インダストリー4.0、エコシステム… BOLT Mobilityが描く、次世代モビリティ構想

インダストリー4.0、エコシステム… BOLT Mobilityが描く、次世代モビリティ構想
インタビュイー:
BOLT Mobility アジア戦略担当
下山二郎(しもやま・じろう)さま

サステナブルでエコ。「BOLT Mobility」とは

まずは、下山様のご経歴からお伺いできますか。

ファーストキャリアは、日本電信電話公社(現日本電信電話株式会社/NTTコミュニケーションズ株式会社)に入社しました。大学は法学部に在籍していたので、法律関係の職に就きました。ただ、小さい頃からプログラマーを目指していたので3年で転部し、技術者としてアメリカの研究所でLANやインターネットを支える基礎部分、テレビ電話の仕組みなどを開発しました。同社の国際部に移ってからはグローバルのインターネットの開発に携わり、40歳の時に退職。

現在では日本を代表するECサイトに成長した企業が、2000年にインターネットでモノを売ることを発表したとき、「この事業は必ず成長するぞ。もしかすると、10年後には百貨店がなくなるかもしれない」と予測しました。実現すれば、オンライン上の決済、つまり買い物をするためのレジの仕組みが必要です。インターネット決済の仕組みを開発し、4年弱で上場を果たしました。それから、現在の会社を立ち上げて今に至ります。

BOLT Mobilityに関わるようになったきっかけを教えていただけますか?

BOLT Mobility (当時マイクロモビリティ社)が技術パートナーを探していた時に声をかけていただきました。また、マイクロモビリティ社の主要な幹部の方々はIT業界出身者が多いのですが、私の仲間が多かったことも大きいですね。私はアメリカにも会社を持っていましたし、縁が繋がっていったという形です。

ただ、彼らが最初に始めたモデルはいわゆる「シェアリング」。私はシェアリングサービスには天井があると考えていましたので、それを聞いた時、少し抵抗がありました。しかし新しいタイプのサービスを作る話がでましたので、「ならば力を貸しましょう!」と手を組むことに決めたのです。

「BOLT Mobility」についてご説明いただけますか。

ウサイン・ボルト氏は史上最速、男子100mで世界1位を獲得した歴史的な人物。昔から自然体であることを心がけてきた彼は、エコに対しても非常に関心が高く、環境に悪影響をおよぼす化石燃料に懐疑的でした。そこで、電力にフォーカスします。電力も少なからず環境に影響を与えますが、制御可能で管理しやすいという違いがあります。そういう事実を理解したうえで、前々から何らかの形で電動エネルギーに関わりたいと思っていたと言っています。

そんななか、彼の考えと近いミッションを持ったマイクロモビリティー社が電動スクーターの事業を開始し、ボルト氏に「乗っていただけませんか?」と声をかけます。ボルト氏と同社のミッションが一致したこと、そしてボルト氏が事業に参画して一員になりたいと希望したことでBOLT Mobilityが創業されました。

ボルト氏はジャマイカ出身。ジャマイカは島国ですので、ガソリン、化石燃料のサプライチェーンを建てるには膨大なコストがかかってしまうのです。しかし、適正なサイズのモビリティを作るとなると赤字になりますし、大都市向けのモビリティを持ち込むと島の自然が破壊されます。ジャマイカでは実際にそうなってしまったそうです。

車は競合・競争しながら発展してきたという背景があるのも事実。つまり、車種によってパーツが異なりますので、一度故障すると修理が簡単ではない。ごまかしながら使うか、山中に廃棄するか、二者択一になってしまうのですが、それでは自然を破壊することになってしまう。しかし電動スクーターなら、ガソリンスタンドは不要ですし、島のサイズに合わせたモビリティを作ることができるのです。これは同じ島国である日本も同じです。

また、小さい島国だと車両の解体工場を作ることさえ大変です。廃棄車両から発生する地球環境への負荷も同時に考えなくてはなりませんから。BOLT Mobilityのスクーターはほとんどの部品が共通パーツで作られています。組み立ての工数も増えますし、コストもかかりますが、長期的な視点で考えるとリーズナブルでエコ。単年度の合理性ではなく、長期的な合理性を求めたところも、ボルト氏がこの事業に惹かれたポイントです。

独自の概念を貫くBOLT Mobility

BOLT Mobilityの特徴や強みを教えてください。

BOLT Mobilityのように、インダストリー4.0、AI、IoTをキーワードにしているパーソナルモビリティーの企業はあまり見かけませんよね。インダストリー4.0は、ユーザードリブンの生産体制に直結させることです。たとえば、都市部と山岳部で電動モビリティを利用する場合、その土地の環境に合わせてモーターのパワーも変えなければ、“本当に使えるモノ”を提供することができません。つまり、生産ラインの中にユーザーの位置情報、ロケーションの情報を送り込むことで、無駄をなくし、適切なモノを作ることができるのです。弊社のモビリティは、個々のパーツを組み合わせた形になっているので取り替えがしやすいのも特徴です。今まででは考えられないかもしれませんが、こうした私たちの思想に共鳴してくださる方は増えてきました。私たちとしても、他社が必要であれば私たちの考え方や技術を喜んで提供させていただきたいですし、みんなで組み上げていくレゴのような世界を作りたいと思っています。

また、デバイスにIoTとAIがつながることで、健康(医療)とエンターテイメント、防災など、多面的な使い方が可能なプラットフォームを作っていきたいと思っています。ある時は観光用に、ある時は自然災害発生時の避難に、非常用電源としてのバッテリーになったり、街の中を爽快に駆け抜けながら音楽を楽しむエンタメマシーンになったり…。あらゆる使い方を想定したプラットフォームを提唱しています。

私たちはこのプラットフォームを独占しようと思っていません。実のところ、AIやIoTの開発は非常に難しいものですし、ゼロから開発するのは大変ですので、私たちが開発した部分はシェアリングできればと思います。

支払い方法についても企業の思想が反映されていますよね。

支払い方法も多様性を重視しています。使った分だけ支払うのはお得ですが、ワンプライスの方がわかりやすくベストなこともありますから。目標は支払い方法、価値そのものを対価に変えることです。大学などの教育機関では入学金の中に利用料が含まれていて、校内で自由に使えるとか。旅行の場合は航空会社のマイレージで使えるとか。ショッピングモールでは買い物する際のポイントで利用できるとか。スマホの中にはさまざまな形態で経済価値のあるものが眠っていますので、無駄なく使うことができれば経済的にも活性化するでしょう。

場所に対して貸し出すモデルがシェアリング、人に対して貸し出すのがレンタルですが、二つを掛け合わせても良いわけでしょう? たとえば、アパートの住人で電動スクーターをシェアしても良いですし。統計的にも住人の全員が同時に使うことはほぼありませんので普段は数台で足りるでしょうが、万が一、住人全員でツーリングに行くなら、他で余っている電動スクーターを持って来ればいい。このように、シェアリングとレンタルの間を取った新たな形態でサービスを創造したいと考えています。

協力しながら最適な組み合わせを作る

今後、日本での展開はどのように考えていらっしゃいますか。

電動スクーター、あるいは電動アシスト自転車、電気自動車、さまざまなモビリティがありますので、まずはどの組み合わせがどのマーケットに受け入れられるか、ヒヤリングしたりトライアルしたり、調査をしている段階です。

他社の電動スクーターやキックボードは、“デバイスドリブン”の部分が大きく感じますが、私としては、マーケットのキャラクターに合わせた最適な組み合わせを探すことの方が重要だと思うのです。もちろん、どちらが正しいという明確な答えはありません。マーケットにピタっとはまるペイメントやメンテナンスの方法をこれから先の未来で描くことができれば、サステナブルなサービスになる。ですので、現在はプラットフォームとしてマーケットに合わせたサービスをどのように提供できるかを重視しています。

とはいえ、最適な組み合わせは一社単独で作ることが難しい。互いにプラットフォームを共有しあうことで、より良いサービスを作ることができれば非常にありがたいですし、逆に他社で持っている良いプラットフォームがあれば、喜んで使わせていただきたいですね。

「様々な企業が協力しあいながら、最適な組み合わせを作る」。これはまさに、現在のモビリティ業界で求められているものではないでしょうか。

そこにこだわる理由は、成功した実例を持っているからです。今では当たり前のようにYouTubeもNetflixも視聴できるようになりましたよね。そこに一役買っているのが光海底ケーブル。19世紀から20世紀にかけて光海底ケーブルができるまで、海底ケーブルは全て電気ケーブルで、1995年に私がプロジェクトを立ち上げて参戦するまで、数社だけで独占をしていました。当時は、日本からアメリカに電話すると数千円もかかっていましたが、もし今もその状態が続いていたら、YouTubeさえまともに見ることはできないはず。

私は、全世界200を超える通信キャリアに声をかけ、シェアリングの光海底ケーブルのグローバルなケーブルを敷くことを提唱しました。当時は国際ライセンスを所有していないと国際通信事業を営むことができません。ですが、アセットを持つことはできる。私には法律の知識がありましたので、そこをしっかり理解していたのです。そして国会でも戦った末、許可が下り、海底ケーブルを数百社で作ることに。数百社いればコストも等分されるうえ、最先端の技術を反映できる。1995年と2015年で比べると、海底ケーブルは全世界で1億倍の規模に増えましたから、誰もが快適にインターネットを使える世界になりました。

つまり、インフラは共有すべきところは共有すべきだということです。これは、知恵を出して真正面から戦うところと、戦わずに力を合わせるところを区分けして成功した実証例です。今回はケーブルからモビリティに変わっただけの話ですので、私としてはいつもと変わらないことに取り組んでいる感覚です。

モビリティの進化にはディストラクティブが必要だ

今後、モビリティはどのように進化していくと思いますか?

多様化が進んで行くでしょう。1990年代から多品種少量生産になると言われてきましたが、それだとビジネスモデルが合わないからマス型に戻ると思います。日本では7年に1度のスパンでこれを繰り返しています。今がちょうどパーソナライズや多様化と言われ始めたタイミングですので、2025年の大阪万博までは自分に適合するモビリティを選択できることが一般的になるでしょう。

ただ、2026年にはそれがピークを迎えて、いくつかの問題が出てくると考えています。1つが先述したインダストリー4.0。生産性と合理性が頂点に達し、これ以上は利益が出ない、拡大しないとわかれば、次のモデルに移行しなくてはなりません。次のモデルは多様化やパーソナライズではなく、全く異なる新たなジャンルが生まれます。なぜなら、個人という言葉は1つの側面で定義することはできないものだからです。会社で働いている自分、麻雀をやっている自分、ヨットに乗っている自分、1人の人間をパーソナライズしようとしていても無限の可能性がありますし、いつか必ず限界がきて無駄なことだと気がつく。ですから、次にやってくるのは人でもない、場所でもない、「オケージョナライズ」の時代です。

モビリティ業界に求めることは。

海底ケーブルの時と同じで、ディストラクティブなリーダーが舵を取るべきだと思います。法律や電動バイク免許の話ばかり耳にしますが、本質はそこじゃない。一言でいうとギルド、権益です。ギルドの弱点を見つけ出すことが「最適」になるからです。マーケットが成長すると、どんなものでもギルドができる。そのギルドは自らがギルドであるがゆえに致命的な欠陥を必ず持っています。ですので、そこを突けば簡単に壊すことができるのです。

「ディストラクティブが次により良い世界と雇用を創出する」というのが私の持論です。限界点は必ずありますが、それを固持してしまうと必ず社会が悪化する。ですから、破壊と創造が大事。そうすることで世界は必ず良くなります。

スマートドライブとのコラボレーションについてどうお考えでしょうか。

スマートドライブ社のことは数年前から知っていました。知り合いの工事会社の社長から「社員がどこにいるかわからず、連携を取りづらい」と相談されたので、「スマートドライブのデバイスをシガーソケットに挿せばリアルタイムでわかるよ」って。ただ、その社長が「GPSの精度が気になる」と言い出して。「そこが重要ではない。まずは導入して社員のモチベーションをディストラクトして、生産性とは何かを理解すること。それから次のステージへ行くべきではないか」と伝えました。

おそらく、本質からズレている方が多いと思います。だって、GPSの精度が上がったからといって、売上が増えるわけではありませんから。しかし、車両管理システムという仕組みを導入することで、生産性を本質から考え、データをもとにモチベーションを醸成することができる。だからスマートドライブが提供するサービスは素晴らしいなと思うんです。

スマートドライブと連携して、社会を良い方へ変えながら、収益も上げられるサービスを作っていきたいと思います。

TOP

IoT、自動運転、コネクティッドカーなど最新テーマの情報をピックアップ
車両管理の基礎知識やサービス比較など日常的に役立つ情報を案内

SmartDrive
メールマガジン利用規約

SmartDrive Magazineは、運営会社である株式会社スマートドライブ(以下、弊社)にてお客様が入力いただいた情報を管理します。

弊社の製品、サービス、コンテンツ情報でお客様が興味を持たれる可能性がある内容に関して、随時お客様にご連絡を差し上げる場合があります。こうした目的でご連絡を差し上げることに同意いただける場合は、メールマガジン登録画面の黄色い登録ボタンをクリックしてください。