カテゴリー: 自動車最前線

  • トヨタが加速させる!MaaSの取り組み

    トヨタが加速させる!MaaSの取り組み

    人々のライフスタイルや価値観の変化、さらにそこへ直撃をしたコロナという変化により、自動車業界全体が変化を余儀なくされました。そんな中、トヨタは何年も前から自社を変化させるべくさまざまな実証実験を試み、挑戦し続けています。本記事では、そんなトヨタが推進しているMaaS事業について紹介します。

    Autono-MaaSという概念から誕生した次世代モビリティ「e-Palette 」

    2018年1月、米国はラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー展覧会「CES」において、豊田社長は「クルマを作る会社から人々の様々な移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革し、全ての人に移動の自由を、喜びを与えることができるような会社を目指す」と述べました。そして、この言葉を体現するように、電動化、コネクテッド化、自動運転化の技術を駆使した次世代電気自動車「e-Palette Concept(以下、イーパレット)」を発表。

    イーパレットは、「Autono-MaaS(※)ビジネスアプリケーションに対するトヨタのビジョンを示した一例」で、ライドシェアなどの移動から、物流、輸送、リテール、さらにはホテルやパーソナルサービスに至るまで、様々な用途をサポートするオープンでフレキシブルなプラットフォームとして展開することを目的に開発されました。モビリティをたんなる“移動手段”として捉えるのではなく、多目的な使い方ができるプラットフォームとして活用することで、新たな価値を創出しようとしているのです。

    そしてすでにウーバー・テクノロジーズ、アマゾン・ドット・コム、ピザハット、ディディなど、誰もが知っている大手企業と連携し、今までにないビジネスを展開しようと取り組んでいます。

    ※「Autonomous Vehicle(自動運転車)」と「MaaS(モビリティサービス)」を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語。

    ソフトバンクとの協業で、Autono-MaaS を事業化

     

    トヨタは自動運転や新たなモビリティサービスの創出を実現するために、2018年9月にソフトバンクと提携し、モネテクノロジーズという会社を立ち上げました。モネテクノロジーズは、トヨタが構築したコネクティッドカーの情報基盤である「モビリティサービスプラットフォーム(MSPF)」と、スマートフォンやセンサーデバイスなどからのデータを収集・分析して新しい価値を生み出すソフトバンクの「IoTプラットフォーム」を連携させた新しいモビリティサービスを提供する企業です。
    同社では、数多ある社会問題を解決するために、コンビニ、スーパー、宅配など、業界の垣根を超えた連携が必要だとして、「MONET コンソーシアム」を設立。現在はコクヨ、伊藤園、コナミ、TOTO、フィリップス、ウェザーニュース、サントリー、ヤフーなど、多種多様な450社以上が参画し、モビリティを基盤に個々の強みを掛け合わせながら、人々の生活をより良いものへと変えるMaaS事業を次々と生み出しています。

    コネクテッドサービスの強化で海外への展開も

     

    CASEの中で、最も実現性と実用性が早いと考えられているコネクテッド。この分野に関して、トヨタは2016年にマイクロソフトと共同で車両から得られる情報集約、活用に向けて新会社、Toyota Connected,Inc.を米国に設立しました。車両通信機が装着されたトヨタ車、レクサス車から得られるさまざまな情報を集約するトヨタ・ビッグデータ・センターを運用し、より良いクルマ作りに向けたビッグデータの研究と活用を行っています。

    また、2018年4月には、欧州市場のモビリティサービスニーズへの対応と情報セキュリティ対策を促進することを目的に、TOYOTA Connected Europeを設立しました。さまざまな機能を包括的に備えるトヨタのモビリティサービスプラットフォームの開発を強化し、GDPRを含む情報セキュリティ対策にも取り組んでいます。

    コロナに打ち勝つ!?小型モビリティのシェアリングサービス


    コロナの感染拡大によって、リモートワークや外出自粛など、人ごみを避ける、そもそも移動をしないという生活が人々の日常になりました。とはいえ、自粛が解除されてからはオフィス通勤が復活した方も多いはず。そこで注目されているのが、満員電車でのリスクを軽減するための移動手段、小型モビリティの活用です。

    パーソナルな乗り物と公共交通を最適につなぎ、シームレスで快適な移動と地域の交通課題解決をサポートするHa:mo(ハーモ)という次世代の交通システムづくりに取り組んでいるトヨタは、パーク24と協業し、乗り捨て可能な小型モビリティのカーシェアリングサービスを展開しています。パーク24が運営するタイムズカープラスへの入会が必要で、現在は千代田区、中央区、港区、文京区、台東区、墨田区、江東区の7区内で利用ができます。講習不要で乗れる小型モビリティのCOMSは15分220円〜。密を避けたい、買い物でちょっと移動したい、など、小回りのきく小型モビリティならではの利用シーンは今後も増えていきそうです。

    マイルート

    「もっと移動したくなる未来へ」をコンセプトに、電車やバス、タクシー、レンタカー、カーシェア、サイクルシェアなど多様な移動手段を組み合わせた移動ルートの検索、乗車予約・決済、フリー乗車券の購入・利用、ルート周辺の店舗・イベント情報を提供するスマホアプリがマイルートです。同アプリには、事故や渋滞時など、道路状況を反映した交通手段や最適なルートを提案するなど、ユーザーの利便性を向上させる仕組みが取り入れられています。
    対象地域は横浜、北九州、福岡、水俣エリアと限られていますが、今後、サービスとともにエリアの拡大も期待されます。
    なお、マイルートは先日行われたIAAE(国際オートアフターマーケットEXPO)実⾏委が主催する「MaaSアワード2020」において、アプリ部門を受賞しました。

    トヨタが描く未来都市〜ウーブンシティ構想

    5月、AIやビッグデータなどの先端技術を活用したスーパーシティ構想を実現する改正国家戦略特区法、いわゆるスーパーシティ法が通常国会で成立しました。規制改革を伴う複数分野のサービスを生活に実装し、2030年ごろの「まるごと未来都市」の実現を加速させようとしています。

    トヨタでは、一足先にCES2020で実証都市「ウーブン・シティ」と呼ばれるコネクテッドシティの構想を発表しました。実際に、年末に閉鎖予定の静岡県裾野市の工場跡地を利用し、2021年初頭よりまちづくりを開始するとのこと。

    人々が実際に暮らす環境のもと、NTTをはじめとするパートナー企業や研究者と連携しながら自動運転やパーソナルモビリティーなどを活用したMaaSはもちろん、ロボット、スマートホーム、AIなど多様な技術を用いた新たなサービスの導入・検証を素早く繰り返し、人とさまざまなモノがつながる中で新たな価値やビジネスモデルを創出しようとしています。

    トヨタとNTTの連携は、スマートシティビジネスの事業化を実現するために、長期的かつ継続的な協業関係を構築することが目的です。スマートシティー実現の基盤となるスマートシティプラットフォームを共に構築・実装・運営し、国内外の都市に展開することを目指しています。

    まとめ

    コロナの影響を受けつつも、大胆かつ壮大なプロジェクトに着手するトヨタ。今後の動向に目が離せません。

  • 自動運転のレベルUPに欠かせない技術・ダイナミックマップとは何か

    自動運転のレベルUPに欠かせない技術・ダイナミックマップとは何か

    完全自動運転車の登場が間近に迫っていると言われている今、人間の目・耳に当たる各種カメラ・センサー・レーダーや、頭脳の役割を果たすAI開発の進捗状況に注目が集まっていますが、自動運転車が安全かつ円滑に走行するため、もう1つ重要な技術が存在します。それが、今回解説する「ダイナミックマップ」です。どんな技術でどんな役割を果たすのか、そして私たちにどんな未来を見せてくれるのか、現状と将来の展望を徹底検証します。

    ダイナミックマップとは

     

    ダイナミックマップとは、高精度3次元地図に渋滞情報や事故による通行規制など、位置情報を組み合わせたデジタルマップのことで、人間が見るのではなく車が自動運転を行うために使用されます。

    ダイナミックマップの3次元地図には、

    • 車道の中心線
    • 道路と道路の連結
    • 横断歩道・停止線
    • 交通標識・看板

    など、さまざまな情報が静的データとして格納されており、これらと動的データを紐付けることで、車載センサーでは判別できない遠くの道路状況を先読みできるようになります。

    また、車載センサーが認識すべきデータをあらかじめ車自身が、「データベース」として保持することで認識・処理の負荷を低減できるほか、悪天候の際のセンシング能力安定化にもつながるとされています。

    この高精度3次元地図を整備しているのは、ゼンリン・パスコなどの地図・測量会社や各自動車メーカー、さらに三菱電機などの電機メーカーが出資して設立した、「ダイナミックマップ基盤株式会社(以下DMP)」。DMPは、動的データ付加する上でのベースとなる静的な地図データを、関係各社の「共通領域」として一元管理、現在は2020年の高速道路・自動車専用道路の自動運転化に向け、日本全国の高精度な3次元地図を整備中です。

    ダイナミックマップは何を実現するのか

     

    DMPが整備を急いでいるダイナミックマップは、一度完成すれば永遠に使えるものではなく、変化する静的・動的データを常に収集・分析し、リアルタイムに近い状態でマップ更新を手掛ける中央センターのような組織が必要となってきます。

    そして、ロボット掃除機のような軽微な自動運転と異なり、縦横無尽に張り巡らされた道路を、歩行者や他車とニアミスしながら高速走行する自動車の場合、高精度3次元地図をベースに、

    1. 路面・車両・建築物情報など・・・1ヶ月ごと更新(静的データ)
    2. 交通規制・道路状況・広域気象情報など・・・1時間ごと更新(準静的データ)
    3. 事故・渋滞・狭域気象情報など・・・1分ごと更新(準動的データ)
    4. 歩行者・周辺車両・信号情報など・・・1秒ごと更新(動的データ)

    といった、時間軸に併せた的確でスピーディなマップ更新システムの構築が不可欠です。そのため、DMPは自動図化技術の開発を進めつつ道路管理者や物流会社と連携し、工事計画書や定期運行車両から道路変化情報を入手するなど、マップ更新の効率化を図る仕組み旁に取り掛かっています。

    技術と情報の性質をから、1・2・3に関してはデータ更新の自動化も比較的容易と言えますが、信号情報はともかくすべての歩行者・車へGPSを付け、位置情報を把握するわけにはいかないため、当面4はアナログ更新に頼るしかないと考えています。

    しかし、車載センサ&AIがデータ収集・分析まで担い、それがセンター機能と高度に融合して自動更新システムが完成した場合、クルマは単なる移動手段から、人や物を安全・確実に届ける「MaaS」へと進化を遂げるでしょう。

    ダイナミックマップはここまで進んでいる!

     

    ダイナミックマップの完成こそ、完全なる自動運転の普及に欠かせないもの。前述したように安全かつ確実な運用するためには、動態データの生成&システムへの配信技術向上が必要です。そして、DMPによる静的データの整備が整いつつある一方で、国内の関連各社は持てる技術力を総動員しマップ作成・更新の効率化・自動化や、動的データに関する実証実験を始めるなど、立ちはだかる課題をクリアするための動きを強めています。

    三菱電機 高精度3次元地図向け「自動図化・差分抽出ソフト」の販売を開始

    高い測位・マッピング技術を有する三菱電機は、AIと三菱モービルマッピングシステム(以下MMS)の技術を活用し、高精度3次元地図を効率的に作成・更新できるソフトを開発、既に国内大手地図メーカーへ販売をスタートしました。MMSのレーザー点群とカメラ画像データから、AIを用いて必要情報のみを抽出し併せて認識精度を向上させ、図化作業を「自動化」したことにより、地図作成時間を10分の1以下まで短縮可能なのだとか。

    また、同社は静的データのみならず、準静的・準動的データの生成・更新・配信システム、及び動的情報と配信データとの車載機上における紐付け検証を実施するなど、ダイナミックマップの規格化を推進しています。

    パイオニア 蘭・HERE社と提携しグローバル規模のデジタルマップ作成に着手

    2018年5月、パイオニアは自動運転車の安全かつ効率的な走行に必要な、高精度地図を提供することを目的として、BMW傘下の地図制作会社・HERE社と子会社であるインクルメントPが提携し、「OneMap Alliance」を結成したと発表。中国のデジタル地図サービス大手NavInfo社や、韓国の通信事業者のSK Telecom社も参加しており、地域の制約を受けることなく各市場で統一された地図情報を、自動運転などで利用できるようにする取り組みに着手しています。

    ゼンリン・富士通・KDDI 動的データ生成・配信技術の実証実験をスタート

    2018年1月よりゼンリン・富士通・KDDIは3社合同で、走行中に遠方の道路状況をリアルタイムにフィードバックするシステムの構築を目指し、ダイナミックマップの生成に必要なデータ収集・分析・加工・配信技術の実証実験をスタートさせています。ゼンリンは動的情報との連携や逐次・差分更新を可能とする、高精度地図データ・プラットフォーム「ZGM Auto」の検証、富士通は同社の「Mobility IoTプラットフォーム」を活用し、自動運転システムの最適化を目指しています。

    また、KDDIは一定間隔で生成される車載カメラやセンサーのデータを、効率的に更新するための通信モジュールとネットワーク検証・評価を行い、通信事業者として4G・5G・DSRCといった、様々な通信技術との融合を進めていく方針です。

    ~ダイナミックマップが描く未来~

     

    ダイナミックマップは単なる地図作成に留まらず、内閣府をはじめ、官・民が総力を結集して取り組んでいる一大国家プロジェクトです。2019年5月にはDMPが作成した地図データ搭載の量産車も販売開始、どちらかと言えば海外より日本が一歩リードしているのです。

    他国に先んじて完成までこぎつければ、日本が自動運転の分野で覇権を握ることも可能なキーテクノロジーですが、その時、私たちの生活はどのようにかわっていくのでしょうか。最後にダイナミックマップが見せてくれるであろう、移動の未来予想図を考察します。

    座っているだけで安全かつ正確なナビゲートで目的地へ

    完全自立自動運転が実装され、併せてダイナミックマップが完全に機能すれば、これまでの「ドライバー」という概念が一変し、「搭乗者」としてシートに座って読書や動画を楽しんだり、スマホを見たりしているだけで目的地へ到着します。

    細やかなセンシング性能と、3Dマップへのリアルタイムな動態データ更新によって、人間の視覚・聴覚では察知できない危険を回避する操作が自動的になされ、痛ましい交通事故が飛躍的に減少することも期待できるでしょう。また、走行規制・渋滞・天候などの準静的・準動的データを、ダイナミックマップを通じ入手したAIが瞬時に走行経路をはじき出し、最短かつ最適なルートで移動できるようにもなるかもしれません。

    これらの効果は絶大で、安全面以外にも、燃費向上による車両維持コストの軽減・高齢ドライバーによる免許自主返納の促進・郊外・地方居住者の移動手段確保・物流・運送業界の人材不足解消など、国内経済へ与える恩恵は計り知れません。

    ダイナミックマップは自動車以外にも応用可能!

    ダイナミックマップは現在、自動運転に特化してシステムの開発・整備が進んでいますが、建築物の構造・位置関係や周辺の交通量、土地の高低差や河川の存在などの静的データを追加すれば、地震・火災・洪水発生時の次世代型ハザードマップとして活用できます。また、超・高齢化社会を見据え歩道・段差・信号の数など、歩行に関するデータを付与すれば高齢者や車いす使用者のために、安全かつスムーズな移動ルートを自動的に案内する、精密なナビゲーションサービスの提供も可能です。

    3Dマップという仮想現実だからこそ、ダイナミックマップの可能性とポテンシャルは無限に広がっているため、自動運転の普及・拡大という共通テーマを実現した後は、様々な生活インフラに波及していくのではないでしょうか。

  • コロナの影響で大打撃を受けている観光業は「観光MaaS」で地域を活性化することはできるのか?

    コロナの影響で大打撃を受けている観光業は「観光MaaS」で地域を活性化することはできるのか?

    コロナウイルスの影響で大打撃を受けている観光業界…。Go To トラベルキャンペーンが注目されていますが、今後の観光業界はどのようになっていくのでしょうか?人々は観光だけでなく、仕事や学校への通勤通学、買い物や通院、おでかけにいたるまで、つねに移動をしながら生活をしています。その移動をどこに住む誰にとっても、スムーズかつ快適にしようと生まれた概念がMaaSです。

    スマートドライブマガジン内でも何度かMaaSについてご紹介してきましたが、本記事ではMaaSの種類や役割をより詳細に解説し、観光業界におけるMaaSの取り組みを紹介いたしましす。

    MaaSは大きく分けると3種類ある

    MaaSはサービスを展開する目的、地域によって大きく3つに分類されます。

    地方型

    課題:地方郊外、過疎地、地方の都市部を含む地方圏では、都心部のようにインフラが隅々まで行きわたっていないため、移動手段は自動車が主体です。一家に数台、一人につき一台所有している家庭も少なくはありません。さらには人口が年々減少していることから交通事業の採算性が低下して撤退、地域交通が衰退しつつあります。また、高齢者が多く、運転手も不足しているため、日常における移動手段の確保に大きな課題を抱えています。
    目的:自家用車に依存しすぎないよう、地域内移動を創出すること、高齢者の外出を促進・サポートすること、交通空白地帯での移動手段を確保すること。高齢者の踏み間違えによる悲痛な交通事故があとを絶たず、どんなに必要であっても免許返納を勧められるという風潮も強まっています。高齢者や周りの人々の安全守るには良しとされていますが、移動手段が整っていなければ生活に必要な食品や日用品のお買い物、体調管理をするための通院もままなりません。行きたい時に行きたい場所へ行ける。必要な時に目的地へスムーズに向かえる。それが人々の生活を支える大きなカギとなっているのです。
    施策:地方の主要となっている鉄道やバス路線を中心に、移動の柔軟性が高いタクシーやオンデマンドバスを取り入れたり、定額制の交通サービスを提供したり、商業施設や病院などの新たな乗り換え拠点を創出したりすることで誰もがスムーズに移動可能なサービスを受けられるようにMaaSの取り組みが進んでいます。そのほか、地域住民の互助によって交通手段を確保する、商業施設や市民ホールなどの集客施設に送迎サービスと既存の公共交通をつなぎ合わせ、シームレスな予約・決済を可能にするなど、地方のMaaSは移動の活性化に一役買ってくれそうです。

    都心型

    課題:鉄道を筆頭に、バス・タクシー・シェアサイクルなど交通手段は多様ですが、人口が多く密集しがちに。また、近年は訪日外国人の急増により日常的に渋滞や混雑が起きています。大小イベントや災害時などに起因する突発的な混雑を避けるために、交通手段の多様化や見直しが求められています。
    目的:多くの人々が行き交う都心部では、慢性的な交通渋滞、満員電車を解消すべく、移動手段の分散とスムーズな交通に目が向けられています。
    施策:業種や分野を超えた複数事業者間の連携により、MaaS関連のサービスやプロジェクトが続々と立ち上げられています。国内外の人々の移動ニーズにスムーズに対応するため、既存の交通サービスほか、相乗りタクシー、シェアサイクル、小型モビリティなどの多様な移動サービスが提供されています。また、これらのサービスは基本的にアプリ一つで予約と支払いが可能。また、多言語化への対応、バリアフリールートの情報提供など、ユニバーサルデザインへの配慮も進められています。
    異なるモビリティが乗り入れ、シームレスな乗り換えを可能とする交通結節店の整備や、データを活用した都市内交通のマネジメント向上など、人々の行動にMaaSは欠かせなくなりそうです。

    観光型

    課題:(現在は減少していますが)訪日外国人による観光客や、卒業旅行や、ハネムーンなど観光には多様なニーズが生まれています。しかし、観光施設は分散されていることが多く、回遊性を上げるには観光に対応した柔軟な交通サービスの提供が急務です。また、観光施設だけでなく、宿泊地と各種交通サービスが連携を図るなどして、分かりやすく移動しやすい方法を提案する必要があります。
    目的:柔軟な移動と簡単かつ一括できる決済方法を提供することで、観光客の回遊性を向上し、観光体験を拡大する。
    施策:オンデマンドバスやグリーンスローモビリティなど、多様な移動ニーズに柔軟に対応できるサービスの構築、観光施設や目的地近辺のお店、交通サービスが連携し、すべてのサービスを一括して予約・決済できるアプリの提供で、目的地への移動をスムーズかつ自由に行えるようにし、観光体験をより良いものへ変えることができれば、観光業がさらに活性化するのではないでしょうか。また、アプリを活用した移動を行うことで経路の把握ができますので、コロナウイルスの感染が発生した施設やエリアを事前に避けたり、各施設の密情報が今後MaaSアプリに連携されるようになると、安心した移動を提供できるようになる可能性もあります。

    多種多様な移動手段と連携でシームレスな移動体験が実現する

    日本国内に住んでいても、初めて訪れる観光地についてはインターネットなどで事前にしっかり調べておかないと、いくつもの観光地を巡るにはどの手段が効率的で安全なのか、どの交通サービスで移動すべきなのかわからず、オロオロしてしまうことも。とくに地方の観光地では都心部とは異なり、バスや電車の本数は限られていますので、主要な駅に向かうにも最適な移動手段とルートの検索が欠かせません。また、中には地元の人でもあまり知らないような、知られざる観光スポットを目当てに訪れる観光客もいるでしょう。そうした多様なニーズに応えることを可能にするのが観光MaaSです。各地域では、それぞれの観光資源や交通サービスを生かした観光MaaSの実証実験が始まっています。いくつかピックアップしてその内容をご紹介します。

    ・伊豆市「Izuko」
    3月10日にPhase2の実証実験が完了したIzuko。伊豆では、路線バスやタクシー運転手の高齢化と人手不足により、路線バスの本数やタクシーの台数が少なく、8割がマイカーで訪れるため幹線道路の渋滞が起きていました。この課題を解決するために、東伊豆〜中伊豆における鉄道とバスを一定区間で乗り放題にするデジタルフリーパス、下田海中水族館や遊覧船など観光施設での割引チケット、レンタカーやレンタサイクルの予約・支払いができる機能を搭載したアプリを開発。公共交通を活用し、目的地までのスムーズな移動を後押ししています。

    ・仙台市「TOHOKU MaaS 仙台 trial」
    仙台を中心としたエリアで実施された観光MaaSの実証実験(2月29日に終了)。
    JR、地下鉄、バス、仙台空港鉄道、阿武隈急行のフリーエリア内が2日間乗り放題になる豪華なデジタルパスほか、対象店舗で特典が受けられるクーポン、アンケートの応えるとかならずもらえるお土産スクラッチ、仙台に特化した観光情報を丸っと掲載した観光マップ、レンタカーの予約機能に加え、空きロッカー検索やえきねっとなど便利なサービスが盛り込まれています。利用方法はスマホで専用サイトにアクセスするだけ。日本後・英語・中国語(繁体語)の3言語での利用ができるのもポイントです。

    ・志摩市「ぶらりすと」
    出発地と目的地、日時を入力して検索するだけで、希望の時間とルートを表示。好きな時に好きな場所へ移動できるオンデマンド交通が簡単に予約できる機能がポイントのMaaSアプリ。このほか、伊勢〜鳥羽〜志摩の観光地と交通を結ぶデジタルフリーパス、アクティビティの予約など、伊勢志摩の旅をしっかり楽しむことができます。

    観光MaaSは地方を活性化させる1つの施策になるかも

    それぞれの地域課題を解決しながら、盛り上げていく。コロナウイルスの影響によって観光客は激減していますが、観光体験を向上すれば今後の再訪や口コミによる認知拡大が期待できます。観光におけるMaaSは、単に利便性を高めるだけでなく、安全に安心して移動が促進できる手段として、観光産業と地域を活性化させる糸口になるかもしれません。

  • 鉄道会社が進めるMaaS関連サービスまとめ

    鉄道会社が進めるMaaS関連サービスまとめ

    ここ数年の注目ワードになっているMaaS。全国津々浦々、都心にも郊外にもレールが敷かれている鉄道は、MaaSを推進する中で、もっとも中心的な存在と言えるでしょう。日本版MaaSの実現に向けて、各鉄道事業者も次々と実証実験を進めています。

    鉄道各社の取り組み

    JR〜航空、タクシーを始めさまざまな業種との連携でMaaSを推進

    JR東日本は2019年3月、技術イノベーション推進本部内に「MaaS事業推進部門」を設置し、オープンイノベーションによってMaaS事業をスピーディに推進すると発表。ANAやみんなのタクシーなど、枠を超えたコラボレーションで続々とプロジェクトを立ち上げています。

    出典:JR東日本

    2020年1月16日より、SuicaのID番号とクレジットカード情報を登録することでタクシーやシェアサイクルなど複数の交通手段を利用できる、都市型のMaaSアプリ「Ring Pass」の提供を開始しました(iOS向けは1月16日〜、Android版は春頃提供開始予定)。

    JR東日本では、タクシーやシェアサイクルなどの各種モビリティサービスの利用手続きを1つのアプリケーションに統合したワンストップサービスの実現を目指し、モニター企業数社の社員を対象とした実証実験を行っていますが、その範囲を一般のユーザーに拡大し、さらなる検証・改善を目的とした実証実験を行うとしています。配信開始時に利用できるサービスは、アプリに表示される地図上で空車タクシーの走行位置が確認できる機能(16日時点では国際自動車のみ)と、タクシー車内のQRコードを利用した決済機能。シェアサイクル、ドコモバイクシェアへの対応は春頃の予定です。

    JR西日本は観光MaaSに注力

    出典:JRおでかけネット

    一方、JR西日本では関西・鉄道7社による「関西MaaS検討会」を組織。瀬戸内エリアへの観光誘客拡大に向けて、出発地から目的地までの新幹線をはじめとする鉄道に加え、現地での船舶、バス、タクシー、レンタカー、レンタサイクル、カーシェアリングなどの交通機関および地域の観光素材をシームレスに検索・予約・決済することができる統合型サービス、観光型MaaSの実証実験を2019年10月から瀬戸内エリアで実施しています。

    せとうちエリアにおける観光型MaaSの「setowa」は、登録した立ち寄り地すべてのルート検索を行い、旅行行程を作成できるスケジューラー機能や出発から目的地までの移動をオンラインで予約・決済できる機能を搭載した専用アプリでサービスを提供しています。

    参加団体はジョルダン、JapanTaxi、電脳交通、タイムズ24、ぐるなび、日本旅行など誰もが知っている企業ばかりがその名を連ねています。

    東急電鉄〜伊豆を舞台に観光MaaSを推進

    出典:伊豆における観光型MaaS実証実験実行委員会

    東急電鉄はJR東日本と協力し、伊豆における日本初の観光型MaaSとして2019年1月より実証実験を開始。観光客が鉄道・バス・AIオンデマンド乗合交通・レンタサイクルなどの交通機関を、スマートフォンで検索・予約・決済、目的地までシームレスに移動できる2次交通統合型サービス「Izuko」を提供しています。

    目的地までの半年間に渡って実施したPhase1では23,231ものダウンロードを獲得しましたが、サービスやエリアの限定性など多くの課題が浮き上がりました。そこで、2019年か12月からはPhase2として、運用性や操作性を改善し、JR伊東線(熱海駅~伊東駅)区間をはじめとするサービスエリアやデジタルチケットの商品メニューを拡大。オンデマンド乗合交通など、新規施策を通じた地域課題解決の施策としてオンデマンド乗合交通を配車できる仕組みを導入するなど、利用手段を充実させています。

    また、東急電鉄は2018年にハイグレード通勤バス、オンデマンドバス、パーソナルモビリティ、カーシェアの4つのモビリティを組み合わせ、いつでも安心して移動できるモビリティサービスの構築を目指す郊外型MaaSの実証実験も実施しています。地域によって変わる課題とニーズをうまく汲み取り、その土地にフィットしたMaaSが提供されるようになるかも?

    小田急電鉄〜行きかたと生きかたを提案するMaaSアプリを提供

    中期経営計画において「次世代モビリティを活用したネットワークの構築」を掲げる小田急電鉄。自動運転バスの実用化に向けた取り組みのほか、複数のモビリティや目的地での活動を、一つのサービスとしてシームレスに提供する MaaS の実現に向けた取り組みを推進しています。その中で、同社がヴァル研究所の支援のもと開発しているのが「MaaS Japan」というプラットフォームです。


    小田急電鉄は「MaaS Japan」をベースとして活用し、2019年10月末から、ユーザーの日々の行動の利便性をより高め、新しい生活スタイルや観光の 楽しみ方を提案するアプリ「EMot」の提供を開始しています。同アプリは、電車、バス、タクシー、シェアサイクルなど、複合検索ができるシームレスなルート検索、飲食のサブスクや特典チケットの発行、デジタルフリーパスなどの機能を有しています。現在は静岡西部エリア、東京・神奈川エリア(実証実験中)で展開中。

    移動だけでなく、飲食や勾配など生活に密着したサービスを合わせて提供することで、移動という経験の価値を高めてくれるサービスです。

    京浜急行〜誰もが移動を諦めない世の中を作る。「ユニバーサルMaaS」

    出典:京浜急行電鉄

    京浜急行電鉄はサムライインキュベート、ヒトカラメディアとともに品川駅高輪口に「モビリティ変革」と「MaaS」をテーマとしたMaaS専門のシェアオフィスでありオープンイノベーション拠点「AND ON SHINAGAWA(アンドオン品川)」を開設し、取り組みを進めています。

    また、2月7日より、ANAと横須賀市、横浜国立大学と手を組み、産学官共同プロジェクト「ユニバーサル MaaS」の実証実験を開始しています。ユニバーサルMaaSとは、障がい者、高齢者、訪日外国人など、誰もがストレスなく移動を楽むことができるサービス。公共交通機関の運賃、運航・運行状況、バリ アフリー乗り継ぎルートなどの情報を提供しつつ、リアルタイムな位置情報やユーザーが必要とする介助の内容を交通事業者、自治体、大学が共有して連携することでシームレスな移動体験を実現するとのこと。

    鉄道会社×鉄道会社、鉄道会社×会社…連携で加速するMaaS

    JR東日本と小田急電鉄がMaaSの実証実験に参画!

    2019年10月、東京都が公募する「MaaSの社会実装モデル構築に向けた実証実験」に、JR東日本、小田急電鉄、ヴァル研究所などが連携して参画し、「立川駅周辺エリアにおけるMaaSの実証実験」に取り組むと発表しました。

    これは、JR東日本の中央線、南武線、小田急グループの立川バスのリアルタイムな運行データを用いた経路案内、多摩モノレールの1日乗車券と沿線施設の利用券がセットになった電子チケットをアプリで提供し、立川エリアの移動、お出かけをサポートするというもの。立川駅周辺エリアにおける公共交通の連携について課題を認識していた各社が連携したMaaSならではの取り組みです。

    JR東日本とANAが目指す「空と陸のシームレス化」

    2018年11月から観光流動拡大に向けた連携を開始し、地方への誘客推進の共同キャンペーンや訪日観光需要に対応したサービス展開、情報発信の強化などに取り組んできたJR東日本とANA。両社は、国内MaaSの展開と構築、さらに利便性の高い移動体験の提供を目的に連携を強化。モバイル端末などのデジタルテクノロジーを活用しながら、検索・予約・決済などのさまざまな面で連携を行い、旅行計画段階から終了までを包括的にサポートするためのシームレスなサービスを検討するとして、取り組んでいます。訪日観光の需要が増える中で、それに対応する適切なサービスの展開が期待されます。

    まとめ

    今まで個別にサービスを提供してきた各社がそれぞれの強み、サービスを持ち寄り、協力し合いながら課題を解決して新たな移動の価値を提供する。MaaSを浸透させるには、こうした業界の枠組み、垣根を超えた取り組みがますます必要不可欠となってくるのではないでしょうか。

  • 完全無欠ではない? MaaSのメリット・デメリットとは

    完全無欠ではない? MaaSのメリット・デメリットとは

    MaaSとは、ITモバイルの活用ですべてのモビリティをシームレスにつなぎ、1つのサービスとして進化させようとする「新たな移動の概念」であり、うまく普及すればルート検索・予約・配車・決済などが簡素化され、私たちの生活がより便利になると言われています。

    非常に利便性が高く、先進的なサービスとして目にうつりますが、MaaSには多くのメリットと同時にいくつかのデメリットも。モビリティ社会が成熟した日本ならではの課題が山積しているようです。

    MaaSの普及によってもたらされるメリット

     

    MaaSという概念のもとで生まれたサービスが普及・成熟すれば、①交通機関の効率化、②個人移動の利便性向上、③交通渋滞の緩和、④大気汚染や温室効果ガスの抑制といった多岐にわたるメリットが私たちの生活や経済社会にもたらされると考えられます。

    ITによるビックデータの収集と分析にもとづき、運行ダイヤの最適化や正確な増便・減便管理できるため、需要と供給のミスマッチが生じやすい地方都市の場合、走行中に情報取得ができるシステムを導入することで車両運用の効率化が実現できます。また、バス利用客の少ない過疎地域で停留所や時間帯などのデータ分析ができれば、遠方へ行く高齢者を自宅まで迎えに来てくれる定額タクシーやオンデマンドバスを配車するなど、個人移動の利便性を格段に向上させることも可能です。

    また、自動車を保有していなくても誰もが自由に移動できるようになれば、マイカーの個人保有数が減少し、おのずと交通渋滞は解消し、併せて排気ガス抑制にもつながります。

    このように、MaaSという概念は交通関連企業・環境・個人に対し、上記で示したような恩恵を与えてくれますが、ジャンル別に見るととくに2つの業界で、多大なメリットが発生すると考えられます。

    物流・運送業界や交通機関にもたらされるメリット

    「物流MaaS」という言葉も最近はよく目にする機会が増えましたが、モビリティなしでは成り立たない物流・運送業界は、MaaSシステムによる車両運用の効率化や段階的な自動運転の導入により、年々深刻さを増すドライバー不足問題を解決する道筋が見えてくるかもしれません。

    また、マイカーの代わりに公共交通機関やタクシーを使う人が増えれば、運賃収入の増加が期待できますし、利用者のデータを分析して新規サービスの創出やマーケティング施策を改善することで、ニーズに合わせた適切なサービスの提供や現在提供しているサービスのアップグレードが可能になります。

    過疎地域では鉄道路線の維持が難しくても、代替の移動手段がなく、なかなか廃止に踏み切れないケースもありますが、MaaSが実現すれば不採算路線を廃止し、浮いた資金で「オンデマンドバス」を運用するなど、運営効率を上げながら利用者の利便性をも向上させることもできるのです。

    観光業界にもたらされるメリット

    MaaSの普及にとって波及効果が期待されるのが観光業界です。たとえば公共交通機関でのアクセスが不便だった地域へも、他のモビリティで観光客を呼び込めるようになれば、地方部の産業活性化にもつながるでしょう。さらに、施設入場料などのアプリ一括決済や、営業時間を考慮した時刻表づくり、需要に合わせた増減便など、柔軟なシステム運用によって観光客の足を効率的・効果的にまかなうことで、観光地全体としての満足度を高めていくこともできるのです。

    また、MaaSのアプリが多言語対応できれば、インバウンド客の移動の利便性が向上し、訪日観光への満足度やインパウンド収益のUPが見込めるため、2019年10月開催されたG20観光大臣会合では、「持続可能な観光を推進する技術革新」としてMaaSが取り上げられました。

    MaaSによってもたらされるデメリット

    システムが運転に関わる全ての操作を行う、レベル4以上の自動運転車を活用するMaaSが普及した場合、人材不足の解消を超え、多くのプロドライバーが職を失う可能性もありますが、法的にも技術的にも、それはまだ先の話。目下のところ、大きなデメリットとして考えられるのは、国内経済の中核を担い続けてきた「自動車業界」への大きな影響です。シェアリングサービスの充実や公共交通機関の利便性が高まり、自動車販売台数の減少に拍車がかかると考えられます。

    変化を余儀なくされる自動車業界

    専門家によると、MaaSに対する自動車メーカーのスタンスは次の2つに分かれると言考えられています。

    ・ロボットタクシーやシェアリングなどによる具体的なビジネスモデルに取り組む会社

    ・都市空間や都市交通といった大きなビジョンを掲げ、アクションを起こしていく会社

    「100年に一度の大変革」を掲げるトヨタは、自動車メーカーの枠を超え「モビリティ・カンパニー」へモデルチェンジすることで、時代の流れと消費者ニーズに合ったサービスを展開する取り組みをすでに始めています。具体的には、2018年1月に開催された世界最大級の国際見本市「CES」で、MaaS専用EVである「e-Palette Concept」を発表したり、米・Amazonやピザハットといったサービス企業、中国・滴滴出行や米・Uberら大手ライドシェア事業者とパートナーシップを結んだりしています。

    また、いち早くEV普及へ舵を切った日産はGoogleやDeNAと連携しているほか、ホンダはソフトバンクとタッグを組んで、5Gコネクティッドカーの実証実験に世界で初めて成功するなど、大手メーカーは来たるMaaS社会での生き残り戦略にまい進中です。

    大きな問題が発生しそうなのは、大手自動車メーカーへパーツを納品している中小の製造会社で、MaaSに適合する新技術やシステム開発には膨大なコストを要すると考えられるため、大手メーカーとの関係が変化する可能性もあるでしょう。

    最大手であるトヨタまで変革に乗り出したMaaSの普及はもはや既定路線と言えるかもしれませんが、部品の精度や単価などメーカー側の要望に応えられなかった場合、受注数の大幅減少もあり得ます。そのため、製造効率や生産性の向上など、あらゆる面で業務改善を進めていく必要があると言えるでしょう。自動車産業は日本の基幹産業であり、多くの雇用を生み出しています。販売台数の減少にとって変わる雇用を生み出せなければ、失業率を高めることになり、社会問題化するかもしれません。

     ユーザーをどう守る?本当に利便性が高いものになるのか。

    MaaSはデータを統合して最適なサービスを展開するーつまり、パーソナルな移動データを複数の事業者間でシェアすることになるため、個人情報保護についても懸念されています。利用者の氏名や決済先の口座番号を共有していなくても、場合によっては移動情報だけで個人の特定ができてしまいます。また、MaaSに関するサービスの多くはスマホ経由で利用することがほとんど。急速に普及することで、スマホを所有していない、操作ができない高齢者などが取り残されてしまう可能性もあるのです。

    万が一、システムの障害が発生したら?

    各種システムが連携しあうことによって、提供が可能になる便利なサービスですが、万が一、システム障害が起きてしまうとその影響範囲が広大に。以前、携帯電話のネットワーク障害が発生し、多くの利用者が慌てふためきましたが、同じような事態が発生してしまうと、移動が困難になる人が増えてしまうかもしれません。

    日本ならでは?MaaSがクリアすべき今後の課題とは

     

    今後の普及が確実視されるMassですが、いまだ発展途上のサービスも多く、スウェーデンのチャルマース工科大学の研究者によると、MasSサービスは下表で示す5段階に分類されています。

    レベル0 統合なし。それぞれの交通手段・移動サービスが独立している状態。現在の交通システム。
    レベル1 情報の統合。料金や時刻表、経路情報などの一定の情報が統合されている状態で、アプリやWebサイトを使って実現されつつある。
    レベル2 予約・決済の統合。目的地までに利用する交通手段・移動に関する検索から予約、決済をスマホアプリなどでまとめて行える状態。
    レベル3 サービスの統合。レベル2の段階では、公共交通機関の統合がメインとなるが、レベル3では民間事業者のレンタカーサービスなどとの統合も行われる。定額の乗り放題サービスなどが実現できる状態。
    レベル4 政策の統合。事業者間の連携だけでなく、国や地方自治体も含んだ統合状態。都市計画や国家プロジェクトとしてMaaSの概念が組み込まれる最終段階。

    日本では都営交通機関の一部を除き、レベル2を超えるMasSサービスはほぼ存在せず、ヨーロッパや中国などのMaaS先進国に比べるとまだ道半ばといったところ。そんな日本版MaaSがなかなか浸透しない理由には、大きく4つの課題があると考えています。

    課題1 日本版MaaSに立ちふさがる法律の高い壁

    日本版MaaSの障壁となっているのが各種法律です。

    米・Uberは一般ドライバーがマイカーで乗客を運ぶ有償ライドシェアサービスですが、国内では他人を有償でマイカーに運送ことは、道路運送法第78条で禁止されている「白タク」行為に該当します。また、道路運送法でタクシー事業を営むには、国道交通大臣の認可が必要であるとの定められており、許可を得ずタクシー事業を行った場合は罰則が科されることになります。つまり、Uberを始めとするライドシェア事業が日本で実現していないのは、このような法律の壁があるためです。この課題をクリアするためには既存のライドシェアサービス企業と新規参入事業主が団結し、粘り強く自治体や国に働きかけ法改正を勝ち取るしか手がありません。

    課題2 大都市のユーザーはレベル3以上のMaaSを必要と感じていない?

    東京や大阪などの大都市は鉄道網が非常に発達し、人口比で言えば世界最大数のタクシーが街中を走行しています。そのうえ、JRや私鉄の駅を降りるとバスやタクシー乗り場が常設しているため、ラストワンマイルの移動にさほど困ることがありません。

    また、スマホの乗り換えアプリや地図アプリを使えば、複数の交通機関をまたいだ最適なルート検索ができますし、交通系ICカードによってスムーズな決済も可能なため、大都市のユーザーはレベル3以上のMaaSに必要性を感じていないことも考えられるでしょう。この課題を解決するには各MaaS事業主が、レベル3以降のサービスがいかに便利で移動を楽にしてくれるか、多くのユーザーに示す必要があるものの後述する課題4がネックとなり、有益なサービスが登場していないのが現状です。

    課題3 地方はMaaSに変換するモビリティ自体が不足している

    マイカー移動の依存度が高い地方では、公共交通の衰退が進み、買い物難民など多くの交通弱者が生まれているため、MaaSの普及は「急務」とも言えますが、電車やバスなどMaaSに組み込むモビリティの数が圧倒的に不足しているという別の問題が浮上します。

    これは大都市にも言えることですが、ドライバーを始めとするモビリティシステムの担い手が減少していることも深刻な問題で、郊外になればなるほどそれは顕著となり、過疎地ではMaaS化はおろか、今のままでは既存の交通インフラを維持することすら困難な状況です。MaaSはモビリティをシームレスにつなぎ、1つのサービスとして進化させる概念ですが、まずは移動インフラの再編や整備をコツコツと進めなければ、大都市と地方の交通格差が生じたままになるかもしれません。

    デンマークのPTA Movia社のCCOであるカミラ・ストラックマン氏は、地方にMaaSのスキームを提供することの重要性を強調。「MaaSは、すでにすべてのサービスが提供されている都市部だけで提供されるのではなく、地方でも提供されることが望ましい。農村部のモビリティを向上させることをあきらめるわけにはいかない」と述べています。

    課題4 情報・サービスの統合に対する根強い抵抗感

    海外と比較して国内ユーザーは、決済に関する情報の統合に強い抵抗感を持っている方が多く、国・自治体・企業がしきりに推進している電子マネーやスマホ決済の普及も拡大しているとは言い難いもの。これは国民性の違いによって発生する課題ですが、MaaS事業主は統合した情報の取り扱いや不正使用時の補償規程などのガイドラインを制定し、いかに提供するサービスが安全なものなのか、広くユーザーへアピールしていく必要があるでしょう。

    また、国内には大小の民間交通事業者が乱立しており、バス・タクシー・私鉄はもちろんMaaSの担い手であるライドシェア各社も、それぞれ激しく顧客獲得競争を繰り広げているため、レベル3に当たる定額乗り放題などのサービス統合は容易とはいえません。

    打開策としては、JR・航空各社などの巨大資本が先行して積極的に統合を進め、地方自治体や中小事業主を巻き込みながら、徐々にMasSネットワークを拡大していくことが、現実的であると考えています。

    まとめ

    国内でMaaSを普及させるためには、法の整備や各事業者間の意思統一、情報の整理・統合に取り組む必要がありますが、解説したとおりデメリットや解決すべき課題も多く残されています。とはいえ、MaaSサービスが効率的に運用されるようになれば、新たな需要が生まれ地域経済活性化や雇用創出も期待できるため、日本の情勢や国民性にマッチしたMaaSサービスの登場に期待が高まります。

  • ホンダの月極定額モビリティサービスが好調!「ホンダマンスリーオーナー」とは

    ホンダの月極定額モビリティサービスが好調!「ホンダマンスリーオーナー」とは

    音楽の聴き放題からドラマ・映画、雑誌の見放題に始まり、オンライン学習、ランチ、宅配クリーニングにファッション、ヘアサロン、そしてコーヒー…ここ数年、サブスクリプションビジネスは活況にあります。モビリティ業界でも同様の流れが起こり、アウディやボルボ、ポルシェ、そしてメルセデスベンツにトヨタまで、次々と参入しています。その中で一際順調な走り出しを見せているのが「Honda Monthly Owner」。一体どのようなサービスで、他ブランドとはどのような違いがあるのでしょうか。

    ホンダのサブスク「Honda Monthly Owner」

     

    出典:ホンダ「Honda Monthly Owner」

    2020年1月28日、本田技研工業が新たな定額モビリティサービス「Honda Monthly Owner(以下、ホンダマンスリーオーナー)」をスタートしました。

    月々定額で利用できるサブスクリプションサービスで、月額料金には車両代、自動車税、自賠責保険料、任意保険料、登録諸費用、メンテナンス費用が含まれています。このサービスはクルマを1カ月以上、最大11カ月間、1カ月単位で気軽に所有でき、いつでも終了できますが、解約金はありませんが、ガソリン代と駐車場代のみは利用者の負担です。利用方法も非常に簡単で、こちらのホームページでクレジットカードと運転免許証で会員登録したら、好みのクルマを選んで予約し、当日は店頭で車両を受け取るだけ。ローンやリース契約のように、手間暇と時間のかかる契約書記入や審査がないのもポイントだと言えるでしょう。

    対象車種は根強い人気を誇る軽自動車のN-BOXを筆頭に、ハイブリッドのFREEDやFIT、ヴェゼル、S660、N-BOX車いすと、ホンダを代表する多彩な車種が幅広くラインナップされています。金額はN-BOX(2014年式~Honda SENSING 搭載無)で29,800円から。まずは埼玉県和光市のU-Select城北からサービスを開始し、順に拠点が広がっていくとのことです。

    ホンダのサブスクが人気の理由は「所有の喜びと利用の気軽さを両立したこと」

     

    新車・中古車問わず、150もの登録車種をラインナップしているIDOMのNOREL、諸経費込み込みでトヨタの新車が3年間楽しめるKINTO、簡単な手続きでリース可能な定額カルモくんなど、国内ではすでにいくつもの定額のマイカーリースサービスが展開されています。今年の1月末に開始したホンダはこれらのサービスと比べて後発組ですが、それでもサービス開始から反応は上々、現在(2020年4月15日)では準備中の一台を除き46台中45台が利用中・本予約・仮予約で埋まっています。これだけの短期間でサービスを好調へと押し上げた理由はどこにあるのでしょうか。

    最短1カ月で返却OK、の気軽さ

    通常のマイカーリースは1年、3年、5年、7年など、年単位での契約がほとんどですが、SpotifyやNetflixのように、1カ月単位で契約・解約できる自由度の高さが、ユーザーの会員登録という行動を後押しした第一の理由だと考えられるでしょう。同じ自動車メーカーであるトヨタのKINTOも基本的に3年契約であるため、定額かつ安価で新車に乗ることができるものの、「季節や用途に合わせて乗り換えたい」という気軽さは持ち合わせていません。

    ホンダは一時的な単身赴任、妊娠時の病院送迎や介護時の送迎に着目し、それぞれの目的・用途にあった車種をセレクト。長すぎず、短すぎず、所有と共有の間を埋めるサービスとして提供しているのです。そしてその狙いが見事、ユーザーにヒットしました。このほかにも、国内への長期滞在が決まった海外の方、夏と冬、季節に応じた趣味を充実させたい方、家族が増えた方など、ライフスタイルに合わせて車種が選べるのもポイントです。

    ネットで簡単に手続き完了。

    整備済みの認定中古車を採用、価格帯は週に一度、カーシェアを利用した時と変わらない価格に設定されています。一番安価なN-BOXは月額29,800円(税込)ですが、購入する場合の参考車両価格は998,000円(税込)。簡単・便利に利用できることを考えると、非常にお得な価格です。
    ネットサービスの契約と同じように、サイト上で個人情報や支払いで利用するクレジットカード情報を入力、免許証の画像を送付するのみ(車庫証明が必ず必要です)。何ページにもわたる手続きはユーザー離脱の原因になりますが、わかりやすく簡易的な手続きによって「ちょっと車を利用したい」「登録してみようかな」というユーザーを幅広く獲得しているのではないでしょうか。

    便利なオプションは月額たったの500円。インテリアを自分好みに変えて楽しむ

    自動車やバイクのみならず、航空機、さらには発電機や除雪機、耕うん機までも手がけているホンダ。ホンダマンスリーオーナーでは、同社の技術を集結させたホンダオリジナルのハンディタイプの蓄電機(LiB-AID E500)を月額500円でレンタルしています。利用シーンは様々ですが、長期休暇をとってキャンプに出かける際に活用したり、万が一の災害時にも大活躍したり、たったワンコインでも非常に役立つ万能アイテムです。
    わずか1カ月のレンタル期間であっても、クルマの体験を最大限に良いものにするために、好みのマットを用意するなど、車内を自分好みに変えられるアイテムを充実させていくとのこと。これによって、ただの借り物ではなく、所有する喜びを味わえるのもユーザーにとっては大きなメリットと言えるでしょう。

  • コロナの影響で売上が減少するなかで、軽貨物事業者やタクシー業界はどう対応すべきか

    コロナの影響で売上が減少するなかで、軽貨物事業者やタクシー業界はどう対応すべきか

    サービス業、製造業、卸売行、建設業、飲食業など、業界を問わず前代未聞のダメージを与えている新型コロナウイルス。全国に向けて発令された緊急事態宣言により、経済活動が急激に縮小する中で、それぞれの業界、企業はサービスへの方向転換や新規サービスの創出を求められています。

    新型コロナウイルスは軽貨物運送業へどのような影響を与えているか

    新型コロナウイルスは、物流の要となる運送業にも大きな打撃を与えています。緊急事態宣言の発令によって、飲食店をはじめ、大型商業施設、娯楽施設などの一時閉鎖が全国で相次いだことで荷物の配送量が大幅に減りました。また、部品や製品が中国から入ってこないため輸入による荷物も激減し、イベントやカンファレンスの開催自粛により、イベントで使用する機材を運ぶ業者も仕事がストップ…。このような流れを受け、運送業界では施設向け、法人向けの荷物の配送が大幅に減少しています。
    しかし、法人向けと相反して、個人向けの配送量は多様化し、短期間で一気に増加傾向へ。外出自粛に伴いテレワークで仕事をする人や休校で自宅にいる子どもが増え、個人が自宅で気軽にネットショッピングでモノを購入したり、食事のデリバリーや日用品などの宅配サービスを利用したりする機会が増えたことが原因ですが、そうした個人消費を支えているのが軽貨物運送事業者です。

    軽貨物運送事業者が取り組むべきこととは

    軽貨物運送事業者は大型や中型ではなく軽貨物車両を使用して荷物を届ける運送業です。大型車両であれば1運行あたり走行距離が347km(国土交通省が2015年に発表した「トラック輸送状況の実態調査」による)ですが、軽貨物車両であれば172km。長距離輸送はほとんどなく車両が小型のため小回りがきく。つまり、地域に密着しつつ、多くの集配箇所を回ることができるのが特徴であり強みだと言えるでしょう。

    感染防止の三密(密閉・密集・密接)を回避しようと、飲食店で食事をするお客さんは大幅に減りましたが、自宅で食事をとるためにスーパーへ買い出しに行く人が増えました。しかし、一部のメディアでは連日列をなし、混雑するスーパーの様子が映し出され、買い物自体が感染の一因になるという認識も強まってきました。週に一度、家族の中の一人が買い出しに行く、混雑する時間帯を避けるなどといった回避方法もありますが、さらなる安全対策として、ネットスーパーやデリバリーサービスを活用する人も急増。店舗からは配達が追いつかないという声も聞こえています。スーパーやテイクアウトを実施している飲食店はもともと配送業者ではないため、一時的なオーダー急増のためにトラックやドライバーを確保するわけにはいきません。そこを軽貨物事業者が連携することでフォローできれば、需要と供給のバランスが取れるだけでなく、サービスの幅が広がるのではないでしょうか。

    自粛の中で、軽貨物事業者が生き残るために

    新型コロナウイルスの感染拡大への収束に予測がつかない中で、どのように生き残って行くべきでしょうか。先ほどお伝えした状況を踏まえると、押さえるべきポイントは2つあります。①感染防止への対策を考えること②視野を広げて新たなサービスの可能性を見出すことです。
    ① ドライバーが感染しないよう、徹底した防止対策を講じる
    ヤマト運輸は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一時的な対応として3月から非対面で玄関前に荷物を置く受け取り方法を実施、佐川急便はスマホを使用したサインを取りやめ、日本郵便はあらかじめ指定した場所に荷物を届ける置き配による非対面受取を導入するなど、安全に荷物を届けるために各社それぞれに感染防止策へ取り組んでいます。また、どの業者においてもアルコール消毒やマスク着用、ドライバーの検温を義務付けるなど、対策を徹底したうえでドライバーを新型コロナウイルスから守っています。
    ② 現状を正面から捉え、「このような状況の時に何をどうすべきか」と頭を切り替えて新たな取り組みを実践する

    物流が止まると、人々の生活もストップします。必要不可欠な存在であるからこそ、活躍できるシーンはまだまだあるのです。たとえば、飲食店と連携して新たなデリバリーサービスを開始したり、スーパーの個人宅への配送ビジネスを一緒に行ったりするなど、フォローすべき新たな“隙間”を見つけ、自社サービスに昇華させていきましょう。

     

    B2B向けに限定せず、これを機にB2CやC2Cなど、視野を広げてサービスの幅を拡充すれば、今後の新たなビジネスへの活路が見いだせる可能性もあるでしょう。

    タクシー業界の変革〜人を運ばないサービスを提供する

    外出の自粛により、人が移動をする機会が大幅にダウン。日常的に便利な移動手段として人々に利用されてきたタクシーですが、移動の制限により、稼働台数を減らしたり、一斉解雇を通告したりと、活躍の場が失われつつあります。しかし、ここで視点を変え、逆境に打ち勝つために趣向を凝らしたサービスを展開しているタクシー会社も存在します。

    「乗らないタクシー」が人々の生活をサポートする

    4月17日、Twitterでのある投稿が話題になりました。
    「こんな時だからこそタクシー会社がすべきこととして来週4/20から『乗らないタクシー』を始めます!」(原文ママ)
    新潟県長岡市にあるタクシー会社、つばめタクシーが人を目的地へ届けるのではなく買い物代行などを行う乗らないタクシーというサービスを開始すると告知しました。利用者から電話で依頼を受け付け、スーパーでの買い物代行や薬の受取、書類の代理送付などの代行サービスを行うと言います。外出自粛と言われていても、どうしても外出が必要となるシーンはありますし、高齢者や移動を自粛している人々からのニーズも考えられます。稼働率が低下しているからこそ、移動しない人のサポートをする、かわりに移動をするなどの隠れたニーズをサポートするサービスが求められるかもしれません。

    おつかいタクシー

    タクシー・ハイヤーサービスを提供している三和交通株式会社は、4月6日より代行サービスの「おつかいタクシー」の運行をスタート。実は同社は、過去にも忍者姿で迎車する忍者でタクシーやSP風タクシー、心霊スポット巡礼ツアーなど、新たなおもてなしのかたちを体現すべく、数々のユニークなサービスを提供してきました。柔軟なアイデアかつ瞬発力の速さを武器に、いち早くサービスを開始しています。ドライバーの検温、マスク着用や手洗い、車内消毒など感染予防の対策を実施しており、荷物の受け取りも安心です。

    美味しい食事をあたたかいうちにおとどけ。出前タクシー

    茨城県水戸市のさわやか交通では、買い物代行のほか、飲食店のテイクアウト料理をデリバリーできる出前タクシーをサービスとして開始しています。お弁当、ファーストフードだけでなく、通常はテイクアウトをしていないお店の料理も可能です。

     

    もちろん、これらは通常のタクシーとしても利用できますが、タクシー業界全般に稼働率が低下する中で、こうした取り組みは新たなサービスへの活路を見出すことになるのではないでしょうか。

    新たな取り組みに対して成果をはかるには

     

    経済の縮小で法人サービスへの需要は減っていますが、個人向けサービスはニーズが拡大しています。新たなサービスを構築・展開し、それをマーケットにフィットさせるには、効果を図りながら少しずつ改善していく必要があります。新規サービスの需要を見極め、成果を上げるためには、試行錯誤しつつも限られたリソースの中でPDCAを回していきましょう。

    見えない稼働を可視化することで効果をはかるー車両管理システムで回すPDCA

    軽貨物運送業者もタクシーも、基本的には車両で移動するため、具体的にどの点を重視して改善すべきかが見えづらいかもしれません。そこで役立つのが車両管理システムです。

    車両管理システムのポイント1. リアルタイムでの位置情報がわかる

    位置情報がわかることで、管理者・ドライバー・利用者間の情報のやりとりがスムーズに。急な配送ルートの変更も可能です。

    車両管理システムのポイント2. 効率的な配送ルートがわかる

    走行ルートが毎日記録されるので、どの地域でどのような需要が多いか、効率よく回るにはどのルートが最適化を検討することができます。

    車両管理システムのポイント3. 車両による事故を防ぐ

    車両を運転する時間が長くなるほど、交通事故のリスクも高まりますが、車両管理システムには安全運転走行を意識づける機能も搭載されています。特許を取得した安全運転診断機能により、ドライバー一人ひとりの運転のクセや危険運転を可視化。危険運転を自動検知すると、走行毎に管理者へ通知することもできますので、事故防止にも役立ちます。

     

    あらゆる企業は、“今”需要があるマーケットを早期に見つけ、自社が持つノウハウやアセット、技術を活かしたサービスを展開することで、逆境を乗り越えることができるのではないでしょうか。

  • Beyond MaaSー移動の進化を後押しするMaaSの取り組みに迫る

    Beyond MaaSー移動の進化を後押しするMaaSの取り組みに迫る

    スマートドライブマガジンの中でも、何度がご紹介してきた「MaaS」。MaaSが浸透したその先には、一体どのような世界が広がるのでしょうか?
    この記事では、100年に一度の第変革期と言われるモビリティ革命の中で、MaaSは社会をどう変えていくのか、どのようなプレイヤーが動き、新たなビジネスを展開していくのか、書籍「Beyond MaaS」を軸に具体例を解説します。

    「Beyond MaaS 」とは何か

    MaaSとは「Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の略で、電車やバス、タクシー、カーシェア、自転車など、公共交通機関や新たなモビリティサービスを含めあらゆるモビリティ(移動)が1つのサービスとしてシームレスにつながること(アプリによって予約から決済までが行える)を意味する概念のことです。海外ではMaaSをいち早く実現したサービスとして、いくつかの交通手段から最適な移動ルートを自動検索して目的地にたどり着くことができるドアtoドアのサービス「Whim」が広く知られています。そのほかにも続々とサービスが展開されていますが、マイカーと同程度の移動の利便性を実現することで、渋滞を減らしたり、高齢者をはじめとした交通弱者とされる方たちの移動をスムーズにしたりすることを目的としています。

    Beyond MaaSは、直訳では「MaaSの向こうへ」「MaaSを越えて」という意味です。MaaSとして生まれた新たな概念のその先へ、つまり、モビリティを中心に据えて新たな産業の展開をすることで、MaaSが生活に浸透し、移動が大幅に進化した未来を描くことだと言えるでしょう。

     

    MaaSについて復習したい方、もっと理解したいという方はこちらの記事をご参考ください。
    移動の概念が180度変わる ~MaaSが秘める移動の可能性~
    【MaaS基礎知識】MaaSに関する用語まとめ
    【MaaS基礎知識】MaaSにおけるレベルを解説

    モビリティ業界だけじゃない。業界の垣根を超えたMaaSの最新事例

    「Beyond MaaS」の書籍では、MaaSは移動に関するシームレスな統合を実現する概念であるものの、一社のみで完結する“閉じた”状態になってしまうと、新しい社会価値は生まれないと言っています。異業種と連携することで新たな価値を見出していく、協業によって新たなビジネスを創造することを提唱。そのため、モビリティ業界だけではなく、ソニー、三井不動産、三菱商事、そしてセブン&アイなど、非常に幅広い業種がMaaSへ参入し、互いに協業し、より高価値なサービスを提供しています。

     

    日鉄興亜不動産×MONET Technologiesのマンション向けMaaS

    日鉄興亜不動産とMONET Technologies(以下、MONET) は、2020年2月21日よりマンション向けMaaS「FRECRU(フリクル)」の実証実験を開始すると発表しました。フリクルはマンション専用のオンデマンドモビリティです。マンションの住民であれば、MONET が提供するスマホアプリで乗車日時や目的地、乗車地を指定し、住民専用のマイクロバスが指定した場所まで迎えにきて目的地へ運んでくれる。そして、料金の支払いはマンションのラウンジが決済アプリのPayPayで完了できるサービスです。

    駅前や駅近のマンションであれば移動は比較的楽かもしれませんが、駅から徒歩20〜30分程度に位置するマンションは交通に不便だと思われてしまいがちです。しかし、駅から離れているぶん、緑が豊かだったり、喧騒から離れて静かに過ごせたり、同じ広さでも駅近物件より購入費が安かったりするなど、数多くのメリットがあります。唯一、問題となるのが交通の利便性なのであれば、管理費や購入費にこうした交通のパッケージが含むことでこの点は解決できますし、人々にとっても住む場所の選択肢が豊かになるのではないでしょうか。このようにして、土地の価値を向上していく取り組みは世界でも始まっており、国内でも少しずつ増えてきているようです。

    ADDress×ANA 月3万円の航空券定額サービス

    定住しない。拠点にこだわらない。若者を中心に、そんなアドレスホッパーな人たちが増えてきました。ADDressはアドレスホッパーたちに、定額で全国のいろんな物件に住み放題というサービスを提供している企業です。同社はANAと手を組み、月額4万円の会員料金に加え、月額3万〜月4便の国内線チケット(路線は指定あり))が利用できるサービスの実証実験をスタート。今後は新幹線など、電車との連携も検討されており、定額で移動しながら定額で暮らすというスタイルがますます広がっていくかも…?

    病院×配車サービス 待ち時間をなくしてスムーズな診療を可能に

     

    病院に行ったけど、待ち時間に一時間以上もかかってしまった…予約をしたのに、結局待たされて疲れてしまった。誰もがそんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。もし、配車サービスと病院が連携してスムーズな診察が実現したら…?病院での待ち時間が“ほぼ”なくなるかもしれません。
    自宅まで病院の予約と連携した配車サービスが迎えにきて、病院まで時間通りに送ってくれる。到着次第、すぐに診察を開始、会計を済ませて再び車へ。海外では実際にこのような取り組みが進められており、国内でも始められようとしています。もしこのサービスが普及すれば、ユーザーは時間を無駄にすることがなくなり、病院側も経営効率が向上。お互いにとってメリットが大きいサービスとして注目されています。

    モビリティ×飲食 需要がある場所へ自由に動けるMellowのフードトラック

    「求める人がいる所に適切なものを」という考えで、空きスペースとフードトラックをマッチングさせる、モビリティビジネス・プラットフォームを提供しているMellow。現在は飲食を中心に展開していますが、今後はリラクゼーションサービスや家計コンサルティングなど、ニーズに合わせた能力を持っている人とのマッチングで配車を行おうとしています。必要に応じて柔軟に移動し、サービス提供の場を作る、まさしくMaaS時代の新たなサービスだと言えるでしょう。

    ゲームやイベント関係のMaaS

    2016年の誕生から現在においてもまだ、人気を集めているポケモンGOは、移動をしながらモンスターを集めるスマートフォン向け位置情報ゲームアプリです。このような位置情報をベースにしたアプリゲームに配車機能や経路検索機能を搭載すれば、渋滞を回避するために人々の動きを分散させることも可能に。

    災害や防災関係のMaaS

    台風、大雨、大規模地震など、日本は災害大国として毎年自然災害に見舞われています。先ほど紹介したMellowは、昨年の豪雨によって停電が続く千葉県にフードトラックを派遣しました。同社は9月1日の防災の日にフードトラック事業者と連携した社会貢献プロジェクト「フードトラック駆けつけ隊」を立ち上げ、災害支援ネットワークを通じて支援を呼びかけ、暖かいパスタ、オムライス、牛煮込み丼などを無償で提供しました。
    災害時は安全を守りつつも、人々の命、生活を守るために迅速かつ柔軟な動きが求められます。フードトラックを始め、キャンピングカーなどを使用した新たなモビリティサービスが誕生していきそうです。

    プレイヤーとしてMaaSを推進する

    MaaSを単なるバズワードで終わらせず、MaaSによって新たなサービスを輩出し、経済の成長を促していく。そのためには、先述したように、協業と共創が重要です。そうした場を提供しようと、スマートドライブが立ち上がりました。スマートドライブでは、業界を越えて、移動の進化への挑戦しているプレイヤーを集めたMobility Transformationを展開しています。Mobility Transformationは、参加型のカンファレンスやワークショップを開催したり、イベントの登壇内容がまとまったレポートを簡単にダウンロードできるようにしたり、MaaSを本格的に推進するためのさまざまな取り組みを行っています。ぜひ、一緒に、移動の進化を後押ししませんか?

  • 【4月28日開催】誰でも無料で参加OK!Mobility Transformation Onlineの見どころを一挙公開!

    【4月28日開催】誰でも無料で参加OK!Mobility Transformation Onlineの見どころを一挙公開!

    昨年11月、虎ノ門ヒルズで開催した日本最大級の共創型モビリティカンファレンス「Mobility Transformation」は、約1500名が来場し大盛況のうちに幕を閉じました。そんな中、東京までなかなか足を伸ばすことができない地方の方々からの「地方でも開催してほしい」という多くの声を受け、どこにいても、誰であっても参加できるイベントへと進化を遂げようとしています。そこで今年はSchoo様とタッグを組み、オンラインでカンファレンスを開催します。この記事では、カンファレンスの詳細と見どころ、ポイントについて説明します!

    ポイント1.無料で参加できる

    開催日は4月28日10時から18時まで。モビリティに関する7つのセッションがなんと、生放送で行われます。
    参加方法はとても簡単。こちらのページからアカウントを登録し(FacebookまたはYahoo IDをお持ちのかたは連携可能です)、当日はこのページへアクセスいただくだけです。登録すれば、本カンファレンス以外にも知的好奇心をくすぐる濃厚な授業がたくさん楽しめますので、ぜひアカウント登録を!

    ポイント2.昨年同様に、業界の垣根を超えたさまざまなプライヤーが登場!

    参加する企業はモビリティ関連企業だけではありません。総合商社の住友商事さま、保険業の損害保険ジャパンさま、鉄道業界の小田急電鉄さま、CX(顧客体験)プラットフォームを提供しているプレイドさまなどなど、業界の枠を超えたクリエイティビティを大いに刺激するラインナップ。それぞれの講演において、どのようなイノベーションが起きるでしょうか?

    ポイント3.オンラインなので、誰でもどこからでも参加OK

    新型コロナウイルス感染拡大により、ここ数ヶ月イベントの自粛が呼びかけられています。しかし、ご安心ください。今回の開催地は“オンライン”のため、ネットが利用できればどこからでも参加できるのです。
    オンライン学習サービスとして有名なSchooとのコラボでオンライン生放送を実施することで、全国(全世界!)、どこからでも参加が可能ですので、ぜひ、あなたもご自宅から、リアルな現場の空気を体験してください!

    ポイント4.イベント終了後はイベントレポートで登壇内容をじっくり読める

    「仕事が忙しくて参加できない」「うっかり、見逃してしまった!」という場合も大丈夫。
    当日のセッション内容はすべてレポートとして公開しますので、後日、資料としてダウンロードしてじっくり読むことができます。昨年実施した「Mobility Transformation 2019」の濃密な内容がしっかり読み込めるサマリレポートは、こちらよりダウンロード可能です。予習・復習にお役立てください!

    ポイント5.具体的な事例や取り組みをたくさん学べる

    講演内容は基本的に構想ベースではなく、事例や実際に取り組んでいることがベースに話が展開されるため、今後どのように自社プロジェクトを進めていくべきかを考える数多くのヒントを得ることができるはず。多方面にわたる成功事例をインプットをして、ぜひ実のあるアウトプットを!

  • AECの現状と自動車産業の最前線

    AECの現状と自動車産業の最前線

    ASEAN(東南アジア諸国連合)が、2003年頃から構築を進め2015年12月31日に創設された「AEC」は、アジア各国のみならず世界経済に多大な影響を及ぼす組織ですが、何を目指しどんな取り組みをしているのか、詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、AECの基本情報と現時点での進捗状況、浮き彫りになってきた課題を整理したのち、参加国および関係が深い日本の自動車産業の動きや今後の変化について考察します。

    AECが注目されている理由

     

    AECとは「ASEAN Economic Community」の略称で、日本では「アセアン経済共同体」と呼ばれますが、2002 年に関税を「5%以下」へ削減するという当初目標を実現した、ASEAN 自由貿易地域(AFTA)の次段階にあたる「経済統合組織」です。

    マスタープランである「AEC2015ブループリント(工程表)」では、

    1. 単一の市場と生産基地・・・物品・サービス・投資・熟練労働者の移動自由化など
    2. 競争力のある経済地域・・・インフラ開発・関税撤廃・競争政策・消費者保護など
    3. 公平な経済発展・・・格差是正・新規加盟国支援など
    4. グローバルな経済統合・・・ASEAN域外とのFTA(自由貿易協定)など

    という4つの戦略目標が掲げられており、モノ・ヒト・サービス・資本の移動が自由にすることで国際競争力を高める点はEUと共通しますが、通貨統合や関税同盟などは想定されていません。

    AECが注目されている理由その1「市場規模の大きさ」

    AECを組織したASEANは東南アジア10ヵ国が参加する、巨大な地域協力機構であり総人口は約6.2億人と、域内マーケット規模で言えばNAFTAやEUを上回り、先進国より比較的高齢化が緩やかであるため、将来的な消費市場の伸びしろも大きいとされています。

    また、ASEAN全体のGDPは2014年時点で約2.5兆ドルと、インドを凌ぐ水準にあるものの、1人当たりのGDPは約4,000ドルで中国の4分の1程度。つまり、モノ・サービスを消費・生産していく余力が、先進諸国よりたっぷり残っているということです。すでに、国内市場が飽和状態に近い日・米・EU各国が、そんなASEANに目をつけるのは当たり前の流れであり、AECと密に連携すれば新たな需要を獲得しつつ、労働力の確保や生産・流通プロセスの効率化を図ることも可能です。

    AECが注目されている理由その2「中国の経済成長が頭打ち状態」

    かつて、日本を始めとする先進国が積極的に進出していたのは中国でした。しかし、消費の冷え込みや人件費高騰に伴い撤退する企業も多く、さらには世界的流行が危惧されている「新型コロナウィルス」の影響で、今後より拍車がかかると考えられます。一方、AEC2015が達成した一定の成果によって、インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイといったASEAN主要5ヵ国はもちろん、ブルネイ・ベトナム・ミャンマー・ラオス・カンボジアの後発組も、近年では順調な経済成長を見せています。

    その結果、国内・欧米企業はASEAN各国にビジネスチャンスを見出し、続々と中国から海外拠点のシフトを始めているのですが、同地方ならではと言えるいくつかの問題がネックとなり、なかなかうまく進んでいないようです。

    AECの現状・達成した成果と今後の課題

     

    ASEAN事務局の発表によれば、AEC2015の目標実施率は優先分野を対象にすると「93.9%」と高く、分野別にみると最大の成果は「関税撤廃」であり、 2018年1月にCLMV(※)でも完了したことで、現在の関税撤廃率は「98.6%」と世界的も高レベルに達しています。

    ※CIMV・・・カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナムの4ヵ国を指す略称。

    また、日・中・韓・印・豪・ニュージーランドと、5つの「ASEAN+1FTA」が締結されるなどグローバル経済との統合は進んでいるほか、ASEAN国籍を保有していれば短期滞在・ビジネスビザが必要ないため、ヒトの域内移動自由化も制度としては完了済です。

    さらに、ASEANの一部企業はAECを好機と捉え越境や域内最適化を進めており、例えば域内での直接投資額は2009年時点で100億ドルに過ぎませんでしたが、5年後の2014年には200億ドルを超える規模までに成長しています。しかし、一方で円滑化が遅れている分野もあり、非関税障壁の撤廃は進んでいませんし、サービス貿易や域外資本による投資も自由化されておらず、ヒト・モノの移動を担う交通インフラの整備不足など、AECの成長を阻害する課題も山積しています。

    とはいえASEANも問題点を十分理解しており、AEC2015はあくまでも通過点にすぎず立ちふさがる課題をクリアするため、新たな目標・行動指針を盛り込んだ「AEC2025」を掲げ、日本ではあまり報道されていないものの着実に成果を上げつつあります。

    【AECブループリント2025】

    • 統合され高度に結束した経済
    • 競争力があり革新的でダイナミックなASEAN
    • 連結性強化とセクター別協力体制の構築
    • 強靭で包摂的かつ人が中心にあるASEAN
    • グローバルなASEAN

    AEC2025はAEC2015のマイナーチェンジ版と言え、未達成分野に加え革新・研究開発・規制改革など成長戦略が盛り込まれたほか、中小企業育成など「包摂」が重視され、既にASEAN 電子商取引協定が調印や、新サービス貿易協定(ATISA)交渉も進んでいます。

    また、関税撤廃がほぼ完了したため、AEC2025では域内におけるヒト・モノの移動自由化より域外貿易の円滑化に重点が置かれ、例えば商品国籍を判定する国際貿易上のルールである「原産地規則」は、TPPで採用された完全累積の採用を検討しています。

    一方、③が追加され戦略目標は5本柱となっていますが、統合範囲やレベルについてはAEC2015と大きく変わっておらず、何より「非熟練労働者」の移動自由化が目標に組み込まれていないのが欠点。なぜなら、熟練労働者の移動自由化が進行した結果、最低月給が周辺諸国の約2~3倍であるタイ・バンコクへの出稼ぎ労働者が殺到するなど、ヒト・モノ・カネが給与水準の高い国・都市に集中してしまう可能性があるからです。

    そもそもAECは、加盟諸国の「公平な経済成長」が大命題1つですが、このままでは域内格差が広がりかねず、一刻も早く非熟練労働者の移動自由化にも着手すべきかもしれません。

    AECの自動車産業最前線

     

    熟練労働者の移動自由化による弊害が出始め、前述したバンコクのほかジャカルタ・ハノイ・クアラルンプールなどといった大都市圏では、激しい交通渋滞や排気ガスによる大気汚染が社会問題となっています。さらに、一部では交通インフラが麻痺する事態にまで陥っているようです。一方、ひとたび郊外に出ると道路はスカスカな状態…。移動手段の確保に苦労しているASEAN・AECにおいて、日本の自動車産業メーカーがなすべきことは何でしょうか。

    AEC発足後のASEAN自動車市場の推移

    ASEAN5(インドネシア・タイ・フィリピ ン・ベトナム・マレーシア)における、自動車市場の推移状況を整理すると、2010年代前半までは政府による新車購入優遇措置がなされたタイと、都市部でのモータリゼーション後押しされたインドネシアが爆発的に成長。欧米企業に先駆け、ASEAN自動車市場の開拓を進めてきたかいもありタイでは80%超、インドネシアにおいても90%超のシェアを誇るなど、両国は日系新車メーカーにとって重要な海外市場の1つになりました。

    しかし、AECが設立された2015年における両国の新車販売台数は大幅減少へ転じ、タイは優遇制度の終了と適用車の5年間転売禁止や政情の混乱、インドネシアはルピア安による経済成長鈍化が影響したのですが、近年は横ばい、あるいは回復傾向を示しています。

    一方、経済発展に伴い購買力のある中間所得層が形成されてきた、ベトナム・フィリピンの新車販売台数は堅調に増加しており、政権交代による大きな政策転換や極端な景気悪化がない限り、今後も市場拡大が進んでいくとみられます。

    また、マレーシアに関しては爆発的な拡大とはいかないまでも、安定して成長すると考えられるほか、トラック・バス・ミニバンなどといった、業務利用向け国産中古車に対する輸入ニーズも高いため、大手国内中古車チェーンが販路を拡大中です。みずほ銀行の調査によれば、世界自動車販売台数のうちASEAN5が占める割合はわずか3.2%にすぎず、ピークに比べるとスピードが緩やかになったものの、2021 年までの年平均成長率も4.9%と高い水準を維持すると予想されています。

    出典:みずほ銀行「自動車市場の現状と自動車産業の行方」
    出典:みずほ銀行「自動車市場の現状と自動車産業の行方」

    今後の課題~EVシフトとMaaSへのニーズに対応する~

    交通渋滞の悪化による環境汚染を憂慮したASEAN諸国。「東洋のデトロイト」と称されるタイ政府が2017年3月、EV車生産促進を目的とする投資奨励策(TNGAP)を導入するなど、近年はエコカー普及を推進する政策を次々に実施しています。

    また、同国はTNGAPへの参加を世界中のメーカーに呼び掛け、トヨタ・日産・ホンダ・マツダにはHV、Mercedes-Benz・BMW・SAIC Motor-CPにはPHV、FOMMにはEV生産投資プロジェクトをそれぞれ認可しました。加えて、ライドシェアリングをはじめとした「MaaS」の普及は日本より進んでおり、ASEAN最大の配車サービスである「Grab」は、2018年4月にUberの東南アジア事業を吸収・統合しています。これにはトヨタが10億ドル、現代自グループが2億7,500万ドルを出資しています。

    さらに、同じく配車サービス大手でインドネシアに本拠を構える「GO-JEK」は、Google・Temasek・Tencentから出資を受け、ベトナムやシンガポールへ進出しているほか、高速バス大手「WILLER」はシンガポールで自動運転バスの商用サービスを始めました。

    つまり、ASEANは今Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared & Services(シェアリングとサービス)・Electric(電気自動車)のニーズが年々高まり、「CASE先進地区」へ変貌しつつあるのです。そのため、日本の新車メーカーやサプライヤーは、AECの活動を通じ既存車両や部品の輸出に留まらず、ASEAN諸国へ自社が持つCASEに関する技術と資金を投入、国内より圧倒的に公共交通インフラが劣る現地でMaaS事業を展開し、まずは移動の地域格差を是正。

    その上で、実証データ・運営ノウハウなどを積極的に収集しシステムの正確性・安全性を高め、公共交通インフラが不完全な地域や人材不足が深刻な物流・運送業界にサービス提供する、自動車産業の逆輸入が今後の課題・テーマになるのではないでしょうか。

    まとめ

    AECは、ASEAN各国の経済成長のカギを握っているだけではなく、世界的トレンドとなったMaaSの発展・普及にも寄与する、自動車産業にとって有益な組織・取り組みです。今後、東南アジア、ひいては世界経済の趨勢を左右しかねないとも言えるでしょう。

  • 新型コロナウイルスが自動車業界に及ぼす影響とは?

    新型コロナウイルスが自動車業界に及ぼす影響とは?

    2月25日、日経平均株価の値下がり幅は一時1000円を超えたことがニュースになりました。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各地で経済失速への懸念が高まっています。自動車業界にはどのような影響が考えられるでしょうか。

    「予想を超えた株価の下落」

    25日の東京株式市場での日経平均株価の値下がりを受け、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)の中西会長は、「新型コロナウイルスの感染拡大に対し、株式相場が敏感であることを再認識した。世界的に予想を超えた下げ幅だが、落ち着いて事態を注視するよりほかない。感染拡大による企業収益の悪化は懸念されるが、今年の春季労使交渉における直接的な影響はほとんどないだろう。春季労使交渉の課題は、働き手のやる気を引き出す処遇づくりだ」と今後の対策について述べました。

    新型コロナウイルスによる影響は想定以上に大きく、中国生産拠点の稼働を一部ストップ、国内外の観光客減少などにより商品の供給も鈍化。さらには旅館、食品製造企業の倒産が続くなど、すでに日本経済への影響が深刻化しています。中国は、生産拠点でもあり、世界でもっとも大きなマーケットでもあるため、日本だけでなく海外へも大きな影響を与えているのです。

    生産がスムーズにいかない〜自動車業界への影響

    中国市場において、自動車メーカーは生産と販売に注力してきました。ところが新型コロナウイルスの感染拡大により、次のような影響が見込まれています。

    生産

    新型コロナウイルスが発生した武漢、湖北省は、自動車部品生産の主要な拠点です。そのため、自動車業界は感染拡大長期化による移動制限、操業ストップなどで生産体制を縮小せざるを得なくなっています。2月28日時点では、各自動車メーカーとも徐々に工場の操業を再開しつつあるものの、従業員の出勤状況や部品の調達具合により、通常通りの本格稼働が可能となるのがいつかは見通しがついていないとのこと。日系の自動車メーカーは、中国から調達している部品の他国での代替生産の検討を始めていますが、金型が必要な部品や、生産ラインに認証が必要になるような保安部品は代替生産が難しいため、一時的にサプライチェーンが停止する可能性も。

    神奈川県横浜市に本社を置く大手自動車部品メーカーのヨロズは、生産停止が長期化する場合に備え、メキシコで代替生産する検討を始めています。在庫がない、生産ができない…。収束の目処がつかないままでは、このような生産体制への影響が長期化することが予想されます。

    また、国内だけでなく、海外でも同様の影響が。休業期間をのばしている中国の自動車部品、組立工場に対し2月6日、フィアット・クライスラー・モーターズ(以下、フィアット)が、中国の部品供給業者が操業を再開できない場合、2〜4週間で欧州の工場1箇所の生産を止める可能性があると警告しました。
    国営新華社通信によると、習近平国家主席は「企業再開を積極的に推し進める」ように指示し、中国企業連合会の最新の調査では、製造業大手の97%が業務を再開していますが、移動制限や自宅待機によって従業員の職場復帰率は66%ほど。物流停滞やサプライチェーン(部品供給網)の混乱、コスト上昇、さらに、経営基盤の弱い中小企業については資金繰りの悪化も課題になっています。

    生産体制が通常通りに戻らなければ、供給不足などによって在庫が確保できず、収益を大きく左右することになりかねないかもしれません。

    販売

    中国自動車工業協会(CAAM)の付炳锋副会長は、2020年上半期の自動車販売台数は前年同期比10%以上落ち込むことを予想しており、3月までに新型コロナウイルスの感染が抑制されれば、通年の販売台数は5%程度の減少に抑えられる(2019年の自動車販売台数は約2,577万台、5%は約129万台に相当)としています(「オートモーティブ・ニュース・チャイナ」2月17日)。2019年の中国での新車販売台数が155万台と過去最高を記録したホンダですが、武漢にある3工場の生産が停止したことで、販売面での影響も。ホンダの幹部は「新型肺炎問題が長引いた時の影響をどう抑えるかが課題だ」と話しています。

    「すでに影響が出ている」と回答した企業は66%弱

    東京商工リサーチが2月20日に発表した「新型コロナウイルスに関するアンケート」の調査結果でも、すでに各業界での影響が伺えます。国内企業(1万2,348社)に新型コロナウイルスの影響を聞いたところ、66.4%(8,207社)が「すでに影響が出ている」「今後影響が出る可能性がある」と回答しました。

    産業別で見ると、「すでに出ている」と回答したのは卸売業、運輸業、製造業がそれぞれ3割近くに上ります。「今後出る可能性がある」と答えたのは製造業が51.7%ともっとも多く、卸売業も47.3%と続きました。東京商工リサーチは、世界的なサプライチェーンを築く製造業や、価格競争等で国境をまたいで商品を輸入する卸売業への影響が色濃く出たと分析しています。また、宿泊業や旅行業が含まれるサービス業他は38.3%、観光バスの運行会社が含まれる運輸業は43.4%でした。「新型コロナウイルスの今後の影響について、どのような懸念を持っているか」という問いについては、「中国の消費減速、景気低迷」が5,834社と最も多く、中国の景気が国内企業の受注や業績に影響を与えることを示す結果となりました。

    また、2月13日、未来調達研究所が日本企業(回答者1万2966人)へ新型コロナウィルスに関する緊急アンケートを実施、サプライチェーン・物流・調達関連従業者の実務実態について調査をしています。「新型コロナウイルスの生産・物流・調達への影響は?」という問いに対し、支障なしはわずか12%でした。部品調達の難航、道路閉鎖による物流の遮断、トラックドライバー不足、エアー便集中による取り合い、一時サプライヤーの有する金型を代替国に輸出できないなど、多くの問題が浮き上がっています。この状況は自動車業界も含め、各業界に大きな影響を与えているようです。

    企業はどう対応すべきか

    世界経済に損失をもたらし続ける新型コロナウイルス。
    2月13日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、日本政策金融公庫などに総額5,000億円の緊急貸付・保証枠を設けることを決め、14日に閣議決定しました。また、金融機関に資金繰りへの影響を受けている企業からの返済緩和の要請に対し、柔軟な対応を要請しています。事態の終息が見えない今、企業は政府や自治体との連携、代替生産が可能な体制を整えるなど、見直すべきなのかもしれません。

  • 【激震!新型コロナウイルス】自動車業界はどう対応しているのか?

    【激震!新型コロナウイルス】自動車業界はどう対応しているのか?

    1月末日から現在に至るまで、全世界に大きな影響を与えている新型コロナウイルス。単なる健康被害だけではなく、経済にも大打撃を与えています。中国に工場を持つ自動車メーカーは多いようですが、どのような対応をしているのでしょうか。

    2月下旬現在、国内自動車メーカーへの影響は?現在の対策は?

     

    JETRO(ジェトロ・日本貿易振興機構)によると、武漢と周辺におよそ160の企業が進出しており、その半数が自動車メーカーだと言います。中国の新車販売は、1月には194万1,000台と前年同月比18.0%減と大幅な減少、乗用車市場信息聯席会(CPCA)の発表によると、2月1~16日の乗用車販売台数は1日当たり2,249台、前年同期の販売台数2万9,090台と比較すると、10分の1以下に落ち込んでいます。湖北省に完成車生産拠点を持つホンダと日産は、中国が主力市場の一つであるため、生産停止期間が1カ月半ほどにわたると今後の業績に大きなマイナスのインパクトを与えることも考えられます。このような厳しい環境下で、各社はどのような状況となっているのでしょうか。

    トヨタ

    2020年2月24日、成都にある全完成車工場での生産を再開したトヨタ。しかし、人員確保ができないことなどを理由に、生産体制は多くの工場で停止前の半分に止まっています。

    日産

    2019年の販売台数が154万6千台を越え、世界販売の約3割を占める中国市場。生産遅延や販売に影響が出ると予想されています。先日は新型車「日産ルークス」の発表会をYouTubeを利用したインターネット中継中心へと切り替えました。また、中国から部品が調達しにくくなったことで、日産自動車九州の完成車生産ラインを一時停止。

    ホンダ

    2月14日、全面改良した主力の小型車「フィット」の販売をスタートさせたホンダですが、中国製の電子部品の調達が遅れ、一部で納期の遅延が出ています。湖北省の工場稼働再開は3月11日以降になると発表。

    マツダ

    CX-8などを生産する南京の合弁工場が2月17日に稼働再開。南京工場で生産するモデル向けのエンジンを生産する工場も2月20日から稼働を再開しています。しかし、CX-4などをライセンス生産している第一汽車グループの工場は、生産ライン改修のために現在も停止状態。

    今後の影響を考慮し、協議会が立ち上がる!

    国内の大手自動車メーカーは少しずつ稼働を再開させているものの、終期が未だ読めないことから、甚大な影響を受けることが予想されます。そこで、自動車サプライチェーンへの今後の影響拡大の可能性に備え、対応に万全を期す観点から、自動車メーカー、部品メーカー、政府が連携し、業界大の迅速な情報共有や必要となる対応策を検討する場が設けられました。それが、「新型コロナウイルス対策検討自動車協議会」です。
    同協議会は、一般社団法人日本自動車工業会、一般社団法人日本自動車部品工業会、経済産業省が共同で次のような取り組みを行うというもの。状況などにより、追加されます。

    1. 情報共有と状況把握
    業界大の共通課題(防疫対策、サプライチェーンや物流等)と対応策の共有、政府の施策情報の共有など
    2. 対応策の検討
    影響が長期化した場合の各種対策の検討(資金繰り対策、各種政策支援)

    いっぽう、中国では…

    自動運転技術を活用?

    中国インターネット検索の最大手であるバイドゥは、2月10日、新型コロナウイルス対策への支援を行う企業に、同社の自動運転開発プロジェクト・アポロの小型低速車用の自動運転開発キットとクラウドサービスを無償解放すると発表しました。新型肺炎対策への自動運転技術の応用を加速する考えです。

    ウイルスに負けない車の開発がスタート。

    浙江吉利控股集団は、2月4日、傘下の吉利汽車(GEELY)が、ウイルスに強い車の開発に着手したと発表しました。同社は3億7000万元の資金を投資し、ウイルス防止機能を備える「健康でインテリジェントな車両」の開発に着手すると言います。
    ウイルスからの保護機能を備えた車は、空気中の有害物質を隔離する能力を持つだけでなく、車内の空気を迅速かつ効果的に清浄する機能を追求とのこと。欧州、米国、中国それぞれの拠点が共同で、空調システム内や頻繁に触れる室内などで使用できる抗菌および抗ウイルス特性を備えた新素材の研究開発に取り組みます。

    「生物兵器防衛モード」ってナニ?進化する車内空気浄化機能に期待が高まる

    2017年、米国のEVメーカー テスラが花粉、バクテリア、汚染物が車内に潜入する前に外気から取り除き、これらの微粒子を完全に消去できる空気清浄システム「HEPA(ヘパ)フィルトレーションシステム」を開発し、話題になりました。この空気清浄システムには、「生物兵器防衛モード」があり、大きなバブル内に『モデルX』を置いたテストでは、2分も経過しないうちに、HEPAフィルトレーションシステムが車内の空気を洗浄、汚染レベルを極度に危険な1000マイクロg/m3 (PM2.5の汚染で話題となった北京の年間平均値が56μg/m3)から探知されないほど低いレベル(ノイズ フロア以下)に下げることができたのです。この結果から、インフルエンザをはじめとするウイルス防止への効果も期待が寄せられています。

    生物兵器防衛モードは、自動車業界として初の医療用ヘパエアフィルトレーションシステムが、すべてのアレルギー物質やバクテリア、他の汚染物質を車内の空気から取り除き、手術室と同じくらいクリーンな空気で車内を満たしてくれるという事実から、今回のコロナへの対策の一つとして空気の清浄機能の強化が注目されています。車の新たな付加価値として、今後テスラのように高度な車内浄化機能の開発に着手していく自動車メーカーが増えるかもしれません。

  • インダストリー4.0、エコシステム… BOLT Mobilityが描く、次世代モビリティ構想

    インダストリー4.0、エコシステム… BOLT Mobilityが描く、次世代モビリティ構想

    インタビュイー:
    BOLT Mobility アジア戦略担当
    下山二郎(しもやま・じろう)さま

    サステナブルでエコ。「BOLT Mobility」とは

    まずは、下山様のご経歴からお伺いできますか。

    ファーストキャリアは、日本電信電話公社(現日本電信電話株式会社/NTTコミュニケーションズ株式会社)に入社しました。大学は法学部に在籍していたので、法律関係の職に就きました。ただ、小さい頃からプログラマーを目指していたので3年で転部し、技術者としてアメリカの研究所でLANやインターネットを支える基礎部分、テレビ電話の仕組みなどを開発しました。同社の国際部に移ってからはグローバルのインターネットの開発に携わり、40歳の時に退職。

    現在では日本を代表するECサイトに成長した企業が、2000年にインターネットでモノを売ることを発表したとき、「この事業は必ず成長するぞ。もしかすると、10年後には百貨店がなくなるかもしれない」と予測しました。実現すれば、オンライン上の決済、つまり買い物をするためのレジの仕組みが必要です。インターネット決済の仕組みを開発し、4年弱で上場を果たしました。それから、現在の会社を立ち上げて今に至ります。

    BOLT Mobilityに関わるようになったきっかけを教えていただけますか?

    BOLT Mobility (当時マイクロモビリティ社)が技術パートナーを探していた時に声をかけていただきました。また、マイクロモビリティ社の主要な幹部の方々はIT業界出身者が多いのですが、私の仲間が多かったことも大きいですね。私はアメリカにも会社を持っていましたし、縁が繋がっていったという形です。

    ただ、彼らが最初に始めたモデルはいわゆる「シェアリング」。私はシェアリングサービスには天井があると考えていましたので、それを聞いた時、少し抵抗がありました。しかし新しいタイプのサービスを作る話がでましたので、「ならば力を貸しましょう!」と手を組むことに決めたのです。

    「BOLT Mobility」についてご説明いただけますか。

    ウサイン・ボルト氏は史上最速、男子100mで世界1位を獲得した歴史的な人物。昔から自然体であることを心がけてきた彼は、エコに対しても非常に関心が高く、環境に悪影響をおよぼす化石燃料に懐疑的でした。そこで、電力にフォーカスします。電力も少なからず環境に影響を与えますが、制御可能で管理しやすいという違いがあります。そういう事実を理解したうえで、前々から何らかの形で電動エネルギーに関わりたいと思っていたと言っています。

    そんななか、彼の考えと近いミッションを持ったマイクロモビリティー社が電動スクーターの事業を開始し、ボルト氏に「乗っていただけませんか?」と声をかけます。ボルト氏と同社のミッションが一致したこと、そしてボルト氏が事業に参画して一員になりたいと希望したことでBOLT Mobilityが創業されました。

    ボルト氏はジャマイカ出身。ジャマイカは島国ですので、ガソリン、化石燃料のサプライチェーンを建てるには膨大なコストがかかってしまうのです。しかし、適正なサイズのモビリティを作るとなると赤字になりますし、大都市向けのモビリティを持ち込むと島の自然が破壊されます。ジャマイカでは実際にそうなってしまったそうです。

    車は競合・競争しながら発展してきたという背景があるのも事実。つまり、車種によってパーツが異なりますので、一度故障すると修理が簡単ではない。ごまかしながら使うか、山中に廃棄するか、二者択一になってしまうのですが、それでは自然を破壊することになってしまう。しかし電動スクーターなら、ガソリンスタンドは不要ですし、島のサイズに合わせたモビリティを作ることができるのです。これは同じ島国である日本も同じです。

    また、小さい島国だと車両の解体工場を作ることさえ大変です。廃棄車両から発生する地球環境への負荷も同時に考えなくてはなりませんから。BOLT Mobilityのスクーターはほとんどの部品が共通パーツで作られています。組み立ての工数も増えますし、コストもかかりますが、長期的な視点で考えるとリーズナブルでエコ。単年度の合理性ではなく、長期的な合理性を求めたところも、ボルト氏がこの事業に惹かれたポイントです。

    独自の概念を貫くBOLT Mobility

    BOLT Mobilityの特徴や強みを教えてください。

    BOLT Mobilityのように、インダストリー4.0、AI、IoTをキーワードにしているパーソナルモビリティーの企業はあまり見かけませんよね。インダストリー4.0は、ユーザードリブンの生産体制に直結させることです。たとえば、都市部と山岳部で電動モビリティを利用する場合、その土地の環境に合わせてモーターのパワーも変えなければ、“本当に使えるモノ”を提供することができません。つまり、生産ラインの中にユーザーの位置情報、ロケーションの情報を送り込むことで、無駄をなくし、適切なモノを作ることができるのです。弊社のモビリティは、個々のパーツを組み合わせた形になっているので取り替えがしやすいのも特徴です。今まででは考えられないかもしれませんが、こうした私たちの思想に共鳴してくださる方は増えてきました。私たちとしても、他社が必要であれば私たちの考え方や技術を喜んで提供させていただきたいですし、みんなで組み上げていくレゴのような世界を作りたいと思っています。

    また、デバイスにIoTとAIがつながることで、健康(医療)とエンターテイメント、防災など、多面的な使い方が可能なプラットフォームを作っていきたいと思っています。ある時は観光用に、ある時は自然災害発生時の避難に、非常用電源としてのバッテリーになったり、街の中を爽快に駆け抜けながら音楽を楽しむエンタメマシーンになったり…。あらゆる使い方を想定したプラットフォームを提唱しています。

    私たちはこのプラットフォームを独占しようと思っていません。実のところ、AIやIoTの開発は非常に難しいものですし、ゼロから開発するのは大変ですので、私たちが開発した部分はシェアリングできればと思います。

    支払い方法についても企業の思想が反映されていますよね。

    支払い方法も多様性を重視しています。使った分だけ支払うのはお得ですが、ワンプライスの方がわかりやすくベストなこともありますから。目標は支払い方法、価値そのものを対価に変えることです。大学などの教育機関では入学金の中に利用料が含まれていて、校内で自由に使えるとか。旅行の場合は航空会社のマイレージで使えるとか。ショッピングモールでは買い物する際のポイントで利用できるとか。スマホの中にはさまざまな形態で経済価値のあるものが眠っていますので、無駄なく使うことができれば経済的にも活性化するでしょう。

    場所に対して貸し出すモデルがシェアリング、人に対して貸し出すのがレンタルですが、二つを掛け合わせても良いわけでしょう? たとえば、アパートの住人で電動スクーターをシェアしても良いですし。統計的にも住人の全員が同時に使うことはほぼありませんので普段は数台で足りるでしょうが、万が一、住人全員でツーリングに行くなら、他で余っている電動スクーターを持って来ればいい。このように、シェアリングとレンタルの間を取った新たな形態でサービスを創造したいと考えています。

    協力しながら最適な組み合わせを作る

    今後、日本での展開はどのように考えていらっしゃいますか。

    電動スクーター、あるいは電動アシスト自転車、電気自動車、さまざまなモビリティがありますので、まずはどの組み合わせがどのマーケットに受け入れられるか、ヒヤリングしたりトライアルしたり、調査をしている段階です。

    他社の電動スクーターやキックボードは、“デバイスドリブン”の部分が大きく感じますが、私としては、マーケットのキャラクターに合わせた最適な組み合わせを探すことの方が重要だと思うのです。もちろん、どちらが正しいという明確な答えはありません。マーケットにピタっとはまるペイメントやメンテナンスの方法をこれから先の未来で描くことができれば、サステナブルなサービスになる。ですので、現在はプラットフォームとしてマーケットに合わせたサービスをどのように提供できるかを重視しています。

    とはいえ、最適な組み合わせは一社単独で作ることが難しい。互いにプラットフォームを共有しあうことで、より良いサービスを作ることができれば非常にありがたいですし、逆に他社で持っている良いプラットフォームがあれば、喜んで使わせていただきたいですね。

    「様々な企業が協力しあいながら、最適な組み合わせを作る」。これはまさに、現在のモビリティ業界で求められているものではないでしょうか。

    そこにこだわる理由は、成功した実例を持っているからです。今では当たり前のようにYouTubeもNetflixも視聴できるようになりましたよね。そこに一役買っているのが光海底ケーブル。19世紀から20世紀にかけて光海底ケーブルができるまで、海底ケーブルは全て電気ケーブルで、1995年に私がプロジェクトを立ち上げて参戦するまで、数社だけで独占をしていました。当時は、日本からアメリカに電話すると数千円もかかっていましたが、もし今もその状態が続いていたら、YouTubeさえまともに見ることはできないはず。

    私は、全世界200を超える通信キャリアに声をかけ、シェアリングの光海底ケーブルのグローバルなケーブルを敷くことを提唱しました。当時は国際ライセンスを所有していないと国際通信事業を営むことができません。ですが、アセットを持つことはできる。私には法律の知識がありましたので、そこをしっかり理解していたのです。そして国会でも戦った末、許可が下り、海底ケーブルを数百社で作ることに。数百社いればコストも等分されるうえ、最先端の技術を反映できる。1995年と2015年で比べると、海底ケーブルは全世界で1億倍の規模に増えましたから、誰もが快適にインターネットを使える世界になりました。

    つまり、インフラは共有すべきところは共有すべきだということです。これは、知恵を出して真正面から戦うところと、戦わずに力を合わせるところを区分けして成功した実証例です。今回はケーブルからモビリティに変わっただけの話ですので、私としてはいつもと変わらないことに取り組んでいる感覚です。

    モビリティの進化にはディストラクティブが必要だ

    今後、モビリティはどのように進化していくと思いますか?

    多様化が進んで行くでしょう。1990年代から多品種少量生産になると言われてきましたが、それだとビジネスモデルが合わないからマス型に戻ると思います。日本では7年に1度のスパンでこれを繰り返しています。今がちょうどパーソナライズや多様化と言われ始めたタイミングですので、2025年の大阪万博までは自分に適合するモビリティを選択できることが一般的になるでしょう。

    ただ、2026年にはそれがピークを迎えて、いくつかの問題が出てくると考えています。1つが先述したインダストリー4.0。生産性と合理性が頂点に達し、これ以上は利益が出ない、拡大しないとわかれば、次のモデルに移行しなくてはなりません。次のモデルは多様化やパーソナライズではなく、全く異なる新たなジャンルが生まれます。なぜなら、個人という言葉は1つの側面で定義することはできないものだからです。会社で働いている自分、麻雀をやっている自分、ヨットに乗っている自分、1人の人間をパーソナライズしようとしていても無限の可能性がありますし、いつか必ず限界がきて無駄なことだと気がつく。ですから、次にやってくるのは人でもない、場所でもない、「オケージョナライズ」の時代です。

    モビリティ業界に求めることは。

    海底ケーブルの時と同じで、ディストラクティブなリーダーが舵を取るべきだと思います。法律や電動バイク免許の話ばかり耳にしますが、本質はそこじゃない。一言でいうとギルド、権益です。ギルドの弱点を見つけ出すことが「最適」になるからです。マーケットが成長すると、どんなものでもギルドができる。そのギルドは自らがギルドであるがゆえに致命的な欠陥を必ず持っています。ですので、そこを突けば簡単に壊すことができるのです。

    「ディストラクティブが次により良い世界と雇用を創出する」というのが私の持論です。限界点は必ずありますが、それを固持してしまうと必ず社会が悪化する。ですから、破壊と創造が大事。そうすることで世界は必ず良くなります。

    スマートドライブとのコラボレーションについてどうお考えでしょうか。

    スマートドライブ社のことは数年前から知っていました。知り合いの工事会社の社長から「社員がどこにいるかわからず、連携を取りづらい」と相談されたので、「スマートドライブのデバイスをシガーソケットに挿せばリアルタイムでわかるよ」って。ただ、その社長が「GPSの精度が気になる」と言い出して。「そこが重要ではない。まずは導入して社員のモチベーションをディストラクトして、生産性とは何かを理解すること。それから次のステージへ行くべきではないか」と伝えました。

    おそらく、本質からズレている方が多いと思います。だって、GPSの精度が上がったからといって、売上が増えるわけではありませんから。しかし、車両管理システムという仕組みを導入することで、生産性を本質から考え、データをもとにモチベーションを醸成することができる。だからスマートドライブが提供するサービスは素晴らしいなと思うんです。

    スマートドライブと連携して、社会を良い方へ変えながら、収益も上げられるサービスを作っていきたいと思います。

  • ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -後編

    ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -後編

    前編では創業の経緯や製品の特徴についてお話しいただきましたが、後編ではPyrenee Driveの技術がどのように事故を減らしていくのかを伺います。

    ヒューマンエラーをなくすための機能を搭載

    Pyrenee Driveは実際、どのようにして事故を防ぐのでしょうか。

    Pyrenee Driveは、事故原因の大半を占めるヒューマンエラーを無くすことを目指した製品です。

    たとえば、目の前で自転車に乗った子どもが飛び出してきたとしましょう。Pyrenee Driveは、自転車がどのような動きをするかを予測して、このままだとぶつかると判断したら早めに感知してお知らせします。ですので、この場合は飛び出した瞬間くらいの早いタイミングで「自転車に注意!」と音声アラートで通知します。

    走行時のドライバーの視野角は一般的に35度と言われていますので、この角度の外側ははっきりと見えていません。そのうえ、考え事をしている時や急いでいる時はさらに視野角が狭くなります。コンピューターの利点は、中央に位置するものも端にあるものも全く同じように見ることができることですので、その強みを活かしたドライバーのサポートをしたいと考えています。

    私個人も自分の不注意でヒヤッとした経験があります。多くの車が行き交う道路で右折しようと待っていた時に、直進車に気を取られ過ぎて、目の前にいる歩行者に気がつかなかったんです。その時は助手席に人がいて声をかけてくれたので何もありませんでしたが、少し間違えれば大変なことになっていたはず。視界には入っていたのに、意識が向いていなかったため“見えなかった”んです。

    Pyrenee Driveはまさに、その助手席の人を目指しています。人ですと一度に複数のものを把握することはできませんが、コンピュータなら人が対応しきれない部分をしっかりフォローすることができる。最終的な判断能力はまだまだ人の方が上ですが、認識能力はコンピュータの方がずっと高い。そうした利点を最大限に活かせばドライバーの良きパートナーになれるはずです。

    また、内側にもカメラが付いており、ドライバーの目や顔の向きを捉えて危険を察知できるようになっています。ドライバーがよそ見していると「前をみないと危険ですよ」と音声で注意を促します。

    そのほかには、「前方注意です」「追突注意!」「歩行者が目の前にいます」といったアラートがあります。

    交通事故は①見落としなどの原因があって②人や車にそのまま向かい、③最後ぶつかるという流れで発生しますが、Pyrenee Driveは①の原因を潰すためのもの。最近では安全支援システムの精度が向上し、ぶつかる瞬間にブレーキが作動するものもありますが、その前である「原因」の段階でドライバーに通知して事故を防ごうという考えです。

     

    それに加え、利用者が経験したヒヤリハットやアラートが鳴った地点など、危険な場面のデータをクラウドに集めて、ディープラーニングの追加学習を行います。AIは学習量が増えれば増えるほど認識能力や予測能力が向上するため、運用しながら事故を防ぐ能力を継続的に高めていく設計になっているのです。

    仕事でも、ダブルチェックを行うことで見落としを劇的に軽減できますよね。1%の見落としは、2人で行うことで0.01%になる。ダブルチェックの法則を活かしてちょっとした見落としも大幅に減らしていきたい。売ったら終わりではなく、購入いただいた後も性能を常に高めていくことで、もっともっと事故を減らしたいですね。

    他にはどのような機能や特徴がありますか。

    カーナビ機能も追加する予定ですし、スマホとつないで通話ができたり、音楽を聴くことができたりするなど、ドライブの時間が日常的に楽しくなる機能も含んでいます。

    車両と歩行者の情報がつながればもっと安全な社会が実現する

    中長期的にはどのような目標を掲げていますか。

    まずはPyrenee Driveをソフト面、ハード面ともに進化させ、法人個人関係なく多くの方に利用いただけるようにしていきたいですね。そして、さらに安全な社会を実現するために、歩行者が利用しているウェアラブルのデバイスやスマホアプリなどと連携し、歩行者と車両と双方向で通信のやりとりが自動でできる世界を作りたい。

    見通しが悪い交差点で、ドライバーから何も見えていないとしても、ウェラブルデバイスやアプリを使っている人が近くにいれば、その情報をキャッチしてドライバーにアラートを出して注意喚起することができる。そうすれば、ほんの些細な不注意で起きるような事故も防げるのではないかと考えています。

    2020年に発売開始とのことですがどのような方にご利用いただきたいですか。

    Pyrenee DriveはB2BとB2Cと同時展開していく予定です。B2Bの法人向けで想定しているのは、物流系の企業様の利活用。なぜなら輸送トラックは大型のものが多く、被害が大きな事故につながりやすいからです。並行して、交通手段として日常的に利用されるバスやタクシーにも事故防止や事故低減の機能を提供していきたいと思っています。ドライバーの様子も内側のカメラで感知できますので、眠そうな表情を感知したらドライバー本人に直接声をかけたり、事務所や営業所に通知を送って注意いただいたり、2人交代制の長距離バスは早めに交代を促したりするなど、状況に応じた適切な事故防止対策が行えればと思います。

    スマートドライブとのコラボレーションすることでどんなことを実現できるでしょうか。

    Pyrenee Driveは事故を減らす・防ぐことに特化した製品です。スマートドライブが持つ車両管理やテレマティクスシステムと共同することで、お客様に対して「安全と効率的な管理」というより大きな価値を提供できるのではないでしょうか。

  • ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -前編

    ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -前編

    インタビュイー:
    株式会社Pyrenee
    代表取締役 (CEO) 三野 龍太さま

    人の命を守るもの、世の中の役に立つものを作りたい

    まずは三野さまの自己紹介をお願いします。

    株式会社Pyrenee(ピレニー)で代表を務める三野龍太(みの・りゅうた)です。私のファーストキャリアは、建築工具メーカーでの建築工具や建築機械の製品開発です。ここで多くの苦労と楽しさを経験しながら製品づくりに10年ほど携わりました。

    建築工具にはどのようなものがありますか。具体的な事例があれば伺いたいです。

    たとえば、ビルの中に設置されているエアコン。エアコン自体は大手メーカーが作りますが、それを新築のビルに設置するには、室内機と屋上に並んでいる室外機の間をパイプでつながなくてはなりません。この時に数多くの機械類と工具類が必要になりますが、そこで利活用できる製品を作るのが当時の仕事でした。

    私が担当していたのは、ビルの建設現場で困っていたり、必要とされていたりするものを探し出し、それを解決するための商品を開発すること。当時のエアコンにはフロンガスが使われていて、室内機と室外機の間を通るパイプの中を循環して作動していました。部屋から屋上までをつなぐパイプは建物によって何十メートル、何百メートルにもなりますが、配管をつなぎ合わせる際、どこか一つに溶接箇所に漏れがあるとフロンガスが漏れ、エアコンが効かないどころかオゾン層を破壊することになってしまうのです。それに、建設後に漏れが発覚すると、壁を剥がすなど、大変手間のかかる作業が発生してしまいます。そこで最初の時点で漏れをしっかり感知できるように、工具セットを作りました。これはフロンガスを入れる前に無害な窒素で圧を入れ漏れがないかを圧力で確認できるというニッチな製品です。前職ではこのような製品をいくつか開発してきました。

    なぜ、ご自身で起業されたのでしょうか。

    自分で全てをプロデュースしたいという思いが強かったからでしょうか。退職してから、まずは妻と一緒に小さな雑貨メーカーを創業。ここでは大きなシリコンでホールドして高さや角度を自由にできるiPad用のスタンドや、子供が頭をぶつけないようにするためにドアノブのカバーなどを作り、インテリアショップや東急ハンズ、ロフトに卸していました。

    しかし雑貨を作る中で、もっと作りがいがあって誰かの役立つ製品を作りたいと思うようになって。一念発起してPyreneeを創業したのです。やりがいのある、作りがいのある製品とは何か。その問いから真っ先に浮かんだのが人の命を救ったり助けたりできる製品でした。この製品やサービスのおかげで危険から身を守ることができた。そう思われるように、人の命を守る製品を作ろうとここから新たな製品開発に勤しみます。

    人の命を救う製品と聞くと、エアバックや防災グッズなどさまざまな製品が考えられますが、その中でドライブレコーダーを選ばれた理由は?

    私は大型犬を飼っていることもあって、都内でも毎日のように移動時は車を利用しています。ただ、便利ではありますが、車の運転は常に危険が伴うものです。悲痛な事故のニュースもよく目にしますし、道路へ出ると小さな子どもが走り回っていたり、横断歩道を使わずに道路を縦断する人がいたり、こちらが注意深く前を見ていても予測できない事態が発生するので気が気じゃありません。運転していても、万が一交通事故に遭遇してしまったら怖いなという気持ちをずっと持っていたんです。

    そこで改めて交通事故について調べてみると、事故の原因のほとんどがドライバーのヒューマンエラーで起きている。ならば、そのヒューマンエラーを無くすための装置を作ることができないかと考えたのです。ドライバーの隣で道路を確認しながら見落としや判断ミスを激減させるパートナーを作ろう。AIを使って道路上の物体を認識し、危険予測を行えないだろうか。そう思いついて技術的なことを調べた結果、実現可能だとわかって即時開発に着手しました。

    ドライバーを守るアシスタントとして

    現在開発中のPyrenee Driveについて特徴などをお伺いできますか?

    コンセプトはドライバーのアシスタントになること。ドラレコの機能もありますが、あくまで危険を察知して事故を防止するためのアシスタントと位置付けています。重要な部分の技術開発は終わり、今は最終的な開発の部分と量産化できる体制を整えている段階です。2020年中のリリースを予定しています。

    製品自体はドライバーの正面、もしくはダッシュボードの中央に固定した状態で利用していただきます。ステレオカメラを搭載していますので、3次元で道路上を撮影できることが大きな特徴ですね。

    3次元での撮影にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

    交通事故を防ぐにはドライバーが運転しながら現状を認識しなくてはなりませんが、その際に重要なのが、歩行者や他の車の現在地と自分から見てどの向きで進んでいるかという位置関係の変化を知ることです。ステレオカメラではその位置関係が3次元で見えますので、自分と歩行者、車との位置関係の変化が正確に把握できるんです。逆に言うと、ステレオカメラでなければそれら位置関係が把握できません。

    ステレオカメラのドライブレコーダー自体、ほとんど見かけませんよね。

    ステレオカメラを使えるようにするには非常にシビアな調整が必要なため、後付けで製品化するのが難しいのです。私たちはAIの物体認識とステレオ処理の2つを組み合わせることでその難問を解決しました。また、Pyrenee Driveのもう一つの特徴が強力なGPUを内蔵していること。これがあることで、走行中の状況認識と危険予測というAIの重たい処理を遅延せずリアルタイムで行うことができます。これらによって、車線のはみ出しを確認しつつ、高精度で車・歩行者・自転車・バイクを認識し、その動きを追跡することができるのです。

     

     

    人と車、それぞれ分けて認識しているのですね。

    車に関しては3次元認識で他車がどの方向を向いているか、枠で囲うだけでなくティッシュ箱のように立体のボックス上で認識をしています。これは、人が車を見る時に無意識に認識しているのと同じ状態。道路上の人や車を認識するAIシステムは他にもあるようですが、3次元認識ができる製品はほとんどないのではないでしょうか。このカメラでは距離も正確に測ることができるんです。

    >>後編へ続く

  • 自動車メーカーで相次ぐ人員削減。自動車メーカーはどこへ進むのか?

    自動車メーカーで相次ぐ人員削減。自動車メーカーはどこへ進むのか?

    会社としてもっとも苦渋の決断である人員削減。いわゆるリストラは、人件費を大幅にカットするうえで有効な施策ではありますが、貴重な人材の流出や社員のモチベーション低下など、デメリットも多い諸刃の剣です。これまで、自動車業界は終身雇用の代名詞的存在でしたが、日・米・欧の大手自動車メーカーおよび関連企業は大幅な人員削減の断行を進めており、その規模はバブル崩壊やリーマンショックに次ぐ水準に達しつつあります。

    今回は、国内外の自動車メーカーが相次いで発表した施策を整理するとともに、自動車業界でリストラの嵐が吹き荒れている背景や、人員削減を断行した後に訪れるであろう「未来」に迫ります。

    大手自動車メーカーが次々と人員削減…

     

    まずは、国内外の大手自動車メーカーや自動車関連企業が振るった、人員削減施策の「大鉈」を見ていくことで、同業界が現在さらされている窮状を把握しましょう。

    終身雇用神話崩壊か?トヨタ・豊田章夫氏「終身雇用は難しい」との認識

    グループ連結では約37万人以上の従業員を抱え、単独ブランドとしての販売台数は世界NO,1のトヨタ自動車をもってしても終身雇用は夢物語なのか…、そんな声が噴出し始めたのは2019年5月頃のこと。日本自動車工業会の会長会見において、「企業へのインセンティブが出てこないと、終身雇用を守っていくのは難しい」との認識をトヨタ・豊田章夫氏が示したことで、自動車業界は「人員整理やむなし」の流れへ一気に傾いています。

    これは海外ライバルが大胆な人員コスト圧縮により、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・EV化)の開発競争激化へ対応していることを受けたもので、管理職約9,800人の夏季ボーナス支給額を前年比で平均4~5%減らすなど、早速、その本気度をあらわにしました。

    今期のトヨタ自動車は日本企業初の売上高30兆円超、営業利益2兆5,000億円とこれ以上ない好業績です。その中で異例ともいえるボーナスカットを断行した狙いは、競争激化を見据えた社員の意識改革にあると考えられます。しかし、業績を伸ばしても報酬が削られるという今回の施策は、「行き過ぎたショック療法」という声も出ているほか、前述した豊田氏の認識と相まって「トヨタが大胆な人員削減に踏み切る序章なのでは…」と指摘する有識者も多くいます。

    さらに同社は10月末日、傘下の自動車部品メーカー「アイシンAW」と「アイシン精工」を経営統合、2021年4月にはアイシン精工を存続会社として、新会社を設立すると発表しました。CASE開発力強化と経営の合理化を目的とした統合ですが、同時に従業員レベルではなくグループ全体として、「ダウンサイジング」を進めていくという強い意思表示であり、関連企業としてはいつ大鉈がふるわれるか戦々恐々としているのも事実です。

    独・ダイムラー 1万人以上の人員削減を計画

    内燃機関の新規開発を中止し、EV専用パワートレインに注力する方針を固めた独・ダイムラーは2019年11月29日、2022年末までに全世界のおよそ30万人の従業員のうち、少なくとも1万人を削減すると発表しました。

    同社は、管理職10%を含めた大胆な人員削減の実施により、人件費を14億ユーロ(約1,687億円)カットすることで自動運転やEVの開発・生産資金の確保と、膨大な投資で圧迫されている利益率の回復を目指す方針のようです。

    しかし、ダイムラーは独国内において「29年まで強制解雇はしない」と従業員代表(日本での労組に相当)と合意しているため、希望退職や採用抑制で人員を減らすことになりますが、有期雇用者の契約継続や海外拠点従業員は対象外。つまり、非正規雇用者や海外の傘下中小企業では、激しいリストラの嵐が吹き荒れるということ、同グループの自動車業界内における強い影響力から、世界中で失業者が溢れかえってしまう可能性を危惧する声も高まっています。

    VWグループ・アウディ 世界全従業員の約15%超を削減へ

    フォルクスワーゲン傘下のアウディは、66億ドル(約7200億円)のコスト削減を見込み、2025年までに9,500人の雇用を削減すると発表、CEOのBram Schotは声明で「変革の時代において我々は組織のアジャイル化を進めていく」と述べました。

    一方、デジタル・EV部門に関しては新たに2,000人の雇用を計画しているほか、インゴルシュタット・ネッカースウルム両主力工場は生産能力を削減しつつ、反対にEV専用の生産ライン新設を予定するなど、「アジャイル=修敏」とは言い難い後手に回った施策。大規模なリストラを敢行した企業に、優秀なエンジニアがこぞって身を寄せるとは考えにくいほか、既存生産ラインを縮小しながらEV生産ラインを新設するのは、「非効率的かつ無理がある」と指摘する声も出ています。

    日産自動車 12,500人超の大量リストラも視野に

     

    2019年4~6月期の営業利益が前年同期比98.5%減の16億円、当期純利益が同94.5%減の64億円となった日産自動車は、経営を立て直すべく、2023年3月までになんと約1万2,500人以上を削減する計画を進めていく模様です。

    開示された資料によると2020年3月期までに、

     

    • 福岡・栃木・・・880人
    • 米国・・・1,420人
    • インド・・・1,710人
    • メキシコ・・・1,000人
    • インドネシア・・・830人

    など、世界8拠点で合計6,400人を削減する計画の詳細が示され、2023年3月期までに残り6拠点で6,100人削減する予定ですが、その拠点と人員数はまだ開示されていません。決算会見で日産・西川社長は、「(残る候補は)小型車を生産している海外拠点」と発言していますが、固定費削減に直結するのは人件費が高い先進国と考えられるため、稼働率が大きく低下している国内・英国の拠点への圧力が強まると予想されます。

    三菱自動車 「聖域なきリストラ」の断行を発表

    業績の悪化に歯止めがかからない三菱自動車は11月6日、人員削減を中心とした大規模リストラを進める方針を明らかにしました。

    会見に臨んだ加藤隆雄社長・CEOは、「聖域なくコスト構造改革を推進し収益力の回復に全力をあげる」と方針を述べたものの、間接部門の人員増加が組織肥大の要因との見解も示しており、今回リストラ対象の中心に据えられているのは間接部門です。

    間接部門とは、開発・生産・販売など業績に直結する直接部門をフォローする、人事・総務・経理・情報システム部門などコーポレート機能を担う部署が該当し、俗にバックオフィスと呼ばれている部門。つまり、経営陣のかじ取りの悪さや魅力的な車種を生み出せていない開発部門、さらに花形である営業・販売部門の成績不振などといった、花形である直接部門のツケを間接部門が払わされる構図となっており、これは他の自動車メーカーでも同じことが言えます。

    なぜ今なのか。人員削減の背景とは~人員削減を断行したメーカーに待ち受けるもの~

     

    人員削減を断行する目的は大きく2つ、1つ目は組織の再構築による新ジャンルでの開発力・競争力強化であり、結果はともかくトヨタ・ダイムラー・アウディが進める人員削減施策は、来るCASE時代を見据えたさらなる飛躍への布石にほかなりません。

    一方、日産・三菱の人事削減は、業績悪化に歯止めをかけることが目的であり、正直「付け焼刃」的要素が強いため、後述する断行後に待ち受けている展望は両者で少々異なってきます。

    その1 企業イメージ・ブランド力・士気の低下

    目的に関わらず、人員削減の対象となった従業員は生活の糧を失うことになるため、退職希望者への退職金増額など、よほど手厚い保証制度を合わせて実施しない限り、断行した企業に対する恨み節が、あちこちから紛糾することは目に見えています。

    正直、業績向上中であるトヨタはもとより、他のメーカー、とくに業績悪化のために人員削減を打ち出した日産や三菱の場合、近年噴出した出来事の影響を考慮すると、断行後の企業イメージ低下を防ぐ策が見えづらいもの。

    また、人員削減はメディアを通じて一般ユーザーに周知されることになるため、自動車メーカーとしてのブランド力が失墜、かえって販売実績が低迷してしまう可能性もあるほか、残留社員もいつリストラされるか疑心暗鬼となり、社への忠誠心や士気が一気に低下します。

    自動運転の進捗やEVシフトに対応しなければ、今後生き残っていけないのは確かですが、各自動車メーカーは労使間で綿密な取り決めを交わし、それこそ「聖域のない保証制度」を確立したうえで、最終手段である人員削減を断行すべきかもしれません。

    その2 人材流出と間接部門の崩壊

    リストラを言い渡されるのは、給料を多くもらっている壮年層である場合が多く、会社にいた年数も長いため、明文化されないノウハウが若年層に伝わらないままリストラに至ると成長スピードが鈍化し、雇用の有効活用という視点では大きなデメリットになります。日頃からベテラン従業員が持つノウハウをアウトプットし、会社共有の財産にしていくことが1番の打開策ですが、社員同士の競争意識もあるため、そう簡単な話ではありません。

    また、大規模な人員削減計画が大過なく進行し、一時的に直接部門の業績が回復しても、バックアップする間接部門の体制が崩れていれば、あっという間に元の木阿弥、いや企業存続が困難となる最悪の事態に陥る可能性も否定できません。

    業績が不振である時ほど、縁の下の力持ちである間接部門の存在価値を再認識し、直接部門との人員整理バランスを調整しながら、労働時間の短縮や効率的な人員配置の見直しといった働き方改革と並行して慎重に施策を進めていくべきでしょう。

    その3 「リストラ=人員削減」ではないことを自覚すれば輝かしい未来も

    国内企業は誤解していることが多いのですが、本来リストラとは非採算部門を切り捨てたり、人員削減で人件費をカットしたりするものではなく、事業規模や従業員数の増減問わない「再構築=リストラクチュアリング 」により、新規事業参入への活路を見出す前向きな取り組みです。

    そして、自動車メーカーの未来はCASEに対応することで切り拓かれますが、通告の仕方次第で優秀な人材は単なる首切りに終始する企業からどんどん離れ、明確な経営ビジョンを打ち出すメーカーへ集中する可能性もあるでしょう。

    まとめ

     

    未開の地を開拓したり都市を再構築したりするには、山林や既存の建物をブルドーザーなどの重機で破壊し更地を形成する必要があるように、「100年に一度の変革期」が到来している自動車産業において、人材削減は避けて通れない「いばらの道」なのかもしれません。

    しかし、大手自動車メーカーが抱える従業員の数とその家族、関連産業に与える甚大な影響を考えれば、国際経済の発展に寄与する前向きな取り組みとしてすすめていくべきではないでしょうか。

  • ドライバーエンゲージメントサービス「SmartDrive Cars」とは?

    ドライバーエンゲージメントサービス「SmartDrive Cars」とは?

    2019年11月14日、スマートドライブが新たなサービスがリリースしました。それが、安全運転を見える化してポイント交換・利用ができるドライバー支援サービス「SmartDrive Cars」です。同サービスの事業責任者を務める牧野孝太郎さんに、どのようなサービスなのか、企業がどのように活用できるのか、根掘り葉掘り伺いました。

    新たなドライブ支援サービスを目指す「SmartDrive Cars」

    SmartDrive Carsはどのようなサービスか教えてください。

    SmartDrive Carsは、一般のドライバーや企業でドライバーとして働く人向けに提供しているスマートフォンアプリです。スマートドライブのIoTデバイスをアクセサリーソケットに挿して走行いただくと、独自に開発した高性能なセンサーが運転操作を計測し、安全運転診断を行います。急ハンドルや急加速、急ブレーキといった急な操作を検知してスコアリングし、運転状況を可視化した状態で1回分の走行を評価。この安全運転評価に応じてインセンティブやクーポンを提供する仕組みです。

    どこか地方へいった時はその場所で利用できる特別なクーポンがもらえるとか、安全運転スコアが高い方は割引率の高いクーポンを付与できるようにするなど、現在も精力的に機能の向上に向けて開発を進めている最中です。

    2019年の11月14日よりサービスを開始しましたが、現在は法人企業様のみにサービスを提供しています。まずは、モニターとして損害保険会社様に利用いただき、保険の契約者様にIoTデバイスを配布し、その方達にアプリをご利用いただく流れです。今後は一般ドライバー向けにも展開していきたいと考えています。クーポンの種類は、コンビニでコーヒーをはじめとしたドリンク類や軽食との交換、コカ・コーラの自動販売機でお好みの飲み物との交換、またアマゾンギフト券に交換できるものまで、安全運転をすればするほどおトクなポイントが付与されます。

    ドライブタイムこそ、エンゲージメントを高めるチャンス

    SmartDrive Carsは、具体的にどのような利用方法が考えられるでしょうか?

    利用方法としては大きく2つの観点で想定しています。1つ目が自動車メーカー様、ディーラー様、整備工場などの自動車関連企業に向けたデータの活用です。自動車関連企業がお客様と接点を持つのは、販売時や点検・整備などのメンテナンス時程度しかなく、実際にどのように利用されているのかといった普段のお客様の状況・情報は把握されていません。

    そこで普段のカーライフ情報や、移動情報など、SmartDrive Carsを通して大まかな統計データを取ることで、お客様のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:顧客関係性マネジメント)ですとか、マーケティングに活用いただけると考えています。それが、私たちが「ドライバーエンゲージメントサービス」と呼んでいるものです。企業様は、安全運転キャンペーンを実施してオリジナルグッズを配ったり、オイル交換や洗車のタイミングといった情報発信で来店を促したりして、お客様とのつながりをより深めることができる。お客様は割引などのサービスを受けることができるので、おトク感が得られます。

    2つ目は、業種を問わず、業務の中で車を利活用している企業さまに向けた活用方法です。営業で一日車を運転しているとか、マイカー通勤をしているとか、企業によって利用スタイルはさまざま。地方企業の場合、車で通勤していると会社の周りが渋滞することもありますが、渋滞の緩和にもSmartDrive Carsが役立ちます。出社時間が9時の企業であれば、およそ10分〜15分前から会社の近辺が混雑を始めます。ここで、時間が重ならないよう8時に出社した従業員にはポイントを2倍付与するなどの施策を打てば、出社時間を分散させることができ、渋滞の緩和につながるでしょう。

    また、日常的に運転する場合は安全運転評価に対するフィードバックでポイントを付与するなど、安全運転の促進と福利厚生、両方の視点で利用いただくことが可能です。

    先ほど、統計データによってお客様とのつながりを深めるとおっしゃっていましたが、たとえば、安全運転しているAさんと、運転が少し乱雑なBさんがいた場合、それぞれのユーザーとどのようにつながりを構築していくのでしょうか?

    まずは自動車関連企業のケースでお話しましょう。車を購入した後は点検やメンテナンスが必要となりますが、一人ひとりの運転の癖や、普段訪れる場所がデータから把握できれば、走行距離を考慮して通常より少し早めにご連絡差し上げたり、点検の予約が取りやすい時期をお知らせしたりすることができます。そうやって、こまめに情報発信とフォローを行い、次の買い替え時までお客様との接点を持つことで、いざタイミングがきた際に、運転が苦手そうな方にはより安全性能が高い車をご提案することもできますよね。
    法人企業ですと、どのタイミング、どのエリアで頻繁に車が利用されているのか、大まかな情報が取得できますので、事故が起きやすい場所にはヒヤリハットマップを作成して提供したり、渋滞が回避できる通勤経路を提示したりするためにご活用いただけます。

    プライバシーに対する懸念は?

    ドライバー視点ですと、そうした走行データを取得されることに懸念を抱く方もいると考えられますが、そのあたりはどうでしょうか?

    中には行動が丸見えになるので「走行データを取られるのは嫌だ」という方もいます。車を所有する企業だと、四六時中監視されているみたいだとネガティブなイメージを持つ従業員の方も少なからずいらっしゃいますし。ただ、このサービスは行動を監視することが大きな目的ではなく、あくまで安全運転をしながらドライブを楽しむこと支援するためのもの。自分が環境にも優しい穏やかな運転をすることでクーポンがもらえますし、まだ出会ったことがない情報に出会うことでドライブに対する新たな楽しさや価値を提供することに重きを置いています。

    新しい情報に触れることで、「今日はこの道を走ってみようかな」「運転が今まで以上に楽しい」など、今までにない世界観を作りたいと思っています。いつもより少し安全運転への意識を高めるだけで、もっとドライブをしたくなる世界に出会えたり、実利としてクーポンがもらえたりしますので、ユーザーメリットの方が大きいと考えています。

    街中にある監視カメラも、当初は監視されている気がして落ち着かないという声をよく耳にしました。しかし、安全面に対するメリットの方が高いので、今ではあまり気にされなくなっていますが、話としては近しいものがありますね。これから、SmartDrive Carsはどのような進化を遂げていくのでしょうか?

    最近では、移動の効率化や電車・バス・タクシー・カーシェアをシームレスにつなぐ概念として、頻繁にMaaSというバズワードが飛び交っています。しかし、移動によって経済が動いたり、楽かったりすることも数多くあると思うんです。将来的には車に限らず、移動を促進できるもの、移動したくなるもの、移動をポジティブな体験に変えるサービスや仕組みを作れるようになりたいですね。
    そこでまずはじめた1つがクーポンです。これはジャストアイディアですが、ショッピングモールの入り口から近い場所へ安全運転者専用の駐車場が設置できたらどうかなって。安全運転する人が得をする。ならば、安全運転を心がけよう。そういう雰囲気が広がれば、事故も大幅に減らすことができるはず。それが、いつか実現したい世界です。移動したら楽しいことがある。外の世界にワクワクを求めて「移動したいな」と思わせることができるハブになっていきたいですね。

    今後、どのようにサービスを進化させていきたいですか?

    いちはやく、多くの方々が使っていただけるようにプロダクトとサービスを磨き、移動をもっと楽しくする世界を作っていきたいと思います。また、SmartDrive Carsユーザーにクーポンを提供したい企業様や、自社の社員にSmartDrive Carsを提供したい企業様がいらっしゃれば、お気軽にお問い合わせください。

     

     

  • ドライブレコーダー参入企業が増加!その理由とは

    ドライブレコーダー参入企業が増加!その理由とは

     

    不注意や操作ミスだけでなく、あおり運転を始めとする危険行為が原因の交通事故や事件は後を絶ちません。そして、その様子を記録したドライブレコーダーの映像が、連日のようにワイドショーで取り上げられるようになりました。安全と防犯を目的にドライブレコーダーを搭載するユーザーが増え、併せてドラレコ市場もにわかに活気を帯びてきましたが、近年積極的に参入した大手家電メーカーがリリースした商品は、単なる映像・音声の「記録装置」から、さらに進化を遂げているようです。

    家電メーカーが続々とドラレコ市場に参入!

     

    車内外の運転状況を記録するドライブレコーダーは、万一の交通事故の際に貴重な証拠を確保できるため、物流・運送業者をターゲットとした「業務用」を中心に開発されてきました。

    一般向けの商品も販売されていましたが、フロントガラスの視界が若干遮られる、購入・取付にコストがかかる、長時間運転することが少ないといった理由や、「交通事故なんてめったに遭遇するものではない」という認識が強かったためか浸透せず、国土交通省調べによれば2008年3月時点でのドラレコ普及率はタクシーが49%に達する一方で、自家用車はわずか0.1%にすぎませんでした。しかしその後、導入業者の事故率低下が顕著に表れ始めたことや、当初は一式5万円を超えていた導入コストが市場拡大を予測した企業の参入によって安価になった影響で、業務車はもちろん自家用車への普及率も少しずつ上昇しました。

    そんなドラレコ市場に影響を与えたのはやはり痛ましい事故の数々であり、2012年4月発生した京都祇園軽ワゴン車暴走事故の記録映像は、それまで業務車が中心だったドラレコの認知度を高めるきっかけとなり、一時的に売れ行きが上昇します。

    決定打となったのは、2017年6月に発生した東名高速夫婦死亡事故であり、原因となった「あおり運転」への対策意識の向上からニーズが急増。翌年には一部メーカーで供給が間に合わず売り切れが続出しました。その結果、ドラレコ・レーダー探知機などを専門的に販売してきた企業だけではなく、一般家電メーカーもドラレコ市場へ参入が進んでいます。とくに後述する高い映像・音響技術を有するメーカーは、高性能ドラレコの販売を足掛かりとして、さらなる市場拡大を目指しているようです。

     

    なぜ今多くの企業がドラレコ市場に参入しているのか

    ドラレコ市場への参入企業が続出している理由は大きく3つ。1つ目は物流・運送業界に対する「ドラレコ搭載義務化」への動きが強まっているためです。2016年1月に発生した軽井沢スキーバス転落事故を受け、同年3月すべての貸切バス事業者にドラレコ搭載および、映像を活用した指導・監督が国交省により義務化されており、2020年には他の物流・運送業者も対象になると想定されています。

    2つ目は、事故状況の把握・予防につながる観点から、損害保険業界はかなり早い段階でドラレコ搭載車への優遇措置を検討しており、ドラレコを付ければ保険料が割引となる商品が、近い将来登場する可能性もあるためです。加入すれば事故状況の記録だけではなく、緊急連絡機能付きのドラレコが貸し出しされる「ドラレコ特約」を準備している損保もあり、安全運転や防犯意識の強いユーザーから支持を集めていますが、優遇措置が実現すればさらにニーズは拡大するでしょう。

    また、売り切れが続出するほど需要が高まっているならば、参入メーカーが増えるのは当然とも言えるもの。市場が拡大すると価格競争により平均価格は下がるはずですが、ドラレコの場合は高性能な商品が売れ筋であるため、現在値上がりの傾向にあります。これはIT機器が普及しても価格が下がらないことに酷似していますが、すでに飽和状態のIT市場と異なり、ドラレコ市場は成長期に差し掛かったばかり。そのため、後発組であってもまだシェアを獲得する余地が残されているのが3つ目の理由です。

    現在売れているドラレコはどんな機能がある?

    黎明期のドラレコは映像しか記録できず、カメラ・モニターの性能も現在とは比べ物にならないほど低レベルだったため、事故状況も大まかにしか把握できず、車両ナンバーや運転者の特定など、詳細な判断ができないケースも少なからずありました。その後、画像解像度が年々進歩し音声記録機能や、急発進・急ブレーキ・急ハンドルなど、設定以上の加速度・遠心力が車に加わると、事故発生時と同様に状況を記録する商品も登場。

    こうした機能性の向上により、事故の被害軽減・予防はもちろん、ドライバーの安全運転意識向上や従業員教育につながるとして、多くの物流・運送事業者が導入を進めています。また、ドラレコの爆発的な認知度UPと、ニーズ増加のきっかけになった「あおり運転」は、後方を追尾する車からの被害が大半を占めるため、ここ数年は前後の状況を同時に記録可能な機種が一般ユーザーの間で人気を博しています。

     

    抑えるべきドラレコの基本スペック5つ

    1. 「画質」・・・200万画素以上&フル・ハイビジョン
    2. 「撮影可能範囲」・・・前後カメラの水平画角100度&垂直画角55度以上
    3. 「夜間・逆光時の撮影能力」・・・白とび・黒つぶれを抑えるWDR機能
    4. 「色識別能力」・・・投下状況を確実に撮影できるLED信号機対応機能
    5. 「犯罪被害抑止能力」・・・エンジンを切っているときでも録画できる駐車監視機能

    また、万が一事故や車上荒らし・盗難に遭遇した際に証拠となる記録性能を持つ機種もおすすめ。前後同時撮影ができるドラレコの進化版「360度カメラ」を搭載した機種も、2019年の売れ筋です。なお、ドラレコの必要性を感じて導入した時は、車の前後や目立つ場所へ「ドラレコ作動中」と明記されたステッカーを貼るとより安全対策の効果を高めてくれるでしょう。

    YouTubeがドラレコブームの加熱を後押し?

    ドラレコは走行・駐車時での安全確認や、あおり運転を始めとする危険運転の抑止を目的に搭載するツールですが、その一方で「YouTube」ではドラレコによって撮影した事故動画だけでなく、風光明媚な観光地での走行映像も人気を博しています。

    本来の目的から大きく外れているとはいえ、旅行やレジャーでの思い出を動画として残せるのは、ドラレコを導入する付加価値の1つです。また、YouTubeで事故や危険運転動画を見れば、視聴ユーザーはそれらが誰にでも起こりえることを実感できるほか、中には新機種のスペック紹介動画などもあるため、身近で役に立つ情報を得ることができます。

    ー用品店やホームセンターだけではなく、ドラレコとは関係ないように思えるパソコンショップでも売り切れが相次いでいることと、世界的PCメーカーであるASUSの電撃参戦を考慮すれば、YouTubeがブームの過熱を後押ししているのは確かだと言えるでしょう。

    家電メーカーの最新ドラレコ特徴まとめ

     

    現在、ドラレコの国内シェアNO,1を誇る「コムテック」や、コスパに優れる商品で人気を博す「ユピテル」といった先発組に対して、後発組といえる家電メーカーは培った技術を活用し、高品質・多機能ドラレコを送り出すことで対抗しています。

    JVCケンウッド  多機能ドラレコでシェアを獲得IoT市場への参入も視野に

    2008年、日本ビクターとケンウッドの経営統合により誕生した同社は、2014年とかなり他社より遅れて市場へ参入しましたが、前身2社が有する優れた音響・映像技術を詰め込んだ高性能なドラレコはたちまち市民権を得て、現在では約25%のシェアを獲得しています。

    2019年11月リリースされた、最新スタンド・アローン型ドラレコ「DRV-MR745」は、前述した基本スペックを満たす前後同時撮影・記録可能な機種で、スモークガラスが採用されがちなリアガラスでも明るく撮影できる「スモークシースルー機能」を初搭載。また、業界トップクラスの明るさを持つ「F1,8レンズ」の採用と、画質を極めてきたJVCの技術活用で実現した、肉眼と見まがうほど美しい映像はフロントユニットの2.7型・TFT液晶モニターでの確認と、付属の大容量32GB・microSDHCカードへの長時間録画が可能。

    さらに、速度・緯度・経度などの自車位置情報を測る「GPS」を搭載しているほか、前方衝突警告・車線逸脱警告・発進遅れ警告などの運転支援機能や、長時間連続運転した時休憩をドライバーに促すリフレッシュ機能、環境にやさしい運転の実施を診断しアイコンで知らせるエコドライブ表示まで完備している徹底ぶり。

    加えて同社は、4G/LTEモジュールを組み込んだ通信型ドラレコと、走行データの定期送信や事故発生時の通知に必要なプラットフォームの開発を同時に進めています。そして、将来的には通信型ドラレコ・プラットフォームを足掛かりに、セキュリティカメラや鉄道カメラ、人に装着するボディーカメラなど、さまざまなIoT機器市場への参入を検討しているようです。

    パイオニア カロッツェリアブランドからドラレコを大量リリース

    世界で初めてGPSカーナビを世に送り出したパイオニア(株)は、自社の大人気ブランド「カロッツェリア」の名を冠した新型ドラレコを、7~8月にかけて一気に7機種投入するなどシェア拡大へ力を注いでいます。

    ラインナップは2カメラ搭載タイプ3機種、1カメラ搭載タイプ4機種、いずれも画質などの基本性能は申し分ありませんが、中でもおすすめしたいのはモニターと前後カメラが独立している、セパレート型ドラレコの「VREC-DS500DC」です。

    同機種の本体は、見やすい3.0インチ液晶を搭載しながらも、視界の妨げにならないコンパクト設計。ダッシュボード上への取付けが可能なため、最小限の視線移動でモニター確認や各種操作を快適に行えます。また、従来のドラレコと比較し100分の1以下の光量で撮影可能な「ナイトサイトモード」を搭載したカメラは、約3cmと非常にコンパクト。リアカメラには防水・防塵加工が施されているため、ナンバープレート周辺への車外取付けも可能です。さらに、9mのロングケーブルを採用しているため、大型バン・SUVなど車種問わず取付け可能であり、リアガラスをカバーで覆っている商用車や、後方の距離感をつかみにくいトラックに搭載すれば、バックカメラとして利用することもできます。

    まとめ

     

    事故やあおり運転の様子がニュースなどで取り上げられるたび、瞬間風速的に需要が伸びるドラレコ。しかし話題性で売れる時期は過ぎ、安全運転に欠かせない必需品として今後は定着すると考えられます。現在、ドラレコはユーザーの意思で搭載を決める追加装備にすぎませんが、法的な証拠としての信頼性向上とプライバシー保護問題が解決すれば、一気に標準化する可能性もあるでしょう。