「モーダルシフト」は日本の物流を救えるか?

大型トラックを中心とした自動車による貨物の輸送を大量輸送が可能な鉄道や船舶による輸送に転換するという「モーダルシフト」が、今再び注目されているようです。

そのきっかけとなった出来事は東日本大震災でした。地震によりトラック輸送網が麻痺しているなかで、貨物列車が被災地に多くの物資を輸送し多くの被災者たちを救ったのです。

「モーダルシフト」にはどのようなメリットがあり、またこれからの日本ではそれがどのように活かされていくのでしょうか。今回は日本国内における「モーダルシフト」の重要性や役割、そしてその将来性について考えてみましょう。

日本では、国を挙げてモーダルシフトの普及に取り組んでいる

モーダルシフトの考え方は30年以上前の1980年代からすでに存在し、国土交通省(当時の運輸省)は1991年からその取り組みに着手しています。

今から約20年前の1997年9月に開催された「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議」では、2010年までに500km以上の鉄道・船舶による雑貨輸送の比率(以降「モーダルシフト化率」)を50%まで引き上げる方針を決定しています。
しかし実際のモーダルシフト化率は1998年度の42.9%をピークに徐々に低下していき、2006年度以降は数値も公表されなくなってしまいました。

そのため現在のモーダルシフト化率は不明ですが、国土交通省は今もその促進に取り組んでいます。
2010年3月には「モーダルシフト等推進官民協議会」という、民間事業者と関係省庁が意見交換をするための議会を設置。
さらに2016年2月にはモーダルシフト支援法とも呼べる「改正物流総合効率化法案(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律案)」が閣議決定され、同年5月2日より施行されています。

国土交通省は2020年度までに、34憶トンキロ分の貨物を自動車から鉄道・船舶輸送に転換することを目標にしています。

モーダルシフトのメリットって?

モーダルシフトのメリットを知れば、なぜ注目されているのか見えてくるのではないでしょうか。

CO2排出量の削減になる

トラック輸送と比較した場合のCO2排出量は、鉄道輸送が約6分の1、船舶輸送が約5分の1となっています。トラックを使うことなく全区間の輸送はできませんが、途中の区間を鉄道や船舶に切り替えることで、大幅にCO2の排出量を削減することができます。

一度に大量の輸送ができる

鉄道輸送ならトラック65台分の荷物を、そして船舶輸送ならトラック160台分もの荷物を、少ない人員で一度に目的地へと運ぶことができます。

道路環境の改善になる

モーダルシフトが普及すればそれだけ一般道を走るトラックが少なくなるため、「交通事故の減少」や「道路交通混雑の緩和」「騒音問題の解消」といった道路環境の改善に繋がると考えられています。

トラック運送業界の課題の解決に繋がる

日本国内におけるトラック輸送の分担率は非常に高く、総貨物輸送量の実に9割以上を占めています。

しかし近年のトラック運送業界では「トラックドライバーの人手不足」や、それによって派生する「荷物の過積載」「過労運転」などが大きな問題となっています。

そのような中で、モーダルシフトを実施してドライバーひとりにかかる負担を軽減することにより、これら課題が解決できるのではないかとトラック運送業界からも期待が集まっているのです。

長年「トラック運送」と「鉄道運送」はライバル関係にありましたが、自社だけで荷物を処理しきれなくなったトラック運送事業者が、日本貨物鉄道(JR貨物)に移送依頼をするケースも徐々に増えているのだとか。

ただしモーダルシフトにはメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあります。

輸送のリードタイムがトラックに比べて遅い場合がある
近距離、中距離輸送ではコストが割高になる
運送時間や頻度に融通が効かない
天候や事故による影響を受けやすい

モーダルシフトの導入が自社にとって有益になるかどうかは、各事業者の貨物の種類や担当エリアによって大きく分かれることでしょう。

あの企業もモーダルシフトをしている!?

国内の事業者によるモーダルシフトへの取り組み例を3つご紹介しましょう。

①モーダルシフトに積極的な姿勢を見せる日東工業

配電盤や制御盤の製造を手掛ける電気機器メーカー「日東工業」は、数年前からモーダルシフトに積極的に取り組んでいます。2014年2月に岐阜の中津川工場から札幌の倉庫への輸送を開始した際には、98%の輸送をモーダルシフトし、年間で約94トンのCO2削減に成功しています。

また各工場間の資材輸送の一部をトラック輸送からフェリー輸送に切り替えており、CO2量を年間42.4%削減しています。

②2日間限定で運行した「イオン号」

大手流通企業イオンのグループ内組織「イオン鉄道輸送研究会」は、2014年12月14日・21日の2日間に渡り、モーダルシフトを目的とした東京~大阪間を往復で結ぶ貨物専用列車「イオン号」の運行を実施しました。この取り組みではアサヒビール、ネスレ日本、江崎グリコ、花王の仕入先食品・日用品メーカー4社と連携し、業界の枠を超えたモーダルシフトを実現しています。

JR貨物からは「新時代のモーダルシフトの成功事例」と高く評価され、その年の「グリーン物流優良事業者表彰」では経済産業大臣表彰を受賞しました。

③大手ビール会社が鉄道コンテナを共同利用

2016年7月27日に日本を代表する大手酒造会社「アサヒビール」と「キリンビール」の2社が石川県金沢市に共同配送センターを開設し、鉄道コンテナによる商品の共同輸送を開始することを発表しています。

CO2をはじめとする温暖化ガスの削減は両社にとって共通の課題でしたが、年間1万台相当の長距離トラック輸送をモーダルシフトすることにより、年間2700トンのCO2削減が実現できる見込みとなっています。

モーダルシフトは「物流のピンチ」を救う鍵となるか?

一度は普及に向けての勢いが衰えたかのように思えたモーダルシフトですが、2010年代に入ってからは政府だけでなく、各物流事業者も積極的に取り組むようになってきました。

モーダルシフトは「ドライバー不足」や「地球環境問題」を解決するための有効な手段として、さまざまな業界から期待を集めています。今後の物流業界では、これまでの貨物輸送を支えてきたトラック輸送とモーダルシフトによる鉄道・船舶輸送が、それぞれの欠点を補いながら支え合っていくことが重要です。

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