人類は渋滞にどれだけの時間を奪われている?その実態と解決法

日本だけでなく世界の多くの都市部では渋滞が深刻化しています。人の移動のみならず物流にも大きな影響を及ぼし、かつドライバーの精神的・肉体的疲労も増加せる渋滞。今回はそんな渋滞のコストとその解決方法の話です。

 

渋滞で大きく損失している時間

 

2015年の年間渋滞ワースト1位は高速道路で東名高速(上り)海老名JCT〜横浜町田IC、都市高速道路では神戸線(下り)西宮JCT〜第二神明接続部。2015年における高速での渋滞損失時間の合計は2億人・時間で、これは年間約10万人分の労働力に値すると言います。

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2014年と比較すると、年間の渋滞損失時間は5%増加。内訳としては40km/h以下での渋滞発生が約50%。そのうちの65%が交通集中による渋滞、7%が工事を原因とする渋滞だそう。

また、全米ではLAの運転者が交通渋滞に費やす時間は年間81時間と全米で最も悪い結果となり、全体では、全米の運転者は交通渋滞に年間およそ80億(総計)時間費やしているんだとか。世界でもっとも渋滞がひどいのはロンドンで、運転者は年間101時間も損失しています。

 

Googleも活用する、INRIX社の膨大な通行量データとサービス

 

2011年、GoogleがMapsのリアルタイム通行量データを取り去り、ユーザにとってもっと正確なソリューションを準備中であると告げました。その理由は、交通情報と車中・オンライン・携帯機器といったドライバー向けサービスの国際的な有力プロバイダーである米INRIX社の技術を利用をするためです。

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INRIX社は2005年にMicrosoftからスピンオフした社員によって「交通情報に対する世界の見方と扱い方を変える」という目標を掲げて創設された企業。アウディ、BMW、マイクロソフト、トヨタをはじめ130を超える顧客およびパートナーを抱えているINRIX社は、毎日世界32カ国のドライバーたちが少しでも早く目的地に到着できるようリアルタイムの交通予報を提供することで、ドライバーの仕事効率化を支援しています。

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出典 : INRIX

INRIX社のサービスは、在来型の道路センサーやマイカーやタクシー、トラックなど同社独自のネットワークを含めた3,000万以上の公共・民間情報源から交通関連情報を集め、精巧な統計解析技術を活用した交通情報データの提供です。

2015年9月位は、INRIX社は路面状況や視界状況などの天候に関わる道路コンディション情報を提供する新システム「INRIX Road Weather」を北米とヨーロッパでリリース。
天気情報サービスを提供するGlobal Weather Corporationと共同開発されたこのサービスは、道路のコンディション情報の通知や、他の車への危険状況の警告をするために、コネクテッドカー(ICT端末としての機能を有する自動車のこと)からリアルタイムに取得できるデータを利用しています。
さらに、2016年3月9日には米OpenCar社を買収し、自動運転で機能制御できカスタマイズできるユーザー体験とともに、サードパーティーのコンテンツとアプリケーションのポートフォリオを広げ、クラウドプラットフォームとして拡張していく考えだと発表しています。

このように、INRIX社は膨大なデータの集計と分析によって、安全を守り渋滞に関する問題の解決をしようとしています。

 

INRIXが交通情報を取得する仕組み

 

INRIX社は2005年からモバイル端末の位置情報による渋滞情報の提供を開始しています。GPSを搭載したモバイル端末の普及に伴って、モバイル端末自体がプローブ情報を取得する機能を果たすようになったからです。モバイル端末の利用者が多いこともあり、GPSの情報だけで位置情報を集積加工し、渋滞情報が提供できるといいます。

GPSは、世界中で多目的にシェアされる人工衛星を利用するので、必要なのは情報を集積・加工するためのサーバーとシステムだけで、インフラは不要。ある程度交通量があるすべての道路の渋滞情報が取得が可能です。現在はこうした圧倒的なアドバンテージから、渋滞情報の取得は、GPSが世界の主流に。その精度についてINRIX社は、集積データから算出される道路の平均速度と速度と実際の平均速度との差は5%以内だと言います。

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そして、警察からの交通事故データ、渋滞履歴テータ、学校カレンダー、主要なイべント、工事、地域特有の200個以上の変数を利用して「Traffic Fusion Engine」とよぶベイズ統計分析エンジンを用いたリアルタイム・数日後・数週間後・数カ月後の交通渋滞予測の情報を得ています。
上記二つの膨大なビッグデータを掛け合わせて分析し、正確かつ精度の高い情報をドライバーに提供しているのです。
そして近年INRIX社は、交通情報のデータをより迅速にまとめて動的にリポートできるよう、データ分析ベンダーTableau社の「Tableau Public Premium」を使い、Webサイトの一画に視覚的にデータを理解できる交通スコアカード情報のコーナーを設置しました。「Tableau Public Premium」導入後は、メディアや運輸省がサービス内容をチェックしたり、INRIX社のWebサイトで調べたい都市と年月を選ぶだけでデータが得られるようになったそう。
これを機にINRIX社は英国道路庁との契約を獲得。英国道路庁が求めていた情報の中核的要素だった初のヨーロッパ版交通スコアカードを公表しました。これによって世界一渋滞の多いと言われるロンドンも、少しずつ渋滞が緩和されていくかもしれません。

 

交通をスマートに行う海外のリアルタイム交通システム事例

 

海外では具体的にどんなリアルタイム交通システムがあるのか、見てみましょう。

米国 カンザス州のリアルタイム交通システム

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運転者の携帯電話から発信される信号を匿名化して追跡し、道路の混雑度を表示した結果、検出率98%、遅延2~3分というリアルタイムの交通情報の取得が可能に。従来の路上センサー方式と比べ、20分の1の導入費用と期間で構築できたのでコストは大幅に抑えることができたそう。

オランダ アイントホーフェンでのリアルタイム交通システム

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走行中のクルマの車速、エンジン回転数、ブレーキペダルのストローク量、車両の前後加速度、横加速度などの情報を標準フォーマット化・匿名化し、データセンターに集約・分析。危険な路上状況(穴、スリップ、事故、渋滞など)をリアルタイムに検知し、スマートフォンに通知する形で市民に交通情報を提供しています。

 

日本での渋滞を回避する最新の取り組み

 

日本でも米IBMやNTTや日立製作所などがビッグデータやIoTを利用した渋滞を解消するためのテクノロジーを開発しています。

IBM社は、天気や道路の状況、曜日など、条件ごとの統計をもとに交通状況を予測するシステムに加え、人が自動車を運転する際の心理的な行動データを反映させたシミュレーションシステムを開発。

運転がしやすいよう自然と幅が広くて車線数の多い大通りを選んだり、右折をなるべく避けて走ったり。このような運転傾向の割合と、東京都内を走るタクシーに搭載されたGPSの5万件にものぼる記録、地方自治体が発表している交通調査などのビッグデータを分析して完成させました。

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このシミュレーションシステムは、信号の切り替えの速度を変えたり、交通速度を規制したり、新しい道路を建設した際など、交通状況がどの程度変化するかを瞬時に予測でき、有効な手段を簡単に決められるのです。

NTTデータも交通渋滞の解消するために渋滞予測や信号制御のシミュレーションシステムを開発しています。2014年末には中国の吉林市で実証実験を行い、バスの運行時間の短縮することができたそうです。

 

優秀なスマホアプリがさらに後押しする

 

クルマの内外には多くのデータが備わっています。そのデータはIT技術の進化によりネットワークを経由して他車のデータと合わせて分析され、交通情報として私たちの元に届きます。

また、スマホがあれば渋滞情報をコミュニティでシェアするアプリや、最大2時間前の過去から現在までの渋滞地図を表示すアプリなど無料で利用できるものも多くあるため、快適なドライブへと導いてくれるはず。

テクノロジーとビッグデータ、この二つの技術のさらなる進化が私たちの生活に安全と利便性を与えスムーズな交通環境を整備して行ってくれることでしょう。

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