バス・トラック運転手など長距離ドライバーの現状と課題 — 雇用状況・事故・眠気対策など

日常生活において使う様々なものや宅配物を運ぶ長距離トラック、観光などで遠方に行く際に活用される高速バスなどは日々の生活に密接に関わっています。そんなわりと身近な大型トラック・バスを運転する「長距離ドライバー」について、みなさんはどれくらいご存知でしょうか。

今回は、一般的にはあまり知られていない長距離ドライバーやドライバーを抱える企業が直面している課題や雇用問題等の現状について紹介していきます。

長距離ドライバーはどれくらいいるのか

全国のトラックドライバー約80万人(下記データ参照)、バスドライバーは約12万人(国土交通省バス事業運転者推移より)いて、この中には長距離ドライバーも含まれています。

特に多いトラックドライバーの人数は以下の表をご参照ください。社団法人全日本トラック協会が総務省「労働力調査」をもとに作成したデータです。

※参照 トラック輸送産業基礎データ(社団法人全日本トラック協会)

12か月推移 (万人)
年 月 道路貨物運送業
就業者数 輸送・機械運転従事者
総数 総数
25年12月 196 162 34 91 89 2
26年1月 184 152 32 84 82 2
26年2月 182 147 35 80 77 2
26年3月 180 142 37 79 77 2
26年4月 179 146 33 80 78 2
26年5月 187 156 31 87 85 2
26年6月 185 150 35 84 82 2
26年7月 186 151 35 87 85 1
26年8月 176 147 29 81 79 2
26年9月 188 156 32 87 84 3
26年10月 193 160 33 86 84 2
26年11月 190 157 33 80 77 3
営業用トラック台数推移 (台)
年度末 普通車
(1ナンバー)
小型車
(4ナンバー)
トレーラ
(被けん引車)
特殊(種)
用途車
合   計
平成10 886,331 81,479 119,930 219,418 1,307,158
15 892,082 75,553 129,468 257,690 1,354,793
20 887,345 77,626 145,947 277,726 1,388,644
21 863,399 76,432 142,783 278,722 1,361,336
22 856,599 75,646 143,723 281,679 1,357,647
23 854,516 74,811 145,085 283,988 1,358,400
24 852,748 74,381 146,061 287,542 1,360,732
25 859,534 73,376 147,532 291,698 1,372,140
道路貨物運送業 年齢階級別就業者数 (万人)
15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65歳以上 総 数
平成 15年 2 11 21 27 23 21 20 24 20 10 5 184
16 1 10 18 27 24 22 19 22 20 11 5 180
17 1 10 18 25 25 23 18 20 21 11 6 177
18 1 9 17 24 29 24 19 20 25 12 7 186
19 1 8 16 24 29 23 19 19 25 12 8 185
20 1 8 14 23 30 24 20 18 22 15 8 183
21 1 8 14 21 30 27 22 19 20 16 8 185
22 1 6 14 20 29 27 23 18 18 17 8 181
23
24 1 6 11 18 25 31 24 20 19 17 10 182
25 1 6 12 18 25 31 26 22 18 17 11 187

営業用トラックの台数は増加傾向にありますが、ドライバーは若干減少傾向、特に35歳以下のドライバーが減少傾向にあり、高年齢化が進んでいます。インターネットでの買い物が普及してきている昨今において、トラックと荷物があってもドライバーが不足しているというのが現状です。

みなさんのイメージもそうかもしれませんが、過酷な長時間労働と低賃金がネックになって、若年層に選ばれやすい職業ではありません。バスドライバーも同様で大型二種免許の取得費用や大変さと賃金の減少傾向により、新たにバスドライバーに就労する人数は減少し、少しでも条件のよさそうなバス会社への転職が加速しています。

そんな過酷な労働環境において、長距離の高速走行では「眠気」との戦いは避けられません。ここでは様々な問題について簡単にみてみましょう。

トラックドライバーの過労・居眠りによる事故割合は?

トラックドライバーの事故件数における追突事故の割合は52.9%で一番多くなっています。(社団法人全日本『トラック協会事業用貨物自動車の交通事故の傾向と事故事例』より)

追突事故は前方不注意による理由がほとんどですが、ドライバー自身の意識が薄れる「覚低走行」が大きな原因といえます。覚低走行とは眠くて意識が薄れてしまう現状が大半をしめると考えられるでしょう。

追突時には、寝てましたと言うドライバーはなかなかいません。原因が居眠りと断定できないので詳しいデータはありませんが、ナビやテレビの注視、書類の確認のほか居眠りによる追突は少なくありません。

意識が薄れてしまい、前方の車両に気付くのが遅れるケースがほとんどですが、夜間の長距離走行では大型貨物の最高速度90km/h(法定速度は80km/h、速度抑制装置は90km/hまで)で自動で速度を調整して走行する、「オートクルーズ」を利用し運行している場合にはペダルに足が無い場合が多く、前方の車両に気付いても減速が遅れ追突するケースも少なくありません。

トラックドライバーの賃金体系

次に長距離ドライバーの賃金体系についてみていきましょう。

トラックドライバーの賃金体系は、多くのトラック業者で日給月給制となっています。基本給+運行手当+皆勤手当などの諸手当の合計が一般的なトラックドライバーの賃金です。

毎日のように行先・走行距離が異なるため、行程により運行手当が定められているケースが多くなっています。

社団法人全日本トラック協会の資料によると、1ヶ月あたりの平均的な賃金は以下のようになっています。

  • 大型男性運転者 353,600円
  • 牽引(トレーラー)男性運転者 364,400円
  • 普通男性運転者 295,500円

平均年収は大型運転者で約420万円。休日が少ない割には決して高くありません。また、賞与がある運送会社は大手くらい。ほとんどは賞与はないか、ほとんどないに等しい金額のため、月収×12か月が年収になります。

大型トラックドライバーでもフォークリフトによる積み下ろしは賃金が安く、手積みは賃金が高めになっています。フォークリフトによる積み下ろしなら賃金は30万円前後と普通トラックドライバーと差はほとんどありません。トレーラードライバーについては積載物によっても金額が変わってきます。

また日給月給制の給与体系のため、当然ながら休めばその分賃金は減ることに。休んでしまうということは皆勤手当も支給されないわけですから、35万円の総支給額が30万円を切る月も出てきます。

このように、体力勝負のトラック業界は休日も少なく収入にも余裕が無いため常に人材不足が続いています。

長距離トラック

改善基準 長距離運転者の労働時間は?

平成24年4月29日の関越道でツアーバスが高速道路側面に激突し、7名の命が奪われた事故をきっかけにドライバーの安全対策が急速に進みました。

労働環境改善のための基準として、厚生労働省が大臣告示で改善基準を定めております。(自動車運転者の労働時間等の改善の基準

『トラックドライバーは運転のほか荷物の積み下ろし、休憩、点検などを含む始業から終業までの時間が1日あたりの拘束時間は原則13時間以下で、16時間まで延長することができる。ただし15時間を超える運行は週2回までに限る』といった内容です。

また勤務終了後、継続8時間以上の休息期間を与えることとあります。この内容はバスドライバーも共通で改善基準第5条で定められています。

1人で連続運転できるのは4時間までで、4時間につき30分の休憩が必要との内容も決められています。

30分の休憩は1回あたり10分以上の場合分割休憩も可能で15分×2回でも違反になりません。

1カ月あたりの運行時間は原則として293時間で、会社と労働組合が協定を結べば320時間まで延長できます。(バスは299時間、協定を結べは322時間まで延長可能)刑事罰はありませんが、国土交通省が事業停止などの行政処分を科す場合があります。

現状は守られていない改善基準?

ではこの改善基準が徹底されているかというと、必ずしもそうではありません。

国土交通省の調べによると、長距離運行でのドライバーの拘束時間が16時間を超えるケースが43.1%もありました。また、次の運行までの間が8時間未満の割合も全体で15%を超えています。

さらに連続運転時間が4時間を超えた運転も33%あり、この点でも改善基準が守られていません。しかし、500キロ以下の中短距離運行では拘束時間が16時間超は5%と低く、距離が長くなればなるほど違反が見られます。

事業者側の最大の理由は人材不足による理由が最も大きく、さらに適正運賃の受け取りが必要とも答えています。つまり荷主優位な点に問題があり、安値で請け負ってしまうケースも少なくないのです。

通常ならば人材不足で在籍社員に負荷をかけて頑張らせれば、1人あたりの賃金は上がるはずです。しかし適正な運賃が守られず、安値で請け負うために賃金が上がらず負担だけが大きくなるという悪循環が生まれるのです。 

パーキングエリアでは休めない?

高速道路のパーキングエリアやサービスエリアは長距離走行のドライバーにとっては必須の場所。しかし夜行大型ドライバーはパーキングエリアに駐車できない現実があります。

その原因の1つが、翌朝決まった時間に目的地に到着させるため長時間駐車し寝ているドライバーがいることです。また、改善基準により連続運転が厳しくなり必ず止まらなくてはいけないため、多くのトラックがパーキングエリアに入ってきます。駐車スペースが無い場合には枠外に駐車してしまっているのが現状で、枠外駐車により正規の駐車枠が空いてもその場所に入れないという現象も起こっています。

さらにひどい場合、パーキングエリアの減速ランプや加速ランプに停車するトラックも。減速ランプへの駐車は追突事故を招き、加速ランプへの駐車は本線に合流しようとする車が駐車車両が邪魔で十分加速できず、本線に合流するため本線走行車線を走行する車に追突される原因にもなりえます。

眠気に襲われた場合の対処方法

夜間走行の眠気は急に襲ってきます。普段人間は、明るい時に活動し夜間暗い時には寝るという体のサイクルがあります。

予定しているパーキングエリアまで無理に運転しないことが大切です。多くのドライバーが15分だけでも仮眠をとる、カフェイン入りドリンクを飲むなどの眠気対策で、居眠り運転事故の防止を行っています。

辛いガムやアメ、シュワシュワ系のアメも口の中を刺激し眠気冷ましには効果的です。ただし、甘めのアメは糖分が多く摂取され、眠気を誘うことがありますので注意が必要です。

高速道路専用コーヒーで眠気解消!

高速道路のパーキングエリア、サービスエリアの自動販売機限定で販売されているカフェイン3杯分入ったブラックコーヒーは眠気冷ましに最適です。

コールドでも十分効果的ですが、冬場に販売されているホットを飲めば即効性が高くさらに効果が高まります。

このコーヒーの注意点は以下の通りです。トラックやバスに限らず、長距離の運転をする際や夜間の運転をする際などにも有効なので、気になる方は試してみてください。

  • 毎回飲まないこと。体が慣れてしまうと効果が薄くなります。他のエナジー系ドリンクを飲む日を作るなど工夫が必要です。
  • 多量のカフェインを摂取しますので取り過ぎには注意しましょう。
  • 苦過ぎるため、ブラックコーヒーを普通に愛飲している人でも結構キツイ味かも知れません。このキツイ苦味で目がシャキッとし、体内に取り入れられたカフェインが眠気冷ましに良い効果を与えます。
  • コンビニ有のパーキングエリアは自動販売機が設置されていなかったり、設置されていても販売していない場所もありますので、大抵は販売してますが無い場合は次のパーキングエリアに行きましょう。

まとめ

「長距離ドライバー = 過酷な仕事」というイメージを持っている方は多いとは思いますが、前述のような実際の数字を参照して実感している方は少ないかもしれません。

実際に現代社会の利便性の重要な根幹を支えている物流システム。その物流の現場はトラックドライバーの方々によって支えられているといっても過言ではないでしょう。それだけに、ドライバーの待遇や雇用条件の改善、法整備など、業界全体として取り組むべき課題はまだたくさんありそうです。

今度、トラックによる長距離輸送や大型バスによる移動等も含め、自動運転やドローン等の最新技術の活用が盛んになってくるでしょうから、ロジスティクス全体の様相が変わっていくとは思います。とはいえ、まだしばらくは人が手で運転するという時代は続くので、ドライバーという仕事は自分だけでなくたくさんの人の命を預かる仕事でもあるので、事故や事故を誘発する環境要因等を、会社とドライバーの両方ができる限り回避する努力を重ねていくのが重要ですね。

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