企業が行うべき安全運転管理とは

業務中の交通事故は、事業社側に大きな損害をもたらします。金銭的な損失から社会的なイメージダウンや信頼の低下など、その影響は計り知れません。公共交通安全を守る意味でも自社の従業員やその家族を守る意味でも、各事業者は細心の注意を払って事故を予防し、業務中の安全運転も徹底する義務があります。

以前のエントリーで安全運転とは何かについてご説明しましたが、今回は事業者側が安全運転を徹底していくために具体的にどんな対策があるか見ていきましょう。

なぜ運転に慣れていても事故を起こすのか

 

運転に慣れているはずのベテランのドライバーが事故を起こす原因はなんでしょうか?
日々仕事で車両の運転をしているので慣れているし自信がある。しかしだからこそ、基本的な安全運転への意識は薄れてしまいがちになっているのではないでしょうか。

交通ルールは守れているか、譲り合いや思いやりのある運転を心がけているか、無理な追い越し運転はしていないか、危険の予測をしながらハンドルを握っているか…..
安全運転とは運転技能もさることながら、余裕を持って運転する「意識」を持つことが大事とされています。

ここはいつも走っている道だから安全だと油断したりせず、車通りが多くない道でも左右確認や一時停止を丁寧に行う。進路変更の際はきちんとウインカーを出す。これらは基本的なことではありますが、とても重要なことです。

危険の予測すらしていない時に事故は起こり、さらには急いでいる時など心に余裕がなく焦った心理状態での運転が一番危険とされています。
改めて「安全運転」とは何かという認識を合わせるために、どんなことができるでしょうか?

気軽に受けれる安全運転講習の活用や教育

警視庁をはじめ交通安全協会や安全運転管理協会、自動車教習所などが各地で開催している安全運転講習会。基本の運転指導から危険回避のための運転といった実技はもちろんのこと、交通安全ビデオなどを活用した講話や、自分の運転特性を知る適性検査まで受けられます。個人はもちろん、会社や事業所での利用も可。

警視庁が開催している講習会に関しては、参加費が無料で午前9時から午後4時までしっかり安全運転について学べます。一日足らずで自身の安全運転への見直しを行えるでしょう。会社全体の運転技能を向上させたい、また、自分の運転に自信のないという方やスキルアップを望む方は気軽に参加してみてもいいかもしれません。
講習とはいえ本番と同じ。初心に戻り運転しやすい服装と履物で挑みましょう。

講習で車両の特性や安全運転の必要性を頭で再認識し、実技で第三者目線から自分の運転癖を指摘してもらうことで、運転に関するスキルを上げてくれるはずです。

忙しくて講習にはなかなか行く時間がないけど、会社としては安全運転への意識を徹底して向上させたい…そこで役立つのが安全運転における教育です。
簡単に受けることができる、場面別・「交通安全知識テスト」や、状況別・「危険予測に関するテスト」。事故削減・安全運転管理をサポートするSSD研究所がこのような教育用資料を無料で公開しています。

また、国土交通省からも安全運転の指導を前提として、トラック・バス・タクシー向けに安全教育マニュアル「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」を策定し展開しているので、安全運転教育の一貫として、活用してみてはいかがでしょうか。
このような教育を定期的に行うことが安全運転に対する知識や認識を高めることにつながります。

安全運転を守る?安全運転管理者の選任制度

道路交通法第74条では、一定台数の自動車の使用者はその使用の本拠地ごとに「安全運転管理者」やそれを補助する「副安全運転管理者」を選任して公安委員会に届けることが決められています。
この制度は事業所における安全運転管理を徹底するために設けられました。

また、その選任基準においては、道路交通法施行規則第9条の8に定められています。

安全運転管理者等の選任の基準

乗車定員11人以上の自動車は1台以上、それ以外の自動車は5台以上を使用している事業所(自動車使用の本拠)には、安全運転管理者の選任が必須。

自動車20台以上40台未満につき一人、以下20台ごとに一人ずつ副安全運転管理者の選任が必要となります。
なお、自動二輪車1台は0.5台として計算し、50cc以下の原動機付自転車は含みません。自らが執務している事業所(自動車使用の本拠)であれば、社長を選任することもできます。

安全運転管理者や、副安全運転管理者を選任しなかった場合には、「5万円以下の罰金」(法人等両罰5万円以下の罰金)という厳しい罰則が定められています。

安全運転管理者の資格要件

年齢は20歳以上 (ただし、副安全運転管理者をおく場合は30歳以上)、自動車の運転の管理に関し、2年以上の実務経験を有する方が対象。

副安全運転管理者においては、20歳以上で管理経験が1年以上または運転経験が3年以上の方が対象となります。

さらに共通事項としては、過去2年以内に公安委員会から解任命令を受けていないこと、ひき逃げ、酒気帯び運転、飲酒運転に関し車両などを提供する行為、酒類を提供する行為及び依頼・要求して同乗する行為、麻薬等を使用しながらの運転、無免許運転、自動車使用制限命令違反、過労運転、放置駐車違反等の下命・容認などに該当する場合は選任できません。
現在選任されている安全運転管理者、又は副安全運転管理者が上記違反を犯すなどして不適格となった場合は、使用者は自主的に解任すべきですが、それを怠った場合は公安委員会が解任を命ずることができます。

道路運送法・貨物自動車運送事業法で「運行管理者」の選任が義務付けられている事業所(例えばタクシー事業者や貨物運送事業者)は、安全運転管理者の選任は免除されています。
安全運転管理者等を選任又は解任したときは、その日から15日以内に公安委員会(自動車の使用の本拠の位置を管轄する警察署)へ届け出なければなりません。

資格要件を備え選任された安全運転管理者は、具体的にどのような業務を行うのでしょうか?

安全運転管理者が行う業務とは

道路交通法施行規則第9条、内閣府令で定められている安全運転管理者の業務は以下の通りです。

1.運転者の適性や処分等の把握

運転者の適性、技能、知識や運転者が道路交通法等の規定を守っているか把握するための措置をとること。

2.安全運転確保のため運行計画の作成

最高速度違反、過積載、過労運転等の防止に留意して、自動車の運行計画を作成すること。

3.長距離、夜間運転時の交替要員の配置

運転者が長距離運転又は夜間運転となる場合、疲労等により安全な運転を継続することができないおそれがあるときは、あらかじめ、交替運転者を配置すること。

4. 異常気象時の安全確保の措置

異常な気象、天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、運転者に必要な指示や措置を講ずること。

5.点呼等による安全運転の指示と健康のチェック

運転者に対して点呼を行う等により、飲酒、過労、病気などによって正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えること。

6.運転日誌の記録

運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させること。

7.運転者に対する安全運転指導

運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行うこと。

公安委員会は、安全運転管理者や副安全運転管理者に安全運転に必要な知識等を習得させるため、法定講習(安全運転管理者等講習)を実施しています。
自動車の使用者は、公安委員会から路交通法第108条の2第2項第1号(安全運転管理者等に対する講習)に規定された講習の通知を受けた際、選任している安全運転管理者等に、その講習を受講させる義務があります。

この講習は安全運転管理者に選任された人が受けるもので、自動車及び道路交通に関する知識やその他自動車の安全な運転に必要な知識、自動車の運転者に対する安全教育に必要な知識及び技能、安全運転に必要な知識及び技能について学びます。

自動車の台数が基準以下になる、事業所が別の警察署管内に移転、又は事業所が閉鎖することになったときなど、安全運転管理者は解任となります。
また、「安全運転管理者の選任の資格要件」を備えなくなった場合、及び交通安全教育指針に基づく職場の交通安全教育を怠ったため自動車の安全運転が確保されていないと認められた場合は、公安委員会が自動車の使用者に対し解任命令を出すことができます。

安全と健康を守るために受けるべき適性診断

事業者は、事故惹起運転者、初任運転者、高齢運転者に対し、国土交通大臣が認定する適性診断を受講させなければいけません。

初任運転者が受ける初任診断とは、その診断の結果を基にプロドライバーとしての自覚、事故の未然防止のための運転行動等及び安全運転のための留意点等について助言・指導を行うもの。
これは事業者が新たに採用をした場合、採用者の運転スキルや安全運転の意識をはかるために行います。

道路貨物運送の就業者には若手就業者の割合が低く40代~50代前半の中年層の占める割合が44%弱、さらに上がりつつあるドライバーの平均年齢。
定年後も働きたいと望む方が増え、高齢者の就業は緩やかな増加傾向にあります。
65歳以上の高齢者を対象に受診する診断は、加齢による身体機能の変化の運転行動への影響を認識してもらい、事故の未然防止のための身体機能の変化に応じた運転行動について助言・指導を行いましょう。

安全運転管理はドライバーを守るために必要なもの

運転業務は常に危険が伴うものです。その作業からドライバーを守るためにも「安全運転」を行うための意識を擦り合わせていく必要があります。

業務効率を上げるためにも守っていきたい安全運転。なぜこのような交通の規則が定められているか、ドライバーにその根拠について正しく理解し納得してもらいましょう。ドライバーがプロとして責任を持って仕事に従事するために、社内での目標や安全運転に対する目的を明確化し、適切な指示や教育を行いたいですね。

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