【対談:前編】走行データでここまでわかる!– プリンシプルのアナリストに聞くデータを最大限に活用する方法

【対談:前編】走行データでここまでわかる!– プリンシプルのアナリストに聞くデータを最大限に活用する方法

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大里 紀雄
マーケティング部 部長
株式会社スマートドライブ
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木田 和廣
取締役副社長 カスタマーサクセス室室長
株式会社プリンシプル

昨今、「ビッグデータ」や「データ解析」など、データにまつわる情報を耳目にする機会が大幅に増えています。政府をはじめ、多方面からデータの重要性が説かれ、データを取得するための手段も増えてきましたが、最大限に活用できている企業はまだまだ少ないようです。

そこで今回は、Google社からGoogleマーケティング認定パートナーとして認められ、アクセス解析を軸に事業を展開している、株式会社プリンシプルのチーフエバンジェリスト、木田和廣(きだかずひろ)さんに、データの分析結果をどのように読み解き、改善へつなげていくべきか、実際の走行データをもとに解説いただきました。

モビリティデータをTableauで分析する

大里:「この記事では、SmartDrive Fleetで取得したデータを、プリンシプル社がコンサルティングする際に活用しているツール『Tableau』を利用して様々な角度から分析を行い、データをどのように活用していくべきか、どのような活用ができるのか、データを最大限に活用するための可能性を探ります。」

木田:「スマートドライブのデータは、エンジンのスタートからストップまでが1レコード(1行)にまとまっているので、加工しやすく、誰が見てもわかりやすい結果になるよう、まとめることができました。まず、これはすべてにおいて言えることですが、とにかくデータさえ取ればいいという考えでは、先へ進むことはできません。結果だけを見て『可視化したらこうだったんだね』と満足するのではなく、そのデータを分析して、深堀りして、いかに活用するかを考えてこそ、業務改善につなげることができるのです。

今回いただいたデータからは、さまざまな観点で業務改善に導くインサイトを得ることができました。Tableauをベースに、データはどこからどこまで分析できるのか、そして分析結果をどのように捉えるべきかについて、いち分析者としてお伝えできればと思います。」

大里:「ありがとうございます。それでは早速分析いただいたデータを一緒に見ていきましょう。」【分析で利用したデータ】
SmartDrive Fleetより取得したもの【データ集計期間】
1カ月分の走行データ【走行IDとは】
エンジンを入れてから切るまでを1レコードでまとめたもの。1レコードが1IDとなり、同じドライバーが再度エンジンをかけた場合は新たに走行IDが発番されます。

木田:「今回は、TableauというBIツール(ビジネスインテリジェンスツール)を用いて、ビジュアル分析を行いました。大まかに年齢・住所などを区分した「従業員データ」、荷台の適正温度などの「車両タイプデータ」、実際の走行状態から取得した「ドライビングデータ(走行データ)」の3つをまとめました。初めに使用するのはドライビングデータです。」

さまざまな角度から移動データを分析してみる

木田:「まずは上図をご覧ください。これは急加速と急減速の回数を日別にまとめたものです。棒の太さはその日に計測された「走行数」を表し、走行数が少ないと細く、多いと太く表示されます。
走行回数が多い日は自然と急加速と急減速が多くなっていますが、これは通常の傾向ですので、分析の精度を高めるため1時間毎の割合を出してみましょう。」

大里:「Tableauは、ニーズによって柔軟な分析ができるのですね。」

木田:「こちらは急加速(赤)、急減速(青)の合計回数をドライバー全員の走行分数で割り、1時間あたりの急加速と急減速の平均の回数を出したものです。分析の世界では、絶対数から何らかの答えを導き出すことが難しいため、ある数値を別の数値で割った指標を利用することが多いです。上の棒グラフも、そのようにして、走行時間の多寡にかかわらずドライバーが60分の走行をした場合、急加速と急減速が平均して何回ほど起きているのかがわかります。」

木田:「次は、曜日別に急加減速数を可視化したデータです。こちらを見ると、『急加速が多い日は急減速が少ない』『急減速が多い日は、急加速が少ない』といった相関があることがわかりますね。」

大里:「一方通行だけでなく、多角的な視点で見ることが非常に重要ですね。」

木田:「決定係数が0.80となっていまして、これは1に近ければ近いほど分析精度が高いことを示します。つまり、この結果は相関が高いと言えるでしょう。」

大里:「なるほど。」

木田:「こちらの結果では、日曜日は急加速が少ないのに、急減速が多いですよね。平日はバスやタクシー、トラックなど、運転に慣れているプロのドライバーが多いのに対し、日曜日は普段は運転をしない一般の方が車でお出かけするケースが増えます。お休みなので急ぐ心配もなく、急加速をする人は少ないと考えられますが、普段から運転をしていないペーパードライバーがハンドルを握ると、走行慣れしていない道を走る際に不安が起きてブレーキを踏みがちになり、急減速が増えてしまうのかもしれない…というような仮説を立てることができます。そうすると、企業側は「日曜日は週末ドライバーが運転する機会が増えて、全体的に急減速が起きやすくなるため、プロのドライバーはいつもより周りに気をつけながら走行しましょう」ということが言えるようになります。」

大里:「私もまさに週末ドライバーですので、周りに意識を向け、注意深く走行したいと思います。」

木田:「次に見ていただきたいのが、出発時間ごとに急加減速数を割り出したデータです。すべての走行には出発開始時間が発生しますが、これはWeb解析で言うセッション開始時間と考えることができますね。

このグラフからは、たとえばですが、早朝勤務は寝不足でぼんやりすることが多く、結果として急加速や急減速が増えてしまうといった相関関係が可視化できれば、企業としてはドライバーに早朝や深夜は働かせない方がいいという判断ができるようになります。

早朝や深夜は走行数そのものが少ないので、ちょっとこのグラフから確固たることは言えません。」

大里:「そうですね。」

木田:「基本的には8時から走行数が増え、夕方になると走行数が減っているので、ドライバーはしっかり休憩をとり、無理のない勤務体系で就業しているのでしょう。データからは、ドライバーによる運転の良し悪しもわかりますが、会社のオペレーションの良し悪しもわかるということです。

ですので、今後はスマートドライブ社がお客様にデータを提示しながら「御社の現在のオペレーションはこうです。ここを改善して業務効率を向上させましょう」「早朝出発の日は急加速や急減速が多いようです。もしかしたらドライバーに負担がかかっているかもしれませんので、業務を少し調整してみませんか」というような提案ができるのではないでしょうか。

大里:「スマートドライブは移動にまつわるデータを大量に所有していますので、早朝走行と深夜走行が中心の会社とを比較して、業務効率や事故の危険度を比較してもいいかもしれません。」

木田:「そうですね、比較対象がある方が、お客様の理解も深まり、改善案を受け入れてもらいやすくなると思います。」

大里:「また、全業種の平均値を割り出して、『平均に対して、御社の現在地はここです。今後はここを目標値として〜〜を改善していきましょう』といった提案もできそうですね。」

木田:「プリンシプルには、業種を問わず、多くのお客様がいらっしゃいます。そのため、それぞれの業種内で平均を割り出すことができます。たとえば、EC事業を展開している企業様の場合、『御社のカート完遂率は●%ですが、同じ規模の競合他社様では●%ほどです』とお客様の現在地についてお伝えすることができるのです。そこを起点に、どう差別化していくか、どこを目標値に設定するかが明確になります。

ただし、EC事業の場合、カートの完遂率は商品単価によって反比例するんですよ。商品単価が低いと非常に高い確率でカートを完遂しますが、商品単価が高くなればなるほど完遂率が低下します。事業者自身は例えば38%というカート貫通率を少ないと捉えるべきか、多いと捉えるべきか、適性ラインが分かりませんよね。全体の傾向を知り、適正ラインかどうかを見極めることができるのは、私たちが広く深く事業や業界のデータを見ているからできることです。

スマートドライブ社も広義の意味で、GoogleやFacebookのようなデータを集めているプラットフォーマーですので、いずれ世の中に有益なデータを提供してくれると期待しています。」

大里:「ありがとうございます!」

木田:「次に、出発地ごとに1時間あたりの急加速、急減速の回数を見ていきましょう。
この絞り方でデータを見ると、急加速・急減速が多い箇所は出発地点の見通しが悪かったり、起伏が激しかったりするなどして運転しづらい場所になっているかもしれないと推測できます。たとえば、下り坂の途中だったり、小学校が近くにあったり、見通しのよくない交差点があったりするとか。」

大里:「なるほど。そういう考え方ができるのですね。」

木田:「とはいえ、これだけでは走行した区域や土地の特性まではわかりません。
ここでもう一度、データに目を戻しましょう。特定の出発地から2回の走行がありますよね。要は、この地点から出発すると、1時間あたりに急加速と急減速が8回も起きるということがわかります。多少、母数が少なくても、その場所の特性や傾向を理解するには十分なデータです。」

大里:「おっしゃる通りです。」

木田:「先ほども説明しましたが、太いグラフは走行数が多いことを示しますので、拠点ではないかと判断できます。Aという拠点に車両が10〜15台ほど停車していて、ここを起点に出発するとIoTデバイスが反応し、走行時間の記録が始まる。そんなイメージです。棒が細いグラフは、走行回数が少ないので出先だと考えられます。
急加速・急減速回数が多い場所は棒グラフが細くなっていますが、その場所から1〜2回しか走行が開始されてないので異常値とも考えられます。しかしここで同時に、『もしかしたら、拠点から出発した方が危険運転は少なくなるのでは?』という見方もできます。
拠点では朝礼があったり、運転前にアルコールチェックがあったり、班長さんから注意を受けたりして、自然と安全運転への意識が高まるのかもしれませね。」

大里:「今回のデータには含めませんでしたが、拠点のデータも一緒に分析できればもっと深いインサイトが得られたかもしれませんね。たとえば、品川拠点から走行がスタートした場合は急加速・急減速が少ないのに、神奈川拠点では急加速・急減速が多いとか。」

木田:「そうですね。住所だけでなく所属の拠点情報があれば、さらに視野を広げた分析が行えます。拠点間でデータを比較して優秀なドライバーを表彰するとか、また、その拠点で改善の余地がある/無しが客観的な視点で言えるようになりますよね。」

大里:「実際にそういった取り組みをされている企業様もいらっしゃいます。」

木田:「ドライバーもモチベーションが上がりますし、素晴らしい取り組みだと思います。改善点が明確になったら改善策を考えて実行し、一カ月や三カ月、半年など期限を決めて、結果を比べることが大事です。
ここまでは要素ごとのざっくりとした分析でしたが、次回以降はドライバー個人に焦点を当てた分析へと移りましょう。」

Vol.2へ続く

【株式会社プリンシプル】
株式会社プリンシプルはGoogle社からGoogleマーケティング認定パートナーとして認められ、アクセス解析を軸にデジタル広告、SEO、DMP構築、Tableauによるデータビジュアライズなどを支援するデジタルコンサルティングファームです。社員数約70名(アルバイト、インターン含む :2019年3月時点)。
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-2-5 トライエッジ御茶ノ水10階

<Tableauとは>
米国シアトルに本社を置くTableau Software社のBI製品群。
デスクトップアプリケーションのTableau Desktopで実現したビジュアル分析結果を、Tableau ServerやTableau Onlineといったクラウドソリューションと連携して、社内の情報共有基盤として利用する。
データを活用して業績を伸ばしたい企業に多く採用されており、行政、通信、エネルギー、金融、製造、小売、サービス、旅行と採用企業は業界を問わない。
ガートナー社のマジック・クアドラント(分析とBIプラットフォーム部門)で7年連続のリーダーポジションを獲得。

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