圧倒的安さ!年間100円以下のIoT通信SIGFOXが日本進出

一般的にインターネットの速度は速ければ速いほど、安ければ安いほど良い!とされてきました。

それはまぁ当たり前ですよね。同じ速さなら安いにこしたことはありませんし、同じ値段であれば速いにこしたことはない。例えば動画を頻繁に見る人であれば高速無制限のブロードバンドは今や当たり前でしょう。

しかし「速度や通信料を妥協する代わりに安価で済ませる」という選択肢も登場し、端末数が多ければ多いほどその恩恵を受けられるようになってきました。その究極系のひとつがフランスのSIGFOXが展開するネットワーク「SIGMAX」。

今注目を集めるSIGMAXが京セラとタッグを組み、2017年に日本に上陸します。

IoT世界では全てに「速くて大容量」は必要ない

通信インフラ

Photo credit: Steve Johnson

かつてはパソコンからピーヒョロロ~とアナログモデムの音をさせたり、ISDNで高速64kbps通信!などと言っていたのも今は昔。ADSLの登場と共に始まったブロードバンド時代の到来で、インターネットは速くて当たり前、ホームページはサクサク開いて当たり前になりました。

それでも動画ファイルを開くにはまだスピードが遅く、FLASHやアニメーションGIFでも少し作り方を間違えると重くて仕方がないですよね。その解決には光回線やデータの圧縮技術、それに受信する端末の性能向上を伴ってようやく今に至っています。

無線通信技術もまたしかりで、単純にテキストを表示していた初期のガラケーやPHSの時代、そこから次第に画面の解像度の向上などで情報量が増え、スマートフォンの登場で昔のスーパーコンピューター並の性能を誇るようになると、高速無線通信が当たり前になったのです。

しかし、全てにおいて常時大容量通信を行う環境であればともかく、ほんの少しの情報量しか扱わない場合はどうでしょうか?

それでも、大容量高速通信を行う場合と同じコストをかけてもいいのでしょうか?

そもそも、そうした通信の必要のないIoT世界の端末増加に対して、同じインフラを使い続けていては、いずれ通信がパンクしてしまうのでは無いでしょうか?

そう、全ての通信において「速くて大容量」である必要はないのです。

 

昔からある「低速小容量遠距離通信」の例

潜水艦

Photo credit: Eric McCarthy

そもそも無線通信技術の初期から、低速少容量通信は存在しました。

通信速度が低速、かつ一度に遅れるデータが少なくとも、使い道さえ間違えず、かつその通信方式のメリットを活かせば十分だったのです。

その代表的な例が、主に軍用で使われるVLFやELFと呼ばれる超長波通信です。

超長波は水中や地中も通過する特性を持つため、潜水艦に対する指令通信(潜水艦からの送信は不可)用として第二次世界大戦前から日本海軍が潜水艦などとの通信用VLF超長波通信を用いていました。低速で通信容量が少なくとも簡単な暗号を送るなら十分ですし、何より水中で潜航している潜水艦への通信手段が他に無かったからです。

戦後も米国や旧ソ連(現在のロシア)などが保有している原子力潜水艦は基本的に潜りっぱなしなので、超長波通信は今でも非常に重宝されています。

こうした軍用以外での超長波利用は鉱山の奥など非常に限られていますが、代替手段が無いことから、この先も使われ続けるでしょう。

 

急がない、少量で良いIoT製品の通信

Amazon Echo

Photo credit: hnnbz

超長波通信は「特殊用途であれば低速少容量通信でも構わない」例として紹介しましたが、現在では「汎用品であるがゆえに、低速少容量通信でも構わない」機器が登場しています。

それが身の回りのあらゆるものにインターネット通信能力を持たせたIoT(Internet of Things。モノのインターネット)対応機器です。

家電や家を構成しているさまざまなもの、外に出かけて目にするあらゆるものをインターネットに接続し、通信を行うことで全てをデータの形で可視化し、記録や分析対象とします。

たとえば家電の電力消費量と温度センサーを電力会社に送信すれば、節電に関するアドバイスを受けることができるでしょう。また、服に装着されたセンサーから外気温と体温を取得し、健康のためにどのような服を着たらいいかわかる、なんてことも可能になるはずです。

もっと目に見えるところでは、リビングに置いたスピーカー兼用のマイクに何かをオーダーすれば、それだけで商品が届くサービスも既に実在します。Amazon Echoは大きな話題になりましたよね。

それらのIoT機器の中には、求める通信能力、つまりデータ量がごくごく小さくて済むものも多いのです。極端な話、用途によっては「0と1」つまり「YesかNoか」だけで済み、しかも必要な時だけ送信するなら受信能力も必要ありません。

高速大容量のブロードバンド回線など必要ないのです。

 

IoT用ネットワーク「SIGFOX」の登場

sigfox

出典 : sigfox

そこで考え出されたのが、これまでのインターネットの概念を破る低速少容量、かつ長距離通信の可能なLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれるネットワークです。

世界各国で既にいくつかのサービスが始動していますが、そのうちのひとつ「SIGFOX」は100bpsと、1Gbps(SIGFOXの1万倍)のブロードバンド通信すら登場している時代に逆行するような超低速無線通信。

その代わり周波数帯は壁などの障害物を回り込むように電波が飛び、低出力でも10~20km程度の通信距離を持ちます。

これが何を意味するかと言えば、通信速度は早くとも障害物に弱く、コンクリート製建築物内では届きにくい通信方式(日本でもWimax2+になる前のWimaxがそうでした)に比べれば、屋内や地下でも十分に通信可能ということ。

さらに、通信距離が長いため中継局などのインフラ整備に対する投資が安価に済みますから、非常に低価格でネットワークを構築できます。特にSIGFOXの場合は基本的に端末に対する送信は行わず、端末から一方通行で送信するだけなので、双方向通信を行わないだけインフラ機器への投資がさらに安くなるのです。

この低廉さから、既に米英仏など26カ国で商用サービスを行っており、2017年2月からはついに日本でもサービスが始まるのです。

sigfox_2

出典 : sigfox

日本では京セラがSIGFOXを展開

京セラ

Photo credit: Gabriel Flores Romero

2016年11月9日、京セラの関連会社「京セラコミュニケーションシステム株式会社」が、日本で2017年2月からSIGFOXを展開することを、明らかにしました。

SIGFOXの方針として「1国1サービス」を基本としているようで、以前からSIGFOXが日本のどの企業と提携するのか注目されていましたが、京セラコミュニケーションシステムに決まったようです。京セラがターゲットとしているのは、IoT時代であらゆるものに装着されるセンサ類で、そこから送信される情報のインフラを担当します。

同社のプレスリリースによると「水道・ガス・電気などの社会インフラ、AED・空調などの設備、健康管理・見守りなどのヘルスケア、物流、農業」をターゲットとしており、安定したインフラによってIoT導入を推進する狙いがあるようです。

通信費用は年額100円以下に抑えられるとされていますから、他のネットワークから孤立しているような機器で主に採用が進むのではないでしょうか。

 

自動車分野でもSIGFOXは使えるか?

自動車事故

Photo credit: kennejima

さて、そうなると自動車分野でもSIGFOXの出番があるかどうかですが、自動運転や運転支援に関わるAIのディープラーニング、各種センサーから取り込まれた情報による地図データ構築などは大容量高速通信が必要でしょう。

ただし、そうした高速通信が必要無いデータや、逆に即時性が必要でどこからでも発信できなければいけない情報に関しては、むしろSIGFOXが向いています。たとえば事故が起きた時、大破した車でAIやエンジンコンピューターなど全ての電子機器がダウンした時など、救難信号を発信する最後の手段はSIGFOXになるのではないでしょうか。

災害などに巻き込まれて行方不明になった車を捜索する際にも、SIGFOXの発信情報で見つかるケースがあるかもしれません。

SIGFOX自体は詳細な情報を送る能力はありませんが、端末側で処理して必要な短いキーワードなどを選択したり、あるいは端末が動作不能になった場合に送ると決められている情報を自動で送る、でも構わないわけです。

必要に応じて送信するのがSIGFOX送信機器ですから、知らないうちにお世話になっていることもあれば、気づかれることも無いままひっそりと役目を終えている、そんな端末になるかもしれませんね。

来年からはあなたのそばのどこかで、SIGFOXが使われているかもしれません。

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