厳しい決算、そしてリコール。今後のGoProはどうなる?

小型で軽量。その上高機能で防水仕様もあり振動にも強く、高解像度の動画を撮影可能。ヘルメットに装着したり車載カメラやドローンでも使用され、これまで大いにその名を上げてきた「GoPro」。

ついに自ら撮影用ドローンまでリリースしてしまいましたが、2016年第3四半期決算はかなり悲惨な結果に終わり、存続が危ぶまれています。今後の巻き返しは可能なのでしょうか?

あなたの見ているその動画も、GoPro撮影かもしれない

GoPro HD Hero

Photo credit: Gordon Tarpley

かつて、Youtubeやニコニコ動画などにアップロードされた様々な動画の撮影には、かなりの工夫が必要とされていました。

単純に昔ながらの「ビデオカメラ」で撮影するものならばともかく、カメラを持ったまま激しい動きをするような場面の撮影というのは、そう簡単なものではなかったのです。

カメラ本体とCCDやCMOSセンサー部を分離して長いケーブルで繋いだり、画質に甘んじながら携帯電話(今で言うガラケー)を固定して撮影したりと、そういった苦労に覚えのある人は多いでしょう。

それが数年前からあるメーカーのカメラが登場したことにより、かなりの動画がそのカメラで撮影されるようになりました。

コンパクトで軽量、高画質、高解像度、しかも何かにマウントするにはサイズ、重量、形状ともに最適なため、爆発的に普及したのです。

そのカメラを作ったのが、「GoPro」でした。

ドローンの定番カメラへ

ドローン

Photo credit: Dennis Jarvis

当初はヘルメットから伸びたステーに固定されたり、車の中で固定されて車載カメラとしての用途が多かったGoProですが、折良く登場した新たな撮影プラットフォームの登場で、全く新しい映像を世界中に見せることになりました。

そう、ドローンです。

元々「遠隔操縦、または自律飛行する無人機」を指す用語だったドローンですが、2010年代に入ってから登場し、その当初「クアッドコプター」と呼ばれていた小型ヘリが「ドローン」として一般的によく知られるようになりました。

主に中国製で、それまで2つのローター(回転翼)を持つことが一般的だったラジコンヘリコプターに対し、4つのローターをモーターで制御し、簡単に絶妙なバランスを取れるのがクアッドコプターです。

4つのローターを持つのが「クアッド」の語源でしたが、すぐにローター数を増やしてモーター出力もアップしたモデルが「マルチコプター」として登場し、やがて小型無人ヘリ「ドローン」と呼ばれるようになります。

今ではドローンを生かした様々な産業が構想されていますが、当初に考えられ、現在でも多用されているのが「撮影」です。

そして、搭載量の限られたドローンに搭載しても高画質動画を撮影できる機材として重宝されたのが、GoProのカメラでした。

ライバルによる猛追

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プロのアングルで撮影できるカメラを販売するとして「GoPro」と名付けられた企業は、2004年以来さまざまなカメラを販売。その中でも一般向けにアクションカメラとして販売されている「HD HERO」シリーズは大ヒットとなりました。

個人向けビデオカメラ業界はデジカメ同様、スマートフォンにすっかり押されて沈滞していましたが、その中でも手頃な価格で柔軟な撮影方法が可能で、スマートフォンでは真似できない使い方で撮影できることから、注目を集めたのです。

それに対してライバルが黙って見ているわけもなく、米のガーミン、中国のXiaomi、日本のSONYなどが次々とアクションカメラに参入してくると、GoProの独壇場とは言えなくなってきました。

そこでGoPro自体も単なるカメラメーカーに留まらず、GoProのカメラを使うのに最適化されたプラットフォームを開発することで、囲い込みを図ります。

それがGoProのカメラとセットにした独自開発ドローン「Karma」でした。

投資家の冷淡な反応

Photo credit: Marcus Meissner

Photo credit: Marcus Meissner

しかしライバルに対する優位性を失いつつあり、業績回復への起爆剤となるドローンも中国メーカーがガッチリと市場を抑えている状況では、GoProに対する投資家の懸念は拭えませんでした。

株価を予測するアナリストたちはGoProの先行きについて否定的な見方を示しており、今後もアクションカメラでのシェアを落としていくことと、それ以外に売りとなる製品が不足することを予測していたのです。

さらに新型ドローンのKarmaも、結局消費者がそれを選択するかどうか非常に懐疑的でした。

一言で言ってしまえば「GoProは一時の人気が冷め今や寒々しい状況、そして今後はお先真っ暗」と考えられたというわけです。

しかし、最悪とも思えるアナリストの予測に対し返ってきた結果は、それをさらに下回るものでした。

2016年第3四半期決算発表で株価も暴落

そのような中で発表されたGoProの2016年第3四半期決算報告は、同社が約束していた目標を全く達成しないどころか、アナリストが低く見積もって予測した売上予測を23%、7,500万ドル(約83億円)も下回ったのです。

既にこの事態をある程度予測していた投資家により、10月に入ってから同社の株価は30%近く暴落していましたが、決算発表後はさらに22%下落しました。

同社は2016年5月までは売上、株価ともに比較的好調に推移していましたが、投資家の期待を裏切る結果になるや一転、そのビジネスへの取り組みに重大な懸念が示されるようになります。

これを挽回する新製品として同社が期待しているのは、アクションカメラの新製品「Hero5」と、同社初のオリジナルドローンKarmaです。

とはいえ肝心の定番主力製品である「Hero5」について、同社は十分な生産能力を持っておらず、これから迎えるホリデーシーズン(クリスマスから年末年始にかけての需要増大期間)に十分な供給能力を持っていないと言われています。

同社の製品がいかに優れていても、売り上げ予測の達成は難しいというのが投資家の見方です。

追い打ちをかけたKarmaのリコール

Karma

Photo credit: dronepicr

GoProにとっては厳しい状況が続く中、悲報は続きます。

同社期待の新製品として10月に発売されたばかりの、独自開発ドローンKarmaがこともあろうにリコールで全数回収されることになったのです。

それも飛行中に突然出力低下、墜落する可能性があるという深刻な不具合で、既に販売されていた2,500台が回収されました。

修理返却ではなく回収返金ということで、問題が解決され次第販売が再開されるものの、2016年11月21日現在、その見通しは全く立っていません。

Hero5ほどではないにせよ、ホリデーシーズンに向けてKarmaを盛大に売り込もうとしていたGoProにとっては誤算どころではなく、まさに泣きっ面に蜂という状況でしょう。

期待のエンターテイメント部門も閉鎖

 

そんなGoProからつい先日(2016年11月30日)、さらに衝撃的な発表がありました。それはアクションカメラの次なる打ち手として期待されていたエンターテイメント部門を閉鎖するというもの。

200人の従業員を解雇し、人材募集を中止する計画を明らかにした。GoPro社内のオリジナルコンテンツによるメディア企業の構築を目的としたエンターテインメント部門を閉鎖する予定だ。社長のTony Bates氏も2016年末までに辞任する。同氏は2014年に、Microsoftから同社に入社していた。(参照元 : CNET JAPAN

アクションカメラがダメなら、メディアで! と新たな活路を見出しチャレンジをしていたわけですが、結果は失敗。2017年は黒字転換を目指すとのことですが、現状のままでは難しいことは明らかですから、新たな打ち手を考えなければなりません。

今後のGoProはどうなる?

GoPro Hero2

Photo credit: umgeSEHen.eu

こうしたGoProの惨状が伝えられる中、ライバル各社は順調に新商品のリリース、または新規参入を行っており、アクションカメラ市場自体が飽和状態で頭打ちではないか、と言われています。

ドローンも今や様々な種類のものが発売されており、個人向けホビー的なカメラ付きドローンや、Kermaの特徴であった折り畳み式ドローンも珍しくありません。

その中でリコールがニュースになってしまった以上、この分野におけるGoProのブランドイメージは良いものとは言えないかもしれません。とはいえ、新たの打ち手として期待されたエンターテインメント部門も閉鎖することになりました。

そうなった以上、本業のアクションカメラで活路を見出す必要がありますが、GoProのカメラでできることは何かあるでしょうか?

ウォーキングレコーダーの誕生は?

GoPro Heroのようなアクションカメラの用途として、最近注目されているのが「ウォーキングレコーダー」です。

いわばドライブレコーダーの歩行者版ですが、最近ではこうした「とにかく何でもカメラで撮影」は、盗撮同然の行為として規制する方向へ向かい始めました。

例えば日本では滋賀県警が迷惑禁止条例の強化を検討しており、これまでは撮影された証拠が無ければ摘発できなかった「盗撮」について、カメラを向けたり設置すること自体を規制する方向に動いています。

ドライブレコーダーのように事故時の証拠映像記録用などと用途が明確なものはともかく、歩きながら何となく撮影していました、では「防犯以外に映るものが多すぎる」とみなされて盗撮だと解釈されても仕方がないでしょう。

「撮ってはいけないものを記録しない方法」が見つけられない限り、ウォーキングレコーダーの実現は難しいのかもしれません。

 

今後は「いかに撮らないか」がカメラの売りになるかも?

Photo credit: davocano

Photo credit: davocano

Googleストリートビューでもその当初、公開された画像が問題になって削除や差し替え、修正が相次ぎましたが、今後はGoProのように「とても便利なカメラ」で撮影された映像についても、同じような話が出てこないとも限りません。

実際、2016年10月にはスウェーデンの高等裁判所が「カメラつきドローンを監視カメラと認定」したとして、事前に承認を受けなければ飛行できないと規定したことも話題になりました。

現在はドライブレコーダーも含め、「明らかに盗撮」とわかるように撮影していない限り自由に撮影できますが、いつそれができなくなるかもわかりません。

それが可能かどうかはともかくとして、今後この種の「便利なカメラ」は、「いかに撮影対象や時間を限定して、必要なものだけを撮影するか」という能力を持たない限り、生き残れない時代が来るのではないでしょうか。

とても小さく軽量、高性能、高画質、高機能といい事づくめだったアクションカメラ業界や、それを牽引していたGoProは、近い将来、重要な曲がり角に差し掛かろうとしているのかもしれません。

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