自動運転ガイドライン作成の現状と果てしない道のり

米カリフォルニア州といえば自動運転のテストが最も進んでいる場所の一つ。

これまでも、そしてこれからも先進的な自動車メーカーが精力的にテストを行い、そして行く行くは実用化され真っ先に販売される場所になるのではないでしょうか。

そのカリフォルニアで先日、自動運転車のテストについて大きな動きがありました。

ついにハンドルもブレーキもいらない車が走り出す!

Googleの自動運転車

Photo credit: Steve Jurvetson

2016年9月29日、米カリフォルニア州でこれまで行われてきた自動運転車の走行テストについて、新たな動きが出てきました。

それは「ハンドルもブレーキも無く、ドライバーが運転席にいなくてもいい車の走行テストを認める」というものです。

これまでは、緊急時に備えてハンドルやブレーキが不可欠であり、自動運転車のための免許を持ったドライバーが運転席に着席していることが必須条件でした。

この条件の下でGoogleや自動運転車をテストする各メーカーは公道テストを繰り返してきたわけなのですが、これではいつになっても「ハンドルもドライバーもいらない完全自動運転車のテストができない」という不満が出ていたのです。

もっとも今回許可が出たのは公道では無く、州が指定した試験場や、走行を認められた私有地などです。

それでも、そんな場所ですら走行が認められていなかった状況から比べれば大きな変化であり、そこで実績を上げていけば、遠からず公道でも同様のテストが認められるのではないか、と期待されています。

 

ついには免許もいらなくなる

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しかし、カリフォルニア州を流れる時間は早く、留まることを知りません。

完全自動運転車の無人走行テストを認めたのに続き「自動運転車のドライバーには、免許が必要無い」という方針を打ち出したのです。

既にNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)は、「自動運転車の場合、搭載されているプログラムをドライバーとみなす」という見解を発表しており、自動運転車のコンピューターとそのプログラムが車を動かすことを認めていました。

これを受けて、ネバダ州などでは自動運転車の場合は、従来の運転免許と異なる、自動運転車専用免許の交付を開始するなどの動きが広まっています。

カリフォルニア州はそれをさらに推し進めて、免許証そのものが必要無い、という方針を示したのです。

連邦政府に認可されれば、カリフォルニア州ではハンドルもアクセルもブレーキも何も無い、ただ座って移動するだけの完全自動運転車に、運転免許を持たない乗員だけが乗って運行することができるようになります。

要するに、電車などでは既に実用化されている無人運転を自動車でも可能にするわけで、自動運転車がバスやタクシーなど公共の交通機関としても機能できることになるのです。

上述した完全自動運転車のテスト走行が認可されたのと合わせ、公道でテスト走行するだけでなく、自動運転車用の免許を持っていない人が、モニター的に社会実験に加われるようになります。

 

「最先端」はどこまで広まるか

 

これまで自動車の最新技術がカリフォルニアから広まっていった歴史のように、自動運転車を取り巻くこうした流れもまた、まずは米国の他の州へ広まっていくことでしょう。

カリフォルニアではOKだったのに他の州へ入った途端ハンドルやアクセル、ブレーキが必要になり、自動運転車用免許を持ったドライバーが乗り込まなくてはいけないのであれば、実用化の目処が立っていきません。

そして米国のメーカーに続きたい日本や欧州の自動車メーカーも、それぞれの母国、あるいはその周辺国か、得意先の大市場で完全自動運転車を走らせることを望むのではないでしょうか。そう遠くない将来、自動車保有台数世界一になることが見込まれる中国などはその筆頭といえそうです。

 

実施にはまだ大きな課題も

Googleの自動運転2

Photo credit: smoothgroover22

とはいえ今日明日にでもすぐ、座席以外は車内に何も無い車が公道を走れるわけではありません。

それらが一般公道を走るためには、精密な道路地図が不可欠だからです。それも単なる「図面上の線」ではなく、車線や右左折専用レーン、ロータリー、高低差やカーブ、道路幅など全てを網羅した、高度に精密な地図。

その情報を収集するためのセンサーも必要ならば、その膨大なデータをリアルタイムで「ニューラルネットワーク」と呼ばれる、無数の情報源から構成されるネットワークに超高速で送信する技術。そして送られてきたデータを解析し、瞬時に地図データを作り上げる技術も必要でしょう。

地図データを送り返された車で、それを学習すると同時に、周囲の交通状況を瞬時に判断して的確に車を操作するAI(人工知能)の性能も向上させていかなければなりません。

これらの要素が一つでも欠けたりうまく動作しないだけでも、一般公道での自動運転は成り立ちません。

おそらくは、公道で完全自動運転車の走行テストが認められた場合、AIの性能(ディープラーニング)の実戦テストも行われることになるでしょう。また、ニューラルネットワークの切断に備えて、スタンドアロンでどこまで動けるかというテストも行われるようになると思いますが、そこではAIが学習するだけではなく、考える能力が試されます。

それらのことから考えると、まずは限られた地域での公道テストの認可から始まり、実績に応じて範囲が拡大していくはずです。まずは単純な道、次に郊外、そしてやがては雑然とした市街地へと、どういった段階を踏むか、これから具体的に考えられていくことになるのだと思います。

 

自動運転車そのもののガイドラインも必要

新たなルール作り

Photo credit: Japanexperterna.se

確かにハンドル、アクセル、ブレーキを持たない自動運転車の走行が限定的とはいえ認可されましたが、それが公道に出るに当たっては、安全性の担保が大きな課題になるはずです。

例えば、現在でも私たちは無人で運行される電車に乗る機会がありますが、それでは乗客が電車を止める術が無いかといえば必ず非常ブレーキが備えられています。

GoogleのようなIT企業にとっては不満はあるかもしれませんが、現実にはこの非常ブレーキ、あるいは自動運転車の場合は強制的に走行を中断させる装置が不可欠になるでしょう。

万が一のバグやセンサーの故障があった場合、乗員に為すすべが無い、ではあまりにも安全性への配慮が欠けています。

さらに電車と異なり、周囲の車は中央指令センターから統合制御されているわけではありません。いきなり道の真ん中で強制停止しては追突されますから、「強制的に走行を中断した上で、乗員が安全な場所へ停止する措置」を組み込む必要も出てきます。

運転技術を持っているドライバーが乗っていれば、非常用のハンドルやアクセル、ブレーキを準備して…と考えてもいいのですが、完全自動運転車は運転技術を持たない乗員のみの乗車も想定するでしょう。

そうであれば自動運転システムとは別に、「乗員を安全な場所で下ろすための自動運転停止システム」を組み込んで、安全に関する冗長性を確保する必要性も出てくるるはずです。

こうした複数のシステムを搭載する場合は、どちらがメインになるかを切り替える上位のシステムも必要になってきます。そうしたシステムをどこまで求めるか、テスト走行を行う完全自動運転車のハードおよびソフトに対するガイドラインも、今後は必要になってくるでしょう。

 

AIのガイドラインも必要

 

決められた道を走るだけなら、車載コンピューターにあらかじめ道路情報や交通状況に応じた行動をプログラムしておけばこと足ります。

しかしその車にとって未だ前人未到、ナビゲーションにも記載されていない道を走る場合は、自ら学習し、考えながら走るAIの存在が不可欠です。そのAIは、基本的にはネットワークに接続されて他のAIやサーバーと情報をやり取りしていくわけですが、当然ながら何らかの事情でネットワークが遮断されることも十分にありえます。

さらにその理由が災害やテロだった場合、道路が無事とも限りません。

そうした状況下でスタンドアロン(孤立)のAIがどのように判断し、乗員の安全を最優先できるか? あるいは、乗員だけではなく周囲の安全をも優先しなくてはいけない場合にどうするか?

スタンドアロン化したAIが取るべき行動のガイドラインも、当然必要になるでしょう。

 

ルール作りは果てしなく

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IT関連でシステムやソフトウェアの開発に携わった経験のある人、あるいは、IT関係ではなくても、新たな製品を開発する立場にあった人であれば、身に覚えのある人はほとんどだと思います。

そう、新しい製品を送り出す時には、そのテストに膨大な時間がかかるということを。

ここまで書いた内容だけでも、ガイドラインやルール作り、そしてそれを法律という形で反映していくためには、まだまだ数多くのトライ&エラーが必要です。現状は、その「トライ&エラーを行う資格を手に入れた段階」に過ぎません。

これからは、仮で定めたガイドラインに従ってテストを行い、その結果としてガイドラインを改訂したり、新しく作ったり…という、果てしない道のりが待っています。

トヨタは「自動運転車の市場投入には、142億kmの走行テストが必要である」と明言していますが、それは大げさでも何でも無く、場合によっては楽観的見積もりに過ぎないことを、思い知らされる日が来るのかもしれません。

「乗り込んで目的地を入力し、あとは好きに過ごせば良いだけ」

完全な自動運転車を実現するのには、まだまだ時間がかかりそうです。

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