テスラの発電する屋根など、今注目されるHEMSとは?

太陽光発電に代表される発電システムの構築市場への注目度は、ここ数年高まり続けています。北米最大の太陽光発電国際展示会(Solar Power International)が今年9月に開催されましたが、国内外から1万8,000人以上が参加し、過去最高の動員数を記録しました。

自動車業界にも大きな影響を与えており、電気自動車(以下:EV)を開発しているテスラモーターズは最新の太陽光パネルシステムと蓄電池を開発し、新しい市場に乗り出そうとしています。

今回は世の中が取り組む電力ビジネスの傾向を見ながら、今後どのような社会が構築されるのかをご紹介します。

 

地球環境を考慮したテスラモーターズの挑戦

Solar Roof

出典 : Solar Roof

テスラ社のCEOであるイーロン・マスク氏は、2016年10月28日に新しいタイプの太陽光発電パネルである「ソーラールーフ」を販売すると発表しました。

これまで、壁や床に設置する「パワーウォール2」という蓄電装置をすでに商品化しています。この製品は第一世代蓄電池の2倍のエネルギー密度を誇り、2LDKに住む家族の1日分の電力を確保することが可能となりました。

ソーラールーフはこのパワーウォール2と連携して電気を補給するシステムを構築し、環境保護に特化した新しい住まいの提供を目指しています。

Powerwall 2 & Solar Roof Launch from Tesla Motors on Vimeo.

 

太陽光発電パネルと言えば一般的な分厚いパネルを想像しがちですが、テスラ社のソーラールーフは屋根のタイルとほとんど見分けがつかない薄い素材を使用しています。しかも屋根タイルのデザインや色合いまで選べるので、建築物の美観を損ねることなく太陽光発電システムを家庭で活用することができます。

また、最新の蓄電システムであるパワーウォール2のサービスは、1基61万7,000円ですでに日本国内でも提供されており、将来はこの装置とセットでソーラールーフの販売も行われるのではないでしょうか。

テスラ社はアメリカでEV開発の最先端を走る企業のため、いずれはこれらの太陽光発電パネルと連動した自家用車用の充電システムを構築するかもしれません。

こうした電気エネルギーを家庭内で無駄なく使うシステムのことを「HEMS(Home Energy Management System)」と呼んでいますが、テスラ社も自動車産業だけでなく、大手家電メーカーなどが手掛けていた「家庭用電力システム」分野に進出してきたカタチとなりました。

既存の電力会社に頼ることなく、電気の生産や消費量を家庭内でマネジメントできるため、未来の住環境を想像させる新しい技術として、テスラ社も開発に力を入れたいという意図が伝わってきます。

 

究極のエコ社会を実現するHEMSとは

 

先にも述べたHEMSは、各種機器間の相互通信を図るため通信インターフェースの標準化が必須です。HEMSは基本的に「電気の見える化」を推進したシステムのため、ITを活用して電気量を家庭で管理する必要があります。毎日の電気消費をモニタリングすることにより、省エネや節電に繋がるメリットがHEMSにはあるため、自宅のパソコンやスマホなどを利用して常にチェックできる機能が備わっているのです。

特にEVなどは充電する時間も長く、乗車前にどれだけの距離を走れるかが分かり辛いという難点があります。これらをスマホなどを通して外部から確認できれば「EVの充電が不十分だから今日は電車で行こう」という判断も下すことが可能です。

単に省エネや節電を目指すだけでなく「電気の見える化」の恩恵により、様々な需要やサービスが生まれる可能性を秘めています。また、将来は人工知能(AI)の技術などが加わり、徹底したデータ分析に努めれば、社会全体が電力量を一括管理することも夢ではありません。

電気自動車の充電

Photo credit: frankh

HEMSの取り組みはテスラ社だけでなく日本の企業でも開発中

 

節電に役に立つという理由で自分の家にHEMSを導入したいというユーザーが増えていますが、システムの詳しい内容を知る人は少ないのが現状です。

政府は日本の省エネ社会の実現を目指して、消費者にHEMSの導入を積極的に勧めていますが、そもそも「HEMS」という言葉すら聞いたことがないかもしれません。ではどういった仕組みで節電となり、どれだけ便利なのかをこちらで簡単にご紹介します。

節電とは年間の電気使用量で考えるもの

 

基本的に「節電」というのは、導入した直後に効果の出るものではなく、年間を通してどれだけ電気の使用量が減ったかを目安に考えます。

たとえば、古い形式のエアコンや冷蔵庫などを長く使用している場合、年間の電気使用料金が省エネ効果のある商品と比較して数万円以上の差があれば、買い替えたいと思う気持ちが強くなるのではないでしょうか?

「最新のエアコンを買えば10万円以上になるから別にいいよ」という方は対象外としても、常に稼働している照明器具や冷蔵庫など、一度くらいは省エネ化について悩んだことがある方も多いはずです。

しかし、HEMSを導入していない場合、スイッチを入れる度に個々の家電の電気使用量を計測することができないため、どれを買い替えたら節電に効果があるかなど検証することが困難です。もともと「電気の使用量を計測する」という習慣が一般的でないため、省エネに特化した他社の製品と比較することもできません。

HEMSはこうした問題に対して「電気の見える化」を実現し、節電はもちろんのこと、購買意欲を高めるなどの新しい需要に切り込んでいます。

 

そもそも「電気の見える化」って何?

太陽光発電

HEMSを導入することで、自宅の電気使用量をコンセント単位で計測することが可能となります。また、ガスと水道の使用量もここに加わるため、一般家庭で使う全てのエネルギー量を一目で分かるようになるのです。

エネルギー使用量をデータとして残すことも可能ですし、ネットを通してメーカーから節電に関するアドバイスを受けることもできます。HEMSを取り扱うメーカーは、パナソニック、東芝、三菱電機、シャープなどがあり、価格も5~30万円と、手軽に導入できるものから本格的に計測するシステムまで多種多様です。政府はHEMSを2030年までに全住宅のスタンダードにしたいと考えているため、過去にあった補助金の制度が再び策定されるかもしれません。

 

太陽光発電など自宅で生産する電気にも有効なシステム

 

先にも述べたテスラ社は電気自動車(以下:EV)を開発していることで有名な会社です。電気を燃料とするクルマを開発しているくらいなので、節電や省エネ事業に対しては他の企業よりも関心が高いはず。その傾向は開発の現場にも影響し「ソーラールーフ」のような新商品が誕生したのだと考えられます。

この太陽光発電のシステムはHEMSとセットで導入することで威力を発揮します。太陽がいつも出ているとは限らないため、発生した電気がどれだけ蓄電されたかを確認しなければ、せっかくの発電システムも有効活用ができなくなってしまうからです。

また、蓄電システムの技術も、ハイブリッド車やEVが普及したことにより、年々技術力が向上しています。パワーウォール2を開発したテスラ社は、自動車産業だけに目を向けるのではなく、太陽光発電や蓄電システムなどを手掛けることで、業界の聖域であった「電力産業」の分野にも足を踏み出そうとしているのです。

いずれはテスラ社の考案したソーラールーフのような商品が次々と誕生し、見た目にも優れた発電システムが、一般家庭の標準装備となるかもしれません。電気は社会を支える血液のようなものなので、家、クルマ、道路など、都市全体でお互いに電気を供給し合う時代がやって来る日もそう遠くはないでしょう。

 

都市全体がコネクテッドな状態になる

車載インフォテインメント2

Photo credit: Janitors

ドイツやアメリカでは「クルマは動くオフィス」という構想を強めており、現在も自動運転システムに特化した街づくりを推進しています。

すでに信号機のIT化も進められており、どのタイミングで信号が変わるかを、ネットを介して各端末に情報提供できる体制を整えてる最中です。また大手自動車メーカーも、無人運転や自動駐車などの新しい機能を制御システムに組み込む予定とのこと。自動運転システムや無人運転を可能にするにはクルマのIT化が不可欠となりますが、そのIT化を果たしたクルマのことを、業界では「コネクテッドカー」と呼んでいます。

要は、クルマがスマホやパソコンのように、1つのデバイスのように機能するようになるのです。アメリカの「Machina Research」では、2022年頃にIT化が実施されたクルマは18億台に達し、市場規模は4220億ドルまでに膨れ上がると予測。車載システムはナビゲーションやエンタメ分野に強みがあるだけでなく、自動運転データの収集にも役立つため、技術の発展に大きく役に立ちます。

特にドライバーは走行支援や交通管理、事故後のサポートなどのサービスが受けられるため、ビジネスとして成功したテレマティクスシステムである「OnStar」のような新しいサービスが、今後続々と生まれていくでしょう。

 

IoTサービスの可能性

 

コネクテッドカーなどの「IoTプラットフォーム」の覇権争いは、世界中ですでに激化の一途を辿っています。クルマだけでなく飛行機や鉄道、自転車、テレビ、時計、冷蔵庫などあらゆる製品にIT技術を付加することが可能な今、各メーカーがどの製品に着目するかで、開発環境が大きく変わる可能性があるからです。

その市場価値は計り知れないものがあり、大手メーカーだけでなく設立したばかりのベンチャー企業も率先して開発に取り組んでいます。混沌としている状態ですが、非常に面白いチャレンジであることは間違いありません。

事故での非常事態や地震などの自然災害が発生した時に、電気を発電するシステムや蓄電池があることで、助かる命も増えるかもしれません。単に環境保護やビジネスの利益ばかりを考えるのではなく、電気や通信における技術力の向上は、多くの人に恩恵を与えるため、あらゆる”モノ”が繋がる社会の実現は達成する価値があるのです。

 

日本のHEMSのこれから

 

全ての”モノ”が繋がる社会というのも、少し大げさに聞こえるかもしれませんが、近年ではかなり現実味を帯びてきています。その中で電力の確保は必要不可欠となり、様々な形態で「電力ビジネス」を対象としたサービスが生まれつつあります。今後もこの傾向は更に加速し、通信事業と共に発展を続けるはずです。

日本も省エネに関心がある国として、政府や自治体も色々な政策を打ち出していますが、イマイチ盛り上がっていないのが現状。HEMSの補助金も残念ながら現在は打ち切られていますが、今後のアメリカの動向によって再び復活する可能性は十分にあります。今後の動向に注目したいですね。

*今回の記事にも関連するコネクテッドカーやIoTについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
コネクテッドカーとは? -車が単なる乗り物を超えた時代
【解説】IoTとは何?「モノのインターネット」の仕組みと新たな価値

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