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物流の要!知られざる倉庫業の特徴とその役割

物流業界の一部を支えており、欠かせない「倉庫」の存在。インターネットでのショッピングが一般的になった今、物流倉庫の需要は大幅に拡大しています。物流については前回「意外と知られていない物流の仕組み」で大枠を説明しましたが、今回はその中でも一番初めに行われる業務が入庫・保管を行う、倉庫業について詳しく見ていきましょう。

物流の要!知られざる倉庫業の特徴とその役割

倉庫業って何?

倉庫業は生産と消費を結び、私たちの生活の基盤を支えている極めて公共性の高い産業です。荷主から寄託を受けた物品を保管する事業として、物流業の中においても非常に重要な役割を担っています。ここでズレなどが生じてしまうと後の業務にも影響を及ぼしてしまうため、一番要となる部分だと言えるでしょう。

日本の倉庫業は旧財閥系を中心に、なんと明治時代から続く歴史ある業界です。「倉庫業法」により規制対象とされていましたが、2002年4月に倉庫業法が改正されたことから、物流の効率化及び競争力の強化を目的として、許可制から登録制への変更や料金事前届出制度の廃止などが行われています。

倉庫業は、倉庫業法第6条第1項第4号により倉庫及び敷地について所有権を有することが要求されおり、倉庫業者としての登録を受けるためには「倉庫の種類毎に定められた施設・設備基準」を満たすとともに、事業を適切に管理運営するための「倉庫管理主任者」を選任することが義務づけられているため、多額の設備投資が必要とされています。日本では船舶による貨物輸送が発達していたことから港湾地域に倉庫が立地することが多く、倉庫各社は貨物の船積み及び陸揚げ並びにその荷捌き等の港湾事業も提供してきました。

物流倉庫は次の運送手段に切り換えるための一時保管場所として、また、送り先が配達日を指定している場合の保管場所という役割も含まれ、どの荷物をいつ、どれだけの量で出庫させるかを把握するための仕分けと管理が行われています。どんな商品でも、送り主から届け先には適切なタイミングで適切な量を運ぶ必要があり、これを可能にしているのが物流倉庫の存在なのです。

倉庫の種類と倉庫業の主なサービス

倉庫には一般的な建屋型の倉庫を始め、湿度と温度を24時間一定に保つ定温倉庫、消防法で指定されている危険物や高圧ガスなどを保管する危険品倉庫、燻蒸できる燻蒸倉庫、外国貨物の積み下ろしや運搬など、税関長の許可を受けた保税蔵倉庫、防塵性・防カビ性の高いトランクルームなど、用途や荷物によって様々な種類があります。
また、倉庫では主に以下のようなサービスが提供されています。

検品

貨物が適正か荷物の個数に間違いがないか、荷物に傷や破損がないか検査を行う。

入庫

貨物の特性に合わせて決められた保管場所への、在庫や商品日付、機械番号などの管理と様々なモノの保管。品質を落とさないように荷物を保管場所に置く。

流通の加工

貨物が適正なものか、個数に間違いがないかなどを確認します。包装、詰め合わせ、ラベル貼り、検針、荷札付け、値札付け、アソート、組み立て、反物カット、マーキングなど。

ピッキング

入庫順、日付順など、伝票や指示書によって商品や製品を取り出す。

仕分け・荷揃え

個数に間違えがないか確認し、配送先別、方面別に仕分けを行い、トラック単位に荷揃えをする。

出庫

指定された時間に合わせて出庫

さらに最近は益々倉庫が増床し、そしてサービスの在り方にも変化が見られているようです。

倉庫内の保管場所を指すロケーションとは

倉庫内において商品の保管場所を示す住所のことをロケーションと言います。人がどこのどの建物に住んでいるかを把握するのと同じく、倉庫内の商品がどこにあるのかをわかるように示し、それを在庫管理に紐づけて管理をするのです。これによって、出荷の際に商品を探し回るという手間をなくします。ロケーションには「固定ロケーション」と「フリーロケーション」と呼ばれるものがあります。

固定ロケーションとは、アイテム毎に保管する場所を決めることを言い、どこに何があるのかを把握しやすくするものですが、場所が空いても他のアイテムは置くことがません。逆に、商品が置ききれない時は、別の場所に保管することに。しかしアイテムの入替があれば、置き場所を決定・変更する必要もあります。

一方、フリーロケーションは空いている場所に保管していくもので、入力やデータ処理が複雑になり、システム化されたロケーション管理が必須となります。しかし、固定ロケーションと比べると場所が空いているのに置くことができないということがないというメリットがあります。

扱う商品によってどちらのロケーションにすべきかが変わってきます。さらなる倉庫のデジタル化こそ、ロケーション管理における効率化を進めるのです。

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倉庫業界の動向

倉庫業界の主要企業では、顧客から保管・荷役・運送といった物流業務の全工程を一括して請け負う、サード・パーティ・ロジスティクス(3PL)の展開が進んでいます。3PLは1990年代に欧米から入ってきた新サービスであり、日本では「荷主に対してロジスティクス改革を提案し、包括的にロジスティクスサービスを受託する業務」という定義がなされています。

倉庫の主要な企業の中には、メーカー系物流業者として培ってきた取り扱いノウハウや3PLの効率的な運営に必要な情報システム及び顧客基盤の拡大を目的とした3PL事業の強化のためのM&Aを行っている会社もあり、近年は、国内外の一体化したグローバルネットワークの強化のため、海外の物流事業に強みを持つ企業へのM&Aや出資も活発になっているようです。

国際貨物輸送事業を手掛けるエーアイティー(AIT)は、総合物流サービスを提供する伊藤忠ロジスティクスとの間でベトナムに合弁会社「AITC LOGISTICS (VIETNAM) CO.,LTD. (仮称)」の設立を発表。現地事務所をいち早く法人化し、更なる国際輸送サービスの拡充を図っています。国際貨物運送以外に、日本国内外で倉庫事業及び配送センター事業でも実績を持つ伊藤忠ロジスティクスとの協業により、ベトナム国内での3PLを展開していくための布石になると判断し、合弁会社を設立しています。

主要な顧客である日系企業の進出先が全世界的に広がりつつあります。そのため、住友倉庫がサウジアラビアに現地資本との合弁会社Rabigh Petrochemical Logistics LLCを設立したように、北米や欧州以外にも、アジアや中東でもグローバルネットワークの強化を進めていく流れが活発です。日本通運はタイの合弁会社、タイ日本通運倉庫を連結子会社化し、10月3日、社名を「日通ロジスティクスタイランド」に変更すると発表。競争力を高めるため経営の迅速化が必要と判断し、タイ側パートナーの持ち株を取得しました。

従来の日本発着の国際輸送業務から三国間の国際輸送業務の強化の動きが見受けられ、海外における日系企業に対して、日本国内と同水準の保管品質や納期を進出先の現地で提供できる組織体制やグローバル人材の強化が今後の成長の鍵になると考えられます。

ECの急成長で変わりゆく倉庫業

スマホやタブレットの普及により急激に拡大しているEコマース産業。インターネットの利用者と取扱商品は増加の一途をたどり、今やコンビニエスンスストアの売上げを凌ぐ勢いで成長しています。2016年はamazon単体だけでも(日本事業のみ)売上げが1兆円を越えているのだとか。

このような時流を踏まえて、大型の物流倉庫が年々増えています。2万㎡以上の施設床面積を占める割合も増加し、商社を始め外資系企業や大手総合デベロッパーなどが物流不動産開発に参入。国土交通省は、2017年5月の時点で倉庫・流通施設の請負契約額は2016年の同月と比べ2.2増の723億2300万円と発表。うち、運輸・郵便業は242億7300万円で最も多くなっています。

2014年には大和ハウスとファーストリテイリングがインターネット通販の強化に向けた物流新施設を運営する新会社を設立すると発表し、2017年には有明にオフィスを併設した倉庫を設けました。敷地面積は3万6309㎡で、延べ床面積は11万2402.87㎡。顧客のニーズに対応できる多機能物流拠点を中心とした、新たな物流スキームの構築を目指すとして走り出しました。今後は倉庫業全体おいて、倉庫拠点から店舗、ECサイト、顧客に届けるまでを一元管理できるような仕組みやシステムの開発が進んでいくことが予想されます。

また、東京海上日動火災保険は、危険場所の予測や業務改善を目的とする、作業員の動きをセンサーで読み取って作業フローを「視覚化」する物流倉庫作業者向けサービスを2017年度内に開始すると発表。

多店舗展開を行う外食チェーン・フードサービス企業内では、複数の物流センターの入出庫実績、月間の出荷高、荷役保管料などの様々な物流データと、受注・発注データなどの商流データをいかに可視化し、いかにして全体の効率化を進めていくかが見直されています。このように、倉庫業はただの「倉庫」としての機能だけでなく、クラウドを活用して業務の効率化を加速させる、次世代の倉庫サービスの展開を進めようとしているのです。

商品の保管だけじゃなく、倉庫は「サービス」に

物流業界全体でサービスの高度化や複雑化は増しており、近年の物流倉庫は保管以外にも様々な役割を請け負うようになっています。検品や仕分けといった倉庫ならではのものから、組立、梱包、補修といった本来工場で行う作業、各種事務処理、販売者に代わって顧客の応対をするコールセンター業務など多岐に渡ります。

倉庫内の作業をより正確かつ円滑に進めるために、商品の1つ1つに採番された追跡番号を読み取り配送システムに登録するオペレーションなど、IT技術も積極的に導入されています。1つの倉庫に保管する商品の種類は膨大になってきているため、全てを正確に把握するためにもIT技術は不可欠なもの。さらに技術開発は進んでいます。

倉庫業は時代とともに、大きな変貌を遂げようとしているのです。

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