居眠り運転の原因と防止対策 — 鉄板ワザから最新ツールまで

これまで多くの交通事故を引き起こす原因となってきた居眠り運転。重労働や睡眠不足が原因で長距離ドライバーが運転中に眠ってしまい、大規模な事故を起こしてしまったという悲惨なニュースは、様々なテクノロジーが発達したはずの現代社会でもなくなりません。

一方ドライバーにとっても、運転中の眠気は大きな悩みのタネとなっています。

そこで今回は「そもそも居眠り運転というのはどれくらい事故を巻き起こしているのか」「そして眠気の原因や有効な対策はどういったことが考えられるのか」考えてみたいと思います。

居眠り運転の概要と交通事故

交通事故

まずは居眠り運転がどのくらい交通事故の原因となっているのかですが、明確に居眠り運転が原因であるとされた事故件数等が公表されているわけではありません。ただ参考になりそうな資料はあるので、それを元に考えていきます。

まず交通事故の発生状況については、警察庁から定期的に発表されている「交通事故の発生状況」という資料が非常に詳しいです。「平成27年における交通事故の発生状況」のデータを基に交通事故と居眠り運転の関係性を探ってみます。

法令違反別交通事故件数で4番目に多い漫然運転

 

上のグラフでは交通事故を法令違反ごとに分類した場合、どの法令違反が多いのかを示したものです。

多いものから順に、「安全不確認(155,446件)」「脇見運転(85,601件)」「動静不注視( 59,044件)」「漫然運転(42,103件)」と続きます。この中で居眠り運転が関わってくる可能性があるものが、漫然運転です。

漫然運転とは、その字のごとくぼんやりとした状態で運転をしていることです。上の空で運転に集中できていなかったり、それこそ疲労や眠気が原因で一瞬ぼーっとしてしまっている間に交通事故を起こしてしまう場合が該当します。漫然運転は安全運転義務違反の1類型となるので、交通事故を実際に起こしてしまった場合は安全運転義務違反となります。

数は多くないものの見過ごせない過労運転

 

もう1つ居眠り運転が関わってくるのが「過労運転」です。交通事故の発生件数自体はそれほど多くないためグラフにはのっていませんが、平成27年には503件発生しています。

過労運転については道路交通法第66条第1項に過労運転等の禁止という項目で記載があります。

「何人も、前条第一項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。」(道路交通法第66条第1項)

居眠り運転が過労運転になるかどうかが争点

 

少し周りくどくなってしまったので整理します。

  • 居眠り運転が原因の1つとなりえる事故は、「漫然運転(42,103件)」と「過労運転(503件)」の2つ。
  • 過労運転の基準は「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態」であり、これに該当するかどうかが争点となる
  • 過労運転と安全運転義務違反(漫然運転)では過労運転の方が罪が重い(それぞれの違反点数は、過労運転が25点、安全運転義務違反が2点)

ポイントとしては居眠りの度合いやその原因によって、それが過労運転になるか漫然運転になるかが分かれるということ。眠気が原因で一瞬ぼーっとしてしまって事故を起こした場合に、それが全て過失運転になるとは考えにくいです。

過失運転と認められる典型的な事例はトラック運転手やバス運転手などが業務中に起こしてしまった事故。具体的にはかなりハードな条件での仕事を強要され、睡眠不足や過労が原因となって居眠り運転をしてしまい、事故が発生した場合です。

2016年の3月に広島県東広島市の山陽自動車道のトンネルで渋滞の列にトラックが突っ込み2人が死亡した事故では、過労運転と判定されています。

皆見被告の公判で検察側は「慢性的な寝不足だった」「(運転中に)だるさや睡魔に襲われたが仮眠を取らなかった」と指摘。皆見被告は「休ませてもらえない同僚がいて、自分だけ休みが欲しいと言えなかった」と話していた。

事故は3月17日に発生。皆見被告は居眠りをして渋滞の列に追突、2人を死亡させ、8人にけがを負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)と道交法違反(過労運転の禁止)の罪に問われている。
(出典 : 2016.8.13 産経WEST より一部引用)

居眠り運転の原因

 

ではなぜ運転中に眠気が起こってしまうのでしょうか。以下の原因について考えてみましょう。

  • 睡眠不足
  • 疾病
  • 不規則な生活習慣
  • 時間帯

睡眠不足

 

まず考えられるのが睡眠不足です。交通事故の事例でも触れましたが慢性的な睡眠不足が原因で居眠り運転をしてしまい、事故を起こしてしまうということは少なくありません。

興味深いデータとしては、2016年12月にCNNによって報じられた研究で、適切とされる睡眠時間から睡眠時間が1~2時間下回っただけで事故のリスクが倍近くに増えるということが明らかにされました。

事故前の24時間にドライバーがどれだけ睡眠を取っていたかによって分類したところ、適切な睡眠時間とされている7時間超に比べて、4時間未満しか眠っていないと事故発生率は11.5倍、4~5時間だと4.3倍に跳ね上がった。
さらに5~6時間眠っていても事故は1.9倍、6~7時間で1.3倍に増えることが分かった。(出典 : 2時間の睡眠不足、自動車事故のリスク倍増 米研究

もちろん適切な睡眠時間には個人差がありますが、4~5時間寝ていても事故のリスクが4倍になるというのは注目に値するのではないでしょうか。

疾病

 

睡眠時間が足りていても睡魔に襲われてしまう場合は何らかの病気の可能性もあります。代表的なものは睡眠時無呼吸症候群(SAS : Sleep Apnea Syndrome)と言われる、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。

医学的には、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、若しくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸です。(出典 : 睡眠時無呼吸なおそう.com

同サイトでは過去の居眠り運転が原因となった交通事故の中で、このSASが影響していたとされているものがいくつも紹介されています。このことからも睡眠不足じゃなくても居眠り運転をしてしまう可能性があることがよくわかります。

 

疾病の代表例としてSASを紹介しましたが、病気自体が眠気の原因とならなくても薬を飲むことで眠くなってしまう可能性があります。たとえば風邪や花粉症の際に鼻水を抑えるために服用するケースのある抗ヒスタミン薬は眠気を催しやすいと言われています。

不規則な生活習慣

 

生活習慣が不規則なことが居眠り運転に直結するというよりは、上述してきたような寝不足・生活習慣病の原因となり、それが居眠り運転を引き起こすと考える方が適切かもしれません。

時間帯

 

普段生活していてもお昼過ぎによく眠くなることがありますが、それは居眠り運転に関しても同じことがいえそうです。

『医学的データから見る「午後2時~4時の眠気」の撃退法』という記事では居眠り事故の時間帯別発生率が紹介されていますが、深夜〜早朝にかけてと14時〜16時にかけて発生率が高くなっていることがわかります。

交通事故全体と居眠り運転では多発する時間帯が異なるのも興味深いですが、ざっくりまとめると以下のように言えます。

  • 一般的な交通事故 : 交通量が多い時間帯(朝と夕方の出社・退社時間)に発生しやすい
  • 居眠り運転事故 : 交通量が比較的少ない時間帯(深夜〜早朝と、お昼過ぎ)に発生しやすい

居眠り運転の対策1 – 鉄板対策

 

ここからは居眠り運転の対策をいくつか紹介していきます。まずはベタなもの中心ですが、悩んだ時は試してみてください。

1. 仮眠をとる

 

高速道路の場合はサービスエリアなど、一般道路の場合は近くに休める場所があれば少しの時間でも停車して仮眠をとりましょう。これは運転中に限らず、デスクワークをしている場合などでも同様ですが、10分〜15分程度でも想像以上の効果があります。

眠気が襲ってきた場合には、極力無理をして運転を続けず休むようにしましょう。

2. 体を動かす(ストレッチや散歩)

 

これも車を停めることができる場所や時間がある場合ですが、一度車から降りて数分間歩いたりストレッチをするのも効果的です。眠気がとれますし、血行がよくなって頭も心もスッキリするはず。

3. 顔を洗う

 

冷たい水で顔を洗うのも眠気対策になります。とはいえこれもサービスエリアや公園などに停車した時でないと難しいですよね。

4. 目薬をさす

 

そんな時のために目薬を常備しておくのもいいかもしれません。人によって個人差はあるでしょうし、効き目があっても永続的ではなく一時的にはなるでしょうが、すぐに実践できる対策です。

5. 窓をあける

 

渋滞時だとあまり効果は見込めないかもしれませんが、窓を開けるのもすぐに試せる方法です。特に冬で車内が暖房で快適な温度になっている場合には、少々寒いかもしれませんが冷たい風を入れてみましょう。

6. カフェインをとる

 

眠くなったらコーヒーというのは定番中の定番かもしれませんが、実際に長距離ドライバーの人がよく実践されているそうです。特に以前も紹介した高速道路のパーキングエリア、サービスエリアの自動販売機限定で販売されている「カフェイン3杯分が入ったブラックコーヒー」が人気なんだとか。同様に眠気覚ましドリンクもよく活用されています。

7. ガムを噛む

 

これも同じく定番ですが、ガムやシュワシュワなアメを食べるというのもよくやられているそうです。実践する場合の注意点は甘すぎるものを控え、辛めのものを選ぶこと。(度がすぎてるものは控えて、健康に差し支えない程度に)

8. 話す、歌う

 

眠くなってきた時に無言でいるのは危険です。誰かが一緒に乗っている場合には運転の妨げにならない範囲で会話をしてみてはいかがでしょうか。1人の場合はアップテンポの音楽をかけたり、歌ってみるのもいいでしょう。

9. 居眠り防止アラームの活用

いろいろなタイプのものがあるようですが、中でも一般的なのが耳にかけるタイプのセンサーです。装着した状態で頭が一定以上傾くと、センサーが作動してバイブや音で起こしてくれるという優れもの。これさえあれば絶対に大丈夫とは言えないかもしれませんが、持っておくともしもの時に安心できるかもしれませんね。

居眠り運転の対策2 – 最新テクノロジー

 

ここまでは一般的な対策を紹介してきましたが、テクノロジーの発展が目覚しい現代社会では居眠り運転対策もどんどん進んできています。

眠気の予兆を検知するウェアラブルセンサー

先ほど紹介した居眠り防止アラームをさらに進化させたツールと言えるかもしれません。富士通が開発・販売している「FEELythm(フィーリズム)」は、聴診器のような形をしているウェアラブル端末。本体を首にかけ、センサーを耳に装着して使います。

  • 耳たぶの血管からドライバーの脈波データをセンサーで収集・分析し、眠気の予兆を検知
  • 音声や振動で通知。ドライバー本人に加えて、運行管理者への通知も可能
  • 収集したデータを元にドライバーごとの眠気を可視化

ウェアラブル端末で個人の健康に関するデータを取得し、解析するサービスというのは数年前から増えてきていますが、これを居眠り運転に活用したツールもいくつかでてきています。このあたりのサービスは今後普及していくかもしれませんね。

まばたきや視線の変化から眠気を察知するメガネ

ブルーライトカットメガネでおなじみJINSブランドを手がける株式会社ジェイアイエヌは、おしゃれなメガネだけではなく、こんなハイテクなメガネも手がけているんですね。

JINS MEME DRIVE (ジンズ・ミーム・ドライブ)というアプリは、JINS MEME ESという専用のメガネと連携することで眠気を通知し、安全運転のサポートをしてくれます。

JINS MEME ESは3点式眼電位センサー・加速度センサー・ジャイロセンサーという3つのセンサーが搭載されていて、まばたきや視線移動といったデータを収集できる機能を持った特殊なメガネです。これを装着することでドライバーの目の動きを取得・分析し、健康状態を察知します。

テクノロジーで居眠り運転事故は減る?

 

居眠り運転の現状からはじめて、その原因や対策などを紹介してきましたがいかがでしたでしょうか? 特に最後に紹介したような新たなテクノジーによって、居眠り運転事故をどれくらい減らすことができるか、非常に興味深いです。

今回はウェアラブル端末の事例を2つほど紹介しましたが、たとえばハンドルやシートに特殊なセンサーやアラート機能を内蔵したものや、人工知能を活用したモニターなども開発されてきています。こういったツールやシステムは今後もどんどん登場するでしょうから、今後も定期的に紹介していきたいと思います。

営業車の事故率と保険料を下げる仕組みとは?

関連記事

SNSで最新記事をご購読ください
TOP