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日本のトラックドライバーを支えるために。進化する「運行管理サービス」

トラックなどの車両を保有し利用をする上で、運行の安全を確保するために重要とされる運行管理。全日本トラック協会はこの「運行管理」という言葉について、「安全の確保という観点から、過労運転と過積載の防止などを目的としており、事業者、運行管理者、乗務員と運転者それぞれに果たさなければならない義務がある」と説明しています。
そして、事業用自動車の運転者の乗務割や、休憩・睡眠施設の保守管理、点呼による運転者の疲労・健康状態等の把握や安全運行の指示等、事業用自動車の運行の安全を確保するための業務を行うサポートをするのが「運行管理サービス」です。

今回は日本や海外で計画、またはすでに提供されている「トラック運行管理サービス」についてご紹介します。

日本のトラックドライバーを支えるために。進化する「運行管理サービス」

運行管理で日本の先を行く、アメリカのフリートマネジメント企業とは

アメリカにあるARI(Automotive Resources International)という企業をご存知でしょうか?

ARIは1948年に創業した北米最大手のフリートマネジメント(車両管理)企業のひとつで、世界90ヵ国以上の顧客企業が使用している約100万台もの自社資産車両を管理しています。

提供する運行管理サービスには、自社のトラックに関する手続きや管理を一元的に行うポータルサイト「ARI Insight」と、テレマティクス技術を使ってトラック輸送におけるさまざまな要素をテータ化してくれる「ARI Analytics」の2つがあり、いずれもトラックの運用効率の改善やコスト減少に大きく貢献しています。

CIOであるスティーブ・ヘンドル氏はその功績が高く評価され、コンステレーションリサーチ社による2012年度のスーパーノヴァ賞(Data to Decision部門)を受賞しています。

これは世界で普及しているトラック運行管理サービスのほんの一例ですが、システムの技術や規模においては日本よりも先を進んでいると言えそうです。

国土交通省による「ETC2.0」を活用した社会実験

では日本にはどのようなトラック運行管理サービスがあるのでしょうか。

まだ計画段階ではありますが、国内でも特に大規模なのは、現在国土交通省が国を挙げて取り組んでいる「ETC2.0」を使った車両運行管理支援サービスの社会実験です。

「ETC2.0」とは?

まず「ETC2.0」とは、高速道路利用料金収受といった従来のETC機能に加えて「安全運転支援」や「渋滞回避のための情報提供」といった、ドライバーに有益な情報を提供してくれるサービスのことを言います。

高速道路やサービスエリア、道の駅などに設置された「ITSスポット」と、車に搭載された「DSRC通信対応機」が高速・大容量で相互通信することにより、従来のVICSビーコンよりも広範囲の渋滞・規制情報提供や安全運転支援など、はるかに多い情報量のデータをやりとりすることが可能となっています。

2011年3月30日にサービスが開始された「ETC2.0」はすでに全国1600ヵ所で設置されており、今後も新しく開通する高速道路や有料道路への設置が予定されています。

ETC2.0を活用した車両運行管理支援サービス

国土交通省は「道路を賢く使うための取り組み」のひとつとして、ITを活用した物流管理を積極的に推進しています。そこで、ETC2.0車載器を搭載して車両管理を行っている事業者に情報を提供し、運行管理の効率化を支援する「ETC2.0車両運行管理支援サービス」の導入検討を進めています。

ETC2.0のビッグデータを活用した車両運行管理支援を通し、深刻なドライバー不足が進行するトラック輸送について「リアルタイムな位置情報で正確な到着時間の予測した荷待ち時間の短縮」や「トラック運転の危険箇所を特定し、ドライバーの安全を確保する」といった効果を期待しています。導入が実現されれば、経済的にも大きな効果が見込まれることでしょう。

2015年の11月からサービス実現に向けた社会実験に参加してくれる民間企業を公募し、要件が満たされている12組17社と共同で実験を開始しています。期間は2016年2月末から2017年3月末までとのこと。

この実験では、参加者から提案された運行管理の効率化や、ドライバーの安全確保等の様々な取組を試行し、実現の可能性や有効性を確認するそうです。

運行管理サービスを利用するのは、ヤマト運輸、佐川急便の宅配大手2社を含むトラック運送事業者11社とレンタリース会社1社の計12社で、実験に参加する車両数は計約600台。600台のうち、概ね250台が車載器1台当たり上限3万円の購入支援を受ける見込みです。

サービス提供事業者は、パナソニックオートモーティブ&インダストリアルシステムズ社、デンソー、沖電気工業などの5社。これらの事業者は、道路管理者から車両の走行データを取得し加工して運送事業者などに提供します。

日本の企業が提供する運行管理サービスの例

「ETC2.0車両運行管理支援サービス」以外にも、国内のさまざまな企業が独自にトラック向け運行管理サービスの開発・提供をしているので、いくつかご紹介しましょう。

日本通運の「オペレーション支援システム」

物流業者大手の日本通運は、2014年7月1日よりデジタル式運行記録計を利用した運行管理システムと従来の作業管理システムを統合した、「オペレーション支援システム」という新システムによる管理運営を開始。全国800ヵ所の運送拠点にある計1万2000台のトラックをリアルタイムで把握・管理し、運行管理の高度化と運送業務の可視化を実現しています。

同社の所有する約1万台の車両には専用のスマホを配備し、スマホと連動するデジタル式運行記録計を搭載。スマホのデータは車両を管理する各拠点に自動的に送信されるため、GPSによる位置情報や集荷・配達時に発生する待ち時間もリアルタイムに把握ができます。そのため、待ち時間が一定時間を超えた場合は、他の作業ルートへの変更が瞬時に行え、柔軟な対応による作業の効率化へとつながります。また、搭載したスマホには災害電話対応もあり、災害時なども確実な対応ができる体制を整えているのだそう。

さらにIC付き運転免許証から必要な情報を抽出するシステムを導入しているため、始業点呼時の本人確認や安全指導が的確にできるなど運行管理業務が簡単に行えます。

パイオニアの「ビークルアシスト」

「ビークルアシスト」は電機メーカーのパイオニアが2015年に提供を開始した、業務車両の運行管理・支援を目的としたクラウドサービスです。

業種やニーズに応じて選べる3つのパッケージサービスと、現状のシステムのまま利用できる連携APIから構成されており、顧客の抱える運行管理に関する課題の解決に役立っています。

高精度な走行ログデータをもとに、日報や走行履歴等をドライバー、車両、組織等の視点から選択して分析でき、日報及び集計レポート等、各種帳票は印刷やCSV出力が可能。業務管理の徹底だけでなく、ドライバーの育成、車両管理業務等を含めた支援をしてくれるサービスといえるでしょう。走行軌跡レポートでは危険挙動の発生箇所や内容も詳細に把握できるため、安全運転の徹底も行えます。

長期的には、稼働状況を見ながら車両数の適正化を図ったり、事故の減少に伴う保険料の削減なども期待できるのだそう。

パイオニアはこの「ビークルアシスト」以外にも、パソコンにソフトをインストールして活用するローカル型運行管理サービスや、IP無線機を利用して日本全国で音声通話や車両位置確認ができる「モバロケ」という運行管理サービスも提供しています。

ナビタイムジャパンの「ビジネスナビタイム 動態管理ソリューション」

テレビCMでもおなじみのナビタイムですが、実は「ビジネスナビタイム 動態管理ソリューション」という法人向けの運行管理サービスを提供しています。

スマホ1台でドライバーが運送業務に活用できる点が最大のメリットとなっており、朝日新聞社やブックオフコーポレーション株式会社など、大小さまざまな企業が導入をしているそうです。

リアルタイムな車両のスピード、業務進捗状況、遅延状況を、地図上のアイコンでひと目で把握できるのがいいところ。ナビタイムならではの高度なルート検索技術を利用した効率的なルートと、正確な到着予想時間を提示してくれます。スマートフォンをワンタップするだけで訪問予定の確認やナビが開始できるため、忙しいドライバーにも手間をとらせません。

それぞれ、高度な技術かつ簡単な操作で運行管理が行えるよう、サービスを提供しているようです。

運行管理サービスで課題を「見える化」する

作業状況を把握して運送業務を効率化するほか、危険がある道路の情報をドライバーに伝える仕組みも用意されているという運行管理サービス。コスト削減や業務の効率化と共に、安全性の向上を図るためにも重要です。

また、今後はAI・ディープラーニングのさらなる発達で、蓄積された集配作業時間やルート、走行情報、ドライバー勤怠情報などの解析に基いてより無駄を省き、かつ事故を予防していくようなサービスが開発されていくのではないでしょうか。運行管理における課題は車両だけでなく人的管理なども含め多岐に渡りますが、テクノロジーをうまく取り込むことによって、この領域はまだまだ変わっていくことが期待されます。

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