投稿者: sasaki

  • 【対談】クルマの進化でマーケティングはどう変わる? -後編

    【対談】クルマの進化でマーケティングはどう変わる? -後編

    未来のマーケティングはどうなるのか

    北川:「今後、それこそ何十年後とかの話になりますが、車が自動運転になって、車自身が故障や点検を予測できて、修理にいくらかかるかわかるような世界になった時、どのようなマーケティングが考えられると思いますか?」

    中澤:「私個人としては、MaaSが想定よりも早く普及していくのではないかと予測しています。何十年も先の話ではなくて、自動運転とほぼセットでMaaSの世界が展開されるだろうと。

    ヘルシンキは、MaaS Globalの Whimが普及したことで都市自体も変わり、乗用車の数が3割~4割減っていると言います。この事実からわかることは、車を所有しない時代がそのうちくるかもしれないということです。

    車を持たない世界には、車を持たなくなっていく段階と、車の数が半分ぐらいになってしまう世界の二段階がありますが、それがいつ・どのタイミングになるかは私どももまだわかりません。ただ、少なくとも、急速に持たなくなっていくという段階は何年間か続く。私たちはそこの部分にアタッチできないかと考えています。

    IDOMが現在、持っている資産は車の売買です。カーシェアをはじめ、いくつか事業を立ち上げていますが、MaaSが浸透すると急速に人の意識が変わっていきます。そこへ都市の交通機能が急速に整備を進めていくと、いわゆる地殻変動が起きる。そうすれば人々は、車をこのまま保有するべきか、それとも手放すべきかを今まで以上に真剣に考えるようになるはずです。ですので、その意思決定にしっかりと絡んでいけるようなマーケティングをしていきたいとは思っています。」

    北川:「自動運転になって車の数が減ったとしても、IDOMさんで買った車は、IDOMのアドネットワークから、ユーザーの行動にもとづいてさまざまなレコメンドを送ったり、サービスを提供できたり、そういうビジネスモデルになっていく可能性もありえますか?自動運転になっても、車の形態が電気自動車になろうとも、データは使えますよね。」

    中澤:「ユーザーが、MaaSへと意思を切り替えていくタイミングで、最初に判断するのは車を手放すかどうかだと思うんですね。つまり、査定のタイミング。その接点を日本最大級で抑えているのは、非常に大きいと感じています。

    査定を起点に、ユーザーは車のことを真剣に考えはじめます。普段は走行中のガソリンのことぐらいしか考えないじゃないですか。でもある日、今後、保険をどうするか、車を手放すべきか、真剣に車のことを考える瞬間がやってくる。そのタイミングが査定です。

    広告をどんなに打っても普段は景色の一部程度にしか思われません。しかし、意識が顕在化した瞬間、風景だったものが意味のある形で浮かび上がるのです。ですので、査定という瞬間が、車にまつわる様々なサービスのマーケティングポイントになります。つまり、モーメントなんですよね。その起点をIDOMが押さえているというのは非常に大きなことで、さまざまなサービスを提供するための、マーケティングの入口になれるのではないかなと考えています。

    ただ、そのときに査定額だけお伝えするのは、マーケティング的なレコメンデーションとしては弱いので、そこに走行データや今後、予測される生涯コストを加味できると、マーケティングのアプローチが大きく変わってきます。そういった意味でも、センサーに着目しているのです。」

    SmartDriveとのコラボレーションと可能性

    北川:「スマートドライブと『こんな世界が実現できるかもしれない』というようなコラボレーションの案をお話しできればと思います。」

    中澤:「一番、期待を寄せているのは車両ごとの情報の解析です。また、センサーのコストが下がることにも期待しています。

    IDOMが単体でスマートドライブのデータを使ったビジネスを考えるのは難しいかもしれませんが、たとえば『SmartDrive Fleet』がすべての新古車に、コモディティに近い状態で普及していけば、私たちは査定というモーメントに立ちあうことができるのではないかと。『SmartDrive Fleet』で蓄積されたデータをマーケティングに活用できれば大きく進化できるのではと前向きに思っています。」

    北川:「走行データではありませんが、アメリカでは車の整備履歴情報を国がしっかり整備して、インフラとして様々な事業者が活用できるようになっています。集めたデータをビジネスで活用できるようなオープンプラットフォームを構築して提供するとか、そこにブロックチェーンの考え方を組み込むとか…とにかく色んな方法があると思います。私たちスマートドライブも、本当のインフラにならなければ今提供しているサービスの意味がないと思いながら取り組んでいます。」

    中澤:「単体企業だけではなかなか思うように動くことができませんし、国というよりは、団体がそれらのデータを整備するような風潮ができないと難しいでしょう。」

    北川:「ただ、メーカーが各自に動いてしまうと縦割りという別の問題が起きることも考えられます。」

    中澤:「そうなんですよね。標準化されていないまま、センサーで取得したデータを集約するプラットフォームをA社も、Bも自社で独自に作ってしまうと…。結局、一部でしか使えないので問題の解決にはなりません。」

    北川:「第三者からすると、逆に使いづらくなってしまいますね。」

    中澤:「それらを考慮すると、共通の基盤を作る企業が第三者的な立ち位置で入るべきなんです。Webデータのタグってあるじゃないですか。そのタグマネージャーのような感覚で第3者の企業が入ってくると、マーケット自体の可能性が凄く広がっていくのではないでしょうか。」

    北川:「このままでもおそらくコネクテッドな世界は進んでいくとは思いますが、縦割りの結果、活用しづらいデータになってしまうと意味がなくなってしまいます。ですので、スマートドライブにいろんなデータが集まって、使いやすくて加工もできるプラットフォームになり、IDOM社に活用のご相談ができるようになる日が来るといいのですが。」

    中澤:「そうなれば最高ですね。その集めたデータをもとに、高付加価値サービスを一緒に作ることができればもっと良い。

    IDOMはマーケティングに強みを持っていますし、スマートドライブは技術力に強みを持っている。お互いに持っている強みを引き立てながらコラボレーションができれば、より良いサービスが生み出せると思います。さらに数社のプレイヤーが加われば、よりビジネスとして成立しやすくなるかもしれませんね。」

    北川:「各社が持つ強みのバランス感が重要ですね。」

    IDOM×スマートドライブ×保険会社=・・

    中澤:「スマートドライブでは、一般ユーザー向けに高齢者みまもりサービスを展開していますよね?」

    北川:「これは、会話の中で出た、SmartDriveプラットフォームの事例で、スマートドライブの中で持っている技術やデータをベースに、社内で1週間で作ったサービスです。

    私たちは、IDOMさんや他社さんが似たようなサービスを作りたいと思われたときに、スマートドライブのAPIやプラットフォームを活用していただければ、簡単に実現できるという世界を目指しています。」

    中澤:「実はまさに、保険会社と一緒にこのような高齢者の運転支援サービスを作りたいと考えていたんです。

    高齢の親が事故を起こしてしまった時に、その息子や娘まで、その家族全員もフォローができるような。ただ、IDOMでは技術的にプロダクトを作ることが難しい。であれば、強みを活かしてサービスに流入させることに注力すべきかもしれません。私たちはユーザーが一番車のことを真剣に考える査定の場面に立ち会いますが、そのタイミングって保険の見直しや別の提案もしやすかったりするんです。」

    北川:「スマートドライブもバリュー・チェーンの全部をカバーしきれませんし、そこはぜひ、協力し合うことでお互いの強みをさらに活かすことができればと思います。」

    北川:「スマートドライブがはじめにやっていたのは、テレマティクス保険のデータ分析です。ですので、保険会社さんとのサービス展開においてIDOMさんと三社で新たな取り組みができるかもしれませんね。」

    中澤:「IDOMには保険代理店業務もございますので、一緒に新たなサービスを考えて販売するところで活躍できるかと思います。」

    北川:「車にデータが取得できるデバイスを装着することで、ドライバーの意識も変わりますし、管理者も運転状況が見えるようになるので、事故率も大幅に下がるんです。その分、保険会社が導入コストを負担して、気軽に使えるようになると、事故を減らしながら情報も集められるようになるかもしれません。」

    中澤:「車の損害保険は、一度加入されると切り替えさせるのが非常に困難なものです。

    そのため、30代や40代の若いユーザーではなく、彼らのお父さんやお母さん世代、つまり高齢の両親や祖父母の“もしも”を考えて、家族の負担もカバーできる保険を考えてみませんかという提案をしていこうと思っています。そのための条件が『SmartDrive Fleet』の装着です。北川さんがおっしゃるように、事故を未然に防ぎながらも運転データが取得できる。これはユーザーにとっても良い効果を提供できるはずです。」

    北川:「実際に提携をしているあいおいニッセイ同和損保では、法人のトラックで『SmartDrive Fleet』を装着した場合、保険料を8%の割引が適用されています。それが個人向け展開できれば、保険料がおトクになるうえ安全意識の向上にもつながりますよね。そこはぜひ、協力しながら実現していきたいと思っています。」

    これからの自動車業界は

    北川:「先述したMaaSもこれから広がっていくでしょうし、今、消費者の価値観が変わり、車業界全体でパラダイムシフトが起きています。そのあたりについてはどのようにお考えでしょうか? 」

    中澤:「車業界に携わっている方々は、今、非常に大きな危機感を抱いています。自動運転、MaaS、シェアリングサービスの台頭…。自動車メーカーはビジネスモデルがガラリと変わっていく姿をまざまざと感じています。それでも挑戦は続けていきたいですね。」

    北川:「変革期にある現代において新たなビジネスモデルを構築するためにも、スマートドライブのデータをうまく活用いただければと思っていますし、一緒に手を組みながら、世の中をよくする、消費者にとって意味のあるサービスを提供していきたいです。本日はありがとうございました!」

  • 【稟議書の準備と進め方】車両管理システム導入時の社内処理の進め方 – その2

    【稟議書の準備と進め方】車両管理システム導入時の社内処理の進め方 – その2

    前回の「社内処理の進め方 〜稟議書の必要性と書き方のコツ〜」では、稟議書と決裁書の違いから書き方のポイント、稟議書を通しやすくするコツまでをご紹介しました。この記事では、車両管理システムを具体例に挙げて稟議書を進める方法をお伝えします。

    稟議書で一番重要な「購入理由」

    稟議書の中でも、決裁者が一番重要視するのが購入理由です。そのため、明確かつ簡潔に、なんのために購入するのか、なぜそれが必要なのか、購入することでどのようなメリットがあるのかを伝えなくてはなりません。

    「企業が導入することでどのようなメリットが得られるのか」に焦点をあて、導入前後での違いを記しましょう。

    車両管理導入のメリット1. 交通事故削減で、事故に関するコストをなくす

    交通事故によって発生する事故対応コストは、以下の図の項目が挙げられます。実際には直接金銭を支出する直接損害だけではなく、目に見えない「間接損害」も多く発生するため、損害額は想定以上に大きいものとなります。

     

    コスト面だけでなく、一番大きな損失は社会的な企業の信頼も失ってしまうことです。企業にとって大きな負担となる交通事故を少しでも減らすことを第一目的とした場合、次のような導入メリットを記載しましょう。

    導入前:
    ・外出先でドライバーがどのような運転をしているのか、客観的な指標がないため個々のドライバーの力量に頼るしかない状況になっている。そのため、事故を起こした前後の状況や明確な要因がわからず、今後の指導が困難になっている。
    ・安全運転教育が集合型の講習にとどまっているため、スキルがそれぞれ違うにも関わらずドライバーの特性に応じた教育ができず、意識の向上が見られない。

    導入後:
    ・急加速・急減速・急ハンドリングなどの危険運転が発生した場所や時間を自動で記録できることので、管理者側は今まで見えなかったドライバーの運転状態を把握することができるようになる。
    ・運転状況が可視化されることで、一人ひとりのドライバーの運転傾向に応じた具体的な安全運転指導を行うことができるようになるため、事故を大幅に削減することができる。ドライバーも自身の運転を見直すことができ、安全運転意識もアップする。

    車両管理導入のメリット2. 法令遵守・コンプライアンスの強化

    働き方改革に向けた法改正、荷待ち時間の記録義務化など、近年はとくに労働時間の徹底管理が企業側に求められています。残業時間を超えた場合は翌日の労働時間の調整や残業代の計算を行わなくてはなりませんが、自己申告制としていると、正確に記録が残せない場合も。しかし、労働時間をしっかり管理できていないと、労働基準法の違反となります。全ドライバーの業務時間を確実に把握し記録できることも車両管理システムのメリットの一つです。

    導入前:
    ・安全運転管理者や運行管理者規定により運行日報の記録は義務づけられているものの、ドライバーに一任しているため記録漏れが発生している。
    ・企業所有の車両で直行直帰をした際の労働時間を正確に把握できず、残業時間の削減をはじめとする働き方改革への対応がなかなか進められない。

    導入後:
    ・走行距離・時間や行き先をはじめとする走行データが自動で取得されるため、運行日報を抜け漏れなく記録することができる。
    ・直行直帰であっても、走行データとして確実に記録されるため、正確な労働時間を把握できる。その記録をもとに、働き方改革への施策を講じることが可能に。

    車両管理導入のメリット3. 車両管理における業務効率化とコスト削減

    車両管理の業務は非常に多岐にわたるものです。保険だけ、車両の情報だけなど、すべての情報がバラバラに、なおかつ書類で管理されていることも少なくありません。管理者しか情報を把握していないと、不在時に確認作業が遅れたり、非常時に対応が遅れてしまったり、業務を滞ることも考えられます。

    導入前:
    ・リースや保険、ドライバー情報など、車両にまつわる情報がバラバラで管理に手間がかかっている。なおかつ、管理者にしかこれらの情報がわからないため、誰もが必要な時に必要な情報がわかるようにしたい。
    ・実際に車両がいつ・どれだけ稼働しているかわからず、本当に必要な台数が把握できていない。 そのため車両台数ばかりが膨らみ、保険料やメンテナンス費用などのコストがかさんでしまっている。

    導入後:
    ・運転免許証、車検、リース、車両保険、定期メンテナンス情報など、車とドライバーに関する全情報の一元管理が可能となり、必要な時にすぐに情報を参照できる。そのため、確認業務の工数を大幅に削減、業務の効率化につながる。
    ・車両の稼働状況を日別や時間帯別に可視化することができるので、稼働状況をもとにある一定基準を下回る利用状況の場合は台数を減らすなど策を講じることが可能。コスト削減が行える。

    車両管理導入のメリット4. 営業生産性の向上

    外回りの営業は、管理者側にとって活動が見えづらく評価の適正化が難しいものです。営業活動と移動時間、それぞれが可視化されれば、生産性向上に向けた改善が行えます。

    導入前:
    ・商談にどれだけの時間を使ったか、商談以外の時間(移動時間等)にどれだけ費やしているか、正確な情報がわからなく適正な改善指示が行えない。
    ・訪問先の位置情報・位置関係がわからないため、その日の訪問計画・ルートが効率的か否かわからない。

    導入後:
    ・営業一人ひとりの日々の活動(訪問先・時間の使い方)の可視化により、 次の4点が明確になり、適切なアドバイスや改善策を打つことができる。そうすることで営業活動の生産性向上につながる。
    今、注力すべき顧客に時間を投じられているか
    商談時間はしっかり確保できているか
    移動時間ばかりに時間が取られていないか
    訪問計画(ルート)は適正か

    車両管理導入のメリット5. 顧客満足度の向上

    製品やサービスを提供することも大事ですが、企業が事業を成長させるためにもっとも重要なのが、顧客との信頼関係構築です。取引を継続するためにも、柔軟かつ丁寧に、そして迅速なコミュニケーションを行いましょう。

    導入前:
    ・お客様からの緊急対応依頼が入った際に、誰が一番近くにいて対応ができそうか、ドライバー一人ひとりに電話で確認しなくてはならないため、人員アサインに時間がかかってしまう。結果、お客様にもお待たせしてしまうことに。
    ・お客様から「あと、どれぐらいで到着いただけますか?」と問合せいただいても、ドライバーへの確認が必要なため回答に時間を要している。

    導入後:
    ・すべての車両の位置情報や運行状況がリアルタイムでわかるので、わざわざ電話で確認することなく、現場付近にいるドライバーをすぐに確認し、派遣させることができる。そうすることで、お客様をお待たせする時間もなくなり、満足度向上につながる。
    ・到着までの時間を問い合わせいただいても、ドライバーの現在地からすぐに回答ができるので、お客様を待たせることがない。ドライバーへの確認業務も不要になるので、オペレーション業務の最適化も行える。

     

    スムーズかつ確実に稟議を通すために事前準備をしっかりと!

    稟議書の作成は一見難しいように思われるかもしれませんが、ポイントを押さえて記載をすることで、スムーズに進めることができるはず。もし、車両管理システムの稟議書を作成後、関係者や決裁者から質問がきたら、「車両管理サービス導入にあたっての稟議書の書き方」の質問対策編を参考に、ご対応いただければと思います。
    企業のビジネス推進や業務改革を進める一助となれば幸いです。

  • 【対談】クルマの進化でマーケティングはどう変わる? -前編

    【対談】クルマの進化でマーケティングはどう変わる? -前編

     

    対談相手
    株式会社IDOM デジタルマーケティングセクション セクションリーダー
    中澤 伸也(なかざわ・しんや)様 

    中澤さまとIDOMのご紹介 

    北川:「まずは、中澤さまとIDOMでの業務内容についてお教えいただけますか?」

    中澤:「私は現在、IDOM(旧名ガリバー)のデジタルマーケティング責任者を勤めています。ファーストキャリアは家電量販店のソフマップからスタートしました。店頭接客に始まり、店長を7年ほど経験。そして、2000年には売り上げ100億円を目指すという目標を掲げソフマップのECサイト立ち上げを担当しました。ここを起点にWebの世界へ入ります。その後、ゴルフ情報ポータルのGDO(ゴルフダイジェストオンライン)でおよそ8年間、マーケティングの責任者を勤め、次に、中古車買取と販売の最大手「ガリバー」の運営をしているIDOMへ。店頭のリアルな接客がベースにありつつも、デジタルマーケティングが自分の主眼になっているため、O2Oマーケティングが私のもっとも得意な領域です。

    ミッションは、IDOMのマーケティング全体を変革すること。IDOMは完全なるO2O型の会社ですので、最終的には店頭での商談が受注ポイントです。そのため、デジタルとどう組み合わせて商談へとつなげる部分を集客していくかを考えています。現在は全国に550店舗を構えていますが、集客の構成比はデジタルからの流入が50%と、実は半分を占めています。私自身は、IDOM全体のマーケティングの最適化と変革を担うとともに、デジタルを使った新しいプロダクトやマーケティングサービスなど、新規事業開発を推進していく立場です。」

    IDOMのデータを活用したマーケティング

    北川:「中澤さまが普段からマーケティングに活用されているデータや、今後マーケティングに活用したい車のデータはございますか?」

    中澤:「現在はデータベースやデータマーケティングを強化している最中で、BigQueryを使ってユーザーのWeb上での行動や、コミュニケーションを分析していますが、車関連の情報はまだ統合しきれていません。ですので、今はまだ、データベースをうまく活用できているとは言い難いのです。

    高精度なWebのマーケティングデータを保有していますが、それらは主に査定するまで、購買するまでといった、“お客さんになる一歩手前”までのデータです。買取・購入後のユーザーのカーライフにおけるデータは未取得となるため、今後取得を強化していく必要があると考えています。

    事業を進化させていくために、車両や個人の情報からカーライフにまつわるデータをいかに蓄積していくかが大きな課題になっているのです。」

    北川:「たとえば、クッキーデータやアンケートなどの機能を使ってデータを集めていくイメージでしょうか?」

    中澤:「そうですね、クッキーやWeb上の行動に加え、最近ではチャットマーケティングに注力していますので、チャット上のテキストログ、つまりユーザーとのコミュニケーションデータを蓄積しています。」

    北川:「なるほど。それらのデータは先ほどお話されていた車を買うまでのデータですので、購入後のデータを今後集めていきたいということですね。」

    中澤「2回目や3回目の購入、車以外の商品やサービスを提供するなど、再来店につなげる接点を作るところはこれからになります。もちろん今までいくつもの施策を打ってきましたが、アクイジション中心のビジネスモデルで車の購入と買取がメインでした。しかし、その後のビジネスをどのように展開していくかが目の前にある経営課題です。」

    クルマの進化によってマーケティングはどう変わるのか

    北川:「スマートドライブが提供しているSmartDrive Carsでは、安全運転をしている方にはAmazonポイントなどに交換できるポイントを提供したり、走行データから近くのお店のお得な情報を提供したりするなど、データによってサービスの拡充を考えています。情報を取得するには、もちろんプライバシーの管理は徹底しますが、うまく情報を活用することでお客様にとっても意味のあるマーケティングができるのではないかと常に考えています。

    IDOM社の中で、こういう情報があったらマーケティングに使えるというデータはございますか?」

    中澤:「現業ではありませんが、いくつか構想しているビジネスはあります。先ほどもお伝えしましたが、私たちが今後やっていきたいのは、販売後のお客様のカーライフを充実させること。

    たとえばそこで、故障状況やタイヤの空気圧などの情報が取得できれば、販売後も包括的にお客様をサポートすることができます。少し異なるかもしれませんが、お客様の車のガードマンといったイメージでしょうか。販売後のユーザーのカーライフをガッチリと守る、みたいな。その部分をサービスとして構築していきたいと思っていますが、それが技術的なハードルが非常に高い。お客様の走行状態、故障状況、もしくは故障の予測をODB2で取得し、車種ごとに解析しなくてはならないからです。

    車種ごと、車両ごとに解析・判断する高度な技術が必要になりますので、残念ながら、まだ構想レベルなんです。」

    北川:「スマートドライブが所有しているデータと組み合わせることができれば、構想を一歩先へと前進させることができるかもしれません。データ活用のタイムラインは、短期・中長期・長期の3つで考えられるかと思います。

    短期は、走行距離によっておおよその買い換えタイミングが分かること。日常の運転の癖や傾向といったデータからはさまざまな予測ができます。たとえば、非常に優しい運転をしていて、子ども服や赤ちゃんグッズを販売しているお店によく行っている。なおかつ運転は週末だけ、という情報が分かるとしましょう。この3つの情報から、小さなお子様がいる、さらに今後、家族が増えるかもしれないということが予想できる。そうすれば『今より少し大きめのファミリーカーに買い換えませんか』『最近、こんなファミリーカーが入ってきました!大型で使い勝手がいいのでオススメですよ』というような提案ができるかもしれません。

    次に、中長期的な目線で考えてみましょう。スマートドライブでは、自動車メーカーから直接データを預かることを始めているので、AIを故障情報などと組み合わせて、近い将来には故障が起きそうな時期や残価の予測ができるようになるかもしれません。

    長期については、まだまだ先の話ではありますが、自動運転が普及したらどのようなマーケティングで車を売っていくべきかを深堀りするために、スマートドライブとの接点をディスカッションできればと思っています。」

    中澤:「たとえばえすが、弊社が販売した車両にセンサーを取り付けることでしょうか。センサーで取得した情報から追加で販売したい付帯商品を提案したり、買い替えのタイミングが分かったりできればといいなと思っていますが、中古車の場合、通常の買い替えサイクルが7年と言われており、次のお客さまとの接点が結構先になってしまうんですよ。そうすると、取り付けたセンサーの設置コストの元が取れませんし、本当に有効なのかが見えづらくなってしまう。

    そう考えると、いま私たちが提供しているサービス以外でセンサーに関するコストの収益ポイントを見つけなくてはなりません。最終的には、車に関連するサービスを提供したいですが、それを現実の事業として成立させるには、センサーから得られた情報を社外のプレイヤーに提供して、プロフィットのポイントを作っていく必要があると考えています。

    では、車に搭載したセンサーから集めたデータをもとに、お客様が費用を払ってまで提供できるものは何か。そこを考えなくてはなりませんが、もともと車の売買を中心に行ってきた企業ですし、アイデアを絞り出すのも至難の技だったりするんです。ですので、データはプロダクトやサービスとして別の事業会社に提供できればと思っています。車はデータを取得するための媒体であると考えて事業展開をしていく。そんなアプローチで他社さんとうまくレベニューシェアができるとおもしろいなと思います。」

    データはオープンプラットフォームで活用の幅が広がる

    北川:「データ活用もそうですが、ビジネスモデルとして成り立たせるのは思っているより簡単ではありませんしね。また、一社のみですべてのコストを負担するのは非常に負荷がかかることです。

    回収のサイクルが長いということは、そもそもLTVに合わないかもしれない。ですので、今までの考え方を打ち破り、データをいろんな会社が使えるようにして、みんなでコストを負担し合う方向へ持っていかなければ、データ活用は進まないだろうと思っています。逆にそこが突破できれば、多方から『これに使えるかも』というアイデアの掛け合いが起き、イノベーションの輪が広がっていくのではないでしょうか?」

    中澤:「そうですね。車両から得られるデータは、車関連事業のプレイヤーよりも、外にいるプレイヤーのほうが、むしろビジネスに活かしやすいはず。IDOMのような事業会社ですと、物理的な車検やモノの設定のほうが収益を生みやすいので、本業側ではデータの活用がしづらい部分も多いのです。」

    北川:「データ活用というテーマでみなさん色んなアイデアを出してくれるのですが、最終的にいつもコストの部分で話が止まってしまうんです。しかし、その先にある『そのデータをみんなが使えるようなビジネスモデルは何か』『誰からいくら捻出してもらうか』という議論もっとしていくべきなんですよね。そうじゃないと、変化は生まれません。」

    中澤:「データはオープンプラットフォームになっていくべきですし、ここ最近ではブロックチェーンの技術もあるので、主幹となる会社が公的な形にすることもできるでしょう。そうすると、データの取得ポイントとして、私たちのような販売業者が強みを発揮することができます。

    取得したデータを価値へと変えていくには母集団が必要になりますが、日本トップシェアと言えども、私たちが売っている中古車の数は日本全体で流通している数からすればたかが知れている。そうなると、やはり一社ではあまり意味のあるデータが見出せないのではないかと思っています。」

    北川:「オープンプラットフォームができれば、逆にIDOM社がデータを活用してアプローチをすることができるかもしれませんね。そうした流れができれば、本当の意味でのデータ活用の第一フェーズが進むのではないでしょうか?」

    中澤:「現状ではまだ母数が少ないので、サンプルデータとして製品開発や大きな意味でのサービス開発には使えるとは思います。ただ、直接的にプロフィット化するようなインパクトはまだ持ち得ていないのです。要するに、IDOMを含め、他社からも相当数の車両データが必要です。」

    北川:「あとは、消費者がデータを渡してもいいと思えるようなメリットを事業者側が享受できれば、爆発的に普及するはずです。」

    中澤:「僕が考えているのは二つの面。一つは、データ自体のプロフィット化。オープンプラットフォームとして媒体の一社になることです。もう一つの側面は、消費者がお金を払ってでも受けたいと思うような高付加価値型のサービスを提供することです。」

    北川:「それが成り立てば、データ活用でいろんなことができますよね。」

    中澤:「ただ、高付加価値型のサービスの最大のボトルネックが、車両ごとの解析がどこまでできるかということです。ここは早く解決の糸口を見つけたい。」

     

    後編につづく

  • 【稟議書の必要性と書き方のコツ】車両管理システム導入時の社内処理の進め方 – その1

    【稟議書の必要性と書き方のコツ】車両管理システム導入時の社内処理の進め方 – その1

    会社の利益に繋がりそうな素晴らしいアイデアを思いついたり、業務改善に役立ちそうな商品やシステがあったりしても、上層部から承認を得ないことには、せっかくのアイデアを実現することもシステムの導入もできません。そんな時に作成し、提出するのが稟議書です。部署や役職によっては作成する機会が多くはありませんし、だからと言っていまさら社内の誰かには聞けないと思っている方は意外に多いのではないでしょうか。

    そこで今回は、そもそも稟議書とは何か解説し、スムーズに決裁を受けられる稟議書作成のポイントを分かりやすくまとめました。ぜひ、稟議書を作成する際にご参考いただければと思います。

    そもそも稟議書とは何か

    「稟議(りんぎ)」とは、官公庁や会社などで導入したい新事項が発生した際、主管する者が「決定案」を作成し関係各所へ伺いを立て、承認を求める社内処理を示すビジネス用語であり、そうした内容が記された書類のことを「稟議書」と呼びます。稟議書は物品の購入や外部との契約など、日常的な業務に関する承認を複数の決定権者による捺印で得る書類です。

    決裁書との違い

    稟議とよく混同してしまう社内処理に決裁がありますが、部下が提出した案の採否を決定権者が決め、許可・初認した場合は捺印するという点では全く同じものです。そして、それに伴い作成する書類が「決裁書」。決裁書は、権限のある役職者に「直接承認」してもらうため作成する書類であり、組織にとって素早く重要事項を決める際に利用されるものです。

    ただし、「決裁を仰ぐ・下す」という言葉があるように、決裁書は権限を持つ上司の独断で採否が決まることが多いため、上司のタイプに応じて書類構成を考えられる半面、普段の人間関係が提案の承認に影響する可能性もあります。一方、「稟議書」はあくまで会議を簡略化する書類であるため、基本的に複数の上司・役員から承認を受ける必要があります。合議制による意思決定が重視されている国内の組織では、権力の集中や乱用を生みかねない単独決裁ではない稟議を採用することが多く、官公庁や大企業では特に多用されています。

    決裁書と稟議書の特徴まとめ

    決裁書:スピードが速い。決裁者の上司に応じて構成を考えられる。

    稟議書:時間がかかる。各関係者を説得できるようなデータが必要となる。

    【意思決定を除く稟議の機能】

     

    1. 時間の無駄と手間が省ける・・・複数の部署長の承認が必要なときでも、稟議書を回覧させれば会議を開く必要がないことこそ最大の利点です。また、稟議書をペーパーレス化したうえで、承認(書面の場合は捺印)を電子化する事により、遠隔地にいる決定権者からの承認をスピーディに行うことも可能。
    2. 情報の共有・・・稟議書に提案目的や理由、金額と費用対効果、優れている点などがひと目でわかるように記載されていれば、通過後速やかに関連部署が連携し案件を推し進められます。また、部署長の承認範囲を細かく設定することにより、その範囲で自己裁量による事案の進行も可能で、電子化していればさらに効率アップ。
    3. 新たな意見付与・・・一方通行である決裁と異なり、稟議では関連部署それぞれの見地による改善ポイントや、代替案などが付与されていくため、より組織のためになる提案にグレードアップします。

    どんなシーンで稟議書が必要?

    稟議書を作成し、関係各所に回すシーンは主に以下の3つですが、いずれも期首の段階である程度の予算が決定しているため、予算の範囲であり後述するポイントを抑えることができれば、承認をスムーズに得られるはずです。

    ①外部や他社と契約を結ぶとき「契約稟議」
    ②備品などを購入するとき「購買稟議」
    ③新しい社員を採用するとき「採用稟議」

    その他、商品開発・販売開始と終了・投資などの事案で稟議を挙げるケースもありますが、これらは大きな予算を要するため稟議書の提出と並行して、会議によるプレゼンテーションを実施するケースがほとんどです。いずれにしても、提案者がそれぞれ別々のフォーマットで稟議書を提出すると、決裁者側が混乱してしまい、稟議通過が遅延、もしくは却下されてしまう可能性が高くなります。ですので、社内共通の稟議書テンプレートを目的に併せて準備しておき、全社員がそのテンプレートにのっとって、稟議書を作成するにしましょう。

    稟議書の書き方で大事な3つのポイント

    ポイント1 誰が読んでも理解できる「わかりやすさと丁寧さ」を追求する

    稟議書は組織内の部署をまたぎ、専門外の上司はもちろん、意見交換するであろう部下、さらにその上の部長クラスや決裁権者である役員に至るまで、「現場の事情を全く知らない人」が多数読み、承認プロセスに加わるという特徴があります。

    そのため、稟議書を提出しても却下されたり、差し戻されたりしてしまう大半の理由が「背景や経緯の説明不足」に起因するもの。組織の規模が大きくなればその傾向はさらに強まりますし、会社によっては社外役員を置いているケースもありますから、起案する側は「なぜこの稟議を申請したのか」について、120%位のわかりやすさで記載をしなければ、まずは伝わらないと考えたほうがいいでしょう。

    わかりやすい稟議書を作成するため必要な構成要素として、下記の3点を必ず含めましょう。

     

    • 申請事項・・・物品購入や人材採用など、最初に目的を記します。
    • 申請事由・・・申請事項がなぜ必要なのか理由を記します。裏付データがあれば「資料〇〇添付」と記し、別紙で要領よくまとめます。
    • 費用対効果・・・案件にいくらかかるのか、そしてその費用に対する効果を記します。費用についてはあらかじめ予算申請して、認められたかどうかを明確にするのが一般的です。効果については、実施により期待できる成果や効果を、できるだけ定量的なデータで示します。

    「申請事由」と「費用及び効果」に関しては、稟議書という決まったテンプレートの中で、120%のわかりやすさを出すのが難しい要素です。たとえば、広報部門の担当者が故障していないWindowsのPCを、業務改善と効率化を目的としてMacのPCに買い替えたいと稟議申請するとしましょう。広報担当として社内誌や社外誌の編集をしている立場なら、フォントが美しく、不意のダウンでも自動バックアップする機能を備えていることを理解していますし、Macによって得られる効果を熟知しています。

    しかし、部外者からすればコストもかかるうえ、「壊れていないのになぜ買い替えるの?」という疑問が生まれるため、理由と費用対効果が詳しく記載されていないと「却下」という流れになってしまいます。この場合は、下表で示したような「アピールポイント」を明記するとともに、誰が見ても理解できる参考資料、例えばPC変更前後の仕上がりサンプルやトラブルの復旧に要する時間の概算データを添付することで説得力が大幅に向上します。

    申請事由 費用対効果
    フォントやUIが美しく、デザインツールが豊富なため広報誌の仕上がりが格段とアップする 採用やブランディングにおいて、会社としてのイメージアップに寄与
    自動バックアップ機能が付いている 作業効率の向上による労働時間の削減
    付属の「iWork」でチラシ作成も簡単にできる 高額なデザインソフトを購入せずに作成可能

    なお、契約・購買稟議については、数値化した参考資料を作成しやすいですが、採用稟議は年齢や入社試験の点数ぐらいしか提示できないため、面接時に人となりをしっかりと観察し、優秀な人材であることを自分の言葉で表現する必要があります。また、近く退職者が出るなどの理由で人材不足が顕著になった場合、比較的採用稟議が通りやすくなるので、「提出のタイミング」も重要です。

    ポイント2 必要事項の記載漏れは厳禁!必須項目を網羅せよ

    次に、以下で示すような稟議提出から承認に至るまでの過程、及び進捗状況が一目でわかるため必要な項目を網羅し、記載漏れがないようにします。

     

    • 決裁区分・・・承認、条件付承認、保留、差戻し、否決といった稟議結果を表す決裁区分です。決裁日と申請日・決裁日は決裁者が記載し、申請日は起案者が記載します。
    • 決裁番号と起案部門・・・決裁番号は後から参照したり、管理しやすいよう必要に応じて記載し、年月日を利用するケースも多いです。起案部門はどの部門が取引をするのかを記録しておきます。
    • 決裁者の承認欄・・・決裁者の承認欄には稟議責任者の氏名を記載する欄のほか、部門長、担当役員、社長といった権限者がサインできる欄を設けます。
    • 決裁者コメント欄・・・稟議の結果、条件付承認になった場合や保留、差戻しになった場合など、なぜそうなのかを決裁者のコメントをもらうことができます。決裁者から宿題をもらい、それをクリアすれば承認が得られることもよくあります。
    • 件名・・・件名は内容につながる、わかりやすくシンプルなものにしましょう。

    その他の項目として、起案内容に応じ契約稟議であれば取引先概要を、購買稟議であれば購入製品概要を説明できる項目を追加する必要があるものの、テンプレートさえあれば漏れなく記載することは、それほど難しい作業ではありません。

    ポイント3 期首予算範囲内の申請であることを強調する

    前述したとおり、予算範囲内であれば定義上「計画内の稟議書は、予め期首に承認済み」という扱いになります。よって、決裁者の稟議書確認スタンスとしては「計画予算の金額と執行内容が、年初計画通りか確認するだけ」であり、稟議事由と費用対効果に妥当性があると判断され、必要事項に漏れがなかった場合は基本的に承認されます。

    つまり、予算内で実施できる案件の場合は、決裁者に「あなたが承認した予算計画通りに進んでいます。よって、この稟議書は承認して問題ありません」と、一目でわかるように記載・強調しましょう。

    スピーディに決裁まで進めるには・・

     

    稟議書を早く確実に通すためには、決裁者に負担をかけないしっかりとした文書を用意することはもちろん大事ですが、それ以上に事前相談いわゆる根回しが重要になってきます。根回しと言うとネガティブな印象を持たれるかもしれませんが、オリンピック招致などでも展開される「ロビー活動」もその一種であり、申請する内容について上司の考え方を知っておけば、それに添って稟議書に修正や調整を加えておくことができます。

    担当者より直属上司の方が、さらに上の決裁権者の好みやビジネスに対する考え方をよく知っているので、事前相談に際には

     

    • 費用対効果の基準や好まれる数値の出し方
    • 新規稟議が通りやすい費用感と費用の見せ方
    • 誰がいつ決裁者に確認するか?
    • 決裁者はどのような見せ方を好むか?

    など、稟議書を通すための「コツ」を聞き出しておきましょう。

    ただし、組織の大きさにもよりますがいくら早く稟議を通したいからと言っても、いきなり役員クラスに話しかけるのではなく、まずは直属上司に相談をしましょう。稟議をスピーディーに決裁まで進める秘訣は、まずは最も近い立場の所属長に事前相談し、効果的な稟議書を作り込むことです。

     

    後編では車両管理システムを例により具体的に説明します。

  • BCG Digital Venturesが語る、大企業が新規事業を成功させる方法− 後編

    BCG Digital Venturesが語る、大企業が新規事業を成功させる方法− 後編

    前編では、BCGデジタルベンチャーズ(以下BCGDV)がグローバルの大企業と共に取り組んだ新規事業の話を伺いました。後編ではデータの活用方法を中心に伺いました。

    モビリティデータの活用方法とは?

    元垣内:「次にお伺いしたいテーマはデータの活用についてです。」

    山家:「MaaSもそうですが、業界に限らずデータの活用は一般的になっていくと思います。一方で、新規事業を立ち上げる際は、利用者の課題を解決できるか、そもそもフィジビリティがあるのか、どのようにしてビジネスとして勝つのかなど、ポイントをいくつか挙げてそれに対するクライアントの強みを優先に考えなくてはなりません。

    たとえば、クライアントが、大量のデータを収集、活用できる可能性があっても、その効率的な蓄積や分析は得意ではないかも知れない。そういった場合に、データ分析基盤のような仕組みを自前でゼロから用意することは、必ずしも競争優位にはつながらないことがあります。」

    元垣内:「スマートドライブでも、地図データやドライブレコーダーの動画を集めながら分析をするために、さまざまな画像処理の技術を必要としています。ただし、すべて自社で賄おうとせず、一部で外部のサービスを利用することもあります。」

    山家:「開発からリリースまでのスピード感を考えると、必ずしもデータ周りをスクラッチ開発で作ることがベストであるとは限りません。サービスの強みとなる部分は、じっくり時間と労力をかけて作りますが、それ以外の部分に関しては、外部と連携して開発スピードをあげたほうがいいと思っています。大量のデータを蓄積するだけでも、莫大なコストがかかりますし、大量のデータを分析するのも、かなりの手間とデータを扱える人材が必要です。すでにソリューションを持っている企業と手を組むなど、注力すべきところとそうでないところを切り分けて考えた方が、早くサービスをリリースできます。

    たとえば、MaaS関連のサービスを開発する場合、サービス全体のデザインやユーザーインターフェイスをBCGDVが担当して、データ周りをスマートドライブが担当するとか。そうすることで上手く連携できそうですよね。」

    元垣内:「それができると嬉しいですね! 最近、各方面から『MaaS関連の新しいサービスを展開したい』と相談を受けることが増えてきました。MaaSはバズワードにもなっていますし、新規サービスに挑むのは非常に素晴らしいことだと思っています。しかし、実際にそのサービスがどんな価値になるのか、クライアント企業様にとってどのような課題が解決できるのかについては、私たちもまだ手探りで探している状態といいますか…。」

    山家:「データを貯めれば何かに使えると思われがちですが、議論すべきは『このデータをどう活用すべきか』です。データを活用してどの課題を解決していくのかについては、私たちも常に頭を悩ませています。難易度の高いテーマですよね。」

    元垣内:「本質的なところに時間を割かず、足回りだけに時間を使うのは、本当にもったいないことです。ですので、スマートドライブとしては、モビリティデータの価値をいち早く多くの方々が見つけられるような仕組みづくりをしていきたいと思っています。そして、その先にあるのが『データを活用してどのようなビジネスを作ることができるか』です。

    BCGDVとしては、新規事業を成功に導くためのフレームワークを持っていたりするのでしょうか。」

    山家:「前編で紹介した『FarePilot』の場合、本格的な開発に入る前に、データを集めてホットスポットを分析し、ビジネスとして成立するか否かを見分けました。開発前の段階で予測モデルをいくつか作って検証するということを何度も繰り返す感じです。フレームワークというよりは、迅速にPDCAを回すことを心がけています。インターネット企業がサービスを改善するのと同じように、ある程度行けそうだとわかったら、サービスの開発に着手しています。」

    元垣内:「まずはプロトタイプを作って、試して、改善してという方法で回していくと。」

    山家:「BCGDVだけで足りない場合は、BCG内の別の組織にデータサイエンティストのチームがあるのでフォローをしてもらいます。そうやって、自分たちがやるべきこと・できることに集中するのも大事なことです。」

    元垣内:「近年、デジタルトランスフォーメーションを推進する流れが多くの企業で見られます。そういう側面からクライアントにご相談を受けることはございますか?」

    山家:「デジタルトランスフォーメーションは、仕事の仕方や評価体系を変えるといった話から、デジタルツールを導入して情報を一気通貫させるところまで、各企業、いろんな側面から取り組んでいらっしゃいます。

    BCGDVとしては、各社におけるデジタルトランスフォーメーション全体の取り組みの中で、その推進力向上に貢献できればと思っています。今まで経験した仕事の仕方や事業とは少し違うけれども、働き方を変えたり、積極的に新規事業を立ち上げたりすることで、先進的な企業へと変わっていきますよ、というように。」

    元垣内:「つまり、先進的なパイロットプロジェクトというイメージでしょうか。実際に、そういった取り組みは事例としてありましたか。」

    山家:「そういう位置づけでご相談される企業様は多いですね。全社的にデジタルトランスフォーメーションを掲げつつ、具体的な取り組みの中で、パイロット的なものとしてBCGDVのプロジェクトが位置づけられているケースが多いかもしれません。

    BCGDVの働き方は、典型的な大企業とは異なりますので、まずはこの働き方を体験していただき、サービスが形になっていく過程や働き方を経験する中で新たな刺激を感じて欲しいですね。

    デジタルトランスフォーメーションの全体像を作って推進していくのは、BCGが得意な分野だと思います」

    新規事業が成功するパターンとは?

    元垣内:「ご経験の中で、新規事業が成功するパターン、たとえば『こうするとうまくいく』というパターンはあったりするのでしょうか。」

    山家:「今までの経験から言うと、実際にサービスを作って、ユーザーに利用してもらってから、ビジネスにするかしないかを判断する流れだとスムーズに進む印象です。逆に、非常に精緻な計画を立てようとすると、進行スピードが鈍化し、前進しづらくなります。とくにデジタルサービスは実際にユーザーに触ってもらわないと、うまくいく・いかないの判断が難しい事が多いです。ですので、大量に紙の事業計画を作るのではなく、素早くサービスを作って、修正点を改善するというアプローチ取るようにしています。」

    元垣内:「その通りですね。私たちスマートドライブでもモビリティデータを活用したAI開発に着手していますが、AI解析やデータ解析は実際にやってみないとわからないこともたくさんあります。

    ビッグデータを活用したサービスの開発を進めるには、しっかりと計画を練りこんだウォーターフォール型では間に合いません。2018年に経済産業省が策定した『AI・データの利用に関する契約ガイドライン』でも、スピード感を重視した探索的段階型の開発計画が提唱されていますし、ご一緒するクライアント企業様には段階的に、少しずつ形にしていくという提案をしています。」

    山家:「サービスを検証するために必ずしもモノを作る必要はないんです。既存の何かをうまく活用してユーザーに触ってもらうだけでも、十分に感触が掴めたりしますので。お互いに合意してサクサクと進めることができれば、成功する可能性はぐんと上がるはずです。」

    元垣内:「BCGDVの持つスピード感や具体的なアウトプットと、BCGのコンサルティングならではの強みの両方を持ち合わせているので、クライアント企業にとっても納得感が高いということでしょうか。」

    山家:「BCGDVの進行に納得していただけるケースは多いですね。どのクライアントにも共通するのは、たくさんの資料よりプロトタイプを見たいと言うところです。私たちがいかにうまく短期間で持っていくかを常に考えて行動していることもあります。

    基本的に、私たちが考えるプロジェクトはイノベーション、インキューベーション、コマーシャライゼーションという三段階で構成されています。それぞれ、イノベーションはアイデアを出して企画すること、インキューベーションは制作すること、コマーシャライゼーションはグロースさせることで、一気通貫で関わるようにしているのです。中には、企画だけ携わるプロジェクトもありますが、私たちとしては最初から最後まで責任を持って担いたいですね。もちろん、その体勢は整っていますし。」

    元垣内:「すべてを一社でお任せできるところはそんなに多くありませんし、いま一番、求められていることだと思います。」

    山家:「段階ごとに人や企業が変わると、関係性を0から構築しなくてはなりませんし、コミュニケーションが多く発生することになりますので、どこかで行き違いが発生してしまう。だから、なるべく同じ人が担当した方がスムーズなんです。」

    元垣内:「責任も負いますので、本当に良いものを素早く作ることができますよね。」

    元垣内:「最後に、スマートドライブへのご意見やご要望を頂戴できますか?」

    山家:「BtoC向けのSmartDrive FamiliesもBtoB向けのSmartDrive Fleetも、非常に洗練されたユーザーエクスペリエンス(UX)が素晴らしいですよね。一般的なBtoB向けのサービスは、開発コストの低減や不具合を出さないことの優先度が高くなりすぎて、UXが劣ってしまうケースが少なくありません。だからこそ、より一層良さが際立っているんじゃないかと思っています。

    その理由の一つには、BtoC向けのサービスを提供していることもあるんじゃないでしょうか。そこから得た気づきやポイントをBtoB向けのサービスにも反映させることもできますしね。今後も洗練されたUXを維持し続けてほしいです。

    管理画面を最初に見たときに思ったのが、『すごくカッコいい』。シンプルで使いやすいのにデザインはスマート。そこにはスマートドライブの信念や強いこだわりを感じます。」

    元垣内:「UXに関してはスマートドライブが全社的に注力をしているところです。そもそも、一人目の社員はアメリカ出身のデザイナーですし、最初からデザインとUXを中心にサービスを形にしてきたところが起点にもなっています。

    そして、山家さんがおっしゃった通り、to C向けとto B向けのサービス両方を提供しているのは、それぞれで培ったUIやUXの使い心地を当てはめて、どちらにも良いサイクルを生み出していきたいという考えからです。

    また、車両管理サービスは、パソコンに慣れてない方も使いますし、経営層や管理者、ドライバーなど、幅広いユーザーに合わせたデザインにしないと定着していきません。」

    山家:「運行管理システムは使う人のリテラシーもかなり開きがあると思いますので、難易度が高いですよね。」

    元垣内:「管理ツール自体がそもそも面倒くさいものだと思われがちなので、まずはその考えを拭い去るために、簡単に管理できるということをデザインや使いやすさで伝えていかなくてはなりません。そうして、利用する人たちが本来の仕事に集中できる環境を作りたいと考えています。

    デジタルトランスフォーメーションの枠組みでのご活用始め、モビリティデータの活用価値の創出を後押ししていくためにも、私たちも提供するサービスや開発により一層、磨きをかけていきたいと思います。ありがとうございました!!」

  • 開催まであと少し!オリンピック開催で懸念される交通事情とは

    開催まであと少し!オリンピック開催で懸念される交通事情とは

    世界的スポーツの祭典、オリンピック・パラリンピック東京大会2020の開催まで一年を切りました。少しずつオリンピックに関する話題やニュースも増え、気持ちとしては盛り上がってきたものの、現状は来場者数が3,000万人とも3,500万人ともいわれている訪日外国人を受け入れる体制が完全に整っているとはいえないようです。

    民泊を含めた宿泊施設の整備や治安維持、インバウンド消費に伴う決済方法の拡充など問題が山積している中、最大の懸念材料と考えられるのが東京における交通事情。オリンピック開催時、東京の交通インフラは一体どうなるのでしょうか…?

    開催期間中の交通インフラ!どうなる東京?

     

    首都圏における交通インフラと言えば、JRを始めとする鉄道やタクシー・バスなどを挙げることができますが、普段でも朝から晩まで混雑している東京の交通インフラが、オリンピックという一大イベントの開催でどのような影響を受けるのでしょうか。

    利用を控えたほうが得策? 鉄道インフラへの影響

    中央大学情報工学科教授であり、鉄道を含む都市交通に関する研究で数多くの成果を挙げている田口東教授は、「人気競技が集中する『ある日の朝』、首都圏の鉄道網はかつてない混乱が起きる」と警鐘を鳴らしています。田口教授が、国土省の大都市交通センサスをもとに試算・設定した、一日辺りの首都圏における鉄道利用者(通勤・通学)は790万人です。その「ある朝」とは、7月31日。

    首都圏の通勤・通学の鉄道利用者は1日約800万人ですが、この日は多くの会場で人気競技が行われるため乗客が1割増加し、この日の観客数は約66万人と計算されています。数字だけ見ると増加するとはいえ普段の1割弱程度ですので、それほど目立った混雑は発生しないように感じるかもしれません。しかし、毎日のように利用している方ならご存知の通り、東京の鉄道網が一番混雑するのは午前8時~9時であり、全体の33%となる約260万ユーザーがこの時間帯に集中しています。ここからさらに混雑となると…。この電車に乗る勇気が出ません。

    教授が問題視しているのは、オリンピックスタジアムや有明アリーナ、代々木体育館や東京ビックサイトなどといった動員数が多い会場の競技開始時間がいずれも午前9時~午前10時頃であること。仮に、『ある日の朝』の通勤通学客が250万人で、オリンピック観客が50万人鉄道を利用したとすると、軒並み200%に近い乗車率である朝のラッシュが激しさを増し、いつもの電車のいつもの時間帯に乗れないケースも予想されます。

    もう一つ、忘れてはいけないのが、増加するのは首都圏の複雑な鉄道網に慣れていないユーザーが大多数を占めること。この中には日本語を喋れない・読めない訪日外国人も含まれます。そうなると、乗・降車駅には立ち往生するユーザーが溢れかえり、対応しきれず現場は大混乱し安全な運航ができない状態に陥るかもしれないのです。また、首都圏全体の鉄道網がマヒする可能性まであります。

    東京オリンピックはコンパクト開催をコンセプトに誘致が進められ、結果として各会場は電車移動できる範囲に収まり、うまくスケジュールを組めば複数競技をはしご観戦することも可能です。これは裏を返すと、普段はそれほど混雑しないはずの午前11時~午後4時であっても、ハブとなる乗換駅は混雑する可能性が高く、夜間に入っても混雑状況が続いてしまった場合、終電を逃した帰宅難民が街に溢れることも考えられるでしょう。

    教授は対策の一つに、会場最寄り駅より1つ2つ手前の駅で観客が降りるようにして、徒歩移動でも快適な環境づくりや、インバウンドにつながる魅力的な催しなどを展開し、せっかくの機会を活かすべきだと提言しています。また、通勤・通学客に関しては「休んでもらうしかない」と述べているほか、混雑が予想される駅を使う会社・学校・役所に対し、「〇日は電車を使わないでください」と具体的に指示・指導すべきだと述べています。

    鉄道が混雑するならタクシーとバスは?

    鉄道を利用する絶対数が減ればスムーズな運行も可能かもしれませんが、大会が開催される真夏に徒歩移動という選択肢は少々酷ですし、ビジネスにしても学業にしても17日間にわたって開催される大会期間中、休み続けるのは非現実的かもしれません。必然的に混雑を避けるなら、通勤・通学およびオリンピックの観戦客は、鉄道以外の公共交通機関、つまりタクシーやバスでの移動も視野に入れることになってきます。

    タクシーは空港から都内へ向かう海外観光客の利用も多いですが、大会期間中に大量のタクシーが首都高や各地へ流れ込めば、各所で大渋滞が同時多発的に発生することが容易に想像できてしまいます。また、後述する政府・関係機関が実施予定の交通マネジメントが功を奏し、仮に渋滞緩和が実現できたとしても、多言語対応が進んでいない日本の現状を考慮すると、ドライバーと訪日外国人とのトラブルが頻発するという懸念を払しょくできません。

    そんな中、期待が集まっているのが、空港と各会場を結ぶ大型シャトルバスの整備です。車両台数の減少によって渋滞緩和が図れるだけでなく、スタートとゴールが決まっていて料金体系も明確である性質上、訪日外国人とのトラブル発生リスクはかなり低いと考えられます。さらに、規制を伴う大規模な交通マネジメントを展開するにあたり、約5万台と言われる都内のタクシーを完全に管理するのは困難ですが、大型バスであれば専用レーンの設置や信号調整(TSM)によって、運行状況を管理しやすいという利点もあります。

    もちろん、関係機関の協力と一般ユーザーの理解、それに多言語対応の徹底などソフト面の充実が必要となりますが、オリンピック観戦客をさばけるキャパの大型シャトルバス網が完備されれば、前述した鉄道の大混乱も防ぐことができるかもしれません。

    オリンピックに向けて実施予定の交通マネジメントとは

    2019年6月に発表された東京都と大会組織委員会がまとめた大会期間中の「輸送運営計画案」によると、新国立競技場周辺や有明地区に関係車両以外の通行を禁止する、「専用レーン」を設置するほか、7ヶ所に優先レーンを設置するとされています。そのうえで、競技会場周辺は一般車両に迂回を要請する区域を設置するとともに、進入禁止や通行制限などの規制も行うのだとか。

    今夏には、本番さながらの実証試験が行われる予定で、交通規制と信号調整により、通常時と比較して首都圏広域の一般交通では10%減、専用レーンを設置する重点地区では30%減を目指すとしています。ただしこの施策は基本的に選手や大会関係者、各国から訪れるVIPやメディアが各会場をスムーズに移動できるように打ち出されたものであり、専用レーンでは一般車の通行が認められていません。

    優先レーンに関しては、大会関係車両が走行していない場合に限り一般車も通行可能ですが、会場周辺に設置予定である他の通行規制エリアや迂回エリアを加味すると、地域住民やその道を日常的に走行するドライバーからは、強い反発が出ることも予想されます。規制だけではかえって渋滞発生や混乱が深まることを危惧し、東京都は「2020TDM推進プロジェクト」と銘打ち、企業や団体に対し交通量削減への取り組みを呼び掛け、現在1,636社が参加を表明しています。

    しかし、交通需要マネジメントを意味する「TDM」を実現するには、

    1. 時差出勤・在宅勤務
    2. 休暇の取得(企業による積極的な付与)
    3. 会議・商談時期の変更
    4. 納品時期の変更・まとめ発注の実施

    などが必要となりますが、いずれも企業や事業主の理解と協力が不可欠です。

    人員と資金力が潤沢な大企業や非営利団体・官公庁であれば、「大会期間中だけの話だから…。」と協力体制を取ることも可能ですが、スピード感のある商談や正確な出荷・納品などを求められる業種の場合、非常に困難かもしれません。金融・保険・不動産業などであれば、会議や商談への遅延はビジネスチャンスを失う要因になりかねませんし、運送業は遅延によって大切な商品が傷んでしまったり、約束の時間に間に合わなかったりしてしまうと、受け取り側との信頼関係が保てなくなるかもしれません。

    その点はオリンピックの開催と交通事情を互いに理解し合い、順調な交通が行えない場合の代替手段を考えるべきだと言えるでしょう。

    オリンピックに向けて活用を!IT導入と企業独自の取り組み

    オリンピック期間中に首都交通が混乱することと、その緩和を目指した交通マネジメントが実施されることを理解したうえで、今のうちから企業は独自の取り組みを実施していくべきかもしれません。

    お手本にすべき!?リコーの取り組み「全社一斉リモートワーク」

    首都圏公共交通網の混乱に対する取り組みの一つとして、もっとも混在が予想される朝の通勤・通学タイムを、スマホやパソコンでのIT会議・授業に変更するだけで、混雑緩和を避けることができます。

    事実、2020TDM推進プロジェクト参加した(株)リコーは、大会期間中約2,000名の社員が働く大田区の本社オフィスを完全にクローズし、在宅やサテライトオフィスでの勤務を発表しました。これほど大規模なTDM対策は大企業だからこそ成し得ることかもしれませんが、働き方改革として場所や時間を選ばないリモートワークは中小企業でもこれを機に取り入れるのもいいのではないでしょうか。

    天災などの不測の事態が発生しても事業を継続する対応策を「BCP」と呼びますが、リコーのリモートワーク実施はその一環でもあり、当然オリンピック閉幕後の自然災害発生時にもこの取り組みを実践することができます。

    GPSを超える精度!準天頂衛星システムの存在

    今では誰もが知っているGPS(全地球測位システム)は、米国が打ち上げた衛星を使った測位システムです。しかし、高層ビルが乱立する首都圏では、屋内を中心に多少の誤差が出てしまうという問題が発生しており、土地勘がない訪日外国人からは使いにくいと思われているようです。

    この問題を解決すべく生み出された新しい測位システムが「準天頂衛星」であり、東京オリンピックの行われる2020年までに、初号機「みちびき」を始めとする4機の測位衛星が日本独自で打ち上げられ、高精度な位置測位システムが構築される予定です。

    「準天頂」という言葉が示す通り、この衛星は日本のほぼ真上に存在し、Wi-FiやBluetoothなどの屋内向けIT機器と連携することで、誤差1cm~10cmと言われる正確無比な位置情報の測定と音声ナビゲーションが可能になるとされています。

    このシステムが確立すれば、対応車載機による多言語での正確なナビゲーションはもちろん、駅構内で利用する鉄道アプリの中で、「乗換え口はそこではなく〇番乗り場です」「予約された座席は3つ前です」などといった細かい案内も可能になるでしょう。

    さらに、法整備と並行して進むことになりますが、準天頂衛星の制度の高い位置情報は、国内自動車メーカーが進める自動運転化へも大きく寄与します。2020年夏の時点で無人加することはなくとも、半自動で適切なルートを選びハンドル操作や車速の調整、車線維持や会場での駐・停車などをアシストしてくれる、「プロパイロット・シャトルバス」が登場する可能性は十分にあり得るかもしれません。

    まとめ

    交通コンサルティングを専門とするトラフィックブレイン代表の太田恒平氏は、交通インフラの混乱により、少なからず地元企業・市民生活に影響を与える東京オリンピック・パラリンピックを、「計画的災害」という言葉で表現しています。

    ただ、同氏がそれに対応する交通システムは、後世に残すべきレガシー(遺産)になると発言している通り、官民一体となって「ITオリンピック」を実現すれば、日本の交通インフラはMaaSに適合する1つ上のステージへ、進化することができるのではないでしょうか。

  • BCG Digital Venturesが語る、大企業が新規事業を成功させる方法− 前編

    BCG Digital Venturesが語る、大企業が新規事業を成功させる方法− 前編

    元垣内:「まずは山家さんのご経歴とBCGデジタルベンチャーズ(以下BCGDV)についてご説明いただけますか。」

    山家:「BCGDVで、東京センターのエンジニアチームを統括している山家 匠(やんべ・たくみ)です。BCGDVの東京拠点は2016年4月に立ち上がりましたが、私は同年に入社しましたので、初期の頃のメンバーでもあります。

    現職につくまでの過去の経歴についても少し触れておきます。1社目は、証券会社のシステムをつくるシステムインテグレーターで、おもに基幹系システムの設計・開発やシステムアーキテクチャの設計をしていました。それから2008年後半、社員数がまだ80人程度だった上場前のGREEに転職。そこではSNSの基盤やプラットフォームに関する業務に従事していました。2011年にサンフランシスコに渡り、GREE Internationalの立ち上げに参画、帰国後はゲーム部門と基盤開発部を見てきました。

    2014年にAppirioへ移り、Topcoderというソフトウェア開発のクラウドソーシングを行うビジネスを担当。その後、BCGDVへ転職、今に至ります。

    BCGDVは、一言でいうと、新規事業を大企業と創造する組織です。ボストンコンサルティンググループ(以下BCG)という言葉上、どうしてもコンサルティングのイメージが強くなりますし、そこへさらにデジタルという言葉がつくので、BCGの戦略を実装する組織だと思われがちです。実際は、大企業と一緒に新規事業を立ち上げ、それを成長させるまでが私たちの仕事であり、BCGとは大きく異なります。

    典型的なパターンの一つは、大企業と新規事業を一緒に立ち上げて、その新規事業を運営する会社も作ってしまうこと。運営会社を立ち上げたら、お金と人員をお互いに出し合い、独立した会社として運営していきます。」

    元垣内:「ありがとうございます。これまでに大企業と組んで新しく立ち上げた事業はどのくらいあるのでしょうか。」

    山家:「グローバルでの実績をお伝えしますね。ロサンゼルス、ニューヨーク、シアトル、ロンドン、ベルリン、シドニー、上海、東京、全拠点を合わせて今まで作ってきた新規事業は80後半ぐらいですね。」

    元垣内:「ほとんどがグローバルリーディングカンパニーとのソリューション事業というイメージでしょうか。」

    山家:「そうですね。BCGDVが得意とするところは新規事業の立ち上げですので、そこに大企業が持っているアセットを掛け合わせるイメージです。

    アセットとひとくくりにしていますが、技術的なものだったり、ある国やあるエリアでビジネスを展開した経験だったり、企業によって本当に幅広いものです。それらを持ち寄っていただき、新規事業を作っていきます。ですので、スタートアップがゼロから事業を立ち上げるのとは少し基準が違うかもしれませんね。」

    元垣内:「グローバルで、尚且つビジネス誌・FORTUNEに定常的に載るような大企業と新規事業の立ち上げができるのは、BCGならではですよね。」

    山家:「たしかに、関係性も何もない状態からいきなり、『一緒にやりましょうよ』と声をかけるのは、なかなかハードルが高いことです。おっしゃる通り、BCGとしてのリレーションがあるからこそできる、というのはあるかもしれません。」

    大企業ならではの新規事業を立ち上げる際の困難とは

    元垣内:「大企業が新規事業を立ち上げる際に困難に思っていることはなんでしょうか。」

    山家:「いくつかあると思いますが、一つは、デジタルの新規事業立ち上げの経験がなく、まずは何をどうすべきか、手順や手段がわからないことです。また、社内の制度や仕事の進め方が既存の事業向けになっているので、新規事業開発ではでミスマッチを起こしてしまうケースも考えられます。

    実際に、BCGDVでプロジェクトを行うときには、今までの仕事の仕方や既存の考え方に縛られないように、ご担当者様に弊社のオフィスに来て常駐してもらうようにしているんです。それほど、既存の強い主力事業がある中で新規事業を起こすのは、非常に難しいということです。」

    元垣内:「なるほど。大手企業には大手企業の、ベンチャーにはない課題があるのですね。」

    山家:「立ち上げから運営までのスピード感は、スタートアップやベンチャー、そして大企業、それぞれで違いますが、新規事業の立ち上げはスピード感が大事です。

    私たちならではの強みは、スタートアップやベンチャーを実際に経験してきた人、実際に自分で会社を運営していた人、大企業と一緒に仕事をしたことがある人が弊社内にバランスよく揃っていて、どちらのコンテクストも分かるところです。つまり、大企業のコンテクストを理解しつつも、スタートアップで成功するためにはこういう進め方で、こんなスピード感で進めていくべきだという、掛け合わせた時の全体感を把握できるメンバーがたくさんいる。それが一番の強みですね。」

    元垣内:「今まで80以上のプロダクトやサービスを立ち上げられたという実績がそれを証明していますよね。グローバルでさまざまな成果やノウハウが蓄積されていると思いますが、グループ内で成果の共有はされているのでしょうか。」

    山家:「守秘義務もありますので、個別プロジェクトの詳細については知ることができませんが、成功事例から得たフィードバックやそこで適用したメソドロジー(能力を伝授するために体系づけた方法論)を反映して、今後のプロジェクトの進め方を改善していくことはあります。」

    元垣内:「それは、BCGならではのメソドロジーでしょうか。」

    山家:「BCGDV独自のメソドロジーとして集積しています。BCGは戦略コンサルティングが専門ですのでカバーする範囲が非常に広いのですが、私たちは新規事業に特化しているので、視点や進め方が異なります。」

    MaaSの取り組み事例

    元垣内:「ここからは事例の中でもMaaSに関するものをいくつかお伺いできればと思います。」

    山家:「事例を2つ、紹介させてください。まずは、Boschと組んだプロジェクトで、『COUP』という電動スクーターのシェアリングサービスです。ベルリンから始まり、今はパリとマドリードまで広がっています。BoschはB to B向けに自動車部品や電動工具を提供しているメーカーですが、カスタマーと直接コンタクトできるサービスを提供したい、そしてシェアリングという新しいビジネスにも参入したいという希望があり、このプロジェクトが始動しました。

    Boschが持っていたアイデアをもとに、BCGDVが実際のビジネスコンセプトを作り、検証を重ねたうえでリリースしました。」

    元垣内:「最近でこそ、MaaSやシェアリングという言葉が浸透してきましたが、『COUP』のローンチは3、4年前ほど前のことですよね。」

    山家:「取り組み始めたのは2015年ごろで、サービスが始まったのは2016年8月からです。当時としては先進的なサービスという印象でしたね。」

    山家:「スクーターの用意はBoschがパートナーシップを組んでいる台湾のGogoro(ゴゴロ)と進め、私たちはサービスのアプリや電動スクーターからデータを取得してサービスに反映させるところ(例:スクーターの現在地把握など)を開発しました。」

    元垣内:「ゴゴロって、バッテリーも取り外せるバイクですよね。」

    山家:「それが重要なポイントです。サービスとして長く続けていくためには、バッテリーの交換は避けられません。」

    元垣内:「ユーザー側はバイクの現在地やバッテリー残量がわかることで、使いたい時に行きたいところまで行けるかどうかの情報が可視化される。オペレーション側もバイクの稼働状況などがわかることでサービス全体の効率化を考えることができる。どちらにとっても使い勝手が良く、利便性の高いサービスですね。」

    山家:「もう一つが、Shellと組んで立ち上げた『FarePilot』というプロフェッショナルドライバー向けのサービスです。これはUberやLyft、一般のタクシードライバーにとってホットスポット、つまりお客さんが拾いやすいスポットが分かるアプリ。どのドライバーも、ただフラフラしているだけだとガソリンを消費するだけですので、無駄なくお客さんが近くにいるところへ行けた方が有利ですよね。このアプリは、時系列のデータとライブデータを分析して、ホットスポットをドライバーに教えたり、近くで行われているイベント終了時刻を知らせたりすることができるのです。モニターは非常にシンプルなデザインで直感的に使えるようにしました。」

    元垣内:「このサービスに対するShellの狙いはなんだったのでしょうか。」

    山家:「プロフェッショナルドライバーへの直接的なアクセスと、lower carbon technologyというコンテキストでサービスを展開することです。後者について簡単に説明すると、移動距離が少ないほうが二酸化炭素の排出量が減るという発想からです。」

    元垣内:「なるほど。同じ距離を走るのであれば、お客さんを効率的に乗せて生産性を上げましょうということですね。こちらのサービスはローンチまでにどれほど時間がかかりましたか。」

    山家:「私たちは基本的にサービスのローンチまでは、年単位でなく、3カ月〜6カ月ぐらいのスピード感でリリースすることを心がけています。一般的な業務系システムの開発だと1年や2年はかかるかもしれませんが、私たちの提供するサービスの場合、そんなに時間をかけるよりもユーザーに早くあてたほうが良いのです。」

    元垣内:「スマートドライブのように完全なるスタートアップでさえも、3カ月や半年でリリースというのはかなり刺激的なスピード感です。」

    山家:「ただ、この期間内でリリースするのは完全版ではなく、機能を絞った状態のもの。そこから徐々に改善を重ね、理想形に近づけていくようにしています。」

     

    グローバルな大企業が取り組む新規事業の取り組みをしっかりとサポートするBCGDV、後編ではさらに踏み込んで「データの活用」にフォーカスして紹介していきます。

    >>>>後編はこちらから

  • 【MaaSの基礎】MaaSを0から理解するために読みたい本5冊

    【MaaSの基礎】MaaSを0から理解するために読みたい本5冊

    2019年に入り、各業界でさまざまな取り組みや実証実験が進められ、ますます活況にあるMaaS。

    「ニュースでは話題になっているけど、イマイチその仕組みやメリットがわからない」「MaaSを0から理解したい」という方に向けて、MaaSについてわかりやすく、さまざまな視点から解説された書籍を5冊ご紹介します。

    MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ

    フィンランドを始め、世界中でモビリティ革命が起きている−―国内のMaaSはどこへ向かうべき? なぜ、各業界がこぞって取り組んでいるの?

    そもそもMaaSとは何か。MaaSによってどのようなビジネスインパクトが起きるのか。国内外での違いとは? 来たるモビリティ革命に備え、各産業はどのようにアクションを起こすべきかなど、MaaSの本質からまちづくりや具体的なビジネスへの転換まで、包括的にMaaSを捉えて解説する重厚な一冊。MaaSの先駆者・フィンランドで「Whim」を提供するMaaS GlobalのCEO、Sampo Hietanen氏のインタビュー、国内外におけるMaaSの主要プレイヤーをまとめたカオスマップも収録。しっかり読み込めばMaaSの全体像が把握できるはず。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    序章 MaaSは危機か、それとも輝ける未来か
    1. モビリティ革命「MaaS」の正体
    2. なぜMaaSのコンセプトは生まれたのか
    3. 日本におけるMaaSのインパクト
    4.「新モビリティ経済圏」を制すのは誰か?
    5. プラットフォーム戦略としてのMaaS
    6. テクノロジー戦略としてのMaaS
    7. MaaSで実現する近未来のスマートシティ
    8. 産業別MaaS攻略のアクションプラン
    終章 「日本版MaaS」に向けて

     

    著者:日高洋祐・牧村和彦・井上岳一・井上佳三
    出版社:日経BP社
    書籍ページ:https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/269670/
    Amazonページ:https://amzn.to/2yfO0Ca

    スマートモビリティ革命

    現在のモビリティ革命の背景にある世界の公共交通政策や情報技術の進化について概説しながら、日本でいち早くモビリティサービスを実現した未来シェアの「未来型AI公共交通サービスSAVS(Smart Access Vehicle Service)」について、技術と社会実装の現状を紹介。来たる超高齢化社会により、過疎化が止まらない地方。社会課題を解決するために、MaaSをどのように取り入れるべきか? 国内MaaSを浸透させるために必要なこととは?実際の取り組みから、モビリティ革命に必要な考え方、最適化への課題を浮き彫りにした一冊。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    序章 スマートモビリティ革命へ向けて
    1.世界の公共交通政策とスマートモビリティ革命
    2.未来型AI公共交通サービスSAVS
    3.スマートモビリティを実現する未来技術
    4.都市型デマンド交通とマルチエージェント社会シミュレーション
    5.未来のモビリティデザインと需要分析・予測・設計手法
    6.SAVS実証実験の全国展開と未来型AI公共交通への課題
    7.SAVS実証実験の舞台裏―マルチデマンド配車計算の実装
    8.地域公共交通の現実とモビリティ革命への障壁
    終章 SAVSで未来社会を創る

     

    著者:中島秀之・松原仁・田柳恵美子・スマートシティはこだてラボ+株式会社未来シェア
    出版社:近代科学社
    Amazonページ:https://amzn.to/2GyXSeL

    Mobility 3.0: ディスラプターは誰だ?

    MaaSと共に注目ワードになっているCASE(ケース)。これは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared / Service(シェアとサービス)、Electric/Electronicのそれぞれの頭文字を組み合わせた略称です。世界最大手の経営コンサルティング会社・アクセンチュアが、100年に一度の変革期真っ只中にある自動車業界において、これらのモビリティサービスがどのようなインパクトを起こすか、自動車業界が生き抜くためにすべきことなどを丁寧に解説しています。アクセンチュアによる最新予測からGoogleとソフトバンク、自動車メーカーそれぞれのアプローチ、CASEから見たクルマの未来など、読み応え抜群の内容です。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    序章 モビリティ3.0の世界で、人々の移動はどう変わるか?
    1. CASEがすべてを変える
    2. CASEからどのようなビジネスが生まれるのか?
    3. CASEによって新たに生まれる事業機会
    4. グーグルの戦い方
    5. ソフトバンクの戦い方
    6. CASE時代における自動車メーカーのモビリティ戦略
    7. モビリティ3.0の世界を創造する

     

    著者:川原英司・北村昌英・矢野裕真
    出版社:東洋経済新報社
    書籍ページ:https://str.toyokeizai.net/books/9784492762493/
    Amazonページ:https://amzn.to/2KccPnW

    モビリティー進化論 自動運転とモビリティサービス、変えるのは誰か

    進化する自動車産業のけん引役は、「自動運転」と「次世代モビリティサービス」-?カーシェアリングが全国に普及し、クルマは所有からシェアする時代に変わりつつあります。著者曰く、将来はこの2つが融合することで自動車産業の姿が大きく変わるのだとか。

    クルマの枠を超えたモビリティの未来を、日本国内だけでなく、米・欧・中などの国々、そして社会情勢や需要、産業、都市環境を踏まえじっくり考察された書籍。具体的なコスト面までもしっかり見据えており、絵空事ではなく現実的な視点で考えられていることがわかります。MaaSによって、日本と世界はどうなるの?をしっかり解決してくれるでしょう。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    1. 交通システムで解決すべき社会的課題・ニーズ
    2. 世界各国の都市構造はこれだけ違う
    3. 各国の普及をけん引するのはどの産業か
    4. 既存の交通サービスはどこに問題があるか
    5. 各国で勃興する新たなモビリティーサービス(前編)
    6. 各国で勃興する新たなモビリティーサービス(後編)
    7. モビリティーサービスとしての物流市場
    8. ユーザーから見たモビリティーシステム変革のニーズ
    9. モビリティーシステムの変革を国や自治体が後押し
    10. 自動運転車開発の「押さえどころ」を考える
    11. 自動運転車の販売価格はこうなる
    12. 自動運転型モビリティーサービスの開発をいかに進めるか
    13. LSVが変える自動車業界
    14. モビリティーサービスと自動運転、2030年の普及シナリオ
    15. 自動車市場への影響とプレーヤーに求められる行動

     

    著者:アーサー・ディ・リトル・ジャパン
    出版社:日経BP社
    書籍ページ:https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/265010/
    Amazonページ:https://amzn.to/32WscJN

     MaaS入門:まちづくりのためのスマートモビリティ戦略

    8月1日に発売予定のホヤホヤの新刊!2019年のバズワードになりつつあるMaaS。国内と世界の動きを紹介しながら、地方と都市をサステナブルな状態にする強力なツールとして、MaaSをどのように活かすべきかを徹底解説した一冊。これからMaaSを学びたいという方、MaaSで地方創生を考えている方にもぴったりのMaaS入門本です。

     

    ざっくり内容を把握する目次欄:

    序章 MaaSは交通まちづくりの最強ツール
    1. フィンランドから世界に広がるMaaS
    2. MaaSの源流になったスマートテクノロジー
    3. フィンランドとヘルシンキの政策
    4. MaaSが生まれた理由
    5. ヘルシンキでMaaSを体感する
    6. 世界で導入が進むMaaS
    7. 自動車メーカーがMaaSに参入する理由
    8. ルーラル地域とMaaS
    9. 日本でのMaaSの取り組み
    10. 日本でMaaSを根付かせるために

     

    著者:森口将之
    出版社:学芸出版社
    書籍ページ:http://book.gakugei-pub.co.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2711-2.htm
    Amazonページ:https://amzn.to/2K8cSRN

  • 介護タクシーにおける車両管理システムの活用事例

    介護タクシーにおける車両管理システムの活用事例

    【会社概要】
    会社名:有限会社One up(http://sts-taxi.net/
    事業内容:民間救急・介護タクシー事業,総合保険代理店の運営
    従業員数:45名

    「SmartDrive Fleet」の導入前に抱えていた課題

     

     まずは、「SmartDrive Fleet」を導入しようと思ったきっかけについて、お聞かせ願えますか。

    有限会社One upでは、損害保険や生命保険などの保険業とともに民間救急・介護タクシーの運営も行っています。

    保険の営業マンはほとんどがそうだと思いますが、営業先への移動は小回りがきく車を利用します。営業マン1人につき車両が1台という企業様も少なくないでしょう。最近は以前と比べて人手不足の影響で営業マンの人数が減ってしまったこともあり、普段から車両を使って営業マンがどのように営業活動をしているかを把握したうえで、車両管理を徹底し、業務の効率化が行えないかと考えていました。そこで車両管理が行えるツールを探すことにしたのです。

    また、車両管理と営業マンの位置情報を把握しなくてはならない理由には、保険業法も関係していました。保険の契約を取る際には、契約者に対面で説明し、利用規約に同意していただくことが保険業法で定められていますが、これが遵守できなければ業務停止命令が出てしまいます。たとえお客様のご要望であっても、営業マンが契約書を代筆するのは絶対にあってはならないことです。そうした事業リスクを排除するために、契約を取った場所が契約者の家であるかが確実にわかるよう、GPSで証跡を残すことを目的に利用していたのがiPadでした。Apple IDを共通化すればリアルタイムの位置情報を確認できるので、営業マン一人ひとりにiPadを貸与し、そこから位置情報を確認していたのです。これは車両管理ツールにはなりませんので、あくまでも位置情報の取得という観点で利用していました。

    そんな中、保険の営業マンが利用する車両に加え、介護タクシー事業の開業により利用する車両が一気に増加します。介護タクシー事業は、保険業の契約者に介護老人保険施設が多く、高齢者の送り迎えや交通手段に困っている利用者が多いと知って、少しでもスムーズな移動を手助けできるようにと始めたものです。初めは3台だったものが、徐々に需要が膨らみ、現在ではおよそ20台が稼働するようになりました。保険の営業マンと同じように、ドライバー全員にiPadを貸与しようかと思いましたが、落として壊してしまったり、紛失してしまったり、さまざまなリスクがあるので難しいと判断。iPadを1台購入するにも、それなりに金額がかかりますしね。

    10年ほど前からiPadのGPS情報を活用して、リアルタイムで車両位置情報を管理していましたが、本当はiPadを使わず別の手段によって、安く・簡単に管理する方法を探していたのです。たしかに便利ではありますが、iPadもiPhoneも設定に手間がかかりますし、設定ができる人に頼らなくてはなりません。しかし、「SmartDrive Fleet」はシガーソケットに挿すだけで簡単に利用を開始できるので、初めて話を伺った時に「これだ!」と。

    なるほど、まずは保険業の方で車両管理をしっかりと行う意義を見出されたわけですね。では、なぜ介護タクシー事業でも車両管理を行おうと思われたのでしょうか?

    介護タクシーは、保険で利用する車両とは異なる課題を持っていました。それは、ドライバーの労働時間管理です。労働基準法の改正によって、始業から終業までの拘束時間と労働時間、休息時間を管理者が把握し、定められた時間を越えないように管理者側が責任をもって調整を行う必要がありました。所定の拘束時間を越えれば翌日の労働時間を調整しなくてはなりませんし、給与計算も変わってきます。今までは自己申告制でしたが、万が一、基準を越えてしまうと労働基準法違反になりますし、ドライバーも過労で体調を崩すかもしれない。そこで労基法を遵守するために管理が徹底できるツールはないかと。

    今後、業務拡大に向けてスタッフや車両を増やしていくとなると、自己申告では正確な労働時間と休憩時間が把握できませんし、適切な管理も行えません。そして何よりも記録がないと何かあった時に会社としての責任を問われてしまいます。また、介護タクシーを運営する中で、給与体系を運賃の50%をドライバーに還元する歩合制へと変更しましたので、実働時間に対する給与支払いを行うために実働時間と休憩時間を正確に計上する必要がありました。これらの理由を含め、労働状況を把握し、労務管理をしっかりと行ったうえで給与支払いを適正に行うにはどうすればいいのかという課題にぶつかっていました。

    確実に記録を残すことができるうえ、誰もが簡単に設置と管理ができるという点で、「SmartDrive Fleet」を試してみたいと思ったのです。さらに調べていくと、配車効率の向上にもつながることがわかり、今後の期待も込めて導入を決めました。

    『SmartDrive Fleet』とともに、他社のツールも比較検討されていたのでしょうか。

    インターネットで何社か確認しましたが、操作画面を見て直感的に使いやすいなと思ったのが「SmartDrive Fleet」でした。また、今までGoogle Mapを活用して車両管理や営業、ドライバーへの指示を出していましたので、Google Mapをベースにリアルタイムでの車両管理ができるというもの大きなポイントでしたね。

    導入する直前までは連絡手段としてLINEを活用されていたそうですね。たとえば、お客様からここに来て欲しいと依頼があった場合、どのようなオペレーションで連携を取っていたのでしょうか?

    ドライバーにLINEで現在地を送ってもらい、その位置情報を元にお客様から一番近いドライバーをアサインするという方法で指示していました。お客様には、ドライバーの現在地からお迎えにあがるまでのルートと場所、そしてGoogle Mapの所要時間を目安にしつつ、少し余裕を持たせた時間をお伝えしていました。バスやトラックのルート配送と違って常に目的地と住所が異なりますし、ドライバーにLINEで位置情報を送ってもらっても、その後実は移動していたというケースも多々あり、結局また電話で最新の位置情報を確認する等して意外と手間がかかっていたんです。

    今、どの車両がどこにいるのか。そうした情報を確実に把握してスムーズオペレーションを行いたい。そうした思いから、LINEはあくまでも一時的な連絡ツールとして利用していただけで、車両管理システムは必要だと前から検討していました。

    「SmartDrive Fleet」の導入を決めた理由

     

    「SmartDrive Fleet」を導入する決め手となったのはどの機能でしょうか?

    導入以前は、連絡をスムーズにするために、ドライバー全員に社用携帯電話を所持させていました。しかし、経営・管理側と現場側との間で、なかなか埋めることのできないギャップがあったのです。

    管理側からすれば、業務時間中に電話がかかってきたら、素早く停車してなるべく早く電話に出てもらいたい。しかし、それを伝えると、ドライバーからは「休憩時間も拘束されないといけないのか」と反発が出てしまうのです。先述したように、拘束時間の中には労働時間と休憩時間が含まれますが、業務上、稼働時間に多少の前後が出てしまうので休憩時間はドライバーによってバラバラです。こちらもそこまでは把握しきれません。

    そこで改善策として、会社の携帯電話ではなく、ドライバー個人の携帯電話を使うことになりました。最近のスマホならば、電話でコミュニケーションを取る必要はあまりなく、LINEのやりとりだけで完結させることができるからです。ただ、プライベートの携帯電話なので、お客様への電話連絡を強制できない。そうなると、その部分のオペレーションは管理者側で対応せざるを得ません。結果、電話でのオペレーションは管理者側が、ドライバーにはLINEで業務連絡を送り、随時対応してもらうというフローで一旦は着地しました。

    しかし、このままでは非効率です。そこで、本腰を入れてさまざまな車両管理システムを調べることにしました。デバイスと携帯電話を連携させるシステムを提供している会社はいくつかありましたが、利用しているのがドライバーの個人携帯なので、つながっている間の通信料はドライバーにかかってしまうため、このタイプは導入が難しい。ところが、「SmartDrive Fleet」は通信機能内蔵型ですので、個人の携帯電話と連携させなくても利用することができますよね。さらには、シガーソケットに挿すだけでデータが取得できるといったシンプルさが決め手になりました。

    毎回業務の前に細かい設定が必要になると、ドライバーの負担が増えるだけです。年配のドライバーやITリテラシーが低い人も少なくありませんので、そういった容易性は私たちにとって非常に重要なポイントだったのです。使い方が難しいと社内への問合せも増えますし、運用する上でのサポートコストもかかってしまう。それを最小限にできるというのも決め手になりましたね。

     

    「SmartDrive Fleet」の導入後に得られた効果

     

    「SmartDrive Fleet」を導入してから、どのような効果や変化がありましたか?

    もっとも大きな効果は、走行履歴や安全運転診断を活用して指導を行うことができるので、ドライバーの意識が変わったことです。

    走行履歴には、ドライバー一人ひとりの特徴や性格が明確に出ます。たとえば、午前10時に5km先にいるお客様をお迎えに行く場合、ドライバーが出発時間と経路を考えなくてはなりませんが、通常、5kmなら20分ほどで到着と分かっていても、1時間前に車庫を出る人と20分前に車庫を出る人ではその後の対応が大きく変わります。1時間前に出る人は、しっかりと段取りを組んで向かうため、予期せぬことが起きても慌てることなく冷静に対処できます。一方、20分前に出る人は道路が渋滞していたり、事故があったりすると、約束の時間に遅れてしまいますし、その後の業務も後手後手の対応になってしまいます。走行履歴からはそうした情報を読み解くことができるので、後者のタイプのドライバーにはもう少し早く出るようにアドバイスをして、トラブルを回避するようにしています。

    1時間前に出る人は同じようなトラブルに直面しても事前に調べた経路の複案を持っているので問題なく対処ができるのです。時間に余裕があると、何かあった場合でも、次の業務に支障がでないように早急に本部へ連絡を入れて会社の影響が少なくなるような配慮ができますし、余裕を持った行動ができるので、お客さんの希望も柔軟に聞き入れることができるんです。たとえば、普段は自宅から病院までの送迎でも、希望を聞いて途中にある薬局へ寄ってあげることもできる。このように、走行データから一人ひとりが成果を出せるよう、個別のアドバイスと適切な教育が行えるようになりました。

    そういう良い循環ができれば会社としても信頼と売り上げが向上しますし、お客さまのリピートにもつながります。

     

    2つめは安全運転への意識です。余裕のないドライバーは、少しでも時間に遅れるとすぐにスピードを上げて間に合わせようとします。スピードの出し過ぎや、急操作が3回以上あった場合は運転診断アラートメールを飛ばすよう設定し、ドライバーが事務所へ戻ってきた時や翌日など、タイムリーに指導をして安全運転を徹底しました。それを続けてきた結果、効果が出てきたのです。

    安全運転診断の結果は集計後、週次で全ドライバーが目を向けやすい場所に貼り出していますが、可視化された自分の運転をしっかりと見て振り返ることができるので、急操作が激減し、急加速についてはほとんどなくなりました。以前は匿名の電話で「運転が心配だ」というご意見を頂くこともありましたが、現在ではそうした電話がありません。私たちのお客さまは個人だけではなく、半分が病院です。ご依頼をいただくのは総合病院が多いので、信用関係がなければ依頼にも繋がりません。安全運転は会社の信用に直接つながる重要な要素ですし、会社の経営にも直結しますので、安全運転への意識が改善できたことは全社的にも大きなインパクトでした。

     

    振り返りでは、具体的にどのようなことをされているのでしょうか。

    「SmartDrive Fleet」の走行履歴で毎日、欠かさず安全運転の振り返りを行っています。最初の頃は、なぜ急ブレーキや急発進、急ハンドルが発生したのか分かりませんでしたが、ドライバーに問いかけることで管理側も原因と要因をはっきり認識できるようになりました。

    ドライバー自身も自ら「なぜ急操作が発生したのか」を考えるようになっています。あの時間、あのルートで急ブレーキを踏んだ。そこで、なぜ、急ブレーキを踏まなければならなかったのか。すると、「あの曲がり角近辺で、車が急に飛び出してきたからだ。あそこは少し見通しが悪いから危険だな」だと思い出す。そうすれば、次に同じルートを利用するときに、注意を払うようになりますよね。継続して振り返りを行っていると、危険な運転が発生したら、その理由を事前に覚えておこうという意識を持つようになるのです。

     

    「SmartDrive Fleet」は安全運転の度合いが点数化されますので、次のアクション(改善策)に結びけることができるんです。

    ある日、点数が低いドライバーに、「なぜ、いつもと違うルートを通ったの?」と問いかけると、「急いでいたので裏道を使いました」という回答されたことがあるんですね。さらに、急いでいた理由を問うと、「xx様のお迎えで少し時間がかかってしまい、結果として次の訪問先に遅れました」と。ここからさらに質問をして問題の核に迫っていきます。「どのような理由で、xxさんは遅れてしまったの?」と聞くと、ベッドから起き上がれなくなったためだとわかりました。

    管理者側には患者様の情報までは伝わりません。しかしこのように、ドライバーとコミュニケーションをとって原因が明らかになれば、ケアマネージャーにxxさんの情報を共有し、利用者の容体に合わせたサービスを提供できるようになります。そうなると、ケアマネージャーからも、介護者の容体確認や情報共有までしてくれる介護タクシー会社として、信用・信頼が生まれていくということです。

    なるほど、今までは運転の振り返りはしても、根本原因までは分からなかった。それが、今は走行履歴や安全運転診断のデータを活用し、「なぜ急ブレーキがあったのか」「なぜ急いだのか」「なぜxxさんのところで遅れたのか」と深掘りしていくことで、利用者様の状態が詳細にわかるようになったと。それが会社の信頼を底上げすることにつながっているのですね。

    基本的にケアマネージャーがケアプランを作りますが、介護タクシーは法律上、ケアプラン以外のサービスを提供できません。もし、ケアプラン以外のサービスを提供してしまうと、介護保険をもらえなくなってしまいます。ただ、そこで何もしないという訳でなく、気づいた点をもとにケアマネージャーにプランの変更を提案することで、お客様へのサービスを最適化するようにしています。1番大事なことは、みんなで振り返りをすることで、お客様の体調がしっかりと把握できるように意識づけすることです。

    「SmartDrive Fleet」の導入で、今までと振り返り方は変わりましたか?

    そうですね。今までは時間に遅れた、クレームが来たなど、何か問題が発生したら振り返りをしていましたが、今は振り返りが習慣化しましたので、問題を未然に防げるようになりました。

    私は配車を組んできた経験が長いので、「あの通りは普段なら30分で行けるけど、この時間帯は混雑するから40分はかかる」といったデータが頭の中で蓄積されていますが、過去の走行履歴のデータを見ることで、所用時間の平均がわかることに気づきました。そこから今は自分の持つ経験値と実際のデータを照らし合わせて、配車を組むロジックを磨きあげています。今後は私だけなく、「SmartDrive Fleet」のデータを見て、誰もが道路の混み具合や特性を加味したルートでの配車を組めるようになってほしいと思っています。

    ご存知かとは思いますが、タクシーは距離と時間によって金額が変わるものです。最短距離で行けば安くなりますが、渋滞に巻き込まれてしまうと前に進まないのに金額だけが高くなってしまいます。理想は混雑しない最短ルートで到着すること。そこで、「SmartDrive Fleet」のデータはお客様にとって最適なルートをドライバーに教えるためにも一役買っています。

    ドライバー個人の走行データから、毎日向かっている目的地にどのルートを利用しているのかを把握できれば、管理者は無駄のない正しいルートを教えることができます。安全運転しながらも次の仕事に間に合わせるには、5分〜10分程度、時間に余裕をもたせなくてはなりません。余裕を持つことができれば次の仕事に、そしてドライバー自身の給与アップにもつながります。

    道路はその時々の状況によって常に変化します。なので、同じルートでも明日は状況が変わっているかもしれない。そのことが伝わるようにアドバイスするには、各ドライバーがいつもどの道を走行するかを理解しつつ、運転の癖を見抜いて指導することが重要です。走行履歴はそうした癖を見抜くためにも、非常に役立っています。

    ここ5年〜10年以内にドライバーになった若手はカーナビ世代ですが、何十年も運転しているベテランドライバーは地図世代が多く、頭の中に地図がある程度入っているので、同じ目的地へ向かうにも迂回ルートをいくつか理解しています。だからこそ、若手の教育に「SmartDrive Fleet」やそこから取得したデータが活用できるのです。ナビ世代の若手ドライバーは新しいテクノロジーやツールに対して抵抗がないので、安全運転教育ではデータを活用した方が吸収が早い。地図と自分の走った実際のルート見比べながら、レクチャーできるのはとても良いですよね。

    「SmartDrive Fleet」の活用で目指していきたいこと

     

    「SmartDrive Fleet」に搭載されているスマートフォンアプリのリアルタイム機能もご活用いただいているそうですね。

    はい、リアルタイム機能によって予想外の効果が出ています。先述したように社用携帯から個人携帯へと運用が変わったので、業務連絡はすべて事務所を経由していました。案件によっては、同じ場所へ2名のドライバーを向かわせるケースもありますが、待ち合わせの際にそれぞれが今・どこにいるかという情報を管理者が個別に連絡しなくてはならなかったのです。それが今では、ドライバーのスマホから他のドライバーの現在位置が確認できるようになったため、わざわざ管理者に確認の電話をする手間がなくなりました。

    また、全ドライバーの現在地が可視化されるようになると、他のドライバーと同じ場所にいてはアサインされる可能性が低くなるということがわかりますので、各ドライバーがどこにいれば自分に仕事がアサインされる可能性が高いかを意識しながら自発的に動くようになりました。


    SmartDrive Fleetを活用して今後目指していきたいこと

    現在は、民間患者搬送用の車両12台で『SmartDrive Fleet』を導入しています。民間患者搬送とは、病院に行く際に救急車を呼ぶほどではないけれど自身では運転して行けない場合に利用される移動手段のことです。とはいえ緊急性が高いことも多く、今から何分後に到着できるのか、正確な情報を伝えることが何よりも重要となります。他の車両よりも、リアルタイム機能の必要性が高かったため、まずはこの車両に導入しましたが、今後は他の車両にも導入して実働時間や休憩時間を把握し、労務管理をしっかり行っていきたいと思っています。

    スマートドライブに今後期待することや希望することはございますか。

    手書きの日報を1年内には廃止したいと思っていますので、乗務記録(休憩や実車走行等のステータスをスマートフォンアプリで登録して記録に残せる機能)で記録を残せるよう、現在、テスト運用を行っています。そこへさらに、お客さまごとの利用運賃が記入でき、簡単に計算できるようになるとより便利になるのではと思っています。今は「メモ」欄に運賃を記入していますが、集計はできませんので…。ですので、今ドライバーが日報をもとに自分で集計しているものを自動化することができれば、さらなる効率化につながるのではないかと考えています。

    また、車両の停止時間から走行開始するまでの時間を「休憩時間」と自動で判定できれば、労務管理も効率化できるのではと思っています。車両を停止してから15分経過したら休憩を開始したと判断するとか。ただし、利用者都合での待機時間は労働時間に含まれますので、この区分けをできるようにしなければなりません。

    ドライバーに負荷がかからないように、労務管理を行えるようになること。これが今、私たちが目指すところです。

  • ここまで進んでいる!MaaSの海外事例まとめ

    ここまで進んでいる!MaaSの海外事例まとめ

    国連が2018年5月公表した報告書によると、世界の都市部に暮らす人口割合が2050年までに約7割に到達し、現在33ある人口1,000万人以上の大都市も2030年には43都市へ増加する見込みです。人口集中による交通渋滞の悪化や排ガス規制などの環境問題、さらに地方では交通弱者の増加が懸念される中、数あるモビリティ(移動手段)を1つのサービスとして捉え、ICTを活用することでシームレスにつなぐ新たな概念、「MaaS」への注目度が国内でも高まってきました。

    この記事では、海外で進んでいるMaaSの事例をまとめてご紹介します。

    Whim(ウィム)・・フィンランド

    出典:MaaS Global

    サービス提供者:MaaS Global
    サービス展開地域:ヘルシンキ・ウエストミッドランド・アントワープ
    運営スタイル:官民連携

    MaaS先進国フィンランドの首都・ヘルシンキでの実証実験を経たのちに正式運用が始まったWhimは、公共交通の電車とバス、タクシー、シティバイク(自転車シェアリング)、レンタカーなど、複数のモビリティサービスの予約と決済を一括で行えるスマホアプリです。

    現在世界でもっとも発展・普及が進んでいるWhimには、①月額無料の「Whim to Go」②月額49ユーロの「Whim Urban」③月額499ユーロの「Whim Unlimited」という3つのコースがあり、①は各種チケットをアプリ内で購決・決済できるだけですが、②は対象エリア内の公共交通機関が乗り放題。加えて、5kmまでは最大10ユーロでタクシーが、一日49ユーロの固定料金でレンタカーを、一回30分以内なら無料でシティバイクまで利用できます。③に至っては、さらにレンタカーと5kmまでのタクシーの利用が無料になるものの、日本円だと約61,000円とやや高額であるため、ユーザーはまだそれほど多くないようです。

    MaaS Globalは運営する中で移動手段として自家用車を選択するWhimユーザーの割合が40%から20%へ減り、公共交通機関を利用する割合が48%から74%に増加したと報告しています。2018年末には、ヘルシンキにおけるアプリ利用ユーザーが7万人を突破しましたが、同都市の総人口60万人の約12%にすぎず、有料登録しているのはアーリーアダプターで、大半が月額料金のないWhim to Go利用者です。

    MaaS GlobalのCEO、ヒエタネン氏によると、2019年中に日本の大都市、とくに外国人居住者や観光客の多い横浜で日本版Whimを展開することを視野に入れており、すでにパートナーとの交渉も始めているとのこと。アプリ1つでモビリティサービスの検索やチケット予約、決済などができるうえ、バンドリングとサブスクリプション契約も可能なWhimは、日本にはまだプレイヤーがいないMaaSレベル3のアプリとしても、その動向に目が離せません。しかし、バスやJRなどの公共交通網が整っており、人口比でみると世界最大数のタクシーが走り回っている日本の大都市において、決済ツールとして便利な無料版は広がっても、有料版のWhimは普及していくでしょうか…?

    Kyyti(クーティ)・・フィンランド

    出典:Kyyti Group

    サービス提供者:Kyyti Group
    サービス展開地域:フィンランドのトゥルク地域
    運営スタイル:官民連携

    Whimと同様、フィンランド発のスタートアップ企業Kyyti Groupがリリースした、MaaSプラットフォーム「Kyyti(クーティ)」。同サービスは、1つのプラットフォームに統合されたルートプランニングと、すべてのモビリティモードの支払いと発券が可能な専用アプリを軸に、

     

    • デマンドレスポンシブトランスポート(DRT)・・・主に、公共交通機関の利用が困難な障害者・高齢者や、在宅介護サービス従事者を対象として、一般ユーザーの承認制で乗り合いをする公共交通システムのこと。
    • モビリティデータ分析・・・AIとディープラーニングの活用により、モビリティデータで交通システムを最適化する機能を搭載。

    などによって、公共交通機関はじめライドシェア&レンタカーはもちろん、フェリーやレンタサイクルなどといった移動手段だけではなく、ユーザーごとの状況に最適かつ便利なトラベルスケジューリングの構築と、チケット予約・決済ができるのが特徴。スイスの大手公共交通企業である「Post Auto」や、米国の「Demand Trans」などと提携し、MaaSおよび需要に応じたトランジットソリューションを開発/実装している真っ最中です。

    moovel(ムーベル)・・ドイツ

    出典:ダイムラー

    サービス提供者:ダイムラー
    サービス展開地域:欧州・北米・豪州
    運営スタイル:官民連携

    自動車大国・ドイツを代表する大手自動車メーカーであり、トラックに関しては世界一のシェア誇るダイムラー傘下のモビリティテクノロジー企業、「moovel Group GmbH」が提供しているのが「moovel」です。2015年からサービス提供されているmoovelモビリティアプリでは、移動手段の検索・予約・決済はもちろん、Apple PayやGoogle Payといった支払いオプション設定や、NFC・Bluetooth・QRコード・バーコードなど、ほぼすべての非接触技術に対応しています。

    また同アプリは、リアルタイムでの交通状況を把握する機能を有しているため、ユーザーは渋滞や遅延などに巻き込まれない時間やコスト的に最適なルートを事前リサーチすることもできるのです。

    Qixxit(キクシット)・・ドイツ

    出典:Qixxit

    サービス提供者:QT Mobilitätsservice
    サービス展開地域:ドイツ国内と近隣諸国一部限定
    運営スタイル:民間独自

    1994年旧東西国鉄が統合・民営化したドイツ鉄道(以下DB)は、MaaS事業の参入に力を入れている鉄道事業者であり、2009年に「DB Navigator」というMaaSアプリをリリースしています。同アプリは、リリースから機能や対象エリアが段階的に追加され、DBの長距離・近距離路線はもちろん、DBグループのカーシェアリングやレンタサイクル、他社の公共交通機関の予約・決済が可能です。しかし、ドイツが属する欧州では、いくつも国をまたいで移動するユーザーや陸路だけではなく航空機を利用する方も多いことから、DBは2013年、都市間・国際間輸送に対応する新MaaSアプリ「Qixxit(キクシット)」を開発、追加リリースしました。

    Qixxit はDBが提供している輸送モードを網羅した、全世界対応の経路検索・予約・決済サービスとして開発されましたが、2016 年末以降は同社から完全に独立したスタートアップ企業が運営しています。欧州でDB と競合しているFlixMobility社とも提携しているほか、都市内輸送に関しては一切対象から外して都市間・国際間輸送に特化するなど、DBの思惑とはかなり異なるサービスに変貌しているようです。

    滴滴出行(ディディチューシン)・・中国

    出典:ディディモビリティジャパン

    サービス提供者:滴滴出行
    サービス展開地域:中国
    運営スタイル:民間独自

    米国ではUber、中国版では滴滴出行(以下、ディディ)と言うように、中国国内のライドシェアを推し進めているのが滴滴出行(以下ディディ)。ディディと提携各社のタクシーをはじめ、サラリーマンなどが副業としてドライバーを務める「合法白タク」の予約・配車・決済も可能です。配車可能な車両ランクは以下の5つで、ランクが上がるほど車種のグレードがアップします。

    1.順風車・・・ライドシェア(乗り合い)車で一般ユーザーが運転する最安ランク。
    2.出租車・・・ディディアプリ経由で他社のタクシーを呼ぶランクで、料金は各社のメータ次第。
    3.快車・・・ディディ専属のタクシーが配車され通常快車と優良快車があり、後者は料金的に出租車より割高です。
    4.礼燈専車・・・ディディ専属の高級タクシーで6人乗りなども存在し、料金は通常快車の1.5倍程度です。
    5.豪華車・・・ディディ専属の超高級タクシーでベンツなどの高級セダンが配車されるが、料金も最も高く通常快車の9~10倍もします。

    Uberと同じく、降車後にドライバーの運転を評価するシステムになっているため、事前に評価を確認して利用することができます。そのため、最安ランクの順風車を選んだからといって、危険な運転を繰り返すドライバーに当たる心配はありません。アプリ内で現在地設定をすれば指定したランクのタクシーがどこにいて、どの程度の時間で到着するかがすぐにわかるため、次の移動のためカフェからスマホで予約し、時間が来たら店から出て車に乗ることも可能です。

    アプリ内ではランクと移動距離ごとの運賃がしっかりと明記されるため、ぼったくりのような被害に遭うこともありませんし、万が一に備えてワンクリックで警察へ通報するボタンも備えられているので安心です。現時点では、白タクが違法のため日本への参入はありませんが、中国旅行をする際にはアプリをダウンロードし、ディディの利便性を体験してみるのも良いのではないでしょうか。

    UBIGO(ユビゴ)・・スウェーデン

    出典:Ubigo

    サービス提供者:UbiGo
    サービス展開地域:スウェーデン
    運営スタイル:民間独自

    2013年にスウェーデン・ヨーテボリで成功したMaaSパイロットプロジェクトから生まれたUBIGO。現在では、首都ストックホルムを中心に利用ユーザー数が増えています。ストックホルムではSL社GA公共交通機関の地下鉄・トラム・バス・鉄道・水上バスなどを一括で運営していますが、そのすべてとレンタカー・カーシェアの予約・決済を、アプリ1つでできるのがUBIGOの持ち味です。

    また、SLのフルレンジ10日間乗り放題とMove AboutおよびHertzが提供するレンタカー・カーシェアがセットになる、バンドリングやサブスクリプション契約も可能なことから、Whimに匹敵するレベル3のMaaSプラットフォームと言えるでしょう。

    GoLA(ゴーエルエー)・・ロサンゼルス

     

    サービス提供者:ロサンゼルス市
    サービス展開地域:ロサンゼルス
    運営スタイル:官主導

    1980年代、米国のロサンゼルスには基幹公共交通がほとんどなく、トロリーバスや路面電車が都市交通の中核を担うサンフランシスコとは対照的に、お世辞でも交通の便が良いと言える都市ではありませんでした。

    しかし今では、地下鉄やライトレールトランジット (LRT)、バス・ラピッド・トランジット(BRT)などが整備され、タクシー配車サービスも数多く普及。さらに、シェアサイクルも街中にあふれ、米国随一のハブ都市へと発展しています。この発展を支えたのは行政で、同市は2016年にゼロックスと共同開発したアプリ、「GoLA(ゴーエルエー)」を行政サービスとして提供を開始しました。

    アプリに現在地と目的地を指定すると、時間・費用・エコ順で複数の推奨ルートが表示され、LRTやBRTのほか、同市内に張り巡らされた空港シャトルバス(FlitWays)、配車サービス(Lyft)、カーシェア(Zipcar)など、多様なモビリティインフラの予約と決済がスマホのみで行えます。

    まとめ

     

    フィンランドでMaaSビジネスが普及したのは、同国の公共交通機関利用率が約11%と低く、80%以上がマイカーに依存していた結果、過度な交通渋滞と排ガスによる環境への悪影響が社会問題化したことにありました。同様の問題は日本でも発生していますが、フィンランドには国内自動車メーカーが存在しないため街を走り回っているのはほとんどが輸入車です。つまり、自家用車が増えれば増えるほどお金が海外に流出するため、官民一体となってMaaSを推進する必要があったのです。

    日本では少子高齢化が急激に進んでいるため、地域密着型の新たな移動のあり方を考えていくことが重要になりそうです。

     

  • レガシー産業だからこそイノベーションを起こせる!IoT×Dataで新たな時代を切り拓くクレストの挑戦 -後編

    レガシー産業だからこそイノベーションを起こせる!IoT×Dataで新たな時代を切り拓くクレストの挑戦 -後編

    前編ではクレスト社の理念やレガシーマーケットイノベーションについて、中編ではリアル店舗トラッキングシステムのエサシーを語っていただきました。後編ではより具体的な突っ込んだ内容と、SmartDriveとのコラボレーションの可能性について紹介していきたいと思います。

     

    エサシーの料金体系を伺えますか?

    阪本:「基本は年間契約ですが、カメラは月額に換算すると1台12,800円です。施工費やダッシュボードの制作費等の初期費用は別途かかります。

    店舗の大きさにもよりますが、最低1台からがご提案範囲で、お客様の知りたいことや目的に合わせて設計していきます。」

     

    たとえば、目の前の通行量調査だったら1台でもいいということですか?

    永井:「そうです。」

    阪本:「たとえ、どんなに大きな店舗でも、デジタルサイネージの視認率が見たいだけであれば、交通量と視認数を計測するカメラを1台ずつ用意するだけです。」

    永井:「店舗前のウィンドウディスプレイを評価したい。店舗に対し人々がどんなイメージを持っているか知りたい。そういう場合は、視認性をキャッチすればいいので1台で済む場合もあります。このように、お客様によって希望が違いますので、しっかり希望を伺ったうえで適した台数を提供させています。」

     

    店舗が売上を増やすには、スムーズかつ適切なオペレーションも重要だと思っています。ただ、データがまったくない状態でオペレーションの改善をしても、それが本当に適切なのか否かは、判断しづらいものです。しかし、データとして店舗内外の現状データが可視化できれば、何をどのように改善すべきかが見えてきます。

    そこでですが、今までにエサシーを利用されたお客様から、ここが改善された、良くなったという事例を教えていただけますか?

    阪本:「あるブランドが吉祥寺の交通量を測ったところ、計測したデータから予想していた交通量の波と違ったと伺ったことがあります。

    計測前は、お花見の時期は交通量が増えて、そこから夏休みにかけて交通量が減る。そして夏休みにまた上がると予測していたのですが、ほとんど下がることなく、期間を通してそこそこの交通量があるとわかったのです。」

    永井:「もちろん、そのブランドは吉祥寺に店舗を構えているのですが、その事実を知って、店舗スタッフがデータを見ながら、ディスプレイを時間帯ごとや日にちごとに切り替えるようになったと言います。同時に、店舗前を通る人の年齢・性別推定もデータで取得しているので、朝は10代〜20代の若い人が多くて、夕方になると年齢層が高くなるから、午前と午後で変えてみたりして。ディスプレイを変えることで実際に入店率が上がれば、接客を通じて売り上げに結びつけようと考えることができる。店舗のスタッフも効果を実感できれば、モチベーションも上がる。

    これは一例にすぎませんが、エサシーの導入によって、Webの世界と同じ概念で次のアクションを判断できる人が少しずつ増えてきている気がします。」

    阪本:「売上が良い時と悪い時の原因分析が感覚的な会話ではなく、データにもとづいたものへと変わってきたのは、お客様の中の大きな変化とも言えるかもしれません。」

     

    そもそも交通量が少ないところで接客のスキルを上げようとしても、ただの空回りで終わってしまいますよね。交通量が少ないのか、時期によるものなのか、その辺りのデータがなければ、店員さんも改善のポイントが掴みづらいのではないでしょうか。

    永井:「おっしゃるとおりです。」

    阪本:「店内の歩行ルートや店舗の角度によってアイキャッチが変わってしまうので、Webで言うファーストビューがどこにあるのか、今までは誰もわかりませんでした。

    それを、海老名にあるインナチュラルの実店舗を利用し、手探り状態で、どこが一番視認性を稼げるポイントかを探し出した結果…今まで『これが正しい』と思っていたものと大きくかけ離れていたのです。そこで、とあるポイントで集中的にビジュアルプレゼンテーション(※)を組んだ結果、より集客力と入店率を上げることができました。

    ※製品や店舗のイメージをお客さんにわかりやすく伝え、入店や購買を促すために、視覚要素を駆使して商品を提示すること。

     

     

    今は一部のみですが、今後、エサシーがいろんなお店に導入され、スタンダードになっていけば、レガシー産業も活気づいていくのではないでしょうか。職人技の継承も簡単なことではありませんし、技術を未来へ繋いで行くには再現性をどう持たせるかが重要だと思うんですよね。今のままだと人依存になってしまいますが、今後さらに人口が減っていくとなると、人依存すらままなりません。

    それらを考慮すると、データをもとに改善を繰り返していけることは、素晴らしいこと。どんなにインターネットや移動手段が発達しても、リアルな体験を求めてお店で購入する人はいるでしょうし。今後、エサシーで取り組んでみたいことはございますか?

     

    永井「先日、たまたま移動広告に関する議論をしていたんです。移動広告は、視認量が高く、ターゲット数が多いエリアをぐるぐる巡回するようにルートが決められていますよね。たとえば、移動広告車に位置情報とスピード、細かいルートを調整し、その上でSmartDriveのIoTデバイスを搭載して、横にエサシーのカメラを設置すればどうだろうって。この二つを組み合わせれば、非常に面白いデータが取れるんじゃないかな。

    あとは、AGCが窓ガラスに透明ディスプレイを組み込む技術を開発したと5月に発表していて、観光名所や博物館、バス、新幹線などの窓ガラスを完全に透過にして、ディスプレイに切り替えられるっていう。みんな、時代が変化していく中で、色々挑戦しているんですよ。レガシー産業だからこそできる挑戦もあるし、起こせるイノベーションもある。」

     

    そうですね、レガシーな産業だからこそできる取り組みやサービスは数多く眠っているはずです。その中で広告の手段も変わっていくのではないでしょうか。自動運転が一般化していけば、移動の際に運転する必要もなくなってきます。そうすれば、車内では外の風景が流れるように見えても、車外では動画が流れている状態が普通になっていくかもしれません。その動画をどんな属性の人たちがどれだけ見ていたのか、10年後、20年後には個人でも広告を流して結果を計測できる時代が来るかもしれないですね。

     

    永井「面白いですね。ただ、経営理念にも通ずることですが、クレストが広告調査を行っている理由は、“最適化”を行いたいからです。

    たとえば、新幹線の窓を広告媒体に変えようということになっても、それが果たして、お客様が本当に求めるものなのかを先に考えなくてはなりません。求めていないものにお金をかけても、無駄になってしまうだけですから。そのために、本当に必要かどうかを判断するために、エサシーで計測し、評価をしてほしいのです。ふさわしくない広告なら無い方がいいですし、お客様に届くものだけを広告としてしっかり届けたい。最適化を追及することが会社の理念であり、世界を変えていくことだと信じています。」

     

    最後になりますが、スマートドライブに対して一言いただけますか?

    永井:「やりたいことはまだまだ、数え切れないほどあります。私たちは、今後もレガシーマーケットのイノベーションをたくさん起こしていきたいと考えています。今、目指しているのは2022年以降、年1社以上、1産業以上のペースで参入していくこと。一緒にレガシーマーケットのイノベーションを起こすためにも、スマートドライブのデータの活用に、大きな期待を寄せています。」

     

     

    いかがでしたでしょうか?
    レガシーなマーケットに対してIT技術を武器に変革を起こし続ける企業クレスト。これからも目が離せません。

  • レガシー産業だからこそイノベーションを起こせる!IoT×Dataで新たな時代を切り拓くクレストの挑戦 -中編

    レガシー産業だからこそイノベーションを起こせる!IoT×Dataで新たな時代を切り拓くクレストの挑戦 -中編

    前編ではクレスト社の理念や、後のエサシー開発に至る着想のきっかけを伺いました。中編ではエサシーについてより詳しく紹介いたします。

    クレスト社が提供しているesasy(エサシー)の紹介からお話を伺いたいと思います。

    阪本:「まずは、エサシーで取得できる3つのデータについて解説します。エサシーのカメラは3つのモードで動きます。1つは、カメラの前を何人の人が通ったのかという交通量の集計です。2つ目はディスプレイを見た人数、つまり視認量のカウントです。そして、3つ目がカメラの画角内に映った人の年齢や性別が推定できる年齢性別推定のデータです。

    店舗内にこれら複数台カメラを設置して、それぞれのデータを取りながら、足し算、引き算、掛け算、割り算をして、データの分析を行います。すべて、時間別のタイムスタンプを持っていますので、時間別・日時別・週別、月次など、時系列でデータを分けて、お昼時に来客が多いとか、このディスプレイは水曜日によく見られるといった情報がわかるようになるんです。さらにこの3つのデータは、近隣の交通量や天気など様々な外部のデータとも連携できます。これらによって、今まで可視化ができなかった店舗内の人の動き、つまり、実店舗の内外で起きていることをデータとして集計し、POSデータとの相関関係を分析することができるのです。

    カメラ単体だけではなく、店舗のトラッキングとデータ分析まで含めてエサシーというサービスです。そのため、納品時RAWデータのままでもお渡ししますが、Googleデータポータルでダッシュボードとしてビジュアライズし納めさせていただいく場合もあります。」

     

    江刺家:「IoTユニットには、先述した3つのデータを取得できる『esasy camera(エサシーカメラ)』と、広告配信プラットフォームや店舗内の導線が取得できる『esasy Beacon(エサシービーコン)』の2つがあります。サービスとしてはデータの結合まで行いますが、サービスとユニットは、ちょっと視点を分けているんです。」

    永井:「いまだにハンドカウンターを利用して人数を集計している店舗さまもいらっしゃいますが、複数の場所から取得したデータをダッシュボードで集計すれば、結果をグラフ化して、一目でわかるようになります。

    確かにハンドカウンターでも来店者数は取得できますが、手作業ですと営業時間のみの集計になってしまいます、esasyであれば夜間など閉店後でも店舗ディスプレイのパフォーマンスを集計することができます。

    エサシーは人がどこを見ているのか、顔の向きまで撮ることができますので、どこに興味関心を示したのかなど、今までわからなかった情報まで知ることができる。ですので、今までハンドカウンター頼りにしていた店舗様にとって、大きなイノベーションを提供できるのではないでしょうか。」

     

    ダッシュボードはお客様の要望に合わせて作ってらっしゃる?

    阪本:「そうですね、ダッシュボードをフォーマット化できれば良いのですが、現状はほぼ、お客様に合わせて作っています。」

    永井:「マーケティング系のツールは、大抵、ダッシュボードの形が決まっているじゃないですか。しかし、お店は店舗数が1店舗の会社もあれば100店舗の会社もありますし、店舗の形もすべて異なります。お客様には、カメラの設置場所も設計した状態でご提案していますが、各々、取りたい値も注力しているところも、マージさせるデータも違うため、一つのフォーマットに統一することが非常に難しいんです。

    私たちは職人さんとともに場に行く力を持つ、既存のレガシービジネスがあるからこそ、そこまで時間とコストをかけてでもお客様の要望を形にできる。それが一番の強みでもあります。」

    阪本:「大枠のテンプレ化はできるとは思っています。ただ、何かしらの最適解や重要な最大公約数が見えてはいるものの、『そもそも店舗の解析って??』というお客様もいらっしゃいます。

    ですので、今はお客様と真摯に向き合い、度重なるヒアリングを重ねて、一緒に数値や係数を作っています。」

     

    ちなみに、カメラの設置場所も知識や技術が必要ですよね。現場を知っていなければできないことだと思います。

    阪本:「カメラ設置位置のプランニングと実際の施工は基本的にクレストが担当しています。なぜなら画像解析を行ううえで最大のネックになるのが画像の映り方だから。写り方によって解析結果が変わってしまうのです。

    たとえば、路上の様子を屋根の下から撮影するのと、ある程度、光が入るところで撮影するのとでは、逆光の加減が違います。午前中は全然撮れなくても、夕方は良く撮れるというように、外的要因によって数値にゆらぎが生じてしまうので、細かくチューニングしなくてはなりません。」

    永井:「わかりやすく車の話に置き換えてみましょう。普通車を自動運転させるために、カメラキットを渡して指定位置に装着してもらうように伝えるとします。ただ、ここでもし、カメラの設置が指定位置から1~2mmずれていたら…? 事故の確率がグッと上がりますよね。だから、テスラ車はすべて、1 mmもずれがないように、デフォルトで決まった位置にカメラが埋め込まれているんです。

    つまり、これと同じことが、実店舗の世界でもできるということです。新規出店の場合、施工時にカメラを埋め込ませてもらっています。今後はカメラを含め、データを取得できる状態がスタンダードになると思いますし、そうなれば世界観が一つ上のレベルに行けるはずです。これは私がテスラに乗っているので、実際に埋め込まれているカメラからヒントを得ました。」

     

    テスラからヒントを得たというのは面白いですね。既存の店舗への設置はすでにいろんな造作物があるので、ベストな場所を探すのが大変ですよね。

    永井:「今は店舗優先の為後付けでサービスを提供していますが、本来は、データに揺らぎが出ないようゼロから設計できることがベストですね。」

    阪本:「他社さんで多いのは、全体が映る位置に天井に穴をあけてカメラを設置する方法ですが、私たちは移動可能なカメラユニットを提供していますので、固定させる必要もなく、必要な数だけご契約いただけるのが大きなメリットです。そうすれば出費も最低限ですみますしね。

    今は、店舗に置くだけで簡単に計測ができる、カメラを埋め込んだ什器の開発を進めています。」

     

    “カメラを目立たなくする”ことに対して、クレストだからできる施策を教えてください。

    江刺家:「クレストが蓄積してきたナレッジを使って、今までに何度も完全にカメラを目立たないようにする実験を重ねてきました。ですので、できなくはありませんが…撮られる側、カスタマー側の目線で立つと、隠し撮りと同じことになってしまうので不快な気持ちにさせてしまうことに気づいたのです。

    そのため、カメラの隠し度合いについては、クレストのポリシーというより、設置するお客様のポリシーに準じて対応させていただいております。カメラの設置をなるべく秘匿したいというお客様もいらっしゃいますし、あえて目立つ場所にエサシー置いたところ、万引きの被害がかなり減ったというお客様もいます。日頃から接客面でも非常に細かな配慮を配っておられるハイブランドへの導入の際もお客様の要望に合わせ対応できることがエサシーの特徴の1つですね。」

     

    なるほど。隠すことも、見せることもできるのは、レガシーの技術があるからお客様のご要望に合わせて振り幅を調整できる。

    永井:「実際にガーデニング事業のリアル店舗持っていますので、いくらでも実証実験ができますしね。」

     

    それは大きな強みですよね。

     

    後編では、料金体系なども含め詳細に伺います。また、IoTを活用したコラボレーションの可能性などについても語っていただきました。

    >>>後編に続く

    前編はこちら<<<

  • レガシー産業だからこそイノベーションを起こせる!IoT×Dataで新たな時代を切り拓くクレストの挑戦 -前編

    レガシー産業だからこそイノベーションを起こせる!IoT×Dataで新たな時代を切り拓くクレストの挑戦 -前編

    創業から36年、屋外広告や店舗のショーウィンドウの装飾を軸に事業を展開してきた株式会社クレスト。同社は堅実に築いてきた広告やディスプレイの知識と経験を生かしつつ、新風を吹き込み、次々にイノベーションを起こしています。そこで今回はクレストが提供しているIoTデバイスを活用することで、デジタル優勢の中、レガシー産業はどのように突き抜けることができるのか、お話を伺いました。

    今回インタビューさせていただいた方々

     

    • 永井俊輔(ながい しゅんすけ)さま
      代表取締役社長
      (以下 : 永井)
    • 江刺家直也(えさしか なおや)さま
      経営管理本部 情報システム部 シニアマネージャー
      (以下 : 江刺家)
    • 阪本治彦(さかもと はるひこ)さま
      リテールテック事業部 ジェネラルマネージャー
      (以下 : 阪本)

    まずは、クレストの事業内容や理念についてお伺いできますか?

    永井:「まずは事業の中核となっている経営理念について説明させてください。

    この図は、BCGのPPM(※)理論の変形マトリクスで、横軸を『生産性が低い・高い』、縦軸を『市場の成長性が低い・高い』として表したものです。図の左下にある既存産業、斜陽産業を右上の花形産業に変えていくこと。それが私たち、クレストの目指している場所です。

    しかしその目標を成し遂げるには、2つのステップを踏む必要があります。まずは、SFA(セールスフォース・オートメーション)やMA(マーケティング・オートメーション)などのITツールを活用して、一人あたりの生産性と会社全体の生産性を向上させることです。私たちは、少し仕組みを変えることでレガシー産業は今より収益を上げることができると考えていますし、実際にそういったツールがレガシー産業の成長を底上げします。次のステップは、そこで得た利益で縦軸の市場の成長性に対するイノベーションを起こしていくことです。このプロセスで企業と産業を成長させることがクレストのビジョンです。」

    ※プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの略。経営資源を最適に配分することを目的として、ボストン・コンサルティング・グループが1970年代に提唱したマネジメント手法のこと。

    永井:「縦軸がROE(自己資本利益率)、横軸が時間として一般的なスタートアップのビジネスモデル(赤線)を考えてみましょう。まず、ROEを追っていくと、グッと下がりながら、点線で落ちている矢印に目が止まります。とあるデータによれば、スタートアップの99.7%が何かしらの原因で成功に至らず脱落すると言われていて、その状態を表したもの。脱落の最たる理由は、低い成功確率にあります。つまり、思っている以上に、スタートアップの収益化は難しいということです。

    一方、レガシー企業(灰色線)はどうでしょうか。既存産業は成長だけ見ると、スタートアップに比べて難易度は少し低い。物販店や飲食店を1店舗作れば、ある程度は売れる。イオンに出店すれば、ある程度の来店が見込める。そして製品の粗利がそれなりにあれば、事業が継続できる。しかし、生産性が低いため、収益の向上させるのは簡単なことではありません。

    レガシーマーケットイノベーションのモデル(青線)は、基本的にレガシー産業のストレートな成長を見せながら、既存ビジネスが儲かる仕組みです。縦軸はROEのリターン(当期純利益)ですので、そのリターンに再投資をかける、つまり、イノベーション軸に投資をしていく。そうすることでレガシー産業が急成長できるのです。

    つまり、資本をマイナスに取りにくいところが、成長曲線であると考えています。既存産業から、「イノベーションが起こせない」という話をよく耳にしますが、本当にスタートアップでしかイノベーションは起こせないのでしょうか? そんなことはないはずだ。そこでレガシー産業に変革をもたらそうとチャレンジしているのが私たちクレストです。

    レガシー産業にも多くのアセットがあり、そこから生み出される収益もあります。ですので、効率的に運営することはできるのです。海外ではUberの台頭によってタクシー会社が次々と倒産し、運転手が失業し、タクシーの車がどんどん廃棄処分されていると聞きます。

    Uberが世界を牛耳る前に、長い歴史と多くの知見を持つタクシー会社がUberを生むことが本当にできなかったのか。できる道があってもいいんじゃないかと。

    クレストはレガシーとイノベーション、両事業を併せ持つ企業です。レガシーなサイン&ディスプレイ事業を展開し、そこに付加しているのがイノベーションのリテールテック事業。目標はリアル世界での販売促進や広告の価値を計測し、成果とクオリティを保つことです。

    レガシーアセットという単語は、経営学で言うと負の遺産的なマイナスの意味があるのですが、私たちは正のレガシーアセット、つまりレガシーが活かせる要素をたくさん持っています。それは、これまでに培ってきたファッションブランドや小売事業との接点。毎月、何百カ所、何千カ所に設営に行っている私たちのウィンドウディスプレイでの知見などです。そして、それらがしっかりと収益に結びついている。それこそが本来のレガシーアセットであり、レガシープロフィットと我々は表現します。、これらをレガシーのイノベーションに再投資することができるので、この事業に対して意義を感じています。」

     

    話を伺って、「レガシーマーケットイノベーション」には、会社概要と事業内容にも通ずる一貫性のあるメッセージが込められていると感じました。長い歴史を誇る看板業界からこの考えに至るまで、どのような経緯があったのでしょうか。

     

    永井:「看板屋の会社の理念を考えていたときに、ふと、『これがあと100年続くのだろうか』って思ったんです。もともと、クレストは父が経営する屋外広告(看板)の会社でした。私は看板が大好きで入社したのではなく、たまたま父親がそうだったからこの産業に飛び込んだだけで。しかし、入社した以上、世の中のデジタル化が進めばこの産業はどうなるのか。その創業者の父の想いを未来に繋いで行かなくてはなりません。

    どこかのイノベーターにディスラプトされるのではなく、この産業が自らイノベーションを起こす道のりを作らなければならないと思いました。たまたま見つけた“カメラ”から着想を得て、新たなイノベーションを生み出すことに成功しました。そこで、『この考え方は、他の産業にも置き換えることができるはずだ』と思ったのです。これが、レガシーマーケットイノベーションを企業理念にした理由です。」

     

    お父様の会社を継ぐために入社されて、はじめは営業をされていたと伺っています。何をきっかけカメラが必要と思ったんですか?

    永井:「クレストの事業にインナチュラルというガーデニング事業の店舗があり、その事業の経営に携わったことでカメラとの出会いにつながっていきます。

    私はクレストに入社後、営業としてディスプレイの施工を増やし、順調に売り上げを伸ばしていきました。そこで、ガーデニング事業のインナチュラルという店舗にも、既存のサイン&ディスプレイの知見でウィンドウディスプレイを変えれば、きっと売上は上がるだろうと思ったのです。しかし、なかなか効果が現れない。そこで原因がどこにあるのかを考え始めました。

    『どうすればいいんだろう…』と悩みながら歩いていたら、たまたまタッチパネルの自動販売機の上にカメラが付いていることに気づきます。

    『そうか、これだ−−』自動販売機のカメラは、顔認証で年齢性別を推測し、商品の画像を表示させるという仕組み。この気づきをきっかけに、カメラがウィンドウディスプレイの歴史を塗り替えるカギになると思い、開発を始めました。

    今まで、誰がどれくらいショーウィンドウを見ているのか、計測する術はありませんでした。しかしこれで、Webと同じように、インプレッション数・クリック数・滞留時間・コンバージョンが可視化すれば、売り上げにつなげることができる。インターネット広告は後発ですが、何十年も前からあるリアルな世界の広告が何も計測されていないなんて。ここが変革の素になるだろう。そして、2014年にカメラで計測する構想が生まれ、2017年から実際に顧客でのベータ版、アルファ版のテストが少しずつ始まっていきました。

    なるほど。その着想から開発されたのがesasy(以下、エサシー)なのですね。

    江刺家:「私は、永井が『どうやって開発をしようかな』と考えているタイミングで、彼と出会いました。永井からこのアイデアを聞いて、大手企業のSIerに開発依頼を相談したところ、とんでもない金額を提示されてしまって。当時は画像解析技術の開発が非常に高額で、2015年の時点で1店舗あたり1億円かかると言われてしまったんです。これはさすがに、簡単に進めることができない。

    その頃、私はSIerの会社に勤めていて、尚且つ、ラズペリーパイの知見を持っていたことと、IoTに関して調査しているタイミングだったので、『IoTでも開発できますよ』と話をしました。そうするとトントン拍子で話が進んで、私がプロトタイプまでの制作を担当することに。

    ただ、そこから先、これが本当にビジネスになるのか、本当にこのデータは使えるのかについては、未知の世界。とにかく実地検証をするしかない。なので、完成したプロトタイプで実地検証をして、データをとにかく集めて検証をしていました。」

     

    開発時に苦労されたことはなんでしょうか。

    江刺家:「最近は、端末のエッジ側で処理をする設計が普及していますが、当時はいわゆるIPカメラで録画したものをサーバーなどに上げて処理をするのが一般的でした。ですので、まずはクラウド上に画像を上げる方法で開発を進めようとしましたが、IPカメラの仕様に合わせると、私たちが実現したいことができないとわかったのです。

    そうなると、別の方法を考えなくてはなりません。そこで自由度が広いラズベリーパイで開発しようと決まりました。次に浮上したのが、個人情報保護法の問題です。今でこそカメラに関するガイドラインがありますが、当時はまだ、個人情報保護法しかなく、どんな設計でも個人情報に抵触してしまう。それが一番の壁でしたね。

    最終的に、エッジ側で、オンメモリで作り込み、処理するという設計で着地しました。開発とともに法令や技術調査も並行して進めなくてはならなかったので、けっこう苦労しましたね。」

     

    >>>中編へつづく

  • 物流の働き方改革を推進する「トラック簿」開発秘話 -後編

    物流の働き方改革を推進する「トラック簿」開発秘話 -後編

    前編中編では、モノフルの武田様にインタビューをいたしました。トラック簿の機能でSmartDrive PlatformのAPIを利用しているとのことでしたので、今度はSmartDriveの担当者に詳細を伺ってきました。

    まず自己紹介をお願いします。

    風間 進一(かざま しんいち)です。株式会社スマートドライブでSmartDrive Platformの開発ディレクターをしています。エンジニアではないので直接プログラムを書いたりはしておらず、プロジェクトの進行管理や調整を社内外の様々な関係者と共にやっています。

    前職はトランスコスモスという会社に4年ほど所属しておりまして、ECのアウトソーシングをやっている事業部にて今と同じようにシステム開発の調整や進行管理をしておりました。さらにその前の職場は6年半ほどミクシィにいまして、mixi Platformの立ち上げから外部公開のところまを経験させていただきました。

     

    ミクシィ時代にもプラットフォームに関わっていたのですね。SmartDrive Platfromというのはどういうものなのでしょうか?

    SmartDrive Platformは3つの要素に分解できます。まずは「Data In」という、IoTデバイスから上がってくるローデータを取り込む部分があります。2つめは「Add Value」という言い方をしているのですが、貯めたデータをクレンジングしたり、加工して解析をかけることで、もともとローデータだったものをハイコンテクストなデータに置き換えることをやっています。3つめは「Data Out」でして、蓄積されたローデータやハイコンテクストなデータを様々なサービスに供給するという3つの要素を持っています。

    SmartDrive Platformの特徴はどういったところでしょうか?

    移動体にフォーカスをしているところが特徴です。今は車がメインになっていますが車に限ったものではなく移動するもの全てがPlatformの対象になります。他にもバイクや、コンテナ、動物など様々な移動体で利用いただけるように最初から設計されているので、多種多様なニーズに対応できるようになっています。

     

    トラック簿では、どういったAPIが使われてているのですか?

    まず弊社のSmartDrive APIはRESTful APIで構築されておりまして、弊社のデバイスを車両に搭載することで、その車両がどこにいる、どこにいた、というロケーション情報をDevice last locationというAPIを介して提供しています。また、事前に登録しておいたトラックバース(倉庫の荷下ろしする場所)に「入ったのか?」「出たのか?」といった情報をWebhookで通知しています。トラック簿の場合は、Webhookを受け取るサーバーを用意していただいたので、そこのエンドポイントに対して通知を飛ばしています。

    RESTful API
    Webシステムを外部から利用するためのプログラムの呼び出し規約(API)の種類の一つで、RESTと呼ばれる設計原則に従って策定されたもの。

     

    APIリクエストを投げると、どのようなレスポンスが返ってくるのですか?

    デバイスコードという、車両に搭載されているデバイス1台毎に割り当てられているIDがありまして、そのデバイスコードを指定してリクエストを投げることで、現在の位置情報を取得できます。過去の履歴情報を取得したいときは、開始と終了をタイムスタンプで指定してあげることで、その期間の情報をリストで取得します。弊社のデバイスは1秒間隔で緯度経度のデータを取ってますので、1秒毎のデータを取得できます。ただ、一気に取得してしまいますと負荷が掛かってしまうので、最大で100件ごとのデータをページングしながら取得できます。

    ちなみにWebhookは、データの登録系はPOSTで、データの取得はGETですね。いわゆるRESTful APIの標準的な仕様に則っていますので、どちらもございます。

     

    SmartDrvie APIは自社サービスでも使われていると伺いました。

    そうです、もともとは自社サービスで使っていたAPIを拡張して、外部に対しても提供を開始しました。現在でもこれらのAPIはSmartDriveの各サービスでも使われています。

    そういえば、「SmartDrive Families」という高齢者ドライバーの見守りサービスは、SmartDrive APIを活用した社内ハッカソンを行いまして一気に作り上げたもの。1週間ほどでコア機能を作り上げ、デザイン作成やAppStore申請などの作業を含め3ヶ月ほどで製品ローンチができました。

     

    このSmartDrive APIは既にサービスメニューとして展開しているのでしょうか?

    すでにお客様には提供できる状態ですが、まずは個別に連絡をいただければトライアルで試していただく形になります。今後、広く沢山のお客様に使っていただきたいと思っていまして、トライアルの申し込みページや、APIの仕様にを分かりやすくまとめたドキュメントを整備中でして、価格についてもまだ調整中の段階です。

    そして、私たちが提供しているAPIが全て十分な状態かというと、まだまだ足りないと思っています。「どのようなAPIが必要なのか?」「どうすれば使いやすくなるか?」など、一緒にトライアルをしていただけるユーザー様の声を聴きながらSmartDrive APIをブラッシュアップしていきたいと思います。

     

    すでにSmartDrive APIを使いたいという声はありますか?

    そうですね、そういった声はどんどん増えています。例えば法人向けの車両管理サービスを利用している企業様がデータをCSVではなくAPIで直接取得し、自社のシステムに取り込みたい。APIを使ってBIツールに直接繋いでデータをビジュアライズしたい。このようご要望を沢山いただいております。とはいえ、APIというのは情報提供の1つの手段でしかないので、お客様が情報を取り出しやすいよう、APIだけでなく様々な形で提供していきたいとも思います。

     

    トラック簿のように、SmartDrive APIを自社サービスの機能の一部として使うということも可能ですよね?

    もちろんです。SmartDrive PlatformはIoTデータのプラッフォームに位置付けられますので、すでにIoTデバイスからデータを取得して、加工・クレンジング・解析することで情報精度を高くした状態で提供できます。そういった部分を自社でゼロから開発することなく、弊社のAPIを使っていただければデータの提供は可能でありますので、短期間でサービスの立ち上げができると思います。実際にトラック簿は3、4ヶ月でデータのつなぎ込みからサービスローンチまで持って行けたました。

     

    自分だったらこんなサービス連携できたらいいなというのはありますか?

    勤怠システムとの連携ができるといいなと思います。例えば、ドライバーさんが車両の走行を開始したら、自動で勤怠システム側のステータスが出勤になったり、どこでどう走ってきたという情報を勤怠のエビデンスにしたりできたらいいなと。あとは、人事系のシステムで安全運転スコアをドライバーさんの評価に組み込んだりするのも面白いかもしれません。

    SmartDrive APIはRESTful APIのお作法に則っていて使いやすいので、私が想像もしてない使い方をしていただけるユーザー様が出てきてくれたら嬉しいです。

     

    それは確かに面白いですね!今後のSmartDrive Platformの展開について教えてさい。

    先ほどお伝えした3つの要素でいうとまずは、「Data In」の部分。ここはよりつなぎやすくしていきたいです。具体的には様々な移動体のデータをアップロードできるようになっているので、多様なセンサーデータを取り込んでいけるようにしたいと思っています。次に「 Add Value」ですが、ここはまさに付加価値を生み出すポイントですので時系列データやストリミーング処理をキーワードに柔軟かつ効率的にデータを捌いていきたいと思います。最後に「Data Out」ですが、よりデータを取り出しやすくするために、APIを種類を増やしていくこともそうですし、JSONだけでなく他のフォーマットでもデータを出力できるようにして、お客様のシステムとの連携をしやすいものにしていきたいと考えています。

     

    最後に一言お願いします。

    APIを使ったデータ提供している企業はたくさんありますが、IoTデータとくに移動体のデータに特化したデータの提供してい企業は少ないと思いますし、今後広がりを見せていくと思います。なのでチャレンジしていく余地は多分にあります。今後のSmartDrive Platformの展開にご期待ください。

  • 物流の働き方改革を推進する「トラック簿」開発秘話 -中編

    物流の働き方改革を推進する「トラック簿」開発秘話 -中編

    トラック簿には3つのプランがありますが、中には月額基本料が0円のフリープランもあります。

    まずは、今まで手作業で行われていた受付をアナログからデジタルへシフトしてもらわなくてはなりません。しかし、現場の方はデジタルに慣れていない方が多くいらっしゃる。そこで、お客様にデジタルやデータに馴染んでいただくためにも、「まずは使ってみようかな」というお客様に向けたフリープランを用意しました。

    前編でもこの画像をお見せしましたが、倉庫側と運送側の接点になっているのが、バース管理の部分です。だからこそ、この部分の円滑化をはかるために、接点であるバースにおいて、どの運送会社が来ているか、作業時間がどれくらいかという情報を理解すべきだと考えています。それができれば、バースの回転率が向上すると次は荷揃えスピードの改善したり、将来的には「帰りの荷物はありますか?」という提案もしたりと、大きな視野で物流の効率化ができるようになるからです。

     

    物流の現場を理解されているからこそ、正しい機能や提案ができるのですね。

    私たちは、必ずお客様の現場を見せていただくようにしています。ドライバーが来てからどのような動線を辿って受付に着き、どこで待ち、呼び出しの手段は何か。誰がどう判断して、バースの呼び込みをしているか。全体の流れを書き留めるためにオリジナルのカルテを作成し、一つひとつ項目を埋めていくと、「トラック簿をこのように活用すると、ここのポイントが改善できます」と適切な提案ができるようになるんです。

    単純に導入しましょう!予約しましょう!ではなく、お客様のオペレーションの中で、「ここは、この機能を使って効率化していきましょう」というアプローチを取って信頼関係を築くようにしています。今後、配車業務やマッチングといった、様々なサービスに繋げていくきっかけとしてトラック簿を提供していますので、同じバース予約サービスでも他の企業とは違う見せ方や提案ができているのではないでしょうか。

     

    提案というのは、コンサルティングサービスではなく、新しいソフトウェアで解決していくための提案ということでしょうか。

    現時点ではとくに線引きをしていませんが、一拠点ではなくて、工場から倉庫、配送先まで、トレーサビリティを高めていく中で、トラック簿の活用で何が実現できるかをご提案したり、機能を追加したりするなどして、総合的にフォローしていければと思っています。

     

    提案段階でお客様の現場を見せていただくというのも、コンサルティング領域に近いですよね。

    おっしゃる通りです。的確な解決策を提案するには、まずは現場を知り、具体的な悩みを理解することが重要です。今後、倉庫内の自動化や人材サービスなど、さまざまな軸で、ソリューションを作ろうと動いているのも、バースだけ円滑になっても倉庫内がスムーズに回らなければ意味がないと考えているからです。

     

    GLPという盤石があるからこそ、ベンチャーのような動きもできるし、事業開発も行えるし、思いきりアクセルを踏むことができると。

    GLPの本業として土地を仕込み、開発し、これだけの多くの物件を提供してきたこともあり、土台がしっかりとしているため、次の種として新たなサービスを植えることができたのだと思います。また、非常にありがたいことに、お客様もトラック簿から次のいろんなサービスへの展開を期待してくださっています。その辺りも、物流施設の最先端を知るGLPが基盤の会社であることが大きいのではないでしょうか。

    トラック簿を皮切りに、モノフルとして今後どのようなサービスを展開していくのでしょうか。

    モノフルは現在、3つの戦略を軸に動いています。一つがトラック簿のようなプロダクトの開発、二つ目はスタートアップ企業への出資。三つ目が業務提携をするパートナー。この三つをうまく掛け合わせながら、「バース管理・配車計画・求貨求車マッチング・運行計画・動態管理」の輸配送プラットフォームをスピード感をもって強大にしていく。そのようにして、輸配送の領域を攻めたいと考えています。

    中でも配車に関するソリューションは一番注力しているところ。世間では配車と求貨求車のマッチングは似たものだと思われているようですが、まったく異なるものです。配車計画はそもそも、この荷物をどのように運べばいいのかを考えなくてはならない、少し上流の概念。ですので、順番としては①この荷物をここに運ぶために②トラックをマッチングさせて向かわせる、となります。

     

    つまり、配車計画が作成されたうえで、トラックの不足分を求荷求車マッチングで補うということですね。

    そうです。配車と求荷求車を混同せずに、まずはこの流れを作らなくてはなりませんので、配車業務に注力してプロダクトの開発を進めようとしています。理想としては、私たちが提供するサービスを活用するお客様からデータをいただいたり、さまざまなデータを繋いだりすることで、より良いサービスへと進化させていくことです。

     

    配車計画と少し似ていますが、介護の現場でも送迎計画の作成が大きな負担になっています。単純にルート作成をすれば良いというものではなく、「●●さんのおばあちゃんは車椅子を利用している」とか「▲▲さんはお子さんが乗降をお手伝いしてくれる」とか、さまざまな条件や状況を加味したうえで、送迎計画を作成しなくてはならないからです。そのため、経験者に頼ることが多いですし、時間もかかってしまう。ただでさえ人手不足が叫ばれている今、時間がかかるアナログな作業はどんどんデジタルで変えていくべきではないでしょうか。

    ツールを導入したと言っても、デバイスを装着されている台数が一部であったり、動態管理ツールを利用していても活用しきれていなかったり…。そうした点も変えていかなくてはなりません。何を運んでいるのか、どのように運んでいるか、輸送モードによって改善点も異なりますので、スマートドライブと連携して誰がどこにいるか、リアルタイムの情報を取得・蓄積していきたいですね。

    たとえば、東京-大阪間の長距離車が運行中だとしましょう。運転時間や走行距離は長くなればなるほど疲労は蓄積しますし、運転も乱れてくるので、全体的に事故の確率が上がると予想できます。しかし、管理者も荷受け主も、今ドライバーがどのあたりを走行しているのか知らないことがほとんどです。無事に拠点を通過しているのか、何らかの原因で遅延しているのか、効率も大事ですが、万が一を想定していつでもリアルタイムの情報を知っておくべきじゃないかなと。それが動態管理の本来の活用の仕方でもありますし。

    たとえば、バース管理の仕組みを使って、ある拠点への到着時に「Aに到着しました」とフラグが立つようにすれば、ドライバーも報告しなくて良いし、管理者も安心できますよね。店舗配送のトラックは多くの拠点を回ることが多く、店舗側からすると「品出しがあるので何時には来てほしい」という強いニーズがある。少しの遅延が業務に響く細かな配送では、誰がどこにいるかという情報が非常に重要。ですので、各々の輸送モードに対して、どういうトレースをしていくべきかを考え、最適な機能や利用方法を考えるべきです。

     

    おっしゃる通りですね。ちなみに、トラック簿の中でSmartDriveの機能が使われているとか。

    はい、トラック簿にスマートドライブが提供しているデバイスから走行データを取得・活用できるSmartDrive Platform APIを活用させていただきました。トラック簿で利用できるのは次の2つの機能です。

    まずは、車両が登録した地点に出入りした際に通知がとぶ、自動受付機能。通常、ドライバーは倉庫に到着すると、駐車場にトラックをつけて降車し、事務所に行って名前と携帯番号を書いて再びトラックに戻りますが、これが巨大な物流施設だと往復だけで10分以上もかかってしまうんです。ドライバーの負荷を軽減させることに加え、庫内を円滑に回すにはどのトラックが到着したのかという情報が大事ですので、ジオフェンスを張って半径100m以内に入ったらステータスを「受付完了」に変更できるようにしました。

    もう1つは自動遅延通知です。バースの予約時間が14時なのに13時の時点でまだ50kmも離れた地点にいる場合、予約時間に間に合わないと予測できますよね。今まで、遅延の連絡はドライバー本人がセンターや自分が所属する運送会社に電話で連絡をしていましたが、いちいちトラックを止めて連絡しなくてはならないので結構な手間です。自動的に倉庫へ遅延の通知ができれば、先に到着したトラックを先に呼び出すことができますし、待機問題が解決できる。この二つの機能は、運送会社がもつ動態情報と、倉庫が持つバース情報をかけ合わせたものであり、まさしくモノフルが目指す企業の枠を超えた情報の共有化です。

     

    スマートドライブとは今後どのように連携を深めていきたいとお考えでしょうか。

    物流業界の課題を解決するためには、物流を深く理解する必要があり、非常に時間がかかるため、スマートドライブが物流業界に歩み寄るのが必ずしも正解とは思ってはいません。モノフルが間に立つことによって、ニーズを汲み取ったり、足りない部分を補填したり、うまく橋渡ししができればと考えています。

    スマートドライブは自社が持っている強みを深堀りしつつ、テレマティクスの領域で存分に強みを発揮してもらいたい。スマートドライブとしてどの領域に特化すべきか、競合他社と比べたときに足りない部分を自社で開発するのか、それとも他社の力を借りるのか、もっともっと思いっ切ってアクセルを踏み込んで行って欲しいですね。

     

    モノフルは業界の特性をすべて捉えたうえでプロダクトも開発できる、物流業界にとっては非常に頼もしい存在です。悩みを持ち込めば、何か良いソリューションを開発して提供してくれるんじゃないか、そういう期待の声が聞こえてきます。

    各企業でも、それぞれ課題解決や業務効率の向上に向けて自社開発が進められています。その中で、企業が実現したいことに対して、実行スピードを上げるための支援を私たちができればと思っていて。

    トラック簿のようなサービスを一企業が0から開発を始める場合、数千万円の投資だけでなく、利用が開始できるまで早くても一年程度の期間を要します。トラック簿のような汎用性の高い機能に関しては、SaaS型のサービスを組み合わせて利用し、その浮いたリソースを庫内作業や輸配送といったコア業務にさいてもらえるとありがたいです。

    この機能欲しいな、と思ったときに気軽に相談でき、手軽に好きなサービスを組み合わせてご利用いただける御用聞きのような存在。痒いところに手が届く、誰にとっても使いやすい、それがモノフルの目指す理想像です。

     

    既存のアセットを最大限に活用しつつ、スピード感と柔軟性のある事業で物流業界の最適化を推し進めるモノフル。今後も新たなサービス展開に目が離せません。

     

    後編へ続く>>

  • 車両管理に必須!車両管理規定の作成の仕方とポイントを解説

    車両管理に必須!車両管理規定の作成の仕方とポイントを解説

    輸送を担う物流トラックや人を運送するバスやタクシーだけでなく、顧客の元へ回る営業や役員の送迎など、企業にとって車両は欠かせないものです。しかし、事業所に据え置かれている他の機材とは異なり、車両は管理者の目の届かない場所へと移動を繰り返すため、適切かつ安全に使用されているのかを管理するのは簡単なことではありません。だからと言って管理を怠ってしまうと、企業にとって様々なリスクが発生します。

    この記事では、車両管理規定を作成する必要性と目的について、そしてリスク回避に役立つ具体的な車両管理規定の作成方法を解説します。

    なぜ車両管理規定を作成すべきか

     

    車両管理とは、事業所や企業・店舗などが所有する車両を管理する日常業務の一環であり、車両管理規定とは所有者及び業務中使用する可能性のある従業員が、以下2つの法律を根拠に、事業者が定めるルールのことを言います。

    1.民法第715条「使用者等の責任」
    2.道路交通法第74条の3「安全運転乖離者の選任」

    1の解説:本来、他人を使用する者(経営者など)は、従業員が業務中に第三者へ損害を与えた場合、当該の従業員のみでなく使用者も被害者に対する賠償責任を負うものと定めた法律で、社用車の運転中発生した事故にも適用されます。この時、後ほど解説する必要事項を網羅した車両管理規定を定め、日頃から従業員への注意喚起や遵守・徹底を教育していたと認められれば、賠償責任が使用者に及ばない可能性があるのです。

    2の解説:前述したように、企業は従業員が社有車を運転することについて安全運転を遵守させる責任を負っているものの、従業員や所有車両が増えてくると規定を周知・徹底させることが困難になります。そこで定員11名以上の車両は1台、その他の車両の場合は5台以上車両を有する事業所に対して、道路交通法では代務者となる安全運転管理者を選定し、公安委員会に届け出するよう定めているのです。(原付を除く2輪車は1台=0,5代として算出)

    安全運転管理者は、
    (ア)20歳以上であること
    (イ)運転管理に関する実務経験が2年以上あること
    (ウ)過去2年以内に以下の交通違反をしていないもの

    • ひき逃げ
    • 飲酒・酒気帯び運転
    • 飲酒者への車両提供
    • 麻薬等運転
    • 過労運転
    • 無免許・無資格運転
    • 最高速度違反運転
    • 積載制限違反運転
    • 放置駐車…etc

    など多数の要件を満たさなければならないため、将来的に事業拡大を目指すのであれば、日々、安全運転への啓もうを続けていくことが重要です。しかし、どれほど安全運転の重要性について呼び掛けたとしても、ふとした時に事故は起こってしまうものです。そこで万が一、尊い命を奪うような重大事故が発生しまうと、莫大な賠償金の支払いだけでなく、社会的な信用を失うという、企業にとって非常に大きな損失を被ることになります。そうした事態を少しでも避けるためにも、事業規模に関わらず必ず車両管理規定は作成し、未選任である場合は、早急に安全運転管理者を選任し公安委員会に届け出ましょう。

    車両管理規定でおさえる項目8つ

    車両は不特定多数の利用があり、移動するという性質上、車両管理規定の中では以下の8つの事項を盛り込む必要があります。

    ①車両本体情報に関する事項・・・車名、メーカー、初年度登録年、車体番号、ナンバー、色など。
    ②車両購入・廃車・売却に関する事項・・・購入先、購入価格、購入年月日、仕入れ区分、リースの場合はリース先&リース金額、廃車・リース解約年月日、売却金額など。
    ③車検・定期点検に関する事項・・・車検有効期限、定期点検日、業者名、車検整備箇所など。
    ④メンテナンス・修理に関する事項・・・メンテナンス状況、故障履歴、修理金額、依頼業者名など。
    ⑤事故等に関する事項・・・事故発生日、事故区分(自損・他損・物損・人身)、事後処理状況など。
    ⑥使用状況に関する事項・・・使用部署、使用者、使用目的、運転日報など。
    ⑦安全運転管理者に関する事項・・・管理者の氏名、選任年月日、管理担当範囲(複数人の場合)など。
    ⑧保険に関する事項・・・自賠責・任意保険の加入先、保険金額、有効年月日、証券番号、被保険運転者範囲など。

    少し辟易してしまいそうなほど管理すべき情報は多岐に渡りますが、ほとんどが車検証や保険証書、整備点検記録簿などを見れば確認できることです。ただし、所有車両が多く使用者が不特定多数に及ぶ規模の大きな事業所で、手書きの台帳では管理しきれない場合は、ITを活用した車両管理システムの導入を視野に入れるべきかもしれません。

    車両管理規定を作成するメリット

     

    企業が車両管理を徹底すべき目的とメリットは大きく3つあります。一方、車両管理を徹底することにより、1つだけデメリットが発生する可能性もあるため、ここでは合わせて整理しておきます。

    1.    コストの削減

    車両は事業者や企業にとって大切な財産ですが、車検や自動車保険代、税金やガソリン代、メンテナンス代に修理費用など、かかる維持コストは決して安くありません。しかしそんな中でも、一番取り組みやすいのは前項⑥の把握による使用状況管理。

    • 運転日報による動態管理の徹底・・・業務外の使用や、無駄な回り道などしていないかをつぶさにチェックし、高騰を続けるガソリン代の節約に努める。
    • 使用目的にマッチした車両の選択・・・使用目的が単身の営業周りであれば普通車ではなく、車検代やメンテナンスコストが抑えられる軽自動車で十分。同じ軽自動車でも乗用より自動車税が安い、「貨物」にするのもアリ。

    など、日常的に発生する燃料代のみならず、節約できないと考える方も多い車検代や税金も使用状況を見直すことでコストダウンが可能になります。また、車両は会計上、固定資産として計上でき、毎年一定の割合で減価償却費されますが、使用が終わったり売却したりした際は、簿価と実売額との差額を損益として計上できるため、会計をしっかり管理していれば、法人税などの節約にもつなげることができるのです。

    また、使用頻度が低い、または修理費用がかさんできた古い車両の減車や、走行距離が否応なく伸びる車両のハイブリット車への変更、購入・維持コストを節約可能なリース・シェアカー導入の検討など、車両管理によるコスト面でのメリットは多岐に及びます。

    2.    安全の確保

    定期点検やメンテナンス・修理の実施や車両状態の管理徹底により、故障トラブルを原因とする事故発生を未然に防ぐことができるのもメリットの一つです。規定を作成したら注意喚起を行い、その結果従業員の安全運転意識が高まっても、肝心の車両がすぐに故障するようなずさんな管理をしていると、事故を誘発する原因になりかねません。

    故障を原因とする事故を減らすことができれば、結果的に社用車の修理や被害者への金銭的補償を減らすことができます。車検・点検・整備のコストに関しては、出費を惜しまないよう心がけましょう。

    3.    リスク回避

    従業員の安全運転意識向上を促し、細やかな点検・整備を徹底しても起きてしまうのが交通事故。前述したように、場合によっては損害賠償責任が事業者に及ぶケースも出てきます。リスク回避で重要なのは、自動車保険の加入状況の管理です。きっちり管理することで、金銭的リスクだけは確実に回避することが可能です。しかし、被害者に対する金銭的負担が保険支給によって避けられたとしても、社用車で事故を起こしたという社会的責任は発生しますので、車両の使用回数と運転時間が長い従業員に対しては定期的な指導が必要です。

    社用車だけで大丈夫?マイカー使用の管理について

     

    通勤時のマイカー利用を認めている企業も多くありますが、この場合、通勤も業務の一環と見なされるため、もしも通勤中に交通事故を起こした場合、企業にも被害者への賠償責任が及ぶ可能性があります。都市部の企業の場合はマイカー通勤を禁止とし、公共交通機関のみにすることでリスク回避しているところもありますが、郊外では現実的な対策と言いがたく、通勤手当の支給額も膨らんでしまいます。

    そのため、マイカー通勤を認める場合も、使用頻度・範囲・時間・条件などを、社用車と同様に車両管理規定に記載し、周知・徹底しなくてはなりません。また、通勤時の事故によるケガ・死亡に対する補償は、業務中同様労災認定される可能性もありますから、従業員に任意保険加入状況の確認や保険証券の提出を、マイカー通勤の条件として加えてください。

    今すぐ無料DLできる!車両管理規定のテンプレート

    ここまで、車両管理と車両管理規定について説明をしました。これから事業をスタートする方や、事業拡大で急きょ規定作成をしなくてはならないという方にとっては、正確な規定の作成方法がわからないケースもあるはず。そこで最後に、今回解説した車両管理の目的とメリットをしっかりと具現化できる無料テンプレートをご紹介します。いずれも自社でカスタマイズ可能なワードファイルになっていますので、フォーマットをベースにしながら規定の追加や削除が簡単に行えます。是非とも、従業員の安全確保や車両管理業務の改善に、お役立てください。

    ・社有車の一般的な管理規程

    マイカー通勤をしている会社の規程

  • 物流の働き方改革を推進する「トラック簿」開発秘話 -前編

    物流の働き方改革を推進する「トラック簿」開発秘話 -前編

    物流倉庫(トラックバース)の混雑が社会問題となっています。今回はトラックバースの状況をデータ化し、作業の効率をあげ、トラックの待ち時間も削減できるサービスを提供するモノフル社にインタビューしてきました。また、トラック簿の一部サービスで利用されているSmartDrive APIとは何か?こちらについても伺いました。前編・中編・後編でお届けします。

    はじめに、モノフルと武田さまについてご紹介いただけますか。

    現在、株式会社モノフルでセールス&マーケティング シニアマネージャーをしています、武田優人(たけだ・ゆうと)です。モノフルは、世界的物流施設大手のGLPの日本法人である日本GLPが、2017年に設立した物流のデジタルトランスフォーメーションに特化した会社です。

    私自身は2015年4月、日本GLPに入社し、はじめはプロパティーマネジメント部に所属して物件の施設や運営管理を行っていました。具体的な業務はテナントや物流会社の入退去対応、工事の調整、トラブル対応、アメニティ管理などです。そして2017年の4月1日、不動産というハードサービスだけでなく、物流に関するソフト面のサービスも提供することを目的に、GLP内で新規事業を立ち上げる事業企画部が発足しそこへ参画。呼び出しを待つトラックの長蛇の列や、荷主毎に異なる多種の伝票、数時間にわたる手積みの状況など、私が運営管理をしている際にも現場の苦労を感じていましたが、それをGLPという土台を生かしつつ、スピード感を持って高精度なサービスを提供したい−−そうした思いから、物流に関するさまざまな課題を包括的に捉え、解決へと導くサービスの提供に特化した、モノフルという子会社を立ち上げました。

    GLPとしては、今後も物流と不動産の開発を行っていきますが、ハード面だけで解決できないソフト面についてはモノフルがサービスを開発し、両面で最適化を図ります。

     

    2019年4月、モノフルの新たなサービスとしてトラック簿の提供が開始されましたが、開発へのきっかけについてお伺いできますか。

    モノフルが輸配送の領域で目指しているのは、次の5つの情報を組み合わせて物流を最適化することです。

    1. バース管理
    2. 配車計画
    3. 求貨求車マッチング
    4. 運行計画
    5. 動態管理

    上記5つの機能や情報が連携し、なおかつ活用できてこそ、輸配送の最適化が実現するんです。

    現状把握と車両の状態や輸配送に関する課題を洗い出すために、パートナー企業のスマートドライブと何度も話を重ねて気づいたのが、会社ごとに配車計画や動態管理を取り入れていても、「情報の共有化」ができていないために、業務改善が進んでいないということでした。開発に莫大な予算をかけて作り込まれた配車システムも、運送会社に情報を伝える手段がFAXだったり、電話だったり、最終的には人の手を介している。さらには返信もFAXで送られてくるため、やり取りで発生する紙を人の手で管理しなくてはなりませんし、情報が一部の人にしか伝わっていないなんてことも。

    動態管理もまったく同じ状況でした。運送会社の多くはデジタルタコグラフ(以下、デジタコ)から取得したデータによってドライバーが「今、どこにいるか」を把握できますが、倉庫側はリアルタイムの情報が見えないため、ドライバーが遅れているのか、順調なのかがまったくわからない。さらには、配送の完了報告も、ドライバーが電話で伝えていることが多いというのです。せっかくお金をかけて便利なツールを取り入れているというのに、自社だけに情報が閉ざされてしまうと「活用できている」とは言い難いですよね。

    そこでまず、「各社それぞれ異なるツールを利用していても、情報を共有化できるようにするにはどうすべきか」という点に目を向けました。−― 倉庫とトラックの状況を誰がどの環境でも見える状態にできないだろうか…。昨今、社会問題として度々取り上げられているドライバー不足をカバーし、業務の効率化や生産性の向上を図るには何から解決すべきか。

    人口減少やドライバーの高齢化、若手人材の不足など、ドライバーの人手不足には多くの原因が積み重なっていますが、「2027年にはドライバーが24万人不足する」というレポートも上がっていて、物流、とくに配送に関する課題解決は急務です。今すぐ人材確保ができないなら、不足分をどのように補っていくかを考えていかなくてはなりません。そこで、人手不足の本質的な理由を探るために実際の現場に足を運びました。そこで見た光景は、私たちの想像をはるかに超えるものだったのです。

    労働生産性=ドライバー数 ×労働時間 × 稼働率

    国土交通省の統計資料をみると、実際にドライバーの労働時間のなかで運転しているのは約半分ということがわかります。荷役と呼ばれているトラックから荷卸し、荷積み、棚入れや、順番待ちによる長時間の待機時間が発生し、実際に運転している時間=生産性が落ちてしまっている。荷物の積卸しをするために施設内でトラックを接車するスペースをバースと呼びますが、特定の時間に荷物の積み卸しが集中すると、ドライバーには長い待機時間が発生します。2017年から荷待ち時間の記録が義務化されましたし、この問題への深刻さについてはある程度ご想像いただけるかもしれません。

    さらに、フォークマンは基本的にフォークリフトに乗って荷積みや荷卸しがメイン業務であるのに関わらず、トラックを呼び出すために構内を探し回ったり、事務員の方々もトラックの呼び出しのための電話や、「あと何分かかるのか」といった問い合わせ対応に追われていたりとバース周りの対応に多くの時間を割いていました。

    ドライバーの待機時間や、倉庫側の呼出しや問い合わせ対応によって本来やるべき業務に集中できずにいるため、全体の流れや仕組みを変えていくところから着手していかなくてはならないなと気づきました。誰もが自分の業務に集中してもらうために、システム化できるところは、システム化していこう。それがトラック簿の開発へ繋がっていったのです。

    物流施設という現場を所有しているので、目先の課題をすぐに拾い上げることができるのがGLPの強みですよね。

    直接的に物流の業務を行っているわけではありませんが、先進的な物流施設だけでなく築年数が経過した古い物件も含めを保有していますので、サービスの開発にあたって、実際の現場を見せていただいたり、現場の方からどんな課題感を持っているのか伺ったりすることができます。それはGLPならではの強みでもありますし、サービス開発に生きる部分でもあります。リアルな現場や声を見て、聞いて開発ができるということは、お客様にとって本当の使いやすさ・欲しい機能を適切に提供できることにもなりますしね。

     

    エンジニアの方も、実際の現場を見て気づいたことや意見をサービスの開発に活かしていると伺いました。

    そうですね、なるべく開発を担当しているエンジニアにも現場に来てもらっています。そこで実際にどんな人がどのように活用しているのかを見てもらうんです。トラック簿のタブレット端末を入力するスピード感や目線をエンジニアが自分の目で観察することで、年齢層が高い方が多いからローマ字入力では打ちづらいだろう、10桁の数字にはハイフンを入れた方がわかりやすいだろうなど、細かな改修点を見つけることができるからです。それは非常に有意義なことですし、サービスの開発に重要な視点であると思っています。

     

    なるほど。ここまでは開発のきっかけやどのように開発されているかについて教えていただきました。ここからは改めて、トラック簿のサービス内容について教えていただけますか。

    まず、一つめとしてはバースの予約機能でトラックの到着時間を分散させたり、長時間の待機時間を削減したりできること。また、バースの状況を可視化できるので、紙やFAX、電話による非効率な作業も限りなく0にできます。そして、トラック簿の中でもっとも重要なのがデータの蓄積と分析ができる機能です。紙で保管をしていると、過去のものはそのままバインダーの中で放置されっぱなしになりやすいんです。経験則で何曜日・何時に混雑するのか、感覚値では理解しているかもしれませんが、データ化していないと新しい人が入った時に対応できませんし、いつまでも問題を改善することができません。全体の傾向がある程度わかれば、効率化のために何をすべきか、どうすべきかを考えることができますし、待機時間料が一斉請求された場合、どれほどのリスクがあるのかを想定できるようになります。だからこそ、データを取ることが重要ですし、データを活用していただきたいのです。

    バースの大混雑時には、8時間も待つトラックが発生するそうです。そうすると次に何が起きるか。時間が無駄になるし、仕事も進まないのでドライバーからは「あそこの現場はお金をもらっても行きたくない」と言われるようになってしまう。つまり、効率の悪さから業務に支障が出て、最終的には企業の業績に響いてしまう、悪循環ができるのです。さらに、順番がズレたり、トラックが来る順番が分からなかったりすると、荷揃えや荷積みの準備ができず、倉庫内の作業効率が鈍化します。過去のデータがないと、スタッフとフォークマンの人員が適切かどうかもわかりませんし、最適化もできません。

    国土交通省が推進している物流効率化法でも、トラックの予約受付システムの導入が勧められています。そのため、最近ではバースの予約システムがメインのサービスが数多く提供されるようになりましたが、トラック簿に関して言うと、バースの予約はあくまでも問題を解決する手段の一つだと思っています。本当に効率化を目指すなら、本来、トラックドライバーの拘束時間の内訳を把握することから始めるべきなんです。拘束時間と内訳がわかれば、手がかりが見つかります。バースの予約で解決できるかもしれないし、受け入れ時間自体を変更すべきかもしれない。なので、まずは倉庫に到着後、待機時間を経て荷物を積んで出ていくまでのデータを指標として取得し、現状を知る。そこからです。

    私たちはオーバーフロー型と言っていますが、朝8時から一日中混雑している倉庫もあります。この場合、バース予約ではなく、バース数を増やすか、作業時間を削減するためにパレット化を推進するか、問題解決の手段は別軸になってきます。ただし、混雑が朝だけ、夕方だけの場合、バース予約により分散化すれば解決できます。必ずしもバースの予約が解決するのではなく、幅広い視点で問題を受け止め、解決の手段を考えていくべきなのです。

    私たちはGLPが所有する物件で実際の課題を肌で理解していますし、これまでに多くの現場に訪問してきたため、さまざまなケースやノウハウが蓄積されています。ですので、より現場の視点で必要な機能を提供できる自信があります。

     

    中編へ続く>>

  • 料金シミュレーションあり: 適切な車両削減で車に関するコストを見直そう!

    料金シミュレーションあり: 適切な車両削減で車に関するコストを見直そう!

    利益を安定して獲得することが第一命題の法人・企業にとって、車両に関連する費用は大きな出費。そのため、前回は稼働率にもとづいた車両削減によって適切な配車を行う方法をご紹介しました。実際に、「こんなに稼働率が低かったのか…」と改めてご理解いただけた管理者様もいらっしゃるはずです。

    一言で車両削減と言っても、業務に支障が出るほど切り詰めるわけにはいきませんし、とは言え保有している台数に関わらず、維持コストの削減にも限界があるため、長期的な事業展開を見据えるのであれば、車両の適切な保有形態を綿密にプランニングする必要があります。そこで今回は、車両削減や車両台数の最適化を行うために、効率的かつ適切な車両運用スタイルについて、具体的な料金シミュレーションを交えて解説します。毎月だと気づかないかもしれませんが、年間で考えると維持費は莫大なコストです。保有形態の変換でどれほど節約ができそうか、料金シミュレーションで試してみてください。

    車両の保有には、これだけコストがかかっている!

     

    車両を保有するには、購入費はもちろん、車検費用・燃料代・税金など細かく挙げるときりがないほどの経費がかかります。稼働率を把握したその先は、車両保有に要する経費を車のタイプ別にしっかりと把握し、適材適所かつ必要最低台数を配置することが適切な配車の基本的な考えとなります。この項では、法人企業の用途にマッチする代表的な車種を6つ挙げ、それぞれの年間コストを比較します。一台当たり、最低限でもどれぐらいコストがかかっているかを改めて把握しましょう。

    なお、法人や企業では車両を新車購入・保有すると、耐用年数一杯まで乗り潰すのが基本ですから、購入費は7年間乗り続けたと仮定し「年割」で算出したうえで、事業用車両として登録(軽自動車は届出)しました。また、2年に一度の継続車検費用は車両サイズに伴う平均相場の2分の1で、燃料代は年間2万km走行する設定でカタログ燃費の70%を目安に、ガソリン1Lあたり140円(軽油は120円)で計算しています。

    タイプ別年間コストまとめ

    1. 荷物を大量に運搬できる大型商用バン トヨタ・ハイエース:8Lディーゼル
    【購入費】44万円/年
    【車検費用】5万円/年
    【燃料代】24,6万円/年
    【自動車税】1,57万円/年
    【合計】約75万円/年

    2.  荷物を多めに運搬できるビジネスバン 日産・NV150AD:1,5Lガソリン
    【購入費】23万円/年
    【車検費用】4,6万円/年
    【燃料代】23万円/年
    【自動車税】0,85万円/年
    【合計】約52万円/年

    3.  荷物を運べる軽商用バン スズキ・エブリイ:660ccガソリン
    【購入費】15万円/年
    【車検費用】3万円/年
    【燃料代】21万円/年
    【自動車税】0,69万円/年
    【合計】約40万円/年

    4.  人員移動用普通車(経営者・役員など) 日産・ティアナ:2,5Lガソリン
    【購入費】37万円/年
    【車検費用】4,5万円/年
    【燃料代】28万円/年
    【自動車税】1,38万円/年
    【合計】約74万円/年

    5.  人員移動用普通車(一般社員) トヨタ・カローラアクシオ:1,3Lガソリン
    【購入費】22万円/年
    【車検費用】3,5万円/年
    【燃料代】19,4万円/年
    【自動車税】0,85万円/年
    【合計】約46万円/年

    6.  人員移動用軽自動車(一般社員) ダイハツ・ミライース:660ccガソリン
    【購入費】13,5万円/年
    【車検費用】3万円/年
    【燃料代】11,3万円/年
    【自動車税】0,69万円/年
    【合計】約29万円/年

    車両削減・最適化するポイント

    まず、人員とともに多くの機材・道具・商品を運ぶ業種が導入する1~3の車種ですが、サイズや量的に許容できる場合は、経営者や車両管理担当者は年間コストの面から、「1→2→3」へ転用することも視野に入れておきましょう。人員の移動に利用する車両の場合、企業としての体裁や経営者・役員等への待遇も考慮しなくてはならないため、高級外車やセダンの導入はもちろん、コストがかさむとはいえ例に挙げた日産・ティアナより、何ランクも車格を落とすことは難しいかもしれません。代案として、経営者や役員が所有している自家用車の使用へと変更し、燃料代や保険代を「手当て」として負担する形を取れば、年間コストの中で大きなウェイトを占める、年割購入費をかけずにすみます。

    一方、車両を複数台所有している場合に一番知恵を絞るべきが5と6のケースです。具体例として挙げたカローラアクシオを2台保有した場合の総年間コストがあれば、最もリーズナブルなミライースを3台運用してもおつりがくる計算になります。もちろん、複数車両を運用している企業の多くが加入する自動車保険は、台数が増えればそれだけ負担増になりますが、コスト算出時に設定した年間走行距離を超える場合、両者の「燃料代格差」は広がっていきます。

    【年間走行距離ごとの燃料代格差(ミライース-カロ―ラアクシオ)】

    • 3万km・・・約12万円
    • 4万km・・・約16万円
    • 5万km・・・約20万円

    フリート契約をしていれば、1台当たりの年間保険料は5万円程度ですから、上記のように年間走行距離が伸びれば、1台保有台数が増えてもあっという間に保険料をペイできます。試しに、3台カローラアクシオを保有する場合とうち2台をミライースに変更し、共に7年間・年3万kmで運用した場合の差額を計算してみましょう。

    「(12万円-5万円)×2台×7年=98万円」

    なんとミライースの新車が1台買えてしまうほどの差額が出ました。事実、街を走る営業車の多くがミライースや、同クラスのスズキ・アルトであり、軽自動車の高性能化や居住性の向上と燃料代の高騰が進む中、近年一層普通営業車の淘汰が進んでいるようです。

    大量の荷物や大型資材など運ぶことができる大型ミニバンは、業種によっては他の車種では対応できないことも多い唯一無二の存在ですし、ビジネスバン・軽商用バンは人員移動用の車両としても転用可能なため、オールマイティな活躍が期待できます。その点、軽自動車より高い購入費と維持費や低い燃費性能、さらに少ないバゲッジスペースなどを加味すると、5の「一般社員移動用普通車」が最も中途半端で、「削減すべき車種」であると考えられます。

    ちなみに、お役御免となった後のリセールバリューについて軽く触れておくと、同年式・同走行で似たような程度であれば、「1→4→3&6→2→5」の順に下がっていく傾向にあります。

    長期運用をする場合は中古車を購入しない方が無難!

    車両保有と関連する話で、購入コスト削減のため中古車の導入を視野に入れるケースもありますが、5年以上運用する場合はやめておいた方が賢明と言えます。なぜなら商用車・営業車に適している車両は、通勤やレジャー向けの一般車種と比較し走行距離が長く、重量物を常時積載するなどといった使用環境の悪さから、年式の割にエンジンや足回りに不具合を抱えている中古車が多いからです。

    中古車の購入で初期費用を抑えたい場合は、商用とあまり考えられていない意外な車種を狙うのも一つの手です。たとえば、ダイハツ・タントあたりはシートアレンジで後部座席をフラットにできるため、ハードな利用でなければ十分軽商用バンとして転用できるでしょう。また、トヨタ・カローラフィールダーや、マツダ・アテンザワゴンなどのステーションワゴンも、人員・荷物輸送能力を兼ね備える立派な営業車として活用できますし、何より中古車の販売価格帯がリーズナブルです。

    さらに、登録・届出から短期間しか経過しておらず、走行距離もほぼないに等しい新古車を選べば、新車より概ね1割ほど安い価格で入手可能です。新古車は、「手垢が付いているから嫌だ」と敬遠されることもありますが、商用利用なら問題ありませんし、程度で言えば新車と遜色なくメーカー保証も付いているのがほとんどですので、新車では予算オーバーという場合はぜひ検討してみてください。

    カーリースやカーシェアの金額感とメリット

     

    最近では、購入費・車検代・自動車税をカットすることができるカーリースや、必要に応じてスポット利用できるうえ、駐車料金も発生しないカーシェアを利用して、車両関連費を削減するケースが増えているようです。年間経費が高い車両ほど、カーリースやカーシェア活用によるコスト的なメリットは大きくなりますが、経費がリーズナブルな軽自動車の場合、長い目で見るとかえってデメリットが発生する可能性もあります。

    法人向けカーリースの年間料金とメリット

    おおよその料金はリース期間中の車検・点検・整備や、オイル・タイヤ交換といったメンテナンスがパックになっている・月間予定走行距離が1,500km・7年契約という条件で、「ORIXforBUSINESS」のメンテナンスリースを元に算出しました。車種によって料金が異なるため、前項で実例として挙げた車種で料金を見積もりしてみましょう。 

     

    • トヨタハイエース・・・40,392円/月(年間484,704円)
    • NV150AD・・・32,158円/月(年間385,896円)
    • エブリイ・・・23,328円/月(年間279,936円)
    • ティアナ・・・58,536円/月(年間702,432円)
    • カローラアクシオ・・・35,965円/月(年間431,352円)
    • ミライース・・・21,708円/月(年間260,496円)

    ※いずれも税込の金額です。

    一見、大型バン以外は保有時の経費と数万円しか変わらないように見えますが、3度の車検費用と法定点検、7年分の自動車税とメンテナンス料がセットになっているため、トータルでは大幅なランニングコストの削減が行えます。また、「法人向け」と銘打っていながら準備されている車種が豊富であることも魅力の一つ。トヨタ車ならランドクルーザーやハリアなどもラインナップされているため、初期費用をコストカットしつつ、ありとあらゆるビジネスシーンにマッチした車を利用することが可能です。

    法人向けカーシェアの年間料金とメリット

    一方、車をビジネス利用する機会が極端に少ない場合や、使用する車種に制限やこだわりがない場合は、コイン駐車場をステーションとしたカーシェアを有効活用することで、利用料金と駐車場代以外の車両関連コストをほぼゼロにすることも可能です。カーシェア業界の最大手「タイムズカーシェア」の場合、入会時に648円のカード発行手数料さえ支払えば、月額基本料金0円で乗った分だけ料金を支払うのみです。利用料金は1分206円ですが、ここにはガソリン代と保険代も含まれているうえ、予約した利用予定時間より返却時間が早くなる、つまり3時間だったものが1時間になった場合でも、実際に利用した1時間分の金額しか課金されません。

    また、課金は完全時間制で移動距離は一切関係ないため、利用料金がわかりやすいのもメリットだと言えます。予約はスマホやパソコンからいつでも可能で、しかも1分前までなら突然のキャンセルも無料です。さらには、入会時開設されるマイページでは、運転者の急減速・急加速回数や105km/h超過状況と最高速度をチェックできる、「クルマの運転見える化サービス」も利用できますので、経営者や管理者は従業員の安全運転に向上に役立てることもできるのです。

    車両削減でコストダウンを狙うならこんな組み合わせも

    保有車両の一部をカーリースに変更することでランニングコストの大幅削減が可能ですし、規模が小さく車両使用頻度が少ない場合は、カーシェアの活用も有効な手段になります。ここでは「保有車のみ」「カーリースのみ」とはっきり区分けするのではなく、稼働率を考慮してより柔軟に利用することを念頭に、車両保有とカーリース・カーシェアそれぞれの良いとこどりをしながら、コストダウンを図っていく方法を考えてみましょう。

    保有車+カーリースの組み合わせと運用事例

    保有からカーリースすることによってコスト面でもっともメリットが出やすいのは、車両本体と関連コストが高額な大型バンです。場合によっては、安い軽自動車は保有し、大型バンのみカーリースで対応するという考え方もできるでしょう。たとえば、ハイエース2台とミライース1台をすべて保有する時(A)と、ハイエースのみリース契約する際(B)の年間コストを概算コストとリース見積り額に沿って計算すると、

    A:ミライース(保有)29万円+ハイエース(保有)75万円×2=179万円

    B:ミライース(保有)29万円+ハイエース(リース)48万円×2=125万円

    となり、AとBとのコスト差は54万円という大きなものになりました。しかも、今回料金見積もりをしたリース契約はメンテナンスパックなので、コストのかかるハイエースのオイル交換やタイヤ交換費も、節約できるというおまけつきです。

    保有車+カーシェアの組み合わせと運用事例

    一方、保有車とカーシェアの組み合わせが有効なのは、普段は都心部から離れた場所で仕事をしていて、月に数回、営業や打ち合わせで都心部へ行くといったケースです。月に4日、都心部で打ち合わせ時をする際、往復時間を含めて4時間ほど車を使用するとしましょう。月トータルの使用時間は16時間、これをタイムズカーシェアの時間制課金に当てはめると、ノートやフリードであれば13,184円/月、ノアやヴォクシーなどのバンであれば26,368円/月です。

    今回最も低コストな車種として紹介したミライースにしても、年間の維持コストに29万円ほど必要ですから、ガソリン代や保険料・メンテナンス費用を含めると合理的に車両が利用できることになります。

    エコカーへの切り替えはコスト削減手段の一つになるの?を解決

    ここまでのコスト・シミュレーションでもわかるように、購入費や車検代もさることながら、「燃料代」がかなり大きなウェイトを占めていることがお分かりいただけるはずです。

    ならば、いっそのことハイブリット電気自動車などの「エコカー」へと切り替えれば、一気にコスト削減できるのでは?と考える方もいるかもしれません。しかし、そこには注意が必要なのです。

    ハイブリットは乗り潰しを前提に◎

    プリウス・アクア・ノートだけではなく、今や多くの車種に採用されているハイブリット・エンジン。通常のガソリンエンジンより高い燃費性能を誇るものの、その分新車の購入価格が同車格のガソリン車より60万円近くも高額です。

    たとえば、ガソリンモデルの燃費が16km/L、ハイブリット25km/Lでありレギュラーガソリンの価格が140円/Lだとしましょう。この2台がともに、年間2万km走行した場合、前者は年間1,250ℓ、後者は800ℓものガソリンを消費するため、計算上はガソリン車の方が63,000円ほど多くの燃料代はかかってしまいますが、購入費の価格差である60万円を埋めるには9年以上乗り続けなくてはなりません。

    また、フル充電時の航続可能距離の限界が200kmであるため、満タンの給油で500km近くを優に走るガソリン普通車と比較すると社用車向きとは言いづらいでしょう。つまり、ハイブリット車を導入して経費削減するためには、年間走行距離が長距離発生する業種であるか、乗り潰すまで運用を続けるしかなく、場合によってはハイブリット車並みの燃費性能を備えた軽自動車を選択したほうが経済的になるケースもあります。

    電気自動車の導入はコスト削減ができる?

    電気自動車であれば燃料代は一切かかりませんが、現在ではまだまだ車両本体価格が同ランクのガソリン車より圧倒的に高額です。また、国産であれば日産・リーフとe-NV200、三菱・アイミーブのみという車種選択しかありません。将来的に新車価格がグンと下がり、航続可能距離がガソリンモデルと同等の水準まで達すれば話は変わってきますが、今のところ電気自動車は企業のイメージアップといったケースを除くと、商用車への転用は難しいかもしれません。

    まとめ

    さまざまな角度から車両削減方法を考察し、シミュレーションを展開しましたが、企業と車との付き合い方は多岐に及ぶため、これでも完全に網羅したとは言えません。

    車両は稼働率を考慮したうえで台数管理を行い、適材適所に配置することができれば、経費削減だけではなく収益拡大にもつながります。車両全体の稼働率を把握し、ぜひとも自社の稼働状況やビジネススタイルにあった適切な配車方法を検討してみてください。