クラウドサービスを活用することで物流はどう変わるか?

クラウドサービス

巨大なデータ管理やシステム運用を行う物流企業にとっては、サーバを自前で構築するということが珍しいことではない時代となりましたが、一方で、自前サーバはコスト面での負担が大きく、かつ一度つくり始めると巻き戻したりもできないため、初期導入においてはかなり慎重に検討する余地があります。

今回は、そういった物流業界におけるクラウドサービスの活用について紹介していきます。

自社サーバを構築する場合の大変さとは

自社でサーバを構築する場合、以下のような課題に直面することがあります。

  • データ管理やシステム運用などを行う専用のサーバ施設を、本社または主要倉庫に設置する必要があり、データの規模によっては莫大な初期コストが掛かる。
  • 機材の性能が設置時に固定されるため、容量の変更などが気軽に行えない。
  • 繁忙期では外部からのアクセスが集中するため、サーバの性能が不足していればサーバダウンが起こり、すべての業務がストップする可能性がある。
  • 機材が故障したり古くなれば買い替えを検討しなければならない。

 

これらの問題を解決するために新しく誕生したのが、クラウドサービスです。

クラウドサービスを活用すれば、自社内で専用のサーバを設置する必要はなく、データ管理やシステム運用などはサービスを提供している会社を通して行われます。

すべての業務処理を外部の仮想サーバ上で行うため、容量に制限がなく繁忙期でも容易にスペックアップが可能。主要な機材も社内で管理する必要がないため、故障や災害などのトラブルが起きても影響を受けにくいのが特徴的です。

クラウドサービスの先駆けとなった「AWS」

AWSとはAmazon Web Servicesの頭文字を取ったものであり、通販大手であるAmazonが提供しているクラウドを活用したWebサービスのことです。

AWSは企業内におけるクラウドコンピューティングの導入を第一と考え、サーバやストレージ、データベース、アプリケーションサービスなどにインターネット経由で気軽にアクセスすることが可能。提供しているサービスの種類も30以上と非常に豊富であり、クラウドサービスの先駆けとして高い評価を得ているため、物流業界ではAWSを積極的に活用している企業が数多く存在します。

たとえば日本通運株式会社では、2009年からAWSによる仮想インフラの構築を行い、プール化やPDCAサイクルの確立などを通して、4年後の2013年には運用の標準化を達成しました。

同社は「コンプライアンス・システム特性・基盤サービスレベル」の3つの観点から検証を行い、「全面的にクラウドへの移行は可能」と判断。この例に限らずコスト削減や作業の効率化に繋がるAWSのようなクラウド型管理サービスは、今後ますます注目を集めることになりそうです。

AWSだけではないクラウドサービスと物流の関係

物流に関わるクラウドサービスはAWSだけではありません。日立物流ソフトウェア株式会社が提供する「WMS」も、短期間・低価格でクラウドを活用した在庫管理を行うことができます。

日立は国内企業とのパイプも強く、日立物流グループのノウハウを駆使した管理システム開発に努めているため、最もスタンダードな物流クラウドサービスとして様々な企業で活用されています。

クラウド型の管理システム開発は日立グループに加え、NECやヤマトグループなどの国内大手企業も手掛けており、IT企業と運送業界の垣根を超えた開発競争がここ数年でより活性化されてきました。

その利便性を考えれば、将来はクラウドサービスを通した配送・倉庫管理は、物流業界で標準の仕様になると考えられるため、クラウド型の管理システム開発を専門とした企業は今後も増え続けると予想できます。

クラウドサービスを活用している企業の導入例

中古車販売企業である「株式会社IDOM(旧株式会社ガリバーインターナショナル)」では、AWSの導入を2010年後半から積極的に検討。当時はクラウドサービスと呼ばれるものは希少な存在であり、導入事例もなく手探りの状態だったそうですが、AWSは当時から利便性に優れており、企画開発や運用方針の転換に関しても柔軟性が高いため、インフラ構築における作業がスムーズに行われました。

現在のIDOMは「クラウドファースト」の事業展開を推進しており、既存データの大半はAWSに移行。中古車業界では繁忙期と閑散期の差が大きいですが、このような状況にもクラウドサービスは柔軟に対応できるため、自社サーバにはない拡張と縮小を兼ねた迅速な運営を行うことができたといいます。

クラウドサービスは物流業務に関わるシステム運用だけでなく、データ分析に特化したサービスも提供されているため、自社内で構築していたプライベートクラウド環境よりも効率よく事業の課題点を洗い出すことにも使えます。

データ分析のサービスは世の中のマーケティング動向を知るキッカケとなるので、効率性の向上だけでなく新たな市場拡大を視野に入れたビジネスの展開が可能です。

今後も市場の拡大を続けるクラウドサービス

メリットの多いクラウドサービスですが、カスタマイズには専門のスキルが必要であり、外部にデータを保存するためセキュリティに対するリスクを負うなど、様々な課題を抱えていることも事実です。顧客情報など重要なデータを預ける場所になるので、クラウドサービスを始める際は、サポート体制がしっかりしている会社を見極めることが大切となります。

クラウド事業はまだまだ発展途上の段階にあるサービスです。AWSは2006年から開始したため、およそ10年以上が経過しましたが、今ではAmazonの通販事業を上回る利益を計上しています。Amazonは今後もAWSに積極的な投資を行うと考えられるため、サービスの向上や改善により、利用する企業が更に増えると予測できます。

今回紹介したクラウドサービスに限らず、物流業界でも生産性の向上やより良いサービス提供を目指し、今後ITの活用がさらに進んでいくのではないでしょうか。

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