Uberの自動運転車プロジェクトの現状 ~カリフォルニア州でのテスト走行中止~

いまや世界的に有名になりつつあるアメリカの配車サービス「Uber」。運営元のUber Technologiesは2016年12月にサンフランシスコにて自動運転車の実験を開始していましたが、カリフォルニア州のサンフランシスコ陸運局から公道を走ることは止めるように言い渡され、実験は中断。

結果的にカルフォニアを離れ、アリゾナへと実験の場を移すことを決めたようです。

わずか数年で既存の常識をぶち壊し、飛躍的な成長を遂げたUberですから、自動運転の分野でもどのように戦っていくのか非常に興味深いところ。そこで本稿では今回の騒動も含め、Uberの自動運転のプロジェクトについて紹介していきたいと思います。

そもそもUberとは

Uber

Photo credit: Uber 公式サイト

Uberはアメリカで始まった配車サービスで、本メディアでも度々取り上げてきていますが、Uber Technologiesという会社が運営しています。シリコンバレーで生まれ、業界を一変させるような革新的なサービスを創出した企業として海外では注目されています。

クルマが必要な時にスマホアプリを開いて自分の居場所を報告すれば、近くにいるUberの契約ドライバーが駆け付けてくれるというシステムです。クレジットカード決済なので、乗り降りする時に料金を支払う必要もなく、スマホさえあれば非常にスムーズにサービスを利用することができます。

タクシーと同じようでタクシーと違うUber

タクシーとほとんど同じ業態ですが、驚くことにUberはタクシーの営業許可を各国で申請していません。タクシー事業は規制も厳しく、新規参入が難しい業界でもあるため、許可を申請しないこの新しいサービスに、各国の企業は猛烈な嫌悪感を抱きました。

2014年には、ヨーロッパ各国のタクシー運転者が大渋滞を起こして抗議するなどのデモを行い、Uberの進出に対する抵抗を示したことでも注目を浴びました。対してUberは、それらの抗議デモを物ともせず積極的に事業を展開。今ではUberの会員も世界各国で劇的に増えており、日本でも一部の地域で利用することが可能となっています。

Uberの先進的なところは、クレジットカード決済なので法外な料金を請求する、いわゆる「ぼったくり」を防ぐところにあります。世界では平然とタクシーメーターを倒し、料金を誤魔化す運転手も多いため、信頼できるドライバーに送り迎えして欲しいという点では、Uberのサービスは理に適っています。ドライバーの評価システムがあることも非常に大きいでしょう。

クルマを所持する人にとっても小遣い稼ぎになることころが魅力であるため、「タクシー業界に就職するのは嫌だけど、運転なら自信がある」という方が、積極的にサービスを活用する傾向にあるようです。ただし日本では法律の規制が厳しいため、一般ドライバーがUberのサービスに参加することは一部の地域にのみ制限されています。

Uberの自動運転車プロジェクト

otto

出典: otto 公式サイト

配車サービスとしてこれまでにない仕組みを作ったUberですが、自動運転システムの開発にもとても熱心です。

2016年の8月には「ボルボ社との提携」「自動運転システム開発企業であるOttoの買収」など、積極的に活動を行ってきました。一般人を乗せた公道走行テストを開始するなど、実用化に向けて前進してきている段階です。(Ottoの買収に関しては、以前のエントリー「Uberがトラック自動運転のオットーを買収。今後の物流業界へ影響は?」もご参照ください)

ちなみに、世界初の自動運転タクシーの公道試験を達成したのは、アメリカのスタートアップである「NuTonomy」という企業で、車両の走行はシンガポール国内で行われました。NuTonomyは創設3年目を迎えた新興企業であり、マサチューセッツ州のケンブリッジを拠点として自動運転のシステム開発に携わっています。同社は2018年に完全自動運転車サービスを本格化したいと考えているため、Uberの強力なライバルになるかもしれません。

2016年9月にはアメリカの一般道をテスト走行

NuTonomyから一歩出遅れた感じではあるUberですが、9月にはアメリカのペンシルベニア州ピッツバーグの公道で、自動運転システムの走行試験を行っています。もともとUberはカーネギーメロン大学のロボティクスセンターと提携し、2015年から同システムの開発を進めていたため、およそ1年半で走行試験を成功させたことになります。

中型セダンである「Ford Fusion」にレーダー、カメラなどを搭載し、自動運転のデモンストレーションを記者たちの前で大々的に行いました。あくまで試験の段階であるため、この時点で実用化を想定したクルマをお披露目した訳ではありませんが、自動運転を実現するという点においては、Uberのアピールは成功したと言えます。

ステアリングも自動で方向を判断し、信号機も正確に読み取り、そして交通ルールもちゃんと遵守したため、普通の人が運転するのと変わらない動きを達成。この時は人間のサポートが必要となるためエンジニアの付き添いが不可欠でしたが、仮に一般の方が運転席に座っても何か操作をする必要もなく、周囲の状況を確認するだけで十分なレベルだったといいます。

また車両上部に大きな機材が積まれているため、かなり不格好に見えますが、それ以外は普通のクルマと変わりなくドライブを楽しむことができます。

走行データの収集により予期せぬ事故に備える

今後の自動運転システムは、テクノロジーの進化よりも「走行データ」の収集に重きを置かれることは明白でしょう。Uberと同じく自動運転システム開発を手掛けているテスラ社も、走行データの収集に躍起になっており、すでに12億kmを超えるデータを所持していると言われています。

シミュレーションを重ねるだけでは、事故が起こる状況、地域特有の道路の形状や環境の変化、各地でクルマを運転するドライバーの傾向などが理解できないため、車載カメラで周囲を撮影した走行データは重要な意味を持ちます。

走行データの収集・解析はシステム開発に大きな影響を与えるため、Uberも他の企業と同じく、今後は走行データの収集に注力していくでしょう。

2016年12月にカリフォルニアで走行試験予定だったが中止に

Uberは自動運転車サービスを「提供可能」と判断し、12月に一般人を乗せた走行試験を実施。しかし、その数時間後に自動運転システムが「信号無視」してしまったこともあり、サンフランシスコ当局から、サービスの中止を言い渡されます。

Uber側の言い分では、失敗の原因が「人的ミス」だとコメントしており、責任の大部分はドライバーにあると主張しましたが、一般道の走行許可は下りず、最終的にはテストに使用していた車両の車両登録が撤回され、カリフォルニアでのプロジェクトは断念することになりました。

今後は場所をアリゾナへと移し、同様の実験を進めていくとのことです。

Uberの自動運転車

Photo credit: iwasaround

サンフランシスコでの自動運転タクシー実験プロジェクト

カリフォルニア州での実験については失敗したUberですが、もともとピッツバーグで行われた走行試験では、テスト車両であるFord Fusionが複数の事故を起こしており、逆走してしまうなどの挙動のおかしい動作が一部であったようです。今回の信号無視の事件に関しても「システムに根本的なバグがあるのではないか」と懸念する声も聞こえており、Uberは更なる調査と技術力の向上に努める必要があるでしょう。

信号無視の実態

今回危険な動作を起こしたのは、Uberが提供しているボルボ社の「XC90 SUV」という車種であり、自動運転のテスト車両として三代目のバージョンでした。

実際に信号無視をした様子の動画がネット上でアップされていますが、確かに赤信号を認識することなく、そのまま道路を直進しています。横断歩道には歩行者の渡る姿が撮影されているため、一歩間違えば接触事故が起っていたかもしれません。

Uberに限った話ではなく、例えばテスラ社も自動運転システムによる死亡事故を起こしているため、世論はこの信号無視を決して軽視はしないはずです。今後の開発状況にも影響する出来事のため、Uberも今まで以上に安全面に気を配らなければなりません。

サンフランシスコの陸運局を無視し続けたUber

今回の一件でUberはサンフランシスコの陸運局から自動走行車の走行試験を止めるよう言い渡されていました。そもそもカリフォルニア州においては、運輸車両局が実施するテストに合格することで、自動運転車を州道で走らせる許可を与えられます。

これに対してUberは「完全なる自動運転ではなく、ドライバーが運転席に座った状態での実験のため、陸運局に許可を取る必要はなく、今後もドライブは続ける」と反論。一貫してテストを拒み続けました。

基本的にUberという企業は、タクシーの営業許可を取らないで世界的なシェアを獲得した組織です。そのせいで様々な敵を作り続けてきた歴史もありますが、良いと思ったサービスであれば強引に推進し、だからこそ業界の軋轢を超えて急成長してきたともいえます。

自動運転システムの開発はテクノロジーの問題の他に、各国の法規制と戦う必要があるため、Uberのような強引な手法は今後効果的に機能するかもしれません。今回は結果的にカリフォルニアでの実験を諦めたことになりましたが、このような議論は今後も起こってくるでしょう。

自動運転の今と、これから

テスラのオートパイロット

Photo credit: automobileitalia

2016年は自動運転システムの開発にとって、良いことも悪いこともあった年となりました。問題視されたテスラ社の衝突死亡事故や、Googleによる自動車運転開発ユニットを「Waymo」として子会社化するという意外な方向転換もあり、そして今回のUberのテスト走行車による信号無視からテスト中断へというくだりもあったわけです。

とはいえ、テクノロジーの分野は数々の失敗を経て成功へ繋げてきた歴史があるため、これらの出来事で各企業の研究意欲が萎えることはないでしょう。自動運転システムはまだまだ安全性の面でも完成度としても発展途上にあります。各企業も世論の反応に神経を尖らせているのが現状です。特にテスラ社の衝突死亡事故が世に与えたインパクトは非常に大きなものでした。

しかし今年2017年はこれらの経験をバネにさらなる躍進を図ろうという意識が各企業から感じられます。テスラ社のCEO・イーロンマスクは「無人運転でアメリカ大陸を横断するクルマを作る」とコメントしていますし、Googleもクライスラーや日本のホンダと提携して新しい自動運転システムの開発プロジェクトに着手しようとしています。Uberもやり方が多少強引ではありますが、自動運転システムの開発を今後も継続するはずです。

そして、老舗自動車メーカー各社も自動運転だけでなくEVやFCVの開発にも多大な投資をして競争しているわけですが、ひいてはそれが業界全体の技術向上を呼ぶわけですから、今年もこの領域のテクノロジーのエキサイティングな発展と競争を目にすることが期待できそうですね。

 

* 自動運転のトレンドや、今回扱ったトピックに関しては以下の記事でも詳しく紹介しています。
事故から半年、テスラの自動運転車は安全になったのか?
Ottoが物流革命を起こす?日本の自動運転化がぶつかる壁
自動運転車に向けた、各社の運転支援システム開発状況まとめ
主要メーカー別の自動運転車プロジェクト一覧
Uberがトラック自動運転のオットーを買収。今後の物流業界へ影響は?

営業車の事故率と保険料を下げる仕組みとは?

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