をフルに使えばそれ以上の付加価値をつける事も可能で、最近では驚くべき機能も登場しました。

 

アメリカ生まれのドラレコアプリ、NEXAR

ドラレコアプリ Nexar

Photo credit : Nexar

日本以上のクルマ社会であり、訴訟大国でもあるアメリカでも当然ドラレコの役割は多く、画期的なスマホアプリもリリースされています。

そのうちのひとつが、アメリカとイスラエルにオフィスを持つベンチャー企業、NEXARがリリースした同名のドラレコアプリ「NEXAR」です。

先に紹介した日本の「Safety Sight」と比較すると、映像解析を用いた距離検知機能などはありません。その一方で、映像の記録はNEXARのサーバーに送信されて自動で記録し、ユーザーのスマホの記憶容量を圧迫しないシステムを取っています。

また、個人用だけではなくタクシードライバー向けの機能も充実しており、車外に向けたカメラだけではなく、通常スマホで「自撮り」に使われる反対側のカメラも、車内監視用に記録可能です。

実際にこのアプリは2015年にハイヤー配車サービスのUberに登録しているドライバー95人に使ってもらい、それで記録されたさまざまなアクシデント動画をYouTubeで公開しているほか、現在でもサンフランシスコやニューヨーク、テルアビブでNEXARを使う職業ドライバーを募集しています。

ただ、NEXARが単純にアクシデント映像の確実な録画に特化した簡易ドラレコアプリかと言えば、そうではありません。次のステップとして、NEXARは驚くべき機能を公開しました。

 

民間版のNシステム?ナンバー自動記録・照合システム

Nシステム

Photo credit : George Redgrave

それが「ナンバーの自動照合システム」です。

まずNEXARユーザーは危険な走行をしている車を見つければ、その映像と共にNEXARに報告します。するとサーバーに記録された映像からNEXARがAIと人間のチェックでその危険度を判定。危険な走行をする車だと判断されれば、そのナンバーがNEXARのデータベースに登録されます。

次にその車がNEXARユーザーの前に現れた場合、ナンバーを読み取ったNEXARアプリは「左前方に危険走行を行う車がいます」など警告を行うシステムです。

日本では”「Nシステム」と通称される、自動車ナンバー自動読取装置があり、絶えず当局に移動情報などが記録されていると言われています。危険運転に限るとはいえ、NEXARの危険運転情報収集はナンバープレートの情報を集めるという意味で「民間有志によるNシステム」と言えなくもありません。

現状では自動で危険運転の感知・映像送信というシステムになっていないようですが、いずれ蛇行運転や信号無視などが自動検知されるようになると、自動化も可能でしょう。

プライバシー問題に関してはNEXARのCEO、Eran Shir氏がMIT Technology Reviewにて「この機能は公共の利益とプライバシーのバランスを保っている」「ユーザーがどこから来て、どこに行くかには興味が無い」といった旨のコメントをしています。

ただし撮影されてナンバーを控えられ、なおかつ「このナンバーの車は危険だ」と名指しされるドライバーにとっては、あまり気持ちのいいものではないでしょう。

特に誰かにその車を貸した時に危険運転車として登録された場合、「貸したのが悪い」と言われるかどうかはともかく、データベースからの削除依頼をかける手間はかかりますし、そこで削除を受け付けられるかどうかもわかりません。

訴訟大国アメリカで、いずれNEXARアプリに絡んだ訴訟が起きる可能性は、かなり高いのでは無いでしょうか?

 

日本での同種サービスに対する現実味

 

NEXARアプリはGoogle PlayでもApp Storeでもダウンロードできるので、日本のユーザーもインストールはできますが、日本語化されていないのでどの程度サービスを利用できるかは不明です。

日本では同様のサービスでこれといったものは出てきていませんが、SNSや動画サイトなどで危険運転車のナンバープレートやその情報が晒されることは多く、需要があると考える人や企業もいるでしょう。

その時、公共の利益とプライバシーのどちらが尊重されるのでしょうか? 今後このようなケースが増えれば大きな論点になりえるでしょう。

ちなみに、ユーザー自身が積極的に愛車のナンバープレートその他の情報を積極的に公開するケースがひとつだけあります。それが「盗難車」で、Facebookやtwitterで盗難にあった愛車の情報を公開し、何とか見つからないかと情報を求める投稿を何度か見かけました。

あるいは保険会社がこの点に注目すると、盗難車対策としてスマホアプリやドラレコの映像解析によるナンバープレート識別・自動通知機能が登場するかもしれません。

 

ドライブレコーダーアプリの可能性

いかがでしたか?

ドラレコアプリ、あるいはドラレコそのものの新たな方向性を示したNEXARですが、公共の利益とプライバシーのバランスという問題は、まだまだこれから解決していくところです。

しかし、盗難車のようにその車のユーザー自身が広く情報を求めるようなケースであれば、日本でも普及する道があると思いますし、映像解析技術を使えばナンバープレートに限らず、いろいろな用途に応用できるでしょう。

ドラレコの普及で車にカメラを装着する事が普及しつつある今、それを生かした新しいサービスが今後次々に登場してくる気配が感じられます。

 

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