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車両管理規程とは?作成の仕方と9つのポイントを解説

車両管理規程とは、従業員が業務中に使用する車両に関して企業が定めるルールです。物流トラックやバス・タクシーといった「緑ナンバー」車だけではなく、営業や配送、送迎といった様々な用途で使われている「白ナンバー」車を利用する場合にも、必ず必要となります。
この記事では、車両管理規程を作成する必要性と目的、盛り込むべきポイントについて解説します。

車両管理規程とは?作成の仕方と9つのポイントを解説

車両管理規程とは

車両管理規程とは、従業員が業務中に使う車両に関して企業が定めるルールのことです。ドライバーが業務遂行中に交通事故を起こしてしまった場合、企業は損害賠償責任を負う可能性が高くなります。そのようなリスクを防ぐためにも、車両管理規程を作成して社用車の運用ルールを厳格化することが必要となります。

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車両管理規程が必要な理由

車両管理規程を定めることがなぜリスク回避に繋がるのか。それは2つの法律と関係があります。

民法第715条「使用者等の責任」

この法律には、従業員による事故について法的な責任を負う根拠として『使用者責任』の記載があります。

使用者責任とは、企業が雇用した従業員が業務中の不法行為により第三者に損害を与えた場合に、雇用主がその損害賠償責任を負う制度のことです。これは当然、社用車の運転中に起きた事故にも適用されます。

従業員が業務として車両を運転した際に、急なハンドル操作により歩行者と接触しけがを負わせてしまった場合、当該の従業員が歩行者に損害賠償責任を負うのに加え、企業も使用者責任として損害賠償責任を負うことになります。

しかし車両管理規程を定めておくことで、万が一事故が発生した場合でも、日頃から従業員に対して注意を喚起していたと認められ、使用者責任が発生しない場合があります。

道路交通法第74条の3「安全運転管理者の選任」

道路交通法(道交法)は、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑、及び道路の交通に起因する障害の防止を目的とした、警察庁が管理する法律です。2022年度に道路交通法施行規則が改正され、安全運転管理者の業務ににアルコールチェックが追加されるなど、近年厳格化が進んでいます。

また、「ながら運転」のように、違反内容によっては即免停や懲役刑といったことも起こりえます。法律で定める規程の解釈が従業員ごとに異なり「違反とは知らなかった」といった事象が発生しないよう、車両管理規程を定めて具体的な運用ルールを明確化することで、道路交通法違反を防ぐことが重要です。

車両管理規程に盛り込むべき9つのポイント

車両管理規程の作成時には、少なくとも以下9つのポイントを盛り込んでおくとよいでしょう。

①安全運転管理者の選任

道路交通法では、一定台数の自動車を使用する場合、企業はその使用の本拠地ごとに「安全運転管理者」やそれを補助する「副安全運転管理者」を選任して公安委員会に届けることが決められています。

安全運転管理者・副安全運転管理者とは、自動車運転の安全を確保のために内閣府令で定められた業務を行う人のことを言い、道路交通法で定められた業務を遂行することが義務付けられています。まずはこの安全運転管理者を選任する旨について、車両管理規程に明記をしておきます。

なお、安全運転管理者は選任するだけではなく、選任後15日以内に公安委員会に届け出る必要があります。届出を怠った場合、2万円以下の罰金が科されることになります。

②車両管理台帳の作成

車両管理台帳とは社用車をそれぞれ管理するために必要とされる台帳のことです。車両管理台帳には、型式、登録番号、車名や車種といった車両を特定する項目、車検や点検日などの車両の状況を把握する項目、保険に関する項目をまとめて記載しておきます。

車両管理台帳に記載する内容例
1,車両本体情報に関する事項
…車名、メーカー、初年度登録年、車体番号、ナンバー、色など。
2,車両購入・廃車・売却に関する事項
…購入先、購入価格、購入年月日、仕入れ区分、リースの場合はリース先&リース金額、廃車・リース解約年月日、売却金額など。
3,車検・定期点検に関する事項
…車検有効期限、定期点検日、業者名、車検整備箇所など。
4,メンテナンス・修理に関する事項
…メンテナンス状況、故障履歴、修理金額、依頼業者名など。
5,事故等に関する事項
…事故発生日、事故区分(自損・他損・物損・人身)、事後処理状況など。
6,使用状況に関する事項
…使用部署、使用者、使用目的、運転日報など。
7,安全運転管理者に関する事項
…管理者の氏名、選任年月日、管理担当範囲(複数人の場合)など。
8,保険に関する事項
…自賠責・任意保険の加入先、保険金額、有効年月日、証券番号、被保険運転者範囲など。

③運転者台帳の作成

運転者台帳は車両管理台帳と合わせて、交通事故発生時などに的確な処理ができるよう、管理責任を果たしていることを主張するためにも重要なものです。社内での規程に基づき運転の許可を得た運転者の氏名や部署、運転歴、事故・違反歴、免許の更新時期等を管理します。

運転者台帳を作成することで、交通事故などの際に、管理責任を果たしていると主張する根拠にもなります。

運転者台帳の記録内容例 (貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条の5より)

1, 作成年月日
2, 事業者の氏名または名称
3, 運転者の氏名、生年月日、住所
4, 雇入れ、及び運転者に選任された年月日
5, 免許に関する項目(運転免許証の番号及び有効期限、運転免許の年月日及び種類、条件が付されている場合は該当条件)
6, 違反歴
7, 運転者の健康状態
8, 輸送安全規則第10条に甲に基づく従業員に対する指導及び監督指導実施及び適正診断の受信状況
9, 運転者台帳の作成6ヶ月以内に撮影した単独、上三分身、無帽、正面、無背景の写真

④ 安全運転の確保

運転するにあたり、運転者には交通ルールを守り無事故無違反の安全運転を心がけてもらう必要があります。無免許や免許失効、飲酒運転、最高速度の違反等の禁止事項を明記し、運転手が安全運転を心がけるようにします。

⑤ 社用車の保守点検および整備

車両の整備や点検は、運転者の安全を守るためや事故を未然に防ぐ重要な対策であり、定期的にチェックする必要があります。 定期的に車検・定期点検・日常点検をしっかり行う旨を記載しましょう。

⑥ 保険の付保

自動車損害賠償責任保険への加入、任意保険への加入について記載します。

⑦ 社用車の私的使用の禁止

業務以外での社用車の利用は基本的に禁止とするのが良いでしょう。やむを得ない事情で使用せねばならなくなった場合には、許可書の提出などを求めるようにする等のルールも合せて記載しておきます。

⑧ マイカーの業務使用について

マイカーで通勤は業務上か私用か区別がつきにくくなる他、業務途中に事故を起こした場合、会社にも損害賠償責任が及ぶ場合があり、会社のリスクが高くなってしまうため、原則としてマイカー使用を禁止している企業が多数です。

しかし、コロナウィルスの蔓延等により、テレワークの推進だけでなく、密を回避した移動手段としてマイカー利用を認める方針を打ち出す企業も出てきています。そういったやむを得ない事情がある場合は、別途マイカー通勤規程などを策定し、許可基準と届出を義務づけておくことをおすすめします。

マイカー通勤規程には、使用頻度・範囲・時間・条件などを、社用車と同様に規程に記載し、周知・徹底します。また、通勤時の事故によるケガ・死亡に対する補償は、業務中同様労災認定される可能性もあるため、従業員に任意保険加入状況の確認や保険証券の提出を、マイカー通勤の条件として加えてください。

マイカー通勤規程について、詳しくはこちらの記事にて解説しています。

⑨ 事故時の対応

万が一事故が起きてしまった時の対処についても、規程に定めておくと良いでしょう。事故報告や事故処理に関してや、責任の所在などについて記載しておきます。

車両管理規程を作成するメリット

企業が車両管理を徹底すべき目的は「安全確保」と「法令遵守」です。車両管理の基準、ルールを明確にした車両管理規程を作成することは、それらの目的の達成に直結するだけではなく、万が一事故が起こってしまった場合にも、企業が管理責任を果たしているという根拠になり、賠償額が大きく異なってきます。

しかし、大切なのは規程を作成することではなく、従業員の安全運転意識向上を促し、細やかな点検・整備を徹底し、安全確保を行うことです。そこで重要になってくるのが、実際の管理遂行の責任者である「安全運転管理者」です。

車両管理規程遵守のキーマン「安全運転管理者」

企業は従業員が社有車を運転することについて、安全運転を遵守させる責任を負っているものの、従業員や所有車両が増えてくると、規程を周知・徹底させることも難しくなります。

そのため道路交通法では、定員11名以上の車両は1台、その他の車両の場合は5台以上車両を有する事業所に対して、道路交通法では代務者となる安全運転管理者を選定し、公安委員会に届け出するよう定めています。(原付を除く2輪車は1台=0,5代として算出)

安全運転管理者は、
(ア)20歳以上であること
(イ)運転管理に関する実務経験が2年以上あること
(ウ)過去2年以内に以下の交通違反をしていないもの

  • ひき逃げ
  • 飲酒・酒気帯び運転
  • 飲酒者への車両提供
  • 麻薬等運転
  • 過労運転
  • 無免許・無資格運転
  • 最高速度違反運転
  • 積載制限違反運転
  • 放置駐車…etc

など多数の要件を満たさなければなりません。

前述したように、場合によっては損害賠償責任が事業者に及ぶケースも出てきます。金銭的リスクについては自動車保険への加入によって回避することが可能ですが、社用車で事故を起こしたという社会的責任は発生します。

事故を未然に防ぐために、安全運転管理者には様々な業務が定められています。安全運転管理者の業務についてはこちらの記事にてくわしく解説していますが、車両の使用状況や、運転者の適性、さらにはアルコールチェックなど、従業員に対しては定期的な指導と確認が必要です。

今すぐ無料DLできる!車両管理規程のテンプレート

ここまで、車両管理規程について説明をしましたが、最後に、今回解説した車両管理規程の目的を具現化できる無料テンプレートを紹介します。

いずれも自社でカスタマイズ可能なワードファイルになっているため、フォーマットをベースにしながら規程の追加や削除が簡単に行えます。是非とも、従業員の安全確保や車両管理業務の改善に、お役立てください。

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