スマートシティとは?~変化を続ける未来都市のあるべきカタチ~

スマートシティとは?~変化を続ける未来都市のあるべきカタチ~

最近、TVニュースを見ていると、都市開発・運営に関する話題の中で、「スマートシティ」というキーワードを耳にする機会が増えてきました。規模に違いはあるものの「スマートコミュニティ」や「スマートタウン」なども類似する概念や構想です。

今回は、スマートシティとは何か国内外で進行中の具体的な取り組みや、すでに導入/実用化が予定されている技術を紹介したのち、同構想が目指す未来都市の姿について、新潮流を交えつつ解説します。

スマートシティとは~洗練され賢く機能するハイテク都市~

 

国土交通省は「スマートシティ」を「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・整備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義し、以前はエネルギーを始めとした「個別分野特化型」の取り組みが中心でした。

しかし近年ではIoT・AIや官民双方のビックデータのフル活用によって、交通・観光・防災・健康・医療・エネルギー・環境など、複数分野を包括的に連動・最適化する「分野横断型」へシフトを始め、モビリティをサービスとして捉える「MaaS」もその一例です。

現在では、コネクテッドカーなどの「スマートモビリティ」や、次世代送電網である「スマートグリット」など、分野ごと分断されていた「スマート」を1つのプラットフォームで統括管理・運営し、各インフラのシームレス化を目指す段階に入っています。また、国交省はスマートシティを定義通り「持続的」に機能・発展させるため、交通・電力・通信など政府主導の公共インフラ整備だけではなく、技術開発者・サービス提供、都市開発者、都市管理者、住民・地元企業を主体とした連携が必要で、民間企業の次世代IoT技術(シーズ)が、地方自治体および住民の要望(ニーズ)と、常にマッチングできるマネジメント体制を築いていくとしており、国内外問わずこの流れがスマートシティ構想の新潮流と言えるでしょう。

スマートシティではどんな技術が取り入れられるのか

 

国交省が、2018年12月14日~翌年1月25日の間に実施した、「スマートシティの実現に向けたシーズ・ニーズ提案募集」によれば、早期の技術導入が求められている分野として、交通・モビリティに次ぎ、観光・地域活性化、防災、健康・医療が地方自治体からの「ニーズ」として多く提案されました。

このことから、同省が目指すスマートシティ・マネジメント体制が整うことを前提にすれば、

  1. 通信ネットワークとセンシング技術 (5G、レーザー、センサーなど)
  2. 分析・予測技術 (避難施設配置シミュレーションなど)
  • データ保有 (リアルタイムの災害情報など)
  1. データ・プラットフォーム (3次元位置情報など)
  2. データの活用 (共有化、見える化など)
  3. 新たな応用技術 (自動運転、ドローンなど)

などの「民間企業シーズ」が、随時スマートシティへ実装されていくと考えられます。

スマートシティの海外事例と国内での取り組み

 

スマートシティの実現については、日本は国際的に少々後れを取っている状態で欧州や米国が一歩リードしています。アジアでは中国・シンガポールにおいて、近年急激に進行スピードが増しているようです。この項では、先進グループであるアメリカ・オランダ・中国におけるスマートシティの事例、そして国内で進行中の取り組みを紹介します。

米・ニューヨーク 市内全体でのギガビット通信が可能に!「LinkNYC」

出典:LinkNYC

ニューヨークは、あらゆる分野でスマートシティ・プロジェクトの進んでいる都市ですが、中でも国際的に高く評価されているのが、次世代型都市通信インフラの「LinkNYC」です。

携帯電話の普及により、「お役御免」となった古びた公衆電話ボックスを、ギガビットの高速インターネット・アンテナ・情報アプリが利用できるAndroidタブレット・55インチの HDディスプレイを備えた「高速Wi-Fiの基地」に置き換えたことで、ニューヨークは今や、市民はもちろん観光者が「スマート」にネットを利用できる、世界一の通信都市へ進化を遂げています。

タブレットでは地図やルート案内にアクセスできるほか、米国内のどこにでも無料電話可能。完備されているUSBポートでのデバイス充電もできますし、大画面ディスプレイにローカル情報がリアルタイム配信される仕組みも追加されました。LinkNYC ネットワークには現在、600万人ものユニーク・ユーザーが存在し、累計8,6TB(約13億曲の楽曲データに相当)の膨大なデータが利用されたのだとか。

また、Intersection によれば、よく検索されるワードが「仕事・住宅・衛生・公的給付金」であることを考慮すると、ニューヨーカーにとってLinkNYCは単なる便利ツールではなく、生活に欠かせない「ライフライン」の一部となっていることがわかるでしょう。

オランダ・アムステルダム 世界一の省エネ都市を目指す「ASCプログラム」

アムステルダムは、欧州の他都市に先立ってインテリジェント・シティの実現を目指し、「アムステルダム・スマートシティー(ASC)プログラム」を策定・推進しています。そしてその根本を担うのが、市民のエネルギー消費行動を変化させる取り組みです。具体的には、以下4分野での対策が柱となっており、エネルギーの効率化と国民生活の品質向上を両立できるスマートシティ形成のため、エネルギーの作り方から使われ方まで、徹底した改革が推し進められています。

 

  • 持続可能な生活(Sustainable Living) -・・・スマートメーターの導入による、消費電力の可視化(見える化)と市民の環境意識・電力利用行動(ライフスタイル)の変革促進
  • 持続可能な労働(Sustainable Working) ・・・ 照明/冷暖房/セキュリティ機能を高めたスマートビルディングへの転換及びエネルギー使用量抑制
  • 持続可能な運輸(Sustainable Transport)・・・ 港湾・船舶間の相互電力充電とEV車の普及、充電ポイントの拡充
  • 持続可能な公共スペース(Sustainable Public Space)・・・ゴミ収集におけるEV車の利用、太陽光発電によるゴミ圧縮機の導入

中国・杭州市 渋滞が消えた!?アリババが開発した「ET都市ブレイン」

文人墨客が愛した静かな西湖湖畔の古都であり、片側一車線といった狭い道が多いことから、事故でも発生しようものなら渋滞が瞬時に波及し、市全体の交通が麻痺状態になることもたびたび起こっていた杭州市。とくに、2012年までは地下鉄が存在しなかったため、市民はバスかタクシーを利用するしかなく、多くの移動時間がかかっていました。そのため、日常生活はもとより、風光明媚な観光地の景観を阻害する大気汚染や、それに伴うインバウンド需要の伸び悩みが問題視されていたのです。

ところが2017年、電子決済会社最大手アリババ・グループの「Alibaba Cloud(アリババクラウド)」が開発した、「ET都市ブレイン」が導入されてからというもの、激しい大渋滞はほぼ発生しなくなったのだとか。ET都市ブレインは、AIを利用した「交通制御ソリューション」であり、主な機能としては

  • 信号制御により交通流量を調整し、渋滞発生を予防・抑制する。
  • 救急車などの緊急車両の移動に合わせ信号を「青」に切り替え、現着時間を短縮させる。
  • 監視カメラの映像から交通違反・事故を自動認識し、警察などに緊急通報する。

という3つが挙げられ、似たような交通制御・監視システムは日本でも段階的に導入が進んでいるもののET都市ブレインの場合、例えば大規模な事故が発生した際、あらかじめ定められた緊急車両専用レーンの信号が「すべて青」になる徹底ぶり。その結果、緊急車両の平均速度は50%上昇、現着時間は15分以上早まり、半分以下の短縮を実現しました。渋滞の早期解消はもとより、二次被害発生の予防や事故当時者の救命率向上にも寄与しています。

交通渋滞・事故被害の軽減だけではなく、ET都市ブレインは管理IoT機器の温度異常上昇感知による「火災発生認識・警報機能」も有しており、火災発生時には管轄の消防署へ火災発生位置、周辺道路状況、ガソリン・油・火薬などの大型可燃物の有無を通知するほか、現着した消防隊からの写真・音声・テキストといったデータは、救急・警察・水道・電力会社で共有されるシステムになっています。

未来都市のセキュリティ管理・維持で中核を担う存在となりえるETブレインは、現在、杭州市全体の1/4の交差点を自動制御しているほか、蘇州市や杭州市と同様に深刻な交通渋滞にあえぐ、マレーシア・クアラルンプールでの試験導入も始まっています。

日本におけるスマートシティへの取り組み

前項で、国交省が示すスマートシティ構想の骨子について触れましたが、経済産業省が進めている「次世代エネルギー・社会システム実証事業」に選ばれた以下の4都市では、民間企業主導のプロジェクトが進行中です。そしてCO²削減など一定の効果を上げていますので、ここでは主だった取り組みを2つ紹介します。

  1. 神奈川県横浜市
  2. 愛知県豊田市
  3. 京都府けいはんな学研都市
  4. 福岡県北九州市

横浜市 エネルギー改革を肝としたスマートプロジェクトの進行

基礎自治体として国内最大の373万人を擁する横浜市では、「地域エネルギー管理システム(CEMS)を軸に、東京電力・明電舎・東芝など34社と共同で、計15プロジェクトが5年間にわたって実施されました。具体的に導入されたのは

  • HEMS(家庭用エネルギー管理システム)・・・4,200世帯
  • PV(太陽光発電)・・・37メガワット相当
  • EV(電気自動車)・・・2,300台

であり、結果として約4万トンのCO²削減と目標を上回る高い実績を上げています。また、BEMS(ビル用エネルギー管理システム)への取り組みとしては、みなとみらい地区のビルに参加要請し、節電料に応じて電気代を下げさらにインセンティブを支払うことにより、デマンドレスポンスはHEMSよりも高い効果を確認できたとのこと。

国交省が目指す「分野横断型」に至ったとは言い難いものの、災害時に拠点となる小・中学校へ緊急用蓄電池の設置計画を進めるなど、エネルギー改革を中心にスマートシティ化の「横展開」にも力を注ぎ始めています。

豊田市 超小型EVシェアリングサービスの実証実験を開始

トヨタ自動車のお膝元で関連企業がひしめく愛知県豊田市では、同社が開発した超小型EV「コムス」を使用したシェアリングサービス、「Ha:moRIDE(ハーモ ライド)」の実証実験が、2019年9月9日より行われています。これは本実証実験に同意・参加する、Ha:mo RIDE会員の安全運転を5段階で評価し、安全運転を心がけた会員に次回利用料金への充当、とよたエコポイント・PeXポイントへ交換可能など、Ha:moポイントをプレゼントする取り組みです。

各所に設置されるステーション間であれば、車両を乗り捨てできる便利なサービスであり、都市交通の利便性向上とCO²削減を両立する「EV×シェアリング」という、スマートシティ実現に向けたこの取り組みは、東京・沖縄・バンコクなどへ実証エリアが拡大しています。

スマートシティが目指す未来の姿とは

新潮流が登場する前のスマートシティとは、エネルギーを生み出す資源の節約と、地球環境の保護が主たる目的でしたが、現在は働き方改革の推進や新たなビジネスモデルの創出、多様化するニーズとMaaSに対応する、一体型コミュニティを完成させる必要性が出てきました。

狩猟・農耕・工業そして情報社会を経て、サイバー空間とフィジカル空間が融合した超スマート・デジタル社会、「Society5.0」の到来が間近に迫る今、地域・年齢・性別・言語による格差なく、モノやサービスを提供するスマートシティの実現が期待されています。ただし、スマートシティは高度IoT時代の到来により、必要不可欠だと考えられている仕組みにすぎないため、関連団体は提言の中で「デジタル」という頭文字を付けたがりますが、市民社会が導入された技術を使いこなせない場合、宝の持ち腐れになりかねないでしょう。

重要なのは、社会課題解決と豊かな「人間性=Humanity」の両立であり、どちらがかけてもスマートシティが目指す未来の姿である、「継続的に発展する都市=サステナブル都市」へ到達することはできません。AIロボットや自動走行車が街中で生活をサポートし、イノベーションを通じて閉塞感が打破され、誰しもが尊重し合えるスマートシティが完成すれば、未来の世代が美しい地球で豊かに生活できる、「サステナブル社会」が実現する日も近いと言えるでしょう。

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