燃費27%削減? テレマティクス活用の事例とメリット

最近は自動運転関連の話題がニュースになることが多いですが、自動車は昨今ますますテクノロジーと融合してきています。

そこで押さえておきたいのが「テレマティクス」というキーワード。

テレマティクス (Telematics) とは、テレコミュニケーション(Telecommunication=(遠隔)通信)とインフォマティクス(Informatics)から作られた造語で、移動体に携帯電話などの移動体通信システムを利用してサービスを提供することの総称。
(引用元 : Wikipedia

Wikipediaではこのように説明されていますが、テレマティクスを簡単に説明すると、自動車にネット接続が可能な端末を接続。それによって交通情報をはじめとするさまざまな情報を取得、分析することで自動車をより安全に、楽しめるサービスのことです。

いわば「IoT」の自動車版とも近いものですが、それにより年間27%もの燃費削減に成功した事例などもあります。

そこで今回はテレマティクスサービスの事例やできることを紹介していきましょう。

 

テレマティクスで27%もの燃費削減!

警察車両でのテレマティクス活用事例

Photo credit: Police_Mad_Liam

今回テレマティクスサービスの導入で画期的な燃費削減に成功したと語っているのは、イギリス・イングランドのノーザンプトンシャー警察と、ウエストヨークシャー警察当局です。

特にノーザンプトンシャー警察では420台保有している警察車両の利用率向上、効率化によるコスト削減を狙って、2013年10月から370台にテレマティクスサービスを導入しました。

当初の目的は、9%の燃料削減でしたが、達成された削減値はなんと27%!これによりノーザンプトンシャー警察は燃料予算の前年比大幅減と、燃料に費やされるはずだった予算の返還が可能になりました。

常に予算不足に悩まされる地方自治体にとっては、これはかなり大きい数字と言えるでしょう。

そのために必要な投資額は35万ユーロ(約4,000万円)に及びましたが、その投資は非常に短期間で回収することに成功したそうです。

交通情報などから的確なルートを選択するなどで走行距離が2013年の基準より90万マイルも減少した効果が非常に大きかったということでしょう。

 

年間1,300万円の燃料費削減に成功した菓子メーカー

同じくイギリスにあるスナック菓子メーカー、Taytoグループは、テレマティクスサービスの導入でトラックドライバーの運転の仕方を変え、7万2,000ポンド(約1,300万円)の燃料代を節約しました。

これは割合で言えば、年間15%の削減になります。

同グループが導入したのはTomTom社のテレマティクスソリューション。ドライバーの運転挙動を記録・可視化して改善を促し、無駄を省いたことが成果に結びつきました。

もっとも、単にテレマティクスを導入しただけでこのような夢が実現したわけではありません。

同グループでは週ごとのミーティングでドライバーの運転スピードやアイドリング、その他の運転挙動をレクチャーしたといいます。2週間に1度は燃料の使用状況を、月に1度はグループレビューを行って、特に優れているドライバーや無駄の多いドライバーの事例を取り上げ、改善に役立てるという徹底ぶりです。

テレマティクスサービスの導入でデータを可視化するだけではなく、それをうまく利用できた成功事例と言えるのではないでしょうか。

 

意外と歴史の古いテレマティクス

 

このように海外で大きな成果を上げているテレマティクスサービスですが、日本も含めその歴史は意外と古いものです。

自動車の車載機器に交通情報を流す「VICS」など国が主導の情報配信システムは1990年代に実用化され、特に日本ではカーナビに渋滞情報などを流す重要な役割を果たしてきました。

皆さんもカーナビで経路検索する際に、渋滞している道路や交差点に真っ赤な矢印が表示されているのを見たことがあるのではないでしょうか。

それら初期のテレマティクスは現在も継続して続き、現在では単に情報が送られてくるだけではなく、自動車の方から情報を流す双方向通信が現在では増加傾向です。

*テレマティクスの歴史や概要についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
自動車のIT化「テレマティクス」の歴史を紐解く

 

テレマティクスでできること

G-BOOK

出典 : G-BOOK

テレマティクスは双方向サービスが登場した段階で、国が主導する情報サービスから自動車メーカーやIT企業と提携した事業者による民間サービスに移行していきました。

日本ではトヨタの「G-BOOK」や日産の「カーウィングス」などが代表的ですが、自動車側からオペレーターに電話して口頭でのやり取りで最適な目的地をセットしたり、故障や事故の際に救援を要請することができるのです。

さらに事業者向けにはいすゞの「みまもりくん」のように、車両の運行状況や走行状況のリアルタイム監視、速度超過や長時間運転の警告、省燃費運転指導や省燃費運転レポートの作成も可能に! 業務の効率化や安全性向上に大きな役割を果たすようになりました。

現在では自動車の電子制御化が進んだことにより、車載コンピューターで自動車そのものの状態を細かく把握して送信することもできるようになっています。

故障のリスク、あるいは整備点検時期が来た時、そしてコンピューターにエラーが蓄積した時などリスク要因をテレマティクスサービスを提供しているセンターに送信。それによって運行している自動車にディーラーなどサービス拠点への移動を促すと同時に、拠点側にも整備士やパーツの準備を促せるのです。

 

テレマティクスのメリット

 

テレマティクスサービスでは運行中の自動車が停止している時間、走行している時間やその地点を把握することができます。それによって自動車が無駄なく動いているか、あるいは無理をして動いていないかもわかります。

先に紹介したイギリスのスナック菓子メーカー、Taytoグループの事例がまさにそうですが、運行管理とそのフィードバックが非常に容易になりました。

また、目的地に向かうために最適な経路を取っているか、渋滞などで足止めされて無為な時間を過ごしていないか、余計な遠回りなどしていないかといった情報も蓄積できます。

これらの無駄を省いた結果が、最初に紹介したノーザンプトンシャー警察やウエストヨークシャー警察の事例でしょう。

日本でもオリックスレンタカーなど、法人向けカーリースサービスでテレマティクスの導入が進んでおり、導入企業は事業用車両が無駄な動きや危険な運転をしていないかの検証を行うため、データを蓄積できます。

 

現状ではまだ、人間の作業による部分も

 

テレマティクスですが現状ではまだ完全なものとは言えません。

先に紹介したTaytoグループなどのように、蓄積したデータを検証するためのスタッフが必要で、かつそれをフィードバックするための時間も必要になります。つまりリアルタイムでフィードバックできるデータは速度超過や長時間運転など、ネットワークに接続されていない「スタンドアロン」状態でも提供できるデータに限られます。

そのため現在のテレマティクスではデータ収集は容易でも、そのデータを生かすための作業時に、まだまだ人間の手が必要です。

技術面のみに注目して導入したはいいものの、技術が発展すればするほど膨大な量が蓄積されていくデータを処理しきれず、テレマティクスの効果をうまく活かしきれない事例もきっとあるでしょう。

そうした「導入から成功まで」というイメージを最初から描き、必要な人員資源を投入して実現した事例としては海外の方が先行しているので、日本の企業が学ぶべき部分は多数あると思います。

 

将来的な発展型テレマティクス

未来のテレマティクス

Photo credit: Intel Free Press

こうしたことから、今後はAI(人工知能)がリアルタイムで情報を蓄積・分析・学習していく「ディープラーニング」がテレマティクスサービスをさらに進化させていくのではないでしょうか?

もちろんその過程で、AIの提出したレポートが妥当かどうかを判断する人間が必要なのは間違いありません。AIはその人間の判断を受け入れて、よりその企業に最適化してドライバーにフィードバックしていくようになるでしょう。

この仕組みは自動運転車に求められるものと同質のものですが、ドライバーの手を一切借りない、あるいは単に運行管理責任者としてドライバーが乗り込む「完全自動運転」が実現するまでは、テレマティクスによる運転支援が先行して一般化すると思われます。

将来的に完全自動運転車が一般的になったとしても、自ら運転することを好むドライバーは存在するでしょうし、そのための車も販売されるでしょう。

人間による運転の事故率は完全自動運転より高いとは言われますが、テレマティクスサービスによる運転支援でその軽減が期待できます。あるいはドライバーが急病によって不意に運転不能になった時、即座にそれを感知して自動運転モードに移行して安全な場所に停車、救援を呼ぶことも可能でしょう。

将来的に完全なものから限定的なものまで、全ての車が何らかの形でIT化(コネクテッドカーとも呼ばれます)されれば、自動・手動運転を問わず、効率的で安全な交通が実現されていくことが期待できますね。

 

*自動車のIT化・コネクテッドカーについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
コネクテッドカーとは? -車が単なる乗り物を超えた時代

*今回紹介したテレマティクスは、自動車保険の分野でも非常に注目されています。テレマティクス保険についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
デジタル時代の自動車保険 テレマティクス保険とは

営業車の事故率と保険料を下げる仕組みとは?

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