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  • 「より安心・安全・エコな社会を」運輸業界に変革をもたらすTDBCが伝えたいこと -後編

    「より安心・安全・エコな社会を」運輸業界に変革をもたらすTDBCが伝えたいこと -後編

    ワーキンググループで実現したソリューション

    大里:「ワーキンググループの具体的な実績についてお教えいただけますか?」

    小島:「ワーキンググループの活動は1年サイクルで進めています。キックオフを行い、事業者を中心に課題を発表、整理し、その解決策の仮説を立て、実証実験をして評価し、改善をして、ソリューション化できるものはソリューション化するという流れです。全チームがこの流れで取り組み、1年間の活動成果をTDBC Forum(TDBCフォーラム)で発表します。また、発表資料は全ワーキンググループ分、Webサイトでも公開しております。

    過去には、ドライブレコーダーの管理ソフトウェアを開発・提供する企業と、AIを利用したシステムを開発している企業が連携して、既存のドライブレコーダーの映像をAIが分析し、運転時にスマートフォンでの通話や操作するなどの危険運転があったら、他の急ブレーキや急ハンドルなどのインシデントと同様にリストアップするというソリューションが生まれました。すでに製品化もされています。

    他にも、2017年度のエコドライブのワーキンググループで、エコドライブ実践ハンドブックを作りました。こちらもウェブサイトで公開しております。そして昨年度は、エコドライブにタクシー事業者がチャレンジしたんですね。タクシーの平均実車率は4割程度と言われており、6割は空気を乗せて走っていることになります。どうしても、お客様を拾って乗せることが最優先となってしまい、道路上でお客様を見つけたら急いで止まる。つまり、一般的なエコドライブとは言い難い運転になってしまうわけです。それを昨年、フジタクシーさんがエコドライブに挑戦し、結果として燃費は10%改善し、交通事故件数は直近4ヶ月間では56%も減少しました。これは大きな成果です。」


    大里:「実際に実証実験を行い、トライ&エラーを繰り返しているのは本当に素晴らしいことだと思います。私が参加した前回のフォーラムでも、観光バスに荷物を積めないか(貨客混載)、ワーキングシェアはできないかなど、数々の仮説を立てて実践されていました。中には『規制があって困難を極めた』という事例もありましたが、実際に動いてみないとわからないこともたくさんありますし、動いたからこそ見えてくるものもありますよね。」

    鈴木:「実証実験に協力してくださるサポート企業も多いですしね。大塚製薬株式会社さんやミズノ株式会社さん、ソフトバンク株式会社さん、外資系ではありますが日本ハネウェル株式会社さんなど多くの会員企業が毎回実証実験にご協力いただいています。参加者が多いほど、解決への道のりが近くなるのでありがたいですね。」

    TDBCのビジョンを実現するために〜変化を受け入れる

    大里:「TDBCとして、今後どのような社会を実現したいですか。」

    小島:「現在は実証実験を1年間のサイクルで回していますが、1年というのはかなり短く、解決策が出たところで終わってしまうことも少なくありません。

    TDBCのビジョンは『運輸業界を安心・安全・エコロジーな社会基盤に変革し、業界・社会 に貢献する』こと。実証実験をもとに開発したソリューションで企業の課題が解決できたとしても、社会という括りで見ると解決に辿り着いたとは言い難い。それに社会全体の課題を解決するには、業界全体を変えていく必要があるのです。ただでさえ人材不足なのに、長時間労働や労働環境など、運輸業界はあまり良いイメージを持たれていません。そして、心身ともに乗務員の健康状態が強く影響し、事故の有無にも関わってきます。だからこそ乗務員の健康管理や労働環境を含め、良い環境を構築していくべきなのです。この問題は業界全体で捉え、健康経営に向かって努力し、長く働けるような環境を作らなくてはなりません。

    今年度のワーキンググループの中にMaaSに取り組んでいるグループがありますが、実証実験の前に真っ先にぶつかったのが、日本の法律や規制の壁でした。MaaSは複数の交通手段をシームレスにつなぐものですが、旅行業法に引っかかってしまうのではないかとの心配がありました。そこで、ワーキンググループのメンバー企業と一緒に国土交通省に相談に行き、無事実証実験が問題なく実施できることになりました。国としても、新しい取り組みに対し、規制というよりは積極的に対応していくとのスタンスを感じました。

    さらに、健康面でもう一つ。近年、夏になると熱中症に関する報道が世間の注目を集めますが、乗務員の熱中症も少なくはありません。原因はさまざまありますが、その1つが乗務員が水分補給をするために飲料水などを飲んでいると、一般の方からツイートされてしまうのではとの心配や、乗務員自身も水分を取ることでトイレに行きたくなり、迷惑をかけてしまうのではないかとの配慮から積極的に水分補給をしないということもよく耳にします。健康管理のためにも、水分補給は非常に重要です。我慢をすることで逆に体を悪くしてしまうことにもなりますから。しかし、炎天下にも関わらず、ネットやトラブルを恐れて乗務員が水分を取らなくなってしまうのです。この問題は、社会の理解も必要ですし、至急、相互に意識を変えなければならない問題です。

    再配達問題の場合は社会問題化したため、受け取りをスムーズにする意識が強まり、受け取り方法が多様化しましたよね。社会を変えるためには、まず、課題に対して正しく理解をしてもらわなくてはなりませんので、業界・国・社会を巻き込んで実現していきたいですね。

    標準化、規格化は各種協会、団体との連携を進め、推進や普及においては国や自治体との連携など、ワーキンググループを超えて具体的なアクションを進めて行きたいと思っています。」

    鈴木:「これらを実現するためにはまだまだ多くの仲間が必要です。TDBCの活動に共鳴し、参加いただける仲間は日本全国で常に募集していますし。とくに多くの課題を抱えている運輸関係の事業者さんは積極的に参加していただきたいです。」

    小島:「TDBCは、オープンイノベーションを目的にスタートしたわけではありませんが、課題を持つ人と、解決策を持つ人がより多く集まることで課題解決への実現スピードが早まると実感しています。今までの取り組みで非常に大きな成果を得ることができましたので、TDBCだけではなく、日本国内にある問題を解決する方法の一つとして推進していくべきだと思っています。1対N、N対1はあっても、N対Nはこれまでにほとんどないモデル。N対Nの連携で、社会課題や業界課題の解決を目的とした「オープンイノベーション2.0」を進めていければ。そのためにはまず、TDBCがオープンイノベーション2.0の事例団体として周知されることですね。

    また、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みに関して、日本は遅れていると感じますので、協議会としてもSDGsを推進していきたいと思っています。ビジネスをしながら社会に貢献することは企業として必要なことですので。」

    みんなが集まり、自らが社会を変えていく

    大里:「運輸業界の参加者が増えれば、業界全体を変えていく力が大きくなりそうですね。」

    鈴木:「山積みの課題に追われてしまい、ついつい後ろ向きな考えになり、参加いただけない方も多くいらっしゃいます。しかし、そういう方たちにこそ動いていただき、業界全体を根こそぎ変えていきたいのです。ぜひ、活動の片鱗だけでも見ていただきたいと思います。」

    小島:「業界を変えたいという想いをお持ちの方にはぜひとも参加いただきたいですね。運輸業界を数字で見ると、バス事業者は69.4%が、トラック運送事業者は直近の調査で50%が赤字で、しかも営業利益率が平均0.2%と言われています。だからこそ、共通プラットフォームをできるだけ早く構築して、そしてこれをうまく活用してもらうことで、業務効率と利益率を上げて、次のビジネスを考える余力を作り出していただきたいのです。私たち自身も、そこまでをサポートしなければと思って運営しています。
    具体的に効果が出せるものを提供して、その結果、業界をもっと良くしたいとTDBCに参加してもらえる。そんな循環ができればいいなと。」

    鈴木:「そのために、公益性、中立性も大事にしていきたいと思っています。」

    大里:「TDBCとして、スマートドライブに期待することはございますか。」

    小島:「先述したDXレポートではありませんが、共通プラットフォーム化を実現して、どのサービスも横断的に利活用できる世界を作っていくべきだと思っています。用途や要望に見合ったサービスを選ぶのはユーザーの権利ですが、スマートドライブのサービスを利用していても、他のサービスも受けることができるようにしたいですし、どのサービスを利用していても、データ活用は横断的にできるようにしたい。

    TDBCのオープンな共通プラットフォーム構想に積極的に参加いただくことで、実現が近くなると考えていますので、賛同いただいたうえで技術面のフォロー、そしてAPIをオープンにしていただき、みんなが利用できるよう、ご協力いただけるとうれしいです。

    大里:「ありがとうございました。ぜひとも運輸業界の課題を解決していきましょう!」

  • 「より安心・安全・エコな社会を」運輸業界に変革をもたらすTDBCが伝えたいこと -前編

    「より安心・安全・エコな社会を」運輸業界に変革をもたらすTDBCが伝えたいこと -前編

    インタビュイー
    小島薫(こじま・かおる)様 ウイングアーク1st株式会社
    鈴木久夫(すずき・ひさお)様 ウイングアーク1st株式会社 

    ヒトやモノを運び、社会的インフラとして人々の生活基盤を支えている運輸業。人々の生活に欠かせないものではありますが、そこには社会問題化した再配達や交通事故、少子高齢化によるドライバーの人手不足、長時間労働など、数々の問題が積み重なり、働く人の環境を厳しくしたり、企業の成長を阻害したりしています。

    そうした問題を業界全体で解決すべきだと立ち上がったのが一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)です。今回はTDBCで代表理事を務める小島薫(こじま・かおる)さまと事務局長・理事を務める鈴木久夫(すずき・ひさお)さまにお話を伺いました。

    TDBC設立のきっかけ

    大里:「まずは、お二人のご経歴と運輸デジタルビジネス協議会について伺っていきたいと思います。」

    小島:「私は、2004年にウイングアーク1st株式会社(以下、ウイングアーク)に入社しました。ウイングアークでは当初、技術系の仕事に就き、Dr.Sum(ドクターサム)やMotionBoard(モーションボード)などBIツールの事業責任者を担当。それから、執行役員、CMOに就任し、縁あって運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)の設立に事務局長として参画し、一般社団法人化した際に代表理事に就任、本年5月1日からはほぼ協議会専任として社長直下で活動しています。前職もIT系企業で、同様にマーケティングや技術系の担当執行役員をしておりました。」

    鈴木:「私はIT系の会社で20数年勤務した後、組織コンサルンティングの会社で7年ほど務めていました。その時にTDBCの立ち上げに関わり、そのままウイングアークに転職。現在はTDBCの仕事を中心にしております。」

    大里:「TDBCの設立から何年が経ちましたか?」

    小島:「もとの任意団体は2016年の8月9日に、一般社団法人化したのは2018年の6月8日ですので、ほぼ丸3年になります。」

    大里:「設立前の段階から、TDBCの構想があったと伺っています。」

    小島:「構想と言いますか、設立のおよそ2年前から準備会が発足しています。きっかけは、設立の翌日に亡くなられましたが、名古屋にある株式会社フジタクシーグループ(以下、フジタクシー)の代表取締役会長を勤めていた梅村さんの一言からでした。フジタクシーさんはもともとウイングアークのお客様で、当社のツールを利用してデータを積極的に活用することで、事故の削減や乗務員の数字に対する習慣を確立するなどの成果を上げていただき、事例としても公開させていただきました。弊社は年に一回、WingArc Forum(ウィングアークフォーラム)という大規模なイベントを開催していますが、そこに登壇いただいたことをきっかけに、当時、ウイングアークの代表を務めていた内野と梅村さんのコミュニケーションが始まったのです。

    フジタクシーさんは、タクシー台数500台以上を誇る中堅のタクシー事業者ですので、何か課題があっても自社でのIT投資によって解決することができます。しかし周りを見渡せば、中小零細企業や個人タクシーが山ほどいる。環境の変化や法令の変更といった問題は会社規模に関係なくふりかかってくるものですが、それを1社ごとに解決していては、お金もかかるし非効率です。もともと個人タクシー等の支援もされている方でしたので、この点に課題感を感じられたのでしょう。梅村さんから内野に『中小零細企業も含めて、運輸業界全体の課題をもっと効率的に解決できないだろうか』という相談をいただいたのです。話を聞いた内野は、コンソーシアムという形でみんなが集まって議論し、課題解決をしてはどうかとの話になり、その場にたまたま居合わせた私が事務局を担うことになりました。」

    大里:「そのような経緯で設立されたのですね。」

    小島:「ウイングアークのお客様には、運輸事業者も多くいらっしゃいます。理由は、私たちのビジネスが帳票からスタートしているためですが、運輸業界ではモノと伝票が一緒に動きますので、取引においては伝票が不可欠で、その伝票データにも非常に大きな価値があるのです。ですので、佐川急便株式会社さんや西濃運輸株式会社さんはウイングアークの大規模な事例として公開させていただいており、TDBCにも佐川急便(SGホールディングス)グループのSGシステム株式会社さんには設立以前から参画いただいています。
    このように、ウイングアークと物流業界は切ってもきれない関係ですので、私たちとしても業界をご支援することで、お客様へのご恩返しができるのではないかと思っています。」

     

    業界全体で課題を捉え、解決すること

    大里:「地方の企業や中小企業でもウイングアークのソリューションを導入されている企業様はいらっしゃいますか?」

    小島:「地方も都心も関係なく、比較的中堅以下の企業は紙やエクセル文化がまだ根強く残っています。しかし運輸業界を前進させる第一歩として、まずはこの点を解決すべきです。なぜなら、管理するものが多い業界だからこそ、自動化することで本来の業務に集中すべきだと思っているためです。実際に近年発生した宅配事業者の再配達問題から軽井沢のスキーバス事故まで、運輸業界の問題が一般の方々も巻き込むような社会問題へと発展する可能性もありますから。

    TDBCではテーマごとにワーキンググループを作って活動しており、先ほど挙げた紙やエクセルでの管理方法については、昨年度の活動の中でもWG05A「先端技術による業務の効率化」のワーキングループがテーマに掲げて取り組んでいました。」

    大里:「TDBCの特徴は、グループで課題を解決するところですよね。情報共有して終わりではなく、解決しなければならないビジネス課題と社会課題が目の前にあるからこそ、アクションを伴わなくてはなりません。」

    小島:「基本的な課題解決方法は、問題箇所を専門企業に依頼して解決するという、IT業界でいうところのSIerモデルと同じイメージです。この場合、開発費は1社が負担することになりますが、依頼された会社は自社の強みを活かした提案に偏ってしまいますし、この方法には限界があると思っています。

    課題を議論していても、そこに解決できる人たちがいなければ、情報を共有して、共感して解散して終わりです。TDBCは課題を持つ人たちとともに、さまざまな技術や解決策を持つ人たちも参加しますので、彼らが一箇所に集まって議論すれば、課題に対するさまざまな解決策の仮説を立て、実際に事業者の協力を得て実証実験を行い、それを評価して、具体的に実践可能な解決策に繋げる。それがTDBCなのです。」

    大里:「事業者とサポート企業が一緒に参加するというのは珍しいですよね。参加者が増えると取りまとめが大変だと思うのですが、いかがでしょうか。たとえば『電子化したい』という課題があっても、事業者側によって日報業務、帳票、走行ルート、と電子化したいものが異なるケースもありますし、サポート企業もなるべく自社の技術やツールで解決したいと思うのでは。」

    小島:「競合のベンダーも数多く参加されていますので、企業間の調整や優先しなくてはならないソリューションなど、議論の中で何か別の問題が起きるかもしれないということは私たちも想定していました。しかし、意外なことに、そうした問題は何も起きませんでした。また、事業者側も自社の課題だけではなく、業界全体での課題感を論じるケースが多いと感じています。

    ワーキンググループの中には、テーマをさらに深掘りしていくケースもあります。例えば、「乗務員の健康増進」のテーマですが、睡眠不足やこの業界の職業病と言われています腰痛や眼精疲労やそれに関する疾病など、健康一つとっても非常に幅広いですよね。

    そうした場合はワーキンググループの中でさらにサブチームを作っています。細分化していくとそれぞれの分野で強みを持つ企業がいますので、具体的に課題を持つ運輸事業者との連携で課題解決のために実証実験が進められます。」

    注力すべきは「標準化」と「規格化」

    大里:「以前、鈴木様と話した際に、共通の規格を作っていくべきだという話が出ました。事業者側が共通のしくみやデータ形式にしていかなくては、負担が大きくなってしまいます。」

    小島:「ソリューション提供側が自社の仕様で作ってしまうと、それを使う事業者側はそこに合わせなければならなくなってしまいます。たとえば、A社のデジタコを使っていたけれど、価格的に見るとB社のデジタコの方が安いので変更したい。しかし、A社のデジタコでシステムを構築されているので、B社のデジタコが導入できないとか。また、A社のデジタコからB社のデジタコに乗り換える場合も、データを横断的に使いたいですよね。それが標準化や規格化を統一すべきだということにつながるのです。

    3,4年前からAPIエコノミーやAPIビジネスという言葉が出てきましたが、日本はまだまだ規格化が遅れていると感じます。」

    大里:「大手企業であれば、業務に合わせてSIerと共にスクラッチ開発で作り込むことができますが、中小企業であれば、予算も限られていますし難しいですよね。」

    小島:「標準化や規格化は、最低レベルの効率化にはなると思います。というのも、標準化された規格やAPIを利用して、各社が必要としているアプリケーションを自社1社のためだけに作るのはすごく無駄だからです。

    昨年、経済産業省が『DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜』を昨年9月7日に発表しました。このレポートでは、日本が今後直面する問題について語られています。既存システムが、事業部門ごとに構築されており、さらに過度なカスタマイズがなされていることにより、複雑化・ブラックボックス化している。また、IT予算の8割以上が既存システムの維持・保守業務に費やされている。

    デジタルトランスフォーメーションを実施する以前に、ブラックボックス化してしまっているこの問題を解決すべきだと。そうでなくては、2025年に日本は大変なことになってしまう−−それを『2025年の崖』と表現しているのです。

    これは2025年にSAP社のERP(Enterprise Resource Planningの略。日本語では総合基幹業務システム)がサポート終了になることも大きな要因になっています。SAP ERPは日本国内においても大手企業を中心に、約2,000社で導入されており、その規模も大きい。そこで、経済産業省はDXレポート内で、ITシステムの刷新においては膨大なコストと時間がかかるため、企業の競争力に関わらない協調領域については、個別にシステム開発するのではなく、業界毎や課題ごとに共通プラットフォームを構築し、みんなで利用することで早期かつ安価にシステム刷新につなげることができるとしています。

    また、この共通プラットフォームの検討の進め方の1つとして、「業界団体が共通化を進める旗振り役となって議論を進める方法」を挙げています。

    TDBCは課題解決を行う業界団体ですので、イニシアチブを取りながら推進していきたい。それは国も考えていることですし、物流に関連するどの企業も同じようなことを考えているはずです。ですので、ワーキンググループの中でこれらの問題の解決策、共通プラットフォームを創っていければと考えています。」

     

    >>>後編へつづく

  • オープンなしくみで日本の物流を変える。グローバルカンパニー・ハネウェルの視線の先にあるもの

    オープンなしくみで日本の物流を変える。グローバルカンパニー・ハネウェルの視線の先にあるもの

    インタビュイー:
    日本ハネウェル株式会社
    代表取締役社長 西巻宏(にしまき・ひろし)さま

    業界を支える、ハネウェル4つの事業

    まずは西巻様のご経歴とハネウェルの事業について、簡単にご紹介いただけますでしょうか。

    私は大学を卒業後、日系の事務機器のメーカーに20年ほど在籍していました。そこで、ヨーロッパに10年、アメリカに4年近く赴任し、日本の事務機器のデジタル化に伴う、販売マーケティングを担当。帰国後は医療機器の販売やマーケティング責任者を務め、2014年の11月にハネウェルに参画しました。

    ハネウェルのビジネスは大きく4つございます。

    1つめは、航空機に関するさまざまな装置や部品、フライトシミュレーションのシステム関係、燃費の効率化が行える運送システムなど、航空宇宙産業向け製品とソリューションを展開する、エアロスペース事業です。防衛用航空機への搭載実績もございますし、最近ではデンソーさんと空飛ぶ車の開発にも取り組んでいます。

    2つめがパフォーマンスマテリアルズという、化学製品関連の商品です。薬品を包むフィルムや、家庭用の害虫駆除スプレーの中身としても使われていますし、セブンイレブンに納品している冷凍冷蔵庫の冷媒については、CO2の削減と燃費が非常に良いという理由で採用いただいております。また、プロセスソリューションという名で、化学工場をはじめ、さまざまな工場で安全や生産性を管理する統合的なシステムも提供しています。これは、「この工場は安全上の問題がある」「生産がストップしている」など、工場に関する情報を一元管理できるシステムです。

    3つめは、ビルに関する安全やセキュリティ、メンテナンスを支援するビルディングテクノジー製品の提供です。

    アメリカのホテルに行くと気付かれると思いますが、温度調整やサーモスタッドに弊社の製品が採用されています。昔から使われていますので、古いホテルにはほとんど採用されています。日本でも国際的なホテルでは、照明や空調にハネウェル指定の製品が使われています。それ以外にも、防犯カメラや入退室のセキュリティーシステム、火事が起きた時や煙が発生した時にビルのどこで火災が発生したかをすぐに感知できる火災システムもございます。

    4つめが、セーフティー&プロダクティビティ ソリューションズです。これは、物流から製造工場まで、作業員の安全と生産性を向上する製品およびサービスを提供するビジネスです。生産性向上の中には、物流、製造、小売流通、ヘルスケアの4つの大きなマーケットがあります。様々な場面で疲れわれているバーコードやQRコードを確実に読み取るスキャナーや業務上厳しい環境で使用されるハンディ端末を提供させていただいております。また安全性向上については有毒ガスが発生する場所———半導体の製造工場や化学工場、製紙工場といった場所は、必ずと言っていいほど有毒ガスが発生しますが、それを感知するシステムを提供しているのが弊社です。また、カメラ付きのヘルメット、防刃手袋など、作業員の方の安全性を高める個人保護具製品も提供しております。

    グローバルカンパニー・ハネウェルの強み

    ハネウェルはフォーチュン100のグローバルカンパニーですので、純粋な日本企業とは少し角度の異なる戦術をお持ちかと思うのですが、日本へのローカライズをしているのでしょうか、それとも日本は単独の戦略を持っているのでしょうか。

    売上の約半分は本拠点があるアメリカが占めていますが、最近では、中国、インド、中近東、中南米あたりがGDPの成長とともに物流や各産業で伸びています。ハネウェル全体としては5%ほど成長しているものの、日本においてはまだまだシェアが低い状態です。

    2000年初頭まで合弁会社でしたが、2005年に独立して100%ハネウェルの資本になったことを機に、ハネウェルが持っているテクノロジーとサービスを日本でも活かしていこうという機運が高まりました。日本の市場はすでに成熟していますので、その市場でいかに他社と差別化を図り、成長に結びつけにいくかを考えなくてはなりません。そういう意味でも日本は重要な拠点なのです。

    日本は独特の文化や言語がございますので、アメリカの製品をそっくりそのまま導入するわけにはいきません。日本語対応はもちろんのこと、お客様に受け入れてもらえるように、その他のサービスもすべて丁寧にローカライズする必要があるのです。そのためにも、さまざまな分野のパートナー企業を交えてエコシステムを作り、提供していきたいと考えています。それに、今は内需が下がってきていますので、日本企業が海外に進出する機会は増えて行くと予想されます。ハネウェルはグローバルカンパニーですし、いくつもの拠点を所有していますから、各地で培った技術面やノウハウ、市場開拓など、多面的なフォローも可能です。

    スマートドライブさんも海外展開をお考えとのことですが、私どもの企業は現地にスタッフがおり、現地でビジネスを展開しておりますので、ビジネスの立ち上がりを迅速にサポートできると思います。

    プロダクトの翻訳は、Google翻訳や機械による翻訳ですと機械的ですし、表現がストレートすぎるものになるため、日本の方だと満足されませんよね。文脈も含めて翻訳して欲しいなど、品質に関してはシビアな印象があります。同じような話で、ハードウェアの品質に対しても日本人にフィットさせるために苦労されたことはございますか。

    欧米ではがっちりとしている、堅牢性が高いものが好まれます。しかし日本では、とくにB2Bの業務系製品ですが、軽い、薄い、見栄えがいいものが好まれる傾向にあります。この時点でも、だいぶ異なりますよね。日本はiPhoneの導入率がもっとも高いと言われていますが、この傾向を明確に表した結果と言ってもいいでしょう。

    ハネウェルでは、そうした国内のニーズを確実に捉え、中国にある企画開発製造部門で日本向けの製品開発をしています。

    世の中のトレンドに合わせたサービスを提供する

    物流倉庫などで使用されている従来のハンドスキャナーと、ハネウェル様のハンドスキャナーとでは思想が大きく違いますよね。

    世の中のトレンドは、「買う」から「使う」へと移行しつつあります。カーシェアに代表されるように、B2C向けのサービスではすでにこの考えが一般化していますよね。この流れは今後B2B向けのサービスにもやってきますし、従来のビジネスモデルもこれから大幅に変化していくでしょう。

    大手企業ですと、要求要件のレベルが非常に高いうえ、きめ細かく、業務が複雑です。しかし資金力があるので、一部をSIerに対応させることもできる。しかし中小企業は、コスト重視でシステムに業務を合わせていく方向性へと変流ではないでしょうか。

     

    「自社の業務にシステムをカスタマイズして欲しい」ではなく、「自社の業務をなるべくシステムに合わせる」。これは、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)やSFA(セールス・フォース・オートメーション)の導入時に言われていた話と近いものを感じます。

    とくに日本は労働集約型で、人が介在する作業や業務が非常に多い。日本人はどんな作業も器用にこなしてしまうので、合理的な動きがなかなか浸透しづらいと言いますか、きめ細やかな仕事に慣れすぎて気づかないのです。

    欧米ですと、人件費が高い割にすぐやめる、多国籍の人たちが働いているので言語はバラバラ…。そうした環境下で業務の統一性を図るために、システムが必要になるのです。国内でも今後、労働人口が減っていけば、必然的に外国人労働者の採用が増えていきます。ですので、B2B領域においてもシステムに業務を合わせる必要性は高まってくるでしょう。

     

    そうですね、人口が減っていく中で生産性をどのように上げていくかを早急に考えるべきですよね。賃上げは、あくまで一時しのぎにしかなりませんし。
    購入から利用へ変化していくという話がありましたが、ハネウェルのハンディ端末で使用されているOSはAndroidです。ソフトウェアのアップデート費用はかからないということでしょうか?

    その通りです。コストをかけず、広く導入していただきたいと思っております。

     

    利用者にとっては非常にありがたいと思います。ちなみに、この分野で競合はございますか。

    新たなマネタイズの方法やアプリケーションを含めると、まだまだ少ないようです。先ほど申し上げたように、大手企業であれば、SIer独自のシステムをお客様と一緒に要件定義しながら開発しますので、他社も入り込みやすいのですが、中小企業にはあまりフォーカスされていないようです。

    なぜなら、中小企業は大手企業と比べると資金的な余裕もノウハウもないことが多い。ただ、彼らの業務フローを俯瞰して見ると、機能を限定したり、業務をシンプルにしたりできる部分が意外とあります。ここにイノベーションの必要性があるため、私たちは着目しているのです。

    たとえば、100ある機能の中で実際に利用しているのは50だけ、残りはあってもいいけど使わないという場合、機能を50に絞れば、コストも安くなるし、シンプルで使いやすくなるでしょう。そこをしっかり伝え、業務効率を向上する方法を教えてあげるべきなのです。

     

    大手企業は資金的な余裕もあるのでシステム化することができますが、このままでは電子化の流れの中で、中小企業が取り残されてしまうのではないでしょうか。

    タクシーに乗ると、ドライバーさんが手書きで運行記録を記入している姿を目にしませんか。サンバイザーの所にメモ帳とボールペンがあって、信号が止まった時に、何時に乗車して何時に降車した、区間はどこどこで料金はいくらなどの情報を記している、あの作業です。たとえば、この運行記録を自動化して、ドライバーさんには自身の体調や運転の管理に集中させることで、よりお客様の安全を確保していくことができるはずです。そういう部分を私たちがサポートしていくべきだと思っています。

    「業務用のiPhone」というコンセプトで業務効率の改善を推進

    スマートドライブは御社のハンディ端末と連携させていただいておりますが、私たち以外にもパートナー様はいらっしゃるのでしょうか。

    倉庫の在庫管理システムや、食品の賞味期限を管理するシステムとも連携し、棚卸しの業務が簡略化できるようにしています。また、店舗内の導線を管理するシステムとも連携が可能です。

    スマートドライブのデバイスで収集したデータは、ハネウェルのハンディ端末を介してデータ送信できますが、同じように店舗で使用されているさまざまなIoTデータを弊社のスマートデバイスで集約することもできます。

    車にはドラレコやデジタコなど取り付けることができるデバイスがたくさんありますよね。配達中のドライバーはいくつもの端末を腰につけて作業していますが、一つに集約させて情報を一元化すべきです。それが私たちの考える業務用のiPhone」というコンセプトです。個人のみなさまもiPhoneやAndroidに数々のアプリを入れていると思いますが、それを業務用に落とし込みたいのです。

     

    その発想は素晴らしいですね。今後さらに多様なデータを取り扱うようになると、バーコードスキャンには端末A、車両の位置情報には端末B、電子決済をするときは端末Cというように、業務用端末を何個も持つことになってしまいますし。

    そうですね。業務用のアプリを入れておくことで、ハネウェルのスマートデバイス1つですみますから、端末の管理も楽ですし、より作業を効率化させることができます。

    スマートドライブとのパートナーシップで「安全と効率」を実現

    「安全効率」という観点で、今後スマートドライブと取り組めることはございますか。

    タクシー業界や運送業界など、車両を使った事業は交通事故のリスクがつきものです。人命に関わる仕事でもありますし、ドライバーの健康管理や車両管理など、さまざまな課題を一緒に解決してきたいですね。その取り組み方も、AはAじゃないと売れない、BはBだと売れない、でもAとBを合わせてCにすればお客様に価値を提供できるという形で。ハネウェルが持っているソリューションだけでなく、スマートドライブなどのパートナー企業と、お互いの強みを掛け合わせてより大きな価値を提案してきたい。

    ハードウェアビジネスは、新しく良いものがリリースされると、型の古いものの値段が安くなるという宿命があります。新しく出たものが売れれば、見た目も機能も変わらない類似品が出回るようになりますし。ハードウェアはあくまで活用するものです。ですので、その先の価値を提供できなければ、最終的にお客様のメリットには結びつきません。

    スマートドライブは分析にも力を入れているとのことですが、そこが数年後、コアな部分になっていくのではないでしょうか。

    これから先、ビジネスの源流となるのはハードウェアではなくデータです。いかにデータを集め、お客様が必要とする価値に作り上げていくか。そこがビジネスの核心になっていくでしょう。なので、双方で集めたデータを多角的にアウトプットして、お客様に今までにない、多大で貴重な価値を提供していきたい。そのためにも、スマートドライブとの連携を皮切りに、パートナー企業様の共創や協業を積極的に進めていきたいと思います。

    ありがとうございます。集めたデータを組み合わせて、世の中にもっと大きな価値を提供していきましょう!

  • STARTUP THAILAND参加企業4社の対談 タイ市場の可能性 - 後編

    STARTUP THAILAND参加企業4社の対談 タイ市場の可能性 - 後編

    STARTUP THAILANDに出展して感じたこと

    坂口:
    今回、スタートアップタイランドに参加して、気になった会社やブースにいらしたお客様と話したことや感じたことを教えてください。

    小林:
    全体的にブースを見たときに、エネルギー系のスタートアップは少なかったと思います。各国から来ているなかで、特に我々のようなハードウェアを作っている企業は無かったんじゃないかと思います。そういうところで、チャレナジーは世界で見ても、スタートアップとしてニッチな部分を攻めているのではないかと、感じました。

    竹田:
    私自身がタイのスタートアップ企業のブースを見ていて、ヘルスケア系のスタートアップで面白い企業を見つけました。やっていることはシンプルで薬局向けに電子処方箋の発行、薬代をeマネーでの決済サービスです。今まで紙で扱っていたデータを電子化して、サービスを一気に広げてから、データの商流を抑える。そのデータを活用し、製薬企業のセールス/マーケティングや患者の予防医療に繋げるといったビジネスは今から沢山でてくると思います。

    日本の場合、ヘルスケア系のデータは特定の企業がデータを商流を抑えてしまっていて、なかなか入り込めないですが、タイやフィリピン、インドネシアではまだまだ、この分野は狙えると感じましたね。タイでデータを持っている人たちと協業したいです。

    伊野:
    SPEEDAのブースに来ていただいた、香港で財閥系のファミリービジネスのビジネス開発を手助けしている投資家の方が印象的でした。その方は個人的なつながりで、タイの財閥系企業に対して情報提供しているので、SPEEDAに興味があるとおっしゃっていました。財閥系はすごいファミリー繋がりのネットワークがあるようで、大手のコンサル会社様との付き合いはあるものの、ファミリーを通して、個人で財閥系企業をサポートしている人がいると驚きました。

    坂口:
    個人コンサルタントが、巨大企業グループをサポートするみたいな感じですか?

    伊野:
    まさにそういう感じなのですが、資金力もあるので、個人ですが法人向けのデータベースサービスを買えちゃうくらいの資金があって、権限もある方ですね。ブルームバーグの金額と弊社の金額を比較して、「あっ、安いのね」という感想を述べられてました。

    坂口:
    それはタイの特徴かもしれないですね。人というかネットワークでビジネスしているというのがあると思います。値段とかではなく、誰から買うか?誰を知っているか?というがポイントになるので、タイでビジネスする際にはとても重要なんですよね。

    柚村:
    ブースでタイだけではなく、近隣国のラオスやカンボジアやベトナムまで手がけている運送業・ロジスティクス関連企業の来場者とたくさん会話できました。そこで「越境輸送はやらないの?」と聞かれまして、我々はまだリソースがないので、そこまでやれないのですが、陸続きの国の場合は隣の国もターゲットエリアになると再認識し、越境輸送でもビジネスができれば、さらにチャンスは広がるなと思いました。

    あとは何より嬉しかったのは、インターナショナルピッチで弊社の北川が優勝できたことです!それを聞きつけた方々が興味を持ってたくさんブースに来てくれました。本当にうれしかったです。

    これから海外展開を目指しているスタートアップ企業へ

     

    坂口:
    最後ですが、貴社の今後の海外展開や、これから海外展開を目指している日本のスタートアップに対して一言いただければと思います。

    小林:
    チャレナジーという会社で働いていて、とても楽しいですし、やりがいを感じています。こういったイベントに参加させていただくと、皆様の取り組みや情熱を知ることができて、勉強にもなりますし、刺激をもらえるのも凄く楽しいです。もし、海外展開を考えているスタートアップの企業であれば、こういったイベントに参加して、まずは横の繋がりからの刺激をもらうのも1つの方法としていいのかな、と思いました。

    竹田:
    ABEJAの中でも海外展開するときには色々とあったみたいでして、ちょうど2年前のシンガポール進出のときですね。社内的には「今、やる必要あるのか?」「役員までを外に出してもやる意味あるのか?」とか、そういった話があったのですが、当時の決断の速さがよかったです。AIのマーケットで動きが早いんですね。たとえば、いまインドネシアのAIマーケットに入ろうとしても、以外とローカルのAIスタートアップも強いですし、タイであっても、中国のAIスタートアップが既に進出してきています。1年差が確実にでかいので、悩んでいるのであれば、早いうちに進出したほうがいいと思います。

    坂口:
    社内で反対意見が出てるくらいの早いタイミングで出るのがいいのかもしれませんね

    竹田:
    ひょっとしたらそうかもしれませんね。若手の社員を実験的に海外進出させるのではなく、役員レベルが投資家にコミットして海外に打って出るくらいの方がいいと思います。

    伊野:
    私もABEJAさんと似ていて、思い切って海外に進出しちゃったほうがいいと思います。弊社もそうですが、日本でリサーチして仮説を立てていても、海外に行かないことには現場感とかチャンスは意外と掴めないです。人脈なんかは特にそうです。コミットして海外に出て、そこに全力をかけるからこそ広がっていく世界があると思っています。弊社も創業者が自ら6年前にシンガポールに乗り込んでいますし、海外にかける想いが強いのであれば、役員レベルの方が自ら行った方がいいと思います。

    柚村:
    弊社の海外展開についてのトッププライオリティはタイです。「必ずここで結果を出す」という想いでやっていきます。その後は、同じアジアの中でインドネシアやベトナムなどのモータリゼーションの大きな国に進出しようと思っています。

    今後の海外展開を考えているスタートアップに対しては、皆様と一緒で。早めに一歩踏み出したほうがいいし、トップ自らが乗り込むのも大事だと思います。

    とはいえ、1人だけだと凄い寂しい世界になってしまいます。今回のイベントでもそうですが、社外にも同じような立場の仲間は沢山いるんだなと思えたことは本当に嬉しかったです。

    ジェトロさんの支援も凄くウェットにサポートしてくれて、本当にジワジワありがたいです。これから海外に乗り込もうと思っている企業様がいれば、やっちゃえばいいし、ウェットにサポートしてくれる人たちが周りに沢山いるんですよ、というのを知っていただければと思います。

    坂口:
    ありがとうございます。ジェトロはスタートアップの支援に力をいれていますので、タイにいらっしゃったら、気軽に情報収集がてらお立ち寄りいただければと思います。スタートアップの皆様の支援をさせていただくのは、凄く楽しいですし、刺激になっています。私たちを仲間だと思ってほしいですね。

    それに、タイを含めて世界23カ国のジェトロ事務所でスタートアップ支援を強化していきますので、何かあれば、ぜひ相談ください。

     

  • STARTUP THAILAND参加企業4社の対談 タイ市場の可能性 - 前編

    STARTUP THAILAND参加企業4社の対談 タイ市場の可能性 - 前編

    7月25日から27日にかけて、タイ最大級のスタートアップイベントStartup Thailandが開催されました。今回、官民連携でスタートアップを支援するJ-Startupプログラムの一環として参加した4社と事務局のジェトロが対談を行いました。

    肌で感じたタイマーケットの可能性や、イベントで感じたことなどを紹介します。

    【対談者】
    ジェトロ(日本貿易振興機構)
    坂口 裕得子(さかぐち ゆうこ) 以下:坂口

    株式会社チャレナジー
    小林憲明(こばやし のりあき)  以下:小林

    株式会社ABEJA
    竹田孝紀(たけだ たかのり)   以下:竹田

    Uzabase Asia Pacific Pte.Ltd.

    伊野紗紀(いの さき)      以下:伊野

    株式会社スマートドライブ

    柚村 大輔(ゆむら だいすけ)   以下:柚村

    坂口:
    このスタートアップタイランドのイベントにご参加いただいた4社に話を伺っていきたいと思います。それでは、まず自己紹介からお願いします。

    小林:
    我々はチャレナジーという会社でして、社名はチャレンジとエネルギーをからきています。「エネルギーシフトを起こす」というミッションで、安心安全で再生可能なエネルギーを全人類に届けたいという想いで2014年に創業した会社です。

    私自身はこのチャレナジーに2018年の9月にジョインしまして、その前は南米のエクアドルに6年ほど住んでました。ずっと昔から環境保全に興味があったので、会社のビジョンに共感してチャレナジーに参画しました。

    竹田:
    ABEJA(アベジャ)の竹田と申します。ABEJAは「豊かな社会を実装する」というビジョンを掲げて、今はマシンラーニング、ディープラーニングを使って、世の中に社会構造が変わるようなイノベーションを起こそうとしている会社です。

    私自身は新卒でフロンテオというAIベンチャーで事業開発や新規事業に携わっていました。その後はIT企業のCVCに転職し、東南アジアでスタートアップ向けの投資活動を2年ほど行なっていました。その後、やっぱり自分で事業作る方が楽しいと思い、会社の方向性に共感したABEJAにジョインして、以降はタイの事業開発をずっと担当しています。

    伊野:
    ユーザベースの伊野です。よろしくお願いします。ユーザベースは2008年創業で、今はNeswPicksをはじめ、様々なプロダクトがあるのですが、最初に始めた事業はSPEEDA(スピーダ)です。元々は創業者が徹夜してビジネス情報をかき集めて、情報収集に苦労したということが起業の原点で、ビジネス情報へいかに効率的にアクセスし、アウトプットまでもっていけるか?というところに主眼を置いて開発されたプロダクトです。

    私自身は新卒がジェトロでして。対日投資部で、外国企業を日本に誘致するという仕事をしてました。その頃から調査業務をしていて、情報提供することによってビジネスを拡大するか?ということろにパッションを持っていました。ジェトロを卒業したあとはコンサル会社で働いていました。その頃にSPEEDAに出会って「これから海外展開をしていく」と聞いて、創業メンバーに「海外展開は私がやりたいです」と時間談判して、東南アジア展開のタイミングで、シンガポールに赴任しました。

    柚村:
    スマートドライブの柚村です。事業内容としてはモビリティデータを活用したサービスと、プラットフォームの開発および運営をやっている会社です。具体的なサービスとしては大きく3つありまして、B2Bで法人のお客様向けのクラウド車両管理システムの提供、2つ目は個人のお客様向けにB2C向けのお客様にCRMプラットフォームの開発、3つ目はテレマティクスの保険の開発といったところをやっております。

    創業からもうすぐ6年になるのですが、これまでずっと日本でビジネスをしてきまして、おかげさまで国内では300社以上のお客様に利用されていて、デバイスの出荷ベースでは3万台以上出荷しています。

    私のバックグランドとしては、最初に入ったソニーでは20年ほど働いてまして、事業開発、商品企画に従事し、おもにアジアパシフィック地域の海外マーケティング活動も担当していました。その後、三菱自動車にはいりまして、自動車の事業に携わるようになって、マレーシアのマネジメントをしておりました。そのあとに現職のスマートドライブ に来ました。

    坂口:
    面白いですね。こうやって改めて皆様の話を聞くと、多種多様なバックグランドがあって個性的な方々集まっていると思いました。

    肌で感じたマーケットの可能性

    坂口:
    今回にタイにきて実感したこと、マーケットの可能性や期待感や、課題感など感じたことをお話いただければと思います。

    小林:
    弊社としては初めてのタイでの市場調査でした。なので、事前にリサーチでは「タイはそこまで風力ポテンシャルがない」と仮説を立てていました。しかし、実際にタイの会社様と直接対面で話す機会があって、製造拠点としてのポテンシャルに可能性を感じました。

    坂口:
    風の強さって、地域によって結構変わるのですか?

    小林:
    例えばヨーロッパは偏西風があるので、年中一定の風が吹いています。一方で日本は山があったり、台風があったり、風力ポテンシャルは結構高いのですが活用するのが難しいのです。世界の場所によって、風の条件は変わってきますね。

    また、ヨーロッパには今の段階では参入する予定はなくて、逆にニッチなマーケットとして、熱帯低気圧やサイクロンが来るようなところに風車を設置し、ニッチ市場を押さえてから、将来的には他の地域も、と考えています。

    竹田:
    弊社のタイでの事業開発は、2年前のシンガポール法人設立以降、出張ベースですが、着実に進めておりまして、ポテンシャルを感じています。ここ最近での変化としては、JETROや日本大使館の方々からの支援もあり財閥系の企業へもアプローチできるようになってきて、、もう少しでおもしろい事例が財閥系企業と一緒に作れそうです。

    坂口:
    日本の企業ですと、新しい取り組みが心配な場合、事例が沢山ないと心配で重い腰がなかなか上がらない。というケースがあると思います。これはアジア各国の財閥系企業でも同じような形なのでしょうか?

    竹田:
    層によると思います。エグゼクティブ層や財閥の上の方の人たちは頭がキレる人が多いですね。日本の経営層以上にAIのこと学んでいて、誰でもAIモデルが使える時代がくるからこそのプラットフォーム、という思想に対して共感をいただけることに驚きました。

    中堅層は日本と似ていると思います。事例が必要だったり、しっかりとエデュケートしないと進まないと思います。

    伊野:
    我々の場合、日系企業のマーケットの方が多いです。日本法人やシンガポール法人からの紹介、親会社が使っているから子会社でも使う、といった紹介ベースのサイクルがうまく回っています。

    日系マーケットの方は安定というか、導入はスムーズです。ただ、やはりローカルマーケットの方が市場規模が大きいので、いかにどう攻めていくかが課題であり期待であります。

    タイの企業、とくに財閥系の企業を押さえると、どこの企業が使っている、という実績があるだけで反応が全然違います。一方で、財閥系企業のライトパーソン、ライト部門に入っていくのがすごい難しいので、今回ジェトロさんが繋いでくださったのはすごく感謝しています。

    柚村:
    モビリティのマーケットの可能性は大きいと感じています。調べていくとプレイヤーは沢山いるのはわかりますが、誰がNo1なのかよく分からない手探りな状態です。私は東京をベースにして調査してますが、スマートにかっこよく市場開拓しようと思っても、あまりワークしないのです。

    タイに乗り込んできて1週間いるだけで様々な方に出会えましたし「冷たい対応されるだろうな」と思ってた方が実際に話をするととても興味をもって話を聞いてくれたりもしました。タイの現地にいるからこそ、できることが沢山あるのです。

     

    >>>後編へつづく

  • 【対談】クルマの進化でマーケティングはどう変わる? -後編

    【対談】クルマの進化でマーケティングはどう変わる? -後編

    未来のマーケティングはどうなるのか

    北川:「今後、それこそ何十年後とかの話になりますが、車が自動運転になって、車自身が故障や点検を予測できて、修理にいくらかかるかわかるような世界になった時、どのようなマーケティングが考えられると思いますか?」

    中澤:「私個人としては、MaaSが想定よりも早く普及していくのではないかと予測しています。何十年も先の話ではなくて、自動運転とほぼセットでMaaSの世界が展開されるだろうと。

    ヘルシンキは、MaaS Globalの Whimが普及したことで都市自体も変わり、乗用車の数が3割~4割減っていると言います。この事実からわかることは、車を所有しない時代がそのうちくるかもしれないということです。

    車を持たない世界には、車を持たなくなっていく段階と、車の数が半分ぐらいになってしまう世界の二段階がありますが、それがいつ・どのタイミングになるかは私どももまだわかりません。ただ、少なくとも、急速に持たなくなっていくという段階は何年間か続く。私たちはそこの部分にアタッチできないかと考えています。

    IDOMが現在、持っている資産は車の売買です。カーシェアをはじめ、いくつか事業を立ち上げていますが、MaaSが浸透すると急速に人の意識が変わっていきます。そこへ都市の交通機能が急速に整備を進めていくと、いわゆる地殻変動が起きる。そうすれば人々は、車をこのまま保有するべきか、それとも手放すべきかを今まで以上に真剣に考えるようになるはずです。ですので、その意思決定にしっかりと絡んでいけるようなマーケティングをしていきたいとは思っています。」

    北川:「自動運転になって車の数が減ったとしても、IDOMさんで買った車は、IDOMのアドネットワークから、ユーザーの行動にもとづいてさまざまなレコメンドを送ったり、サービスを提供できたり、そういうビジネスモデルになっていく可能性もありえますか?自動運転になっても、車の形態が電気自動車になろうとも、データは使えますよね。」

    中澤:「ユーザーが、MaaSへと意思を切り替えていくタイミングで、最初に判断するのは車を手放すかどうかだと思うんですね。つまり、査定のタイミング。その接点を日本最大級で抑えているのは、非常に大きいと感じています。

    査定を起点に、ユーザーは車のことを真剣に考えはじめます。普段は走行中のガソリンのことぐらいしか考えないじゃないですか。でもある日、今後、保険をどうするか、車を手放すべきか、真剣に車のことを考える瞬間がやってくる。そのタイミングが査定です。

    広告をどんなに打っても普段は景色の一部程度にしか思われません。しかし、意識が顕在化した瞬間、風景だったものが意味のある形で浮かび上がるのです。ですので、査定という瞬間が、車にまつわる様々なサービスのマーケティングポイントになります。つまり、モーメントなんですよね。その起点をIDOMが押さえているというのは非常に大きなことで、さまざまなサービスを提供するための、マーケティングの入口になれるのではないかなと考えています。

    ただ、そのときに査定額だけお伝えするのは、マーケティング的なレコメンデーションとしては弱いので、そこに走行データや今後、予測される生涯コストを加味できると、マーケティングのアプローチが大きく変わってきます。そういった意味でも、センサーに着目しているのです。」

    SmartDriveとのコラボレーションと可能性

    北川:「スマートドライブと『こんな世界が実現できるかもしれない』というようなコラボレーションの案をお話しできればと思います。」

    中澤:「一番、期待を寄せているのは車両ごとの情報の解析です。また、センサーのコストが下がることにも期待しています。

    IDOMが単体でスマートドライブのデータを使ったビジネスを考えるのは難しいかもしれませんが、たとえば『SmartDrive Fleet』がすべての新古車に、コモディティに近い状態で普及していけば、私たちは査定というモーメントに立ちあうことができるのではないかと。『SmartDrive Fleet』で蓄積されたデータをマーケティングに活用できれば大きく進化できるのではと前向きに思っています。」

    北川:「走行データではありませんが、アメリカでは車の整備履歴情報を国がしっかり整備して、インフラとして様々な事業者が活用できるようになっています。集めたデータをビジネスで活用できるようなオープンプラットフォームを構築して提供するとか、そこにブロックチェーンの考え方を組み込むとか…とにかく色んな方法があると思います。私たちスマートドライブも、本当のインフラにならなければ今提供しているサービスの意味がないと思いながら取り組んでいます。」

    中澤:「単体企業だけではなかなか思うように動くことができませんし、国というよりは、団体がそれらのデータを整備するような風潮ができないと難しいでしょう。」

    北川:「ただ、メーカーが各自に動いてしまうと縦割りという別の問題が起きることも考えられます。」

    中澤:「そうなんですよね。標準化されていないまま、センサーで取得したデータを集約するプラットフォームをA社も、Bも自社で独自に作ってしまうと…。結局、一部でしか使えないので問題の解決にはなりません。」

    北川:「第三者からすると、逆に使いづらくなってしまいますね。」

    中澤:「それらを考慮すると、共通の基盤を作る企業が第三者的な立ち位置で入るべきなんです。Webデータのタグってあるじゃないですか。そのタグマネージャーのような感覚で第3者の企業が入ってくると、マーケット自体の可能性が凄く広がっていくのではないでしょうか。」

    北川:「このままでもおそらくコネクテッドな世界は進んでいくとは思いますが、縦割りの結果、活用しづらいデータになってしまうと意味がなくなってしまいます。ですので、スマートドライブにいろんなデータが集まって、使いやすくて加工もできるプラットフォームになり、IDOM社に活用のご相談ができるようになる日が来るといいのですが。」

    中澤:「そうなれば最高ですね。その集めたデータをもとに、高付加価値サービスを一緒に作ることができればもっと良い。

    IDOMはマーケティングに強みを持っていますし、スマートドライブは技術力に強みを持っている。お互いに持っている強みを引き立てながらコラボレーションができれば、より良いサービスが生み出せると思います。さらに数社のプレイヤーが加われば、よりビジネスとして成立しやすくなるかもしれませんね。」

    北川:「各社が持つ強みのバランス感が重要ですね。」

    IDOM×スマートドライブ×保険会社=・・

    中澤:「スマートドライブでは、一般ユーザー向けに高齢者みまもりサービスを展開していますよね?」

    北川:「これは、会話の中で出た、SmartDriveプラットフォームの事例で、スマートドライブの中で持っている技術やデータをベースに、社内で1週間で作ったサービスです。

    私たちは、IDOMさんや他社さんが似たようなサービスを作りたいと思われたときに、スマートドライブのAPIやプラットフォームを活用していただければ、簡単に実現できるという世界を目指しています。」

    中澤:「実はまさに、保険会社と一緒にこのような高齢者の運転支援サービスを作りたいと考えていたんです。

    高齢の親が事故を起こしてしまった時に、その息子や娘まで、その家族全員もフォローができるような。ただ、IDOMでは技術的にプロダクトを作ることが難しい。であれば、強みを活かしてサービスに流入させることに注力すべきかもしれません。私たちはユーザーが一番車のことを真剣に考える査定の場面に立ち会いますが、そのタイミングって保険の見直しや別の提案もしやすかったりするんです。」

    北川:「スマートドライブもバリュー・チェーンの全部をカバーしきれませんし、そこはぜひ、協力し合うことでお互いの強みをさらに活かすことができればと思います。」

    北川:「スマートドライブがはじめにやっていたのは、テレマティクス保険のデータ分析です。ですので、保険会社さんとのサービス展開においてIDOMさんと三社で新たな取り組みができるかもしれませんね。」

    中澤:「IDOMには保険代理店業務もございますので、一緒に新たなサービスを考えて販売するところで活躍できるかと思います。」

    北川:「車にデータが取得できるデバイスを装着することで、ドライバーの意識も変わりますし、管理者も運転状況が見えるようになるので、事故率も大幅に下がるんです。その分、保険会社が導入コストを負担して、気軽に使えるようになると、事故を減らしながら情報も集められるようになるかもしれません。」

    中澤:「車の損害保険は、一度加入されると切り替えさせるのが非常に困難なものです。

    そのため、30代や40代の若いユーザーではなく、彼らのお父さんやお母さん世代、つまり高齢の両親や祖父母の“もしも”を考えて、家族の負担もカバーできる保険を考えてみませんかという提案をしていこうと思っています。そのための条件が『SmartDrive Fleet』の装着です。北川さんがおっしゃるように、事故を未然に防ぎながらも運転データが取得できる。これはユーザーにとっても良い効果を提供できるはずです。」

    北川:「実際に提携をしているあいおいニッセイ同和損保では、法人のトラックで『SmartDrive Fleet』を装着した場合、保険料を8%の割引が適用されています。それが個人向け展開できれば、保険料がおトクになるうえ安全意識の向上にもつながりますよね。そこはぜひ、協力しながら実現していきたいと思っています。」

    これからの自動車業界は

    北川:「先述したMaaSもこれから広がっていくでしょうし、今、消費者の価値観が変わり、車業界全体でパラダイムシフトが起きています。そのあたりについてはどのようにお考えでしょうか? 」

    中澤:「車業界に携わっている方々は、今、非常に大きな危機感を抱いています。自動運転、MaaS、シェアリングサービスの台頭…。自動車メーカーはビジネスモデルがガラリと変わっていく姿をまざまざと感じています。それでも挑戦は続けていきたいですね。」

    北川:「変革期にある現代において新たなビジネスモデルを構築するためにも、スマートドライブのデータをうまく活用いただければと思っていますし、一緒に手を組みながら、世の中をよくする、消費者にとって意味のあるサービスを提供していきたいです。本日はありがとうございました!」

  • 【対談】クルマの進化でマーケティングはどう変わる? -前編

    【対談】クルマの進化でマーケティングはどう変わる? -前編

     

    対談相手
    株式会社IDOM デジタルマーケティングセクション セクションリーダー
    中澤 伸也(なかざわ・しんや)様 

    中澤さまとIDOMのご紹介 

    北川:「まずは、中澤さまとIDOMでの業務内容についてお教えいただけますか?」

    中澤:「私は現在、IDOM(旧名ガリバー)のデジタルマーケティング責任者を勤めています。ファーストキャリアは家電量販店のソフマップからスタートしました。店頭接客に始まり、店長を7年ほど経験。そして、2000年には売り上げ100億円を目指すという目標を掲げソフマップのECサイト立ち上げを担当しました。ここを起点にWebの世界へ入ります。その後、ゴルフ情報ポータルのGDO(ゴルフダイジェストオンライン)でおよそ8年間、マーケティングの責任者を勤め、次に、中古車買取と販売の最大手「ガリバー」の運営をしているIDOMへ。店頭のリアルな接客がベースにありつつも、デジタルマーケティングが自分の主眼になっているため、O2Oマーケティングが私のもっとも得意な領域です。

    ミッションは、IDOMのマーケティング全体を変革すること。IDOMは完全なるO2O型の会社ですので、最終的には店頭での商談が受注ポイントです。そのため、デジタルとどう組み合わせて商談へとつなげる部分を集客していくかを考えています。現在は全国に550店舗を構えていますが、集客の構成比はデジタルからの流入が50%と、実は半分を占めています。私自身は、IDOM全体のマーケティングの最適化と変革を担うとともに、デジタルを使った新しいプロダクトやマーケティングサービスなど、新規事業開発を推進していく立場です。」

    IDOMのデータを活用したマーケティング

    北川:「中澤さまが普段からマーケティングに活用されているデータや、今後マーケティングに活用したい車のデータはございますか?」

    中澤:「現在はデータベースやデータマーケティングを強化している最中で、BigQueryを使ってユーザーのWeb上での行動や、コミュニケーションを分析していますが、車関連の情報はまだ統合しきれていません。ですので、今はまだ、データベースをうまく活用できているとは言い難いのです。

    高精度なWebのマーケティングデータを保有していますが、それらは主に査定するまで、購買するまでといった、“お客さんになる一歩手前”までのデータです。買取・購入後のユーザーのカーライフにおけるデータは未取得となるため、今後取得を強化していく必要があると考えています。

    事業を進化させていくために、車両や個人の情報からカーライフにまつわるデータをいかに蓄積していくかが大きな課題になっているのです。」

    北川:「たとえば、クッキーデータやアンケートなどの機能を使ってデータを集めていくイメージでしょうか?」

    中澤:「そうですね、クッキーやWeb上の行動に加え、最近ではチャットマーケティングに注力していますので、チャット上のテキストログ、つまりユーザーとのコミュニケーションデータを蓄積しています。」

    北川:「なるほど。それらのデータは先ほどお話されていた車を買うまでのデータですので、購入後のデータを今後集めていきたいということですね。」

    中澤「2回目や3回目の購入、車以外の商品やサービスを提供するなど、再来店につなげる接点を作るところはこれからになります。もちろん今までいくつもの施策を打ってきましたが、アクイジション中心のビジネスモデルで車の購入と買取がメインでした。しかし、その後のビジネスをどのように展開していくかが目の前にある経営課題です。」

    クルマの進化によってマーケティングはどう変わるのか

    北川:「スマートドライブが提供しているSmartDrive Carsでは、安全運転をしている方にはAmazonポイントなどに交換できるポイントを提供したり、走行データから近くのお店のお得な情報を提供したりするなど、データによってサービスの拡充を考えています。情報を取得するには、もちろんプライバシーの管理は徹底しますが、うまく情報を活用することでお客様にとっても意味のあるマーケティングができるのではないかと常に考えています。

    IDOM社の中で、こういう情報があったらマーケティングに使えるというデータはございますか?」

    中澤:「現業ではありませんが、いくつか構想しているビジネスはあります。先ほどもお伝えしましたが、私たちが今後やっていきたいのは、販売後のお客様のカーライフを充実させること。

    たとえばそこで、故障状況やタイヤの空気圧などの情報が取得できれば、販売後も包括的にお客様をサポートすることができます。少し異なるかもしれませんが、お客様の車のガードマンといったイメージでしょうか。販売後のユーザーのカーライフをガッチリと守る、みたいな。その部分をサービスとして構築していきたいと思っていますが、それが技術的なハードルが非常に高い。お客様の走行状態、故障状況、もしくは故障の予測をODB2で取得し、車種ごとに解析しなくてはならないからです。

    車種ごと、車両ごとに解析・判断する高度な技術が必要になりますので、残念ながら、まだ構想レベルなんです。」

    北川:「スマートドライブが所有しているデータと組み合わせることができれば、構想を一歩先へと前進させることができるかもしれません。データ活用のタイムラインは、短期・中長期・長期の3つで考えられるかと思います。

    短期は、走行距離によっておおよその買い換えタイミングが分かること。日常の運転の癖や傾向といったデータからはさまざまな予測ができます。たとえば、非常に優しい運転をしていて、子ども服や赤ちゃんグッズを販売しているお店によく行っている。なおかつ運転は週末だけ、という情報が分かるとしましょう。この3つの情報から、小さなお子様がいる、さらに今後、家族が増えるかもしれないということが予想できる。そうすれば『今より少し大きめのファミリーカーに買い換えませんか』『最近、こんなファミリーカーが入ってきました!大型で使い勝手がいいのでオススメですよ』というような提案ができるかもしれません。

    次に、中長期的な目線で考えてみましょう。スマートドライブでは、自動車メーカーから直接データを預かることを始めているので、AIを故障情報などと組み合わせて、近い将来には故障が起きそうな時期や残価の予測ができるようになるかもしれません。

    長期については、まだまだ先の話ではありますが、自動運転が普及したらどのようなマーケティングで車を売っていくべきかを深堀りするために、スマートドライブとの接点をディスカッションできればと思っています。」

    中澤:「たとえばえすが、弊社が販売した車両にセンサーを取り付けることでしょうか。センサーで取得した情報から追加で販売したい付帯商品を提案したり、買い替えのタイミングが分かったりできればといいなと思っていますが、中古車の場合、通常の買い替えサイクルが7年と言われており、次のお客さまとの接点が結構先になってしまうんですよ。そうすると、取り付けたセンサーの設置コストの元が取れませんし、本当に有効なのかが見えづらくなってしまう。

    そう考えると、いま私たちが提供しているサービス以外でセンサーに関するコストの収益ポイントを見つけなくてはなりません。最終的には、車に関連するサービスを提供したいですが、それを現実の事業として成立させるには、センサーから得られた情報を社外のプレイヤーに提供して、プロフィットのポイントを作っていく必要があると考えています。

    では、車に搭載したセンサーから集めたデータをもとに、お客様が費用を払ってまで提供できるものは何か。そこを考えなくてはなりませんが、もともと車の売買を中心に行ってきた企業ですし、アイデアを絞り出すのも至難の技だったりするんです。ですので、データはプロダクトやサービスとして別の事業会社に提供できればと思っています。車はデータを取得するための媒体であると考えて事業展開をしていく。そんなアプローチで他社さんとうまくレベニューシェアができるとおもしろいなと思います。」

    データはオープンプラットフォームで活用の幅が広がる

    北川:「データ活用もそうですが、ビジネスモデルとして成り立たせるのは思っているより簡単ではありませんしね。また、一社のみですべてのコストを負担するのは非常に負荷がかかることです。

    回収のサイクルが長いということは、そもそもLTVに合わないかもしれない。ですので、今までの考え方を打ち破り、データをいろんな会社が使えるようにして、みんなでコストを負担し合う方向へ持っていかなければ、データ活用は進まないだろうと思っています。逆にそこが突破できれば、多方から『これに使えるかも』というアイデアの掛け合いが起き、イノベーションの輪が広がっていくのではないでしょうか?」

    中澤:「そうですね。車両から得られるデータは、車関連事業のプレイヤーよりも、外にいるプレイヤーのほうが、むしろビジネスに活かしやすいはず。IDOMのような事業会社ですと、物理的な車検やモノの設定のほうが収益を生みやすいので、本業側ではデータの活用がしづらい部分も多いのです。」

    北川:「データ活用というテーマでみなさん色んなアイデアを出してくれるのですが、最終的にいつもコストの部分で話が止まってしまうんです。しかし、その先にある『そのデータをみんなが使えるようなビジネスモデルは何か』『誰からいくら捻出してもらうか』という議論もっとしていくべきなんですよね。そうじゃないと、変化は生まれません。」

    中澤:「データはオープンプラットフォームになっていくべきですし、ここ最近ではブロックチェーンの技術もあるので、主幹となる会社が公的な形にすることもできるでしょう。そうすると、データの取得ポイントとして、私たちのような販売業者が強みを発揮することができます。

    取得したデータを価値へと変えていくには母集団が必要になりますが、日本トップシェアと言えども、私たちが売っている中古車の数は日本全体で流通している数からすればたかが知れている。そうなると、やはり一社ではあまり意味のあるデータが見出せないのではないかと思っています。」

    北川:「オープンプラットフォームができれば、逆にIDOM社がデータを活用してアプローチをすることができるかもしれませんね。そうした流れができれば、本当の意味でのデータ活用の第一フェーズが進むのではないでしょうか?」

    中澤:「現状ではまだ母数が少ないので、サンプルデータとして製品開発や大きな意味でのサービス開発には使えるとは思います。ただ、直接的にプロフィット化するようなインパクトはまだ持ち得ていないのです。要するに、IDOMを含め、他社からも相当数の車両データが必要です。」

    北川:「あとは、消費者がデータを渡してもいいと思えるようなメリットを事業者側が享受できれば、爆発的に普及するはずです。」

    中澤:「僕が考えているのは二つの面。一つは、データ自体のプロフィット化。オープンプラットフォームとして媒体の一社になることです。もう一つの側面は、消費者がお金を払ってでも受けたいと思うような高付加価値型のサービスを提供することです。」

    北川:「それが成り立てば、データ活用でいろんなことができますよね。」

    中澤:「ただ、高付加価値型のサービスの最大のボトルネックが、車両ごとの解析がどこまでできるかということです。ここは早く解決の糸口を見つけたい。」

     

    後編につづく