スマートシティやスーパーシティは本当に有効か?ー課題とデメリットを考える

スマートシティやスーパーシティは本当に有効か?ー課題とデメリットを考える

IoTやAI、5Gなどの先端技術やビッグデータの活用によって都市や地域の課題を解決し、快適性や利便性を向上させる。理想の世界として語られるスマートシティは、現在、官民一体となって実現に向けた取り組みが進められています。そんな「スーパーシティ」構想を実現するための国家戦略特別区域法の改正案が2020年5月27日に可決し、成立しました。

しかし、SNSでは「スーパーシティ法案に反対します」「スーパーシティ法案に抗議します」といったタグつきツイートで反対や抗議の声が広がっており、スマートシティやスーパーシティに対する懸念点が議論されています。

本記事ではあえて、スマートシティやスーパーシティが抱えている課題やデメリットについて紹介いたします。

スマートシティ・スーパーシティの実現でぶつかる5つの課題

米国のPersistence Market Researchが2017年に発表した報告書によると、2026年までに世界のスマートシティ市場は3兆4,800億ドル達すると言われており、世界の都市化がスマートシティの市場成長を10年間で19%近く増加させると予測されています。日本でも経済産業省が主導し、横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市で実証実験が行われ、2018年11月でその成果が報告されました。

その都市に合わせてより快適でより便利なまちづくりを実現すべく、国内外でスマートシティ構想が進められていますが、そこにはメリットばかりではなく、次のような懸念材料も存在します。

参考記事:スマートシティとは?~変化を続ける未来都市のあるべきカタチ~

監視社会への懸念

「そこに暮らす住民一人ひとりがより良い生活を送り、利便性の高いサービスを受けることができる」と聞けば、非常に先進的かつポジティブな未来をイメージしますが、スマートシティはインフラやサービスだけでなく、各個人の健康状態や位置情報の履歴など、あらゆる行動が可視化される、つまり監視に近いイメージがつきまとうのも事実です。

カナダのトロントでは、20年近く前より東部臨海地区の再開発計画が進められてきました。しかし、2017年の秋にグーグル系列企業のサイドウォーク・ラボがウォーターフロント・トロントと提携協定を締結。グーグルは水の使用量や空気の質、住民の散歩回数や散歩経路など、あらゆるデータをサイドウォーク・ラボに集めさせて、そのデータを活用した「まちづくり」を促進しました。エコで快適なまちづくりにはこれらの作業が欠かせないように感じますが、これは建物の内外や各通りに設置した無数のセンサーで絶えず動向を監視し、AIが動かす自動制御装置によって遠隔操作を行うもので、裏返すと人々が常に行動を監視されていることを意味します。

また、ネット通販最大手のアリババグループが本社を構える、中国の杭州市においてもAIによる都市管理が進んでいます。杭州には4000台を超える交通監視カメラと2000〜3000台ものサーバが設置され、交通警察が交通違反を監視。AIが監視カメラでナンバーを読みとり、違反があれば警察に自動通報し、違反切符を自動車所有者に送りつけています。送り迎えや荷物の積み込みで少し停車するだけという場合もすべて厳罰な対象となるうえ、日々の行動データや運転の傾向性まで蓄積されてしまう仕組みです。個人情報の監視・蓄積され、情報が全て筒抜けになってしまう…便利になればなるほど、そうした社会が実現してしまう可能性があるのです。

デバイスやシステムが故障やトラブルを起こさないかという懸念

さまざまなインフラがつながりあい、整った状態を実現するには複雑なシステムや仕組みを構築する必要があります。しかし、システムが複雑になればなるほど、トラブルや故障が生じやすくなってしまうのです。
万が一、広大な団地一角全体でシステムトラブルが発生すると、大規模なトラブルに発展する可能性が高まり、復旧までに時間を要することも考えられるでしょう。

データプラットフォーマーによるデータの寡占・独占

2019年3月20日、欧州連合(EU)欧州委員会は、グーグルに対し、インターネット広告における独占禁止法に違反したとして14億9000万ユーロ(およそ1900億円)の制裁金を課しました。近年、GAFAと呼ばれる巨大デジタルプラットフォーマーによるサービスが生活を飛躍的に向上させる一方で、それらサービスを経由して取得した個人データをもとに不透明で不公正な取引が行われていることが問題視され、2019年8月には国内でもデータ独占規制に関する指針案を公表されました。
SNSで情報を発信したり、インターネットで欲しい情報を閲覧したり、買い物をしたり、私たちは日々、インターネットを利用していますが、それは行動履歴のデータとして蓄積されていきます。それらの行動履歴は個人情報からニーズを割り出しセールスに使われたり、ターゲティング広告に流用されたり、新たなサービスの創出に活かしたりされますがインターネットと人がつながればつながるほど、データを所有する企業が有利になってしまうのです。

スマートシティの実現は日々のあらゆるデータを取得しますが、情報量や交渉力で強い立場にあるIT企業が個人のデータを吸い上げてしまうと、他の企業が新規参入しづらくなり、大手ばかりに収益が集中します。世界規模で寡占・独占が進むと、企業間の健在な競争を阻害することになり、さまざまな問題が生じてしまうのです。

ハッキングは大丈夫?セキュリティ問題

米国を拠点にセキュリティサービスの提供をしているTrustwaveが、米国政府のために働いている情報セキュリティ専門家203名を対象に実施したアンケート調査では、「政府はスマートシティに活用されている多くの技術のリスクについて理解していない」と答えた回答者が23%もいました。また回答者の1/3は、「政府はスマートシティの安全を保証できるほどの予算を確保できていない」「政治的な論争によりセキュリティが軽視されている」とも答えています。
さらには、回答者の27%が「公共のWi-Fiはもっともハッキングリスクが高い」、13%が「交通システムはセキュリティ侵害の被害をもっとも受けやすい」、11%が「監視カメラはハッキングに対して脆弱である」と回答するなど、スマートシティ化が進められるにつれて全体的にハッキングやセキュリティの脆弱性について問題視する声が増えているようです。
ロシアのモスクワに本社を構えるコンピュータセキュリティ企業のKaspersky Labの調査では、スマートシティで導入されているスピード違反取締カメラの大多数が、簡単にハッキングできることが判明したと発表しています。これは、研究者がShodanという検索エンジンでスマートシティ技術にまつわる脆弱性を調査したものですが、スマートシティ実現に急ぐあまり、安全性の確保は後回しに技術を導入した可能性があるという問題が表面化されてしまった例です。調査の結果、パスワードはかけておられず、ビデオストリームはインターネットから誰でも見ることができる状態だったとのこと。
現在においても、海外ではハッカーが地方自治体のダムシステム管理センターに侵入したり、高速道路を走行するコネクテッドカーの操縦ができなくなったり、家電機器の動きをストップさせたりするといった被害があるといいます。IoTや5Gの通信網であらゆるモノ・コト・情報がつながれば人々の生活はより利便性を増しますが、それとともにサイバー攻撃への影響、ハッキングされた際のリスクが上がることになるのです。

いくらかかるかわからない…?インフラコスト

海外でもスマートシティの定義はさまざまあるようですが、スマートシティ構築に利用されるテクノロジーはその地域の課題や独自のニーズを解決するものであり、そのテクノロジーのために支出可能な予算が異なります。

情報を活用することで無駄を省き合理的なサービスを提供する。そのためには、IoTなどのテクノロジーを私たちが普段利用しているインフラやサービスと組み合わせる必要があります。世界的な流れを見ても、限りあるエネルギーや環境の守るためには交通渋滞の緩和によるCO2の削減や事故防止が可能なスマートシティの構築が良き未来をつくるカギだとされていますが、そこで懸念されるのが多額のコストです。

電車やバス、タクシーなどの交通機関、電気・ガス・水道などの公益事業など、あらゆるインフラを整えると多額のコストがかかります。また、施設や仕組みを導入するコストだけでなく、運用やメンテナンスにかかるコストまでを考慮しなくてはならないため、構築までに長い時間がかかることが予想されますが、その一部を住民が負担することを考えると不満の声が上がることは避けられないでしょう。

まとめ

先端技術を用いて、交通や公共事業などの基礎となるインフラ、生活インフラを効率的に管理・運営し、経済を発展させていくための新しいまち、スマートシティやスーパーシティ。データを地産地消して生活の質が向上させ、エネルギーやサービスを効率的に利用できるというメリットを持つ反面、今回紹介したようなデメリットも存在します。

現在はまだ実証実験を進めていたり、実現に向けて取り組みがなされたりしている最中です。新型コロナのような感染症が発生した場合、スマートシティ・スーパーシティのあり方も見直す必要性が出てくるかもしれません。

 

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