• facebook
  • twitter
  • rss

運転診断から読み解く — 個々のドライバーの課題に応じた安全運転教育を

法人向けクラウド車両管理サービス 事故予防・コスト削減・業務効率化・コンプライアンス

「安全運転教育や研修をしたいとは思っているけど、まず何から始めればいいのかわからない。」

「ドライバーの運転状況を知って事故を減らすことを目的に車両管理システムを導入したけれど、取得したデータがうまく活用できていない」
「データをどのように見れば活用できるのかわからない。」
動体管理システムなどを導入後、そんな課題に直面した管理者の方は少なくないのではないでしょうか。

今回は企業向けに安全運転教育や講習を行っている“安全運転研修のプロ”株式会社ムジコ・クリエイトの野藤智(のとう・さとる)さんに、動態管理システムなどで計測したドライバーの運転データをどのように見るべきか、それをもとにどのような安全運転研修が行えるかについてお話を伺いました。

適切な安全運転研修を行うには、ドライバーの運転特性を知るべし

— 主な事業の一つとして企業への安全運転教育や講習を行っているムジコ・クリエイトさん。一年を通して、どのように研修を行ってらっしゃるのでしょうか。

ムジコクリエイト・野藤様(以下野藤):「新年度がスタートしましたらまずは新入社員の研修から始まり、次に社内全体に対する安全運転の意識付け、ターゲットを絞ったマンツーマン研修、という流れが多いですね。あとは季節ごとに発生する事故の傾向がありますので、その傾向に合わせた安全運転研修も行っています」

 

— 季節ごとの傾向というのは、例えばどんなものを指すのでしょう?

野藤:「9月〜11月は比較的、薄暮時(夕暮れ時)の交通事故が増える傾向にあるんですね。この時期は春や夏と違って16時をすぎるとあたりが一気に薄暗くなり、屋外の明るさが日没後30分間で急激に変化します。それに、通勤や通学の時間とも重なるため、他の時間帯と比べて事故のリスクが一気に高まるんです。また、この時期は飲酒運転防止の取り組みを行う企業さんも多くいらっしゃいますね」

 

— この時期以外にも台風や雨が多い時期は視界が悪くなりますし、冬であれば積雪・凍結によって道路そのものの状態が悪くなり一気に危険が高まりそうですよね。一年を通して事故が起こらないよう細心の注意を払いながら業務を行う必要があるとは思いますが、事業者側はドライバーに日頃からどのような安全運転の指導をすべきでしょうか。

野藤:「基本的には急加減速のデータと、車両の傾き、つまりGがどのようにかかっているかという2つの要素でドライバーの運転の癖がある程度わかります。この運転の癖は十人十色であり、一人ひとりの特性は異なります。そのため、適切な安全運転研修を行うためには、御社の「SmartDrive Fleet(スマートドライブフリート)」のようなシステムなどでまずは各ドライバーの正確な運行データを取得し、運転特性を見える化することが非常に重要になってきます。効果的に交通事故を減らしていくためには、すべてのドライバーに対して一様な内容の研修を行うのではなく、対象者の運転特性に合わせてカスタマイズした安全運転研修や指導を行わなくてはなりません」

運転診断から異変やリスクを読み解く

各ドライバーの危険挙動を検知し、いつどこでどのようなGが発生したかを可視化(SmartDrive Fleet)

— SmartDrive Fleetでは、デバイスに内蔵されているセンサーが運転中に生じた加速度(G)と加加速度(ジャーク)を計測します。その計測されたデータをもとに、走行中に発生した危険挙動(急加速・急減速・急ハンドリングなど)を数値化して分布図で表示することができますが、これらの情報から、具体的にどのような運転特性を見分けることが可能でしょうか。

野藤:「大抵、計測開始後1週間ほどデータを蓄積していけばドライバーの運転の癖や特徴が見えてきます。以前、私たちがある企業のドライバー数名のデータを計測したところ、二名のドライバーに特徴的な傾向が現れました。

一名は日によって運転傾向に大きな差が出ます。そこで私たちはこのドライバーさんが運転に慣れていないか、性格が真面目すぎるか、二つ要因を仮説として立てました。管理者に聞くとこの方はすごく真面目な方だという。このような方の場合、その日に訪問するお客様のニーズなどから“自分はこうあるべきだ”と強く思ってしまうため、運転に集中できない状況に陥ってしまうんです。

もう一名は普段は急加減速が3〜4回程度なのに、ある1日だけ50回近く発生していました。この日は走行距離が200㎞を越えていたので『時間内に間に合わせなくては』という焦りが運転に反映されたのではないかと予想しましたが、翌日、同じ距離を走っている割に穏やかな運転をしていることがわかりました。

安全運転管理者はこうしたデータ結果の違いや変化にいち早く気づく視点を持ち、『この日に何かが起きている』という仮説を立てる必要があります。特に焦りからくる急加減速は事故に結びつきやすいので、管理者は即座にドライバーにヒアリングをして、このドライバーにはこんな指導をしよう、こういう業務の割り振り方をしようと判断していかねば、そのドライバーの運転は改善されていきません。

普通の面談やドライブレコーダーの映像だけで診断をしようとしてもこのような情報は取得できないため、正確で細かいデータを見える化するSmartDrive Fleetのようなシステムが重要になってくるわけです。加えて、他の日の走行距離と比べてどうか、外的な要因か内的な要因か、様々な角度から原因を分析していくことが事故削減へのカギとなります」

— 動態管理システムでは様々なデータを取得できますが、管理者が必ずチェックすべき項目はなんでしょうか?

野藤:「必ず見るべき項目は時間と曜日、そして距離や訪問件数からみる急加減速と急ハンドルの発生割合です。

1㎞あたりの急加減速率はどうか。長距離運転している場合は10㎞あたりでみると良いでしょう。ただ回数だけを見るのではなく、距離と合わせて急加減速や急ハンドルの回数の割合を出します。

時間については、通勤・通学時間の朝7〜9時と夕方の16時〜18時は道路利用者が増え、全体的に事故が起こりやすいというデータが出ているんですね。ですので、その時間帯にドライバーの危険運転が多く見られた場合、事故発生率がググッと高まることが想定されますのでそれ相応の対応が必然になってくる。このように、データは掛け合わせながら見ていくことが大事です。

また、曜日によって特性が出るような人もいるので、取得したデータを元に、ドライバー一人ひとりの人の癖や特徴を分析してみると良いでしょう。2016年度の交通事故の死者数は人数だけで見るとワースト1位が愛知県、2位が千葉県でした。しかし、この結果を人口10万人当たりで見直すと福井県や徳島県が上位に入ってきます(交通局交通企画課「平成28年中の交通事故死者数について」より)。このように、総数だけで判断するのか、人口を加味して割り出すのかで結果が大きく変動するんですね。

つまり、数字はあくまで表面的なものなのでそのまま鵜呑みにするのではなく、分析というフィルターを通してフィードバックをしていかなくてはならないということです」

蓄積されていくデータを研修・指導に活かす

— 企業全体の運転傾向やリスクを見るには、危険挙動の多い時間帯などの状況を見ていくことで把握していけるかと思いますが、SmartDrive Fleetで取得したデータをもとに管理者はどのようにしてPDCAをまわしていけばいいのでしょうか?

野藤:「交通事故を完全になくすような特効薬なんて現実には存在しません。したがって、例えるなら、私たちは服用を続けることで徐々に効果が現れてくる “漢方薬”のようなやり方を心がける必要があると各企業様にはお伝えしています。

動態管理システムを数週間取り付けたからといってそれだけで運転が劇的に改善したりするわけではありませんので、データを蓄積していきながら運転がどのように変化しているかを継続して観察していかなくてはなりません。導入した月と半年後を比べて効果がどのように現れているか、長期的な視点で見ることも大事です。

チェックの頻度は毎日行うのがベストですが、交通安全のPDCAは年間に最低でも2回は回して欲しいですね。人数の多い企業さんであればドライバーの免許更新のタイミングで行うと良いでしょう。一度の安全運転研修や講習でドライバーが意識を保ち続けていられるのがだいたい3カ月前後、コーチングメソッドでの教育であればもう少し長い期間持続するというデータもありますので、一度高まった意識が0に戻る前に、再度、ドライバーへ刺激を与えましょう。

実施する安全運転研修も、毎回同じ内容で実施するのでは意味がないのでバージョンアップしていく必要がありますが、その時にも蓄積したデータが活きてきます。半年間の運転傾向をもとに指導すべき方向性が明確になり、適切な研修を実施できるからです。安全運転教育のPDCAを回しながら、「もし、交通事故を起こしてしまったら自分の人生はどうなるのか」といったことに気づきを促すような教育を実施することで運転の仕方も変わってくるのではないでしょうか」

 

— ドライバーの運転データをもとに企業全体の指標や企業内で危険運転の基準を決めるには、どのような手順を踏めば良いのでしょうか?

野藤:「まずは企業内の状況や傾向を知るためにデータを取り、そこから1㎞あたりに加減速はどの程度に抑えるかといった目標値を設定します。目標値を決定したらそれを達成するためにはどういう取り組みをすべきか、行動計画を決めていくという流れになります。

一日あたりはどうか、走行距離に対してどうか、定めた目標値は様々な角度から見ることができます。しかし、急加減速をいきなりゼロにすることは非常に難しいので、まずは自社の現状や傾向から、一旦どこを目標に置いて減らしていくべきかを考えましょう。そしてその数値が落ちた時に結果として何がイコールになるのか、動機付けがなくてはなりません。燃費を減らすことなのか、事故を減らすことなのか、ドライバーの精神的な負担を減らすことなのか、何を基準にしながら整合性を取るべきかを考えましょう。

もし、燃費を減らしたいならば急加速を減らす。事故を減らすことを一番の目標とするならば急ハンドルと急減速の回数を減らすといったように、具体的な取り組みが考えやすくなります。

SmartDrive Fleetだと、Gの傾きと癖が目に見えてわかる。

 

車両は基本的に直進で走っている時が一番安定していますが、少しでもハンドルを切るとバランスを崩して危険な状態になってしまうんです。その状態でブレーキを踏んだりアクセルを操作すると…如何に危険が隣り合わせであるか、想像できますよね。それで言うと、SmartDrive FleetのG-Force Mapは軸のずれを見える化してくれるのでドライバーが普段どちらに傾いた走行をしているかがわかりますし、癖を直すために適切な指導を行える。危険だからやめましょうと一方的に指示するのではなく、データを見せながらドライバー自身が自分の運転の癖に気づけるよう支援してあげることで意識も変わっていきます。このように、安全運転管理者はどんなデータが取得できるのか、利用するシステムや機器の特性をよく学ぶことも大事なことですよ」

データを取るのはドライバーを守るため

— 安全運転研修や心がけの中で一番重要なことはなんでしょうか。

野藤:「安全運転管理者様にお伝えしたいのは、いつもとは違う運転傾向や危険運転のデータを取得したら、そのドライバーに対して個別のヒアリングをしてほしいということです。

そのためには日頃からドライバーとコミュニケーションをとって、本音で話せるような環境を作ることが重要。人間ですので、その日の体調や仕事量によって運転の傾向は日々変化します。その時になんでも気軽に相談できる頼れる存在がいないとすべて自分で抱え込んでしまって、そのプレッシャーから事故の発生率を上げてしまいますので、ドライバーが毎日心身ともに安心して運転できる環境をつくることが重要です。

『今日は普段と違った運転をしているけど、何かあったの?』と声をかけてあげる。グループを作って、同じドライバー同士で声を掛け合う環境をつくるのも良いでしょう。管理者は決して『こんな運転をしてはいけない』と威圧的に注意をするのではなく、状況や原因に耳を傾けた上で『いま自分(ドライバー)ができる範囲内で何をすべきか』に気づいてもらう事が大事です。

朝寝坊をした人に「急ぐな」と言うのは無理なことでしょう。即ち、急ぐ時には急ぐ時なりの対応を考える必要がある。何かしらの理由で運転中に集中していないのであれば、考え事をする時間をどこで設けるべきか、意識配分の仕方をドライバーに教育するのです。

日々、システムで監視や管理だけしているという印象を与えてしまうと、ただでさえ時間的な制約などのプレッシャーが大きい環境で働くドライバーに、さらなるプレッシャーの負荷をかけるようなことにもなり兼ねません。

運転情報を取得できる動態管理システムの本質は、ドライバーの身を守るためであるということや、そのためにドライバーの運転健康診断を行っているんだということをちゃんと伝えて、健全で適切なPDCAを回していくことが大切ですね」

 

【プロフィール】
野藤智(のとう・さとる)
株式会社ムジコ・クリエイト 東京営業所 所長
1992年、指定自動車教習所指導員として初心運転者教育に携わる。
2003年より自動車安全運転センター安全運転中央研修所実技教官として出向。
(2017年、度安全運転中央研修所、委託講師として、安全運転管理者課程等の一部理論研修を担当)
2007年に帰任し本格的に企業運転者向け研修に従事。
交通事故を減らすためには、企業運転者のメンタル ヘルスケアも重要であることから、主任交通心理士、産業カウンセラーの資格を取得。
2014年4月株式会社ムジコ・クリエイト東京事務所開設に伴い、東京を拠点に全国の道路利用者の交通事故 を削減するため全国で活動中。

法人向けクラウド車両管理サービス 事故予防・コスト削減・業務効率化・コンプライアンス
営業車の事故率と保険料を下げる仕組みとは?

関連記事

SNSで最新記事をご購読ください
TOP