サステナブルな物流を — 国交省が推進する生産性向上プラン

法人向けクラウド車両管理サービス 事故予防・コスト削減・業務効率化・コンプライアンス

ECサイトの普及拡大により、国内における通販市場は10年間の平均成長率が6.9%増と、2000年代に入ってからも引き続き、連続増加を見せています。公益社団法人日本通信販売協会 物流委員会の調査によると2015年の通販市場の売上は6兆5,100億円。

需要と供給のバランスが成り立ってこそサービスは成立するものですが、昨今は売上が右肩上がりになればなるほど、物流業界で問題が浮き彫りになっている状況です。

最近では競合である企業同士が手を取り合い物流業界における問題を解決すべく、共同輸送を開始するなどといった動きも見られています。

今回は国が積極的に進めている、物流業界の課題解決に向けた施策について見ていきましょう。

モーダルシフトによる人手不足の穏和と環境

国土交通省は、貨物輸送をトラックから大量輸送機関である鉄道や海運に転換し、環境負荷の低減、エネルギー問題、今後の人手不足を賄うべく、モーダルシフトでの運送を推奨しています。

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9月26日、国土交通省は阪九フェリー(株)などから申請があった「改正物流総合効率化法に基づく総合効率化計画(モーダルシフト)」の5件を経済産業省と認定しました。同省が経済産業省とともにモーダルシフトに係る計画を認定するのは2016年10月の法改正以降は今回が初めてのこと。国土交通省は、経済産業省などの関係省庁と連携して物流分野における労働力不足や多頻度小口輸送の進展等を背景に、物流分野における省力化・効率化・環境負荷低減を推進するため、2つ以上の業者が連携した幅広い物流効率化の取り組みを支援しています。いずれもモーダルシフトにより500km~1,200km程度のトラックによる輸送距離が100km程度に短縮されることで、CO2排出量の削減やトラックドライバーの運転時間等の負担の軽減も期待されているのです。

国土交通省は10月13日、2016年10月に施行された改正物流総合効率化法に基づく総合効率化計画の策定やモーダルシフト等の取組みを支援する「モーダルシフト等推進事業費補助金」について募集を行った結果、31件認定したと発表しました。交付決定額は31件を合算して3,550.2万円、2次募集も予定されています。

また、佐川急便は愛知県〜岩手県の宅配便幹線輸送について、トヨタ輸送株式会社が運行するTOYOTA LONGPASS EXPRESSを活用した異業種共同によるモーダルシフトで運用を9月下旬から開始しました。これによってトラック輸送にかかるドライバーの運行時間1,685時間/年間が省力化され、CO2排出量は83.5トン/年間が削減されるといいます。省力化と環境負荷低減を実現することが可能となることから、国土交通省が物流分野における省力化・環境負荷低減を推進するために改正された「改正物流総合効率化法」の規定により、総合効率化計画としても認定されました。

TOYOTA LONGPASS EXPRESSは愛知県東海市~岩手県盛岡市間の約900kmを結び、中京圏の工場で生産された自動車部品をトヨタ自動車東日本の岩手工場まで輸送するという、トヨタ輸送専用の貨物列車。2017年1月の増便に伴い、佐川急便が規定する配送リードタイムで輸送可能となったことから今回の施策が実現しました。今後はこのような業界を超えた取り組みが次々と展開されていくかもしれません。

国土交通省は10月24日、改正物流総合効率化法に基づく総合効率化計画に認定された優良な取組みについて、省力化量やCO2削減量など認定実績を取りまとめて公表しました。物流総合効率化計画認定件数のうち、29件がモーダルシフト。認定取得件数の多い事業者は日本貨物鉄道で13件、センコーが6件、日通が5件、佐川急便が5件でした。

連携した事業者数が多い計画では、ヤマト運輸、西濃運輸、第一貨物、トナミ運輸、新潟運輸、日通トランスポート、福山通運、名鉄運輸のFujisawa SST内における共同輸配送の8事業者。CO2削減量は、約216万本分のスギの二酸化炭素吸収量に相当(1万9000t-CO2/年)に、省力化量では約200人のトラックドライバーに相当する労働力の確保(39万6,000時間/年)となったと発表しています。このように数値に表すとモーダルシフトによって大きな効果が得られたことがわかるのではないでしょうか。

貨客混載で「運べる」選択肢を増やす

自動車運送業の担い手不足と人口減少に伴う輸送需要の減少により、過疎地域等においては人流・物流 サービスの持続可能性の確保が深刻な問題になっています。

そこで国土交通省は物流効率化と地域交通の維持に向けて、トラックが旅客を乗せたりバスやタクシーが貨物を運んだりする自動車運送での「貨客混載」対象範囲を9月1日から拡充しました。今まで「ヒト」の輸送と「荷物」の輸送を同時に行うことは法律によって禁じられていましたが、自動車運送事業者が旅客又は貨物の運送に特化してきた従来のあり方を転換し、サービスの「かけもち」がこの施策により可能になりました。路線バスの積載重量350キログラムの規制撤廃、過疎地における貸し切りバスやタクシーによる貨客混載と貨物事業者による旅客運送を可能にしています。

地方では人口の減少、運輸や物流の両業界では貨物や乗客の減少に課題を抱えており、ここでタッグを組むことに新たな需要創出につなげることを目的としています。全国の運輸支局はタクシー業者や宅配業者からの事業許可の申請受け付けを開始していますが、手続きには通常1~3カ月程度かかるため、年末または2018年早々からあちらこちらでサービスの開始が想定されます。

対象地域は過疎地を抱える3万人未満の市町村。事業者は貨物輸送業と旅客運送業を掛け持ちする許可を各運輸支局で取る必要がありますが、この対象範囲の穏和によって公共交通網の維持が困難になっている山間地や離島でも事業の安定した維持を見込んでいます。

宅配大手も貨客混載へ

また、過疎地だけではなく、宅配大手ヤマト運輸と佐川急便、日本郵便も積極的に貨客混載事業へと乗り出しました。

ヤマト運輸は貨客混載専用バスも規制内で運用中ですが、今後は地域活性化プログラム“プロジェクトG”で貨客混載に取り組むと発表。通常、拠点から各拠点へ、営業所と配達エリアを1日に2~3往復しているところ、1往復分をバスに代替することができれば、運転手が荷物を取りに営業所へ帰る負担が大きく軽減できます。
貨客混載便を単なる輸送代替だけでなく地域産物の輸送に使えば、地域活性化にもつながります。そこでヤマト運輸は貨客混載を行う宮崎県の路線バスに1月から保冷ボックスを搭載し、農水産品の都市部への輸送を始めました。

佐川急便は鉄道やバスとの貨客混載を展開。4月からは北越急行(新潟県南魚沼市)とともに、六日町駅(同)―うらがわら駅(新潟県上越市)間の約47キロメートルで鉄道による貨客混載をスタート。利用者が少なく経営が圧迫されているローカル線をうまく利用することでドライバー不足を解消し、配送効率も向上するという大きなメリットが得られたと言います。

日本郵便は7月から高知県でJR四国バス(高松市)の路線バスによる郵便局間の幹線輸送を始めました。従来の郵便輸送と同じ時間帯にバスが運行している中で、二酸化炭素削減や配送の効率化を見込んでいます。

佐川急便は空車時間を活用したタクシーによる配達の実証を検討するとしています。バスやタクシーで貨物を運ぶ際は積載できる重さに上限があります。貨物トラックで旅客を運ぶ際にはドライバーが2種免許を取得している必要がありますが、今後、トラックドライバーの負担軽減、そして地方のビジネスチャンスを叶えるべく、配送における新たなサービスの眼がここから出てくるかもしれません。

始まったばかりのこの規制穏和についてはまだクリアすべきハードルが多くありますが、試行錯誤しながらも運営を進めていくことで少しずつ生産性の向上へとつながっていくのではないでしょうか。

まとめ

運送会社でただ、ドライバーが不足しているというだけの問題ではありません。特に過疎地域においては、鉄道の廃線や便数の激減に加え、路線バスでさえも乗客減少による廃線が検討されているのが現状です。

2016年度は1億2,693人という全体人口に対し、65歳以上の高齢者の割合は27.3%、つまり3割弱が高齢者ということ。2017年1月1日時点での人口は1億2,558万3,658人で8年連続減少を見せ、さらに前年からは30万人弱も減少しています。人口も減り高齢化が進めば全体的な労働力が減っていくことは自明です。

今後は、人口減少によるマーケット・経済規模の縮小や人手不足のさらなる悪化は避けられないため、国も大きく舵を切って新たな政策を打ち出してはいますが、まだまだ先は不透明なままです。私たちの生活の根幹を支えている物流は、他の業界に先んじて労働人口不足問題に直面しているのだと思いますが、今回取り上げたモーダルシフト施策のように、業界・事業者を超えたリソースを賢く共同活用することで対応していくなど、社会全体として立ち向かっていく機運がさらに高まっていくでしょう。

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