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  • 【対談シリーズ】大手総合商社・住友商事が挑む「MaaS 領域の可能性」 後編

    【対談シリーズ】大手総合商社・住友商事が挑む「MaaS 領域の可能性」 後編

    みなさんは、最近新聞やニュースで見かけるようになった「MaaS(マース)」という言葉をご存知でしょうか。「MaaS」とはMobility as a Serviceの略で、情報通信技術を活用して交通をクラウド化し、公共交通や運営主体に関係なく移動手段を最適化することをいいます。ライドシェアや自動運転、AI、オープンデータなどを掛け合わせ、あらゆる交通手段をひとつのサービスとして捉えることで、利用者はより快適でシームレスな移動が可能になります。今までとは違う次世代のサービスの台頭は、利用者とサービス提供者のどちらもが自動車業界の転換期に立っていることを示すものかもしれません。

    第2回目の対談シリーズでは、MaaS 領域に積極的に取り組まれている、住友商事株式会社の執行役員で自動車モビリティ事業本部長の加藤真一様をゲストとしてお出迎え。後半ではスタートアップ企業とのコラボレーションやスマートドライブに期待することをお話いただきました。

    前編はこちら  大手総合商社・住友商事が挑む、「MaaS 領域の可能性」 前編

    スマートドライブのデータがお客様のベネフィットを生み出す

    北川:「スマートドライブとの取り組みの中で気づいたことや感じていることなどありますか。」

    加藤:「現在、住友三井オートサービス(以下、SMAS)が提供するサービスの中で、スマートドライブ社の車載機をお取り扱いさせていただいております。今までの車載機と比べるとコストが安く導入も簡単なため、お客様にも取り入れていただきやすいですし、多くの人に使っていただければいただくほど、その分データも収集できるようになります。そうすれば、『たくさんの車をリースするよりも、リースとシェア、レンタカーを組み合わせた方がもっと安くなりますよ』と、お客様に対してよりベストな提案ができるようになるんです。

    また、ドライバーの走行データによって可視化された運転の癖と改善ポイントを伝えることで、燃費を抑える方法や事故の防止法についても言及できますし、結果的に保険料も安くできるという、お客様にとってよりプラスになるサービスを提供できます。その根幹となるデータの部分をサポートいただいているわけですが、提案だけでなく、独自の保険商品を開発する際にもスマートドライブ社のデバイスとテクノロジーが生きてくるんですよね。」

    北川:「ありがとうございます。何か改善の余地はありますか。」

    加藤:「スマートドライブさんが提供しているサービスの最大の価値って、デバイスから取得したデータとそのデータをどのように活用するかだと思うんです。デバイスそのものではない。しかし、お客様に見えるのはデバイスです。お客様によっては、カメラが必要だとか取引関係があるからという理由で他社のデバイスを使わざるを得ないケースがあります。そういう場合に他社のデバイスでも同じデータを取得できて同じ活用ができるようにしていただけるとありがたいです」

    北川:「私たち自身も、デバイスはマルチデバイス対応で、データ解析はワンプラットフォームを目指しています。
    デバイスは弊社が提供しているものが簡易的で良いという企業様もいらっしゃいますので、さらに磨きをかけつつ、そのほかのデバイスでも同じようにデータが取得できるように考え方を広げていきたいなと。お客様の状況やご希望も各々に違いますので、デバイスひとつでは賄いきれない部分も出てきます。そのため、デバイスはone of themと考えて、プラットフォームの解析を強みとして全面に出していきたいと思っています。」

    スマートドライブへの期待は社会へタックルする姿勢

    北川:「まだまだ道半ばではありますが、御社からスマートドライブへ期待することやご要望、もっとこういうことをしてほしい、こうすべきではないか、というようなご意見があれば教えてください。」

    加藤:「個人的に素晴らしいなと思っているのが、高齢者見守りサービスの『SmartDrive Families』です。日本の社会課題のひとつに人口減少や高齢化社会による交通弱者の増加がありますが、今後も目を背けることはできない大きな課題になっていくでしょう。私の80歳を越えた両親も地方で暮らしていますが、離れていると状況や状態がわかりませんし万が一何かあったら、という不安があります。そうした社会課題に対して声を上げ、タックルしていく姿勢は、スマートドライブさんの良心です。もっと前に出していって欲しいですね。

    北川:「ありがとうございます。」

    スタートアップとのコラボレーションを仕組み化する

    北川:「スタートアップと大企業とのコラボレーションみたいなものを仕組み化していくというような話を少し伺ったのですが、実際に何か進めているプロジェクトなどはありますか。」

    加藤:「前半で、私どものプラットフォームを提供しながらスタートアップ企業にビジネスを作っていただき、私たちもそれを利用させていただくというコンセプトをお話ししました。社内では私たちがそういう流れを作るためのリードをとっていて、いま、住友商事全体にそれが広がろうとしているんですね。いくつか取り組んでいることはありますが、 スタートアップ企業に積極的に人を出しているのもその一つです。」

    北川:「確かに、弊社にも来ていただいていますね。」

    加藤:「これはプラットフォーム&トランスフォーメーション戦略のひとつで、私どものプラットフォームをスタートアップの皆さんに活用していただくとともに、スタートアップのプラットフォームを活用して住友商事の人材の考え方や仕事の仕方を変えていくという制度です。もうひとつ、詳細はまだ煮詰めている最中ですが、昨年9月から入居したビルの中に未来ラボという場所を作ろうと準備をしています。スタートアップのみなさんにアクセラレーターのような場所としてご提供し、ここで一緒にお仕事する中で、共に学びながら新たなケミストリーが生まれればと思っています。」

    北川:「弊社が今入居しているのもWeWorkというシェアオフィスなんですが、大企業にお勤めの方々も普通に利用されています。さまざまな方に話を聞くと、最近は朝の定時出社を義務付けず、いろんな場所に行っていろんな話をしてきなさい、というような会社が増えているようです。
    オフィスのシェアリングやデータのシェアリングがメインになってくると、今後、総合商社の働き方も変わってくるのでしょうか。」

    加藤:「今まさに、変えようとしていますし、私自身も環境によって働き方が変わることを感じています。
    引っ越し前のビルでは窓側の一番広いところが役員の執務室だったんですが、引っ越し後は窓のない、従来の1/3程度の広さの部屋に変わりました。角部屋で窓に囲まれている一番いい空間は現在、共有のクリエイティブスペースになっていて、部署間を越えて社員同士が気軽に話し合えるような場所にしています。締め切った会議室より、オープンなスペースの方が会話も進みますし、それによって働き方だけでなく、仕事の進め方も変わるんじゃないかと感じていますね。」

    北川:「そういう考えをお持ちの商社さんは、なかなかいらっしゃらないですよね。そこは住友商事さんが一歩先に出て変えていっている気がします。」

    加藤:「こうした考えも、スタートアップ企業の方々とお付き合いする中で学んでいったことかもしれません。」

    移動距離と移動手段への価値が変わる未来へ

    加藤:「歴史を振り返ると移動距離と移動スピードは人類の進化や文明のバロメータでした。特に産業革命以後、この移動距離と移動スピードは飛躍的に伸び続けてきましたが、今、世の中で起きていることってなんなのかなと考えると、相反する回答が浮かぶのです。

    自動運転車やMaaSが出て来れば人の移動距離や移動スピードはさらに伸びるという意見もありますが、もしかしたら逆のことが起きるかもしれないと思っているんです。

    なぜ、これまで距離やスピードが伸びてきたのかといえば、移動しないと仕事が得られない、収入を得るためにはできるだけ早く遠くまで移動しなくてはならない、そういう理由で移動するヒトが多かったからです。さっきの働き方改革の話にも関連するかもしれませんが、今は移動しなくても欲しいモノはネットで買えるし、仕事も家でできるし、近い未来、必要なことはAIやVRがやってくれるようになるかもしれないし…移動が不要になりつつありますよね。文明が進んだ結果、歴史上で初めて移動距離やスピードが縮まることもありえますし、その方が幸せだという時代や社会になったのかもしれません。

    今まで、そういう視点でヒトの幸せやサポートを考えていた人や企業ってほとんどいないんじゃないでしょうか。自動車に関わる人たちは、今まで販売台数を増やすか、移動距離や稼働効率を増やすか、どちらかを追求してきましたから。ですから、ヒトが移動せずに済むサービス、つまりモビリティサービスでなく、イモビリティサービスを提供して稼ぐというようなビジネスモデルが出来たら面白いと思いますし、北川さんならそれができる と思います。」

    北川:「恐縮です。同じような話になるんですが、私が創業した直後に聞いて面白いなと思ったのが、距離とかスピードは早くなっても、紀元前からヒトの1日の移動時間はほとんど変わっていないということです。
    昔だったら狩り、現代であれば通勤・通学に2時間半ほどの時間を費やしていたものを、そもそも移動しなくて良くするとか、1時間に縮めることができれば、別の何かに時間を使えるようになります。何千年も前から変わらなかったことを変える、それは人類史の中でも大きな転換期になるんじゃないかと、ワクワクしていますね。」

    加藤:「移動に対する付加価値ではなく、移動しながら何かを生み出すことや、移動をしないが故に生み出された時間を価値にできるような、そんなビジネスができればいいですよね。」

    北川:「そうしたサービスに向けて、スマートドライブが持っている技術と住友商事さんがお持ちのアセットとを組み合わせて何か実現できればいいなと思っています。少しでもお力添えできるよう、私たちも頑張ります。本日はありがとうございました。」

  • 【対談シリーズ】 大手総合商社・住友商事が挑む「MaaS 領域の可能性」 前編

    【対談シリーズ】 大手総合商社・住友商事が挑む「MaaS 領域の可能性」 前編

    みなさんは、最近新聞やニュースで見かけるようになった「MaaS(マース)」という言葉をご存知でしょうか。「MaaS」とはMobility as a Serviceの略で、情報通信技術を活用して交通をクラウド化し、公共交通や運営主体に関係なく移動手段を最適化することをいいます。ライドシェアや自動運転、AI、オープンデータなどを掛け合わせ、あらゆる交通手段をひとつのサービスとして捉えることで、利用者はより快適でシームレスな移動が可能になります。今までとは違う次世代のサービスの台頭は、利用者とサービス提供者のどちらもが自動車業界の転換期に立っていることを示すものかもしれません。

    第2回目の対談シリーズでは、MaaS 領域に積極的に取り組まれている、住友商事株式会社の執行役員で自動車モビリティ事業本部長の加藤真一様をゲストとしてお出迎え。前編では、住友商事がMaaSに取り組む理由からスタートアップ企業とのシナジーについてお話しいただきました。

    ▶︎後編はこちら:大手総合商社・住友商事が挑む、「MaaS 領域の可能性」 後編

    住友商事がMaaS領域に積極的に取り組む理由

    北川:「加藤さんは住友商事に入社されてから現在に至るまで、一貫して車に関する事業に携わってこられたそうですね。

    加藤:「そうですね、住友商事に入社して今年で32年になりますが、そのうち29年間は自動車関係の仕事をしてきました。当初は完成車を中南米で輸出する仕事を担当していて、その延長線上で同地域での自動車工場の買収や販売代理店の設立、部品メーカー同士の技術提携の支援を担当していました。その後、マツダの北米子会社に出向して全米のマーケティングを担当、帰国後は自動車専門のコンサルティングファーム「住商アビーム自動車総合研究所」の立ち上げ、本社で経営企画、マツダ社のメキシコ工場の立ち上げ、ニューヨークオフィスに移って南北アメリカ大陸の自動車・建機・鉄道・船舶・航空機事業のトップをしておりました。」

    北川:「なるほど。近年の自動車業界ではMaaSを筆頭に新たなトレンドが次々と出てきていますが、約30年もの間、車関係に携わってきた加藤さんから見て、ここが大きく変わりつつある、または変わるだろうと感じていることはなんでしょうか。

    加藤:「そもそも、商社の役割とは何かを考えた時に、漢字四文字で例えるとすれば殖産興業ではないかと思っています。言い換えると、経済成長を表すS字カーブ(企業の投資と成長の関係性を表したもの)の中でちょうどカーブが曲がっている部分が私たちのお仕事、つまり企業や産業が生まれるところをお手伝いしています。その部分がさらに曲がり角に来て新たに変化したり、使命を終えて消えていったり、その部分を担うのが商社の仕事です。

    住友商事の事業精神の中に『弛張興廃(しちょうこうはい)』と言う言葉がありますが、これも同じ意味合いです。事業や産業は、弛ませる時もあれば張るべき時もある。それに興す時もあれば廃れる時もある。S字で順調な部分はメーカーさんや専業の会社が得意なのでお任せした方がいいのですが、変わり目の部分については私たちが強みとするところですのでカバーすべきだと考えています。

    MaaSというのは、自動車業界の憲法を改正しようという革命運動です。クルマは買って運転するものじゃなく必要な時に誰かに乗せてもらうものだよと。この革命によって前のインダストリーが終わろうとする節目の部分に差し掛かっているのかもしれません。社内では殖産興業という言葉を噛み砕き、『つくる・変える・やめる』ことが私たちの仕事であるという意識を持つように伝えていますが、MaaS はこの3つのどの部分にも関連しますので、私たちも本業として支えていきたいと思っています。」

    MaaS にはプラットフォーム&トランスフォーメーションで取り組む

    北川:「そういう意味でいうと、弊社(スマートドライブ)のようなスタートアップ企業のアプローチと、御社のようにアセットを持って事業を推進して来た企業のアプローチは、若干ではありますが、似て非なる部分があるのではないでしょうか。では、実際に住友商事が行っているMaaS 領域での取り組みをお伺いできますか?

    加藤:「前述した商社の役割にも関連することですが、私たちができることは新しいことを始めようとする社会に元気を与えたり、リソースを提供したりすることです。私たちは古くて伝統的で、尚且つアセットを持っていて、これを別の表現で言うと、ここまで築き上げてきた確固たるビジネスのプラットフォームを持っているということになります。

    そのため、スタートアップ企業がPoC(Proof of Concept:概念実証を意味し、試作作成後、効果や効用を検証する工程のこと)の場を求めている時に、私たちはn数(サンプル数)がたくさんあって、ダイバーシティな実験場を提供することができます。その実験場を提供しつつ、スタートアップ企業からはスピード感や危機感、テクノロジーなど、私たちが弱いと感じている部分に力を与えていただきたいのです。

    私たちはこれをプラットフォーム&トランスフォーメーションと呼んでいますが、プラットフォームを変えていくことは私たち自身の戦略であり、変えていくための力を与えていただくのがパートナーさんであると考えています。スタートアップ企業が持っているテクノロジーやパッションはトランスフォーメーションのドライビング・フォースになりますので、私どもの成長のためにも力をお借りしたいですし、そのためにも場をうまく活用いただきたいですね。」

    スタートアップ企業と大手企業のシナジー はどう生まれるか

    北川:「スタートアップ企業への投資だけでなく、御社のスタッフを出向いただくなど投資後のバリューアップも積極的にされていらっしゃいますが、スタートアップ企業と大手企業とのシナジーをどう見られていますか?

    加藤:「スタートアップ企業はアイデアやスピード感など、良いものをたくさん持ってらっしゃいますが、飛躍するためのきっかけがなかったり、誰かがリソースを割いたりリスクを取ったりしなくてはならなかったりします。日本国内だと必ずしもエンジェルがいるわけではありませんし、その役割を担うのが商社ではないかと思っているんです。力になれることがあればサポートしたいですし、何かのきっかけにしていただくこと、それが私たちのミッションでもあると考えます。それから私たちのプラットフォームを変えてもらう力を貸していただき、そのあとの三番目にシナジーが生まれればいいのかなと。

    スマートドライブさんには住友三井オートサービス(SMAS)というプラットフォームを変えるためのサポートをしていただいていますが、まったく新しい保険へのアイデアはスマートドライブ社がいなければ出てこなかったものです。是非とも実現させたいですね。
    その他の例を挙げると駐車場シェアサービスを展開しているakippaさんへの投資、業務提携があります。私たちの定義ではモビリティサービスというのはクルマが動いている時にだけお金をいただき停まっている時にはお金をいただかないサービスのことですが、昨日まで動いていても停まっていてもお金をいただいていたオートリース会社が今日からモビリティサービスに移行しようとすると、自動車の稼働率は平均4%だと言われますから96%の収入を失うことになり、ビジネスモデル転換をためらいがちです。一方、駐車場はクルマが停まっている時にだけお金をいただき動いている時にはお金をいただかないビジネスですから、両者を組み合わせると収入喪失に対する不安が解消します。その結果、住友商事が保有するプラットフォーム事業の転換に対する抵抗が減り、駐車場と組み合わせた新たな価値創出が進む。そういう意味では補い合える関係であり、シナジーを生んでいると言えるかもしれません。」

    北川:「スマートドライブが提供しているサービスは基礎的なデータを集めることで、保険やシェアリング、物流など幅広く活用いただくことができる技術です。そうした点でも住友商事のアセットと掛け合わせの相性は良いですし、今後さらに幅広いサービスを生み出せると考えています。

    後編に続く

  • コネクテッドカーでクルマもIT化する時代

    コネクテッドカーでクルマもIT化する時代

    インターネットとスマホの普及により、いろんなモノと情報が繋がる時代になりました。インターネットと繋がることで、あらゆるモノとヒトとが繋がることになり、多くのインフラやサービスが受けられるようになります。

    そうした技術を搭載したスマートグラスやスマートセンサー、スマートウォッチなど様々なウェアラブル製品が販売されるようになりましたが、クルマもインターネットとつながる時代になってきているのです。つながるクルマ・コネクテッドカーは私たちの未来をどのように変えていくのでしょうか?

    そもそもコネクテッドカーって何?

    コネクテッドカーとは、インターネット通信技術を搭載したクルマの総称です。自動車のIoT化が進み、センサーによって周辺環境を察知して外部に伝達するとともに、他の自動車や道路状況などといった外部からの様々な情報サービスを受けることもが可能になり、快適性や安全性の向上が実現されるシステム、及びアプリケーションを指します。車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーから取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値やサービスを生み出すことに期待が寄せられています。

    今まで国内の無線接続といえば、渋滞や交通規制などをカーナビなどの車載器に表示するVICS(Vehicle Information and Communication System: 道路交通情報通信システム)が一般的に知られているかもしれません。コネクテッドカーがVICSと違うのは、インターネットを介して外部とつながっているため、外部から送られてくる一方向の情報だけではなく、双方向において通信ができるという点です。

    コネクテッドカーが注目されている背景

    今まではカーナビやETC車載器といった通信機器が主流だったかもしれません。政策として進められている背景には、以下の3つがあげられています。

    ・無線通信の高速・大容量化により、リアルタイムかつ容量の大きなデータを送受信可能になったこと。
    ・車載情報通信端末の低廉化や同等アプリケーションを搭載したスマートフォン等による代替化が進んでいること。
    ・クラウド・コンピューティングの普及により、データの迅速かつ大容量な生成・流通・蓄積・分析・活用が可能になったため、ビッグデータの流通が大幅に増加してきたこと。

    これらによって、(1)事故の発生時に自動的に緊急通報を行うシステム(2)走行実績に応じて保険料が変動するテレマティクス保険(3)盗難時に車両の位置を追跡するシステムなど、次々とサービスが生まれ、実用化されつつあります。

    (1)緊急通報システム「eCall」
    2018年3月31日から欧州連合(EU)では自動車事故によって失われる人命を減らすことを目的としたeCall(緊急通報)システムの装備が義務化されました。一部の自動車メーカーは、義務化以前からすでにナビゲーションシステムの一部として顧客にeCallを提供していましたが、2018 年3月31日以降は型式認定を受けた新型の乗用車全車に標準装備されます。ドイツ・フランス・イギリスでは、2020年までにコネクテッドカーがほぼ100%になると予想されています。eCallによって、救急隊員は事故現場により迅速かつ正確に到着できるようになるため、毎年約2,500人の命が救われ、重傷者の数も約15%低減するとEUは試算しています。

    (2)テレマティクス保険
    日本でも本格的に普及されつつあるテレマティクス保険。テレマティクスと呼ばれる技術を駆使して自動車や運転のデータを取得・分析した上で、それを元に事故の発生確率を割り出して保険料率を算定するという仕組みです。急発進や急ブレーキの回数、運転時間帯、運転傾向、走行距離など細かな情報を収集し分析して保険料が設定されるため、安全運転への意識向上や事故の防止が期待されています。

    (3)盗難車追跡システム
    盗難車両追跡システムとは、車両の盗難が判明した場合に車両の位置を追跡することができるシステムのこと。例えば、無理なドアのこじ開けなど異常が察知された場合に、アラームでスマホに通知を送ったり、利用者の要望に応じて盗難車両の位置を追跡することができます。

    これらのサービスだけではなく、点検時期を事前に知らせてくれたり、今までの走行履歴から行き先や経路を予測し、事故・渋滞・天候・残燃料の案内をお知らせしてくれたり、ドライバー一人ひとりに対して、安全かつ快適なカーライフを演出してくれるのが次世代のクルマ・コネクテッドカーなのです。

    (4)コネクテッドカー + 別の何か
    上記の例は車自体がコネクテッドになることで提供できるサービスですが、コネクテッド車と何か別のものがコネクテッドになることによって提供されるサービスもこれからはどんどん市場に出てくることが予想されます。

    概念としては以前からある、スマートホームとしての構想もそれです。コネクテッドになった家と車がつながることで、帰宅少し前になると自動でエアコンがついたりお風呂がわいたり、GPSが家族に自動で送られることで突発的な買いものもお願いできたりなど、様々なユースケースが生まれそうです。最近では Amazon Alexa や Google Home などのAIアシスタントもよく話題になりますが、そういったサービスと繋がることでもコネクテッドカーの使われ方の幅はグッと広がりそうです。

    その先には、もっと道路や信号、路上を走るものすべてがコネクテッドになっていく世界がありそうです。

    2020年以降はコネクテッドカーが主流になる?

    矢野経済研究所が2017年に実施した国内のコネクテッドカー関連市場に関する調査では、2016年の国内コネクテッドカー市場規模はB2C市場が712億円、B2B市場は1,850億円、研究開発投資が1,418億円、合計で3,980億円に推計したことがわかりました。

    コネクテッドカーは車両の走行情報をセンサーなどで取得し、クラウド上に収集・解析をするものへと変化しており、新たなサービスの伸長や研究開発への投資で、2020年の国内コネクテッドカー関連市場規模は1兆円規模に拡大すると予測されています。また、コネクテッドカーの増加に加え、プローブ情報を使ったサービスやクラウドADASのサービス等の利用が拡大されていくことから、2025年の市場規模は2兆円規模となるとも予測されているのです。

    さらに世界規模で見ていきましょう。Counterpoint社の調査結果によれば、世界のコネクテッドカー市場は2020年までに270%成長し、接続機能を搭載した出荷予定の乗用車は、2018年から2022年の間に1.25億台に達する見通しです(接続機能を持つ乗用車の出荷台数のため、アクティブな接続数ではありません)。コネクテッドカー市場を出荷台数の面でリードしているのはGM。そこにドイツのBMW、アウディ、メルセデスベンツが続きます。BMWは「コネクテッドドライブ」、アウディは「アウディコネクト」の搭載車を拡大。上位自動車4ブランドを合計すると、2017年のコネクテッドカーの出荷の90%を占めています。日本でもコネクテッドカーが主流になる日は近いかもしれませんね。

  • クルマの所有形態は定額制が常識になる?サードウェーブは「サブスクリプション」

    クルマの所有形態は定額制が常識になる?サードウェーブは「サブスクリプション」

    ちょっと遠出をしたい時や買い物をする時。日常の中で車があれば便利なのにと思う瞬間はいくつもありますよね。

    車を所有していなくても、免許さえあればレンタカーやカーリース、カーシェアなど、必要な時に必要な時間だけ、車を利用できる手段が増えてきました。

    2018年はどんな所有形態のモデルが一般的になっていくのでしょうか?

    購入からレンタルやシェアへ。その背景にある理由とは?

    1999年6月に1リットルあたり91円だったレギュラーガソリンの小売価格。資源エネルギー庁が2018年1月31日に発表した1月29日時点でのレギューラーガソリンの小売価格は、全国平均が144.9円/Lと6週連続の値上がりとなりました。東京都23区では駐車場料金の相場が月々20,000円〜、中央区や港区では50,000円を越えるところも。

    日本国内で車を所有せず借りて済ませる人が増えている原因には、このようなガソリン価格の高騰や駐車場料金の高さ、さらには長引く不況などが考えられます。車を持てば、税金、保険料、駐車場代などのランニングコストもかかるので、週末だけしか利用しないなど使用頻度が低い場合は時間を決めて借りたほうが合理的なのかもしれません。

    2017年に株式会社OKB総研が20代の新入社員を対象に行った「若者のクルマに関する意識調査 2017」では、「レンタカーやカーシェアリングが利用できれば、購入や買い替えをしなくてなくてもいい」と考える層が一定数いることがわかりました。従来あったような「クルマは買うもの」という捉え方がまだ主流である一方で、調査結果からは「レンタカー・カーシェア派」の若者が保有コストや環境負荷に対する意識が高いことも見て取れました。もちろん、地方に行けば車がないと仕事や生活がままならないという状況は現在も変わらずありますので、クルマの利用の仕方が変化してきているのは都市部の人々が中心ではあるでしょう。

    海外では若い世代がクルマを持たずにウーバーやリフトなどのライドサービスを多用していることが自動車メーカーの売り上げに大きく影響しているといいます。メーカー側も新たな車の所有方法を提案すべき時代になりつつあるのかもしれません。
    実際、トヨタ自動車は2018年1月にラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES2018」において、ヒトを主として交通を考える「モビリティ・サービス」に力を入れることを発表し、様々なサービス展開を準備しているようです。
    2018年は、クルマのサービス化がさらに加速する激動の1年になるのではないでしょうか。

    2018年は”第3の”所有形態が広まる?

    国内のレンタカー市場全体の車両保有台数は2013年末の約61万台から2017年末には約80万台に増加、そのうちプレミアムカーは約5,000台から約9,000台へと増えています。クルマのニーズが「所有」から「利用」へと変化しつつあることが数字にも反映されていることがわかります。

    2018年3月22日、トヨタ自動車はレンタカーサービスの対象に高級車ブランド「レクサス」を追加すると発表しました。フラッグシップセダン「LS」などを用意し、様々なニーズに対応する方針です。先ほど紹介した「若者のクルマに関する意識調査 2017」では、若者がクルマに対して抱くイメージの多くが「日常の移動手段」または「自己表現できるもの」だったことからも、若者のニーズとうまくマッチングするのではないでしょうか。

    同社はさらに、米国で3月28日に開幕するニューヨークモーターショー2018で初公開する『UX』の北米仕様車に、レクサス初のサブスクリプションを導入するとしています。サブスクリプションとは、利用期間に応じて料金を支払う方式です。税金やメンテナンス、保険料などの諸費用がすべて込みの料金体系になる場合が多く、レクサスは購入やリースに続く第3の所有形態を提案するとのこと。ダイムラーはカーシェアリング事業「Car2Go」、フォルクスワーゲンは無人タクシー向けEVのコンセプトカー「SEDRIC」など、各企業は利用者個々のニーズに合わせた多種多様なサービスの提供を開始しています。

    2018年はすでに定額制クルマ乗り換えホーダイサービス「NOREL(ノレル)」が提供エリアを全国に拡大したり、1年刻みで新車を保有できるサブスクリプションモデル「カルモ」がサービスを開始するなど、盛り上がりを見せています。

    さらに株式会社スマートドライブでは、毎月定額のコネクテッドカーサービス「SmartDrive Cars(スマートドライブカーズ)」を春からスタート。安全運転によって料金割引やお得なポイントが付与されるちょっとウレシイ特典がついてきます。

    サブスクリプションモデルは毎月の予算計画が立てやすく、利用者は想定外の出費を気にかけることもありません。気分や用途に応じて、車種も豊富で毎月違うクルマを利用することもできるのです。今まであまり一般的でなかったクルマの利用方法が普及していくにつれ、より個人のニーズやライフスタイル、ライフステージなどに合ったクルマとの関わり方が生まれそうです。

    シーンによってクルマを使い分ける時代

    いつ誰とどこに行くのか、その目的に合わせて人々がクルマサービスを選ぶ時代に変わりつつあります。

    「毎月、いろんなクルマを楽しみたい」「クルマのパフォーマンスの違いを体感したい」
    「単身赴任で地方勤務になったから通勤用のクルマを期間限定で使いたい」「今年は家族でたくさんキャンプに行きたいから大型のSUVを使いたい」などなど、今後はますます利用目的や必要な期間に応じたクルマの使い方・選び方が普及して行きそうですね。

  • ざっくりわかるカーリース — 特徴やメリットデメリット、サービス比較まで

    ざっくりわかるカーリース — 特徴やメリットデメリット、サービス比較まで

    近年、クルマの利用方法はどんどん多様化しています。

    現金やマイカーローンを通じて購入するという従来の方法だけでなく、一定期間に渡って保有・利用するカーリースやレンタカー、カーシェアリングなど新しい仕組みが次々と生み出されてきました。

    その中で今回掘り下げて紹介するのは「個人向けのカーリース」です。

    カーリースといえば、どちらかというと法人向けのイメージが強いかもしれませんが、最近では個人向けのサービスも増えてきています。メジャーどころでいくとコスモ石油の「スマートビーグル」、オリックスリースの「いまのりシリーズ」、住友三井オートサービスの「Carsma(カースマ)」などだと思いますが、最近では少し変わった形のサービスもでてきていて、用途や好みに応じて幅広い選択肢の中から選べるようになってきています。

    そこで今回は、個人向けのカーリースについてポイントが一通りわかるようにまとめてみました。カーリースの特徴や仕組み、契約までの流れ。そして特徴的なサービスまでをいくつか紹介します。

    マイカーリースの特徴(メリットとデメリット)

    まずは個人向けカーリースの特徴についてです。自家用車を購入する場合を始め、レンタカーやカーシェアなどと比べたリースのメリット、デメリットなどを解説していきます。

    頭金、ボーナス支払いゼロもOK 。毎月の支払いが一定

    まず、マイカーリースは頭金がなくても契約可能で、毎月の支払額は一定です。これがローンで購入する場合は、「登録諸費用分は現金で」とお願いされるケースもありますし、自動車税、自賠責保険料、自動車重量税、オイル交換などのメンテナンス費用なども別途必要になってくるので、出費がかさんでしまうタイミングもあります。一方で、リースの場合は、これらを含めて定額にしてあるので、突発的な出費に備える必要がないというのがひとつの大きなメリットです。

    逆にリースのデメリットとして「ローンで購入する場合に比べてリースは高いよ」という声をよく耳にします。確かに月額費用では高くなることもありますが、ただカーリースでは、上述のように盛り込み済みの費用があるので、最終的な支払総額には大差がなくなります。

    また、重要なこととして、そもそもお金に換算できない部分(各種料金の支払いの面倒くささや多額の支払いに備えておかないといけないという精神的な負担など)もあるでしょう。「春になったら自動車税の支払い準備」「車検の時期がきたら車検代の用意」などいちいち考えなくても良いのがリースの特徴であり、車検やメンテナンスのスケジューリングもお任せできます。

    クルマに関する基本的な費用を毎月一定にし、かつ省くことができる手間は極力省く。これが最大の特徴と言えるかもしれません。

    車検?税金?オイル交換?クルマに詳しくなくても安心

    たとえばコスモ石油のスマートビーグルなら、定期点検もコスモのサービスステーションで定期的に実施してくれます。いつも行くガソリンスタンドでスタッフが点検してくれるため、安心なうえに自分の負担が減って楽です。

    このあたりはリース会社によって「消耗品をリース料に含むものと含まないもの」があるので事前に確認しておくことが必要ですが、車にはあまり詳しくないという方でも使いやすい点も、リースが支持される大きな理由です。

    走行距離は1500km/月を目安

    マイカーリースを検討する際に押さえておくべきこと、それを「走行距離に制限」があるということです。

    オリックスリースの場合、リース期間の短い「いまのりくん」で2000km/月の制限があります。これがスマートビーグルだと1500km/月までです。1500km/月というのは、年間で18000km、5年で90000km。

    通勤距離がよほど遠いわけでなければ、ここまでの距離を走ることはそこまで多くないでしょう。

    それでも、もし月の走行距離を超えそうなのであれば、マイカーリースはあまりおススメできません。規定の距離をオーバーすると距離に応じた違約金などが発生する可能性があります(※詳しくは各運営会社に確認してください)。その際は走行距離の制限がないマイカーローンでの契約、もしくは走行距離が長いカーリースサービスを探してみてください。

    また近年注目をされている「残価設定型ローン」も、走行距離が多いと違約金が発生するようです。残価設定型ローンの場合の多くは1000km/月となるので注意が必要です。

    契約期間に注意、マイカーリースは解約不可

    マイカーリースは基本的に期間途中で解約したり、変更したりすることができません。

    支払いに余裕ができたからといっても一括で返済することや、ボーナスが期待できるからボーナス払いを期間中に設定することも…難しいです。厳密には違約金を払えば解約できますが、その場合割高になってしまうためおすすめできない、ということです(残りのリース期間に支払うリース料に相当する違約金が発生します)。

    こちらも柔軟に契約を変更できることを重視したいのであれば、契約途中での支払方法の変更ができるマイカーローンのほうが向いているでしょう。また、今クルマが必要であるものの直近で急に不要になる可能性もある、というような不確かな状況下においても、途中解約の違約金を考慮すると、購入というオプションの方が良いかもしれません。(クルマが不要になっても売却すれば良いで)

    車種やグレードにこだわりがなく、中長期でクルマを使いたい場合には、「格安レンタカーの長期利用」という選択肢もあります。レンタルの場合、途中で返却しても支払ったレンタル料は戻ってきませんが、違約金もありません。大手レンタカーだけではなく、中古車を利用した格安レンタカーも全国的に多くなってきています。24時間、1週間、1ヶ月のように期間も柔軟に選べます。

    盗難・事故には十分に注意

    マイカーリース契約中に盗難に遭ったり、事故によりクルマが使えなくなった場合には、解約同様に違約金が発生します。自動車保険(任意保険)には必ず加入し、車両保険もカバーしておくことが大切です。
    ※任意の自動車保険は、クルマ購入の場合もリースの場合も別途加入が必要。

    ネットで申し込み可能なダイレクト型自動車保険が手頃ですが、保険に関する知識が少ない場合には、マイカーリース契約先に相談してみるとアドバイスしてもらえます。オプションで保険もまとめてリース料に組み込むサービスもあるので、多少金額が高くなっても自分の負担を減らしたいという方は検討してみてください。

    ノーマルの状態で乗るのが条件、改造は不可

    マイカーリースは、クルマが手元に来たときの状態を維持することが大切です。自分の好みに合わせてカスタマイズしたい方は購入するのが無難でしょう。

    アルミホイールを購入してドレスアップしたい場合は問題ありません。その際に外したタイヤとホイールを返却時まで保管しておけば大丈夫です。一方で、ローダウンサスペンションの取り付けや車高調整キットの取り付けはおススメできません。ノーマルパーツを保管し、返却時に戻してもアライメントの調整などが必要になります。社外エアロパーツの取り付けもできません。車体に穴をあけて取り付けることで減点の対象になります。

    カーナビゲーションシステムについては、オプションで選べる場合が一般的。リース料金がプラスになることが多く、年単位で見ていくと購入費用と同じような金額に落ちつきます。また、ナビ無しでリースし、好みのナビを購入して取り付けることも可能ですが、所定のナビ取り付け位置(DIN規格枠)に取り付けるとともに、返却時には取り外すことが必要になります。ダッシュボードに強力な両面テープで固定したり、ビス止めしてしまうと減点の対象になりますので注意してください。

    保管場所は必ず必要(車庫証明)

    マイカーリースは通常のクルマの購入と同様、保管場所証明書(車庫証明)が必要です。

    戸建住宅は問題ありませんが、アパートやマンションでは、家賃の他に追加で駐車場利用料が必要になります。アパートやマンションに駐車場空きが無い場合には、直線距離で2km以内に駐車場を探して契約しなければなりません。この点がネックになるので「カーシェアを選ぶ」という方もいます。

    クルマが毎日必ず必要でない場合には、クルマのリース料の他に駐車料金も上乗せになり負担が増加します。都心部を中心に、マンション内や近くのコインパーキングに「カーシェアリング」のステーションがあればカーシェア利用も検討してみるといいでしょう。

    利用料金に自動車保険も含まれ、保管場所の心配もいりません。燃料も含まれているケースが多く、当然メンテナンスも不要です。ただし利用時間を守るとこと、同じ場所に返却することが一般的な条件です。最近では個人間のカーシェアもありますので、大手のカーシェア事業者のサービスでは利用できないような変わった車種を利用することもできたりします。

    各社のマイカーリースサービス特徴を紹介

    ここからは実際にカーリースを検討している方向けに、特徴的なサービスを紹介していきます。

    コスモ石油「スマートビーグル」

    コスモ石油 スマートビーグル
    出典 : コスモ石油 スマートビーグル

    スマートビークルは全国のコスモ石油のガソリンスタンドでサービスを受けることができ、マイカーリース取扱店で契約可能。コスモザカードの利用でガソリンの割引も受けられますし、国家資格を持つ整備士によるメンテナンスサービスがあるのも特徴です。

    契約プランは60か月と84か月。サービスパックはゴールド、シルバー、ホワイトの3つのプランが選べます。またインターネットにはありませんが、36か月から契約することも可能です。

    各プランの違いについても簡単にだけ紹介しておきます。

    ホワイトプランは車両代金と登録時の諸費用、期間中の自動車税のみのプラン。オイル交換などの消耗品交換、車検整備料金、継続車検時に必要な自賠責保険や重量税は含まれません。リース料金最優先のプランです。

    ホワイトプランの場合は、通常マイカーローンとサービスの違いが少なくリースならではのメリットが少なくなります。コスモザカードで給油する際のガソリン割引は1Lあたり1円引きです。

    シルバープランはホワイトプランに期間中の自賠責保険や重量税、車検整備料金、定期点検料金、オイル交換などを加えた、通常クルマを維持するために必要な費用一通りカバーしたプランです。

    コスモザカードで給油した際のガソリン割引は1Lあたり3円引きです。

    ゴールドプランはシルバープランにタイヤ交換、バッテリー交換、ワイパーゴム交換等各種消耗品の交換に延長保証とロードメンテナンスが付いた手厚いプランです。コスモザカードで給油する際のガソリン割引は1Lあたり5円引きです。

    オリックスリース「いまのりシリーズ」の特徴

    オリックスリース いまのりシリーズ
    出典 : オリックスリース いまのりシリーズ

    オリックスリースの「いまのり」シリーズは5年リースの「いまのりくん」、7年リースの「いまのりセブン」、9年リースの「いまのりナイン」があります。

    いずれもリース期間中の税金関係や自賠責保険などの諸費用は全て含まれます。オイル交換はオイルクーポン、車検整備は車検整備クーポンで実施されるので余計な維持コストがかかりません。タイヤ交換、バッテリー交換や定期点検費用はリース料金に含まれないため注意が必要です。

    オリックスリースの店舗の他、インターネットを利用して審査申込み、郵送での契約書のやりとりが可能です。

    いまのりくんは2年たったら乗り換え・返却が自由。5年後は返却になります。

    いまのりセブンは5年たったら乗り換え・返却が自由。7年後は自分のクルマにすることができます。

    いまのりナインは、7年たったら乗り換え・返却が自由。9年後は自分のクルマにすることができます。9年の長期リースが可能で、月々の支払をもっとも抑えることができるのはオリックスリースの特徴です。

    新しいクルマを短期間で乗り換えたいユーザーはいまのりくんがおススメ。2年たったら乗り換えできるため、2年毎に新車に乗れます。

    住友三井オートサービス「カースマシリーズ」の特徴

    住友三井オートサービス カースマシリーズ
    出典 : 住友三井オートサービス カースマシリーズ

    住友三井オートサービスの「カースマ」シリーズは、楽天市場やアマゾンからも申し込めます。

    リース期間は「カースマ5」の5年リースと「カースマ7」の7年リースの2種類。3年リースや9年リースはありません。実際楽天市場内ではおすすめとする7年リースの取扱いがメインなので、7年リース希望の際に検討に入れることをおススメします。

    カースマシリーズの特徴は、毎月の距離制限がないこと。リース契約満了後に距離による違約金がないのが最大の特徴です。つまり、リース料7年分で車両代金相当は支払完了しているということです。

    契約可能な車種及びグレードは人気グレードに限られています。希望の車種及びグレードが無い場合には、住友三井オートサービスに問い合わせすればリースできる場合もあるようです。

    メンテナンスに関しては、オリックスリースいまのりシリーズと同等のサービスです。期間中の税金や諸費用はもちろん、エンジンオイル交換や車検整備費用、ブレーキオイル交換費用が含まれています。バッテリーやタイヤ交換、ワイパーゴムの消耗品についてはユーザー負担になります。

     

    オリコオートリース「ユーカリプラン」の特徴

    オリコオートリース ユーカリプラン
    出典 : オリコオートリース ユーカリプラン

    オリコオートリースの「ユーカリプラン」は、オリコオートリースが運営する代理店会グループです。全国各地の民間自動車販売店が代理店になっています。申込みや契約は各代理店に直接来店して行うスタイルです。

    ユーカリプランには、5年と7年リースの2種類あり、国産全車種契約可能です。代理店によって取り扱い車種が異なる場合があるので、一度近くの代理店に相談してみましょう。5年未満の短期リースはありません。

    期間中の、税金や諸費用はもちろん、エンジンオイル交換や車検整備費用、ブレーキオイル交換費用が含まれています。バッテリーやタイヤ交換、ワイパーゴムの消耗品についてはユーザー負担になります。

    マイカーリースの仕組みと流れ

    実際にカーリースを利用する際の流れについても簡単に触れておきます。

    ①見積から審査

    マイカーリースの見積から審査・契約まではインターネットを使いオンライン上で進めることができます。

    希望の車種を選択しボティカラー、必要なオプションを選択し見積を作成。所定の入力項目を入力すればオンラインで審査を行うことが可能です。少しでも不安な点があれば、実際の店舗が近くにあればスタッフと対面で商談し十分納得の上契約するといいでしょう。

    ②内容確認の連絡

    マイカーリースの審査が問題なく通過した場合には、申込みの内容と実際の要望と相違ないかの確認のため、リース会社から確認の電話連絡があります。少しでも不明な点がある場合には、このタイミングで確認しておくことが大切です。

    ③契約手続き

    リース会社からの電話確認後に、契約書が郵送されてきます。契約書が届きましたら、署名・捺印の上、返送します。契約書が返送されリース会社に到着した時点で、リース会社はメーカーディーラーへの発注を行います。

    契約書返送後は、契約の解除・変更はできないので十分に注意してください。

    マイカーリースはマイカーとして長期間使用するクルマです。新車販売ディーラーで展示車を確認したり、試乗車で実際に運転したりして、性能をあらかじめ確認しておくのがおススメ。

    リース契約のみならず、残価設定型ローンも同じですが契約走行キロ数をしっかり確認しておきましょう。契約時の予定走行キロ数をオーバーした場合、1km×所定の違約金が請求されます。

    審査にかかる時間と審査基準

    マイカーリースの審査はマイカーローンの審査や残価設定ローンの審査基準と違いはありません。「リースだから審査が甘い」ということはありません。

    基本的な個人情報が審査の対象で、住所、職業、年齢、年収が審査されます。専業主婦や学生で収入が無い場合、未成年の場合などは、一定収入のある連帯保証人を立てることにより審査を通すことができます。

    つまり一定の収入があるか、支払に余裕があるか、家賃に多くの支払いが無いか、連絡がしっかりとれる状況かといった項目が審査の基準になるということです。

    【注意】審査が通りにくくなる原因

    • 過去にクレジットカードによる買い物で支払いが遅れたことがある。
    • 他のマイカーローンで支払が遅れたことがある。
    • 多額のローンが現在ある。または多額のキャンシング利用を行っている。

    これはリースに限った話ではありませんが、あてはまる場合には審査に通りにくくなります。特にカードでのキャッシングの利用は注意しましょう。

    また転職直後など、正社員でも勤続1年未満の場合は通りにくくなります。

    大抵の審査はCIC(クレジットインフォメーションセンター)に保存されているデータをもとに行なわれます。手数料が1,000円かかりますが、自分の個人情報を照会することも可能です。不安な方はアクセスしてみると良いでしょう。

    信用情報機関のデータには保管期限があります。保管期限は5年です。10年前に支払に滞りがあった場合は問題ありません。

    自分の好みに合わせて、最適な選択肢を

    今回は特徴的なサービスを5つほどピックアップして紹介しましたが、他にもカーリースサービスに多数存在します(地域特化型のものも多いので、在住地域でどのようなサービスがあるのか探してみるといいかもしれません)。

    安さが売りのもの、短期間から契約できるもの、メンテナンスや手厚いサービスが特徴のもの、安全運転をすれば特典が得られるものなどそれぞれ特徴が異なります。それぞれのサービスを見比べた上で、1番自分にあったものを見つけてみてください。

  • ドラレコと車両・動態管理システム、それぞれの特徴と違い

    ドラレコと車両・動態管理システム、それぞれの特徴と違い

    「社用車の事故を減らしたいのだけれど、ドライブレコーダーと車両管理・動態管理システムでは何がどう違うのか? どちらを使うのがいいのか?」

    これは社用車を保有する会社で総務を担当している方にとっては、よくある悩みかもしれません。一般ユーザー(個人)であれば基本的に安全管理したい車両は自分が普段乗る車一台(マイカー)というケースがほとんどでしょうから、交通事故対策としてドライブレコーダーを利用する人が多いでしょう。一方で、法人は事業規模によって数台〜数十万台という規模で車両を抱えているため、それらを管理するには様々な方法やシステムを活用することになります。

    また、法人向けのサービスには、「車両管理」や「動態管理」という名称の管理システムが普及していますが、それぞれの違いや役割がわかりにくいのも実情です。当サイトSmartDrive Magazineを運営するスマートドライブでも、「SmartDrive Fleet」というクラウド車両管理サービスを提供していますが、やはり同様の質問をいただくことがあります。

    そこで今回は、ドライブレコーダーと車両管理・動態管理システムそれぞれの特徴と役割について解説していきます。

    ドライブレコーダーと車両管理(動態管理)システムの違い

    多くの企業でこれらの機器・システムに期待する大きな役割が「交通事故の削減」ではないでしょうか。事故が発生するともちろん車の修理費用がかかりますし、保険料の高騰の原因になります。また、対人事故の場合には保険でカバーできる範囲以外でお見舞いに通ったりするようなコスト、そして社会的信用の毀損にもつながるなど、金銭以外の多大なコストが発生します。場合にはよっては事業継続が危うくなるような状況に陥る可能性もあるでしょう。

    この「交通事故」を例にとって考えると、ドライブレコーダーと車両管理・動態管理システムの違いがわかりやすいかもしれません。交通事故を未然に防ぐためのものが車両管理・動態管理システム、交通事故が起こってしまった後に活躍するのがドライブレコーダー、という分け方です。最近では安全運転診断機能を備えたドライブレコーダーも登場しているためややこしい部分もありますが、本来的な枠割としてはそういうことではないかと思います。

    車両管理、動態管理システムの役割

    車両管理、動態管理システムの大きな目的のひとつが「いかに交通事故を起こさせないか」ということです。

    もちろんクラウド上で営業車の位置をリアルタイムで把握して配送ルートを最適化したり、所有する社用車の状態を効率的に管理するという機能もあります。ただ交通事故の削減に対する企業担当者のニーズは高く、弊社のSmartDrive Fleetを含め「安全運転の促進/事故の抑制」を実現する機能に力を入れているシステムも多いです。

    以前SmartDrive Magazineでは交通事故の原因についての統計データを紹介しました。これによると交通事故の原因の約75%を安全運転義務違反と言われるものが占めています。特に多いのが安全不確認による事故で、次いで脇見運転、動静不注視と続きます。

    つまり交通事故を減らすためには、安全運転義務違反につながる危険な運転を減らすことが必要です。

    詳しくは後述しますが、ドライブレコーダーの場合はその名の通り、事故発生の前後の記録を残すというのが最大の目的です。そもそも事故を起こさないためには、それよりも前の段階で何らかの対処をする必要があります。それこそが車両管理システム・動態管理システムに求められる役割です。

    データを基に運転結果をスコアリングする安全運転診断機能

    交通事故の削減に直接関わる機能としては、一部の車両管理・動態管理システムに搭載されている「安全運転診断機能」があげられます。細かい機能は製品ごとに異なりますが、ポイントはこれまで見えづらかった運転の傾向などを細かく取得し、スコア化したりグラフ化して可視化させることにあります。

    たとえばSmartDrive Fleetを例に紹介すると、車に差し込んだ小型デバイスで各ドライバーの走行データがクラウドに蓄積。従来は管理者からはわからなかったような「ドライバーごとの運転のクセ」や「事故リスク」を全てスコアとして可視化します。学校のテスト結果のようなものをイメージしてもらうと、わかりやすいかもしれません。

    危険運転につながるポイントが具体的に特定できるため管理者も指導がしやすく、ドライバーも改善点をつかみやすいのが大きな特徴です。また、運転の特徴が時間を追って改善していったのかどうかなどもしっかり追うことができるので、その場だけの指導に終わってしまわないような仕組みになっています。そのため、ドライバー自身も認識していなかった運転リスクも認識し、事故対処できる可能性があります。

    以前は各ドライバーの運転データを個別に取得し、それを集約したデータをWeb上で管理者が閲覧したり解析したりするためには大規模なシステム構築が必要でした。ただ近年はIoTというキーワードがよく使われるように、センサーや通信技術に発達と普及により、低コストで様々なモノのデータをクラウドに上げられるようになりました。そういった流れで、自社またはSIerに依頼し莫大な開発コストをかけてシステム構築したりせずとも、クラウドで車両管理・動態管理が提供されるようになったわけです。

    ドライブレコーダーの役割

    すでに上述しましたが、ドライブレコーダーが真価を発揮するのは交通事故が発生した後です。万が一事故が起こってしまった際に正当な過失割合を出してもらうための大切な証拠となります。

    もちろん設置しておくことで緊張感を持って運転するようになり、危険運転を抑制する効果もあるかもしれません。最近では、車線をはみ出すとアラート音が出る車線逸脱警告、急加速や急ブレーキを知らせてくれたりする機能、前方の車と車間距離が近づきすぎると衝突を警告するアラートが鳴るなどの安全運転支援機能を搭載したドライブレコーダーも登場しています。

    ただし、ドライブレコーダーについているそれらは、あくまでもオプション機能という色が強く、その領域が本来の強みではありません。ドライブレコーダーとして最も活躍して欲しい領域は、例えば悪天候や夜間であってもクリアな映像を録画できる、前(後ろ)の車のナンバーまでしっかり判別できる解像度、そして前後だけでなく横からの衝突やカージャックなどの現場も録画してくれたりなど、それこそ360度からの危険を察知して録画して瞬時にスマホや保険会社などしかるべき送信先にリアルタイムに送ってくれることではないでしょうか。

    最近では安価で手頃なドライブレコーダーも増え普及が加速していますが、一方で機能向上の余地もまだまだありそうですね。

    どちらかひとつで完璧、ということはない

    要点をまとめると「交通事故」を軸に考えた場合、2つのシステムの特徴と違いは以下のようになります。

    • 交通事故の前に活躍する(事故の原因となりうる兆候を特定し、なくす)のが車両管理・動態管理システム
    • 交通事故の後に活躍する(事故前後の記録を残し、不利な扱いを受けないようにする)のがドライブレコーダー

    つまるところ、ドライブレコーダーと車両管理・動態管理システムのそれぞれの本来の性質を考えると、安全管理に関しては両方使うのがベストなのではないかというのがひとつの提案です。もちろん、どちらか一方で十分という考え方もあるでしょうし、金銭的コストから両方は難しいという事情もあるかもしれません。

    上述のように、交通事故には金銭的な負担が増えるだけではなく、社会的信用のリスクもあるということをしっかりふまえつつ、サステナブルな事業展開がしていくことができるような安全管理をしていくことが大切なのではないでしょうか。

  • 次々とイノベーションを生むハイテク国家イスラエル

    次々とイノベーションを生むハイテク国家イスラエル

    1948年の独立からおよそ70年で産業を大きく成長させ、近年ではITやテクノロジー、医薬品の分野で目覚ましい発展を遂げている国、イスラエル。

    最近ではインテルやマイクロソフト、グーグルなど、誰もが知っている大企業が支社や研究室を置き、日々新たな技術が研究されています。メディアによって耳に入る政治や国際情勢の情報からは少しネガティブなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、成長著しいハイテク国家として躍進しているのです。

    イスラエルってどんな国?

    中東のパレスチナに位置する国家、イスラエル。地中海に面しているこの国は、聖書の舞台となっているエルサレムが首都です。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、様々な宗教が混在し、面積は2.2万㎢と日本でいうと四国ぐらいの広さ。人口は約868万人(2017年5月)と小国ながら、一人当たりのスタートアップ設立数は世界一に輝くほど急速な発展を遂げているのです。

    国内では起業家やベンチャー企業を支援・育成する制度が充実しており、海外からのイスラエルの優良企業に対する直接投資や買収も多く、世界各国から投資される国として注目されています。

    2000年9月に発生した第2次インティファーダや米国経済の減速の影響により経済は停滞していましたが、2003年以降は自国通貨の対ドル・レート低位安定等を背景とした競争力の向上やイラク戦争終結によるビジネス環境の改善などにより、ハイテク・IT分野を中心に輸出が好調を見せます。そこで2007年には建国以来初の4年連続5%超の成長を記録。米国の金融不安等に端を発する世界経済減速の影響等により経済成長率が一時的に落ち込んだものの、2009年下半期にはいち早く成長路線に復帰しました。以降、10年5.0%、11年4.6%、12年3.4%、13年3.3%、14年2.6%、15年2.5%、16年4.0%と、毎年プラスを見せています。

    高度な技術力を背景としたハイテク・IT分野、ダイヤモンド産業を中心に著しい経済成長を続けるイスラエル。ダイヤモンドの輸出は非常に多く、宝飾品として世界で使用されている80%がイスラエル製であると言われています。これまでは死海周辺で産出される臭素等を除きエネルギー・鉱物資源には恵まれていませんでしたが、近年は排他的経済水域内において大規模な天然ガス田の開発が進められ、2013年には一部で生産が開始されています。

    日本とは違い、雨が少なく水資源が限られていますが、その中でも独自のバイオテクノロジーやコンピューター制御によるイリゲーションシステム(灌漑設備)を開発してきました。そのため砂漠の中にも酪農場や豊かな農場があり、なんと農作物自給率は93%にも上ります。

    農業からテクノロジーまで、短い期間でここまで大きな発展を遂げていたということ、初めて知った方も多いのではないでしょうか。

    独自の技術で発展したイスラエル

    テクノロジーやITの成長以前に、イスラエルの景気を拡大させた要因としてまずあげられるのが灌漑施設における技術革新でしょう。

    イスラエルの水理技術者シムハ・ブラスが点滴潅水の原理を偶然発見したことをきっかけに、ネゲヴ砂漠の小さな農業集団であるキブツ・ハツェリの高い製造技術と農業知識に支えられ、その分野では世界でも初めての生産施設が開設されました。そこからオリジナルモデルの改良を重ね、点滴潅水技術が急速に世界中に広まります。その結果として、低コストでの海水の淡水化に成功し、2012年には世界最大規模の淡水化施設が開設され、現在では国内全水消費量の約4割が淡水化された水によって賄われていると言われています。

    このネタフィムの点滴灌漑からイスラエルは独自の農業技術の発展を遂げ、年間降水量が700ミリ以下であっても、高い食料自給率が得られているのです。

    自国の自然環境要因と隣国との緊張関係に挟まれる中、自給率を保持しなくてはならないイスラエル。国の発展とハイテクな農業を実現するために大きな源となっているのが数々のスタートアップ企業です。2015年は農業テクノロジー(以下、アグリテック)への総投資額は46億とされていますが、イスラエルは5億5,000ドルもの投資を獲得しました。

    決して天候や土地の条件が良いとは言えないイスラエルですが、クラウドベースの農業システムやアプリなど、ITの力によって無理無駄なく“効率の良い”農業を行なっています。

    1998年に創業した農業ベンチャーのPhytechは、作物への給水量や給水時期といった水の管理を最適化する「意思決定支援ツール」を開発。これはアプリでは機器を介して作物のストレスレベルを確認でき、収穫量の最大化を狙うもの。サービスのフルパッケージには、作物に取り付けるセンサーから分析用クラウドシステムまでのすべてが含まれており、同社は環境を物ともせずに独自のIoP(インターネット・オブ・プラント)を構築しているのです。

    イスラエルには1912年に設立されたイスラエル最古の国立技術大学、テクニオン・イスラエル工科大学があります。マサチューセッツ工科大学にも引けを取らない世界最高峰の大学で、世界の名だたるIT企業が人材を囲い込むほど、優秀な学生が集まっています。ここでは少なくとも1度は起業を経験する卒業生が約68%もいるそう。また、イスラエルでは市民の多数が大学進学前に軍隊に参加しますが、軍隊においてテクノロジーの教育を受けることも多いといいます。

    また、小学校の段階から全ての国民にプログラミング教育を義務付けているようで、特に優秀な理工系の学生が国から選抜されて入隊する8200部隊と呼ばれる軍の研究開発部門に配属され、最先端の軍事技術の中核を担っています。軍事技術の民間転用を促進していることから、8200部隊出身者を始めとして多くの若者が起業し、スタートアップ大国の隆盛を担っているのです。

    このように、起業家精神とテクノロジーの教育を受ける環境が整っているため、高い技術力を持つ優秀な人材やスタートアップ企業を続々と輩出できるのでしょう。

    Startup Genomeが発表した世界トップクラスのスタートアップ・エコシステムに関する報告書の前半部において、スタートアップ・エコシステムを生み出した世界のトップ20の都市をランキングしたところ、1位のシリコンバレーに次いでイスラエルのテルアビブが2位にランクイン。

    テルアビブをグローバルなスタートアップ都市にすることを目的とした団体Tel Aviv Globalは、ベルリンやロンドン、パリ、ニューヨークなどの都市との起業家同士の交流を積極的に行い、グローバルなコラボレーションが生まれる機会を促進しています。また、2015年10月に「イノベーションビザ」というプログラムがスタートし、選出されたスタートアップ企業を対象に外国人の従業員に2年間のビザを与えることとしました。

    シリコンバレーに負けない、優秀なスタートアップが揃う国

    ニューヨーク市をシリコンバレー級のIT集積地にするプロジェクトが進められ、市が世界中の名門大学のIT研究施設を誘致するなか、テクニオン・イスラエル工科大学と米東部名門のコーネル大学の共同提案が採用されるなど、国を超えたイノベーションを生み出そうとしているイスラエル。そして、世界の大企業が優秀なスタートアップ企業に注目し、買収する。そしてまた新たなスタートアップが立ち上がる。イスラエルは独自のサイクルを繰り返しながら着実に成長する土台を築いてきました。

    グーグルのサジェスト機能など、世界で知られている先端技術の中にはイスラエル発のものが数多くあります。Intel社は1974年からR&D拠点をイスラエルに設置し、同社がこれまでこの世に送り出してきた最先端技術の数々にはイスラエル人科学者及びエンジニアの存在が不可欠であったと言われていますし、Microsoftも2006年に、Appleも2013年の最初にR&D拠点を設置しており、ここで活躍することになる約150名の従業員の大半は、数週間以前にレイオフされたTexas Instrument社(米国大手の半導体開発・製作企業)イスラエル支部の元技術者たちでした。

    さらに力を入れているのがサイバーセキュリティの分野です。
    イスラエルは世界有数のサイバーセキュリティの先進国で、サイバーセキュリティ産業は同国にとっても重要な輸出産業になっています。2017年5月、日本の世耕経済産業大臣がイスラエルを訪問してコーヘン経済相と政策対話を行いました。そこでサイバー攻撃対策をはじめとする産業分野のサイバーセキュリティ強化や技術革新分野で日本とイスラエルの協力を推進していくことを合意。

    イスラエルではセキュリティの専門家や技術者がサイバー犯罪、オンライン不正行為の防止と検知、スパイ行為の阻止、ダークネット対策、教育プログラム(サイバーレンジ)、重要インフラ施設の保護までを網羅し、解決しています。先述したように、軍での実践的なサイバー防衛の経験による技術力、国家や大学の支援による人材育成、スタートアップの支援などがサイバーセキュリティ技術向上を押し上げているようです。イスラエルはこの分野においても数千万ドルという巨額の資金調達に成功し、サイバーセキュリティ市場での活気を見せています。

    イスラエルの注目交通関連サービス

    イスラエルのインターネット普及率は年々伸び続け2015年ではおよそ79%、スマホの普及率は2013年の時点で世界12位の56.6%。日本はこの時点では41位で24%弱でした。

    注目すべきイスラエルのスタートアップ企業をいくつかご紹介しましょう。

    La‘zoozはイスラエルで2013年に設立した仮想通貨を利用した「分散型交通プラットフォーム」。
    同社はブロックチェーンを利用した仮想通貨を用いて、乗用車の空席を売買するライドシェアリングプラットフォームを用意し、分散型で仲介者が入らずともP2Pで取引が成立できるようなシェアリングエコノミーの基盤の構築を目指しています。

    La’zoozはすでに走っている車の空席を埋め、稼働する車の台数を減らすことで車や道路への投資を減らし、交通問題を緩和するという大きな目標を掲げているため、ドライバーとして「稼ぐ」ことを推奨しているUberとはこの点が少し違うといえるでしょう。乗車記録、評判、支払い記録などをブロックチェーンに記録し、到着確認や評判の投稿などある条件でスマートコントラクトによる自動的に支払いが行われるため、現在利用されているライドシェアサービスと比べて仲介料をぐっと押さえられると考えられます。

    イスラエルのテルアビブに本拠を置くGett(以下、ゲット社)は、もともとGetTaxi社を名乗りサービスを展開していましたが、現在は配車アプリサービスとして急成長し、配車アプリサービス最大手のUBERに引けを取らないぐらい拡大を続けています。

    ゲットはイスラエル、英国、ロシアを中心とした100都市以上で事業を展開中。2016年5月にはフォルクスワーゲングループから3億ドル(およそ330億円)の出資を受け話題を呼びました。フォルクスワーゲングループはゲット社と協力し、欧州におけるオンデマンドのモビリティサービスを提供していく方針だと話しています。

    また、ゲット社は2017年5月にメッセージアプリバイバーの元CEOが運営していた同サービスのJuno(ジュノー)を2億で買収。この買収によって米国のライドシェア市場を強化し、UBERやリフトなどと競合を目指すと発表しています。

     

    V2X(Vehicle to Everything:車間・路車間通信)の通信チップセット開発の先駆けAutotalks(オートトークス)は、自動車同士の高速通信技術を開発し、最先端のV2Xソリューションを顧客に提供している企業。製品スペック上、1秒間に2,000台以上の車とセキュアな迅速な通信が可能。つまり、急ブレーキをかけるクルマや赤信号を無視しそうなクルマなど、危険な存在を検出して衝突事故の減少に貢献するというもの。

    2017年6月にはコネクテッドカーと自動運転車のための通信ソリューション開発強化を目的に、未来創生ファンドが同社への出資を発表しました。同社の先端技術は2019年から大量生産される予定です。

    この機能を最大に活かすには、すべての車両に同様の機能を持つ技術が備わっていなければ情報を読み取ることができません。米国では長期的なメリットを見込んだ米国家道路交通安全局(NHTSA)がすべての新車にV2V通信システムの搭載を義務づける規則の導入を検討しているそう。今後、自動運転車が普及するためにも、また、事故をなくすためにも全世界で広まって行くかもしれませんね。

    イノベーションを起こし続ける

    世界経済フォーラム(WEF)の国際競争力ランキン グで「イノベーション」部門では5位の日本よりも上位の4位であったイスラエル。

    「国土が狭い」「人口が少ない」「国内市場の規模が小さい」

    このような逆境をものともせず、イノベーションを成長の源泉としてハイテク技術に注力した国づくりを積極的に進めています。毎 年 10億ドルを超える水準で推移しているイスラエルのハイテク企業への投資額を見ても、世界的に注目されていることがわかるのではないでしょうか。今後はイスラエル発で日本でも広く使われるようなサービスが出てくるのか、日本のテクノロジー企業とどう影響し合っていくのかなど、日本の成長やイノベーションへのインパクトにも注目したいですね。

  • 車の「所有から利用へ」が加速?トヨタがカーシェア事業用アプリの実証実験

    車の「所有から利用へ」が加速?トヨタがカーシェア事業用アプリの実証実験

    車は常に「所有」するのではなく、使いたい時に使いたいだけ「利用」する。

    このような車に対する考え方の変化がここ数年徐々に起きてきているように思います。Uberをはじめとする配車アプリの登場はその1つですが、他にもカーシェアやカーリースなど様々な選択肢が増えてきました。最近では月額制の動画や音楽配信サービスが一般的になりましたが、月額制の車版のようなサービスも出てきています。

    そしてこのような流れは新興企業だけでなく、大手自動車メーカーにも影響を与えているといえるでしょう。8月にトヨタがハワイでカーシェア事業用アプリの実証実験を開始することを発表しました。

    トヨタの取り組みは、今後私たちのカーライフにどのような影響を与えるのでしょうか。

    カーシェアサービスの現状

    カーシェアはその名の通り、車を複数のユーザーでシェアするというサービスです。 タイムズカープラスのように事業者が保有する車をシェアする事業者型(B2C)と、Anycaのように個人が持っている車を空き時間にシェアするという個人間型(C2C)の2タイプがあります。

    タイムズカープラス
    出典 : タイムズカープラス

    2017年現在ではタイムズのほか、オリックスなどリースやレンタカー事業を手がける事業者を中心にしたB2Cのカーシェアサービスが多いです。ただスマホやSNSの普及などにともない、C2C型のサービスも立ち上がってきています。

    自動車メーカーもこうした動きには無縁ではありません。トヨタが2012年5月に一部のトヨタレンタリース地域会社を通して、ガソリン代も含む利用料金が1時間1,000円と格安な「ラクモ」というカーシェアサービスを展開しています。

    しかし既存のレンタカーと競合する事業ということもあってか、ラクモは現在でも全国展開までは至っていません。ホンダでもディーラーが「Honda Cars スムーズレンタカー」という小規模ステーションを使ったカーシェアを行っていますが、短時間利用はできずその名の通りレンタカーに近い形態です。

    そのような中「現地ディーラーでカーシェア事業を始め、それを支援するためのスマホアプリ」をトヨタが開発し、2017年1月からサンフランシスコで、7月からはハワイでも実証実験を始めました。

    このアプリではスマートフォンでドアの開錠が可能な機能を持つほか、ディーラーにとっては車両管理や利用者の認証、決済までを行う機能が備えられています。将来的には自動車の管理・利用・分析といったデータを集積するプラットフォームの一部となっていく計画です。

    スマートフォンを使ったカーシェアは日本でもラクモで行われていることは先ほど説明しました。つまり日本でも近い将来ディーラーでラクモ、あるいはそれに類するサービスが提供される可能性もありえます。

    車の販売拠点をカーシェア拠点としても積極的に利用しようというこの試みは、今後拡大していけば私たちの生活にも影響を及ぼすのではないでしょうか。

    出典 : トヨタ、カーシェア事業用アプリを開発し、米国ハワイ州で実証を開始

    ディーラーによるカーシェアの特徴

    現在、日本におけるカーシェアといえば以下のような形態が中心です。

    一般的なカーシェアサービス

    • 事業者または個人によるステーション(駐車場)に車が止まっている
    • 大抵の場合、ステーションごとの台数は1~数台で、車種が限られる
    • その車が使用されていなければ、スマートフォンや携帯電話から予約できる
    • B2C型はアプリ、運転免許証のICカード機能、会員カードなどでロックを開錠。予約から返却まで対面手続きが不要。保険はもとより、給油すら不要のサービスもある
    • C2C型はオーナーとの連絡やキーの受け渡しなど対面手続きを要し、保険やガソリン代は利用者が別途負担する場合が多い。地域によっては登録オーナーが多く車種も多彩

    特にB2C型の場合は手続きが簡単で拠点が近く気軽に使えるレンタカーという側面が強く、まだまだ車を貸し出すだけでそれ以上の「付加価値」がつくまでには至っていません。

    そこに自動車メーカーのディーラー(地域販売代理店)がカーシェア事業へ参入することで、以下のような付加価値が考えられます。

    ディーラーのカーシェアサービス

    • 車種が豊富
    • 整備拠点でもあるディーラーでは、借りる車への安心感が高い
    • 貸し出す車=取り扱い車種なので、不明点がある場合に問い合わせが容易
    • 「自由度の高い試乗車」と考えることもでき、気に入ったら購入するという使い方も
    • ディーラーから他のディーラーへの利用で「乗り捨て」も容易になる

    いわば、「無人で手軽な分、何か起きたり不明なことがあった場合にすぐ誰かに聞けない」という既存カーシェアの欠点を解消し、車種ラインナップの豊富さや乗り捨ても可能な点などレンタカー並の対応が期待でき、一方で問題無ければ対面無しで利用することもできます。

    既存カーシェアとディーラーカーシェア

    ただし地域にもよりますがディーラーは「店舗」なので、ユーザーにとって都合の良い立地、つまり自分の家や仕事場、交通拠点や目的地の近くにあるとは限りません。たとえば地方では車での来店なら便利な、ロードサイド店が多いでしょう。

    「ディーラーに行くまで」と「ディーラーに車を返してから」の交通手段が別途必要になることも多いので、その点は近所にディーラーの無い人にとっては少々不便かもしれません。身近に小規模ステーションが点在するような地域であれば、既存のカーシェアサービスの方が使いやすい場合もあるでしょう。

    そのため大手自動車メーカーがディーラーを通してカーシェアサービスを展開したとしても、すぐに既存のカーシェアサービスがなくなってしまうかというと、そうはならないはず。むしろディーラーのカーシェアは、「今までのカーシェアでは希望する車種が無かったり、他のユーザーとバッティングして使えなかった」という、既存カーシェアとは別の新たなユーザー層を掘り起こす存在です。

    将来的にはディーラーそのものも整備拠点の基幹店舗と、販売とカーシェアに特化した小規模店舗に分かれて、後者は多数の地域密着型店舗になっていくかもしれません。

    ユーザーにとっては安心感の高いカーシェア拠点が増えますし、メーカーやディーラーにとっては経営の安定した販売拠点を増やせるので、両者にメリットが出てきます。

    もしそうなった場合は、既存のカーシェアサービスやカーリースやレンタカーなどとも提携や買収など何らかの動きがあるかもしれません。

    より多様化する車の利用方法

    自動車ディーラー

    ディーラーのカーシェア事業が発展した場合、これまでは無かったような場所、たとえば駅など大規模交通拠点や、住宅地などに小規模ディーラー店舗が多数生まれる可能性もあります。

    そうした小規模店舗では多数の車を置けませんが、予約した車を「基幹店舗」から回送してくれば済みます。乗り降りできる拠点が増えていけば、カーシェアの使い勝手は格段によくなるはずです。

    将来的に完全自動運転が実用化されれば、スマホで今いる場所に無人回送で呼び出すことも実現できるでしょう。今後EV(電気自動車)が主流になる時代、充電時間や充電設備がネックになりますが、カーシェアであればいつでも充電済のEVを使用することができて、自宅に充電設備を持つ必要もありません。

    都心にいると車がなくてもあまり不便を感じないかもしれませんが、地方の実家へ戻ると車のありがたさを痛感します。人口が減っている街では「近所のスーパーやお店がつぶれてしまった」なんてこともあり、今後は車がなければ今まで以上に不自由になるかもしれません。

    今後カーシェアやカーリースなどの使い勝手がよくなると、自分の生活スタイルに最も合った選択肢を選びやすくなります。手元に車を常に置いておきたいという方は購入するのもいいですし、カーリースを活用するという選択肢もあるでしょう。これまでも何度か紹介していますが、個人向けのカーリースも充実してきています。

    利用頻度が限られている場合や、駐車場がないので車を保有できないという場合には、カーシェアを検討するのがいいでしょう。B2C型、C2C型複数のサービスから自分の目的にあったサービスを探してください。

  • 電子政府とは?IT最先端を行く東欧の小国エストニア

    電子政府とは?IT最先端を行く東欧の小国エストニア

    今やIT先進国として知名度も高い北欧の国、エストニア共和国。1991年にソビエト連邦から独立することで独立国家の地位を回復した同国が、その後IT領域においてめざましい躍進を遂げ、有名どころではSkype を排出し、最近は多くのITベンチャーも集まってきており、「ヨーロッパのシリコンバレー」と呼ばれたりするほどに進化してきたようです。その秘密は一体どこにあるのでしょうか?

    エストニアってどんな国?

    ロシアに隣接したバルト三国の一つであるエストニア共和国は、北ヨーロッパに位置するEUとNATOの加盟国で、面積は日本の9分の1の4.5万㎢、人口は約132万人(2017年1月)。

    日本国内からは直行便がないため、フィンランドを経由して飛行機や船での移動が必要となるので、到着までにはさらに2時間ほどかかります。公用語はエストニア語ですが、「英語能力指数(EF EPI)」は世界第7位(2015年度)のため英語を話せる人の割合も高く、小学1年生からプログラミングを学ぶなど早期のIT教育や国際学力調査でヨーロッパの上位国としても有名です。

    エストニアの平均月収は12万円程度、EU諸国の中ではホテルやレストランなどの値段や物価が安く治安も悪くありません。

    2000年以降は段階的な税制改革やIT産業の発展などにより、経済の成長率が回復。2008年は世界的な経済危機の影響を受け、2009年には-14.7%と最も深刻な経済危機を経験したものの、その後急速に回復を見せて2011年には+7.6%の経済成長を遂げました。貿易や投資関係の結びつきが強いフィンランド経済の影響を特に受けやすく、GDP成長率は2015年に1.1%と低迷しましたが、2017年は3.5%の見込みです。

    世界銀行が発表している「ビジネスのしやすさランキング(2017年版)」ではエストニアは12位にランクイン。

    エストニアの首都・タリンでは、自動車利用を減らし大気汚染抑制を目指す取り組みとして、2013年に市民を対象とした路面電車・バス・トロリーバスといった公共交通機関の無料利用サービスを開始しています。市民以外で公共交通機関を利用する人は、携帯電話やインターネット、駅の窓口で「IDチケット」を購入しeIDカードに登録した上で乗車します。

    タリンは近年の急激な自動車の増加によって渋滞が悪化しているため、公共交通機関を利用させて少しでも解消するべく、2005年からこのシステムを導入しました。このeIDカードには日本のマイナンバーのように、出生時に発行される国民のID番号やセキュリティ対策のための情報が入っています。身分証明証や保険証として機能するだけではなく、インターネットを利用する際の電子署名や電子認証をはじめ、銀行や保険会社など民間サービスにも広がり、あらゆる手続きをオンラインで処理できるのです。

    日本との関係性において言いますと、近年、IT・サイバー分野でエストニアとの協力関係が進展しています。2013年12月、東京において、ICT政策およびサイバーセキュリティ分野における日・エストニア間の政策対話が実施され、翌年の2014年6月、タリンで開催されたNATOサイバー防衛協力センター主催のサイバーセキュリティに関する国際会議CyCon(サイコン)には、日本の官民関係者12名が参加。さらに2014年3月の日エストニア首脳会談での合意を受けて、2014年12月、2015年12月及び2017年1月に日エストニア・サイバー協議が開催されました。その他、IT・サイバー分野に関心を有する政府、地方自治体、大学・研究機関、企業、経済団体等の往来が増加しています。

    IT国家・電子政府があるエストニア

    エストニアはIT立国化を国策として進め、選挙から行政サービス、教育、医療、警察、居住権に至るまでをインターネットで対応できるように「電子政府(e-Estonia)」の取り組みが進んでいます。

    2005年、地方政府の選挙で初めて自宅からインターネットを介した電子投票を行い、世界から注目を集めました。新たな技術の力を借りて選挙への参加方法の選択肢を広げるもので、足腰の悪い年配層や海外旅行中、留学中のエストニア国民も投票可能になっています。
    2014年12月には、外国からの投資や企業誘致等を促進するために電子居住権(e-Residency)の制度が導入され、電子居住権取得者はエストニアの国民・居住者以外であってもエストニアの電子政府のシステムが利用可能になりました。国民人口を急激に増やすことは難しいことですが、電子居住権があれば仮想であっても人口を増やすことができますし、外国人が国外から企業の設立・運営、納税手続等を直接行うことで事業の効率化やコスト削減の効果があるとされています。例えば、日本にいながらでもエストニアに会社を作って運営することができ、さらにはEUの加盟国として行政のサービスを受けることです。ちなみに会社設立の手続きも電子化されており、平均18分で設立できるのだとか。

    各行政機関のデータベースは相互にリンクされており、オンラインで個人の情報が閲覧可能。政府、病院、警察、学校などあらゆる場所で電子サービスが受けられますが、重複開発を避け情報が一極集中しないようにデータベースはそれぞれ分散化されています。そのデータベースを横断的に接続できるシステムが共通のシステム間連携基盤(X-Road)です。13年以上古いシステムは使わないとしているのも新旧システムの混在を防ぐため。

    また、確定申告や会社設立もネット上で行えるほか、電子カルテや病院のオンライン予約に電子処方箋など、先進的な取り組みが積極的に進められ、税金の還付も95%が電子上で自動的に算出されるため徴収コストが最も低くなっています。学校や政府機関のブロードバンドアクセスはなんと普及率100パーセント。ワイヤレスネットワークがすべての国土に行き渡り、国民の88.4%の人が定期的にインターネットを使用しています。1991年ソ連から独立したエストニアは、人口が決して多くありません。そんな中で、全国民に平等な行政サービスを提供し国の成長進度を上げるために国が率先してITを活用してきたようです。

    グローバルを目指すスタートアップシーン

    エストニアは、起業家の成長促進を目的とした公的サポートシステム「財団法人Enterprise Estonia」で政府が積極的にスタートアップシーンをサポートしている国。

    2016年末には400を超えるスタートアップ企業のうち約90%が非常に早い段階の試作、開発、または早期の発展がありました。エストニアのスタートアップ企業に雇用された人の数は急速に増加し、2016年末までに3,500人に達し、2015年末に比べると1,000人増加しています。

    冒頭にも書きましたが、オンライン通話・メッセージアプリとして有名な「Skype」が開発されたのもエストニアです。マイクロソフトに買収された後も、開発の一部はエストニアで行われています。

    リモートチームの共同作業を円滑にするオンラインホワイトボードサービス「Deekit」や、住宅費に治安、教育の質などの様々な観点から、自分の生活と仕事に最適な都市を教えてくれる「Teleport」、圧倒的な低手数料で海外送金サービスを提供しているユニコーン企業「Transfer Wise」など、グローバール展開を掲げ、Skypeの元メンバーたちがスタートアップシーンをさらに盛り上げています。

    エストニアの注目サービス

    エストニアのタリンで利用するタクシーは初乗り料金や1㎞あたり料金が車両ごとに違ったりします。そんな時はエストニアのスタートアップが開発した、Uberのように利用できるタクシー配車アプリ「Taxify」が便利。

    自分の現在地周辺の乗車可能なタクシーが一覧と、車種、運転手の評価、料金が表示されます。お願いしたい車を選んだら、GPSの現在地まで数分で車が来てくれるという流れで、支払いは登録したクレジットカード行われます。ちなみに、Taxifyはタクシーの運転手のみしか運転手登録ができません。エストニアを中心に、メキシコなどでも展開をしています。

    タリンの人口が約42万であるのに対して駐車スペースが1万5,000台分しか無く、駐車料金はヨーロッパで最も高額だと言われていました。そうした問題を解決するために、2015年に作られたのが「Barking」。使用されていない個人や企業所有の駐車スペースをドライバーに貸し出すサービスで、モバイルアプリを通して駐車場の検索、電子ゲートの操作、支払いが全て行えます。
    有休スペースの有効活用と駐車料金の値下げを目的として、これまでに新たに5,000台分の駐車スペースを創出し、市民の駐車コストを合計15万ユーロ節約してくれました。

    日本でも問題になっている物流業界の深刻な人手不足。もしかしたらロボットという新たな手段で解決へと導いてくれるかもしれません。
    2014年に創業したスタートアップ企業Starship technologiesは、自走式小型宅配ロボットの開発をしています。この宅配ロボットが、ラストワンマイルを解決するのではとデリバリーロボットの「Star ship」は世界的な注目を集めているのです。
    このころんとした見た目のデリバリーロボットは、積荷サイズが全長約41cm、幅約34cm、高さ約33cm。6km/h(最高16km/h)で歩道を走り、半径3マイル(約4.8キロメートル)以内の目的地へ小包や食料品を自動で配送します。
    Starship Technologiesによると、ロンドン中心部の配送コストは最大で1回12ポンド(約1,620円)かかるところ、同社のロボットを使えば1回1ポンド(135円)まで削減できるのだとか。
    物流業界において、コスト面や人材確保の問題を解決していくのは、このようなロボットなのかもしれませんね。

    国境なき国家を−−さらに進化するデジタル国家エストニア

    2006年〜2016年に渡って大統領を務めたトーマス・ヘンドリク・イルベス氏は元エンジニア。13歳からプログラミングを学んだ同氏は、エストニアが成長力を上げるべく、コンピューターとネットワークインフラを教育として学び、国内全土に広げるよう、プロジェクトを立ち上げて現在の体制を作ってきたという背景があります。

    2017年、エストニアは「国境なきデジタルバンキング」を導入すると発表。これにより、遠方にいる電子居住者たちはエストニアに訪れることなく、オンラインで銀行口座を開いたり、企業を立ち上げることがさらに簡単になりました。国境を越え、さらに先進的な取り組みへ果敢にチャレンジするエストニア。

    ほとんどの行政サービスがデジタル化されてきましたが、100%デジタル化に向けて、今後は医療やまだデジタル化が進んでいない産業の革新を進めていくと言います。ますます飛躍する小さな国の展開に私たちは目が離せません。

  • 世界が注目する中東・北アフリカ地域MENAの経済成長とサービス

    世界が注目する中東・北アフリカ地域MENAの経済成長とサービス

    今、世界でもスタートアップ市場で注目を浴びている都市があります。それが中東・北アフリカ地域、通称MENAと呼ばれる地域です。

    スタートアップとこの地域がすんなりと結びつかない方もいるかもしれません。そこで今回はネットの普及事情から最新の動向についてご紹介していきましょう。

    スタートアップの活況にある「MENA」

    聞きなれない言葉かもしれませんが、MENAとは、ポストBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)として注目が集まっているMiddle East(中東)とNorth Africa(北アフリカ地域)を合わせた地域のことを言います。MENAに厳密な定義はありませんが、GSMAが対象としている25市場は、アルジェリア、バーレーン、コモロ、ジブチ、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モーリタニア、モロッコ、オマーン、パレスチナ、カタール、サウジアラビア、ソマリア、スーダン、シリア、チュニジア、トルコ、UAE、イエメンです。

    ※GSMAとは世界中のモバイル通信事業者を代表する団体のことで、モバイル事業約800社を結集しています。そのうち300社以上は携帯電話機および端末メーカー、ソフトウエア企業、機器プロバイダ、インターネット企業など、広範囲なモバイルエコシステムを構成する企業であり、関連業界セクターの組織も参加しています。

    最近のニュースでは、米国時間の2017年3月28日、Amazonはアラブ諸国で最大規模のEC事業を展開しているSouqを6億5,000万ドルほどに達する金額で買収したことが話題になりました。Amazonにとっては2014年以降の最大の買収額であり、この金額感からもMENA地域において、今後さらなる経済発展への期待値が高まっていることが予想できます。

    https://uae.souq.com/

    Souqはアラビア語で「市場」を意味し、電子機器から衣料品、日用品など幅広く取り扱って販売しています。同社はアラブ首長国連邦、エジプト、サウジアラビア、クエートで事業を展開し、2016年2月には2億7,500万ドルもの金額を資金調達しました。

    調査会社のEuromonitorによれば、2016年のMENA地域におけるEC市場の売上は82億ドルですが、2021年には230%以上の増加が見込まれており、270億ドルに達すると言われています。

    MENA地域の中でも、スタートアップの中心になっている都市は、レバノン、エジプト、ヨルダン、トルコ、U.A.E.。いずれも大都市であり、インターネットなどの普及率も高い地域です。これらの国にはアクセラレータが拠点を置き、資金も集まりつつあります。カイロ、レバノン、ドバイでは、テック系のカンファレンスも頻繁に開催されています。

    スタートアップ活況の理由の中には、この地域におけるインターネットとモバイルの急速な普及拡大があるようです。

    高まるネット需要とモバイルの普及

     

    世界中のモバイル通信事業者を代表する団体GSMAが発表した、ドバイで開催されたGSMAモバイル360シリーズ中東大会での新報告書によると、MENAの地域におけるユニークモバイル加入者数は現在の3億3,900万人から2020年までには3億8,500万人に、スマートフォンの接続件数も過去3年に倍以上増加して2016年には2億6,300万件に達していますが、2020年には4億6700万件に増加する見込みだと伝えています。

    MENA地域の人口は世界的に見ると若く、スマートフォンやブロードバンドの普及率も高くなっています。同地域のモバイル業界は2015年に、エコシステムでの直接雇用や、モバイル分野の経済活動によって生まれた間接的雇用を通じて、100万人以上の雇用を生み出し、地域経済を支えました。さらには普通税の形で公的財政にも150億ドルもの貢献をしています。

    モバイルインターネットの普及率が急速に増し、2016年半ば時点ではMENA地域の人口の36パーセントに当たるおよそ2億人がモバイル経由でインターネットを利用しており、2020年までにはさらに、8700万人ほど増える見通しです。しかし、アフリカ・アラブ諸国の一部の途上国では、人口の3分の2以上がモバイルインターネットの利用をしていません。

    また、正式な身分証明書を持たない人々が1億2000万人を超えるこの地域において、モバイルは住民登録をしていない人々の課題対処にも貢献し、地方では出生登録が行えるよう対応されています。

    また、モバイルやインターネットの普及拡大は金融サービスへのアクセス改善や、災害や人道危機への効果的な対応にも役立っており、現在では10市場で20件のモバイルマネーサービスが運用中であり、正式な金融サービスを利用できない同地域の60%の人々のために、便利で効率的な支払い対応や国際送金を実現していたりもします。

    4Gネットワークの導入も加速を見せ、現在までに17カ国でLTEネットワーク運用を開始。先進市場で新しいデジタルサービスの基盤として確立することにも貢献しており、多くの起業家はモバイルエコシステムを利用して、各国の関心事や文化に合った新しいモバイルベースのソリューションを導入しています。

    エジプト、カタール、トルコ、UAEなど、同地域の多数の国々がモノのインターネット、スマートシティ、デジタルアイデンティティなどの高度なサービスを開始し、ヨルダンやUAEなどの国々は新興企業やデジタル革新にとって理想的な環境があるとして注目されるようになっています。

    2強にあるライドシェアサービス

    エジプトのカイロは都市として発展している一方で、人口や自動車台数の急増に伴う交通量の増加に対して道路など交通インフラの整備が追いついておらず、渋滞が慢性化しています。また、バスや鉄道など公共交通の輸送能力は限界に達しており、用地不足による道路網の拡大も困難な状況でもあるとも言います。これは、地下鉄の整備が課題となっているものの、地下には水道管網や電線網が複雑に埋設されていること、さらにカイロの地下は古代・中世の遺跡の宝庫であるため、開発と保全の両立をさせる難しい工法が求められているためです。

    出典 : careem

    そんな状況下で2014年11月に配車アプリのUberが進出。地元のタクシーだと料金体系が不透明なことが多かったものを、明確な料金体系やドライバー評価などの信頼性、数分でタクシーを呼べるという利点から、リリースから1年で100万件もの予約を獲得(エジプトのタクシーは60円〜100円/kmほど。変動あり)。Uberの地域担当者によると、エジプトのカイロはこの地域の中で最も急速に成長しており、毎月カイロだけでも3,000人のドライバーを追加しているのだとか。女性による運転が禁止されているサウジアラビアでは、Uberを利用する乗客の約8割が女性です。

    MENA地域のスタートアップ企業で、2012年にドバイで創業スタートした配車アプリのCareemも、トルコやパキスタン、北アフリカを中心とした13カ国80都市でサービスを展開しており、「中東のUber」として注目されているアプリのサービスです。Facebookアカウントでのログインが有効で、登録もカンタン。5分ほどで配車でき、車の種類はエコノミーとビジネスなど選べます。

    2015年11月には6,000万ドル(約72億円)を調達し、現在では1,200万人ものユーザーを抱え、同年、エジプトでは330倍の成長し、UAE、サウジアラビアではUberを上回る成長を遂げているようです。2017年8月には、中国の配車サービスDidiが同社への出資を発表しました。

    自動車販売数をぐんぐん伸ばすMENA地域

    世界の2016年度の自動車販売数ランキングを見ると、13位のイランは144万8,500台、自動車ブームの続くサウジアラビアは21位で65万5,500台と上位にランクインしています。

    アフリカ南西部に位置するモロッコでは、2016年の国内の新車販売台数が過去最高を記録し、モロッコ自動車輸入者協会(AIVAM)によれば、乗用車が14万2,872台、商用車が2万238台、総販売台数は16万3,110台でした。

    機械・自動車部品製造会社であるジェイテクトは、自動車産業が発展してきている北アフリカ及び中東のマーケット向けに製品を販売すべく、北西アフリカのモロッコで初となる電動パワーステアリングの生産拠点、JTEKT AUTOMOTIVE MOROCCO S.A.S.(JAMO)を2017年9月に設立すると発表しました。

    こうして、政治的不安定やセキュリティ上の課題が複雑ではありつつも、MENAの地域は大きな成長の可能性と、重要な自然・人的資源をもっています。中東の経済は、依然として石油やガス産業がその多くを占めていますが、成長の継続に重要となる不動産業、建設業、鉱業、旅客運送・物流などの新しいビジネスチャンスへと急速に多様化を見せようとしています。

    この普及率からは商用テレマティックスの市場可能性は疑うべくもなく、南アフリカのMiX Telematicsやトルコの車両追跡・運行管理システムおよびテレマティクス分野のリーディングカンンパニーArventoなどは市場に積極的に注力し、多くの低コストの追跡タイプの地元のプロバイダに対抗しようとしています。

    MENA地域は交通のインフラを含め、まだまだこれから手を加えて行く必要があります。逆をいえば、そこにビジネスチャンスが多く眠っていると言えるでしょう。日本や欧米で当たり前のように利用されているECサイトやライドシェアなどの様々なサービスたちは、MENAの各地域とそこの文化や人にローカライズすることで、より成長力を増して行くのではないでしょうか。

  • 「車の使い方」はどう変わっていくのか  — カーシェアやライドシェアから見る車の今後

    「車の使い方」はどう変わっていくのか — カーシェアやライドシェアから見る車の今後

    少し前まではごく一般的だった「車は所有するもの」という考えが、少しずつ変わってきているのかもしれません。

    出て間もない頃はまだ世の中に定着していくのかどうかわからない印象もあったUBERをはじめとする「ライドシェア」や、本記事で後ほど新しい取り組みをご紹介するタイムズカープラスに代表される「カーシェア」、そして最近は法人だけでなくコンシューマー市場にも広がり始めているカーリースなど、車自体を所有せず必要な時に必要な時間だけ利用するというスタイルが世の中に浸透しはじめています。

    カーシェアとライドシェアの登場

    UBER
    出典 : UBER

    自動車を個人所有せず、事業者を通してシェアするカーシェアリングは1980年代から欧州で始まり、その後米国にも広がりました。

    米国では都市部の大学や地下鉄駅周辺などを「交通の基点」として、活動拠点や交通の要所から目的地までの移動手段として定着しています。シェアされる車両は、事業者が保有する場合と個人が保有する場合のいずれもありますが、貸し出す人と借りる人、双方の利用者を繋ぐ事業者がその手数料で利益を得る形です。

    また、日本ではタクシー業界からの反発もあり現在は一部地域に限られていますが、個人がタクシーと同じように乗客を取り仲介事業者を通して運賃を受け取る「ライドシェア」または「配車サービス」といわれるサービスが、海外では急速に普及しています。UBERLyftはその代表例ですが、そもそもは空いた時間に自分がもっている車を使用してタクシーサービスを行うということから「ライドシェア」という名前で呼ばれていますが、実際はそれを本業とするドライバーも多いため、シェアというよりは個人タクシーと呼んだ方がしっくりくる気がします。

    そういった流れを受け、最近では自動車メーカー側でもカーシェアリング事業者との結びつきを深め、いかに多くのカーシェア事業者への販路を確保するかが課題になってきました。今後ますます個人や法人が車を「保有」しなくなっていったとしても、車自体を利用しなくなることは考えにくいわけです。ただ、新車販売台数を今後も右肩上がりで伸ばしていくことが業界全体として困難そうだという未来が見えている中で、各メーカーはこういった車をサービス化して提供している事業者に対して車を販売していくことで、結果として販売台数をなんとかキープしていこうと努めているようです。

    たとえばトヨタはUBERに出資し配車や自動車リースの面で戦略提携を結んでいますが、この波は今後も広がっていくのではないでしょうか。

    法人だけでなく、個人でも利用が増えるカーリース

    車の利用方法として注目を集めるのはライドシェアやカーシェアだけではありません。カーリースもそのひとつです。

    現在の米国では新車をリース購入したユーザーがリース期間終了とともに車を手放す、あるいは別な車のリースに切り替えることで、程度の良い高年式中古車が中古車市場に溢れることになりました。これにより新車で無くとも構わないユーザーにとっては新しい車を安く買えるチャンスが増大したため、新車の需要が過去にないくらい減少する可能性が出ています。

    日経ビジネスでも紹介されていましたが、2016年における新車販売のリース比率は32%にも達しており、同時にリース落ち車両は2015年の250万台から2018年には400万台に達する見通しだそうです。そのためアメリカでの個人向け新車販売は、カーシェアリングとカーリースの増大というダブルパンチによって、大変な危機に見舞われています。

    日本でも「残価設定型自動車ローン」が一般的に広く利用されるようになり似たような傾向が出てきているかと思います。こちらのローンの仕組みの詳細は、以前のエントリー「残価設定型自動車ローンとは? 元自動車営業が徹底解説!」も参考にしてみてください。

    日本でも「公共交通の補完」として期待されるカーシェア

    日本でも従来からレンタカーは広く普及していました。ただ車種も豊富で長時間の利用に適したレンタカーより、車種は限られてもより身近で短時間の利用に適したサービスがあれば、より使いやすくなります。

    自家用車とレンタカーの中間にあって、所有していなくとも自家用車のような感覚で使えるのがカーシェアの特徴です。

    少し古い資料ではありますが、国土交通白書2013を見ても2010年代に入ってからカーシェアが急速に普及していることがわかります。

    カーシェア利用率の推移

    ※カーシェアに関しては、少し前の記事になってしまいますが「車を持つのはもう古い!? 簡単・手軽な「カーシェア」の時代」でもその仕組みと主要サービスをご紹介しています。

    タイムズカープラスの実証実験

    タイムズカープラス
    出典 : Times Car PLUS × Ha:mo

    現在日本でもっとも盛んにカーシェアリング事業を行っている事業者のひとつが、全国でコインパーキングを展開しているパーク24株式会社です。

    同社の展開している「タイムズカープラス」は、駐車場に止めてあるカーシェア用車両をユーザーが必要なだけ利用して返せるという意味で、実質的には同社の駐車場をステーションとしたレンタカー事業ともいえます。

    ステーション数の多さから利便性はレンタカーより高いとはいえ、基本的には借りたところに返さなくてはいけません。

    そこで同社では、国土交通省とも提携した超小型モビリティ実証実験「Times Car PLUS × Ha:mo」を実施しており、東京都内約100カ所に存在するステーション間であれば、そこに乗り捨てて近くの目的地に向かうことが可能です。

    これは公共交通機関の延長、あるいはその間の接続(モーダルコネクト)を目的としたもので、最低限の投資で公共交通機関を延長する役割が期待されています。

    ただし、ステーションの多くは1~4台程度のスペースしか無いため、出発地はともかく目的地のステーションに多くの乗り捨て需要があっても、それに応えられないのが課題です。

    また、使用されているトヨタのコムス、i-ROADはいずれも1名乗車のみ可能なミニカー登録車両のため、例えば子供連れなど運転免許を持たない同伴者がいる場合は利用できません。必要なスペースの割に利用できる人数が限られるという問題もあるので、その解決のためには、2名乗車(または大人1名+子供2名)が可能な超小型モビリティ、または軽自動車の配備が求められます。

    自動車メーカーに起こる変化

    車の所有・利用方法に対する考え方が変わっていく中で、自動車メーカーが車づくりの主導権を握りながら生き残りをかける手段が「自らがカーシェアの胴元になること」です。

    ひとつの例をあげると、トヨタが「ブロックチェーン技術」の研究開発に非常に力を入れていることでしょう。自動運転車の開発だけでなく、カーシェアやカーリース、そして自動車保険の領域において、ブロックチェーンが活用できるのではと見込まれています。

    カーシェア事業者を介さず、あるいは傘下に置いて、個人間カーシェアやライドシェアの信頼性をメーカーが担保し、販売した車を多くのユーザーがシェアしていく仕組みを作れば、新車販売で減少する利益を補うこともできます。すべてを自社でやらず、その領域で活躍するスタートアップへ投資をしたり、提携もしくは子会社化も考えられるでしょう。

    トヨタに限らずホンダ、フォルクスワーゲングループなど自らカーシェア事業に乗り出している事例もあり、自動車メーカーの今後の動きからは目が離せません。

    終わりに

    すでに欧州や米国で問題化し始めている現象は日本でも無縁ではなく、自動車は「保有」は「シェア(共用)」へと徐々にその進路を変えていっているように見えます。

    その流れにに応じるように国内でもライドシェアやカーシェアサービスに参入する企業が増えていますが、これからますます自動運転技術が発達し一般道に出てくるという状況を考えると、「必要な時に必要な時間だけ」という利用方法(保有はしない)への時流はさらに強くなっていくように思われます。この先5-10年のタイムラインでは、世界中における車の使われ方や総数がこれまでになかったような変化を見せていく可能性もあるのではないでしょうか。

  • テスラが商用車開発へ!9月に大型EVトラックを公開する意図

    テスラが商用車開発へ!9月に大型EVトラックを公開する意図

    電気自動車(以下:EV)の次なるステップとして、アメリカのテスラモーターズ(以下:テスラ)がトレーラー型EVを9月に公開すると発表しました。テスラが商用車としてのEVを開発するのは初めてのことで、中期経営計画である「マスタープラン・パート2」では、大型EVトラック開発の他にもバス事業への参入も考慮しているとのことです。

    アメリカでのEV開発において先端を走り続けるテスラ。同社が商用車の販売に踏み出すことで、今後EV開発の世界はどのように進化するのでしょうか?

    以前からEVトラックの開発に着手していたテスラ

    テスラはかなり以前からEVセミトラックの開発を手掛けていました。CEOであるイーロン・マスク氏が、「貨物輸送コストの削減」と「ドライバーの安全性を重視」したトラックの開発に注力していると2016年7月に発表。さらにマスク氏は2017年4月にTwitter上で「開発チームが驚異的な仕事を達成し、EVセミトラックは必ず次の段階に進める」と発言しており、IT業界だけでなく輸送事業も含め大いに話題となりました。

    大型トラックの貨物輸送コストは大半が燃料の消費に削り取られてきましたが、EVの技術が活かせればこれらの負担が軽減されます。またテスラは最先端の自動運転技術を提供できる企業のため、長距離運転を余儀なくされる輸送トラックに同社の技術を採用すれば、ドライバーの補佐役として安全性が向上することは間違いありません。

    9月に大型EVトラックを公開する意図は、従来の「新興EV開発事業」から「EV量販メーカー」への転換を図りたいという願いがあるように思えます。トラックやバスなどを含めた商用車の開発に着手すれば、実用的な車を量産しているというイメージが強化されるはず。そのため、テスラにとって大型EVトラックの開発は大きな意味を持ち、他の自動車メーカーにも影響を与え続けると考えられています。

    イーロンマスク
    Photo credit: OnInnovation

    他自動車メーカーも大型EVトラックの開発に着手

    EVは大きな蓄電池を積む必要があるため、輸送事業では積載可能量が減ることを恐れ、これまで車両のEV化に積極的ではありませんでした。ただ近年では蓄電池の技術も進化し、性能の向上により軽減化や量産コストが削減されたことにより、テスラだけでなく他の自動車メーカーも大型EVトラックの開発に進出し始めています。

    ドイツの大手自動車メーカーであるダイムラーでは、大型EVトラック「Urban eTrack」と小型EVトラック「eCanter」を、2016年にドイツで開催された商用車ショーでお披露目しています。ダイムラーはディーゼルエンジンに代わる技術としてEVトラックの開発に着手しており、「Urban eTrack」では積載量の達した荷物を運んだ場合、航続距離は200kmが可能だとコメント。当時は傘下の三菱ふそうが小型EVトラックを開発していましたが、大型EVトラックの公開は世界で初だったそうです。

    新興EV開発メーカーであるニコラモーターカンパニーでは、天然ガスとEVを併せ持つハイブリッド方式を採用したセミトラック「ニコラ・ワン」を開発しており、同社のプレスリリースでは、およそ7,000台の予約が達成したことを発表。余談ですが会社の名前である「ニコラ」とは、偉業を成した電気技師である「ニコラ・テスラ」にちなんだものであり、テスラも同じ意図で「テスラ」と名乗っているため、テスラの活動を通してニコラモーターカンパニーの名前を世に知ってもらおうという構想があります。

    現在のところ大型EVトラックの開発に着手している企業は多いとはいえませんが、テスラの2017年9月のEVトラック公開に注目が集まれば、今後も参入する企業は続々と増えるかもしれません。大型トラックの標準仕様となっているディーゼルエンジンは、排ガス規制など厳しい条件が提示されるため、EVはこの課題に光明をもたらす技術として期待を集めています。

    トラック

    車両がEV化することのメリット

    トラックをEV化するメリットとして、「貨物輸送コストの削減」、「自動運転による安全性の向上」、「排ガス規制のクリア」などを挙げましたが、他にも様々な付加価値を備えたシステムを構想中とのことです。

    ダイムラーはトラックを常時インターネットと繋ぎ、効率的な輸送を実現する運行管理システムを開発しています。同社は「トラックのデジタル化」を推進しており、2020年までの達成を目処におよそ630億円を開発部門に投資すると発表。テスラ社と同様に、センサーや通信技術を駆使した自動運転システムの開発にも着手しているため、将来は人の手を必要としない輸送の達成を目指している段階です。

    今後も商用車・トラックの進化から目が離せませんね。

  • 自動運転車におけるセンサーの重要性と技術

    自動運転車におけるセンサーの重要性と技術

    画像出典:Tesla

    多くの人が関心を持つ、自動運転車。現時点では運転をサポートしてくれる機能を持つ段階で完全な自動運転車は実現していませんが、その技術は着実に進歩してきています。
    自動運転システムを支える技術の1つとして外せないのが、「センサー」です。自動運転車の開発に力を入れいているテスラモーターズ(以下テスラ)では、オートパイロットを搭載した車を開発していますが、車体には10個以上ものセンサーが内蔵。「カメラビュー」「レーダー」「超音波センサー」など様々なセンサーが機能し、オートパイロットのシステムを支えています。

    仮にセンサーがこの世に存在しなかった場合、各企業が開発している自動運転システムはどのような状態になるのでしょうか? 今回はこのセンサーについては紹介します。

    自動運転システムにおけるセンサーの仕組み

    自動運転システムは、周囲を検知するセンサーを通して「歩行者はいないか?」「対向車はないか?」「道路標識の指示は何か?」といった情報を画像処理、もしくは反射波を測定するなどして確認します。

    検知したデータはクルマの内部に搭載しているコンピューターに送信され、高速で分析が行われます。次に分析したデータを駆動するそれぞれのパーツに伝えることでクルマの動作が決定。「ステアリングを動かす」「ブレーキを踏む」「車線変更する」といった基本的な運転操作が、機械を通して行われます。

    こうした一連の操作を機械・電気仕掛けで行うものを「機構制御のバイワイヤ化」と呼んでいますが、今ではクルマのステアリングやアクセル、ブレーキなどはバイワイヤ化の恩恵により、自動的に操作可能に。

    つまり、現代のクルマは機械装置や電気信号で「曲がる」「加速する」「止まる」などの基本動作を行える環境がすでに整っており、後は周囲を検知するセンサーや脳の役割を持つコンピューターが更に進化すれば、人の手をまったく必要としない「完全自動運転」の技術が実現できるのです。(もちろん技術的な話で、法制度や倫理観的な問題は別で解決しなければいけないですが)

    センサーが果たす役割

    視覚

    今回の主題となる「センサー」は、人間で例えるなら「視覚」や「触覚」の部分に該当するものです。人は外部から受ける刺激の8割は視覚情報によるものだと考えられています。この8割の刺激が遮断されてしまえば、周囲の状況を把握できないことはもちろん、物を掴む、食事をする、外を歩くといった当たり前の行動がとても難しくなってしまいます。

    目を閉じて視覚が遮られれば、次に残るのは味覚、嗅覚、聴覚…そして触覚です。触覚は物体に触れた時に刺激を受け取る感覚ですが、人が目を閉じて障害物を避ける時は、自然とこの触覚に頼る傾向にあります。視覚と触覚から集めた情報が人の行動に大きく影響しているのです。

    つまり「視覚」や「触覚」の役割を持つセンサーをクルマに搭載すれば、周囲の状況が把握できるようになるため、自動運転システムの実現が可能です。反対にセンサーがなければ状況判断ができなくなり、衝突事故や移動する方向を見失ってしまうなどの問題が生じてしまいます。

    自動運転システムはセンサーが「命」といっても過言ではなく、一つひとつのセンサーがちゃんと機能することで初めて安全な自動運転ができるようになるのです。

    テスラのオートパイロットで使用されるセンサー

    テスラ モデルS
    Photo credit: mariordo59

    自動運転システムの技術において業界で最もリードしているのが、冒頭でも紹介したアメリカのテスラが開発しているオートパイロットです。「モデルS」のオートパイロットには、以下の3つの機能を持つセンサーが各所に搭載されています。

    カメラビュー

    モデルSにはフォワードカメラ、フォワードフェーシング・リアフェーシングサイドカメラ、リアビューカメラという3種類のカメラが搭載されています。

    特に注目に値するのがフォーワードカメラの機能性。こちらのカメラはフロントガラスの上部に設置されており、「ワイド」「メイン」「ナロー」とそれぞれの役割を持ち、視野の広さ調整から遠くの物体を検知する機能まで、さまざまな状況に対応できる技術が備わっています。

    レーダー

    天候の影響により視界が悪い状況の場合、カメラだけでは検知できない物体を探し出すのがこのレーダーの役割です。激しい雨、濃霧や降雪時を走行中でも、前方車両を正確に検知して安全に対応する役割を担います。

    超音波センサー

    文字通り周囲に超音波を発しながら車両を検知するセンサーのことです。主に走行中の車線に入ってくる車両を検知する役割を果たしますが、他にも駐車時のサポート役として機能することもあります。超音波とは人の耳には聞こえない振動波なので、通常では感知できない物体の位置まで把握することができます。

    基本的に自動運転システムは、先行車両を認識してアクセルやブレーキを制御したり、車線変更などを行うことを主な目的としている技術。これらの判断を行うのは、システムに組み込まれるアプリケーションとなりますが、センサーは外部の情報を取り入れるための非常に重要な役割を持つ装置です。

    従来のクルマにもセンシング機能を持つ機器が搭載されていますが、自動運転システムでは更に精度の高い製品を用いる必要があるのです。

    国産の自動車に搭載されているセンサー

    自動運転システムと聞くと、内蔵するコンピューターがすべてを判断して公道を運転することを思い浮かべるかもしれませんが、実際はそのレベルまで達しているクルマは今のところ存在しません。自動運転を達成するにはさまざまな技術の制約があるため、世界のエンジニアが壁を乗り越えようと日々研究に努めています。

    日本では「自動ブレーキシステム」が一時期話題となりましたが、このシステムも自動運転の一部といえるでしょう。カメラとレーダーの組み合わせによるものが多く、トヨタ、日産、マツダ、スバルなどが販売する車両に搭載されていることで有名です。

    特にマツダの「アクセラ」では、国土交通省の調査による自動ブレーキ性能の評価点は総合でトップを記録。またTVCMでお馴染みのスバル「アイサイト」も評価が高いため、こちらの2社の自動ブレーキシステムは、今後も技術を競い合いながら更なる進化が望めるのではないでしょうか。

    マツダ「i-ACTIVSENSE」

    マツダの「i-ACTIVSENSE」もテスラと同じカメラやレーダー、超音波センサーなどを駆使してブレーキ判断を行っています。2016年の予防安全性能評価において、マツダのアクセラは「ASV++」を獲得したため、その安全性能は折り紙付き。この評価制度は対車両や歩行者に対する反応、車線のはみ出し警報、後方視界情報提供装置の安全性などを確認するため、ほぼ全方位におけるシステムの反応を評価します。

    近年ではAT自動車の誤発進が問題となっていますが、マツダはこの課題にも対応するシステムを構築。超音波センサーが近距離の物体を感知して、警報音を鳴らしてドライバーに知らせる機能を搭載しています。

    スバル「アイサイト」

    スバルのセイフティシステムの一つである「アイサイト」では、フロントに設置するステレオカメラが優れた認識性能をもつ機器として有名です。他社のクルマではカメラとレーダーの組み合わせが標準となっていますが、スバルではこのステレオカメラ単体で運転をアシストするため、最先端のカメラを駆使するシステムとして注目されています。

    クルマや歩行者、二輪車などを認識することはもちろんのこと、白線や道路の形状まで把握するため驚く機能が満載です。また、ステレオカメラは動く物体をカラーで検知し、先行者のブレーキランプなどをセンシングすることが可能なため、より人間の視界に近い状態で判断を行うことができます。

    基本的にオートパイロットも自動ブレーキシステムも、現在ではアシストの領域に留まっているため、運転を行うのはあくまで人間だということを忘れてはいけません。搭載するセンサーはどれも優れたものばかりですが、これらに頼りっきりではいずれ事故を起こします。近年ではアシスト機能も標準装備となっているため、運転の責任を負うのはあくまで人間側だということを肝に銘じておく必要があります。

    今後の自動運転のカギを握る「LiDAR」の技術

    自動運手システムで活用されるセンサーには「光学式カメラ」や「ミリ波レーダー」などがありますが、今後は「LiDAR(ライダー)」も加わる可能性が考えられます。

    LiDARとは、光(レーザー)を用いて距離をセンシングする技術のことで、短い波長の電磁波を照射するため、従来の電波レーダーよりも精度の高い検出が行えます。元々は地質学や物理学の分野で活用されていた技術ですが、センシング機能に優れていることが認められたため、自動車業界から熱視線を受けました。

    LiDAR
    Photo credit: Oregon State University via Visualhunt.com

    テスラのCEOイーロン・マスク氏はLiDARの搭載には今のところ懐疑的であり、カメラやレーダーを駆使すれば自動運転の実現は可能だとコメントしています。しかしGoogleは、3D地図を作成する上で赤外線によるLiDARの技術は必要だと考えているため、今後も注目され続けるセンサーであることは間違いないでしょう。テスラのモデルSは2016年に致命的な死亡事故を起こしている点から、改善のカギを握るのはもしかしたらLiDARによるセンシング技術かもしれません。

    各企業が開発しているセンサー

    自動車に関わるセンサーだけを考えれば、搭載可能なものは既にたくさん存在します。特にカメラ技術は進化の一途を辿っており、今後も自動運転システムに大きく関わってくることは間違いないでしょう。自動運転用のカメラ開発企業の中には、ソニーやパナソニック、ケンウッドなどがあるため、まさに業界の垣根を越えた開発競争が行われている状態です。

    Mobileye
    出典 : MOBILEYE

    最近までテスラと業務提携していたMobileye(モービルアイ / イスラエル)では、後付けが可能な衝突防止補助システムを開発しており、フロントガラスに取り付けたカメラが先行車両や歩行者を検知して警報音を鳴らす製品を販売。さすがにステアリングやブレーキの操作はできませんが、「警報音を鳴らす」くらいであればすべてのクルマに搭載が可能とのことです。

    一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)では「センシング技術委員会」を設置しており、自動車だけでなくITやエレクトロニクス産業の発展に伴う調査を実施。自動運転におけるセンシング技術は「物体を検知する」ことに重点を置いています。

    委員会にはアズビル、オムロン、セイコーインスツル、ソニー、東芝、日本電気、パナソニック、富士通研究所、三菱電機、村田製作所などの企業が関わっているため、これらの中から新しいセンシング技術が生まれ、将来の自動運転システムに活かされるかもしれません。

    進化し続けるセンシング技術に注目

    自動運転システムとセンサー技術は切っても切り離せない関係にあります。またセンサーの技術進化はもちろんのこと、「LiDAR」のような従来のシステムに搭載されてないセンシング技術に注目することにより、自動運転システムの更なる向上が望めることも面白い傾向かもしれません。

    今後もセンサー開発による市場の拡大は大いに考えられるため、国内企業の中から自動運転に特化した新しいセンシング技術が生まれることを願っています。

  • スマホや自動運転に活用される加速度センサー、ジャイロセンサーとは

    スマホや自動運転に活用される加速度センサー、ジャイロセンサーとは

    皆さんが日頃使っているであろうスマホやタブレットから、今後が楽しみなロボットや自動運転車まで、ここ十数年の間でもテクノロジーは急速に発展しています。

    そういったデバイスの魅力や今後を語る上で外せないのが、裏側で使われているセンサーやセンシングの技術です。中でもカメラの手ぶれ補正やエアバック、スマホアプリなどに活用さている「加速度センサー」や「ジャイロセンサー(角速度センサー)」は非常に注目を集めています。

    とはいえ加速度センサー、ジャイロセンサーについてはよく知らないという方もいらっしゃるはず。今回は具体例を取り入れながら、その仕組みや活用方法について紹介していきます。

    加速度センサーとは

    加速度センサー
    Photo credit: oskay

    加速度センサーは文字通り、1秒における速度変化(加速度)を測定するセンサーのことです。

    測定するものの中には重力加速度も含まれるため、人の動きや振動、衝撃まで検知できます。3軸方向(X軸・Y軸・Z軸)に適応するセンサーであれば水平状態を検出でき、冒頭で紹介したようにカメラの横方向による「手ぶれ補正」などにも加速度センサーの機能が応用されているのです。加速度センサーを用いる家電製品では、スマホやタブレット、ゲーム機のコントローラー、パソコンのHDDなどがあります。

    スマホには歩数計アプリや傾きによる電源のオン・オフなど、様々な動きに対して特定の機能を発揮する仕組みが搭載されていますが、これらは加速度センサーによって実現できるのです。またGPSと組み合わせることで位置情報に特化した新しい遊び方が誕生し、昨年アメリカの企業であるNiantic, Inc.が開発した「Pokémon GO」が有名になりました。

    ゲーム機のコントローラーでは、過去に任天堂から発売された「Wiiリモコン」に加速度センサーが搭載されているのも有名です。こちらは3軸方向の動きを検知できるため、実際にコントローラーを手で動かして、ゲーム上での「ボールの打ち返し」や「ゴルフの素振り」などを体験できます。

    wii
    Photo credit: edans

    パソコンやビデオカメラに用いられるHDDでは落下時の衝撃を検知する目的で、内部に加速度センサーを搭載しているものがあります。HDDは非常に繊細なパーツのため、振動や衝撃に対してとても敏感。そのため、内部の加速度センサーが落下時の重力加速度を検知し、電源を強制的にオフにして内部データを保護するのです。

    ジャイロセンサー(角速度センサー)とは

    ジャイロセンサー

    ジャイロセンサーとは、基準軸に対して1秒間に角度が何度変化しているかを検知するセンサーのことです。

    物体の回転運動を知ることができるため、加速度センサーでは検知できない「回転の動き」を測定することが可能。スマホやタブレッドなどで画面を傾けると、自動で見やすい方向に位置が切り替わるのも、ジャイロセンサーの機能が応用されているからなんです。

    実はジャイロセンサーはつい最近登場した技術というわけではなく、19世紀頃から人工衛星や飛行機などに用いられていました。近年ではナノレベルで部品の小型化が進み、先にも述べたスマホやタブレット、カーナビ、腕時計などへ搭載されるようになっています。また、ジャイロセンサーは加速度センサーと一緒に搭載されていることが多く、加速度を検出する3軸と角速度を検出する3軸の合計「6軸センサー」が主流となっています。

    加速度センサーの原理

    加速度センサーは3軸方向の加速度検知を目的とした慣性センサーであるため、主に「重力、振動、衝撃」を測定できます。小型加速度センサーの多くはMEMS(Micro Electro Mechanical System)の技術により製品化が行われており、極小のものであれば幅が10mm以下の商品まであるため、様々な機器に搭載可能です。

    加速度センサーの一般的な測定方式は、バネと重りが一体化した部品に対して、加速度が発生した時の位置を測定するといったもの。それぞれの方向に取り付けた重りが、外部からの衝撃により移動することで、その位置変化をセンサー内部で測定。後はバネ係数などを考慮した力学の方程式(フックの法則)に数値を入力することで、加速度を導き出すことができるのです。

    ジャイロセンサーの原理

    上述しましたが、ジャイロセンサーは回転や向きを検知するセンサーのことで、物体の回転速度などを測定できます。細かい動きを検出できる慣性センサーの一種として開発が進み、世の中の家電製品やデバイスなどにお馴染みの部品として定着してきました。

    有名な活用法としてはカメラの手ぶれ補正やクルマの安全システムなど。また、ジャイロセンサーも加速度センサーと同様、MEMSによる繊細加工技術が用いられています。

    ジャイロセンサーの一般的な測定方式は「コリオリの力(転向力)」の原理を利用して検知されます。コリオリ力とは、移動する質量に回転を加えた場合、その移動する方向に対して垂直方向に働く慣性力のことです。回転を伴う中での慣性力は、他にオイラー力や遠心力がありますが、コリオリ力もその一つとなりジャイロセンサーにおける重要な力学要素となります。

    具体的な活用例

    いくつか例をあげながら加速度センサー、ジャイロセンサーについて述べててきましたが、もう少し具体的な活用例を紹介していきましょう。

    スマホ、タブレット

    iPhone

    日本で最も売れているモバイル製品はApple社の『iPhone』や『iPad』が有名ですが、こちらの製品には多種多様なセンサーやが搭載されているのは周知の話。加速度センサーやジャイロセンサーはもちろんのこと、輝度センサー、近接センサー、電子コンパス、GPSなどが組み込まれており、まさにテクノロジーの塊です。

    iPhoneの加速度センサーは、主に人の動きを感知することに重点を置いており、端末を動かすことにより画面の位置変更や歩数計のカウントなどが行われたりします。

    近年では、就寝時に加速度センサーやマイクを活用して体の動きを検知することで、睡眠の質を高めるアプリまで登場。たとえばSleep Meisterというアプリでは加速度センサーで人の体動を感知し、眠りの浅い(レム睡眠)時にアラームを鳴らしてくれます。

    Sleep Meister

    またレースゲームのアプリなどは、画面を傾けることでハンドル操作ができるものもあるため、ここでも加速度センサーやジャイロセンサーの技術が活用されています。

    カーナビゲーション・システム

    カーナビに搭載されている加速度センサーやジャイロセンサーは、主に移動した距離やクルマの移動方向を検知するのに役立っています。カーナビのシステムはGPSやネット回線を通して現在位置を割り出すのが一般的ですが、これらの電波を受け取れないトンネル内などの場所では、搭載している各センサーが補助的に機能して位置情報を導き出しているのです。

    これらの機能はスマホなどのモバイル製品でも同等の役割を果たすため、カーナビを搭載していないクルマでは、地図検索アプリで代用する方が増えています。

    デジタルカメラ、ビデオカメラ

    手ブレ補正

    カメラによる撮影時に、人の動きによる縦横の動きや振動を各センサーが検知し、いわゆる「手ぶれ」を抑える役割を果たします。まずジャイロセンサーがカメラの揺れを検知し、その揺れの中から手ぶれ動作を抽出した後、補正したものをレンズの内部機能に反映。これらの動作は高速で内部処理されるため、初心者の方でも自然な撮影を楽しむことができるのです。

    SRSエアバッグ・システム

    エアバッグ

    乗員保護システムとして有名なエアバッグにも加速度センサーが活用されています。衝突時による衝撃をセンサーが検知した瞬間、内部に搭載されているインフレータに点火して袋状の部品にガスが送られます。この動作はまさに一瞬の出来事なので、センサーの役割が人の命を左右すると言っても過言ではありません。

    近年、エアバッグの不具合が問題視されましたが、こちらはガスが充填されているインフレータの構成部品が爆発時に飛散したことによる事故のため、センサーによる影響ではありません。

    エアバッグ・システムは過去に機械式加速度センサーが用いられていましたが、半導体技術の発展により「MEMS」が登場し、現在では多くの自動車のエアバッグにMEMS加速度センサーが用いられています。先にも述べた通り、加速度センサーは衝撃も検知するため、エアバッグにはなくてはならない部品として活用されています。

    人工衛星

    ジャイロセンサーは、人工衛星の姿勢を検出するために採用されています。対して加速度センサーは無重力空間のため、搭載されていてもあまり使用されることはありません。隕石などが衝突した際に、トラブルを検知するセンサーとして役に立つかもしれませんが、宇宙飛行の状態で重きを置かれているのは、基本的にジャイロセンサーとなります。

    多様な研究分野

    技術者の中には、ネットから直接購入して目的の機器に組み込む方もおり、特に人の動きや水平状態を検知するセンサーは、ロボット工学の分野で盛んに活用されています。二足歩行によるロボットの開発は非常に難しいため、各センサーを駆使して姿勢を維持しながら歩かせねばなりません。

    このことから、ロボット工学を専攻する学生や研究者で加速度センサーやジャイロセンサーを購入する方が多く、小型のものでも1,000円以内で買えるため、手軽に工作できるパーツとして人気があります。

    また、加速度センサーは地震を検知する役割を担っており、これらの研究分野では計測器に搭載するのが一般的となっています。近年では、スマホに搭載されている加速度センサーを使用して地震を計測するアプリ(MyShake)が無料配布されており、将来の地震予測や解析に繋がる試みが行われています。

    myshake
    出典 : MyShake 公式サイト

    開発メーカーと製品情報

    せっかくなので、実際に加速度センサーやジャイロセンサーを開発・販売している企業もいくつか紹介します。

    村田製作所

    加速度センサ | 村田製作所 – Murata

    村田製作所が開発している加速度センサーは、MEMS技術を活かしたシリコン容量型製品。機械に大敵な高湿環境や温度変化にも耐久性があり、測定方向は水平または垂直の3軸方向に対応しています。

    三菱電機

    三菱電機 半導体・デバイス : 製品情報 | ドライバIC・センサ[センサ]

    静電容量型の加速度センサーを販売している三菱電機。信号処理用ASICを搭載しており、各センシングに対して信頼性の高いデータを得ることが可能です。

    パナソニック

    機器用センサ | 制御機器 | 電子デバイス・産業用機器 | Panasonic

    先進のMEMS技術により、オフセット温度特性に優れた加速度センサーを販売しているパナソニック。カーエレクトロニクスに関連した機器に搭載され、高精度・高信頼性を強みとした製品を販売しています。

    ワコー

    加速度センサ – 株式会社ワコー

    ピエゾ抵抗型3軸センサーを販売しているワコー。「小型、軽量、高精度」を追求した商品力と生産性にも優れ、国内の家電製品や工作機械、ゲームのコントローラーなどに活用されています。

    セイコーエプソン 電子デバイス

    ジャイロセンサ | センサ | 製品情報 | エプソンデバイス

    セイコーエプソンはジャイロセンサーを主に取り扱っています。水晶結晶を素子として使用しているため、高性能・高安定特性に優れています。サイズ、感度の調整、デジタル・アナログのインターフェースなど、多様な機器に対応する商品が提供されています。

    アナログ・デバイセズ

    加速度センサー | アナログ・デバイセズ – Analog Devices

    センサー開発における消費電力の軽減、ノイズの除去、温度特性などの点で業界をリードしているアナログ・デバイセズ。各アプリケーションにおいて「加速度・傾き・衝撃・振動」を高精度で測定することが可能となっています。

    北陸電気工業

    北陸電気工業/製品情報/製品カタログ(カテゴリ別)>センサ

    富山県に本社を置き、センサー部品を開発・製造している北陸電気工業。販売しているピエゾ抵抗型3軸センサーは、傾斜検出、投げ上げ・自由落下、歩数計などの用途に対応が可能。また、同社の技術は有名ゲーム機のコントローラーにも採用されました。

    自動運転車やロボットにも活用

    現代ではセンサー技術が進化したことにより、自動運転にも加速度センサーやジャイロセンサーの技術が応用されています。自動運転は車載カメラで前方車を認識することが主な仕様となっていますが、周辺の細かい変化や動作を検知するにはセンサー部品が必要不可欠です。クルマは次世代のスマートデバイスの一つと見られているので、将来はスマホやタブレットと同様に、センシング技術が積極的に活用されることは間違いないでしょう。

    また、ロボット製品に関してもセンサーの役割は大きな影響を与えます。二足歩行をするためのバランス検知はもちろんのこと、腕を動かすなどの動作一つひとつに各センサーが反応して正しく制御する必要があります。今後は人の動きに近いロボットが開発される可能性が高いため、センシング技術の進化が開発業界で強く求められている状態です。

    およそ10年ほど前、モバイルデバイスやゲーム機のコントローラーなどにセンサー部品が初めて採用された時は、その機能性から珍しいものでも見るかのような扱いを受けていましたが、今では切り離せない部品として成長を遂げました。クルマ産業、パソコン・モバイルデバイス、家電業界、ロボット産業、宇宙工学など、加速度センサーやジャイロセンサーはどの分野でも応用できる技術として、将来は更に市場が拡大することを期待されており、今後も目が離せません。

  • 車載用通信ネットワークの”開国”

    車載用通信ネットワークの”開国”

    この2,3年間で“IoT”という言葉は、IT業界ではもちろん、一般の人でも多くの人が知るほど市民権を得た言葉になりました。私たちの身の回りの多くのモノがいずれネットワークに繋がり、今の生活をより便利に、そしてこれまでに不可能であったことが可能になる時代が到来しつつあります。自動車業界でもIoTの波は押し寄せてきており、コネクテッド・カーと呼ばれるクルマが開発され、各自動車メーカーはIoT化による新たな価値の創出に力を入れ始めています。

    コネクテッド・カーは、簡単に言うと『インターネットとのインターフェースを持ち、何らかの情報を外部とやり取りする機能を持つクルマ』ですが、インターネット普及の歴史とクルマ開発の歴史を良く知る人からすれば、『クルマとインターネットを繋げるくらい、もっと昔からあっても良かったのでは?』と考えることもあるかも知れません。実はコネクテッド・カーの登場が遅れた背景には”車載用通信ネットワークの鎖国”があり、その鎖国こそがIoT化の最大の障害となっているのです。

    今回のコラムでは、車載用通信ネットワークの技術を紹介しつつ、鎖国化に至った背景とそのネットワーク解放によるメリット・デメリットを解説します。

     

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  • X-By-Wire(エックスバイワイヤ)技術が拡げる自動運転技術の可能性

    近年、自動車メーカーに限らず様々な研究機関、IT企業による自動運転の技術開発競争が激化しています。今後もこの流れは続くと見込まれますが、一方でGoogleの自動運転技術開発の路線変更(当該事業の子会社化 + 自動車メーカーとの積極的な協業)、TESLAの自動運転中(と思われる)の死亡事故など、自動運転技術の難しさやリスクを露呈するニュースや意見等も少なくありません。

    なぜ自動運転技術の開発が難しいのか?

    その難しさを解決するためのキー技術、「X-By-Wire(エックスバイワイヤ)技術」を紹介しつつ、自動運転技術開発の難しさの本質に迫ります。

     

    統合電子制御システム開発にまつわるエンジニアの技術的リテラシー


    この20年で自動車には数多くの統合電子制御システムが搭載されるようになってきました。その背景には、Bosch社による車載用通信プロトコルCAN(Controller Area Network)の普及があります。様々な電子制御が通信によって繋がることで、これまで実現が難しかった機能が数多く実現できるようになりました。

    その代表格はインテリジェントクルーズコントロールではないでしょうか。エンジン、ブレーキ、カメラ、レーダー、それぞれの電子デバイスをネットワークで繋ぎ、統合制御することで前車との距離を適切に保つ機能を実現することが可能になりました。

    このような電子制御の組み合わせは、時として絶大な恩恵をドライバーにもたらしますが、統合電子制御システムの開発はエンジニアにとっては大仕事を意味します。そのシステムを世の中に出すに当たり、膨大な安全性・信頼性開発が待ち受けているためです。

    安全性・信頼性開発ではFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)や、FTA(Fault Tree Analysis)などを活用し、システム故障時のフェールセーフをシステムに織り込みます。このフェールセーフに関する詳細については別途、紹介することにしますが、今世の中を走っている最新のクルマには膨大な数のフェールセーフが織り込まれており、ユーザーの安全を確保しています。さらにはISO26262(車載用電子制御システムの安全性・信頼性に関する国際規格)の適用が本格化するなど、安全性・信頼性を担保するために莫大な工数が必要となっています。

    このように、安全性・信頼性開発は自動車開発のエンジニアにとって最もシビアかつ重要なタスクですが、統合する電子制御システムの数が増える程、その重要性は指数関数的に高まることになります。

    しかし、クルマに乗るお客様の命を預かる以上、その仕事に抜け目があることは許されません。まさにエンジニアにとって安全性・信頼性開発のスキルは身に着けなくてはならない重要な技術的リテラシーです。一般的に電子制御システムの機能開発よりも、むしろその機能の安全性・信頼性を担保することの方が圧倒的に難易度は高く、このような技術的リテラシーを持つエンジニアは一流と呼べる実力の持ち主と言っても過言ではありません。

    もちろん、この技術的リテラシーは自動運転技術に携わるエンジニアにとっても重要であり、少なくともIT企業出身のエンジニアにこのリテラシーを身に着けたエンジニアがいるかと言えば、非常に限られているのではないかと思います。このような状況こそが、まさに自動運転技術の開発に挑むIT企業にとって大きな課題となっているのではないかと考えられます。

     

    「エックスバイワイヤ(X-By-Wire)技術」とは?

    Fly-by-Wire (FBW) Flight Control System. Source: AviationNepal

    明確な定義があるわけではありませんが、一般的には「制御対象を、電子信号を経由して狙い通りに制御すること」です。

    この技術の輸送用機器への最初の適用事例としては航空機が最初で、当初はFly-By-Wireと呼ばれていました。Fly-By-Wire技術では、パイロットの操縦桿の動きをストロークセンサで検知、電子信号に置き換え、ラダーやエルロンを電子制御式の油圧アクチュエータなどで作動させます。

    なぜ、Fly-By-Wire技術が開発されたのでしょうか?その理由は航空機の大型化・高速化です。第二次世界大戦の頃、航空機には自動車と同じレシプロエンジンが採用されていました。パイロットの操縦は機械式が採用されており、パイロットの手足の動きが機械的にエンジンスロットル、ラダーに伝わり、機体の動きを制御していたのです。

    しかし、ジェットエンジンの登場で航空機の速度が著しく増加したことで人力による制御が困難になります。この課題を解決するため、より大きな力で、かつ正確な位置制御が可能なFly-By-Wire技術が開発されました。現在では様々な分野にFly-By-Wire技術は適用されていますが、制御対象が航空機だけでなくなったことから、X-By-Wire技術と呼ばれるようになったのです。

    自動車において、X-By-Wire技術は、エンジンスロットル、ブレーキにも採用され、現在では一般的な技術として広く普及しています。また、これまでに適用が難しいとされていたステアリングシステムについても、日産自動車が実用化に成功しています。このように、現在の自動車はドライバーの運転操作が全て電子信号に置き換えられて走行することが可能となっているのです。

     

    自動運転とX-By-Wire技術の関係

    Source: NISSAN MOTOR CORPORATION

    自動車におけるX-By-Wire技術は先にも述べたように、ドライバーの運転操作を信号に置き換えて自動車を走行させることを目的としています。しかし、航空機と異なり、人の力でも十分に自動車の運転操作は可能であるにも関わらず、導入に至ったのはなぜでしょうか?

    その理由は、ドライバーの運転操作が必ずしも正しいとは限らないことにあります。例えば、ドライバーが不適切なアクセル操作を操作すれば燃費の悪化に繋がりますし、ドライバーの意図通りの加速が得られないこともあるでしょう。

    しかし、X-By-Wire技術を応用すればドライバーの運転操作の情報に基づき、最も適切な運転操作を算出して修正することが可能となります。現在ではドライバーの運転操作には何らかの修正が加えられることは、もはや当たり前となっています。

    このように、ドライバーの運転動作は何らかの形で電子制御によって介入を受けていますが、エンジンスロットル、ブレーキ、ステアリングそれぞれの電子制御への介入の割合が100%となること、これがまさに自動運転です。つまり、X-By-Wire技術そのものが自動運転の土台になっているのです。

    現在、全ての運転操作にX-By-Wire技術の適用が実用化されていることから、もはや自動運転の実現は時間の問題と言っても良いかも知れません。

     

    それでもなぜ、自動運転技術の実現が難しいのか?

     

    X-By-Wire技術はドライバー操作への介入が可能です。しかし、その介入は安全性を考慮した上で限られた条件下でのみ、作動されるように設計されています。この限られた条件を外すことが自動運転を実現することを意味しますが、この地球上に存在するすべてのドライバー、すべての道路、すべての環境条件においてドライバーの安全を担保して初めて自動運転が実現したと言えます。

    しかしながら、現実的にすべての走行条件を考慮することはほぼ不可能と言っても良いかも知れません。走行条件の数は天文学的な数にのぼる上に、そのすべてに対応する必要があるからです。しかし、だからと言って自動運転の実現が不可能かと言うとそうでもありません。不確定な条件を一つ除外すれば短時間での実現は十分に可能です。

    その不確定な条件とは「人による運転操作」です。全ての運転操作を電子制御の判断に置き換えれば、不確定な条件を確実に取り除くことができます。

    ドライバーの体調、気分、性格は運転操作に大きな影響を与える一方、電子制御システムは常に同じ判断を短時間で正確に下すことが可能です。技術的な観点で極論を言えば、ドライバーの運転動作への関与を除外する(つまりドライバーレス)ことで技術的なハードルは各段に下がります。

    もちろん、ドライバーレスをいきなり実現できるほど簡単ではないのが自動運転の技術開発であり、10年単位での時間が必要でしょう。ドライバーレスに関しては賛否両論ありますが、この圧倒的に困難な技術開発に対して有効な技術的パラダイムシフトの誕生に期待しつつ、自動運転の技術開発の進化には今後も目が離せません。

     

    まとめ

     

    自動運転を実現するには、X-By-Wire技術の動作シーンの圧倒的な拡大が必要であり、その拡大には困難を伴うことは明らかです。

    自動車メーカー、IT企業それぞれ単独での開発ではユーザーにとって真に価値のある完全自動運転(Level 4)の実現は困難ですので、双方の強みと技術アセットを、会社の枠組みを超えて融合させていくことこそが、自動運転の実現のキーポイントになるのではないかと思います。また、その流れはすでにAlphabet(Google)が子会社化したWaymoの動向にも顕著に現れていますね。今後がますます楽しみです。

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    ライター情報
    神野 研一
    自動車工学エンジニア

    国内自動車メーカーにて10年以上の開発経験を持つ。
    専門は車両運動CAE、走行系制御開発、電子信頼性開発、実験技術など。
    現在は英国に在住し、F1チームでVehicle Science Engineerとして活躍中。

  • 半導体メーカーNXPが見せる自動隊列走行技術

    半導体メーカーNXPが見せる自動隊列走行技術

    2016年、Ottoの自動運転トラックが長距離走行と配達に成功。さらに、時同じくしてNXP、DAFトラック、TNO、Ricardoも車間間隔が0.5秒という画期的なトラック隊列走行に成功しています。

    安全性と効率性など高い技術力を求められる自動隊列走行。そこにはどんな革新的な仕様や技術が隠されているのでしょうか。

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  • Uberの自動運転車プロジェクトの現状 ~カリフォルニア州でのテスト走行中止~

    Uberの自動運転車プロジェクトの現状 ~カリフォルニア州でのテスト走行中止~

    いまや世界的に有名になりつつあるアメリカの配車サービス「Uber」。運営元のUber Technologiesは2016年12月にサンフランシスコにて自動運転車の実験を開始していましたが、カリフォルニア州のサンフランシスコ陸運局から公道を走ることは止めるように言い渡され、実験は中断。

    結果的にカルフォニアを離れ、アリゾナへと実験の場を移すことを決めたようです。

    わずか数年で既存の常識をぶち壊し、飛躍的な成長を遂げたUberですから、自動運転の分野でもどのように戦っていくのか非常に興味深いところ。そこで本稿では今回の騒動も含め、Uberの自動運転のプロジェクトについて紹介していきたいと思います。

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