投稿者: sasaki

  • 【激震!新型コロナウイルス】自動車業界はどう対応しているのか?

    【激震!新型コロナウイルス】自動車業界はどう対応しているのか?

    1月末日から現在に至るまで、全世界に大きな影響を与えている新型コロナウイルス。単なる健康被害だけではなく、経済にも大打撃を与えています。中国に工場を持つ自動車メーカーは多いようですが、どのような対応をしているのでしょうか。

    2月下旬現在、国内自動車メーカーへの影響は?現在の対策は?

     

    JETRO(ジェトロ・日本貿易振興機構)によると、武漢と周辺におよそ160の企業が進出しており、その半数が自動車メーカーだと言います。中国の新車販売は、1月には194万1,000台と前年同月比18.0%減と大幅な減少、乗用車市場信息聯席会(CPCA)の発表によると、2月1~16日の乗用車販売台数は1日当たり2,249台、前年同期の販売台数2万9,090台と比較すると、10分の1以下に落ち込んでいます。湖北省に完成車生産拠点を持つホンダと日産は、中国が主力市場の一つであるため、生産停止期間が1カ月半ほどにわたると今後の業績に大きなマイナスのインパクトを与えることも考えられます。このような厳しい環境下で、各社はどのような状況となっているのでしょうか。

    トヨタ

    2020年2月24日、成都にある全完成車工場での生産を再開したトヨタ。しかし、人員確保ができないことなどを理由に、生産体制は多くの工場で停止前の半分に止まっています。

    日産

    2019年の販売台数が154万6千台を越え、世界販売の約3割を占める中国市場。生産遅延や販売に影響が出ると予想されています。先日は新型車「日産ルークス」の発表会をYouTubeを利用したインターネット中継中心へと切り替えました。また、中国から部品が調達しにくくなったことで、日産自動車九州の完成車生産ラインを一時停止。

    ホンダ

    2月14日、全面改良した主力の小型車「フィット」の販売をスタートさせたホンダですが、中国製の電子部品の調達が遅れ、一部で納期の遅延が出ています。湖北省の工場稼働再開は3月11日以降になると発表。

    マツダ

    CX-8などを生産する南京の合弁工場が2月17日に稼働再開。南京工場で生産するモデル向けのエンジンを生産する工場も2月20日から稼働を再開しています。しかし、CX-4などをライセンス生産している第一汽車グループの工場は、生産ライン改修のために現在も停止状態。

    今後の影響を考慮し、協議会が立ち上がる!

    国内の大手自動車メーカーは少しずつ稼働を再開させているものの、終期が未だ読めないことから、甚大な影響を受けることが予想されます。そこで、自動車サプライチェーンへの今後の影響拡大の可能性に備え、対応に万全を期す観点から、自動車メーカー、部品メーカー、政府が連携し、業界大の迅速な情報共有や必要となる対応策を検討する場が設けられました。それが、「新型コロナウイルス対策検討自動車協議会」です。
    同協議会は、一般社団法人日本自動車工業会、一般社団法人日本自動車部品工業会、経済産業省が共同で次のような取り組みを行うというもの。状況などにより、追加されます。

    1. 情報共有と状況把握
    業界大の共通課題(防疫対策、サプライチェーンや物流等)と対応策の共有、政府の施策情報の共有など
    2. 対応策の検討
    影響が長期化した場合の各種対策の検討(資金繰り対策、各種政策支援)

    いっぽう、中国では…

    自動運転技術を活用?

    中国インターネット検索の最大手であるバイドゥは、2月10日、新型コロナウイルス対策への支援を行う企業に、同社の自動運転開発プロジェクト・アポロの小型低速車用の自動運転開発キットとクラウドサービスを無償解放すると発表しました。新型肺炎対策への自動運転技術の応用を加速する考えです。

    ウイルスに負けない車の開発がスタート。

    浙江吉利控股集団は、2月4日、傘下の吉利汽車(GEELY)が、ウイルスに強い車の開発に着手したと発表しました。同社は3億7000万元の資金を投資し、ウイルス防止機能を備える「健康でインテリジェントな車両」の開発に着手すると言います。
    ウイルスからの保護機能を備えた車は、空気中の有害物質を隔離する能力を持つだけでなく、車内の空気を迅速かつ効果的に清浄する機能を追求とのこと。欧州、米国、中国それぞれの拠点が共同で、空調システム内や頻繁に触れる室内などで使用できる抗菌および抗ウイルス特性を備えた新素材の研究開発に取り組みます。

    「生物兵器防衛モード」ってナニ?進化する車内空気浄化機能に期待が高まる

    2017年、米国のEVメーカー テスラが花粉、バクテリア、汚染物が車内に潜入する前に外気から取り除き、これらの微粒子を完全に消去できる空気清浄システム「HEPA(ヘパ)フィルトレーションシステム」を開発し、話題になりました。この空気清浄システムには、「生物兵器防衛モード」があり、大きなバブル内に『モデルX』を置いたテストでは、2分も経過しないうちに、HEPAフィルトレーションシステムが車内の空気を洗浄、汚染レベルを極度に危険な1000マイクロg/m3 (PM2.5の汚染で話題となった北京の年間平均値が56μg/m3)から探知されないほど低いレベル(ノイズ フロア以下)に下げることができたのです。この結果から、インフルエンザをはじめとするウイルス防止への効果も期待が寄せられています。

    生物兵器防衛モードは、自動車業界として初の医療用ヘパエアフィルトレーションシステムが、すべてのアレルギー物質やバクテリア、他の汚染物質を車内の空気から取り除き、手術室と同じくらいクリーンな空気で車内を満たしてくれるという事実から、今回のコロナへの対策の一つとして空気の清浄機能の強化が注目されています。車の新たな付加価値として、今後テスラのように高度な車内浄化機能の開発に着手していく自動車メーカーが増えるかもしれません。

  • 車両管理システムは本当に効果があるのか — 導入後半年で変わった安全運転への意識

    車両管理システムは本当に効果があるのか — 導入後半年で変わった安全運転への意識

    インタビュイー:
    株式会社セガ エンタテイメント
    中日本営業部 愛知静岡エリアA メカニック
    棟渡 昭二様

    2019年末にSmartDriveFleetのユーザー企業に対して実施した安全運転運転キャンペーンを実施しました。本キャンペーンでは、安全運転スコアが高いドライバーをきちんと評価することを目的としています。
    株式会社セガ エンタテイメントにてメカニックとして活躍する棟渡様は、非常に高い安全運転をスコアとなっており、普段の業務を行う上で気をつけていることや、安全運転のコツなどをうかがってきました。

    導入前は自分の運転レベルを意識していなかった 

    私は新卒で株式会社セガ エンタテイメントに入社し、30年以上経ちます。現在はメカニックとして、愛知県と岐阜県のアミューズメント施設8店舗でゲーム機の保守・管理及び、店舗にいるメカニック担当への技術指導をしています。 

    当社はセガグループの一員として、全国200店舗以上あるアミューズメント施設の運営と管理を行う企業です。私は毎日9時半に事務所へ着き、メールや社内のイントラネット、各お店のゲーム機の稼働状況を確認し、その後、車両で店舗に向かっています。1日あたり、だいたい2〜3店舗を回りますが、担当エリア以外の店舗も支援の依頼があれば向かいます。大型マシンの交換や搬入・搬出作業には人手が必要ですので。私がいつも運転している車はハイエースです。

    導入前は、ご自身の運転レベルをどのくらいだと思っていましたか。 

    運転がスコアとして評価されるツールは初めて利用しました。導入するまでは、自分の運転レベルがどれくらいかなど、考えもしませんでしたね。私自身は車が好きで、趣味はドライブ。18歳で免許を取得、事故を起こしたのは初めて車を購入した時に一度だけです。プライベートでは、普段乗る用の車と、サーキットで走る用の車を3台、計4台を所有しています。

    棟渡様が実際にサーキットで運転している写真 

    車両管理システムの導入で変わった意識

    SmartDrive Fleetの導入で、どのように意識が変わりましたか。 

    安全スコアは毎日確認しますが、走行履歴を見ると、いつもハンドリングの点数が低いのでその点が気になっています。

    ハンドリングは、右と左、両方を含めた点数になりますので、他と比べて低い点数が表示されるのかもしれません。G-ForceマップはデバイスにかかったGの動きをそのまま表示しています。ハンドリングは、この点が横になめらかですと、ハンドリングが滑らかだということです。

    急なハンドリングはしていませんが、田舎道なので道路に凹凸が多いことが関係しているのかもしれません。

    それは一理あるかもしれませんね。ここに、2019年7月からの走行データをまとめたものを出力してきました。こちらを拝見すると、点数がぐんぐんと良くなり、運転が改善されていることがわかります。

    導入してから、毎日スコアを気にするようになり、自然と意識が変わりました。利用を開始した7月ごろは70点台後半でしたが、現在は80点台後半から90点以上。当時は安全運転を考慮せずに運転していたのですが、8月から本格導入したことで、安全運転を心がけるようになりました。スピードも出さなくなりましたし、前より車間も十分に取るようになったため、それが点数にも反映されているようです。

    現在はおもに愛知県で運転されることが多いとのことですが、地域特有の運転傾向などあれば教えてください。 

    いつも交通事故の多さでワーストワンに入るのが愛知県。外部から来た私が客観的に見て、右折車線をそのまま走ってしまうとか、ウィンカーを出さずに曲がるとか、急な割り込みするとか、そういった運転の癖があるように感じますね。また、スピードを出す方も多いようです。そうした傾向から、より一層、余裕を持った運転を心がけています。

    導入当初はネガティブなイメージだったけど…

    車両管理サービスの導入が決まった時、どんな印象をお持ちになりましたか。 

    正直に言いますと、導入の話を聞いてはじめは“監視される”というネガティブなイメージを持っていました。しかし導入しても、いつも通りに業務にあたっていると何も気にすることはありませんし、逆に以前より安全を優先するようになったので良かったのではないかと。

    また、手書きの日報が不要になりましたので、業務時間が大幅に短縮できたのもありがたくて。手書きだと、記入漏れや記入忘れがたまに発生しますし、毎日、面倒だなあと思っていたんです。それが自動になったので無駄な時間がなくなり、本来の業務に時間を割り当てられる。非常に助かっていますね。

    アプリに対して、ここを改善して欲しい、こんな機能が欲しいなど、何かご意見はありますか。 

    危険な運転が生じた瞬間に警告音が鳴ると助かりますね。「あ、この運転は危険だったんだ、ここで曲がる時は注意しよう」と、すぐに振り返りができますから。とくに、同じルートを走行することが多いので、危険運転をした箇所がわかるヒヤリハットマップがあると、事前に意識することができると思います。

    安全運転を啓蒙するために伝えたいことはございますか。 

    余裕を持って運転しましょう。SmartDriveFleetアプリの日報には、距離や時間が正確に反映されます。それを見ると、AからBに行くには大体このぐらい時間がかかると予測できますので、私はこの情報をもとにして余裕を持った移動スケジュールを作るようにしています。あとは、思いやりと譲り合いの心を持つことが大事。

    安全運転を徹底するには、その人の意識を変えるのが一番早いですが、そうすんなりとは変えられないものです。その際は、自分一人だけではなく、他者の命を奪うことにもなるんだよと、命の尊さを伝えるようにしています。

    秋の運転イベントにご参加された感想を教えてください。 

    本社の担当者から、導入している車両の運転手全員に中間と最終結果報告の順位がきました。同じメカニックで、点数が良いドライバーがいますが、上位に入れなかったことを悔しがっていました(笑)。ドライバーは皆、結果をしっかり受け止めつつ、反省もしていましたので、ここからまた、安全運転への意識が高まっていくのではないでしょうか。

    安全運転をするためには、まずは安全な運転を意識する。そして、日々運転を振り返り改善してくことがとても重要ですね。これからも、皆様の見本となる安全運転を宜しくお願いいたします!

    本日は、お忙しい中ありがとうございました。

     

    安全運転キャンペーン、1位入賞の表彰状をお渡しいたしました。
  • 密閉された車内は安全か、危険か。新型コロナウイルス対策として今、できること

    密閉された車内は安全か、危険か。新型コロナウイルス対策として今、できること

    2020年1月から全世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス。現時点では(2020年2月27日)同ウイルスに有効な抗ウイルス薬がなく、対処療法がおこなわれています。
    企業では、感染防止のために大型イベントの中止やテレワークの推進、時差通勤など、さまざまな対策が講じられています。国内のあちらこちらで感染者が確認され、感染経路が徐々にわからなくなりつつある現在、車を所有している企業はどのような車内対策が考えられるでしょうか。

    コロナウイルスはどのように感染するのか

    厚生労働省のサイトでは、次のように2つの感染方法が考えられると記されています。

    (1) 飛沫感染
    感染者のくしゃみ、咳、つばなどと一緒にウイルスが放出され、他者がそれを口や鼻から吸い込む場合。
    例:屋内などでお互いの距離が十分に取れない状況で一定時間一緒にいるときなど。

    (2) 接触感染
    感染者がくしゃみや咳を手で押さえたあと、その手で周りのものに触れるとウイルスが付着します。そうしたものを他者が触り、その手で口や鼻を触ることで粘膜から感染する場合。
    例:電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなど

    乗り物や屋内施設など、とくに密閉された空間は換気ができず、一気に広がる可能性が高いため、現段階では利用する際に注意が必要です。これは大型施設や公共交通機関だけでなく、一番身近にある車も同様です。
    「車は不特定多数が利用するものではないから、そこまで神経質にならなくても大丈夫」「むしろ、車の方が安全ではないか」と思われるでしょうが、一つの車両を何人かの従業員で活用するケースやヒトや荷物の移動に車両を活用する企業も少なくはありません。念には念を。少しでもリスクを軽減し、安全と健康を守るためにも、今できる最大限の対策を行いましょう。

    ウイルスは冬に強いってホント?

    新型コロナウイルスだけでなく、冬は風邪やインフルエンザにかかる人が一気に増える季節。これは乾燥が原因の一つにあります。風邪もインフルエンザも、ウイルス感染によるものですが、夏場と違って冬場は大気が乾燥し、さらに暖房の使用によってより乾燥が強くなります。空気中の水分が少ないと、咳やくしゃみによる飛沫が遠くまで飛んでしまい、ウイルスも一緒に拡散してしまうのです。

    一般的に寒冷・乾燥を好むとされているウイルスですが、1961年に発表されたG.J.ハーパーのウイルス生存実験によると、「温度は20度以上、湿度50~60%で空気中での感染力が下がる」とのこと。そのため、自宅でも車内でも、ある程度の温度と湿度を保つように心がけましょう。

    感染予防のためにできること・基本編

    厚生労働省をはじめ、各所で伝えられていますが、まずは石鹸やアルコール消毒液による手洗い・うがいを徹底しましょう。咳などの症状がある方は、飛沫感染を防ぐためにマスクは必須。また、咳やくしゃみをする際はティッシュやハンカチ、服の袖、肘の内側で鼻と口を押さえてください。

     

    出典:厚生労働省

    車内であっても、何名かで相乗りする際はマスクを着用するとより安全です。

    感染予防のためにできること・車内編

    ここからは車内でできるウイルス対策や予防に役立つグッズをお教えします。押さえるべきポイントは除菌と湿度を保つこと。

    ウイルス対策1「セルフでできる除菌と消毒」

    飛沫感染を防ぐにはマスクが有効ですが、接触感染のリスクを低減するには今のところ除菌が有効だと言えるでしょう。車の運転をする際にアルコール除菌シートで拭く、除菌スプレーを吹きかける、置けるタイプの除菌用品を利用するなどが考えられます。

    シートやスプレーで、ハンドル、シート、カーナビのボタン、ドアノブ、シフトノブ、各種操作ボタンなど、全体をくまなく拭き取りましょう。

     

    シートタイプ

    出典:amazon イータック

    まずは一つ持っておきたい、除菌シート。ポケットやカバンに入れておけば、いつでもどんなシーンでもすぐに使うことができるのでとても便利です。手や顔用、ボックスタイプは車内に一つ置いておくのも良いでしょう。

     

    スプレータイプ

    出典:amazon カーメイト

    除菌だけでなく、いや〜なにおいが発生した時にも使える消臭タイプだと、さまざまなシーンで活用できそう。昨今、安全性が高く、除菌・消臭・防腐効果が高い成分として注目されている安定化二酸化塩素タイプがおすすめ。

    ウイルス対策2「加湿」

    最近では後付けできる車専用の加湿器も提供されていますが、注意したいのがカビの発生とフロントガラスの曇りです。カビを発生させないためにも、結露した部分はすぐに拭き取ってください。

    出典:amazon Lomaya

    小型・軽量タイプであれば荷物にもならず、必要な時に使用できます。また、アロマタイプのものだと、気分転換やリフレッシュにも。

    ウイルス対策3「車のプロに任せるウイルス対策」

    各ディーラーでは、車専用のサービスが展開されています。車のプロならでは高精度なサービスを利用するのも一つの手です。

    空間やモノに付着したウイルスや菌を除去するというクレベリン。たった15分で99%除菌・99%ウイルス除去できる「車両用クレベリン施工サービス」がディーラーで展開されています。ウイルスが気になる人はもちろん、車内のリフレッシュやニオイの除去にも有効。短時間で99%除菌・ウイルスの作用を99%抑制。洗浄が困難なシートや車室内をすみずみまで除菌してくれます。お値段はディーラーによって異なりますので、確認のうえでご予約を。

    まとめ

    今回は車内でできる新型コロナウイルス対策をご紹介しましたが、これらによって確実に予防できるものではありません。情報は常に更新されていますので、正しい情報と知識を得て、万全な対策を講じてください。

     

    厚生労働省による最新情報(2020年2月27日)

  • 2022年には一部がNGに。ETCが使えなくなるって本当?

    2022年には一部がNGに。ETCが使えなくなるって本当?

    料金所の入り口付近になると自動的にゲートが上がり、出口ではスムーズなキャッシュレス決済が可能。今や高速道路を利用する方の約9割に普及したETCは、便利かつ渋滞緩和にも繋がるシステムですが、近い将来使えなくなる可能性があることをご存知でしょうか。

    今回は、一部のETC車載器が使えなくなる具体的な時期と理由を解説したうえで、使用可能か不可かを判別する方法や該当した場合の対策をご紹介します。

    なぜ、2022年にETCが使えなくなるのか

     

    国土交通省、およびITSサービス高度化機構と高速道路会社6社は2018年9月3日、一部のETC車載器が2022年12月1日以降、使用できなくなると発表しました。

    ETCは、5.8GHz帯の電波によって車載器と料金所の間で必要な情報を無線通信し、スムーズな高速道路への出入りとキャッシュレス決算を可能とするシステムですが、今回問題となっているのは通信時に発生する「スプリアス」の存在です。スプリアスとは、必要周波数帯以外の外側に発射される「不要電波」のことで、スプリアスが多いと電波障害の原因になるため、電波法で発射強度の許容値が規定されています。

    そして、現行の許容値は2年の経過措置期間を経て、2007年12月から全面適用されましたが、現場の混乱を提言するため旧規格で認証を受けた無線設備でも、2022年11月末まで延長して使用できる猶予期限が設けられました。つまり、猶予期限が切れる2022年12月1日をもって、「2007年以前の技術基準適合証明・工事設計認証(旧スプリアス認証)を受け製造されたETC車載器」は、法律上使用不可となるという訳です。

    旧スプリアス認証ETCはごくわずか!しかし…

    先ほど敢えて法律上と述べたのは、2022年以降であっても今のところETCが使用している電波帯はそのままで、車載器の通信機能が失われるわけでもないため、故障していない限りゲート開放や決済は継続して可能と考えるのが妥当だからです。

    また、日本の高速道路でETCが本格的に使われ始めたのは2001年11月からですが、国交省のHPで関連情報を確認したところ、ETC車載器に関する規格「ARIB STD-T55」に準拠している機種は、2022年12月以降も使用可能とのこと。そして、この規格が最後に改定されたのは2012年11月。つまり2001年から2002年に発売開始され、かつ旧規格で作られているごく初期のETC車載器だけが、2022年12月から法律上使用NG対象となるわけです。

    しかし、万が一旧規格機種と知らず2022年以降高速道路で使用、もしくは電波が発生する状態で車載した場合、免許が必要な無線機器の不法設置・運用とみなされ「電波法違反」となり、次のように厳罰に処される可能性があります。

     

    • 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(不法設置・運用のみ)
    • 5年以下の懲役又は250万円以下の罰金(公共性の高い無線局に妨害を与えた場合)

    ですので、物理的に使用できる・できないに関わらず、法順守のため自分のETCが規制対象かどうか、後述する判別のポイントを押さえできるだけ早く確認しましょう。

    2020年問題の後に発生する「2030年問題」

    2020年12月から使用NGとなるのは、サービスが開始草創期に販売・設置されたETCに限られますが、国交省など関連機関が取り組んでいるセキュリティー対策の影響で使用不可の機種が一気に増える「2030年問題」も看過できません。

    国交省は情報漏洩のリスク軽減や改ざんなどの不正防止を目的として、ETCに関わる料金所・車載器・ICカードについて「セキュリティー規格」を定めていますが、2017年10月に同省はシステムそのものの規格を変更すると発表しました。これは昨今のIT機器の能力向上による驚異の増大に備えた、セキュリティ機能の拡充が理由であり、国交省は現行セキュリティーに大きな障害が発生しなければ、最長で2030年ごろまでには変更するとしています。

     

    裏を返せばセキュリティーに何らかの脅威が発生した場合は、2030年より早い段階で規格が変更されるということであり、いずれにしても新しいセキュリティー規格に対応していない機種は、近い将来使用不可になる可能性があるということです。そのため、2022年以降も長くETCを安心かつ便利に使いたいのであれば、まず初めに電波法に抵触しないことを必ず確認したうえで、新セキュリティ対応モデルへの買い替えを検討すべきだと言えるでしょう。

    自分のETCは使える?使えない?判別のポイント

     

    自分の愛車に取り付けているETCが、2022年・2030年問題をスムーズにクリアできるのか。それが一番気になるところですが、いつ購入して取り付けたかなど、時間が経てば忘れてしまうものですし、すでに設置されていた中古車を購入した場合はより一層判別が困難です。

    この項では、自分のETCが2022年・2030年以降、使えるのか使えないのか判別するポイントと手順を、クルマに詳しくない方でも実行できるよう伝授いたします。

    判別ポイント・手順1「メーカーへの問い合わせ・各社HPでの確認」

    古いETCの場合、旧スプリアス認証なのか否かを車載機本体や車載器管理番号で判別することができないため、個別にメーカーへ問い合わせるか、各社のHPで確認する必要があります。

    パナソニックやデンソーといった国内の主要ETCメーカーは、以下で示す専用ページで旧スプリアス規格で製造された機種の型式を公開していますので、まずは以下のページで2022年問題をクリアできるか照合しましょう。

    パナソニック「スプリアス規格について」

    デンソー「旧スプリアス規格に基づき製造されたETC車載器に関するお知らせ」

     

    なお、古野電気と三菱電機のETC車載器は、すべて新スプリアス規格に対応しているため、2022年問題に関しては気にせず使用することができます。

    判別ポイント・手順2「車載器管理番号の確認」

    次に、2030年以降の新セキュリティー対応の判別法ですがこちらは案外簡単で、購入・取付時に商品に付随、もしくは販売店から受け取った「取り扱い説明書・保証書・セットアップ申込書・証明書」に記載されている、19桁の「車載器管理番号」をチェックればすぐにわかります。

     

    出典:一般財団法人・ITSサービス高度化機構

    画像内で赤い丸に囲まれた数字の1桁目が、

     「1」から始まっている・・・新セキュリティー規格対応モデル
    「0」から始まっている・・・旧セキュリティー規格モデル

    となりますので、素人でも一目で判別することができます。また、前述した書類を紛失している場合は、少々力技ですがETCをいったん車から外し本体裏面を見れば、

    出典:一般財団法人・ITSサービス高度化機構

    このように管理番号が記されたシールが張られているのでご確認ください。なお、一度剥がしたETCの両面テープは粘着力が弱くなるため、再設置する際は改めて両名テープで補強するなど、運転中に剥がれないようにご注意を。

    判別ポイント・手順3「本体の識別マークを確認」

    車載器識別番号からセキュリティー対応を確認したくても、説明書などの書類が存在しない時や経年によって本体裏面のシールが劣化し、数字がうまく読み取れないケースも多々あります。そんな時にでも、簡単に判別する方法をお教えします。

    ほとんどの方がご存知ないと思いますが、ETC本体にはセキュリティー対応を示す「識別マーク」が記されており、以下の場合は新セキュリティー対応機種と判別できます。

    • ETC・・・ETCロゴの下及びカード挿入口付近に「●●●」のマークがある。
    • ETC2,0・・・カード挿入口付近に「■」のマークがない。

    上記に当てはまらないETC・ETC2,0及び、「DSRC」という文字が記された機種は、すべて旧セキュリティー機種であるため、高速道路を頻繁に使用しETCによる割引などの恩恵を多く受けている方は、すぐにとは言いませんが買い替えを検討すべきでしょう。

    ETCが使えなくなる場合の対策について

     

    2022年問題や早まることも考えられる2030年問題によって、自分のETCが使えなくなった場合、どのように対策すべきでしょうか。この場合、どちらの影響で使用NGとなったか、または高速道路の利用状況に応じて対策すべきスピード感や方法が異なります。電波法違反で処罰される可能性がある機種の場合は、「早急な買い替え」を検討すべきですが、高速道路の利用頻度がそれほど多くないユーザーの場合は、車体から取り外し、利用しないという選択肢も一つとして考えられるでしょう。

    気を付けて欲しいのが、スプリアスが発生する状態だった場合、高速道路ではなく一般道を走行している時はもちろん、仮に駐車場で停車しているケースであっても、電波法違反で検挙される可能性があること。おそらく2022年12月の猶予期限終了直後は、警察による適用外ETCの取り締まりが強化されるとみられるため、使用停止する場合は電源を抜くだけではなく、完全に取り外して保管したほうが無難です。

    また、国交省によると旧スプリアス規格に則り製造された一部製品について、発射強度などを再測定し新スプリアス規格への適合を「再認証」、つまり継続使用を可能とする動きもあるため、情勢に応じた買い替え時期を決めることも重要になります。なぜなら、再認証されれば、大手を振って利用を再開できるからです。もちろん、すぐに買い替えず、一旦取り外し様子見をする手もアリです。

    加えて、適合する中古機種を購入し2022年問題を乗り切る方法もありますが、ヤフオクなどの個人オークションで安価に出品されている商品、及び中古車に搭載されているETCは旧スプリアス規格の機種である可能性もあるため、前述した手順で事前に判別しましょう。

    一方、2022年問題をクリアしている機種なら最長10年問題なく使用できるため、それほど焦って交換する必要はありませんが、現在販売されている車載機は「ETC2.0」が主流であり、ETC2.0限定の通行料金割引サービスも登場しています。そして、ETC2,0はETCより多くの個人情報をやり取りするため、頻繁に高速道路でETCを使っているユーザーは料金節約はもとより、個人情報保護にもつながる新セキュリティー対応のETC2,0へ思い切って買い替えることもご検討ください。

    まとめ

     

    2030年はともかく、2022年12月がやってくるのはあと数ヵ月のことです。万が一でも電波法違反を犯さないよう、自分のETCが迷惑なスプリアスを発射していないかについては、一刻も早く確認と対策を。いずれにしても、知らないうちに法律を犯すリスクがあることや、便利なETCがある日を境に使えなくなることは不安ですが、解説した判別法や対策を参考に、愛車のETCについてこの機会に確かめてみてはいかがでしょうか。

  • 物流を底支えする大阪デリバリーが、e-sportsの世界に挑む理由

    物流を底支えする大阪デリバリーが、e-sportsの世界に挑む理由

    インタビュイー:
    大阪デリバリー株式会社
    取締役副社長 木田晴孝さま

    倉庫の仕事は単調で、地味で、ツライ…。そうしたネガティブなイメージを覆し、本気でe-sportsの世界で戦うチームを創設した大阪デリバリー株式会社。「仕事もプライベートも、どちらが大事でもいい」という同社の副社長、木田晴孝さまから、ユニークな制度が誕生した背景、そして同社の成長の裏にある思いを伺いました。

    お客様の要望から事業を拡大

    まずはお木田様のご略歴をお聞かせ願えますか。

    私は2005年に大学を卒業して新卒で日本駐車場開発に入社。そして2016年の年末に同社を離れ、17年1月1日付けで大阪デリバリー株式会社に入社しました。前職では4年目からは地方拠点の支社長、6年目に東京中央地区の支社長を任されました。そして、9年目東京で営業部長を3年担当。その年に、日本自動車サービス開発という100%子会社の役員を兼任することになりました。

    次に、大阪デリバリー株式会社の事業をご紹介いただけますか。

    弊社の事業は物流サービスの提供、物流人材の提供、物流のスペースの提供と大きく3つございます。最近、物流の世界では様々な機器やシステムなどが次々と開発され、自動化・省人化が進んでいますが、未だにそれを扱うのはヒトです。弊社は物流の底辺部分、縁の下を支える重要な役割を担っています。人が作り出すサービスを、人が中心になって、人の手で届ける。システム化が進もうとも、とことん人を追及する企業です。

    物流人材の提供とは、いわゆる派遣のことです。派遣=登録型(日雇い)のイメージが強く、派遣業法はルールの変更が頻繁にございますが、私たちはコンプライアンスを重視して、スタッフを日雇いの登録ではなく雇用しています。

    雇用形態は「派遣」になりますか?

    弊社では雇用契約を締結したスタッフが中心です。雇用となれば雇用契約を遵守しなくてはなりませんし、契約内容に則った雇用にしなければ違反となってしまいます。他の派遣会社が登録型を中心にするのは、そうした条件を踏まえつつ、いつ発注がくるのかわからないからです。私たちは、単発ではなく、物流業界の現場に特化したレギュラー型の人材派遣をしています。

    弊社の特長は、その業務自体を任せいただくことを見据えて人材を派遣している点です。案件やお客様のニーズにもよりますが、まずは現場の課題を抽出し、人材が不足している部分を補い、その流れから業務をまるごと請け負う。つまり、派遣から入って、そのまま物流サービス(請負)移行する流れが多いところです。発注があったから穴埋めのために人をおくるという無機質な派遣ではなく、同じ目線に立って現場や環境を改善したいと思っています。

    この流れは、お客様の要望から始まりました。とある業者で、とにかく人手が足りず、半年ほどかけて徐々に人員を増やされたとのことですが、これ以上は難しいとギブアップ。そのとき、弊社のシェアは2-3割くらいでしたが、荷主さんのほうから、「現請負業者のスタッフを大阪デリバリーさんに転籍させて、当センター業務をすべて請け負ってもらえないでしょうか」とご相談いただいたのです。

    他のケースでも、作業の段取りが構築されていないまま新規で倉庫を借りた荷主様から依頼を受け、弊社の社員を4〜5人参加させて、業務工程から一緒に作り上げていったこともあります。ただし、この場合作業料にもとづいた委託費をいただくことが難しかったため、その間は派遣で支払っていただき、ある程度オペレーションのフローが出来上がってきたところで、業務委託へと契約形態を移行しました。派遣と業務委託は責任の所在が少し異なり、派遣の場合は発注主が業務における責任を取りますが、業務委託の場合は責任主体が私たちになります。ですので、どうせなら派遣のうちから私たちが責任を取るのだというスタンスで入っていこうと。

    人だけではなくスペースも求められるようになったため、一部で倉庫を借りるようにしたり、和歌山県に自社で倉庫を購入してスペースを提供できるようにしたり、徐々に業務範囲を広げています。

    大阪デリバリーならではの取り組みには、会社から社員への熱い思いがあった。

    大阪デリバリー社は、「SPREAD ORANGE」「eSports」などユニークな取組みをされていますよね。

    私たち中小の物流下請会社は、今、非常に厳しい状況に置かれています。毎年、求人倍率や求人費用が上がっていますが、とにかく人が足りない。それにモノがたくさん動けば物流会社は忙しくなりますが、ECが盛り上がる一方でスーパーなどの小売は縮小したりと、業種業態によっての物量増減が顕著であります。私たちは商品の出荷量で契約することが多いので、モノの数が減ってコストが上がると、結果的に利益が下がってしまうのです。

    このような環境下で、どう生き残っていくべきか。既存の業務の収益改善はもちろんですが、それだけでは限界がありますし、そもそも風向きがよくありません。ですのでやはり月並みですが、弊社としては会社として規模の拡大を追っていくしかありません。。そこで重要となるのが“人財”です。経営する人財、マネージメントする人財、派遣する人財、全てにおいて人の力が必要不可欠ですから。

    それがe-sportsとどうつながっていくのでしょう。

    少し表現難しいですが…私たちのような中小下請企業は、基本的に収益が低い。間に何社かが入るためそもそも利潤が薄く、薄利多売のビジネスになってしまうのです。そうなると、他社と比較して給与水準が低いとか、福利厚生が弱いとか、従業員にとって魅力的な環境が作りづらくなります。それなのに、業務は地味で、世の中を底支えする裏方の仕事です。待遇もいいとは言えないし仕事内容はきつい、労働環境もあまり整備されていない。立ち位置的にも声を上げづらいし、繁忙月は残業時間が膨れ上がることもありますし。ネガティブな印象ばかりが表面に出てしまうのです。

    そのため、求職者に対して会社の実務や福利厚生、待遇をウリにすることが難しいのですが、ちょっとした工夫や視点の転換によって、弊社に所属する理由を作りたいと思っています。会社の経営理念に「関わる人すべての基盤となる会社に」を掲げていますが、これは従業員に対しては、会社がみんなの居場所になってくれたらいいな、という思いからくるものです。

    思い通りのキャリアパスを描けなかった人、自分の意見をなかなか前に出せなくて組織に馴染めなかった人など、弊社には様々な背景を持った人がいます。仕事内容には幅がありますので、たとえ不器用な人でも輝くことができますし、私たちとしては、どんな方でも弊社には居場所があることを伝えたい。誰にでも対等に働く環境を提供できるのが弊社の強みですので、どんな人に対しても居場所を提供したいですし、今まで気づけなかった能力や魅力を存分に発揮いただければいいなといつも心から思っています。

    このような方針から、私はなるべく従業員の仕事以外の一面、仕事で見せない側面を普段からキャッチできるように、積極的に話しかけるようにしています。そうしたコミュニケーションをとっていると、弊社にはバーチャルな世界ではコミュニケーションを活発に取っている人、エッジの聞いたゲーマーがたくさんいるとわかってきて。ざっくりとゲームに関するアンケートをとったところ、なんと200人中70人がゲームを好きだというじゃないですか。人と関わることが少し苦手、しかしゲームという舞台でなら活躍できる。ならば、むしろみんなのもう一つの居場所を会社に持ち込めばいいんじゃないか。ゲームがメインで、お仕事はサブでもいいじゃないかと。

    もちろん、仕事をメインにする人にも活躍いただきたいので、そういう方にも活躍いただける環境を提供しています。それぞれにあった環境を会社として用意することで、会社も従業員たちもお互い利害一致するようならば、ゲームを導入しよう。そうして導入したのがe-Sportsでした。

    会社が選ばれる理由、会社にいる理由を一つでも多く作るために、たまたま目についたのがe-Sportsだっただけなんです。とはいえ、会社のお金を多少使って立ち上げるには、興味がない人たちに説明ができないと、不平等が生まれてしまいますので、「やるからには徹底的にやろう」と、プロとして勝負の世界に打って出ることにしました。去年の夏に発足し、半年間は練習に費やしましたが、今年からは大会に出て勝ちを求めに行こうと動いています。そうやって、彼らの存在価値を見出していきたい。

    私としてはこの活動自体が一つのコンテンツになりますので、話のとっかかりやセールスポイントとしてPRさせていただいております。

    本業よりも売上の多い部門になってしまうかもしれませんね。

    賞金が3億円という大規模な大会もありますが、そこで優勝できる人というのは、朝から晩まで1日中ゲームをしているような方だそうです。となると、練習量が多い方が勝てる確率が高くなる。しかし、私個人は世の中のスポーツって全てがそうじゃないと思うんです。限られた時間の中で、わが社なりに成果を求めていきたいですね。

    一社単独ではなく、一丸となって物流業界を推進する

    今後の事業展開はどのようにお考えですか。

    どこまでいっても、私たちは物流作業の会社ですし、大きな業態転換をするつもりありません。引き続き、今の業務を一歩ずつ前に進めて行きたいですが、淡々とこなすだけではなく、私たちはこのようなサービスを提供している、こんなユニークな取組もしているということを、もっと多くの企業や求職者に伝わるように、手を変え、品を変えアプローチしていきたいですね。

    これから弊社のウェブサイトを改修しますので、そうしたイメージが想起しやすくなるかと思いますし、e-sportsに続く第二弾を仕込み始めているところです。さまざまな価値観の人を抱え、「大阪デリバリーは人手不足が叫ばれている物流業界でも安定した人材供給が可能です」と荷主や同業者にアピールし、人が集まりやすい会社として認知されたい。当面は変化球を考えず、今、取り組んでいることを着実に前へと進めていきたいと考えています。

    e-sportsはかなり変化球のように思えますが…。

    色をつけたい訳ではないんです。単純に従業員が喜んでくれるし、採用活動でもウケがいいから、こういう活動があってもいいだろうって。多少の資金投資はありますが、その分、人が来てくれたり定着率が上がったりすることで、求人費用を上回る効果は出せますから。

    配送・運送・ロジスティクスなど、物流関連の業界に対して伝えたいことはございますか。

    一社単独で利益を独占する時代は終わりへと向かっています。派遣も物流もそうですが、課題は数え切れないほど多くある。それをみんなで助け合うことで解決へと導いていきたいですね。最近「サステナブル」や「SDGs」という言葉が頻出しているじゃないですか。正直言いますと、私たちのような規模の会社は、SDGsを意識する余裕がありません。余裕が無ければ無いほど、一社単独の利益にしがみつきがちになりますが、この概念が私たちのようなアナログな中小企業にもっと広がれば、何かが変わると思うんですよ。

    今だと、テクノロジーの力でいろんなものをスムーズにつなげることができるでしょう。スタートアップやテック系の会社さんたちが、テクノロジーをもたない中小企業をつなぎあわせて、みんなで一丸となって前に進む。それが私の内なる思いです。

     

  • 新人さんもベテランさんも。車両管理者が読みたいWebサイト10選

    新人さんもベテランさんも。車両管理者が読みたいWebサイト10選

    車両管理をITによりシステム化すれば、業務の大幅な簡略化・効率化が可能ですが、経営者や担当者に一定の知識やノウハウがなければ、スムーズに運用できず、どんなに優れたシステムであっても「宝の持ち腐れ」になりかねません。そこで今回は、車両管理業務を行う上で役立つ情報を入手できる、おススメのWebサイトを厳選してご紹介します。

    「ITでオフィスを元気にする」がモットー!「役立つ!総務マガジン」

     

    出典:大塚商店

    運営会社:(株)大塚商会
    公式HP:https://www.otsuka-shokai.co.jp/media/soumu/

    【Webサイトの特徴・ポイント】

    1961年にOA機器の専門業者として創業した大塚商会。このサイトは、同社が企業インフラに欠かせないITシステムの適切な運用を支援すべく、総務・人事・経理担当者にとって役立つ情報を提供しているサイトです。

    勤怠・福利厚生関連の各種書式テンプレートや、健康促進・節電といった従業員啓発に役立つ掲示用ポスターの無料ダウンロード集、法改正の現状を知る社会労務士によるコラムや事務にまつわる資格の紹介まで、多岐にわたりコンテンツが充実しています。車両管理に関しては全3回にわたって記事化されており、車両管理はなぜ必要なのかという基礎知識から企業としての法的責任、事故発生時のリスクマネジメントが詳しく解説されているほか、運転者・車両台帳、運行日誌、交通事故対応マニュアル(運転者・担当者)などのテンプレート・サンプルを、編集可能なデータとして入手することもできます。(この場合、同サイトへの登録・IDでのログインが必要です)

    総務が変われば会社が変わる!「月刊総務オンライン」

     

    運営会社:(株)月刊総務

    運営会社:(株)月刊総務

    公式HP:https://www.g-soumu.com/index.php

    【Webサイトの特徴・ポイント】

    縁の下の力持ち「バックオフィス業務」を支えるべく発行されている、日本で唯一の総務・人事専門誌「月刊総務」のオンライン版。企業に関わる最新時事ニュースのほか、各分野の専門家による多彩なコラムが掲載されています。車両管理についても運行管理者・物流安全管理士の資格を有し、飲酒運転防止・改善基準など運転業務従事者の労務管理アドバイスに定評がある、特定社労士の松本千賀子氏が徹底解説。

    数ある会社資産の中でも、常に移動する車両の管理は「最難関」であると位置づけ、車両管理で行うべきことやチェックポイント、安全運転管理者の役割や管理台帳・運転日報で網羅する項目などのほか、飲酒運転・事故・違反の予防法、危険予知トレーニングの進め方、エコドライブの進め方、ドライバーの時間管理まで、車両管理の効率的な推進に役立つ知識を漏らさず学習できます。

    企業が抱える課題解決を支援!「ビジネス・ソリューション仕組み構築」

     

    出典:ビジネス・ソリューション(株)

    運営会社:ビジネス・ソリューション(株)

    公式HP:http://www.business-sol.jp/

    【Webサイトの特徴・ポイント】

    企業運営に欠かせない「マーケティング・業務改善・リスクマネジメント」のシステム化提案し、東海・関東圏に多くのクライアントを抱えるコンサル企業、ビジネス・ソリューションが運営する同サイト。企業運営の標準化を図れるツールやマニュアル、社員研修・勉強会テキストの販売を手掛ける中、業務改善についてのコンテンツも充実していますが、大企業向けというより個人事業主や、中小企業の総務担当者に役立つ情報が多いのが特徴です。車両管理については「安全運転管理・車両管理規定の整備 」が不可欠としたうえで、

    • 事故が及ぼす責任と損失
    • マイカー通勤・業務利用管理の徹底
    • 事故対応・加害事故を起こした社員の措置・無事故者への表彰制度
    • マイカー通勤手当見直しによる社会保険料の削減

    といった具合に社用車管理にも活かせますが、どちらかというと「マイカー利用時」のリスクマネジメントに特化した記事構成です。

    日本一おせっかいなWebマガジン?「おかんの給湯室」

     

    出典:OKAN

    運営会社:(株)OKAN

    公式HP:https://okan-media.jp/

    【Webサイトの特徴・ポイント】

    ぷち社食サービスである「オフィスおかん」、組織が抱える課題を可視化できるツール「ハイジ」、お惣菜の定期仕送りサービス「おかん」などを手掛ける(株)OKANが、働くヒトのライフスタイルを豊かにすること目的に運営しているオウンドメディアです。

    業務改善に役立つツールの紹介や総務に関わる法改正、人事・経理の実務的コツや考え方まで、それこそ「おせっかい」と言えるほど多岐にわたるコンテンツが並び、車両管理に関しては「4つのギモンに答える」と題して記事化。

    難解な言葉使いや専門用語の多用を控え、社用車とは何か、社用車管理担当者の仕事、社用車管理を行う上でのコツ、社用車管理に関する豆知識と、至って基本的な記事構成となっているため、総務部署に配属されたばかりの担当者へ入門的なサイトとして勧めたり、社員教育に活用したりできるでしょう。

    これを見ればあなたの車事情通!「くるまが」

     

    出典:キムラユニティー

    運営会社:キムラユニティー(株)

    公式HP:https://www.carmanagementservice.com/mail/

    【Webサイトの特徴・ポイント】

    創業はなんと1881年!!製箱業を起源とするキムラユニティー(株)は、1950年代いち早くモータリゼーション時代の到来を予測し自動車産業へ参入すると、物流センター運営・格納器具製造、カーリース・レンタカー、カーメンテナンス、自動車保険代理業など自動車関連ビジネスを手広く展開するほか、車両管理システムを始めとするカーマネジメントサービス(CMS)を提供しています。

    同社が運営するこちらではエコ・安全ドライブの必要性・コツや、クルマに関する法律・最新トピックなどが網羅されており、CMSの運用実績やリサーチにもとづく「車両管理のポイント」が多用な角度から記載されています。車両管理の必要性や運行日誌の効率的な作成方法など、基本的なポイントはしっかり押さえつつ、他のWebサイトではあまり見かけない切り口のコンテンツが特徴です。とくに注目したいのが「若者の車離れと事故」と題された記事。

    経済的負担の増加や趣味の多様化、シェアリングサービスの普及など様々な理由から近年若い世代の車離れが進んでいますが、それに伴い運転経験が浅い若手社員、特に新入社員の事故発生率が年々上昇していることを指摘。その後、若手ドライバーの事故原因を法令違反別に分析したうえで、企業に多大なダメージを与えかねない、若手社員の事故を未然に防ぐポイントが解説されていました。

    車両管理を進めるにあたり、用途や稼働時間などをデータ化・見える化して把握することも大切ですが、同記事では、使用者の年齢や運転経験を考慮した教育・指導体制の整備も必要だと問題提起しています。また、1人の従業員が複数所持するケースも増えてきた各種カード管理のポイントや、ETCコーポレートカードと法人カードの徹底比較など、視点を変えたコンテンツも掲載されているため、新たな発想で車両管理業務を進化させるうえで非常に役立つはず。

    明日のベストサービスをピックアップ!「アスピック」

     

    出典:NPO法人ASPIC

    運営会社:NPO法人ASPIC

    公式HP:https://www.aspicjapan.org/asu/

    法人ビジネス支援を目的に1999年創立されたNPO法人、「ASP・SaaS・IoTクラウドコンソーシアム(略称ASPIC)」が運営する、法人向けクラウドサービス紹介サイトです。

    総務だけに留まらず、マーケティング・セキュリティ・コミュニケーションなど、あらゆる分野で業務効率化を図れる優秀なITサービスを見つけることが可能で、車両管理に関してはシステムを導入するメリットや、費用対効果などの比較ポイントについて解説。その後、デバイスのタイプ別に12社のサービスを紹介しており、各サービスの詳細確認や無料の資料請求も可能なため、車両管理システムに関心はあるけど何を導入すべきかわからないと悩んでいる担当者の参考になるサイトです。

    自社に合った車両管理システムが見つかる!「ボクシルマガジン」

     

    出典:スマートキャンプ(株)

    運営会社:スマートキャンプ(株)

    公式HP:https://boxil.jp/mag/

    【Webサイトの特徴・ポイント】

    多岐にわたる分野のITサービスのまとめ記事、一流企業へのインタビュー記事など、関連コンテンツの読み応えや幅広さが評価され、月間1,000万PVを集める国内きっての法人向けマッチングサイトです。

    記事構成に関しては前出のアスピックと同じ、車両管理システムのメリット・デメリットや、簡潔にまとめられた各サービスの特徴をチェックできるため、システム導入の比較や候補を絞り込む際の参考となるはず。また、車両管理台帳のテンプレートを無料ダウンロードできる、便利なサイトの紹介と活用術を解説した記事もあるため、保有台数が少なく手作業で管理している企業の担当者は、そちらを読破したうえで利用するのも良いでしょう。

     

    車両管理に関連するエクセル版テンプレートを無料ダウンロードできるWebサイト3選

     

    ここまでは、車両管理担当者におススメの総合Webサイトを7つ紹介してきましたが、この項では実務を進める上で非常に役立つ、アレンジも簡単なエクセル版テンプレートを無料で提供しているサイトを3つお教えします。なお、社内規定及び関連する法律に則っているかどうかについては、各自事前確認したうえで活用してください。

    登録不要!様々なエクセルテンプレートが手に入る「テンプレート祭り」

    簡単なものなら清掃チェックリストやプライス値札、社内行事のお知らせまで網羅しているテンプレート祭りでは、車両管理台帳、社用車予約表、事故報告書などを入手できます。また、「業務改善報告書」や「改善提案書」、運転中の「ヒヤリハット報告書」なども準備されているため、安全運転向上に不可欠な車両管理サイクル継続に活用することも可能です。

    サイトURL:https://template-matsuri.com/index.html

    安全運転管理の向上にうってつけ!「安全運転支援チーム」

    運転実技講習などを行っている大阪府の香里自動車教習所では、安全運転管理支援チームを組織しその公式HP内の「管理者支援ページ」において、エクセルで管理可能な各種ツールを無料提供しています。車両・運転者管理台帳はもちろん、

    • 交通事故分析ツール
    • バック事故分析&指導ツール
    • 免許更新予定者リスト
    • 車検該当車両リスト

    を入手可能なほか、業務運転者服務規程・マイカー通勤規定のサンプルも同サイトでは確認できます。

    サイトURL:https://www.kouri-sdas.com/

    総会員数280万人オーバー!「ビズオーシャン」

    財務・経営システムや会計ソフトをリリースしている、ミロク情報サービスグループである(株)ビズオーシャンが運営するこのサイトでは、

    • 車両管理表
    • リース管理台帳
    • 車両別燃費管理表
    • 車両・駐車場管理規程

    などを始め、「減価償却方法届出書」といった、税務・決算に役立つ様々なひな形がラインナップされています。必要な項目が網羅されていながら、シンプルかつ使いやすいのが特徴でほぼすべて無料で入手可能ですが、ダウンロードするには同サイトへの会員登録が必須となります。

    サイトURL:https://www.bizocean.jp/

    まとめ

     

    車両管理システムの導入・運用や、必要事項を網羅した管理台帳・服務規程の作成を徹底することで、事故など車両に関するリスクを回避するだけではなく、業務全体のコスト削減も実現できます。業種・規模に関わらず、車両管理は組織の運命を左右する重要な業務であり、運送・物流業者や保有車両台数が多い企業の場合は、より高度で多機能なシステムの導入と、継続的な管理体制の進化が必要になります。

    車両管理者及び経営者は今回紹介したWeb サイトを参考に、自社の車両管理体制を一から見直し、問題点や課題をあぶりだすことで改善策を練り、予算の中で早急に実行しましょう。

  • カーディーラーが置かれている現状【後編】~収益向上のための車両管理とは~

    カーディーラーが置かれている現状【後編】~収益向上のための車両管理とは~

    前編では新車・中古車ディーラーそれぞれの現状と課題をあげ、収益化を図るポイントを解説しました。

    カーディーラーにとって、クルマは収益を上げる商品であると同時に、かけがえのない顧客との貴重な「接点」でもあり、業務をスムーズに行うため欠かせない「道具」の側面も備えています。しかし、多くのカーディーラーは間違っているわけではないものの、収益と直結する「車両販売」に力を注ぎ過ぎているため、クルマが本来持っている接点や道具としての価値を十分に引き出せていないようです。

    カーディーラーが置かれている現状の後編では、カーディーラーが年々厳しさを増す新車・中古車市場において、継続して収益向上するため必要な車両管理の具体的な活用法について、詳しく解説します。

    カーディーラーが収益を拡大するために重要なポイント

     

    業種や規模に関わらず、会社が収益を拡大するには収入を増やしつつ支出を減らさなくてはなりません。しかし、クルマという高額商品を取引するカーディーラーにとって、収支のバランスを整えるのは非常に困難を極めるものです。そこで役立つのが車両管理システム。活用をすることで、以下で示す3つのポイントを押さえた施策を立案すれば、企業としての収益拡大の道筋が徐々に見えてきます。

    ポイント1「既存顧客の維持&新規顧客の獲得」

    これはすべての業界に言えることですが、アフターフォローを充実させ既存顧客を大切にキープしつつ、綿密なマーケティングに沿ったPR活動などにより新規顧客を開拓しない限り、継続的な収益拡大は実現しません。「1:5の法則」というマーケティング用語があるように、新規顧客の獲得には既存顧客と比べて5倍ものコストがかかるとされていますし、市場規模が縮小傾向にあるカーディーラー業界が新規開拓に躍起になると、それこそ収支のバランスが崩れてしまいます。

    とはいえ、クルマという商品は既存顧客を維持するためのアフターフォローが、そのまま会社として重要な収入源になるうえ、詳細な既存顧客の車両情報を入手することもできます。既存顧客の「車両管理業務」をITの活用によってシステム化すれば、

    • 車検・点検状況に応じたタイムリーなDM発送
    • 個人情報を元にした販売展示会の開催・通知
    • 既存顧客層(性別・年齢・家族構成など)とマッチした商品ラインナップ

    など、利益を得ながら低コストかつ効率的に新規顧客獲得に向けてのPR活動を実施することも可能です。つまり、クルマを単なる商品ではなく「接点」として活用することにより、「1:5の法則」を打破し収益拡大に向けた第一歩を、ようやくカーディーラーは踏み出せるのです。

    ポイント2「リピート販売に直結するCS評価の向上」

    新車・中古車に限らず、販売頻度が非常に少ないカーディーラーにとって、販促コストが少なくて済む「リピート販売」に直結する、CS(Customer Satisfaction=顧客満足)評価の向上は、収益拡大における絶対命題と言えるもの。CS評価は、顧客ニーズにどれだけ応えられているかによって、以下の「6段階」にレベル分けできます。

     

    • レベル0・・・「大変不満」、多くの顧客がクレームさえつけず黙って去り、二度と来店しない最悪の評価。
    • レベル1・・・顧客ニーズに「最低限」応じられている段階、怒らせるほどではないがリピート販売は期待薄。
    • レベル2・・・「不満はないが満足でもない」段階、惰性によるリピート販売はあり得るものの、紹介などによる新規開拓効果は望めない。
    • レベル3・・・「価格に見合うリターンがあった」という段階、顧客満足を提供している水準であり、徐々にリターン販売の増加や新規開拓効果が出始める。
    • レベル4・・・「期待以上」と評価される段階、リピート販売実績が飛躍的に伸び、新規開拓もスムーズになる。
    • レベル5・・・顧客に「期待」を上回る「感動」を提供している段階、この水準に達すると新規開拓は企業の手を離れ、半自動的に進捗していく。

    顧客獲得競争が激しいカーディーラー業界では、ほとんどの販売店がレベル2もしくは3の段階ですが、リターン販売・新規開拓効果が顕著となる「レベル4」以上を目指し、CS評価向上への取り組みを進めましょう。ただ、レベル3とレベル4・5の間には高いハードルが存在し、それを超えるには常に変化する顧客ニーズを把握と、データ分析によって対応可能な体制を速やかに構築しなくてはなりません。

    多くのカーディーラーはアンケートやヒヤリング調査の実施で、CS評価向上に向けた情報収集に励んでいますが、次にあげる3要因によって、CS評価向上につながっていないのが現状です。

    1. 作業の目的化・・・情報収集するも作業に終始し、データ分析による目的達成への取り組みが一向に進んでいない。
    2. 調査内容が一方通行・・・業界の常識に囚われ過ぎた結果、顧客が抱く不満要因を見逃している。
    3. 各部門の連携不足・・・情報収集・データ分析・共有に至るプロセスがシステム化されていないため、各部門が孤立し効果的な改善案を策定できない。

    このうち、1は「なぜ情報収集をするのか?」という基本に立ち返れば解決できそうですが、2については、業界人なら車検はあくまで公道を走行しても良い許可に過ぎないことを知っていますが、一般ユーザーは車検後すぐに故障すると強い不満を抱きます。その認識のズレが、この要因を招いているようです。

    また、3についてもカーディーラーは車両販売に力を注ぐあまり、本来リピート販売に直結するCS評価向上の肝である、整備・サービス部門に対する評価や現場からの意見を置き去りにして、改善案を考えてしまう傾向にあります。このような、カーディーラー業界ならではの諸問題を解決するためには、どんな点に顧客が満足し不満を感じているのか、価格設定・接客マナー、車両・サービスの充実度、従業員の身なり・店舗の清潔感、手続き・納車・メンテナンスのスピードと正確性など、すべての部門かつ顧客目線に立った調査項目を網羅したうえで、既成概念にとらわれない斬新なアイデアを広く募るべきかもしれません。

    そして、各部門の連携強化を図るうえで役立つのが、数多くの顧客情報を容易に入手可能な車両管理システムであり、CS調査結果と顧客・車両データを「紐付け・分析・見える化」することによって、レベル4以上のCS評価へ近づけるのです。

    ポイント3「試乗車・社用車稼働状況の把握と最適化」

    CS評価向上への道筋が見えてきたところで、話を少々実務的なことに移しましょう。カーディーラーは新車購入希望者用の試乗車はもとより、営業・代車に用いる「社用車」など、多くの車両を所有・管理する必要があります。

    前編では車両管理システムの導入で期待されるメリットに触れましたが、既存顧客の確保&新規顧客の獲得と関連付けた場合、「稼働状況に応じた保有台数削減でのコストカット」こそ、最大の利点と言えるでしょう。その理由は、車両保有台数を最適化できた場合、浮いたコストをマーケティングやPR活動など、新規開拓へ回すことができるからであり、加えて労力・時間をCS評価向上に不可欠な、満足度調査につぎ込むことまで可能になります。

     

    ただし、車両管理システムの多くで自動化される、「運行日誌」からの正確なデータ取得や、稼働状況の「見える化」による綿密な分析を実施しなければ、コストカットはおろか管理担当者の工数が増え、かえって業務が停滞する可能性もあります。

    データのスムーズな利活用がカギ!収益が向上する車両管理の進め方

     

    車両管理システムを導入しても、取得したデータを正確かつスピーディーに利活用できなくては、収益向上にはなかなか繋がりません。この項では、収益が向上する具体的な車両管理の進め方や、システムの運用方法について解説します。

    ステップ1「無理のない余剰車両削減計画の策定」

    まずは、代車や社用車を削減して本当に業務に支障が出ないか見極めたうえで、慎重かつ正確に「削減計画」を策定すべきであり、企業規模や保有台数にもよりますが目安として「6ヶ月間」の最大稼働台数をもとに、余剰車両をピックアップするようにしましょう。

    従来の手作業による管理では、長期間にわたる稼働状況を把握するのが大変ですが、車両管理システムなら稼働状況を簡単に整理できるほか、表やグラフなどで可視化、共有することも可能なため、無理のない削減計画を練り上げることができます。

    ステップ2「車両管理データの見える化・共有による生産性向上」

    前述したデータの見える化と共に、従業員同士での情報共有を徹底しましょう。そうすることで、保有車両の稼働状況を誰もが直接目で確認できるため、試乗車・代車のタイムリーな手配・予約など、業務効率化による生産性の向上やCS評価UPを期待できます。

    また、個人情報の取扱いには留意すべきですが、代車へ車両管理システムを搭載することにより、顧客の行動範囲を知ることもできるためCS調査で得たデータと紐付けすれば、より効果的な企業戦略を練ることも可能です。さらに、販売実績に優れる営業マンからの代車・試乗車予約を、他の従業員より優先させたり、稼働率と採算性の高い部署に多くの社用車を配置したりするなど、会社にとって大きな財産である車両を、より有益な「道具」として活用することも可能になります。

    ステップ3「カーシェア・レンタカーの併用」

    これは、すでに多くのカーディーラーが実行している施策ですが、社用車や代車をカーシェアにスイッチしたり、サブディーラーや小規模中古車店などで一時的に車両が必要な場合はレンタカーを活用したりするなど、柔軟な活用をする企業も増えてきました。

    カーシェア・レンタカーの併用は、車両購入・維持コストの節約が可能なため、収益向上にもつながる有効な施策です。しかし、ドライバーの過失による事故で車両が破損した場合、付随する保険が適用されず修理費を弁償しなければならない可能性があります。前編をご覧いただいた方ならココでピンと来るはずですが、車両管理システムには高度な安全運転診断機能を備えた商品・サービスも多いため、利用するシェアカー・レンタカーへの車載デバイス設置によって、過失事故を大幅に抑制することもできます。

    また、社用車をカーシェア・レンタカーへ転換するだけではなく、役目を終えた試乗車や売れ残った新車、及び回転率が芳しくない在庫中古車を活用し、カーシェア・レンタカービジネスに参入、新たな収益源を確保している大手ディーラーも存在します。こうした方向性へと舵を切るのも、施策の一つだと言えるでしょう。

    まとめ

     

    人材不足や働き方改革、さらには、移動へ大きな変革をもたらす「MaaS」の推進に伴い、車両管理が果たす役割・メリットは多様化しています。カーディーラーが生き残るには、企業規模に関わらずITシステムをうまく導入・活用し、収益向上を見据えた業務改善計画を策定すべきでしょう。また、中小ディーラーが単独参入するのは困難なものの、クルマの所有から共有へユーザーニーズが変貌しつつある点を鑑みると、複数業者によって連合体を組織しシェアリングビジネスへ参入すべき時代が、すぐそこまで近づいているのかもしれません。

  • カーディーラーが置かれている現状とは【前編】

    カーディーラーが置かれている現状とは【前編】

    カーディーラーとは、新車を販売しているトヨタなどのメーカー直営・提携代理店(サブディーラー)だけではなく、中古車を取り扱っている業者まで含めた総称を言います。流通経路こそ違いますが、クルマを売って利益を上げるというビジネスモデルは共通です。

    クルマ社会が発展している日本では、カーディーラーは非常に重要な地位を占めていますが、現在は構造上の問題や少子・高齢化と若年層の車離れなどの影響から、必ずしも順風満帆という訳ではないようです。

    カーディーラーの業界構造

     

    まずは、業界の現状を把握するため、新車・中古車ディーラーそれぞれのビジネスモデルを整理して解説します。

    メーカー直営店&サブディーラーの業界構造

    新車の販売には、常時新型モデルを在庫しているトヨタで言えば「ネッツ」などの直営店と、顧客の要望に応じその都度メーカーから新車を取り寄せ販売する、整備業者・JA・個人事業主といったサブディーラーがいます。現在、両者を合わせた国内の新車販売台数は約500万台。日本ではクルマの商取引に官公庁の許可などの諸登録が必要で、複数メーカーの新車を多数在庫する販売形態が存在しないため、ほぼすべてを直営店とサブディーラーが売りさばいているのです。

    しかし、少子高齢化に伴う生産人口減少や若年層のクルマ離れ、カーシェアリングの普及によって国内新車台数は年々減少すると考えられ、(株)三井住友銀行の独自見解によると2030年には「現状比-30%」、つまり約350万台にまで落ち込むと言います。購入者がいて初めて新車を取り寄せるサブディーラーはともかく、各自動車メーカーおよびメーカーから一定の販売台数を割り当てられている、直営店の運営会社にとっては死活問題ですが、それより深刻なのが新車ディーラーの収益構造です。

    新車ディーラーは販売に加え、車検・点検・整備・修理などのアフターサービスを収益源としており、1社平均の売上高では車両販売が約80%を占めているものの、減価を除いた粗利は約50%に留まっています。つまり、多くの新車ディーラーがアフターサービスで経営を安定させているのですが、新車市場の冷え込みの要因である生産人口減少は、アフターサービスを提供するために必要なメカニックの確保・育成も困難にさせているのです。

    もちろん、各メーカーもそのことを十分自覚しており、働き方改革の推進による労働環境・条件改善で人材確保に取り組んでいますが、

    • HV・EVの普及・・・部品点数の減少に伴う整備収益ダウン
    • 高レベル自動運転車の普及・・・交通事故抑制に伴う整備・補修依頼数の減少

    などによって、現在約50%を占めるアフターサービスの収益力低下が予想されるほか、追加される新技術に対応可能なメカニックの育成難易度も年々上昇しています。

    中古車ディーラーの業界構造

    メーカーの指示で販売価格が決まる新車ディーラーと異なり、中古車ディーラーは自らの意思で仕入れて車体(オークションor直接買取)や販売価格を設定できるため、新車より1台当たりの粗利が多く発生します。

    しかし、新車市場が将来的に冷え込んでいくことに加え、クルマ自体の寿命が年々伸びている影響から、現在「約260万台」とされている国内の中古車販売台数は、新車販売台数より顕著に減少すると考えられます。その結果、近年廃業を余儀なくされる中古車店も増え、マーケティングやプロモーションに要するコストの削減と、知名度上昇・流通ネットワーク構築を目的にフランチャイズ化し、大手チェーンの傘下になる個人事業主も増えてきました。

    また、大手チェーンもさらなる収益率向上を図るため、買取した車体を長期間在庫せず業者間オークションで転売する従来の「薄利多売方式」から、自社で点検・整備し付加価値を付け高品質な中古車を消費者に提供する「直販方式」へと転換し始めています。中古車買取チェーン「ガリバー」を運営する(株)IDOMの例を見ると、同社は採算性の悪い既存店舗を撤退しつつ、

     

    • ガリバー・アウトレット・・・全車保証付きの既存店舗と異なり、車両販売と整備・保証・クリーニングなどのサービスを切り離すことで、リーズナブルなアウトレット価格を提供する販売チャネル。
    • ガリバーミニクル・・・軽自動車に特化した販売チャネル、女性ユーザーからの支持を集めており、中古在庫だけでなく未使用車も人気。
    • リベラーラ・・・BMW・アウディ・メルセデスを中心とした、輸入車及び高級国産車専門のセレクト中古車店。積極的な買取も行っているため、まだ確立していない国内の中古輸入車市場を引っ張る存在になる可能性もある。
    • スナップハウス・・・ファミリーカーを専門に販売だけでなく、メンテナンスやアフターフォローまで行う。キッズルームや授乳室、2時間300円で利用できるフリードリンクスタンドなど、ファミリー層を強く意識した店作りになっている。
    • WOW!タウン・・・「ココロ躍る車選び」をモットーに、社内ソーシャルから2012年に初登場した新感覚の総合中古車販売施設。施設内で快適に過ごしている間に、併設する「FACTORY」で愛車の点検や点検を受けることも可能。

    といった専門販売チャネルを次々に新設することで、ビッグモーターに奪われた販売・買取台数NO,1の座を取り戻すべく進化しています。

     

    また、国内市場に限界を感じた中古車ディーラーは海外輸出ルートの構築を早い段階から進めており、日本車人気の高さから低年式・過走行気味の車体は東南アジアやインド、比較的新しく程度の良い車体は、UAEを始めとするアラブでの売れ行きが好調なようです。

    カーディーラーの現状から見えてくる課題

     

    自動車メーカー直営店や大手中古車チェーンの場合、働き方改革の推進や販売チャネルの統合・再編など、構造の最適化によってある程度の対応ができますが、中小のサブディーラーや中古車店が人材不足・市場縮小といった大きな流れに逆らうのは困難なことです。

    この項では、前者にも共通することではありますが、特に後者が強く意識すべき課題と、現状を打破し収益化を図るため必要なことをまとめました。

    課題クリアと収益化に向けてのポイント1「ITシステムによる効率化」

    前述したように、新車ディーラーはアフターサービスの方が車両販売より粗利率が良いため、整備部門の人件費・育成費・維持費をカットすることは、経営規模が小さいほど難しくなってきます。そのため、見積書・契約書作成などにITシステムを導入して販売プロセスを効率化させることでコスト・カットを図り、それを整備部門に回す「ビジネス・サイクル」の構造をおすすめします。

    サブディーラーの場合は開発・生産・PRに要するコストが発生せず、ユーザーは各メーカー公式HPやカタログの情報だけで、現車をチェックすることなく購入を決めるのがほとんどですから、販売部門はできる限りシェイプアップしたほうが良いでしょう。

    一方、中古車ディーラーの場合、現車を見たうえで契約することがほとんどであり、セールスマンの腕次第で利益が大きく左右するため、IT導入によるプロセスの効率化と同時に、販売担当者のスキルアップを目的とした、研修会・勉強会を頻繁に実施しましょう。

    アフターサービスのうち、もっとも粗利率が高いのは板金塗装ですが、現在では塗装条件や損傷状況入力と修復箇所の画像UPだけで、自動的に見積書などが作成される「クラウド型板金塗装システム」もリリースされているので、導入を検討してもいいかもしれません。

    課題クリアと収益化に向けてのポイント2「大胆な経営方針の変更」

    どんなビジネスにも言えることですが、収益向上を図り、あまりに多くの商品・サービスに手を出してしまうと、業務の多様化・原価率向上・ロス増加などによってかえって業績が悪化することも。市場が成長期にあった頃ならともかく、冷え込みが顕著になってきた現在では、時に不採算部門を切り捨てる覚悟も必要であり、サブディーラーは修理・板金などの本業に専念、中古車ディーラーは車種・タイプ特化型に転換することで業務を効率化できます。

    また、部門ごとの収益率・稼働率をITの活用によって見える化・分析し、会社の貴重な人的・物的財産を最適配分することも、ディーラー業界を取り巻く現状が厳しい中生き残っていくために業務改善施策といえます。

    課題クリアと収益化に向けてのポイント3「所属スタッフの業態管理」

    IT活用や経営方針の大胆な変更も必要ですが、企業にとって最も欠かすことができないのは人です。労働環境改善や報酬UPなどの取り組みをしなければ、人材確保はおろか従業員が外部に流出する可能性まであります。

    ここで、「ウチは少数で経営している小さいディーラーだから不要だ」と諦めてはなりません。なぜなら現在リリースされている車両管理システムを導入すれば、低コストかつ簡単に保有車両と従業員の動態をマネジメントできるからです。車両管理システムで動態管理を徹底することで、次のように自動車ディーラーは多くのメリットがを得ることができます。

     

    • 外出した従業員の確実な勤怠管理に伴う「労働環境改善」
    • 安全運転意識向上による「事故発生リスクの抑制」
    • 稼働率の低い車両の処分による「維持・管理コストカット」
    • 販売・アフターサービス時に提供する代車の「適切な管理」

    また、「車両管理システム全車導入!」というキャッチ・フレーズを掲げるだけで、交通事故撲滅という自動車社会全体の課題へ真剣に取り組んでいることを消費者や取引先企業にアピールできるため、企業イメージ向上という二次的メリットも期待できるのです。

    まとめ

     

    今回は、新車・中古車ディーラーそれぞれの現状と課題をあげ、収益化を図るポイントを解説しました。

    後編では、規模に関係なく手軽に導入できるうえ、業務効率化・収益UP効果を期待できる具体的な車両管理システムの運用方法について、実際に導入を進めているメーカー系ディーラーの事例を交えながら解説します。

     

    >>>後編はこちらから

  • スマートシティとは?~変化を続ける未来都市のあるべきカタチ~

    スマートシティとは?~変化を続ける未来都市のあるべきカタチ~

    最近、TVニュースを見ていると、都市開発・運営に関する話題の中で、「スマートシティ」というキーワードを耳にする機会が増えてきました。規模に違いはあるものの「スマートコミュニティ」や「スマートタウン」なども類似する概念や構想です。

    今回は、スマートシティとは何か国内外で進行中の具体的な取り組みや、すでに導入/実用化が予定されている技術を紹介したのち、同構想が目指す未来都市の姿について、新潮流を交えつつ解説します。

    スマートシティとは~洗練され賢く機能するハイテク都市~

     

    国土交通省は「スマートシティ」を「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・整備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義し、以前はエネルギーを始めとした「個別分野特化型」の取り組みが中心でした。

    しかし近年ではIoT・AIや官民双方のビックデータのフル活用によって、交通・観光・防災・健康・医療・エネルギー・環境など、複数分野を包括的に連動・最適化する「分野横断型」へシフトを始め、モビリティをサービスとして捉える「MaaS」もその一例です。

    出典:国土交通省

    現在では、コネクテッドカーなどの「スマートモビリティ」や、次世代送電網である「スマートグリット」など、分野ごと分断されていた「スマート」を1つのプラットフォームで統括管理・運営し、各インフラのシームレス化を目指す段階に入っています。また、国交省はスマートシティを定義通り「持続的」に機能・発展させるため、交通・電力・通信など政府主導の公共インフラ整備だけではなく、技術開発者・サービス提供、都市開発者、都市管理者、住民・地元企業を主体とした連携が必要で、民間企業の次世代IoT技術(シーズ)が、地方自治体および住民の要望(ニーズ)と、常にマッチングできるマネジメント体制を築いていくとしており、国内外問わずこの流れがスマートシティ構想の新潮流と言えるでしょう。

    スマートシティではどんな技術が取り入れられるのか

     

    国交省が、2018年12月14日~翌年1月25日の間に実施した、「スマートシティの実現に向けたシーズ・ニーズ提案募集」によれば、早期の技術導入が求められている分野として、交通・モビリティに次ぎ、観光・地域活性化、防災、健康・医療が地方自治体からの「ニーズ」として多く提案されました。

    このことから、同省が目指すスマートシティ・マネジメント体制が整うことを前提にすれば、

    1. 通信ネットワークとセンシング技術 (5G、レーザー、センサーなど)
    2. 分析・予測技術 (避難施設配置シミュレーションなど)
    • データ保有 (リアルタイムの災害情報など)
    1. データ・プラットフォーム (3次元位置情報など)
    2. データの活用 (共有化、見える化など)
    3. 新たな応用技術 (自動運転、ドローンなど)

    などの「民間企業シーズ」が、随時スマートシティへ実装されていくと考えられます。

    スマートシティの海外事例と国内での取り組み

     

    スマートシティの実現については、日本は国際的に少々後れを取っている状態で欧州や米国が一歩リードしています。アジアでは中国・シンガポールにおいて、近年急激に進行スピードが増しているようです。この項では、先進グループであるアメリカ・オランダ・中国におけるスマートシティの事例、そして国内で進行中の取り組みを紹介します。

    米・ニューヨーク 市内全体でのギガビット通信が可能に!「LinkNYC」

    出典:LinkNYC

    ニューヨークは、あらゆる分野でスマートシティ・プロジェクトの進んでいる都市ですが、中でも国際的に高く評価されているのが、次世代型都市通信インフラの「LinkNYC」です。

    携帯電話の普及により、「お役御免」となった古びた公衆電話ボックスを、ギガビットの高速インターネット・アンテナ・情報アプリが利用できるAndroidタブレット・55インチの HDディスプレイを備えた「高速Wi-Fiの基地」に置き換えたことで、ニューヨークは今や、市民はもちろん観光者が「スマート」にネットを利用できる、世界一の通信都市へ進化を遂げています。

    タブレットでは地図やルート案内にアクセスできるほか、米国内のどこにでも無料電話可能。完備されているUSBポートでのデバイス充電もできますし、大画面ディスプレイにローカル情報がリアルタイム配信される仕組みも追加されました。LinkNYC ネットワークには現在、600万人ものユニーク・ユーザーが存在し、累計8,6TB(約13億曲の楽曲データに相当)の膨大なデータが利用されたのだとか。

    また、Intersection によれば、よく検索されるワードが「仕事・住宅・衛生・公的給付金」であることを考慮すると、ニューヨーカーにとってLinkNYCは単なる便利ツールではなく、生活に欠かせない「ライフライン」の一部となっていることがわかるでしょう。

    オランダ・アムステルダム 世界一の省エネ都市を目指す「ASCプログラム」

    アムステルダムは、欧州の他都市に先立ってインテリジェント・シティの実現を目指し、「アムステルダム・スマートシティー(ASC)プログラム」を策定・推進しています。そしてその根本を担うのが、市民のエネルギー消費行動を変化させる取り組みです。具体的には、以下4分野での対策が柱となっており、エネルギーの効率化と国民生活の品質向上を両立できるスマートシティ形成のため、エネルギーの作り方から使われ方まで、徹底した改革が推し進められています。

     

    • 持続可能な生活(Sustainable Living) -・・・スマートメーターの導入による、消費電力の可視化(見える化)と市民の環境意識・電力利用行動(ライフスタイル)の変革促進
    • 持続可能な労働(Sustainable Working) ・・・ 照明/冷暖房/セキュリティ機能を高めたスマートビルディングへの転換及びエネルギー使用量抑制
    • 持続可能な運輸(Sustainable Transport)・・・ 港湾・船舶間の相互電力充電とEV車の普及、充電ポイントの拡充
    • 持続可能な公共スペース(Sustainable Public Space)・・・ゴミ収集におけるEV車の利用、太陽光発電によるゴミ圧縮機の導入

    中国・杭州市 渋滞が消えた!?アリババが開発した「ET都市ブレイン」

    文人墨客が愛した静かな西湖湖畔の古都であり、片側一車線といった狭い道が多いことから、事故でも発生しようものなら渋滞が瞬時に波及し、市全体の交通が麻痺状態になることもたびたび起こっていた杭州市。とくに、2012年までは地下鉄が存在しなかったため、市民はバスかタクシーを利用するしかなく、多くの移動時間がかかっていました。そのため、日常生活はもとより、風光明媚な観光地の景観を阻害する大気汚染や、それに伴うインバウンド需要の伸び悩みが問題視されていたのです。

    ところが2017年、電子決済会社最大手アリババ・グループの「Alibaba Cloud(アリババクラウド)」が開発した、「ET都市ブレイン」が導入されてからというもの、激しい大渋滞はほぼ発生しなくなったのだとか。ET都市ブレインは、AIを利用した「交通制御ソリューション」であり、主な機能としては

    • 信号制御により交通流量を調整し、渋滞発生を予防・抑制する。
    • 救急車などの緊急車両の移動に合わせ信号を「青」に切り替え、現着時間を短縮させる。
    • 監視カメラの映像から交通違反・事故を自動認識し、警察などに緊急通報する。

    という3つが挙げられ、似たような交通制御・監視システムは日本でも段階的に導入が進んでいるもののET都市ブレインの場合、例えば大規模な事故が発生した際、あらかじめ定められた緊急車両専用レーンの信号が「すべて青」になる徹底ぶり。その結果、緊急車両の平均速度は50%上昇、現着時間は15分以上早まり、半分以下の短縮を実現しました。渋滞の早期解消はもとより、二次被害発生の予防や事故当時者の救命率向上にも寄与しています。

    交通渋滞・事故被害の軽減だけではなく、ET都市ブレインは管理IoT機器の温度異常上昇感知による「火災発生認識・警報機能」も有しており、火災発生時には管轄の消防署へ火災発生位置、周辺道路状況、ガソリン・油・火薬などの大型可燃物の有無を通知するほか、現着した消防隊からの写真・音声・テキストといったデータは、救急・警察・水道・電力会社で共有されるシステムになっています。

    未来都市のセキュリティ管理・維持で中核を担う存在となりえるETブレインは、現在、杭州市全体の1/4の交差点を自動制御しているほか、蘇州市や杭州市と同様に深刻な交通渋滞にあえぐ、マレーシア・クアラルンプールでの試験導入も始まっています。

    日本におけるスマートシティへの取り組み

    前項で、国交省が示すスマートシティ構想の骨子について触れましたが、経済産業省が進めている「次世代エネルギー・社会システム実証事業」に選ばれた以下の4都市では、民間企業主導のプロジェクトが進行中です。そしてCO²削減など一定の効果を上げていますので、ここでは主だった取り組みを2つ紹介します。

    1. 神奈川県横浜市
    2. 愛知県豊田市
    3. 京都府けいはんな学研都市
    4. 福岡県北九州市

    横浜市 エネルギー改革を肝としたスマートプロジェクトの進行

    基礎自治体として国内最大の373万人を擁する横浜市では、「地域エネルギー管理システム(CEMS)を軸に、東京電力・明電舎・東芝など34社と共同で、計15プロジェクトが5年間にわたって実施されました。具体的に導入されたのは

    • HEMS(家庭用エネルギー管理システム)・・・4,200世帯
    • PV(太陽光発電)・・・37メガワット相当
    • EV(電気自動車)・・・2,300台

    であり、結果として約4万トンのCO²削減と目標を上回る高い実績を上げています。また、BEMS(ビル用エネルギー管理システム)への取り組みとしては、みなとみらい地区のビルに参加要請し、節電料に応じて電気代を下げさらにインセンティブを支払うことにより、デマンドレスポンスはHEMSよりも高い効果を確認できたとのこと。

    国交省が目指す「分野横断型」に至ったとは言い難いものの、災害時に拠点となる小・中学校へ緊急用蓄電池の設置計画を進めるなど、エネルギー改革を中心にスマートシティ化の「横展開」にも力を注ぎ始めています。

    豊田市 超小型EVシェアリングサービスの実証実験を開始

    トヨタ自動車のお膝元で関連企業がひしめく愛知県豊田市では、同社が開発した超小型EV「コムス」を使用したシェアリングサービス、「Ha:moRIDE(ハーモ ライド)」の実証実験が、2019年9月9日より行われています。これは本実証実験に同意・参加する、Ha:mo RIDE会員の安全運転を5段階で評価し、安全運転を心がけた会員に次回利用料金への充当、とよたエコポイント・PeXポイントへ交換可能など、Ha:moポイントをプレゼントする取り組みです。

    各所に設置されるステーション間であれば、車両を乗り捨てできる便利なサービスであり、都市交通の利便性向上とCO²削減を両立する「EV×シェアリング」という、スマートシティ実現に向けたこの取り組みは、東京・沖縄・バンコクなどへ実証エリアが拡大しています。

    スマートシティが目指す未来の”まちづくり”とは

    新潮流が登場する前のスマートシティとは、エネルギーを生み出す資源の節約と、地球環境の保護が主たる目的でしたが、現在は働き方改革の推進や新たなビジネスモデルの創出、多様化するニーズに対するテクノロジー(自動運転・5G・データ利活用・etc…)による解決、一体型コミュニティを完成させる必要性が出てきました。

    狩猟・農耕・工業そして情報社会を経て、サイバー空間とフィジカル空間が融合した超スマート・デジタル社会、「Society5.0」の到来が間近に迫る今、地域・年齢・性別・言語による格差なく、モノやサービスを提供するスマートシティの実現が期待されています。ただし、スマートシティは高度IoT時代の到来により、必要不可欠だと考えられている仕組みにすぎないため、関連団体は提言の中で「デジタル」という頭文字を付けたがりますが、市民社会が導入された技術を使いこなせない場合、宝の持ち腐れになりかねないでしょう。

    重要なのは、社会課題解決と豊かな「人間性=Humanity」の両立であり、どちらがかけてもスマートシティが目指す未来の姿である、「継続的に発展する都市=サステナブル都市」へ到達することはできません。AIロボットや自動走行車が街中で生活をサポートし、イノベーションを通じて閉塞感が打破され、誰しもが尊重し合えるスマートシティが完成すれば、未来の世代が美しい地球で豊かに生活できる、「サステナブル社会」が実現する日も近いと言えるでしょう。

  • 「大事なのは運転と運行スケジュールに余裕を持つこと」ドライバーが教える車両管理システム活用術

    「大事なのは運転と運行スケジュールに余裕を持つこと」ドライバーが教える車両管理システム活用術

    宮城県で誕生し、今年で創業61周年を迎える株式会社あいホームさまは、地域に密着し、地域に根差し、お客様と生涯のお付き合いができるよう、人と人とのつながりや絆を大切にしている住宅会社です。

    地域密着で培った実績から品質の良い材質の仕入れ、腕のいい地元の職人による高品質でお手頃価格な家づくりから、お引渡し後の定期アフターサービス体制を強みにする同社から、SmartDrive Freetを導入した背景、導入後の効果についてお話を伺いました。

    インタビュイー:
    株式会社あいホーム
    アフターメンテンナス 伊藤 竜弥様

    アフターメンテナンスでお客様との信頼関係を築く

    会社のご紹介と伊藤様のお仕事についてお伺いできますか。

    あいホームは、宮城で生まれ、今年は創業61周年になります。わたしたちは地域に密着し、地域に根差し、お客様との生涯のお付き合いができるよう人とのつながりや絆を大切にしています。

    弊社の強みは、地域密着で培った実績から品質の良い材質の仕入れ、地元の腕のいい職人さんお仕事をお願いしているため高品質でお手頃価格な家づくりから、お引渡し後の定期アフターサービス体制など、新築時の良い状態を長く保っていただけるようにサービスを提供しております。

    私は住宅の定期点検を行うアフターメンテナンス業務を担当しています。お住まいを引渡してから1カ月後、3カ月後、6カ月後、1年後、2年後の計5回、お客様から話を伺い不具合がないかどうかを確認します。アフターメンテナンス専任の社員は私を含めて2名。全拠点のお客様を訪問しますので、事務所にいることはほとんどありません。いつものスケジュールですと、朝の9時から午後までに2件、午後に3件を回ります。事前に1日のルートが決まっていますので、突発的な訪問が発生することはありませんね。

    SmartDrive Freetを導入してから、どのような変化がございましたか。

    自分がどこへ行き、どれくらいのスピードを出していたのかという情報が、全社員から見えるので、その点は意識するようになりました。SmartDrive Freetは安全運転がスコアで表示されますので、自分の運転を見直す癖がついたようです。丁寧な運転をすれば素直に点数に反映されますし。車のイラストを中心に、加速、減速、ハンドリングがどこで・どの程度発生したのかが目で見てわかりますので、改善点をすぐ理解できるのもポイントですよね。

    導入後は、信号が赤になりそうだと分かった時点で緩やかにスピードを落とすとか、車間距離をいつもより長めにとって、前の車が急ブレーキを踏んでもゆっくり減速できるようにするとか、先を読んで余裕のある運転をしています。普段は業務日報を書く時に訪問先の記録とスコアを見て振り返りますが、点数が悪かった日は、どこに原因があったのかを考えるようにしています。

    車が好き。だからこそ安全運転をしたい

    安全運転をするためのコツを教えてください。

    SmartDrive Freetは安全運転の度合いが点数として現れますよね。私は車が好きなので、社内でスピードを出しているイメージを持たれていましたが、車が好きだからこそ、一番いい点数を出さなくてはと思っていて。

    それに、車には社名が記されていますから、何かあればすぐ電話でクレームがきますしね。最近ではあおり運転が問題になっていますので車間距離も長めに取るようにしていますし、多くの荷物を積んでいるので急操作で暴れないように、滑らかな運転を心がけています。個人車でもそうですが、優しい運転は車を長持ちさせ、結果的には燃費も良くなるのでいいことばかりなんですよ。

    また、たとえ私一人で移動をしていても隣に誰かが乗っていると思いながら、同乗者を不快にさせないよう、スムーズな運転をしようと心がけています。

    運転に慣れていない人にアドバイスはございますか。

    ブレーキをグッと踏み込むと、首がカクンとなるじゃないですか。この操作は大きな衝撃を受けるので、体にも負担をかけてしまうのです。ですから、踏み始めはゆっくり、途中でちょっと強めに踏んで、止まる寸前にまた緩めてあげるイメージだと安定しますよ。ハンドルも同じです。ハンドルは切り始め時にあそびの部分があるので、そこから、ゆっくり切り込むとグラグラすることはありません。

    業務時間に余裕がないと、運転にも影響が出てしまいます。もしも時間が間に合いそうになかった時、伊藤さんはどのように対処されますか。

    次の訪問に間に合わないかもしれないと思ったことは何度かありますが、そんな時は前もって、「遅れます」と電話で連絡を入れるようにしています。焦りは危険運転につながりますので、決して無理はせず、できる範囲で対応すべきでしょう。とくに、初めて行く場所はナビで次の行き先までの所要時間を調べて逆算します。何時にここを出発すべきかを考え、少し余裕をもたせてスケジュールを組むようにしていますね。コントロールされるのではなく、“自分で時間をコントロール”するんです。

    私はいつも時間がギリギリにならないよう、あらかじめ、余裕を持ったスケジュールを組むようにしていますし、お客様にも時間が少し前後するとお伝えしています。万が一を考慮して、訪問するお客様に30分ほど前後しますと伝えておけば、イライラさせてしまうこともありません。状況によってはどうしても時間が押してしまうので…。基本は30分前後、もっと時間がかかりそうだと事前にわかれば一時間程度前後しますと伝えています。

    お客様も事前に時間が前後するとわかっていると安心されますし、私たちも気持ちにゆとりを持つことができますしね。

    安全運転は運転時だけではなく、運行スケジュールにも余裕をもつことが重要なんですね。

    本日は、お忙しい中、ありがとうございました!

     

    安全運転キャンペーン、2位入賞の表彰状をお渡しいたしました。
  • 【対談】ハードウェアがどのようにしてエモーショナルな体験を生み出すのか -後編

    【対談】ハードウェアがどのようにしてエモーショナルな体験を生み出すのか -後編

    前編ではLOVOTの誕生からコンセプト、コミュニケーション・マーケティングの話までを対談形式でお話いただきました。

    後編はどのようなコミュニケーションが人の心を動かすか、さらにエモーショナルな体験について深く追求した会話をお届けします。

    人の感情はコミュニケーションで変わる

    北川:高度なレコメンドエンジンがあっても、その内容を伝えるのがLOVOTだと話が聞きやすくなったり、もっと色々な話を聞いてみたくなったりするなど、今後は目に見えない技術が重要になってくるのではないかと思っています。自動運転車が「今日はここへ行ってみてはどうでしょう」と機械的に伝えるより、可愛い声で話しかけてくれた方がコミュニケーションをとりたくなりますから。

    :それはありそうですね。音声だけのコミュニケーションが始まったのは、電話が発明されてからのこと。人類の長い歴史の中で、音声だけ、あるいは文字だけのコミュニケーションというのは、ごく限られた短い期間だけなんです。そう考えると、五感を使ったコミュニケーションの方が圧倒的に長い時間を占めていますし、私たちはそこから情報を得るように進化してきましたので、ヒトというシステムそのものを考えると、刺激させるにせよ、リラックスさせるにせよ、五感を意識した作りに注力すべきでしょう。

    北川:スマートドライブは移動の進化を後押ししようとサービスの開発に取り組んでいます。しかし、行動履歴からBさんはキャンプが好きだとわかっても、「週末はキャンプに行きましょう」という言葉は直接的すぎてしまうかなと。ただ、そこへ1台300万ほどの高精度な望遠鏡をセットしたレンタカーが割引価格で予約できるメッセージが送られてきたら…。人の行動と反応が大きく変わります。実際に、レンタカー会社がレンタカーと望遠鏡をセットにして、どこかの移動するための手段としてのレンタカーではなく、その望遠鏡で数えきれないほどの星を観てみたいからお出かけしようという、目的ありきの移動を可能にした事例もあるそうです。

    このようなレコメンドがさりげなくできると、新しい移動の流れがスムーズに作れるかもしれません。「テクノロジーにプラスして伝える部分」について、今は議論がなれていませんが、林さんがおっしゃるコンセプトと近いものがあるのではないでしょうか。

    :次の時代は、目的地やルートのレコメンデーションだけではなくて、コトのレコメンデーションが重要になるのでしょうね。どのような経験を提供できるかがキーになりますね。

    北川:データは活用しつつも、できるだけ技術を表に出さずに、人の動きや運転への想いを変えられないかと考えていまして。逆に、御社がデータを活用することはございますか?

    :LOVOTでは個人の家庭の画像や音声といったプライバシー情報を弊社が取得できないように設計しています。データを解析すれば開発は一気に進むでしょうが、LOVOTが自分の情報を盗み見ていると感じられると信頼関係が築けなくなってしまう。ただ、個人に応じて行動を変えていく部分はLOVOT自身が判断しますから、接する時間が長くなれば、その人の生活リズムに合わせて変化します。

    アートとテクノロジーの融合は何を生み出すのか

    北川:テクノロジーが飽和状態になると、アートと融合する方向へ向かうイメージがあります。家の中はすでにテクノロジーが飽和していると思いますので、LOVOTのようなエモーショナルなプロダクトが今後、成長していくのではないでしょうか。

    移動に関しては、まだまだ技術が発展途中にありますので効率性が重視されており、マーケットが無機質。技術が飽和して、よりアートとかエモーショナルな部分が重視されれば、横展開されていく可能性もあるのでしょうか。

    :あると思いますよ。私たちが取り組んでいるのは、どうやって生物と無生物の垣根を越えるか。ドラえもんやアトムのように、漫画やアニメといった想像の世界では、私達は何の疑問も抱かず、自分たちと同じように血が通っている存在ではなくても仲間、友達になっているのに、現実にはまだそんな仲間も友達も存在しない。その垣根を越えるために、さまざまな技術を投入して、生きものと変わらない存在にしたいのです。

    もっと噛み砕いて説明すると、人がその存在に共感できるかどうか。共感できた途端、自分と似た存在だと捉え、親近感が湧く。虫には共感できなくても、犬や猫に共感できる人が多いから、家族になりえるわけですよね。ならば、犬や猫と同じように判断、もしくは反応できるロボットがいたら、家族になりえるはずです。犬や猫と同じように判断し、反応できる自動車があれば、強い生命感を感じますし、それが進化して人間に近づけは近くほど、なくてはならない相棒になるのではないでしょうか。

    北川:SmartDrive Carsはまさにそこを目指しています。たまに的外れなレコメンドするかもしれませんが、たまに面白いことに出会えることもある。ドライバーとよりエンゲージメントできる接点にしたいと思っています。

    :自動車が友達って、昔で言うナイトライダーみたいな世界ですよね。

    ハードウェアに命を吹き込む

    北川: LOVOTは友達とは違う立ち位置になるのでしょうか。

    :LOVOTは、ペットのような立場で家族になれたらいいなと思っていて。犬や猫は非常に素晴らしいパートナーになりますが、一部では、どうしても飼えない人がいる。飼えない理由を聞くと、いろいろあるけど結局ほとんどが「生きているから」なんです。たとえば生き物だからいいのに、生きているといつか死んでしまうし、そうなると悲しい気持ちになるから飼えない。ならば、犬や猫の良い部分を取り入れ、ネガティブな部分は最小化することによって、本当に必要としている人たちに提供しよう。そして犬や猫のように、人の心を支えていくことができればいいなと思っています。

    北川:SmartDrive Carsも同じようなイメージを描いています。友達というよりペットのようなものをスマホで連れて運転すると、情報が共有されて、ポイントがたまる。安全運転して、ショッピングモールにいくと駐車場が安くなる、安全運転しているひとは保険が安くなるなど、ペットを連れて安全運転をすると何かいいことがある。そんなコンセプトにしていきたいと思っていますので、林さんのお話からは学ぶところが数多くあります。

    :過去を遡ると、人が移動をする際に利用していたのは馬です。そして人は馬にも車にも愛情を持って接していた。馬と人間の関係を今後、進化する車では取り戻すことができるかもしれませんね。

    北川:面白いですね。私たちが取り扱っているサービスはフィジカルなものではありませんので、どのように伝えるべきかが意外と難しくて。見習うべき考え方が多いです。着せ替えでおしゃれができるのも、より身近な存在にするためですか。

    :そうですね。昔の車は単に不具合が多かっただけではなくて、手間をかければその分、車が応えてくれていました。今の車は手間暇かけても調子が格段に良くなることはありませんが、昔の車は調整したり、エンジンの回し方を工夫したりすると調子が良くなった。ある意味、気難しい性格だったんです。でも、人って手間がかかることに対して意外とポジティブに考えるところがあり、自分がいないとダメなんだなって、母性や父性がめばえる面があるようです。そこで、LOVOTを好きなるプロセスの中で、愛情を注ぐ1つの“手間”として服が着替えられるようにしました。

    物理的にも、LOVOTは電子精密機器のため丸洗いができませんが、清潔さを保つために服を洗っていただけるようになっています。また生物と無生物の大きな違いでもあるのですが、LOVOTは新陳代謝をしないので傷がついても皮膚のように再生できません。ですので、初めから服で防護をして、服が傷んだら交換していただくのです。

    北川:一つひとつが丁寧に深掘りと言語化されていて、僭越ながら率直に素晴らしいと感じました。

    :御社のアプリも、ずっと命というか、存在があり続けるのが利点ではないでしょうか。車を乗り換えても、アプリの中で情報は生き続ける。そうすると、毎回リセットされることなく、自分が築いてきた車との関係性が蓄積されていきますので、魂が引き継がれことになりますよね。それは面白いコンセプトだなって。

    移動の付加価値は「コトの提案」

    北川:そこを意識して、より良いサービスを提供できればと思います。最後に、スマートドライブへのアドバイスやご意見をいただけますか。

    :実利的な話になりますが、現在は、あらゆる移動手段があるのでA地点からB地点の移動が簡単にできます。しかし、移動最中の体験に付加価値を与えるサービスはほとんどと言っていいほどありません。

    あるとしてもせいぜい、現在地の近くにある飲食店を検索するくらいで。AからBに行くことはわかっているけど、その途中で、そのルート付近ならではといった体験をレコメンドが欲しいというニーズは必ずあるはず。過去の行動履歴からレコメンドはできるし、近隣のおすすめスポットを伝えることだってできるでしょう。

    「以前、検索していたキーワードに関連するものがこの付近にあるので訪れてみては?」とかレコメンドしてくれると、単なる移動経路の検索だけでなく、そこで何に出会えるのだろうというワクワク感を醸成できると思うんですよね。それが完璧である必要はなく、今日は星が1つとレコメンド結果にフィードバックすれば、より精度が高くなっていくでしょうし。

    コトを付与するというか、コトを提案する。「今日は何もすることないから、何か“コト”を提案して欲しい」と、まっさらな状態から言われると提案が難しいですが、少なくとも「A地点からBまで」という成約条件があると、そこにコンテキストが生まれるのでレコメンドもしやすくなるし、ユーザーも選びやすくなる。「今日はいつもより1時間早く出てみたけど、どんなレコメンドがあるんだろう」って。日々、車で移動する楽しみが増えますよね。

    北川:その点も意識しながら精進していきたいと思います。本日はありがとうございました。

     

  • 【対談】ハードウェアがどのようにしてエモーショナルな体験を生み出すのか -前編

    【対談】ハードウェアがどのようにしてエモーショナルな体験を生み出すのか -前編

    インタビュイー:
    GROOVE X 代表取締役
    林 要(はやし・かなめ)さま

    工場で重いものを運んでくれたり、部品を組み立ててくれたり、文句ひとつ言わず淡々と作業をこなす、無機質で便利な存在。ロボットと聞くと、こんなイメージを思い描く人も多いのではないでしょうか。

    しかし、こんな想像を覆す、“人々に愛されるため”のロボットが2019年12月、新たに誕生しました。それがLOVOTです。生命は持たないのに、愛らしく、そばにいるだけでほっとさせてくれるロボット。今回はGROOVE Xの代表であり、LOVOTの生みの親である林要さんとの対談が実現しました。

    最先端技術を詰め込んだロボットは、人にどのような感情を呼び起こしてくれるのでしょうか。

    ちょっと“ダメ”なぐらいがちょうどいい。

    :2015年の11月にGROOVE Xを起業し、4年以上をかけて1つのプロダクトを開発してきました。2019年の12月に出荷を始めたばかりですが、今のところお客様からの評判は非常にいいのでようやくホッと胸をなで下ろしたところです。

    北川:ありがとうございます。それではまず初めにプロダクトのコンセプトや開発の際のメッセージングを教えていただけますか。

    :私たちが開発したLOVOT(らぼっと)は、家族型ロボットとして販売しています。ロボットの語源は、人の代わりに仕事をする機械です。つまり、人に代わって生産力を高めてくれるものだと思われていますので、「それが何をしてくれるのか」が先に求められてしまうのです。しかし効率だけが全てではなく、人を直接幸せにするロボットがあってもいいんじゃないでしょうか。テクノロジーの力で生産性が向上することで、間接的に人を幸せにしてきましたが、生産性の向上を間に入れないでも、テクノロジーそのものが人を幸せにできるようにしたい。そうした思いから生まれたのがLOVOTです。

    北川:非常に面白いコンセプトですよね。スマートドライブでも、人の感情に訴えかけるドライバーエンゲージメントをコンセプトにしたサービスを提供したいと考えています。LOVOTには非常に多くの最先端技術と機能が搭載されていますが、それを課題解決に使わず、可愛らしさや暖かみのある生命感へと反映させたのはなぜでしょう。

    :前職でもロボットの開発を担当していましたが、人の役に立つロボットを頑張って作っても、人の反応が悪いことが意外とあって。一方で、ロボットが予定通り起動しなかったときに、周りの人がロボットを一生懸命応援していた姿を見て、感銘を受けたのです。ロボットが皆の応援を受けて無事に動き出すと、その場の一体感が高まり感動が広がった。完璧すぎず、ちょっとダメなところがある。人間味があるほうが、人はロボットに対して親近感を覚え、ロボットと人の関係もよくなるのだ−−。

    この光景を見て、前々職の自動車会社でも同じような歴史があったことを思い出しました。昔の自動車は頻繁に故障するし、エンジンについている燃料噴射装置が電子制御ではなく機械式のキャブレターで、エンジンをかけるのも大変。しかし、そんなに手間がかかる自動車を、人々は愛着を持って大事にしていました。実は手間が減るほど、存在感の薄いモノになってしまう面があります。時代の変化もありますし、懐古主義に浸るわけではありませんが、人を幸せにする方法は変わりつつあります。車は、いかにシームレスな移動を提供するかというゴールに向かって突き進んでいる状態ですが、一昔前はそのゴールに対するクオリティは低いけど、移動を共にする“相棒”としても一部の人を幸せにしていました。

    人を幸せにするには一方通行ではダメで、双方向の関係性が構築できた方が良いはずです。これを偶然ではなく、必然として実現したいと開発したのがLOVOTです。技術が追いつかず、ポンコツゆえに愛された昔のクラシックカーや安定性のないロボット。どちらも愛されたということは、その要素を人との関係性の中に取り込むことで、人を幸せにできるはずだと思ったのです。

    “ベンリ” と “エモーショナル”のバランス

    北川:人がイヌやネコを飼う時、それが自分にどう役立つか、どれほど機能的かなどと考えることはありませんが、ロボットと聞くと、人より有能で役に立つという印象が先行してしまいます。そうした価値観を変えていくために意識されていること、また、それを伝えるためのコミュニケーションやマーケティングの視点で何か取り組まれていることはございますか。

    :その意味では、一般的なイメージのロボットからまずは離れようと思って、LOVOTという名前を付けました。「ペットのようなロボット」だと、結局はロボットになってしまいますし。LOVOTはLOVEとROBOTを掛け合わせた造語で、実現手段はロボティクステクノロジーですが、目的はLOVEなんです。LOVOTは名前でもあり、カテゴリーでもあるとも考えています。

    お客様へのコミュニケーションの視点で言いますと、実際には様々なシーンで役立つ機能を備えていますが、はじめはそれを前面に出さないようにして「役に立たない」といっていました。それによって、ロボットは便利なものというイメージをもつ人々の気持ちを切り替えるところから始める必要があると思ったからです。また、直感的に良いと思われることが重要ですから、製品づくりや展示ルームの内装にはアーティストの方たちにもご協力いただいています。感性に響くためにはマーケティングにも、ものづくりにもアートとロジックの融合が欠かせません。

    北川:なるほど、アートとロジックの融合は言い古された言葉ではありますが、実際の意思決定は非常に難しいのではと感じました。GROOVE Xはどのような組織体系で、どのように意思決定をされていますか。

    :突拍子も無いアイディアは、たいていプロダクトオーナーの私から出ますが、実現手段を持ち合わせているわけではありません。そこで、フラットな組織が活きてきます。フラットな組織だと、つねに一定量のカオスが生まれます。カオスなのでオペレーションエクセレントにならないですが、組織の壁がない。それが新しい何かを生み出し、実現するためにはよい状態になっていると思うんです。責任者がいて、その人がプレッシャーを感じているが故に、スタッフのお尻を叩き、なんとか実現するのとはちょっと違うというか。

    組織とは関係ない人からポロっとこぼれたアイディアがそのままプロジェクトになるように、アーティストもエンジニアも互いに刺激し合える環境があります。とはいえ、それが全ての面において良いとは思っていませんので、オペレーションをしっかり回すべき部分についてはアウトソースするなどして、切り分けて考えています。

    北川:なるほど。これまでの話と若干矛盾しますが、私がLOVOTの機能で面白いなと感じたのは、ユーザーの“役に立つ”見守り機能です。エモーショナルな部分と役に立つ部分、この2つのバランスはどのように考えてらっしゃいますか。

    :さっと思いつくような機能を持つ役に立つロボットを作るのは案外、難しくて。たとえば、ビールを冷蔵庫から持ってくるロボット。人間にとっては容易な行動ですが、ロボットにとっては冷蔵庫からビールを取り出して持っていくのは意外と難しい行動なんです。LOVOTでは、人間にとっては困難だけど、ロボットならば実現しやすい行動を選びました。たとえば人が疲れた時にそばに寄り添って、甘えて抱きしめられたりすること。人間の場合、ずっと待機することも難しいし、シチュエーションだとか相手が誰かとか、さまざまな要素が関係してそう簡単にはできなかったりすることです。それがLOVOTなら、技術の粋を集めて頑張れば、なんとか実現できる。

    見守り機能は、自動運転の技術を応用することによって、家の中を動き回ることを可能にしました。過去のロボットは、遠隔地から動かそうとすると、リモートコントロールで的確な指示を出す必要がありましたが、これは操作が難しく、一般の方だと自由自在に歩かせることができません。しかし自動運転の技術を使えば、位置を指定するだけで、その場所までロボットが向かってくれます。人間だとうまくいかないのに、現代の技術によってロボットは簡単にこなせてしまう。そうやって、いま時点のロボットの強みをかき集めていますね。

    未来の車に求められること

    北川:LOVOTのコンセプトは、モビリティや移動と近い気がします。

    現在の車は安全に走行するのが当たり前となり、今後、自動運転が一般化してしまうと機能より車内空間での体験や心地よさといった部分が求められていくと考えています。そういう意味も含め、将来のモビリティに対してテクノロジー以外に着目されている部分はございますか。

    :そうですね。重要なのは、人が何に対して快感を覚えるかではないでしょうか。かつて、ドライブする喜びは車との対話にもありました。しかし車との対話が同時に疲労も引き起こしてしまうため、移動の道具としての車からは、対話要素をなくそうとした。それが自動運転につながります。

    自動運転が普及すると、車がドライビングからリビングという空間に変わり、人は理想とする快適なリビングルームを追求するようになる。リビングの要素だけだと移動の楽しさというメリットが活かせないので、流れる景色や現地の情報や外の音、においなどの感覚的な要素と空間としての快適さをどう掛け合わせるかを考えなくてはなりません。

    外を流れる色とりどりの景色。それをどう満喫できるのか。風を感じるリビングがいいとか、外の情報を全て遮断してお気に入りの映画を観たいとか、移動中の地域にまつわる歴史や逸話を感じることで移動したことに対するコンテキストを構築したいとか。その人、その時々によってニーズは変わる。さまざまなニーズに合わせて、柔軟に考えていければ良いですよね。

    北川:自動運転が浸透すれば、ホテルのような居心地の良い空間が選ばれると思っていましたが、どちらかというとホテルよりリビングの方が近いかもしれませんね。

    :「ラグジュアリーなホテルが好き」という趣味嗜好の人はいるでしょうし、ホテルっぽさを求める人もいるはず。もしかすると、そこに足湯とかマッサージが入ってくるかもしれませんね。

     

    >>>後編はこちらから

  • インダストリー4.0、エコシステム… BOLT Mobilityが描く、次世代モビリティ構想

    インダストリー4.0、エコシステム… BOLT Mobilityが描く、次世代モビリティ構想

    インタビュイー:
    BOLT Mobility アジア戦略担当
    下山二郎(しもやま・じろう)さま

    サステナブルでエコ。「BOLT Mobility」とは

    まずは、下山様のご経歴からお伺いできますか。

    ファーストキャリアは、日本電信電話公社(現日本電信電話株式会社/NTTコミュニケーションズ株式会社)に入社しました。大学は法学部に在籍していたので、法律関係の職に就きました。ただ、小さい頃からプログラマーを目指していたので3年で転部し、技術者としてアメリカの研究所でLANやインターネットを支える基礎部分、テレビ電話の仕組みなどを開発しました。同社の国際部に移ってからはグローバルのインターネットの開発に携わり、40歳の時に退職。

    現在では日本を代表するECサイトに成長した企業が、2000年にインターネットでモノを売ることを発表したとき、「この事業は必ず成長するぞ。もしかすると、10年後には百貨店がなくなるかもしれない」と予測しました。実現すれば、オンライン上の決済、つまり買い物をするためのレジの仕組みが必要です。インターネット決済の仕組みを開発し、4年弱で上場を果たしました。それから、現在の会社を立ち上げて今に至ります。

    BOLT Mobilityに関わるようになったきっかけを教えていただけますか?

    BOLT Mobility (当時マイクロモビリティ社)が技術パートナーを探していた時に声をかけていただきました。また、マイクロモビリティ社の主要な幹部の方々はIT業界出身者が多いのですが、私の仲間が多かったことも大きいですね。私はアメリカにも会社を持っていましたし、縁が繋がっていったという形です。

    ただ、彼らが最初に始めたモデルはいわゆる「シェアリング」。私はシェアリングサービスには天井があると考えていましたので、それを聞いた時、少し抵抗がありました。しかし新しいタイプのサービスを作る話がでましたので、「ならば力を貸しましょう!」と手を組むことに決めたのです。

    「BOLT Mobility」についてご説明いただけますか。

    ウサイン・ボルト氏は史上最速、男子100mで世界1位を獲得した歴史的な人物。昔から自然体であることを心がけてきた彼は、エコに対しても非常に関心が高く、環境に悪影響をおよぼす化石燃料に懐疑的でした。そこで、電力にフォーカスします。電力も少なからず環境に影響を与えますが、制御可能で管理しやすいという違いがあります。そういう事実を理解したうえで、前々から何らかの形で電動エネルギーに関わりたいと思っていたと言っています。

    そんななか、彼の考えと近いミッションを持ったマイクロモビリティー社が電動スクーターの事業を開始し、ボルト氏に「乗っていただけませんか?」と声をかけます。ボルト氏と同社のミッションが一致したこと、そしてボルト氏が事業に参画して一員になりたいと希望したことでBOLT Mobilityが創業されました。

    ボルト氏はジャマイカ出身。ジャマイカは島国ですので、ガソリン、化石燃料のサプライチェーンを建てるには膨大なコストがかかってしまうのです。しかし、適正なサイズのモビリティを作るとなると赤字になりますし、大都市向けのモビリティを持ち込むと島の自然が破壊されます。ジャマイカでは実際にそうなってしまったそうです。

    車は競合・競争しながら発展してきたという背景があるのも事実。つまり、車種によってパーツが異なりますので、一度故障すると修理が簡単ではない。ごまかしながら使うか、山中に廃棄するか、二者択一になってしまうのですが、それでは自然を破壊することになってしまう。しかし電動スクーターなら、ガソリンスタンドは不要ですし、島のサイズに合わせたモビリティを作ることができるのです。これは同じ島国である日本も同じです。

    また、小さい島国だと車両の解体工場を作ることさえ大変です。廃棄車両から発生する地球環境への負荷も同時に考えなくてはなりませんから。BOLT Mobilityのスクーターはほとんどの部品が共通パーツで作られています。組み立ての工数も増えますし、コストもかかりますが、長期的な視点で考えるとリーズナブルでエコ。単年度の合理性ではなく、長期的な合理性を求めたところも、ボルト氏がこの事業に惹かれたポイントです。

    独自の概念を貫くBOLT Mobility

    BOLT Mobilityの特徴や強みを教えてください。

    BOLT Mobilityのように、インダストリー4.0、AI、IoTをキーワードにしているパーソナルモビリティーの企業はあまり見かけませんよね。インダストリー4.0は、ユーザードリブンの生産体制に直結させることです。たとえば、都市部と山岳部で電動モビリティを利用する場合、その土地の環境に合わせてモーターのパワーも変えなければ、“本当に使えるモノ”を提供することができません。つまり、生産ラインの中にユーザーの位置情報、ロケーションの情報を送り込むことで、無駄をなくし、適切なモノを作ることができるのです。弊社のモビリティは、個々のパーツを組み合わせた形になっているので取り替えがしやすいのも特徴です。今まででは考えられないかもしれませんが、こうした私たちの思想に共鳴してくださる方は増えてきました。私たちとしても、他社が必要であれば私たちの考え方や技術を喜んで提供させていただきたいですし、みんなで組み上げていくレゴのような世界を作りたいと思っています。

    また、デバイスにIoTとAIがつながることで、健康(医療)とエンターテイメント、防災など、多面的な使い方が可能なプラットフォームを作っていきたいと思っています。ある時は観光用に、ある時は自然災害発生時の避難に、非常用電源としてのバッテリーになったり、街の中を爽快に駆け抜けながら音楽を楽しむエンタメマシーンになったり…。あらゆる使い方を想定したプラットフォームを提唱しています。

    私たちはこのプラットフォームを独占しようと思っていません。実のところ、AIやIoTの開発は非常に難しいものですし、ゼロから開発するのは大変ですので、私たちが開発した部分はシェアリングできればと思います。

    支払い方法についても企業の思想が反映されていますよね。

    支払い方法も多様性を重視しています。使った分だけ支払うのはお得ですが、ワンプライスの方がわかりやすくベストなこともありますから。目標は支払い方法、価値そのものを対価に変えることです。大学などの教育機関では入学金の中に利用料が含まれていて、校内で自由に使えるとか。旅行の場合は航空会社のマイレージで使えるとか。ショッピングモールでは買い物する際のポイントで利用できるとか。スマホの中にはさまざまな形態で経済価値のあるものが眠っていますので、無駄なく使うことができれば経済的にも活性化するでしょう。

    場所に対して貸し出すモデルがシェアリング、人に対して貸し出すのがレンタルですが、二つを掛け合わせても良いわけでしょう? たとえば、アパートの住人で電動スクーターをシェアしても良いですし。統計的にも住人の全員が同時に使うことはほぼありませんので普段は数台で足りるでしょうが、万が一、住人全員でツーリングに行くなら、他で余っている電動スクーターを持って来ればいい。このように、シェアリングとレンタルの間を取った新たな形態でサービスを創造したいと考えています。

    協力しながら最適な組み合わせを作る

    今後、日本での展開はどのように考えていらっしゃいますか。

    電動スクーター、あるいは電動アシスト自転車、電気自動車、さまざまなモビリティがありますので、まずはどの組み合わせがどのマーケットに受け入れられるか、ヒヤリングしたりトライアルしたり、調査をしている段階です。

    他社の電動スクーターやキックボードは、“デバイスドリブン”の部分が大きく感じますが、私としては、マーケットのキャラクターに合わせた最適な組み合わせを探すことの方が重要だと思うのです。もちろん、どちらが正しいという明確な答えはありません。マーケットにピタっとはまるペイメントやメンテナンスの方法をこれから先の未来で描くことができれば、サステナブルなサービスになる。ですので、現在はプラットフォームとしてマーケットに合わせたサービスをどのように提供できるかを重視しています。

    とはいえ、最適な組み合わせは一社単独で作ることが難しい。互いにプラットフォームを共有しあうことで、より良いサービスを作ることができれば非常にありがたいですし、逆に他社で持っている良いプラットフォームがあれば、喜んで使わせていただきたいですね。

    「様々な企業が協力しあいながら、最適な組み合わせを作る」。これはまさに、現在のモビリティ業界で求められているものではないでしょうか。

    そこにこだわる理由は、成功した実例を持っているからです。今では当たり前のようにYouTubeもNetflixも視聴できるようになりましたよね。そこに一役買っているのが光海底ケーブル。19世紀から20世紀にかけて光海底ケーブルができるまで、海底ケーブルは全て電気ケーブルで、1995年に私がプロジェクトを立ち上げて参戦するまで、数社だけで独占をしていました。当時は、日本からアメリカに電話すると数千円もかかっていましたが、もし今もその状態が続いていたら、YouTubeさえまともに見ることはできないはず。

    私は、全世界200を超える通信キャリアに声をかけ、シェアリングの光海底ケーブルのグローバルなケーブルを敷くことを提唱しました。当時は国際ライセンスを所有していないと国際通信事業を営むことができません。ですが、アセットを持つことはできる。私には法律の知識がありましたので、そこをしっかり理解していたのです。そして国会でも戦った末、許可が下り、海底ケーブルを数百社で作ることに。数百社いればコストも等分されるうえ、最先端の技術を反映できる。1995年と2015年で比べると、海底ケーブルは全世界で1億倍の規模に増えましたから、誰もが快適にインターネットを使える世界になりました。

    つまり、インフラは共有すべきところは共有すべきだということです。これは、知恵を出して真正面から戦うところと、戦わずに力を合わせるところを区分けして成功した実証例です。今回はケーブルからモビリティに変わっただけの話ですので、私としてはいつもと変わらないことに取り組んでいる感覚です。

    モビリティの進化にはディストラクティブが必要だ

    今後、モビリティはどのように進化していくと思いますか?

    多様化が進んで行くでしょう。1990年代から多品種少量生産になると言われてきましたが、それだとビジネスモデルが合わないからマス型に戻ると思います。日本では7年に1度のスパンでこれを繰り返しています。今がちょうどパーソナライズや多様化と言われ始めたタイミングですので、2025年の大阪万博までは自分に適合するモビリティを選択できることが一般的になるでしょう。

    ただ、2026年にはそれがピークを迎えて、いくつかの問題が出てくると考えています。1つが先述したインダストリー4.0。生産性と合理性が頂点に達し、これ以上は利益が出ない、拡大しないとわかれば、次のモデルに移行しなくてはなりません。次のモデルは多様化やパーソナライズではなく、全く異なる新たなジャンルが生まれます。なぜなら、個人という言葉は1つの側面で定義することはできないものだからです。会社で働いている自分、麻雀をやっている自分、ヨットに乗っている自分、1人の人間をパーソナライズしようとしていても無限の可能性がありますし、いつか必ず限界がきて無駄なことだと気がつく。ですから、次にやってくるのは人でもない、場所でもない、「オケージョナライズ」の時代です。

    モビリティ業界に求めることは。

    海底ケーブルの時と同じで、ディストラクティブなリーダーが舵を取るべきだと思います。法律や電動バイク免許の話ばかり耳にしますが、本質はそこじゃない。一言でいうとギルド、権益です。ギルドの弱点を見つけ出すことが「最適」になるからです。マーケットが成長すると、どんなものでもギルドができる。そのギルドは自らがギルドであるがゆえに致命的な欠陥を必ず持っています。ですので、そこを突けば簡単に壊すことができるのです。

    「ディストラクティブが次により良い世界と雇用を創出する」というのが私の持論です。限界点は必ずありますが、それを固持してしまうと必ず社会が悪化する。ですから、破壊と創造が大事。そうすることで世界は必ず良くなります。

    スマートドライブとのコラボレーションについてどうお考えでしょうか。

    スマートドライブ社のことは数年前から知っていました。知り合いの工事会社の社長から「社員がどこにいるかわからず、連携を取りづらい」と相談されたので、「スマートドライブのデバイスをシガーソケットに挿せばリアルタイムでわかるよ」って。ただ、その社長が「GPSの精度が気になる」と言い出して。「そこが重要ではない。まずは導入して社員のモチベーションをディストラクトして、生産性とは何かを理解すること。それから次のステージへ行くべきではないか」と伝えました。

    おそらく、本質からズレている方が多いと思います。だって、GPSの精度が上がったからといって、売上が増えるわけではありませんから。しかし、車両管理システムという仕組みを導入することで、生産性を本質から考え、データをもとにモチベーションを醸成することができる。だからスマートドライブが提供するサービスは素晴らしいなと思うんです。

    スマートドライブと連携して、社会を良い方へ変えながら、収益も上げられるサービスを作っていきたいと思います。

  • リスクマネジメント・クライシスマネジメント・BCPとは

    リスクマネジメント・クライシスマネジメント・BCPとは

    物流・運送業者にとっての生命線は、「人やモノを安全かつ確実に運ぶこと」ですが、交通事故や自然災害といった障害が発生すると、事業に支障をきたすばかりか最悪の場合、事業継続そのものが困難になることもあります。企業が被るダメージを最小限に食い止めるため、「リスクマネジメント・クライシスマネジメント・BCP」が不可欠ですが、事業主や管理者の中には、それぞれを混同して捉えているケースも少なくないようです。

    リスクマネジメントとは

    物流・運送事業を進める上で起こりえる障害のうち、ヒューマンエラーによる交通事故や受・発注ミス、システムエラーによる情報漏洩や機械・設備の機能不全など、サプライチェーンに混乱をきたす悪い事象をリスクと呼びます。リスクはよく「危険」と解釈されていますが、本来は「悪い事象が起こる可能性」という意味を持っており、物流・運送業に限らずあらゆるビジネスにおいて、「リスク0」で利益を上げることは不可能です。

    そして、リスクマネジメントとは悪い事象が発生する可能性を、次のような事前策を講ずることで低下させ、かつ発生時のダメージを最小限に食い止める機能を、組織に持たせるマネジメント活動のことを指します。

    • ヒューマンエラー・・・社員教育、労働環境改善、人員補充、ドライブレコーダー・衝突被害軽減ブレーキ導入など。
    • システムエラー・・・日常的メンテナンス、IT活用、一部業務のアウトソーシングなど。

    物流・運送業におけるリスクマネジメントのポイントは3つ。1つはデータ収集・分析による「リスク発生領域の把握」です。エラーが頻発する部署は教育徹底・人員補充・システムの見直しが必要ですし、改善されない場合は縮小や撤退も考慮すべきだと言えるでしょう。2つ目は「リスク軽減」であり、商品管理・運送ダイヤなど重要データのバックアップや、停電によるシステムダウンから速やかに普及できる予備電源確保などがそれにあたり、ハッキングによる情報漏洩を防ぐ対策ソフト・ソリューションの導入も必要となります。

    3つ目が「リスク分散」です。どれほど事前策を講じてもリスクは必ず発生しますから、万が一に備えて自動車保険を拡充しつつ、事業継続に欠かせない部署かつ縮小・撤退が困難なら、企業戦略として3PLの導入を視野に入れるのも良いでしょう。

    クライシスマネジメントとは

    クライシスマネジメントとは、頻発する大規模自然災害や、国際情勢の緊迫化によるテロ・紛争など、企業の存亡を左右しかねない「危機的状況(=クライシス)」に直面した際、組織としてどのような行動・対応で乗り切るのかを決定・管理することを言います。

    リスクと異なり、「クライシス」を予期することは不可能に近いもの。発生率は低いものの企業が被るダメージは甚大であるため、いつか必ず起きることを前提に「事後策」を練っておくべきでしょう。とくに物流・運送事業は、水道・電気と並び国民生活を支える「ライフライン」であるほか、海外に拠点を持つ企業の場合はテロ・紛争の脅威にさらされる可能性も考えられるため、より綿密なクライシスマネジメントプラン(CMP)を立てておく必要があります。

    具体的には「人命尊重」を最優先したうえで、

    • 危機発生時の人事体制
    • 意思決定プロセスの確立
    • 緊急連絡手段及び避難方法・場所の確保
    • 普及作業の役割分担
    • 優先すべき業務順位の決定

    などCMP発動から事態終息までのタスクを盛り込み、一刻も早くサプライチェーンの復旧を目指すのが社会的使命とも言えるもの。また、国際的コンサル企業である「デロイトトーマツ」は、CMPについて

     

    Readiness(準備)・・・組織横断的な体制やガイドラインの整備はもちろん、有事に機動性を発揮できるようシミュレーション型訓練を実施するステージ。

    Response(対処)・・・設備破壊だけではなく、レピュテーションの毀損も含め、クライシスによる損害を最小限にとどめるため、社内外のリソースをフル活用しトップダウン方式で諸活動を進めるステージ。

    Recovery(回復)・・・事態沈静化後の事業・信頼回復、及びクライシスの真因追究と再発防止策を懸案し、場合によっては組織再編なども見据えながら、平時の状態にできるだけ早く復旧させるステージ。

    の「3ステージ」に分けて考えるべきだと提唱していますが、いつ起きるかわからないクライシスを、マネジメント対象にしている国内企業はさほど多くないのが現状です。同社が日本の上場企業を対象として実施した調査によれば、全社的なCMPを策定しているのは46%程度にすぎず、半数以上が検討中もしくは策定していない状況だと言います。中でも、日常業務に追われている中小企業の場合、おそらく策定率はもっと低い水準だと考えられます。

    CMPを軽視し、人的被害・二次災害を引き起こした企業の評判は地に落ちますが、迅速な初動と対応によって被害を最小限に食い止め、可能な範囲で一部業務を継続・社会貢献した物流・運送業者の中には、その後急成長を遂げたケースも多々あります。つまり、クライシス発生時こそ企業の真価が問われる訳ですが、ないがしろにしているとは言わないまでも、CMPの策定まで手が回っていない物流・運送業者が、まだ多いのも事実です。

     

    しかし、物流・運送業において起こりえるリスク・クライシスは

     

    1. 経済環境の変化(人件費・車両購入費・設備維持費・燃料代の高騰)
    2. 大規模災害の発生(地震・台風・豪雨・疫病)
    3. 紛争・テロへの遭遇(海外拠点だけではなく情勢によっては国内での発生もありうる)
    4. 法律・規制の改正(道路交通法改正・規制緩和・交通違反罰則強化)
    5. 不正・犯罪への遭遇(金融犯罪・財務報告の虚偽記載・贈収賄)
    6. 製品・サービス品質低下(サプライチェーンの寸断・取引相手との関係悪化)
    7. レピュテーションの毀損(風評被害による売上高激減)
    8. システムダウン(サイバー攻撃・ウイルス感染・情報漏えい)
    9. 人材・労務関連(人材不足&流出・労務環境悪化・働き方改革への対応)
    10. ガバナンス不全(ワンマン経営による内部統制不全)

    など多岐にわたり、企業規模が大きくなるほど対策すべき範囲が広がるため、まだCPM策定に着手していない場合は一刻も早く取り組みを始めるべきかもしれません。

    BCP(事業継続計画)とは

    BCPとは、事業継続計画を意味する「Business Continuity Plan」の頭文字を取った略語であり、仮にクライシスが発生しても重要な事業を中断させない、あるいは中断しても可能な限り短時間で復旧させるための、方針・体制・手順を示した計画のことです。

    大規模な自然災害やテロなどが発生した場合、車両やドライバー・作業員の不足、交通インフラ(道路・信号)の混乱、オフィス・倉庫・機材などの破壊と損傷といった経営資源が被災によって活動能力を失うため、全ての業務を平常レベルで維持することが困難になります。そのような事態に備え、数多くある業務の経営に与える影響を分析、限られる経営資源をどの業務に割り振り継続させるのかを決め、被災規模に沿った具体的な人員・車両配置計画や、継続・復旧に要する時間やコスト算出し「マニュアル化」する施策がBCPです。

    BCP策定のポイント1 「防犯体制の現状把握」

    計画通り機能するBCPを策定するには、災害発生時どの程度の活動能力が確保できるのか、現状の防災体制をデータ化・分析することで把握し、事業継続・復旧するため不足している課題を、事前にあぶりだしておく必要があります。

    たとえば震度6強の大型地震が発生、施設・車両破壊や従業員が出勤不能に陥った影響で、A社の防災体制では平常時の「5割」しか、活動能力をキープできないと仮定しましょう。

    この時、A社が経営破たんしないため継続すべき業務規模が5割以上だったとすると、現体制を改善しないままマニュアルを作成しても無意味です。速やかに各施設も耐震強化や非常用車両・人員確保など、最低限の活動能力を維持する施策を実行する必要があります。

    BCP策定のポイント2 「企業パワーに即した目標の設定」

    災害発生後、多くの業務を継続・早期復旧することが望ましいものの、策定したBCPに無理があるとかえって現場が混乱し、事業縮小や廃業を余儀なくされる可能性もあります。それを防ぐためには、優先してすべき中核業務を絞り込み、適切な継続範囲及び復旧時間の目標を設定したうえで、緊急時に提供できるサービス水準について、顧客と事前に協議することが必要です。

    出典;中小企業庁「企業の事業復旧に対するBCP導入効果のイメージ」

    また、一般的に業務マニュアルはペーパーレス化した方が管理・浸透しやすいものの、停電などの事態に備えBPCに関しては電子化だけではなく、全社員がいつでも閲覧可能な「実文書マニュアル」も準備しておきましょう。

    それぞれの相違点と必要な理由

    まず、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの違いとして、前者が「事前策」・後者が「事後策」である点を指摘できますが、リスクマネジメントは事前策・事後策を兼ねるべきという考えから、後者は前者の一部に過ぎない意見もあります。

    しかし、東日本大震災の発生以降、調査・研究に基づく事前策を講じても、個人・組織へ甚大な被害をもたらすクライシスは、「身近に迫っている危機」という考えが根付き、予見・回避可能なリスクより厳重に管理すべきという風潮も広がっています。地震大国である日本においては、悪い事象が起こる可能性をリスクマネジメント(事前策)で極力摘み取ったうえで、避けることのできない危機による被害を最小限に食い止めるクライシスマネジメント(事後策)を同時に徹底する必要があるのです。

    また、CMP・BCPともにクライシス発生時における対応策という点は同じですが対応範囲が異なり、前者が事態発生から終息までを網羅した計画なのに対し、後者は事業継続に関わる部分に特化した行動計画であり、CPMの一部として組み込むべきものです。

    つまり、BCPはCPMありきで初めて機能する行動計画であり、同時にBCPを組み込んでいないCPMは、クライシスの嵐が過ぎ去るまで何もせず待つだけの、単なる「避難計画」に過ぎません。企業・組織を「帆船」に例えるなら、リスクマネジメントによって「耐波性」を高め、CPMの発動で素早く帆を畳み「転覆」を防ぎつつ、BCP計画に沿って的確に「舵を切る」ことで、クライシスという「大嵐」を乗り切ることができるのです。

    まとめ

    行政・医療機関や大企業を中心に、近年浸透しつつあるリスク・クライシスマネジメントですが、中小企業の多い物流・運送業界では人材資源(スキル・人数)の不足が主な要因となり、危機管理体制構築・整備が不十分であるケースも多いようです。

    完璧な危機管理なんてこの世に存在しませんが、従業員の防災意識を高めるだけでも危機回避効果はありますから、今回の記事を参考にリスク・クライシスから会社を守る、危機管理体制構築・強化を一歩ずつ進めていきましょう。

  • UXのプロフェッショナルが説く、MaaS時代に必要なUXの視点

    UXのプロフェッショナルが説く、MaaS時代に必要なUXの視点

    現在、大変革期の真っ只中にあるモビリティ業界。あなたもすでに何度かMaaSやCASEといった言葉を耳にしていることでしょう。今までにない概念をもとに新たなサービスが次々と誕生する中、「新たな言葉や概念を浸透させるには、共通言語が必要である」と唱えるのは、株式会社ドッツでスマートモビリティ事業推進室長を務める坂本貴史さんです。UXデザインのプロフェッショナルとして、講師や執筆を数多くこなしてきた坂本さんに、MaaSを浸透させるために必要なUXの視点について伺いました。

    インタビュイー:
    dots inc. スマートモビリティ事業推進室 室長
    坂本貴史(さかもと たかし)さま

    ユーザーの体験をプロデュースする

    坂本さんのご経歴とdots inc. について教えてください。

    私のキャリアはDTPデザインのグラフィックデザイナーからスタートし、時代の変化とともに、2000年からWebを中心としたデザインに携わるようになりました。2002年にネットイヤーグループというデジタルマーケティングの企業にて、大手企業のクライアントにWebやアプリにおける戦略立案から制作・開発を担当。そして、ここから徐々にデジタルマーケティング支援(コンサルティング)に関する専門的な仕事も増え、同時期にWebデザイン系の多く書籍に共著として参加しています。代表的なものは、「IAシンキング Web制作者・担当者のためのIA思考術 」「IA/UXプラクティス モバイル情報アーキテクチャとUXデザイン」「UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン」など。また、セミナーの講師として年間60本ほど登壇しました。

    プロジェクトに関わる中で、自分自身がものづくりをする方向へとシフトチェンジしたいと思い、自動車メーカーの日産自動車へ転籍。先行開発でコンセプトカーに関わる部分、インパネやコクピット周り、HMI(Human Machine Interface)のデザインなど、同社ではUXリサーチをしながら、インタラクションの設計を担当しました。昨年開催されたモーターショーやCESに出展されたコンセプトカーは、私も関わったプロダクトです。

    現在はdots inc.という会社でスマートモビリティ事業推進室を立ち上げ、主な顧客である鉄道事業者のMaaS事業を支援しています。dots inc.は主にWebサイトを起点としたデジタルプロダクトの企画支援する企業です。イメージはプロデュースに近いでしょうか。わかりやすい事例でいえば、観光に即した車両(観光列車)の企画開発やプロモーション、Webサイトの設計などに関わっています。

    車両を製造しているわけではありませんよね?

    そうですね、私たちが携わるのはあくまで企画や設計部分です。たとえばSL銀河(JR東日本)。この車両内には列車では初の光学式プラネタリウムが搭載されています。ユーザーの車内体験をより一層良いものにするためにはUXの視点が重要ですので、今までの経験と知識を活かして、このような企画の提案や導入へのプロジェクト進行を一緒に行っています。モビリティ業界以外にも、一般企業のデジタル戦略支援や外食系企業の商品企画などもしています。

    坂本さんが関わっているモビリティ関連の事例を教えてください。

    直近では、観光型MaaSの取り組みに参加しています。このプロジェクトでは、国内旅行をより便利に、よりスマートにすることを目的に、各々の場所で使えるフリーパスチケットの購入や買い物する際の割引やクーポン、レンタカーの予約などがウェブで完結できるようにしています。弊社ではそのプロジェクトに参加して、地元担当者とのワークショップ開催や企画支援をしています。

    また、観光型MaaSとは違いますが都市型MaaSの戦略立案にも関わっており、複数のワーキンググループを支援しています。ですので、今のところ私が関わっているのは、鉄道事業における観光型MaaSと都市型MaaSのに携わっていることになります。

    共通言語を作るために開発された「MaaS×Card」

    ここからは、坂本さん個人の活動を伺えればと思います。昨年、MaaS×Cardのクラウドファンディングを実施されましたが、そもそも、MaaS×Cardを作ろうと思ったきっかけを教えてくださいますか。

    話は自動車メーカーに所属していた時代まで遡ります。私はそれまでデジタルマーケティングの視点でUXデザインを本業にしていましたので、当然ですが同じような視点で話せる人が少なかった印象があります。そのため、プロジェクト関係者との意思疎通に多くの時間を要していました。

    従来の自動車メーカーにおけるデザインプロセスだと、ハードが先に決まっていたり、UXと言っても話の中心が狭義な部分になってしまいます。そもそもマーケティング(車の意味)としてどうなのか、ユーザー体験(乗る前から降りた後まで)はどうかといった視点が欠けてしまうのです。新たな提案をするには、むしろそうしたマーケティングやユーザー体験の設計が重要ですし、カスタマージャーニーの各段階で、ユーザーのさまざまな利用シーンを想起できなくては、サービスはデザインできません。そこで、誰とでも意思疎通ができるための共通言語が必要だなと考えました。その思いを実現しようと、メーカーから今の仕事に移ってから、開発したカードをクラウドファンティングで公開しました。

    このような課題は多くの企業や自治体でも発生しています。フィンテックなどもそうですが、新しいキーワードや概念を取り入れ、実現させるには、共通言語を作るところからがスタートだと思います。わたしの経験と同じように、何も知らない、わからない人が新しい企画やサービスを始めるのに、役に立つ道具として、MaaS×Cardを作りました。

    坂本さんのエピソードを伺って、コンビニコーヒーの話を思い出しました。コンビニに設置されているコーヒーマシンは見た目が洗練されていてオシャレですが、当初は「使い方がわからない」と声をあげる人がたくさんいた。結果、マシンには「あつい」「つめたい」というテプラがペタペタと貼られ、オシャレな見た目が台無しに。ただしこれは部分的な話であり、サービス設計としては秀逸なため、広義のUXとしては成功しています。

    本来、既存の事業を進めるレイヤーと新規事業を進めるレイヤーは全く異なるものです。参画者全員が「これは新しいサービスの話」だと頭を切り替えることができれば話は別ですが、実際は難しい。

    デジタルエージェンシー時代にワークショップをいくつも開催しましたが、初めにカスタマージャーニーを作ることで、身近な話として捉えることができたり、既存事業に関わっている人が頭の中でチャネルを切り替えられたり、新しい企画を考えられる流れを作ることができたので、この手法をMaaSやモビリティの切り口としても応用していこうと考えています。

    MaaS×Cardを利用することで何が変わるでしょうか。

    MaaS×Cardとは、表面にユーザー体験のイラスト、裏面にその時に必要なソリューションのヒント(解決案)を書いたカードで、MaaSのように新たな概念や分野を直感的に理解しやすくするものです。

    これを用いることでMaaSに関する知識(デザインする範囲など)が身につきますし、そこで得た知識をベースに共通言語を作ることができますで、トッカカリとして非常に始めやすいと思います。MaaSと聞くと「自動運転 × ●●●」という技術の話だと解釈される方がまだまだ多くいらっしゃいますが、そもそも“移動”は技術の話ではなく、人が車に乗る前から車を降りた後もまで続く体験を指します。このように説明すれば、みなさん「そうだよね」と頷いてくださいますが、そうした視点の切り替えをしないままだと乗り物ありきや技術ありきで考えてしまいます。しかし、このカードを使えば、さまざまなシーンを想起しながら移動全体を俯瞰して見ることができますから、技術ありきに偏ることもなく、体験ベースで移動について考えることができます。

    また、利用者の視点も大切です。たとえば、運転する前と運転した後について「旅行者であれば、初めて訪れる観光先でどんな問題が発生するのか」「サラリーマンだったら、この後どのような行動をとるのか」など、利用者とその行動パターンについて考えていくことで、特定の課題も発見しやすくなります。

    モビリティやMaaSという言葉をまったく知らない人でも、移動における「体験」と、そこにおける「課題」を発見するきっかけを作ることができますし、見つけたものを自社のサービスや業務に落とし込んでいただくことができれば、開発者としては非常に嬉しいですね。

    どのような方たちにMaaS×Cardを使っていただきたいですか。

    地方の交通や移動について考えている人、交通や移動にまだ興味を持っていない人にもぜひ使っていただきたいツールです。デジタルやデザインを活用することで、自分たちでも解決できることが多いと気づいていただくことが目的ですね。大事なのは、モビリティを介して課題解決ができる、何かを変えることができると思っていただくことであり、何より「自分たちで変えられる未来」を実感して欲しいですね。

    そうした思いから、地元の人がモビリティやMaaSを語り、イベントや取り組みを進めるためのベースとなる場所を用意しています。実際に、京都や名古屋ではすでにイベントも複数回開催しています。地方の活性化と言うと壮大なテーマに聞こえますが、私個人でできる活動を一歩一歩進めている感じです。

    新モビリティ時代、人々のライフスタイルはどう変わっていく?

    坂本さんが今後、取り組んでみたいことや目指すことは。

    私自身はモビリティ体験の向上に貢献し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を前提に、異業種間同士のコラボをどんどん推し進めていきたいですね。シェアカーの仲介業かもしれないし、モビリティを介した保険業かもしれませんが、いずれにせよ新サービスを生み出すプレイヤーになれればと。そして、究極的には自分で未来の車を作れたら最高ですね。

    ありがとうございます。最後に、スマートドライブへ一言お願いします。

    スマートドライブは現在、移動体のさまざまなデータを取得・分析されていますが、車内空間の過ごし方をデータで取得いただけないかなと思っていまして。所作データの取得は非常に難しいと理解はしていますが、ユーザー体験の専門家としては、「窓を開けた」時に「なぜ窓を開けたのか」、すべての行動における理由や原因をあらゆる角度から突き詰めて追求したいため、所作の数値化に興味があります。モビリティが大きく変わっていく中で、人々のライフスタイルがどう変化していくのか見ていけると嬉しいです。

    たとえば、電車に乗っていると車両の外側を向いてつり革につかまりますよね。あれは一つの習慣です。車だとみんな進行方向を向いていますよね。これが自動運転になって、必ずしも進行方向を向く必要がなくなったら、人々はどうするのか、どこに抵抗感を覚えるのか。そうした人々の心理状況は知りたいですし、車内空間のデータを取得することで所作の予測ができようになれば、新たなサービスが生まれるかもしれません。

    今回お話を伺ったUXの達人である坂本さんが開発した「MaaS×Card」。来たる3月5日、このカードを用いた実践型のワークショップを開催します。MaaSに携わっている方、MaaSをもっと知りたい方など、このインタビューを読んで興味を持ってくださった方は、ぜひともご参加ください!

    <ワークショップは終了しました>

  • ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -後編

    ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -後編

    前編では創業の経緯や製品の特徴についてお話しいただきましたが、後編ではPyrenee Driveの技術がどのように事故を減らしていくのかを伺います。

    ヒューマンエラーをなくすための機能を搭載

    Pyrenee Driveは実際、どのようにして事故を防ぐのでしょうか。

    Pyrenee Driveは、事故原因の大半を占めるヒューマンエラーを無くすことを目指した製品です。

    たとえば、目の前で自転車に乗った子どもが飛び出してきたとしましょう。Pyrenee Driveは、自転車がどのような動きをするかを予測して、このままだとぶつかると判断したら早めに感知してお知らせします。ですので、この場合は飛び出した瞬間くらいの早いタイミングで「自転車に注意!」と音声アラートで通知します。

    走行時のドライバーの視野角は一般的に35度と言われていますので、この角度の外側ははっきりと見えていません。そのうえ、考え事をしている時や急いでいる時はさらに視野角が狭くなります。コンピューターの利点は、中央に位置するものも端にあるものも全く同じように見ることができることですので、その強みを活かしたドライバーのサポートをしたいと考えています。

    私個人も自分の不注意でヒヤッとした経験があります。多くの車が行き交う道路で右折しようと待っていた時に、直進車に気を取られ過ぎて、目の前にいる歩行者に気がつかなかったんです。その時は助手席に人がいて声をかけてくれたので何もありませんでしたが、少し間違えれば大変なことになっていたはず。視界には入っていたのに、意識が向いていなかったため“見えなかった”んです。

    Pyrenee Driveはまさに、その助手席の人を目指しています。人ですと一度に複数のものを把握することはできませんが、コンピュータなら人が対応しきれない部分をしっかりフォローすることができる。最終的な判断能力はまだまだ人の方が上ですが、認識能力はコンピュータの方がずっと高い。そうした利点を最大限に活かせばドライバーの良きパートナーになれるはずです。

    また、内側にもカメラが付いており、ドライバーの目や顔の向きを捉えて危険を察知できるようになっています。ドライバーがよそ見していると「前をみないと危険ですよ」と音声で注意を促します。

    そのほかには、「前方注意です」「追突注意!」「歩行者が目の前にいます」といったアラートがあります。

    交通事故は①見落としなどの原因があって②人や車にそのまま向かい、③最後ぶつかるという流れで発生しますが、Pyrenee Driveは①の原因を潰すためのもの。最近では安全支援システムの精度が向上し、ぶつかる瞬間にブレーキが作動するものもありますが、その前である「原因」の段階でドライバーに通知して事故を防ごうという考えです。

     

    それに加え、利用者が経験したヒヤリハットやアラートが鳴った地点など、危険な場面のデータをクラウドに集めて、ディープラーニングの追加学習を行います。AIは学習量が増えれば増えるほど認識能力や予測能力が向上するため、運用しながら事故を防ぐ能力を継続的に高めていく設計になっているのです。

    仕事でも、ダブルチェックを行うことで見落としを劇的に軽減できますよね。1%の見落としは、2人で行うことで0.01%になる。ダブルチェックの法則を活かしてちょっとした見落としも大幅に減らしていきたい。売ったら終わりではなく、購入いただいた後も性能を常に高めていくことで、もっともっと事故を減らしたいですね。

    他にはどのような機能や特徴がありますか。

    カーナビ機能も追加する予定ですし、スマホとつないで通話ができたり、音楽を聴くことができたりするなど、ドライブの時間が日常的に楽しくなる機能も含んでいます。

    車両と歩行者の情報がつながればもっと安全な社会が実現する

    中長期的にはどのような目標を掲げていますか。

    まずはPyrenee Driveをソフト面、ハード面ともに進化させ、法人個人関係なく多くの方に利用いただけるようにしていきたいですね。そして、さらに安全な社会を実現するために、歩行者が利用しているウェアラブルのデバイスやスマホアプリなどと連携し、歩行者と車両と双方向で通信のやりとりが自動でできる世界を作りたい。

    見通しが悪い交差点で、ドライバーから何も見えていないとしても、ウェラブルデバイスやアプリを使っている人が近くにいれば、その情報をキャッチしてドライバーにアラートを出して注意喚起することができる。そうすれば、ほんの些細な不注意で起きるような事故も防げるのではないかと考えています。

    2020年に発売開始とのことですがどのような方にご利用いただきたいですか。

    Pyrenee DriveはB2BとB2Cと同時展開していく予定です。B2Bの法人向けで想定しているのは、物流系の企業様の利活用。なぜなら輸送トラックは大型のものが多く、被害が大きな事故につながりやすいからです。並行して、交通手段として日常的に利用されるバスやタクシーにも事故防止や事故低減の機能を提供していきたいと思っています。ドライバーの様子も内側のカメラで感知できますので、眠そうな表情を感知したらドライバー本人に直接声をかけたり、事務所や営業所に通知を送って注意いただいたり、2人交代制の長距離バスは早めに交代を促したりするなど、状況に応じた適切な事故防止対策が行えればと思います。

    スマートドライブとのコラボレーションすることでどんなことを実現できるでしょうか。

    Pyrenee Driveは事故を減らす・防ぐことに特化した製品です。スマートドライブが持つ車両管理やテレマティクスシステムと共同することで、お客様に対して「安全と効率的な管理」というより大きな価値を提供できるのではないでしょうか。

  • ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -前編

    ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -前編

    インタビュイー:
    株式会社Pyrenee
    代表取締役 (CEO) 三野 龍太さま

    人の命を守るもの、世の中の役に立つものを作りたい

    まずは三野さまの自己紹介をお願いします。

    株式会社Pyrenee(ピレニー)で代表を務める三野龍太(みの・りゅうた)です。私のファーストキャリアは、建築工具メーカーでの建築工具や建築機械の製品開発です。ここで多くの苦労と楽しさを経験しながら製品づくりに10年ほど携わりました。

    建築工具にはどのようなものがありますか。具体的な事例があれば伺いたいです。

    たとえば、ビルの中に設置されているエアコン。エアコン自体は大手メーカーが作りますが、それを新築のビルに設置するには、室内機と屋上に並んでいる室外機の間をパイプでつながなくてはなりません。この時に数多くの機械類と工具類が必要になりますが、そこで利活用できる製品を作るのが当時の仕事でした。

    私が担当していたのは、ビルの建設現場で困っていたり、必要とされていたりするものを探し出し、それを解決するための商品を開発すること。当時のエアコンにはフロンガスが使われていて、室内機と室外機の間を通るパイプの中を循環して作動していました。部屋から屋上までをつなぐパイプは建物によって何十メートル、何百メートルにもなりますが、配管をつなぎ合わせる際、どこか一つに溶接箇所に漏れがあるとフロンガスが漏れ、エアコンが効かないどころかオゾン層を破壊することになってしまうのです。それに、建設後に漏れが発覚すると、壁を剥がすなど、大変手間のかかる作業が発生してしまいます。そこで最初の時点で漏れをしっかり感知できるように、工具セットを作りました。これはフロンガスを入れる前に無害な窒素で圧を入れ漏れがないかを圧力で確認できるというニッチな製品です。前職ではこのような製品をいくつか開発してきました。

    なぜ、ご自身で起業されたのでしょうか。

    自分で全てをプロデュースしたいという思いが強かったからでしょうか。退職してから、まずは妻と一緒に小さな雑貨メーカーを創業。ここでは大きなシリコンでホールドして高さや角度を自由にできるiPad用のスタンドや、子供が頭をぶつけないようにするためにドアノブのカバーなどを作り、インテリアショップや東急ハンズ、ロフトに卸していました。

    しかし雑貨を作る中で、もっと作りがいがあって誰かの役立つ製品を作りたいと思うようになって。一念発起してPyreneeを創業したのです。やりがいのある、作りがいのある製品とは何か。その問いから真っ先に浮かんだのが人の命を救ったり助けたりできる製品でした。この製品やサービスのおかげで危険から身を守ることができた。そう思われるように、人の命を守る製品を作ろうとここから新たな製品開発に勤しみます。

    人の命を救う製品と聞くと、エアバックや防災グッズなどさまざまな製品が考えられますが、その中でドライブレコーダーを選ばれた理由は?

    私は大型犬を飼っていることもあって、都内でも毎日のように移動時は車を利用しています。ただ、便利ではありますが、車の運転は常に危険が伴うものです。悲痛な事故のニュースもよく目にしますし、道路へ出ると小さな子どもが走り回っていたり、横断歩道を使わずに道路を縦断する人がいたり、こちらが注意深く前を見ていても予測できない事態が発生するので気が気じゃありません。運転していても、万が一交通事故に遭遇してしまったら怖いなという気持ちをずっと持っていたんです。

    そこで改めて交通事故について調べてみると、事故の原因のほとんどがドライバーのヒューマンエラーで起きている。ならば、そのヒューマンエラーを無くすための装置を作ることができないかと考えたのです。ドライバーの隣で道路を確認しながら見落としや判断ミスを激減させるパートナーを作ろう。AIを使って道路上の物体を認識し、危険予測を行えないだろうか。そう思いついて技術的なことを調べた結果、実現可能だとわかって即時開発に着手しました。

    ドライバーを守るアシスタントとして

    現在開発中のPyrenee Driveについて特徴などをお伺いできますか?

    コンセプトはドライバーのアシスタントになること。ドラレコの機能もありますが、あくまで危険を察知して事故を防止するためのアシスタントと位置付けています。重要な部分の技術開発は終わり、今は最終的な開発の部分と量産化できる体制を整えている段階です。2020年中のリリースを予定しています。

    製品自体はドライバーの正面、もしくはダッシュボードの中央に固定した状態で利用していただきます。ステレオカメラを搭載していますので、3次元で道路上を撮影できることが大きな特徴ですね。

    3次元での撮影にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

    交通事故を防ぐにはドライバーが運転しながら現状を認識しなくてはなりませんが、その際に重要なのが、歩行者や他の車の現在地と自分から見てどの向きで進んでいるかという位置関係の変化を知ることです。ステレオカメラではその位置関係が3次元で見えますので、自分と歩行者、車との位置関係の変化が正確に把握できるんです。逆に言うと、ステレオカメラでなければそれら位置関係が把握できません。

    ステレオカメラのドライブレコーダー自体、ほとんど見かけませんよね。

    ステレオカメラを使えるようにするには非常にシビアな調整が必要なため、後付けで製品化するのが難しいのです。私たちはAIの物体認識とステレオ処理の2つを組み合わせることでその難問を解決しました。また、Pyrenee Driveのもう一つの特徴が強力なGPUを内蔵していること。これがあることで、走行中の状況認識と危険予測というAIの重たい処理を遅延せずリアルタイムで行うことができます。これらによって、車線のはみ出しを確認しつつ、高精度で車・歩行者・自転車・バイクを認識し、その動きを追跡することができるのです。

     

     

    人と車、それぞれ分けて認識しているのですね。

    車に関しては3次元認識で他車がどの方向を向いているか、枠で囲うだけでなくティッシュ箱のように立体のボックス上で認識をしています。これは、人が車を見る時に無意識に認識しているのと同じ状態。道路上の人や車を認識するAIシステムは他にもあるようですが、3次元認識ができる製品はほとんどないのではないでしょうか。このカメラでは距離も正確に測ることができるんです。

    >>後編へ続く

  • 現役ドライバーに聞く!安全運転の心がまえとコツ

    現役ドライバーに聞く!安全運転の心がまえとコツ

    インタビュイー:
    株式会社フーディソン  魚ポチ号ドライバー
    佐々木貴則さま

    2019年末にSmartDrive Fleetのユーザー企業に対して実施した安全運転運転キャンペーンを実施しました。本キャンペーンでは、安全運転スコアが高いドライバーをきちんと評価しすることを目的としています。

    株式会社フーディソンにてセールスドライバーとして活躍する佐々木様は、非常に高い安全運転をスコアとなっており、普段の業務を行う上で気をつけていることや、安全運転のコツなどをうかがってきました。

    世界の食をもっと楽しく

    まずは、佐々木様のご経歴について簡単に教えていただけますか?

    以前はロードバイクの選手として活動しながら運搬系の仕事をしていました。ロードバイクは大学3年の時にはじめて6年間続け、プロツアーにも参戦しました。現在は魚ポチのドライバーとして、バイヤーが全国から仕入れた魚を現場で積み込み、飲食店に配送しています。

    転職先としてフーディゾンを選んだのは、スポーツ選手をしていたこともあり、目標が高く、刺激の強い企業で働きたかったから。ベンチャー企業は裁量も大きいし、チャレンジできる環境があるので、私にぴったりだと思いました。実際に入社すると、やっぱり勢いがある。立ち止まっていると置いていかれそうな雰囲気があるので、常に前進しようと日々取り組んでいます。

    会社の概要をご説明いただけますか?

    フーディンソンは、「世界の食をもっと楽しく」をミッションに掲げ、食のイノベーションをもたらす会社です。その第一歩として展開しているのが、飲食店向けサービスの魚(うお)ポチという水産関連卸業。そして、もう一つの事業がフード人材バンクという、フード業界に特化した人材派遣サービスです。また、個人向けに中目黒・都立大学・中延・品川の4拠点でsakana bacca(サカナバッカ)という魚屋の店舗も経営しています。

    魚ポチの強みは、全国20以上の産地から魚を取り寄せられること。1,800種類と非常に多くの品目を取り扱っていますが、水揚げ日も必ず掲載するなど、ネットだからこそ正確な情報を伝え、お客様から信頼を得られるようにしています。また、ドライバーは日常会話を織り交ぜつつも時期的にオススメの水産品を営業したり、お客様からのご意見・ご要望を本社に届けたり、店舗の担当者と直接コミュニケーションを取りながら本社とお客様をつなぐ役割を担っています。お客様も営業担当者よりドライバーの方が話しやすかったりしますので、コミュニケーションを何よりも大事にしながら業務に従事しています。

    お客さまから多い要望は、配送の仕方とサイトの使い勝手について。いただいたご意見はすべて本社へ届けます。

    魚ポチドライバー・佐々木さんの一日のスケジュールを教えてください。

    5時ごろに起きて、5時半前には家を出ます。そして、大田市場に到着するのは朝の7時。ここから出荷が始まりますので、出荷の手伝いをして、積み込んだ魚介類を担当のエリアに配送します。

    複数の店舗様に配達していると思いますが、配送ルートはどのように決めていますか。決められたルートがあらかじめカーナビに設定されているのでしょうか?

    一日に回る順番はあらかじめ決めていますが、細かくナビに設定しているわけではありません。出発前にルートを決めて、その通りにまわるイメージです。現在回っているエリアは担当してから9カ月が経ちましたので、土地勘もありますし、いただく注文やまわる店舗もある程度定着していますので、割と柔軟かつスムーズに伺えていますね。

    店舗によっては、「ランチに間に合わせてほしい」「午後イチで届けてほしい」など、さまざまな要望をいただきますので、なるべく希望通りにお届けできるよう心がけています。

    ドライバーとして安全運転への意識をどう持つか

    運転中に本部から、「この店舗に行ってほしい」と突然、ルート外の依頼を受けることはありますか?

     基本的にはありませんが、稀にトラブル対応として連絡が来ることはありますね。

    急遽ルートが変わると、気持ちに焦りが出たり、迷ってしまったりすることもあるかと思います。どんなシーンに合っても、安全運転のために意識していることはありますか?

    ドライバーなら当たり前かもしれませんが、余裕を持った運転をすることでしょうか。車間、速度、周りとの距離感に余裕があれば、少しハッとすることがあっても避けることができます。人や車が飛び出してきたり、出会い頭で追突しそうになったり、運転していれば大なり小なりヒヤリハットに遭遇しますが、余裕を持っていれば大抵の場合、避けることができます。また、人間ですのでイライラしたり、カリカリしたりすることもあるでしょう。そうした時の自分はどんな状態か、どんな行動を起こすか、客観的に見て理解するのも重要なことです。これによって、もしイライラしても「ここでこのような行動を起こせば事故につながる」と理性で抑え込むことができます。

    時間に遅れて焦っていたり、渋滞にハマってカリカリしたり、心に余裕がなく、自分を客観視できていないときにこそ事故が発生しやすくなりますので、これを心がけるだけでも運転への意識がだいぶ変わってくるはずですよ。

    安全運転に向けて、社内のドライバーたちと意識を共有することはありますか?

    弊社にはドライバーが9人在籍しており、毎日朝礼時に情報共有をしています。安全運転の厳守はもちろん、昨年の12月に施行された「ながら運転の厳罰化」などドライバーが周知しておくべき情報はこの時間にリーダーからアナウンスされますので、出発前に意識するようにしています。

    「SmartDrive Fleet」を導入したことで運転への意識がどのように変わりましたか?

    車両管理システムの導入はSmartDrive Fleetがはじめて。私は入社時から活用させていいただいていますが、

    安全運転診断は自分の運転をスコアとして客観的に見ることができるので、今まで以上に運転に気にかけるようになりました。ゲーム感覚でこまめに確認し、もっと安全運転しよう、この癖を直そうと、自分の中で振り返りができるようになったのも大きな変化ですね。

    運転が荒いと荷崩れしますし、急ブレーキを踏めば事故を誘発しやすくなる。そうした行為は業務効率を悪くする他だけです。一日の終わりにスコアとアラートがでたタイミングを確認し、低い点数だったら運転を振り返って、あそこでこういうことがあったから急操作をしてしまったと思い返して反省する。そうして同じことを二度繰り返さないよう心がけています。自身の安全運転に対する認識をさらに後押ししてくれるという意味合いで、毎日しっかりつかわせていただいております。

    「SmartDrive Fleet」の使いはじめは前向きな気持ちで利用いただける方のほうが多いのですが、時間が経つと慣れてしまい、利用頻度が下がることも少なくありません。佐々木様はいかがでしょうか?

    私は毎日確認していますね。スコア全体を通して低い点数はどこかな、とか。弊社のドライバーは同じように気にかけている方が多いようです。また、アラートをメールで検索して、今日は誰が・どういう状況で・アラートが鳴ったのかをチェックしています。

    新人ドライバーは慣れていないのでスコアが低かったり、アラートが多かったりします。そういう場合は、フィードバックをしながら「どんな運転しているの?」「業務で聞きたいことはある?」と、雑談ベースでヒアリングするようにしています。理由がわかれば先輩ドライバーとしてアドバイスすること、フォローすることもできますから。

    日頃から心がけるべきは「予測すること」と「余裕を持つこと」

    取引増加につれて配送件数も増えていくと、人手が足りない、休憩が取れないなど、従業員からちらほらと不満の声が出てくると思いますが…。

    配送時間の厳守は大事なことですが、まずは安全運転が第一。それは周知徹底していることです。とはいえ、運転中は一人で業務にあたりますので、本人が余裕を持つことが何よりも大事ですね。

    安全運転スコアの低い新人ドライバーに対し、具体的にはどのような指導をされていますか?

    危険運転があった箇所を掘り下げて聞いてみると、停止をした状態でハンドルを切り、それからアクセル踏んだと。ハンドルを全開で切ってからアクセルを踏むと急ハンドルや急加速が発生します。しかし、速度はそんなに出ていない。このように本人の話とデータを付け合わせて、おそらくハンドルを全開にきった後に、アクセルを強く踏んだから急ハンドルになったんだろうと推測するんです。そこはそんなにアクセルを踏む必要はなく、このように運転するとスムーズだよ、と具体的なアドバイスをしています。

    日頃から安全運転を心がけてらっしゃるかと思いますが、ロードバイク選手としての経験が活きるシーンはありますか?

    自動車もそうですが、自転車も常に周りの動きを予測しながら走ります。ですので、ウィンカーが着いていないけどあの車は次の信号で曲がるかもしれない、このエリアは見通しが悪い箇所が多いから少し減速しようというように、予測する癖があるのは今の業務にも活きていますね。

    弊社のサービスをご利用いただいているお客様の中には、「行動を全て監視されている気がするので嫌だ」とネガティブに捉えられる方も少なくありません。実際にご活用いただいている佐々木さんはどう思われているか、率直なご意見をお願いします。

    たしかに、自分の運転や移動状況がリアルタイムで本社スタッフにすべて見えますが、気にしたことはありませんね。むしろ、自分の運転を客観的に見ることができるので、安全運転の意識が高まると言いますか。そもそも、サボっているとか、不正がなければ、見られていることに対して嫌悪感を抱くことはないはずですから。

    なるほど、安全運転を第一とし、忙しい業務の中でも起こりうる事態を予測し、心に余裕を持つことが大切ということですね。ドライバー皆様にとって必要な心構えです。これからも安全運転で新鮮な魚の配達をお願いします!

    本日はお忙しい中、ありがとうございました。

     

    安全運転キャンペーン、3位入賞の表彰状をお渡しいたしました。