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  • 新しい都市型モビリティ・コンセプト「Urbanetic」とは

    新しい都市型モビリティ・コンセプト「Urbanetic」とは

    自動車メーカーをはじめ、家電・半導体メーカーなどが先進車載技術を持ち寄り毎年開催される技術展示会「CES」では、モビリティの未来を牽引するであろう自動運転やEVが、これまで自動車業界での最新トレンドとされてきました。しかし、今年1月8日から11日まで米・ラスベガスで開催された「CES2019」において、メルセデス・ベンツが披露した次世代EV「Version Urbanetic」は、都市型モビリティに独創的な価値観を取り入れた意欲作として、各業界に大きな衝撃を与えました。

    今回は、同社が提案する全く新しい未来のクルマUrbaneticとは何か、誕生までの経緯とコンセプトや具体的な特徴・機能を整理したのち、モビリティをどのように変化させるパワーを秘めているのかを考察します。

    Urbaneticとは~その誕生経緯とコンセプト~

     

    Urbaneticとは完全自動運転が可能なEVです。同様の機能を有するコンセプト・カーはすでに登場していますが、それらは人もしくは物資の「どちらか一方」を輸送するよう設計されています。一方、メルセデス社が打ち出したUrbaneticは、自動運転システムが搭載されたシャーシの上に、乗客用モジュールや貨物モジュールを乗せ換え、人が移動するのかそれとも荷物を運ぶのかという双方の用途に応じた運用が可能な、ボディー交換式EV自動運転車です。

    UrbaneticはEVによる自動輸送ソリューションの研究過程で誕生したものであり、今後すぐに量産体制を構築し市場へ投入する計画はないとのこと。ですが、1つの自律走行プラットフォームの上に、交換可能なモジュールを使用する斬新なアイデアはおそらく世界初で、1台の車両から最大限の効率性引き出せることから、交通量減少による渋滞緩和、限りある自動車製造資源の節約、EV普及に伴う排ガスの減少、自律運転によるドライバー不足の解消など、人員・物資運搬に関わらず、現代モビリティ社会が抱えている諸問題を解決に導くコンセプトとして、世界中で注目が集まっているのです。

    Urbaneticの特徴と機能~絶えず稼働するモビリティ・サービスへの進化~

     

    Urbaneticは斬新かつ世界初と述べたものの、同一のEVパワートレーンを搭載したシャーシを、複数のボディーと組み合わせるアイデアそのものは、製造の効率をアップしコストを下げるのに効果的であることから、他の自動車メーカーでも推進されています。Urbaneticが画期的なのは、「モビリティ・ハブ」と呼ばれる基地間を、モジュールが搭載していないシャーシがAIによる自動制御で行き交い、かつ数人のメカニックによって短時間で用途に併せた載せ替えがリアルタイムで行える点です。

    また、人を運ぶためのモジュールには、最大12人が余裕をもって乗車できるスペースが確保されているため、ライド・シェアへの導入が進めばユーザーを安全かつ確実に輸送する「次世代都市型モビリティ」の中核を担う存在になりえるでしょう。加えて、貨物モジュールの容量は約10立方メートルで上下2層に区切ることが可能なため、最大10個のユーロ・パレット(W1200mm x L800mm x H144mm)の貨物を運搬できるEV自動運転トラックへと変化します。

    朝のラッシュアワーに通勤・通学ユーザーを送り届けた後、貨物モジュールへ変更して数時間配送業務をこなし、夕方の帰宅時間には再び乗用タイプに戻り、夜間から朝までは休みなく荷物を運搬するトラックとして運用するなど、獅子奮迅の活躍が期待されます。充電・メンテナンスに要する時間を除くと、止まらないモビリティとして運用可能なUrbanetics。過去100年間ビジネスにほとんど変化が生じていない、自動車業界を一変する可能性を秘めたコンセプト・カーなのです。

    トヨタ自動車が提唱した「e-Palette」も同様のコンセプトではあるが・・・

    前述したメルセデス社を含むすべての自動車メーカーは、乗用車と貨物バンを別々に製造・販売することで利益を上げ、巨大企業へと成長しましたが、世界中の都市は深刻化する交通渋滞と大気汚染の減少・緩和を急いでいます。

    Urbaneticは、「より少ない車両でより多くの人と物を輸送する」ことを想定したコンセプトであり、実用化されれば一気に諸問題を解決へ導くコンセプトですが、それと同時に自動車メーカーのビジネス・ボリュームを大幅に縮小させかねない諸刃の剣でもあります。メルセデス社が、Urbaneticの量産と市場投入を計画していないのはそのためで、他メーカーもEV自動運転車の開発・普及に向けての動きは積極的ですが、車の流通量を減少させる取り組みへ、膨大な資金と時間を費やす余裕がないのが現状です。

    そんな中、トヨタ自動車が2018年に発表した「e-Palette」は、メルセデス社を傘下に置くダイムラー・グループ以外では唯一、1台の車両を「多用途運用」することにより、都市交通インフラのコンパクト・シームレス化を目指す、極めて類似したコンセプトです。Urbaneticに先駆けCES 2018で展示されたe-Paletteは、全長4,8m×全幅2m×全高2,25mのミニバスサイズの自動運転EVで、低床・箱型デザインにより広大かつ、バリアフリーでフラットな空間が特徴。

    そして、単なるガソリン車の代用品ではなく、人員移動用のライドシェア仕様をはじめ、デリバリー、移動ホテル、移動オフィス、リテールショップといった、サービスパートナーの用途に応じた設備を搭載することができます。驚くべきは、Uber・Didi・Amazon・ピザハットとすでにパートナーシップを締結していること。

    出典:トヨタ自動車

    UberとDidiは当然ライドシェアでの利用となるでしょうし、Amazonやピザハットはドライバー不足の解消を可能にするため、具体性と実用化に向けての「スピード感」で言えば、Urbaneticより勝っているとさえいえるでしょう。移動ホテルや移動オフィスが登場すれば、これまで移動に費やしていた時間を有効活用できるようになりますし、AIによる緻密なデータ解析でセールスが期待できる場所へタイムリーに移動するリテールショップが実現すれば、効率も上がり売上アップにもつながるはず。

    このコンセプトの実用化によって、トヨタは「クルマを売る会社」から「移動サービスを売る会社」への変貌を目指しており、e-Paletteはそれを実現するだけの高いポテンシャルを有しています。

    しかし、いくつか弱点も。将来的にe-Paletteは全長4~7mの3サイズがラインナップされる予定ですが、いずれにしても中・大型車両でありマツダと共同開発したEVや、数多くの先進自動運転技術が投入されているため、想定される提供価格が極めて高額になることが予想されます。現実的には、一般ユーザーや個人事業主単位での導入は難しく、大企業もしくは地方自治体レベルでの普及しか進まないと予想されるため、自動車業界全体を巻き込むイノベーションまでは一歩届かないかもしれません。

    さらに、トヨタは東京オリンピック・パラリンピックに併せ、選手村を巡回する定員20名の「e-Palette・2020年仕様」を、今年度の東京モーターショーの自社ブースに展示予定です。最高時速19kmの低速自動運転EVには身長2mを超えるアスリートが悠々と乗車でき、車椅子ユーザーも4名がスムーズに乗降できるとのことですが、裏を返すとこれが現時点での限界とも言えるかもしれません。選手村という限定的かつ部外者が立ち入れない範囲にとどまっているうえ、時速20kmに満たない最高時速と150kmとされている航続可能距離では、とても忙しい都民の足替わりを担えると言えないでしょう。

    大会が終了すると選手村は解体され、分譲マンション用地などに再利用されますから、現在公表されている投入範囲・スペックに留まった場合、同コンセプトはスポーツの祭典を彩るイベントの1つになりかねない場合も。

    通信業界における「5Gへの移行」をイメージしていただきたいのですが、5Gを利用するには対応機種が必要ながら、4G・LTEサービスも継続提供されるため、非対応機種でもそれほど不便さを感じることはありません。言ってみれば、モビリティにおいて多くの車種で実用化されている「EV自動運転」が4G・LETであり、Urbaneticはそれに「モジュールの載せ替え」というちょっとした工夫を加えることにより、5Gに当たる新サービス「MaaS」へ移行する地ならしができるもの。

    一方、トヨタはe-Palette・2020年仕様を通じ蓄積したデータを活用し、様々なモビリティ・サービスに対応するe-Paletteの開発を進めるとしていますが、交通インフラが整備されている都市部において、思惑通りに普及するかは今後の見所かもしれません。

    総論!Urbaneticはモビリティの未来をどう変えていくのか

     

    e-Paletteと異なり、Urbaneticの「モジュールを乗せ換える」という考え方自体はいたってシンプルですし、導入コストが断然リーズナブルで済むうえ汎用性も非常に高いと言えるでしょう。コンセプトの根本にある空っぽのEV自動運転シャーシは、車体開発・製作費を大きく削減することもできるうえ、車両制御センターによって取得されたデータをリアルタイムで分析し、ニーズに基づいて効率的に配車・ルート設定をするシステムも組み込まれています。

    この配車・ルート設定システムはITモバイルとの連動も可能なため、ユーザーはスマホで配車スケジュールを確認し、時間に併せてモビリティ・ハブへ向かえば、渋滞を避けた最短・最速ルートでの移動ができるようになります。また、Urbaneticのモビリティ・ハブは、そのまま物流の集配基地として利用できるため、同業界が抱える人員不足解消や業務効率化による運営コスト削減、さらに荷物到着時間や受取確認・決済まで、通信モバイル1つで完了できるようになる可能性も秘めています。

    サイズ的に融通が利きやすいので、モジュールのバリエーションさえ増やせば人やモノの休みない大量輸送だけではなく、ラストワンマイルを解決する糸口ともなりえるのです。マクロな視点で開発が進んでいるe-Paletteより、ミクロな観点で研究が進められている、独・ダイムラーグループのUrbaneticの方が、実は国内の交通事情にマッチしているのかもしれません。

  • 田んぼを自動運転?クルマ以外の自動運転をまとめてみた

    田んぼを自動運転?クルマ以外の自動運転をまとめてみた

    自動運転と言えば、トヨタ・セーフティセンスや日産・プロパイロットなど、人やモノを輸送するクルマを思い浮かべる方は多いでしょうが、それ以外の業務用機械やロボットにも、次々と自動運転技術が適用され始めています。

    今回は、さまざまな業種・分野への積極的な導入が進んでいるクルマ以外の自動運転の国内運用事例をまとめてご紹介します。

    無機質なロボットが有機農業を支える!「アイガモロボット」

     

    大量生産・消費の時代から、少子化などの影響によって安全性を重視する食のトレンドへとシフトしている近年、有機肥料・農薬を使用せず生産されたオーガニック野菜が数多くスーパーに並び、食卓へ上る機会も増えてきました。そんな中、2019年6月山形県朝日町の水田上で、有機農法の1つ「アイガモ農法」が抱える課題を解決へと導く、アイガモロボットが日産のエンジニアらによってお披露目されました。ITテクノロジーを取り入れた新しい稲作の形として注目を集めています。

     

    出典:日産自動車

    アイガモ農法とは雑草や害虫をエサとするヒナを春先に数十羽水田へ放つことで、農薬を使用しない米づくりを目指す農法ですが、アイガモは成長すると肝心の稲を食べてしまうため、実りの秋を迎えるころにはお役御免になってしまいます。しかし、成長したアイガモを自然に放すことは法律で禁止されているため、飼育・処分問題はもちろん、弱いヒナたちを外敵から守る電柵や防鳥糸といった設備投資など、アイガモ農法には生き物を利用するからこその課題が存在していました。

    そこで誕生したのがアイガモロボット。Wi-FiとGPSで制御されたロボットが、プログラミングに従い水田一杯を自動走行することで水面が濁り、雑草や藻の発生・成長に不可欠な光合成を阻害する仕組みです。ロボットであるため雑草や害虫を食べることはありませんし、アイガモのように成長するわけでも飼育スペースやエサが必要なわけでもないため、減農薬や導入・運用コストの削減はもちろん、動物愛護の精神から見ても有益な取り組みだと言えるでしょう。

    アイガモを意識したようなつぶらな瞳が特徴の同ロボットをボランティアで開発した日産エンジニアによると、現時点における一般販売は予定されていないそうですが、製品化したいという企業が現れれば、惜しみなく技術協力する方針とのこと。

    日産の最新技術を用いて水田を自走するアイガモロボットは、1台でアイガモ20羽相当の働きを期待できるため、サステナブルかつ経済的実現性が非常に高く、もし製品化されれば減農薬を目指す稲作農家の間で、爆発的に普及する可能性もあると考えられます。

    法改正が進めば実用化も!「自動宅配・配送ロボット」

     

    ドライバー不足が加速度的に進む物流・運送業界にとって、IT技術を用いた自動宅配・配送インフラの実現は、企業としての存続を左右する最重要課題。しかし、現在の日本の道路交通法では、公道における無人自律走行は原則認められていません。一方、海外でも基本的な道交法の事情は同様ですが、自動搬送ロボット(AGV・UGV)の開発が進んでいるとともに、一部地域では特区制度のようなものを用い、公道での実証実験を積極的に実施し始めています。

    この国際的な流れを受け、経済産業省は自動走行ロボットの社会実装に向けたインフラ整備を具体的に検討するため、以下の4点に焦点を当てた「官民合同協議会」を発足と発表しました。

     

    • 安全性の確立と役割分担の整理
    • ユニバーサル性の確保(交通弱者への配慮)
    • マップ等のインフラの整備(協調領域の検討)
    • 事故等の法的責任分界の整理

    2019年6月24日開催された準備会合に先立ち、経産省本館前に開発中である5種のAGVを集め、公開とデモンストレーションを実施しました。


    あいにくの雨の中、公開された自動運転ロボットは「EffiBOT(三菱地所)」「Hakobot(HAKOBOT)」「CarriRo Deli(ZMP)」「Marble(三菱地所)」「楽天UGV(ジンドン製)」の計5台で、このうち三菱地所のEffiBotは人の後を追尾して荷物を運ぶ、「自動追従型」と呼ばれるロボットであり、最大300kg程度の荷物運搬が可能なため、女性や高齢者など腕力に自信のない人が扱う場合に効果が期待できます。言ってみれば、台車や大型キャリーカートの自動運転バージョンですので、技術的にも法的にも実装と普及が比較的スムーズに進むと考えられます。

    一方、それ以外のロボットはGPSなどの情報をもとに、配送会社の地域拠点からユーザーの自宅まで荷物を運ぶ「自律走行型」。歩行者や障害物をセンサーが感知すると自動停止するなど、安全性も十分に配慮されています。また、これらの自動配送ロボットは、アプリに届いた暗証番号を入力するとボックスが開き、ユーザーが荷物を受け取れる仕組みになっているため、物流のラストワンマイルを担う存在になりえるものの、実用化に不可欠である公道での実証実験を行う必要があります。

    今後は、関係省庁・運送事業者・サービサー・デベロッパー・自治体はもとより、立命館大学や慶應義塾大学など、官・民・産・学が参画している同協議会が先頭に立ち、さらなる具体的な活用方法の検討と、公道を含めた実証実験や法整備の加速が期待されています。

    まるでSF映画!危機回避・人材不足解消に効果絶大「自動警備ロボット」

     

    敵対勢力の本拠地に潜入した主人公が、徘徊する「自動警備ロボット」の目をかいくぐりいざラスボスと対決…!なんてストーリーは近未来が舞台のSF映画でよくある展開ですが、ロボット&自動運転技術の発展により、それが現実となる時代が間近に迫っています。任務遂行に危険を伴うことを理由に、物流業界以上に人材不足が深刻な警備業界にとって、遠隔操作可能な自動警備ロボットは様々な問題を一気に解決に導く救世主となりえる存在です。

    基本的に、対象施設内を巡回すれば事足りる自律走行型警備ロボットについては、法整備が不要であるため近年国内でも新製品の開発・リリースや実用化が急速に進む分野と言えます。セコムは2019年5月、自律走行型巡回監視ロボット「セコムロボットX2」のサービス提供を6月から開始すると発表し、すでに第1号の契約先として成田国際空港で導入されています。

    また、セコムと並ぶ国内警備会社大手の綜合警備保障(ALSOK)が、2019年3月に発表した警備員協働型警備ロボット「REBORG-Z」は

    • 多言語に対応した「施設案内機能」
    • 顔認証による「不審者検知機能」
    • 事件・事故を未然に防ぐ「異常音検知機能」
    • 赤外線カメラと熱センサーによる「火災感知&初期消火機能」

    などを備えているため、施設に訪れたユーザーとのコミュニケーションが向上するほか、危険を伴う防犯・防災行動をロボットに任せられるため、省人化とセキュリティレベルのUPも期待できます。今後は空港だけではなく、ショッピングモールやレジャー施設など街のいたるところで自動警備ロボット機会が増えるかもしれませんね。

    働き方改革を自動運転で推進!「自律走行型案内ロボット」

     

    名古屋市の「Hatch Technology Nagoya」に参加するNECは、同市庁舎でオペレーターによる業務を一部代行し、来庁者を希望窓口まで案内する「自律走行型案内ロボット」の実証実験を、2019年10月から翌年1月にかけ実施すると発表しました。Hatch Technology Nagoyaは、ロボット・AI・IoTなどの先進技術を活用することにより、行政分野における働き方改革を推進し、労働時間短縮や人材不足の解決を図る取り組みで、同社ほか計4事業者と名古屋大学が参加しています。

    今回、NECが提供したのは32型の大型ディスプレイと、自動運転用の各種センサーを搭載する自律走行型ロボットであり、タッチパネル操作を通じユーザーが目的とする所管課をAIが判別し、自律走行により当該課までスムーズに案内するというもの。同社は、官公庁への来庁者が急増する年末年始にあえて実証を行い、ロボット運用時のデータを大量に収集・分析することで、より確実でスピーディな案内を可能とする効率的な走行ルートの設計などを進め、全国へ普及させていく方針とのこと。

     

    空気まできれいにする優れモノも登場「全自動AI掃除ロボット」

    自動掃除ロボット言えば、一番はじめに頭に浮かぶのがルンバ。それ以外にもすでに多くのお掃除ロボットが家庭やオフィスで活躍していますが、ここで紹介するのは業務利用にも耐えうる大容量で吸引力が強い、ソフトバンクロボティクスが開発したAI清掃ロボット、「Whiz(ウィズ)」です。

    Whizはカーペットなどの床の清掃を目的とする、自律走行可能な乾式バキューム型AI清掃ロボットであり、掃除機としてのスペックを見ても優秀。

     

    • 清掃能力・・・500m²/h
    • 継続稼働時間・・・約3時間(ノーマルモード) 約1,5時間(パワーモード)
    • 集塵容積・・・4,0L(紙パック式)
    • 安全機能・・・障害物検知(LiDARセンサー&3Dカメラ)、衝撃検知(センサー搭載バンパー)、異常検知(段差センサー/車輪浮き検知センサー/異常時ブレーキ機能)

     

    なんといっても使用開始時の「清掃ルート設定」が非常に簡単なのが特徴です。清掃したいルートを手押しでティーチングすれば設定が完了します。2回目以降はスタートボタンを押すだけで記憶したルートを自律清掃してくれるほか、複数ルートを設定・使い分けることも可能なため、手軽に施設内をクリーンで快適な状態に保てるのです。

    清掃業界は採用難や高年齢化により、厳しい人材不足問題に直面していますが、AI清掃ロボットWhizはそれを文字通り「一掃」し、清掃分野の未来を切り開く革新的ナビゲーションであると同社は胸を張って言います。事実、他社に先駆け10台のWhizを導入した大手ビルメンテナンス企業、グローブシップ(株)は、ソフトバンクロボティクスからの使用感・効果に対するヒアリング調査で、「作業範囲をきっちり決めて、人がやるべきところと分けることが必要だが、平米数が増えた場合Whiz2台で作業を組み立てれば、半分の時間で(作業完了)できるかもしれない。」と述べるなど、実作業者の負担軽減や作業効率の向上に寄与するとの見解を示しています。

    無限の可能性を秘める自動運転

     

    今回紹介したのは、いずれも陸上を自律走行するロボットにすぎませんが、ドローンを用いた空輸の実証実験も着々と進んでおり、すでに一部地域では実用化されている事例が存在します。現状は法規制によってドローンが完全自動空輸できる場所は限定されますが、規制緩和が進めば物流業界の人出不足を解消するのみならず、災害発生時の援助物資や医療品・輸血用血液の緊急輸送など、活躍するシーンは数多くあります。

    また、事業用ロボットやドローンと自動運転技術は相性が良く、走行速度が遅いことや飛行範囲が広いことから、人を含めた様々なモビリティが複雑に関与する中で高速走行するクルマより、格段に法整備が進めやすいとも言えるでしょう。つまり、陸上では人の代わりを担う自動運転ロボットが忙しく働き、空を見上げれば郵便物や商品をユーザーへ届ける自律飛行ドローンが縦横無尽に飛び交う…、なんてSF映画のような時代が到来するのは、それほど遠い未来の話ではないのです。

  • 交通事故の削減を目指して~先進安全自動車(ASV)とは

    交通事故の削減を目指して~先進安全自動車(ASV)とは

    ITテクノロジーを活用した自動運転やコネクテッドカー、そしてMaaSの実現に向けた動きが年々強まる中、かなり早い段階から取り組みが進んでいるのが「ASV」の実用化です。今回は、先進安全自動車「ASV」の基本概念とこれまでの推進過程・方針に触れた後、現在実用化している具体的なASVの機能や将来的なビジョンにまでを解説します。

    ASVとは何か

     

    ASVとは、先進安全自動車(Advanced Safety Vehicle)の略称であり、先進技術によってドライバーの認知・判断・操作をサポートする機能を搭載した次世代自動車、もしくはそれを含める高度道路交通システムの整備・推進プロジェクトのことを言います。

    日本国内での取り組みが始まったのは1991年。1995年度までに死亡者を1万人以下にする「第5次交通安全基本計画」を実現すべく、国交省を事務局に官・学・産が共同で設置した「ASV推進検討会」を中心に、関連技術の開発・実用化・普及を推進しています。

    同検討会は発足当初から痛ましい死亡事故の多くが、ドライバーの操作ミスに起因することを鑑み、以下3点を基本理念に据え、より高度・広範囲な安全運転支援システムを実用化することで、交通事故削減に大きく貢献することを目指し活動を続けています。

    ドライバー支援の原則・・・安全な運転をすべき主体はドライバーであり、ASV技術はあくまで「支援」に留まること。
    ドライバー受容性の確保・・・ドライバーがシステムの作動状態を常に確認でき、制御に介入することが可能であること。
    社会受容性の確保・・・他の交通、特に歩行者や自転車から理解され、かつ安全性が後退しないこと。

    草創期のASV搭載車は、「21世紀に向けた試作」と位置付けられていたほか、存在意義や具体的な取り組みもぼんやりしていましたが、

     

    • 第1期(1991~1995年度)「技術的可能性の検討」・・・開発目標の設定と事故削減効果の検証(ASV19台のデモ走行)
    • 第2期(~2000年度)「実用化のための条件整備」・・・ASV基本理念・技術開発の指針策定と事故削減効果の検証(デモ走行車を35台に拡充)
    • 第3期(~2005年度)「普及促進と新たな技術開発」・・・ASV普及戦略策定とITを用いた技術開発の促進(IT利用型ASVの実証実験開始)
    • 第4期(~2010年度)「事故削減への貢献と挑戦」・・・事故削減効果の評価手法の検討・実施とIT利用型ASVの基本設計書策定(IT利用型ASVによる公道総合実験開始)
    • 第5期(~2015年度)「飛躍的高度化の実現」・・・ドライバー異常時対応・歩車間通信システムの基本設計書策定とITS世界会議でのデモンストレーション

    という過程を経て、現在では後述する機能を搭載した自動車が数多く登場し、基本理念通り安全運転を強力にサポートする効果がユーザーに浸透した結果、ASVは瞬く間に普及しました。そして、これはAVSだけの功績ではありませんが、2018年度の交通事故死亡者は3,532人で、警察庁が保有する1948年以降の統計では最小となるなど、死亡事故削減効果も顕著に表れ始めました。

    進化が止まらない!実用化されている主なASVの機能

     

    ASVとアルファベット3文字を並べても、具体的にどんな機能なのかさっぱりわからない方もいるかもしれません。ここでは現在、搭載が進んでいる具体的なASVに属する機能について簡単に紹介しておきましょう。

    なお、自動車メーカーによってASVはパッケージングされる名称が異なるほか、一つひとつの機能も呼び方が微妙に変わったり、作動条件(車速や車間距離など)が変化したりますが、基本的な効果についてはほぼ同じと考えて問題ありません。

    ①  「衝突被害軽減ブレーキ」

    衝突被害軽減ブレーキとは、車両前部に取り付けられた赤外線レーザー・光学カメラ・ミリ波レーダーなどのセンサーで検知した車・障害物との衝突リスクが高まると、音や警告灯でドライバーに回避を促したり、ブレーキ操作の補助をしたりする機能です。

    最近の車種はセンシング機能が飛躍的に向上し、車や障害物の検知精度が高まったうえ、警告時点でブレーキの効きを強めたり、シートベルトの巻き上げを開始したりするなど、アクティブセーフティとパッシブセーフティの間に位置する重要な役割を果たしています。

    車対車の事故で一番多い追突事故の軽減と、被害緩和に大きな実績を上げている機能ですが、普及初期は作動すれば絶対に追突しないという訳ではなく、あくまでドライバーが自らの意思でブレーキを踏んで初めて、事故を回避できる機能でしかありませんでした。

    しかし、技術革新に伴い、スバルが他社に先駆けて自動停止まで行うアイサイトを2010年販売のレガシィに初搭載し、消費者への訴求力の高さとそれまで高額で思うように普及しなかった価格設定を大幅に下げた結果、瞬く間に大ヒット。その後、ドライバーが機能に依存することを避けるため設けていた規制が、安全性を示すデータなどによって解除されると、遅れながらもマツダが「SCBS」を、ダイハツが「スマートアシスト」を2012年ごろから新型モデルへの搭載を開始します。

    最後まで、衝突被害軽減ブレーキの自動停止に消極的だったトヨタも2014年、2017年末までに自動停止まで行う衝突被害軽減ブレーキをほぼすべての車種に搭載すると発表し、現在ではすべての国内メーカーがこの流れに追随している状況です。ただ、それでも走行状況や道路環境、気象条件やシステムエラーなどにより、安全に自動停止しないケースはあるため、数多くのシーンで安全に寄与してくれるASVながら、搭載しているからと絶対に慢心してはいけない機能でもあります。

    ②  「車線逸脱警報装置(LDW)&レーンキープアシスト」

    安全運転遵守の観点からは本来避けるべきことですが、運転中にカーナビやコンポの操作を行っていると、意図せず体の一部がハンドルに触れて動き、車体が大きく左右にぶれてしまうことも。車線逸脱警報装置は、車の前部に取り付けられた光学式カメラセンサーが、道路上の白線(黄線)を認識し車線をはみ出しそうになったとき、音や警告灯などによってドライバーに警告し、正しい位置に戻ることを促す安全運転支援機能です。

    衝突被害軽減ブレーキのように、車が自動でハンドル操作を行うのではなく、単純なアラート機能に過ぎませんが、居眠り運転時の覚醒効果も期待できるため、夜間走行や長距離運転をする機会が多いユーザーは、車の乗り換えを検討するときに、判断材料の一つに加えてもいいでしょう。

    一方、レーンキープアシストは、通常後述するACCと共に使用され車両が不意に触れた際のアラートだけではなく、電動パワステにトルクを発生させるなどのステアリング制御を行い、ドライバーが軽い力でハンドル操作できる「アシスト機能」を兼ね備えています。

    登場当初は、車線逸脱を感知した時のみ作動する「アシストタイプ」がほとんどでしたが、自動運転のレベルアップに伴い高速道路や自動車専用道に場所が限られるものの、車線中央を走行するよう常時ステアリング制御を行う新型モデルも登場。

    エポックメイキング的存在であるのが、2019年7月に日産が新型・スカイラインに搭載し話題を集めた「プロパイロット2,0」。高速道路での同一車線ハンズオフ運転の実現は世界初です。これまで各メーカーが搭載してきた自動運転はレベル2で、運転主体はドライバーであり常にハンドルを握っていることが前提の「部分運転自動化」ですが、プロパーロット2,0は同一車線内でのハンズフリー運転だけではなく、ナビとの連動による運転支援機能付き。

    たとえば、ICで車線移動を行う場合、ドライバーに音声や画面で指示を仰ぐ合図が発せられ、それを承認するとハンドルに手を添えるだけで車線変更が完了し、さらに高速出口ではきちんと減速までするのです。感覚的には、自動フライト中の航空機が正確かつ安全に飛行しているか、機長であるドライバーが監視している状態であるため、緊急時のみ人が運転タスクに関与するレベル3に限りなく近い、「レベル2,9」を実用化したとさえいえるでしょう。

    ③「後側方接近車両注意喚起装置&バックカメラ・センサー」

    車にはミラーでは見えない死角が左右の斜め後ろにあり、ここに入り込んだ他車をセンサーで感知。接近に気が付かないままドライバーがウインカーをONにすると、インジケーター表示や警報ブザーで注意喚起するのが、後側方接近車両注意喚起装置の機能です。リアビークルモニタリングシステムとも呼ばれるこの機能も年々進化を続けており、検知範囲が広く、悪天候や日射の変化の影響も受けにくい、24GHzの「準ミリ波レーダー」を採用するなど、センシング精度が飛躍的に向上したことで事故削減に貢献しています。

    また、商業・レジャー施設、特に屋内や地下駐車場は照明が暗いことも多いため、極力バックで駐車することを推奨しますが、車のサイズやスペース的にどうしても「前方走行」で入庫するケースもあるでしょう。用事をすませて出庫しようとした時、慎重に目視しながら後退していたのに死角から歩行者が出てきて「ヒヤッ」としたことや、反対に歩行者の立場で車の接近に危険を感じたことが、誰しも一度や二度はあるはずです。

    後進時発生する死角に歩行者がいないか、人の目の代わりにセンシングするバックカメラ・センサーもASVの1つで、バックカメラは後方の様子を車内モニターに移し、センサーは歩行者の存在をアラートすることで、事故を未然に防いでくれます。

    カメラとセンサーがどちらも搭載されている車種や、歩行者や他車を感知すると自動ブレーキが作動するものまで、センシング精度や範囲と性能に幅はありますが、音もなくバックするHVやEVが増加している昨今、非常に有用な機能であると言えるでしょう。

    ④「車間距離制御システム(ACC)」

    運転免許取得のために通う教習所で、「安全運転のコツは車間距離を空ける事」と教わってきた人も多いでしょう。理由は車間距離さえ十分に空けていれば前方で何かしらのトラブルが発生しても、安全な停車・回避操作をすることができるからです。

    車間距離制御システムは、車両前方に搭載されたセンサーが前走車との距離や速度差を測定し、前走車に近づいたらシステムが自動的にアクセル・ブレーキを制御することで、適切な車間距離を維持しながら追従走行する機能です。

    ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)とも呼ばれる、この機能の有効性は非常に高く、車間距離の常時確保により危機回避力の向上、高速・長距離走行時におけるドライバーの疲労軽減、高速道路等のサグ部(※)での減速を防ぐことによる渋滞緩和などに寄与するほか、近年搭載が進んでいる「全車速追従機能付」の場合は、渋滞やノロノロ運転時でも煩わしいアクセル・ブレーキ操作なく、安全かつ楽にドライブすることが可能です。

    ※サグ部・・・長い下り坂から上り坂に変わる部分のこと。

    ⑤  「ペダル踏み間違え時加速抑制機能」

    誰しもミスをすることはありますが、運転中の失敗は時に尊い命を奪うリスクを伴うため、細心の注意を払わなくてはなりません。とくにブレーキを踏むべき状況で誤ってアクセルを踏んでしまうと、車は「走る凶器」へと変貌します。

    ペダル踏み間違い時加速抑制装置は、車載センサーが障害物を認識している状態で誤ってアクセルを踏み込んでしまった場合、警告音でドライバーにブレーキ操作を促し、同時にエンジン出力を下げて数秒のあいだ急発進を抑制する先進安全装備。システムが衝突を回避できないと判断した時、自動でブレーキをかける車種もあるため、一度でもブレーキをアクセルと踏み間違えた経験があるドライバーは要チェックです。

    今の車を乗り換える予定もないし非搭載だからどうしようもないという方には、各メーカーが提供している、後付け可能な踏み間違い加速抑制システムを活用しましょう。また、カー用品チェーンでも簡易的な踏み間違いによる急発進を抑制する商品を数万円で販売していますし、中でもオートバックス専売商品である「ペダルの見張り番2」は、軽自動車からミニバンまで約170車種に対応しています。

    交通事故往郷分析センターによれば、年間に約6,000件ものペダル踏み間違い事故が発生し、死亡事故の大半が「高齢ドライバー」である状況を重く見た東京都は、70歳以上を対象に「最大10万円・個人負担1割」という、手厚い補助金制度を実施しています。

    ASVの今後はどうなる?~自動運転との融合による未来の車~

     

    ここまで、現在搭載が進んでいるASVの「進化し続ける機能」について解説しましたが、推進検討会は既にその先を見据え、自動運転の普及を念頭に置いた「第6期推進計画」に着手しています。具体的には、基本理念の1つである「ドライバー支援の原則」の見直しが検討されている最中で、

    • ドライバー異常時対応システム・・・前期に推進した、緊急ボタンによる緊急停止などの受動的システムだけではなく、自動運転車両の遠隔操作や搭載AI・システムの判断のよる自動制御など、「能動的異常時対応システム」の開発・促進。
    • 高レベル自動運転車普及に伴う影響・・・自動運転⾞が⼆輪⾞や歩⾏者など他の交通参加者と調和を図り、安全な自動運転を実現するための具体策検討。
    • 無人自動運転サービスの早期実現・・・自律運転物流トラックによる隊列走行など、国内外で進行中である「自動運転プロジェクト」と並行し、無人自動運転サービスの実用化に必要なASV技術要件の検討。
    • ISAと自動運転との連携強化・・・道路ごとの制限速度に応じて自動で速度制御を⾏う、ISA(自動速度制御装置)の種類を整理し、より安全・正確なシステム確立に必要な技術要件の検討。

    などのほか、実用化が進んでいるとはいえ各社バラバラである、AVSの名称・定義・機能などを統一化することで、「ドライバー・社会受容性の確保」という残る基本理念の浸透・普遍化を推し進める方針です。2020年まで続く第6期推進計画が順調に進めば、ドライバー不足を払しょくする無人物流トラックが整然と並んで隊列走行する横を、ハンズフリー・マイカーがスイスイ走行し、渋滞の無い高速道路で安全・快適に、ドライブできる時代がやってくるかもしれません。

    また、レベル3の自動運転が実現すれば緊急対応だけとなるドライバーに、万が一身体的異常が発生しても車が自己判断で停車や回避操作を行うようになれば、確実に歩行者や他の交通を巻き込む交通事故は激減するでしょう。

    まとめ

     

    誕生した当初ASVは、「車を安全な乗り物」に進化させる取り組み・技術でしたが、計画の順調な推進と自動運転の発展により、我々の悲願である交通事故撲滅はもちろん、無人物流システムやレベル3以上の自律運転実現を左右する、重要な要素にもなってきました。官・学・産がしっかりとスクラムを組んでいるAVS推進検討会は、さながら快進撃を続けている「ラグビー・日本代表」のようで、その進捗状況には期待を込めて注目していきたいと考えています。

  • 移動の進化を体感せよ–– 1分でわかる「 Mobility Transformation Conference 2019」見どころポイント3つ

    移動の進化を体感せよ–– 1分でわかる「 Mobility Transformation Conference 2019」見どころポイント3つ

    ––202X年、移動の歴史が大きく変わる––

    自動運転、EV、ライドシェア、オンデマンド交通など、ここ数年で移動にまつわる大きな地殻変動が起き、新たなモビリティ社会が訪れようとしています。大変革期にある今だからこそ、異業種同士が垣根を超えてコラボレーションし、新たなサービスの開発や新たな価値を創出することが業界全体の発展につながるはずだ。スマートドライブでは、「移動の進化を後押しする」をミッションとして掲げ、各業界や地域の移動に関する課題に対して真っ向から向き合い、自社が持つ技術によってどのように解決すべきか、そして移動というものの価値そのものを変えようと真摯に取り組んできました。

    そんなモビリティ業界の進化を後押しすべく、11月15日金曜日、移動の進化を体感できる日本最大級の共創型モビリティカンファレンス「Mobility Transformation Conference 2019」を、東京の中心地・虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催いたします。豪華なスピーカーや濃密なセッションが続々と発表され、想定を上回る勢いで全チケットがSOLDOUT。開催まで一週間を切りましたが、ここで改めて、カンファレンスで見逃せない重要なポイントを3つご紹介します。

    1. 業界の垣根を超えた企業が集結。50人以上のスピーカー

    これからの時代、市場を拡大し業界を発展させるには企業や業界が垣根を超えて共創することが必要不可欠です。大手企業もスタートアップも、自動車業界もその他の業界も、各業界や各社が持つ強みをそれぞれ掛け合わせていくことで、先進性のあるソリューションを生み出す。そしてそれが、日本のMaaSを大きく前進させることにつながっていく。

    「Mobility Transformation Conference 2019」では、タクシー、鉄道などの交通インフラ、自動車メーカーから、不動産、IT、クリエイティブ、コンサルティング、金融、弁護士まで、モビリティを取り巻くあらゆる業界のキープレイヤーが50名以上集結。さまざまな切り口と多種多様な視点で最新事例の発表やパネルディスカッションを行い、「移動の進化への挑戦」を紐解いていきます。中でも注目いただきたいのがパネルディスカッションの多さです。各企業、自社が持つ知見やノウハウをどのように活用し、どのような手段でモビリティ社会を一新させようとしているのか。移動の進化をどのような視点で捉え、どのような未来を描いているのか。いずれも白熱すること間違いなし!

    <登壇企業一覧>
    インテル / 森・濱田松本法律事務所 / ジャガー・ランドローバー / ローランド・ベルガー / JapanTaxi / 東急電鉄 / What3words / LINE / ダイハツ / 三井不動産 / 日本マイクロソフト / ドッツ / SUBARU / バスキュールレイヤーズ・コンサルティング / トレジャーデータ / ウイングアーク1st / 電通デジタル / アクサ損害保険 / プレステージ・コアソリューション / DNX Ventures / Plug and Play Japan / ゴールドマン・サックス証券 / The Breakthrough Company GO / TikTok / 博報堂ケトル / 楽天 / 日本ハネウェル / モノフル / ナウトジャパン / さくらインターネット / HEART CATCH / ナイル / Zuora Japan / akippa / KDDI / 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター / 本田技術研究所 / スズキ / 森ビル / INCJ

    2. 国内外の先端企業に触れる!LTとエキシビジョン

    セッションの休憩時間には、リフレッシュルームで国内外の最先端スタートアップのLT(ライトニングトーク)を開催。休憩時間も一切無駄にせず、参加者に学びや気づきを与え、クリエイティビティを刺激します。また会場内に設置されたエキシビジョンエリアにはさまざまな業界のブース出展がありますので、最先端テクノロジーやトレンドを直接見て、触れることができます。

    <ブース出展企業一覧>
    アクサ損害保険株式会社 / UPWARD株式会社 / 株式会社クレスト / グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 / Sansan株式会社 / 積水化学工業株式会社 / 株式会社ソラコム / ソートスポット合同会社 / 株式会社Pyrenee / ベルフェイス株式会社 / Nauto Japan合同会社 / 株式会社ユーザベース

    <ライトニングトーク登壇企業一覧>
    EventHub / Dream Drive / what3words / シード / Visionaries 777 / Nauto / JapanLeapMind

    3. 開催前からネットワーキングが可能!

    「新たな知見を得て、事業に活かしたい」「気になるサービス・企業がある」など、カンファレンスに参加される理由はさまざまかと思いますが、「Mobility Transformation Conference 2019」最大の特徴とも言えるのが、当日の登壇者や参加企業とネットワーキングできることです。

    本カンファレンスでは、イベントでのビジネスネットワーキングや商談の機会を加速する「EventHub」を導入し、カンファレンスの開催前から終了後まで、業界・企業の垣根を越えたビジネスネットワーキングを可能にしました。ただ講演を聞き、学びを得るだけでは終わりません。あなたのビジネスを加速させるために、新たなイノベーションを促進するために、是非気になった方と積極的に多くのつながりを築いてください。

     

    カンファレンス終了後のレポートはこちらにてご登録いただくことでフリーダウンロードが可能です。

    それでは当日、みなさまのご来場を心よりお待ちしております!

  • 移動の進化を振り返るその6 ~MaaSとその先へ~

    移動の進化を振り返るその6 ~MaaSとその先へ~

    = 移動の進化を振り返るシリーズ =
    1:徒歩
    2:
    3:船舶
    4:鉄道
    5:飛行機

     

    有史以前より、人類は速く・遠くへ移動する手段を求め続け、産業革命によるモータリゼーションの全盛を経て大空を翔る力まで手に入れましたが、現代においては、地方と都心との交通格差や大気汚染、物流業界における人材不足などモビリティが抱える問題が深刻化しています。

    モビリティが進化・発展により発生した問題を、AIやIoTなどの最新テクノロジーで一気に解決し、単なる移動手段ではなく次世代型交通サービスに昇華させようという動きが、世界的に拡大しつつある「MaaS」です。今回は、移動の進化を「振り返る」のではなく、MaaSによって巻き起こるモビリティ革命の未来について、現在進行中の動向はもちろんその先の未来も見据えて考察します。

    移動はさらに進化する〜「MaaS」の始まり

     

    国交省によれば、MaaSとはICTを活用して交通をクラウド化、公共交通か否かまたその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つサービスと捉え統合し、シームレスにつなぐ新たな概念と定義されています。

    MaaSは北欧・フィンランドで始まり、現在では世界中にその流れが波及して日本にも導入されつつありますが、国交省の定義通り、国内ではマイカーではなく、公共交通機関から進展しています。世界有数の自動車大国である日本の場合、カー・バイクシェアリングやカープール(相乗り)などといったサービスを提供する企業を育て、IoT技術を活用し誰しもがシームレスかつ気軽にいつでも利用できる環境を整えることこそ、MaaSを推進する本質と言えるでしょう。

    しかし、他人と狭い空間に長くいることが苦手な国民性や法の壁などによって、「Uber」を始めとする海外資本はもちろん、国産カーシェア・カープールサービスも苦戦を強いられ、全国的な普及にまで至っていません。そこで国や地方自治体、各交通インフラ運営・IT関連企業は、まず公共性の高いモビリティからMaaSを導入し、シームレスな移動サービスの利便性を国内ユーザーに植え付けることで障壁を打破する、「日本版MaaS」の展開にまず着手したのです。

     

    MaaSによって日本における移動はどのように進化していくのか

     

    前述したとおり、現在国内で盛んなのは公共交通インフラや物流分野でのMaaSですが、実際にはどんな取り組みがなされ実現により我々の移動はどう進化するのか、この項では代表的な事例を紹介していきましょう。

    NTTドコモ 「AI運行バス」の実証実験第2弾を横浜で実施

    NTTドコモは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)および横浜市と共同で、横浜MaaS「AI運行バス」実証実験を2019年10月10日~20日まで、横浜都心臨海部にて実施すると発表しました。AI運行バスは、路線と運行ダイヤが存在する路線バスと異なり、直径5km程度の運行区域内を縦横無尽に走る小型車両で、アプリやWebサービスを操作して乗車を予約すると、AIによって最適な配車が決定され、時刻表に縛られず乗車・移動ができるというもの。

    同実験は2018年度にも行われており、10月5日から12月10日の期間中、定員4~6人の車両が最大15台も走行し、国内外からの来街者・居住者・通勤者など、約3万4,000人を輸送したという実績をあげています。いわゆる、オンデマンド乗合交通であるこのサービスは、高性能AIによる最適配車・最短ルート選定での待ち時間短縮や、都市部における観光スポットやオフィスなどへの回遊性を高める、新たな都市移動サービスになると期待されています。

    ジョルダン 大分市で観光MaaSサービスを展開

    全国の電車・飛行機・バス・フェリーの時刻表や運賃・路線情報とともに、チケット予約やお得クーポンも入手できる乗換案内サービスを提供しているジョルダンは、大分バスが紙のチケットで運用してきた「1日バス乗車券ワイド」をモバイルチケット化しました。

    2019年10月1日から、同社スマホアプリ上で販売を開始したほか、地元の飲食店や観光施設を優待で利用できる「おおいた1DAYパス」も同時に提供し、ラグビーW杯の開催で沸く大分市のインバウンド消費をバックアップする、「観光型MaaS」に取り組んでいます。同サービスには、Masabi社のモバイルチケッティングサービス、「Justride」(ジャストライド)が採用されており、利用者はキャッシュレス決済でチケットを購入したり、下車時に乗務員にアプリのチケット画面を提示したりして利用する仕組みになっています。

    ジョルダン・アプリでの検索から、大分市内での移動を一括サポートするこのサービスは、10月末までの期間限定ながら利用ユーザーからの要望が高まれば、期間延長も予定されているとのことです。

    JR西日本 MaaS推進部を新設し本格始動

    JR西日本は今年9月20日、総合企画本部に「MaaS推進部」を設置したと発表し、同時に今秋「せとうちエリア」での実証実験が予定されている、観光型MaaS「setowa」を後押ししていく姿勢を示しました。関東圏の鉄道インフラを管理するJR東日本は、約半年前にMaaS推進部を設置しましたが、JR西日本は「大阪万博の開催」や「広島駅南口広場の再整備」が予定されている、2025年を同エリアにおける大変換期と予想したのか、やや遅れて本格始動に踏み切った形です。

    今後の同社は、推進部を中心に「狭義の交通MaaS」に留まらず、交通インフラ以外の事業者と連携しながら、観光型・都市型・地方型など顧客ニーズを捉えたMaaSを構築するとのこと。都市間輸送手段でこれらを結ぶことにより、西日本エリアをシームレスに繋ぐことを目指しています。

    東京海上HD 次世代パーソナル・モビリティ企業「WHILL」と提携

    国内三大損保の一角を担う東京海上HDは、MaaSの進展を見据えた保険商品・サービス開発や、超高齢化社会での移動手段の確保・普及を目的に、次世代型電動車いす・カート開発・販売を手掛ける、WHILL(株)と資本業務提携したことを発表しました。

    WHILLは、障害の有無に関係なく既存の交通手段を降りた後のわずかな距離「ラストワンマイル」をつなぎ、だれもが安全に乗れるインフラの提供を目指す企業で、東京海上HDの「空飛ぶクルマ」開発企業への保険提供や、ドローン専用保険を展開するといった、MaaSを推進する方針が一致したことでパートナーシップを結ぶことに。

    WHILLは自動運転技術開発にも積極的であるため、同社が現在提供している電動モビィティ用保険のリリースや、自動運転実験データ共有による次世代型自動車保険の開発を、今後東京海上HDは進めていくものとみられています。

    「エリアごとの課題」に考慮した取り組みを進めないと意味をなさない

    ここまで紹介したように、関連企業と地方自治体は提携を深め、各所でMaaS導入への取り組みを始めていますが、どれも「推進していく方針」の発表や都市部を中心とした「実証試験」の域を出ておらず、運用範囲も限定的で国内すべてを巻き込んだ動きはまだ見られません。

    欧州版MaaSは、行政主導で公共交通の利便性を向上させ、いかに利用率を高めるかという視点で取り組まれ一定の効果を上げていますが、一方の「日本版MaaS」は次のような「エリアごとの課題」に配慮した取り組みを進めなければ、スムーズに普及・機能しないかもしれません。

     

    • 郊外&山間部・・・自動車に代わる交通手段の確保や、利用者数低下に伴う地方公共交通の採算性・利便性向上が課題。
    • 地方都市・・・欧州版MaaSのように利便性と収益性のバランスを取りつつ、消費行動の拡大に伴う地域創生や、スマートシティなど次世代のまちづくりを含め、取り組みを進めることが必要。
    • 大都市圏・・・移動先アクティビティ(ショッピング・食事・レジャー)との連動など、「+α」の付加価値を付与したMaaS実装が求められるが、決済情報などといった個人情報の提供に対する、ユーザーの抵抗感をどう払拭していくかが課題。

    MaaSの先にあるものとは~無限の可能性を秘めるMaaS×自動運転~

     

    MaaSの実現においては、各交通インフラのサービス統合が注目されがちですが、並行して進められている「自動運転」を始めとするモビリティの進化により、これまで想像すらできなかった未来型交通の姿が少ずつ見え始めてきました。

    都市と地方の交通格差を打破!「自動運転バス」

    移動距離に限らず、現在都市・地方共に住民の重要な足として活躍しているバスは、基本的に定められた運行ダイヤに則って一定の路線を走行するため、自動運転技術との相性が非常に良いモビリティです。

    鉄道を始めとする他の交通インフラとの連絡システムも、かなりの高水準で備わっているため、大型商業施設や空港内を低速走行する「シャトルバス」など、安全を確保しやすい分野から自動運転バスは普及が進み、徐々に公道へと拡大していくとみられます。

    9月30日には、埼玉工業大学が交通量もあり店舗の駐車場への車両出入りも多い本庄早稲田駅前の公道で、最高40kmの試験走行に成功するなど、官・学・民がこぞって実績を上げており、技術的には「実現前夜」に差し掛かっていると言えるかもしれません。また商業的には、ソフトバンク傘下で自動運転開発を行うSBドライブが2019年6月、仏・Navya「NAVYA ARMA(ナビヤアルマ)」使用したバス車両のナンバーを取得、公道実証をスタートさせることを発表しています。

    ドライバー不足を一気に解消!「ロボットタクシー」

    アーノルド・シュワルツェネッガーが主演したSF映画「トータル・リコール」の中で、人間ではなくロボットが運転する自動運転タクシーが登場した姿を覚えている方もいると思いますが、そんなロボットタクシーがすでに実用化されています。

    米グーグル系の自動運転開発企業であるウェイモは、2018年12月5日からロボットタクシーの有料商用サービス「ウェイモワン」を開始しており、無人運転ではないもののAIを活用した次世代型交通イノベーションの開発・実用化競争が、米国では激化しています。

    国内でも、自動運転ベンチャーのZMPが日の丸交通と実証実験を行うなど、空想上の乗り物に過ぎなかったロボットタクシーがリアルなモビリティとして利用できる日は間近に迫っていると言えるでしょう。

    クルマを所有する時代は終焉へ?「自動運転ライドシェア」

    無人での自動運転技術が実現すれば、現在ライドシェア普及を妨げる大きな要因となっている、「ドライバーの質」を気にする必要がなくなります。

    2019年4月、投資家を対象にした技術説明会の中でテスラ社のイーロン・マスクCEOは、「2020年の半ばまでに完全な自動運転車を100万台以上生産する」と豪語し、これまでにない新ビジネス「TESLA NETWORK」を展開する考えを示しました。

    同ビジネスは、テスラ社製の自律運転車両を一般ユーザーにリースし、マイカー利用していない時間をタクシー配車サービスに充てることで、オーナー自ら運賃を稼ぐことができ、テスラにも手数料が支払われるという仕組み。マスク氏お得意の「ビッグマウス」という指摘もありますが、完全自動運転車の活路を個人所有に広げるアイデアは画期的で、実現すれば完成度の高いMaaS社会の主役として、自動車が存在感を大きく高めると考えられています。

    ラストワンマイルでの大活躍に期待!「超小型自動運転モビリティ」

    車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能にも優れた超小型モビリティの自動運転化も開発が着々と進んでおり、ZNPはトヨタの超小型EV「コムス」をベースに、自動運転機能を搭載した「RoboCar MV2」を次世代モビリティ用プラットフォームとして提供。また、ヤマハは燃料電池を搭載した「YG-M FC」の走行実証試験を、石川県輪島市の公道上で2019年4月18日から実施しており、同社はこのゴルフカートを改造した電動カートを自動運転化し、ラストワンマイルを補完するMaaSサービスに活用したいと考えています。

     

    これからの移動はどのように進化していくのか?

     

    「MaaS」や「CASE」など、モビリティの未来を表す新たなワードが次々と生まれ、生活における移動は新たな進化を遂げようとしています。自動運転、ライドシェア、ドローン、VR、AIなどのテクノロジーは、モビリティとどのように関わっていくのでしょうか?移動はどのような体験へと変化していくのでしょうか?

    来たる2019年11月15日、移動の進化を後押しするスマートドライブが、移動の進化を体感できる共創型カンファレンス「Mobility Transformation   移動の進化への挑戦」を開催します。ぜひ次世代の移動を、そして現在起きている移動の進化を体感しにいらしてください。

    = 移動の進化を振り返るシリーズ =
    1:徒歩
    2:
    3:船舶
    4:鉄道
    5:飛行機
    6:MaaS

     

  • 【空のMaaS】航空会社が取り組むシームレスな移動体験とは

    【空のMaaS】航空会社が取り組むシームレスな移動体験とは

    今や国境も超え、あらゆるモビリティがシームレスに連携しサービスへと変貌するMaaSの流れが浸透しつつあります。

    車両や鉄道の話題が多く取り上げられているMaaSですが、旅客の安全な移動を確保するため、ルールを厳守することを求められる規制産業であり、本来イノベーションと対極にある「航空業界」へも押し寄せ、国内外の航空会社は生き残りを図るべく、MaaSへの取り組みを進めています。

    規制の垣根を越えろ!航空業界が目指すシームレスな移動体験

     

    そもそも、陸上における「シームレスな移動」という発想は、数多くの国が陸続きであるヨーロッパや、州によって法律や規制が異なる米国で生まれたもので、小さな島国に過ぎない日本では長い間意識すらされていませんでした。国や州を越えることが日常茶飯事の欧米では、自動車や鉄道で長距離移動すると道路を管理する団体や鉄道会社が目まぐるしく変わるため、必然的に「継ぎ目のない移動」の確立が求められていたのです。

    その一方で、日本は大型船舶や航空機による海外輸送が一般的になり、「継ぎ目の存在」がモビリティ発展の障害になることにようやく気づきます。近年では各交通インフラのIoTを活用した連携により、次の3つの環境が整いつつあります。

     

    • 物理的なシームレス・・・相互直通運行・バリアフリー・同一ホーム乗り換えなど
    • 運賃のシームレス・・・共通乗車券・決済方法の統一・乗継割引制度拡充など
    • 情報のシームレス・・・連絡ダイヤの設定・リアルタイムな運行情報の共有など

    とはいえ、このシームレスな移動体験が実現まであと一歩なのは陸上、もしくは海上交通に限った話で、冒頭でも述べたように航空業界においてイノベーションに不可欠な「規制緩和」はタブーとされてきました。

    なぜなら、新しい枠組みを生み出すには既存のルールや規制を打ち破る、失敗を恐れないチャレンジ精神が必要なものの、航空業界での失敗は尊い人命が失われることにもつながるため、「攻撃より守り安全第一が最優先」というマインドが根強いためです。

    しかし、オンラインショッピングやリモート会議などが一般化し、移動ユーザーの絶対数が減少している今、このまま守りの姿勢を貫いていては、きたるMaaS時代に乗り遅れ、単なる「移動手段を提供する存在」になることを、航空業界も理解しています。そして、国内外の航空会社は「安全第一」を大前提にしつつも、シームレスな移動体験の実現に向けて、高いハードルを越えるチャレンジを始めているのです。

    シームレスな移動体験の実現に向けた取り組みその1「ANA」

     

    2019年7月、ANAは出発地から目的地へのシームレスな移動体験の創出を目指す専門部署、「MaaS推進部」の新設を発表しました。

    IoTを活用し、航空輸送と地上交通との情報共有やサービス連携によって、ユニバーサルなエアラインを目指していく方針で、翌月には早速JR東日本とのタッグを組み、航空・鉄道の情報がシームレスに受け取れる仕組みや、航空券・キップ手配環境の構築する予定です。両社は2018年11月から、地方への誘客推進キャンペーンやインバウンド対応など、増加する訪日外国人や観光流動拡大に向けた取り組みを進めており、今後は他の陸上輸送サービスや決済会社など、多岐にわたる関連企業との連携も検討されています。

    この取り組みが順調に進めば、航空機を含めたあらゆる交通インフラの予約・配車・決済が、モバイル端末1つで完結する「地球規模のシームレス移動」が可能となり、併せて輸送過程の効率化・最適化により、物流コストを大幅カットできると期待されています。

    シームレスな移動体験の実現に向けた取り組みその2「JAL」

     

    JALも同様に、2019年に入ってMaaS事業への参画を開始しています。4月には、国内最大級のタクシー配車アプリ運営会社「JapanTaxi」と協業し、ストレスフリーでお得な移動を提供すべく、JAL国内線に搭乗したユーザへJapanTaxiアプリで利用できる割引クーポンのプレゼントキャンペーンを展開しました(キャンペーンは2019年6月30日に終了しています)。

    航空・タクシー配車業界で、強力なネットワークを持つ両社の強みを活かした、ドアtoドアのシームレスな移動体験実現が期待されるものの、双方の予約・決済は統一されていないため、当初は両者が連携を強化しサービス拡充が図られるとみられていました。そんな中、続けざまにJALは小田急電鉄がヴァル研究所の支援のもと開発・リリースした、MaaS用オープン・プラットホーム「MaaS Japan」に、前述したJapanTaxiのほかJR九州・遠鉄・DeNAと共に参画したことを発表。

    先んじて協業をスタートしたJapanTaxiはもちろん、鉄道・バスを運営する事業者や電子決済サービスを提供している企業の情報共有基盤を労せず手に入れることにより、JALはシームレスな移動体験の実現を、急ピッチで進める目算のようです。さらに、自社独力でのイノベーションが潜在的に進めにくい体質であることを、誰よりも理解している同社は、今年1月、国内外のスタートアップ企業に投資するコーポレート・ベンチャーキャピタルファンド(CVC)「Japan Airlines Innovation Fund」を設立。

    外部企業と手を組んで判断スビードを早めることがエアモビリティのシームレス化の近道と考えたうえでの取り組みで、総額80億円が投じられる一大プロジェクトの推進により、事業領域の拡大とMaas時代への対応を図っていく姿勢を打ち出しています。

    シームレスな移動体験の実現に向けた取り組みその3「ルフトハンザドイツ航空」

     

    日本の航空会社による、シームレス移動への取り組みはまだスタートしたばかりですが、海外に目を向けるとヨーロッパでは「スカイレール・サービス」と呼ばれる、航空と高速鉄道を組み合わせた複合的輸送サービスがすでに実働しています。

    ドイツ最大の航空会社「ルフトハンザドイツ航空(以下LHと表記)」は、フランクフルト空港の協力の元ユーザーにシームレスな列車・航空間の乗り継ぎを提供する、「LH・エアポート・エクスプレス」を運行しています。元々、採算の取れない200km程度の中距離国内航空路線の代替えとして運用されていた鉄道ですが、現在はドイツ主要都市の駅とフランクフルト空港を連絡する、スカイレール・サービスに姿を変え、今やドイツにおける交通インフラの中核を担っています。

    運行開始当初は8路線でしたが、段階的に出発・到着駅も20カ所に拡充され、ドイツ全域とヨーロッパ有数のハブ空港間で数多くの旅客をピストン輸送しているほか、LHのフライト搭乗券を兼ねる列車チケットは、同社HPやスマホアプリで簡単に予約と決済が可能です。また、LH便で入国する場合は各国の空港で同鉄道の搭乗券が発行され、空港で預けた荷物も連絡先の駅ターミナルで受け取りができる継ぎ目のなさは、一歩出遅れている国内航空各社が参考にすべきモデルケースと言えるかもしれません。

    実際に、ANAは物流分野でLHとパートナーシップを結び、輸出貨物搬入・輸入貨物引渡場所の一本化やアクセシビリティのスピードアップ、作業時間の短縮による貨物輸送の品質とフレキシビリティの向上を目指した動きを強めています。一方のJALは、LHのスカイレールを利用した同内容の乗り継ぎサービス、「レール&フライ」をスタートするなど、パイオニアとの関係性を深めることで、シームレス化を一気に進めたい考えのようです。

    シームレスな移動体験の実現に向けた取り組みその4「パスポートのデジタル化」

     

    ここまでは航空業界と、他の交通インフラとの「継ぎ目」を無くす国内外の動向を紹介しましたが、ここで解説するのは航空という移動媒体自体の「シームレス」に対する取り組みです。

    海外渡航の経験がある方なら、時間がかかる出入国手続きが面倒に感じるはずですが、近年ではパスポートの情報をデジタル化してモバイル端末で管理・保存し、バイオメトリクス活用による「シームレスゲート」を備える空港が増えています。

    仕掛けているのは、ポルトガルのデジタルID管理ソリューション開発企業「Vision-Box」で、同社が手掛けるソリューションは世界80の国際空港において、2,000以上の自動ボーダーコントロールとして運用、実に2億5,000万人もの旅客情報を処理しているのだとか。

    アルバ国際空港・KLM・Schiphol Groupとともに同社が開発した、「Aruba Happy Flow」は、2年間の試験運用を経て実用化され、バイオメトリクスを使い旅客者の顔を識別、データベースと照合して許可された乗客のみ移動できる仕組みになっています。旅行書類はチェックイン時に1回のみ必要なシステムとなっており、チェックインの後は手荷物検査・国境通過・乗り継ぎなどが、顔認証のみのシームレスで手続き可能です。

    同社でマーケティング・ディレクターを務めるPedro Torres氏は、「レジストレーションするときのクオリティと、マッチングするときの認識率の高さが強みだ」と述べており、2019年5月東京に日本オフィスを設立しました。海外旅客増加による市場の将来性を見据え、国内空港への参入に本腰を入れ始めたほか、ホテルでのID管理やインターネットバンキング、オフィスのセキュリティ強化などにも、同ソリューションは活用可能としています。

    まとめ

    スマホ操作だけでタクシーが乗りつけられ、歩くことなく到着した駅で航空券を兼ねたキップを受け取り、時間ぴったりに発車する鉄道で空港へ向かえば、あっという間に空の旅が楽しめる…シームレスな移動体験は自律運転より早く実現する可能性も考えられるでしょう。

    もちろん安全が最優先ですが、国内企業との協業にしろ海外資本との提携にしろ、航空インフラが単なる移動手段からサービスに進化するのは利用者にとって非常にありがたいことですし、そうならなければ国内航空会社は、いずれ海外大手に飲み込まれるかもしれません。

  • IVI(In-Vehicle Infotainment)とは何か

    IVI(In-Vehicle Infotainment)とは何か

    車両の状態や周囲の道路状況など、車にまつわるデータを取得し、ネットワークを介して集積・分析することにより新たな価値を生み出す。そんな次世代の車、「コネクティッドカー」。自動運転技術が高レベル化するうえで、コネクティッドカーの普及は前提条件の1つとなりますが、市場が成長していく過程で重要視され始めた「IVI」というワードをみなさんはご存知でしょうか。この記事では、IVIとは何かを徹底解説します。

    コネクティッドカー市場を牽引するIVIとは?

    In-Vehicleを直訳すると「車載」、そして、Infotainment(インフォテインメント)は「情報(インフォメーション)+娯楽(エンターテインメント)」を意味する造語です。つまり、IVIとは車載したIT機器により、情報と娯楽の双方を提供するシステムのことを指します。

    既存システムとの相違点

    従来のデバイスからドライブ中に得られる情報と言えば、カーナビゲーションによる経路案内や、ラジオから流れてくる渋滞や事故などの道路交通状況に関するものが一般的です。また、娯楽要素としては、カーオーディオや車載DVD、TVチューナーなどが挙がりますが、最近ではタブレットを持ち込むなど、別のデバイスで情報を入手したり、音楽・映像などを楽しんだりしている方も多いでしょう。

    一方、IVIシステムの利用範囲は車内だけにとどまらず、家庭・オフィスといった車外環境からのシームレスな接続や、他の外部機器との連携よって情報・娯楽を高度に融合させた、多岐にわたるサービスの提供が想定されています。ハンズフリー・ドライブが実用化され、自動車が単なる移動手段から「走るモバイル」へと進化を求められている今、各自動車メーカーは早期開発・市場投入を目指し、力を注いでいます。

    IVIで何がどう変わっていく?~IVIの仕組みと搭載により実現する主な機能~

    IVIシステムは、心臓部と言えるユーザーインターフェイスを軸に、ネットや他機器との接続で得た情報・娯楽コンテンツの「入力」と、適切なタイミングでの「出力」を複合的に行う仕組みで成り立っています。従来のシステムは入・出力操作をすべて人が担っていましたが、IVIシステムはデバイス自身の判断で行うことを目指し、開発が進められているのです。

    ボタン・スイッチ・マイクなどを用いた、人によるインプット機能も従来通り利用しますが、将来的には、車載カメラや各センサで収集したデータをIVIシステムが分析し、車載装備から「自動出力する機能」を有するようになるのです。

    たとえば、車内カメラがドライバーと乗客の身体的特徴を把握・分析し、もっとも適切な姿勢になるよう座席を自動調整したり、自動運転技術や安全運転支援システムと連動してハンドルや車速のセルフチェックをしたり、制御を行ったりすることも可能になるのです。

    さらに、USB・Bluetooth・Wi-Fiで入手したユーザーの閲覧履歴データをもとに、IPTV・IPRADIO・VOD(ビデオオンデマンド)などをIVIシステムが自動でストリーミング・提供する機能も技術的に実現可能な段階に入っています。

    また、既存のナビゲーションでは経路案内で「300m先○○(交差点名)を右折」とアナウンスされますが、交差点名がない交差点もありますし、小さな看板表記を確認するため走行中に視線を逸らすのは危険な行為です。一方、IVIシステムを搭載したカーナビでは、「300メートル先にある△銀行側へ左折」など、具体的な案内も可能になるほか、受信したメールの音声読み上げによる確認もできるようになります。

    これらの機能は、ドライブを快適で楽しいものにするだけではなく、車載デバイスおよびスマホなどを操作しながらの運転、いわゆる「ながら運転」を起因とする交通事故の減少に、大きく寄与すると考えられるでしょう。

    これからのコネクティッドカー市場はどうなる?

     

    マーケティング調査会社大手(株)富士経済が、今年7月発表したプレスリリースによると、「ネットとつながる車」の新車販売台数は、2018年見込みで30%を超え2022年時点で50%弱、2035年には90%ほどに達すると予測されています。

    そんな中、同社は現在主流であるスマホやタブレットなど、持ち運び可能なITモバイルを介した「連動型IVI」ではなく、車自身のデバイス化により常時接続可能な、「エンベデッド型IVI」を搭載するコネクティッドカーが、市場において大きく伸長すると分析。

    さらにエリア別の進捗状況では、自動車メーカーがテレマティクス事業に積極的な動きを見せる、欧米・北米が一歩リードしており、近年市場が膨張傾向にある中国について、「2022年には世界最大の需要地になる」と指摘しています。

    ただし、少子化や若者の車離れを起因とする、新車販売台数の低迷が顕著な日本については、国内メーカーが揃って自動運転レベル3の実現を目指している、「2020年初頭」にはピークを超えるとの見解を示しています。つまり、トヨタをはじめとする国内自動車メーカーは、レベル3相当の自動運転車をリリースする時点で、エンベデッド型IVIを搭載したコネクティッドカーの販売にこぎつけないと、世界市場で大きく後れを取ってしまう可能性が大きいということです。

    反対に、多機能かつ高精度なIVIシステムが2020年までに完成し、搭載コネクティッドカーが公道を多く走行する状況を生み出すことができれば、日本は世界をリードするスマート・ドライブ先進国になる可能性も考えられるでしょう。

    国内外・IVIの最新動向をまとめてみた

    車内エンターテインメントである、ICE(In-Car Entertainment)システムに関しては、

    • フォード・・・「Ford Sync&My Ford Touch」
    • トヨタ・・・「Entune」
    • キャデラック・・・「CUE」
    • FCA・・・「Uconnect」

    など、国内外のメーカーが独自システムを開発しています。しかし、これらの車内エンターテインメントシステムに対する法規制が、運転中のスマホや携帯電話使用ほど行われておらず、「ながら運転」を助長するという問題が新たに浮上しているのです。

    この問題を解決するのも、IVIシステムに課せられた大きな使命であり、国内外では開発への動きがさらに強まっています。

    ダイムラーAG IVIシステムにQt技術を採用

    信頼性が高く、応答性に富んだユーザーインターフェースUIの開発で定評がある、The Qt Companyは2018年5月、同社のQt技術がダイムラーAG・メルセデスベンツのIVIシステム、「MBUX」に採用されたことを発表しました。

    MBUXとは、自然言語対話型オンライン音声認識であり、「ハイ、メルセデス!」の呼びかけで起動し、通常会話のように話しかけるだけでエアコンや室内照明の操作などを自動に行える機能。Aクラスを皮切りに、順次搭載モデルがリリースされています。

    安全運転への寄与や機能性だけではなく、エンターテインメント性も充実。たとえば「ピザが美味しいレストランを探して!」と言えば、AIがYelp!(海外の食べログ的なサービス)のレーティングにもとづき、候補となるレストランを数件リストアップ。続いて、「どこへ行きますか?」と反応が返ってくるので、「3番目のお店に案内して」と応答すれば自動的にカーナビが起動し、ガイダンスが始まるというような使い方も。このMBUXの中核を担う基盤として、Qt技術に白羽の矢が立ったのです。

    同社で、エグゼクティブバイスプレジデントを務めているジュハペッカ・ニエミ氏は、

    「多くの大手自動車メーカーや一次サプライヤーが、簡単なローエンドのソリューションからハイエンドモデルまで、自社IVIにQt技術を選んでいることを、心から嬉しく思います。」と感謝の意を示すとともに、ユーザーが期待する品質の最高水準を満たしたうえで、さらに一歩先を超えていくようなUIの開発に、自動車メーカーと取り組んでいきたい考えを表明しました。

    ゲストOSに仮想動作環境を提供・管理する「Qualcomm」の次世代商品

    半導体メーカーのQualcomm(クアルコム)は、毎年米国・ラスベガスで開催される世界最大のテクノロジイベント「CES 2019」に先立って実施した記者会見の席で、「Snapdragon Automotive Cockpit Platform」と名付けられた、最新の自動車向けIT製品を発表しました。

    前年度の同イベントではデモカー展示で話題をさらい、既に多くの自動車メーカーからIVI向けに採用されている、「Snapdragon 820A」の次世代型商品にあたり、以下の3グレードを展開していくと明らかにしました。

    • Paramount・・・高い処理能力を必要とする「ハイエンドモデル向け」
    • Premiere・・・スタンダードな機能を有する「メインモデル向け」
    • Performance・・・リーズナブルな価格帯で提供される「エントリーモデル向け」

    また、従来世代では対応していなかった仮想化アクセラレータ機能に対応しており、1つのSoCで複数OSのメモリ空間を分離して管理・運用する、「Hypervisor機能」の利用も可能となっています。

    これにより娯楽要素はAndroidで、運転に関わる情報はRTOSやQNXなどのセキュアOSで運用といった具合に、1つのハードウェアで異なるユースケースを並列処理したり、複数機能の実装できたりする「高次元IVIシステム」の実現が近づいたのです。

    サムスン製SoCがアウディの次世代IVIシステムに採用

    2019年1月、韓国最大の家電・電子機器メーカーであるサムスンは、同社初の自動車向けプロセッサ「Exynos Auto V9」が、2021年以降販売予定のアウディ新型モデルに搭載される次世代IVIシステムに採用されたと発表しました。

    これは、同社がこれまで提供してきたスマホ向けプロセッサーSoC「Exynos」をベースに、複数のディスプレイにコンテンツを表示する、高度なIVIシステム向けへと再設計されており、ドライバーや乗客を支援し、安全で楽しい車内体験を提供できるとしています。アウディのアーキテクチャ・プラットフォーム開発責任者のアルフォンス・ポンペラー氏は、「Exynos Auto V9が(搭載されれば)、将来の車載インフォテインメントを形成する、次世代プラットフォームを強化できる」と喜びをあらわにしました。

    「没入型運転体験を提供する」と銘打たれた同商品には、強力なオクタコアCPUとトライクラスターGPUを組み込まれ、複数ディスプレイで複数のOSとデジタルコックピット機能を、同時かつシームレスにサポート可能であるとされています。

    まとめ

     

    今回紹介した事例の他にも、トヨタはすでにコネクティッドサービスの「T-Connect」を本格スタートしていますし、日産・三菱・ルノーアライアンスグループはMicrosoftと、ホンダはソフトバンクと提携し、IVIシステムの研究・開発体制を強化しています。

    技術的にも法的にも、「完全自律運転」の実用化はまだ先の話になりますが、ドライバーが一切操作しなくとも運転に関わるあらゆる情報の入手と活用、映像・音楽コンテンツを楽しむことができる「スマートドライブ社会」は、遠からず到来すると考えています。

  • ライドシェアサービスの日本参入・普及を阻害している障壁とは?

    ライドシェアサービスの日本参入・普及を阻害している障壁とは?

    電子マネー決済や仮想通貨などが良い例ですが、どんな商品やサービスも、いずれかの地域で爆発的に流行すると世界的なトレンドとしてその波が日本にも押し寄せてきます。しかし、Uberに代表される配車サービスに限っては、日本に参入しているものの本格的に普及するところまで至らず、類似する国内外のするライドシェアサービスも、例外なく苦戦を強いられているようです。この記事では、そうしたライドシェアサービスはなぜ日本での成長が難しいのか、普及を妨げている障壁を整理したうえで、現在の動向や今後の展望について考察します。

    ライドシェアサービスは海外では普及しているのになぜ日本では広がらないのか

     

    配車サービスとは、電話やアプリを通じてタクシー・ハイヤー・運転代行の手配をいつ・どこででも簡単に行えるサービス全体を指します。一方、世界で急速に普及が進んでいるライドシェアサービスは、タクシー会社や運転代行業者に所属しているプロドライバーではなく、国内で言えば2種免許を取得していない一般ドライバーが運転する車で目的地まで移動するサービスです。

    前者はご存知の通り、国内でも利用者が大勢いる既存サービスですが、後者に関しては海外と比較して一向に普及が進んでいません。Uberは2014年から、Uber TAXI、UberTAXILUX、Uber BLACKなど、東京を皮切りに複数の都市でサービス提供してきましたが、いずれも一般的なタクシー・ハイヤーの予約・配車にしかすぎません。スマホのGPS機能を利用した最適な合流場所への経路案内、電子マネーによるスピーディーで安全な決済など、非常に利便性に優れる同アプリですが、一般ドライバーと乗客をマッチングするサービスは、現時点では国内で展開されていないのです。

    本格的なライドシェアが普及すれば、車保有に伴うさまざまなコストを削減できるだけではなく、排気ガス問題の解決や交通渋滞の緩和、スマートシティ構想などの都市計画の推進につながるため、日本にとって得られるメリットは多岐にわたります。しかし、UBERや同国で激しいシェア争いを繰り広げている「Lift」、さらに現在4億人を超えるユーザーが利用している、中国の「滴滴出行」クラスまでライドシェアサービスが普及するには、越えなければならない3つの大きな壁があるようです。

    ライドシェアが直面している障壁その1「有償ライドシェアに対する法規制問題」

    2015年、Uberは営業許可を受けていない自家用車と乗客とのマッチング・アプリ、「みんなのUBER」の実験運用を福岡で試みましたが、国土交通省の行政指導により、わずか1カ月で中止に追い込まれました。なぜ、国交省はみんなのUBERに中止を言い渡したのでしょうか。それは、同サービスが許可を持つ事業者の車両以外での有償乗客輸送を禁ずる、「道路運送法」に抵触すると判断したからです。

    この判断に対してUberおよび、タッグを組んで実験を進めていた産学連携機構九州は、「みんなのUBERに属するドライバーは、乗客から対価を得るのではなく運営から報酬を得るので、法律違反に当たらない」と主張しています。また、無許可車で乗客を有償運送することを、ナンバーの色から「白タク行為」と呼ばれていますが、Uber側も「白タク=法律違反」と理解しており、ドライバーが運営から得る報酬は「運送」ではなく、乗客データおよび走行ログ入手への対価とも説明していました。

    つまり、Uberとしては白タクではないから法的規制をかけるのはおかしい、と訴えているわけですが、限りなく黒に近いグレーな主張でもあるため、ドライバーとUber側との雇用関係や、後述する安全確保を考慮した場合、国交省がすんなりとGOサインを出すのは難しいことかもしれません。

    ライドシェアが直面している障壁その2「タクシー業界の強い抵抗」

    2013年12月、米国・サンフランシスコでUberの契約ドライバーが交通事故を起こし、わずか6歳の少女が命を失うという痛ましい事件が発生しました。

    亡くなった少女はタクシーに乗車していたのではなく、横断歩道を歩行中にはねられてしまったのですが、事故発生時に当該ドライバーが警察の取り調べに対し、「Uberにログインし客待ちをしていた」と証言したため、被害者側はUberの管理責任を追及しました。しかし、Uber側は悲劇的事件として哀悼の意を示しつつも、「車やプロバイダーがUberシステムで移動すること(有償運転)をこの事故では伴わなかった」と主張し、本質的な責任を否定したのです。

    この事件を受けて世論は紛糾、とくに地元タクシー業界はUberタクシーに対して強い反発を示し、ロスの大手タクシー会社GMのBill Rouse氏は、「Uberの車に乗ることは、通常のタクシーに比べて危険。ドライバーが犯罪者である可能性もある」と強い口調で発言。

    教習所の専門教習や社内研修などを受けるプロのタクシードライバーと異なり、Uberタクシーのドライバーは基本的には素人ドライバーです。そのため、運転技術の未熟さによる交通事故発生を危惧する、同氏の発言は頷けますが「犯罪者」とは、少々過激な言葉にも聞こえます。

    ただ、過去にさかのぼると米国やインドなどで、Uberの乗客が犯罪被害に遭遇したり、契約ドライバーが多数の犠牲者を出す銃乱射事件を起こした事例も。これらはショッキングな事件として大々的に報道されたため、不安視する声が各国で高まっているのは事実です。

    日本のタクシー業界も2019年6月、ライドシェアに力を注いでいるソフトバンク株式総会会場の前で、タクシー運転手らで構成される労働組合がライドシェア解禁に、『反対』を表明するビラを配布するなど反発する姿勢を強めています。

    同団体はシュプレヒコール(デモなどで参加者が一斉にスローガンを唱えること)の中で、2018年に発生した滴滴出行の契約ドライバーによる「女性客刺殺事件」を挙げ、「(ライドシェアは)タクシーで義務付けられている労働時間管理や飲酒チェックもなく、運転手の身元もわからない」と危険性の高さを主張しました。加えて、ライドシェアドライバーは会社員ではなく個人事業主となるため、劣悪な労働環境を生み出すとも指摘しましたが、同時に既存ドライバーの雇用機会減少や、ユーザーの奪い合いと価格破壊による賃金低下も、反発が強まる背景として横たわっているのです。

    ライドシェアが直面している障壁その3「日本ならではの“内なる壁”」

    タクシー業界による、「ライドシェア解禁反対」は全世界共通の動きになっていますが、ライドシェアが国内で一向に普及しない原因の一つとして、国民性に由来する障壁の存在を忘れてはいけません。

    ライドシェアは文字通り「相乗りする」ことですが、相乗り文化が古くから浸透している海外と異なり、日本では事業者や地方自治体が運営する公共交通機関を除けば、一台の車に見ず知らずの他人と一緒に乗るという根本的な行為自体に、強い抵抗感を持っています。治安的に見れば、ライドシェア先進国である米国や中国より、よっぽど犯罪に遭遇するリスクは低いと考えられますが、それは既存のタクシーや運転代行サービスにも言えること。

    そして日本人は、低コストで利用できるライドシェアサービスではなく、多少高いお金を払ってでも「既存サービスを利用したい」と考える傾向が強く、政府の調査によると20代の若いユーザーですら、ライドシェアの利用意向が約40%程度にとどまっているのだとか。ライドシェア市場でシェア9割を占める、大手4社すべてと資本提携しているソフトバンクの孫正義氏は、「(ライドシェアを受け入れない)馬鹿な国がいまだにあることが信じられない」と怒りをあらわにしたそうですが、国民性に合わせたサービスにしなければ、今後も普及は難しいかもしれません。

    知らない人と相乗り、しかも素人が運転するライドシェアは怖いという、日本人の心に根強く居座る「内なる壁」こそ、同サービスが日本で一向に発達しない最大の要因とも言えるでしょう。仮に政府が法改正を行い、海外ライドシェアが大っぴらに普及を進めても、大成功を収めるのはなかなか簡単なことではありません。

    そんなライドシェアが日本で成功するためのカギを握っているのが自動運転です。日本人は警戒心や遠慮によって、「他人と狭い空間にいる」ことを嫌悪する傾向にありますが、それがIT世界という仮想空間であれば、世界中の誰とでも関係性を持つことができます。FacebookやTwitterなどがわかりやすい例で、近年ではシルバー層も積極的に利用しています。そのため、AIによる自律運転と高次元で融合したライドシェアを生み出すことができれば、ユーザーは他人の存在を意識することなく、安心して利用することができるでしょう。

    ところで、海外での法整備はどうなっているの?

     

    海外におけるライドシェアの法整備状況については、日本を含むG7に中国・韓国・オーストラリアを加えた主要10カ国のうち、国内普通免許および自家用車での参入をどちらも法的に認めているのは米国とカナダの2カ国だけです。

    一方、イギリス・中国・オーストラリアは、自家用車での参入は認めているものの、ドライバーにはシェアリング専用の免許取得を求めており、残る5ヵ国については現在法整備を議論中もしくは、一切議論が進んでいない状況です。ドイツ・韓国・フランスに至っては法整備どころか、Uberが法令違反に当たるとして罰金命令や営業停止命令を発令するなど、ライドシェアビジネスの普及に批判的な立場を示しています。

    あくまで大局的な動向ですが、広大な国土を有し、山間部や荒野地帯などを中心に公共交通が隅々まで行き届いていない国が比較的ライドシェビジネスに理解を見せ、道路交通網や移動インフラが整っている国ほど難色を示す傾向にあるようです。

    ライドシェアサービスの国内動向と今後の展望

     

    ライドシェアを巡る国内動向に目を移すと、政府や経済界は揃って同サービスを経済成長を促す1つの柱と位置付けており、海外からの渡航客増加が見込まれる2020年のオリンピック開催を視野に、規制緩和とサービス解禁に向けた動きを見せ始めています。

    しかし法整備が一向に進まず、タクシー・ハイヤー業界が徹底抗戦の構えを見せている現在、Uber のようにドライバーへ報酬を支払う「TNCサービス型」がここ数年で日本において大幅に飛躍するとは考えにくいでしょう。

    一方、ヨーロッパで普及が進んでいる「Bla Bla Car」のように、ドライバーとユーザーの目的地をマッチングし、ガソリン代などの実費をシェアするカープール型については、報酬が発生せず現行法に抵触しないため、長距離ライドシェアサービス「notteco(のってこ!)」などが展開されています。

    ただしカープール型ライドシェアは、どこも仲介料無料でサービス提供しているため、収益性が低くビジネスモデルとしては不完全です。日本人がライドシェアに慣れる役目を果たしてはくれるでしょうが、爆発的に広がるのはやや難しいかもしれません。そうなるとやはり、「AIによる自律運転ライドシェア」というビジネスモデルが理想形であり、技術革新に沿った関連法の整備を進める一方で、メリットだけではなくデメリットや注意点の周知と啓もう活動を、政府や関係機関は推進していく必要があるのではないでしょうか。

    まとめ

    もし自律運転が実現する前の段階で、TNCサービス型カーシェアの合法化を進めるのであれば、専用免許の所有を義務付けるとともに、安全運転支援装備を備えた車限定で参入を許可するなど、国民の不安を和らげる配慮が必要となるでしょう。

    ユーザーや歩行者などの安全を確実に確保し、今回解説したすべての障壁に共通する課題さえクリアすれば、ライドシェアビジネスはMaaSの大黒柱として、車を単なる「移動手段」から利便性と汎用性に優れる「サービス」へ、引き上げてくれる存在になるでしょう。

  • デジタルマーケティング領域で第一線を走るナイルがモビリティ領域を推進するワケ -後編

    デジタルマーケティング領域で第一線を走るナイルがモビリティ領域を推進するワケ -後編

    ナイルがMaaSミライ研究所をスタートしたワケ

    2019年7月に、モビリティ革命についてさまざまな観点から検討する「MaaSミライ研究所」をnoteでスタートされましたよね。そこにも意外性を感じました。
    もし、CASEで言った場合も、C(コネクテッド)、A(自動化)、S(シェア)、E(電動化)なのでリースが含まれませんし。カーリースはMaaSのどこに位置付けられるのだろうか、なぜMaaSなのかと…。中には、シェアの中にリースの要素が含まれているのか、「カルモ」のどの部分が、MaaSに位置付けられるのか、少し疑問に思う方もいると思います。

    ※MaaS:Mobility as a Service(サービスとしての移動)の略

    CASEという言葉は、ダイムラー社が中長期の経営ヴィジョンとして発表したことで広がったものですが、自動車領域におけるサービス革新や技術革新を考慮したとき、一部で違和感を感じました。というのも、CASEのConnected、AautonomousSharing、Electoric vehicleを表しますが、Sharingという言葉がしっくりこない。今、目の前で起きているモビリティの革命とは、「所有」から「利用」へのシフトです。つまり、「共有」ではなく「利用」であるべきで、CASEのSは、”シェア”ではなくて”サービス”ではないかと。私は、サービスというレイヤーの中にカーリースが入ると考えていますし、さらに厳密にいうと、カーリースはサービスとしての性質は、要はサブスクリプションです。そのため、MaaSの概念を広義で捉えたときに「カルモ」はMaaSにあたり、今後さまざまな付加機能をつけていくことで、よりMaaSに近づいていくと考えています。

    ではなぜ、シェアリングではなくサービスなのか。

    例えば世界で見るとUberやLyftなどのライドシェアはシェアリングを代表するビジネスです。登録すれば、隙間時間でドライバーとして稼ぐことができますよね。これならシェアリングという言葉が腑に落ちますが、自動運転やAIで路線変更するバスは?様々な交通手段をマルチモーダルにつなぐアプリケーションは?と考えると、違うような気がしてしまうのです。”共有”という言葉より、“利用する”という言い方の方が適切といえるモビリティサービスも多いですし、今後もっとモビリティ関連のサービスは増えていくはず。要するに、アセットとして提供するのではなく、サービスとして提供すること−−−この概念が非常に大事であると。

    その上で、CASEのSが、CとAとEを全部従えているのです。Sがあるから、CAEがある。なぜなら、ConnectedもAutoloadusもElectric vehicleも、すべて利用者ニーズに紐付いているからです。サービスとして利用する車、移動手段があるからこそ、自動運転の技術やコネクテッドの情報、給油が不要なErectric vehicleが活かされます。また、情報産業での5G革命・AI革命・IoT革命も、車産業からすると全部Sに紐づいていく、あるいはAに対して寄与していくでしょう。そうした総合的な観点からSはServiceじゃないかなって。

    ナイルが今後実現したいのは、カルモで車を利用している方が、フードデリバリーでその車を利用したり、ご近所さんの買い物代行をしてくれたり、みんながハッピーになる仕組みを作ることです。

    こうした構想をひっくるめて、カルモはよりMaaSに近づいていくという自負があります。そのためには、このMaaS(モビリティ革命)がどれだけ素晴らしいか、面白いかをしっかり世の人に伝えていかなくてはなりませんし、参入する事業者をもっと増やしていかなくてはならないと思ったため、MaaSミライ研究所を立ち上げました。

     

    現代には多様な技術がありますが、技術があるからサービス作るという考えは、順番が逆じゃないかなと思うことも少なくありません。どんな先端技術でも、サービスに紐づかなければ使いものになりませんし、もったいない気がします。
    そこで、MaaSミライ研究所で伝えていきたいのはどんなことでしょうか?

    世の中にあるいろんなMaaSの形を発信して、今まで興味がなかった人にもモビリティ革命にある今を意識していただきないなと思います。自動車産業のゲームチェンジって、こんなにインパクトがあってすごいことなんだって、思ってもらえるといいですね。

     

    ここまできて、ナイルが「カルモ」を始めた理由からMaaSミライ研究所を立ち上げるまでの経緯がすべてつながりました。今後、ナイルとして進みたい方向性について教えてください。

    海外だとライドシェア一強という状況ですが、おそらく車を利用したビジネスは他にもあるはずです。モノを運ぶとか、料理を運ぶとか、情報を運ぶとか、人ではない何かの移動を、カルモの利用者たちと実現できないかと考えています。

    また、車を販売する立場だと、売り切ることだけに注力します。車を売って、あとはお客様の好きなように利用するのはもちろん当たり前のことですが、車って使えば使うほどコストもかかる。そこをコストではなくレベニューにできないかなと。「車の所有=コストがかかる」から持たないのではなく、稼げることだという世界観を作っていきたいんです。つまり、車を売ることと、車を使ってお客様がマネタイズ(収益化)することを同時に提供するというイメージです。

     

    それは、極端に言えば0円で車に乗れるということでしょうか?

    スマートドライブの「Smartdrive Cars」も、取得したデータによって車のコストを下げることができますよね。可能性は無限です。今までにない車の可能性を探っていきたいですね。

     

    ポジティブな機能がユーザーとの接点を増やす

    スマートドライブと共同で「こんなことが実現できそう」というアイデアやイメージはございますか?

    そうですね、たとえば車の万歩計「くる万歩計」とかどうでしょう?笑 

    BtoC向けに見守りサービスや危険運転通知のデバイスを提供している企業がいくつかありますが、注意喚起はユーザーがワクワクできるものではありませんよね。私は普段から健康のためにも万歩計をよく利用しますが、頑張って歩いたなと思った時だけ立ち上げて歩数を確認しているんです。そこで「今日は9,000歩も歩きました。お疲れ様です!」なんて言われると、おお、頑張ったな、楽しいな、と前向きな気分になるんですよ笑

    それと同じで、運転をした日の終わりにアプリを開いて「今日の運転は良かったね」とやんわりフィードバックがもらえる方が、個人的にはいい気がしていて。

    ただ、そこにお金をかける人はなかなかいないので、無料で提供できるようにしなくてはなりませんが、そういうサービスをスマートドライブのデバイスを利用することで出来たら面白いなと思いました。「カルモ」のアプリ立ち上げると、くる万歩計が出てきて、「今日の走行距離は40km、急ブレーキの回数は0回なので、◯◯ポイントです」と表示するとか。そうするとゲーミフィケーションの感覚で安全運転につなげることができるでしょ。あとはすごろくのように、安全運転で60km走ったら6マス進めるとか。楽しくポジティブに利用して欲しいなって思います。

     

    楽しみながら自然と安全運転を意識づけるのは、素晴らしいアイデアですね。
    カルモで車を利用すると、付随していろんなサービスが付いてくるし、個人も稼げる仕組みがあるからと、利用者がより増えそうです。

    保険の契約者向けアプリって、契約後は、殆ど利用されないイメージがあるんですよね。利用する動機がなければ眠ったままだし、そのまま削除されてしまうことも。そこを改善するには、アプリから車のメンテンナンスを申請できたり、例えば先ほどの万歩計みたいな機能も含めたり、定常的に何かしら利用する理由を作ることとコンテンツ的な要素が必要です。そうすることでユーザーがこまめに訪れるようになり、アプリ内のカルモの車で稼ぐ!というオプションを見て「ちょっとやってみようかな」と思う。そうやって自然と利用されるUXが作れたらいいなと思っています。

    未来は現在の延長にあるので、攻めすぎたコンセプトにはしたくない。人の生活に根ざした体験作りをしていくためにも、カジュアルな接し方からスタートできればいいのかなって。

     

    そういう意味では、「アンケートに答えたら◯◯ポイントがもらえる」というわかりやすいしくみでもいいかと思いますが、いかがでしょうか。「カルモ」の場合、契約者が車の運転距離や安全運転度合いに応じてポイントが付与されるとか。

    または物流倉庫系の企業とAPIでつなぎ、荷物の一部を運べる人を募ることもできそうです。カルモの利用者が車での帰宅ついでにラストワンマイルをフォローし、ポイントをもらうとか。

    そういう仕組み作りも考えています。

    最近、実は子どもが生まれたばかりで目が離せないので、スーパーやコンビニの買い物代行サービスを利用するようになりました。200〜300円の配送料をプラスするだけで、自宅まで生鮮食品を届けてくれる、利用者としては大変ありがたいし助かるサービスですが、スーパーとしては殆ど収益になりません。でも、高齢者や小さなお子様がいる主婦の方など、配送のニーズは確実にあるでしょう。そこを、ドライバーが空き時間を活用して補えるようにできたらいいなって。

     

    モノを買う・モノを運ぶニーズはいつでもどこにでもあるものです。

    実は過去に、IKEAで面白いサービスがありました。今でこそ、ECサイトがありますが、昔は現地に行かなければ商品を購入することができなかったんですよね。ただ、IKEAがある場所は限られています。そこでIKEAが独自に開発したのが、商品を買い物をして欲しい人と、その希望商品買ってくる人をマッチングするサービスです。

    「IKEAのあのソファーが欲しいけど、家からは遠いし、車もないし…」
    「私は近くに住んでいるので、代わりに買ってきましょうか。配送も対応しますよ。」

    今はネットショッピングが簡単にできる時代なので、こういうやりとりを見かけなくなりましたが、あってもいいと思うんですよね。

    そうですね。フードデリバリーとか。

     

    Uberも日本では規制の壁をなかなか越えられず、フードデリバリーに舵を切ったように感じます。

    本国のUberも「UberEATS」の取扱高が20%を超えてきています。もしかすると、5年後には「UberEATS」の会社になっているかもしれませんね。

     

    最近ではいろんなプレイヤーがMaaSに参入しているのが非常に面白いなと感じています。

    例えば、自動車業界とは異業種である不動産業界もMaaSを無視できなくなるはずです。交通と住む場所の兼ね合いで、通勤しやすいからと、東京駅圏内から1時間以内のところを選んでも、自動運転が一般化すれば仕事をしながら出勤できるようになりますし。

    通勤を含む移動が習慣化すると、あまりじっくり考えることはありませんが、打ち合わせや商談での電車やバス、車での移動に、人は月々何十時間、年間だと何百時間以上も費やしているわけです。そうなってくると移動時間そのものが無駄なんじゃないかという考え方が生まれてきますし、思いもよらなかった効率化系のサービスが交通系の業界に打撃を与えることもあるでしょう。

    いろんな業界が参入してくれると盛り上がりますし、MaaSの浸透率も上がります。みんながMaaS、MaaSと言えば言うほど、世の中がMaaS色に変わっていく。だからこそ、この流れにうまく乗りつつ、MaaSの本質を伝えていきたいですね。

     

    そうですね。本日は有難うございました。

  • アリが自動運転技術を前進させ、縦割りが日本のMaaSをダメにする

    アリが自動運転技術を前進させ、縦割りが日本のMaaSをダメにする

    東京オリンピック・パラリンピックを控える日本では、大会期間中の交通渋滞を避けるため、テレワークや時差出勤、一部区間の交通規制など、さまざまな対策が検討されています。そんな中、「アリの行列は渋滞しない」と提唱する「渋滞学」の教授がいると聞きつけ、東京大学先端科学技術研究センターにやってまいりました。

    アリの行列は渋滞しない

    ――西成教授が取り組む「渋滞学」とはどのような学問なのでしょうか?

    渋滞が起こる原因を調査し、解消に導く学問です。渋滞というと、車の渋滞を思い浮かべる方が多いと思いますが、人の混雑から物流、在庫、工場の生産ラインなど、流れるもの全てが研究対象になり得ます。

    ――なぜ、渋滞に興味を持ったんですか?

    「渋滞学」以前は、水や空気の流れを研究していました。でも、流れの学問自体は古くからあるもので、思いつく疑問は解明しつくされていたんですね。新たな発見のある研究がしたくて悶々としているうちに、30代も半ばに差し掛かろうとしていました。

    そんなとき、ドイツのケルン大学に留学し、卒業研究のサポートをする機会に恵まれました。そこで、「アリくん」というあだ名の学生と出会ったんです。ドイツ語で「アーマイズくん」。彼が、アリの交通について研究したいと言い出して、みんなで爆笑したんだけど、「待てよ、面白いかもしれない」と。彼とともに一年間研究し、「アリは渋滞しない」という論文を書いたんですよ。これが米国物理学会が発行する世界トップジャーナル『Physical Review Letters(フィジカルレビューレターズ)』に認められたんです。だってそんな研究、誰も思いつかない。まず、アリが渋滞しているかどうかなんて、誰も関心を持っていなかったんですよ(笑)。

    ――着眼点の勝利ですね。なぜアリは渋滞しないと気づいたのですか?

    一列になって歩くアリをひたすら観察していたら、「さすがのアリさんも混んでくるとイライラするのかな」なんて、いつの間にかアリに感情移入していたんです。でも、さらに観察していると、ある程度混んできても、アリは前に詰めないことに気づいたんです。混んできたら詰めない――もしかして、アリはそれだけで生きているんじゃないかって思ったんです。

    ――前に詰めないと、どんな効果があるのでしょうか?

    詰めないことで、アリとアリの間に空間ができるので、動きが止まらないんです。人間は、混んでくると早く前に行きたいと思って詰めるから、動けなくなるんですよ。

    この発見がきっかけで、渋滞解消には車間距離をあけることが大事だと考えるようになりました。車間をあけておけば事故も減ります。アリはすごいことを教えてくれました。

    ――アリが渋滞しているか否かは、どのようにして判断するのですか?

    アリの通行量に注目しました。車道の場合も、混んでくると車が動かなくなりますよね。そうすると、ある特定の区間で見たときに、通過していく車の台数が減ります。アリも、特定の区間の通行量が多いか少ないかで渋滞しているかどうかが判定できると考えたんです。

    考え方は、数学の「中間値の定理」と同じです。アリが一匹なら通行量が少ない。逆にありがビターっとくっついていても動かないので通行量は少ない。だから、アリがほとんどいない状態と、ものすごくいる状態は、通行量がほぼゼロなんですよ。

    ゼロを起点としてアリが増えていくと、通行量がどんどん上がってきますよね。そして、どこからかまた減少に転じて、ゼロになる。このピークから先、三角形の頂点を下るところからが渋滞だとピンときまして。私の中で、数学とアリがくっついた瞬間ですね。

    「働かないアリ」はサボっているわけではない

    ――アリを観察していて、他にも何か気づいたことはありますか?

    列からたまに外れるアリがいるんですね。「働きアリのうち、本当に働いているのは全体の8割で、残りの2割はサボっている」なんて言われますが、サボっているように見えるアリも、実は、新しい巣やエサを探す役割を担っているんですよ。

    ――大企業の新規事業部みたいですね。

    そうなんです。全員が同じ事業をやっていては、それが立ち行かなくなったら終わりです。1割2割、うろうろしている社員がいると、飴が落ちているのを見つけるんですよ。

    それから、同じ巣のアリはケンカしないんです。アリは愛に満ち溢れていて、邪なことは考えないんですね。人間も、道路に敵対感が蔓延するとダメなんですよ。譲り合いなんです。

    自動運転で渋滞はなくなるのか

    ――「渋滞のときは車間距離をあけずに詰めたほうがよい」と主張する人もいますね。

    「車間距離をあけたほうが良い」と言うと、批判する人もたくさんいるんですよ。実は、「車間距離あけても、割り込まれたら終わりじゃないか」という投書が山のように来ています。

    道路にいる全員が、「車間をあけたほうが徳だ」と考えてくれれば渋滞は減らせます。しかし、現実はそうじゃないので割り込まれることは確かにある……それが悩ましかったのですが、なんと、自動運転の時代がくるじゃないですか!

    割り込まないようにプログラムしちゃえばいいんです。そうすれば全体の最適化ができるので、渋滞は確実に減りますよ。どう走れば渋滞が減るかは学問的にわかっているので、このぐらいの車間距離のときはこのぐらいの速さとか、ここは隊列走行を組んで交通量を稼いでいるから割り込まないように、といった情報を全てインプットし、AIによる判断に役立てます。自動運転時代は、私にとっても追い風なんです。

    ――自動運転の研究開発もされているんですか?

    大手自動車メーカーと連携して、たくさんやっていますよ。自動運転は、組織の垣根を越えて一緒に取り組むべき課題です。各社が違う規格で自動運転車両を作ったら、車同士が通信しにくくなってしまうでしょう。

     

    自動運転で適切な車間距離を保つ仕組みとは

    ――自動運転では、どのようにして車間距離を制御するのでしょうか?

    電波を使って車両や歩行者を検知する、ミリ波レーダーという技術を活用します。

    目の前の車にミリ波レーダーを発し、返ってくる時間で車間距離を算出します。それに応じて、車間距離が詰まらないように速度調整をするわけです。

    ――自動車メーカーの方にも、アリを用いて説明するんですか?

    そうです。アリだけではなく、イワシの群れや渡り鳥などを参考にしている自動車メーカーもありますよ。車を一種の群れとみなし、通信し合いながら最適な動きをすればよいという発想です。

    生物は偉大です。群れを成す生物って、言葉を交わさずともあれだけ統制をとってやっているわけですから、何かもっとシンプルな方法があると思っています。自動運転は、システムが複雑化すると通信時間かかってダメなんですよ。可能な限りシンプルなほうがいいんです。

    ――5Gの時代になって、そのうえシンプルなプログラムが出来上がったら?

    異次元の世界に突入ですね。人間は、見て判断して行動するまで0.5秒かかると言われていますが、自動運転でミリ波レーダーとAI技術を活用すると、0.2~0.3秒に短縮できると言われているんですよ。5Gになったら、さらに速く通信できるようになるので、より迅速な判断が可能になります。多くの渋滞や事故は、未然に防げるようになるでしょう。

    さらに、昨年、面白い論文が出たんですよ。自動運転だと、前の車から情報をホッピングして受け取ることができるのですが、対向車線の車からホッピングするというアイデアが書かれていました。つまり、対向車線の車から数km先の情報を得られるようになるんですね。感動しました。車同士がコミュニケーションすることで、広い情報を一瞬で手に入れられる。技術の進展によって夢はどんどん膨らんでいきますね。

     

    自動運転にも勝る、究極の渋滞解消法は?

    ――渋滞が改善した国はあるのでしょうか?

    各国がさまざまなアプローチをしているのですが、究極の渋滞解消法は、「休暇分散」なんですよ。実際に、ドイツやフランスでは「休暇分散」が採用されています。「みんなで同時に休んだら、混むに決まってるでしょ」って。わたしも国交省に、関西と関東でGWをずらしましょうと提案したことがありました。結局、当時は非難ごうごうで、実現はしませんでしたが。

    ――それこそ物流が止まってしまうとか、ネガティブな反応だったことを憶えています。

    日本では、「失敗したらどうするんだ」と言われて、私の提案は十中八九潰されていますから(笑)。例えば、オランダは、「やってみてだめだったらそのとき考えよう」というスタンスで、やってから会議するんですよ。日本はやる前に会議して潰すんですよね。この違いは大きい。

    ――失敗だったとしても、やってからのほうが、議論の材料となるデータが多く手に入りますね。

    おっしゃる通り。特に新しい技術に関しては、失敗から学べることのほうが多いですよ。失敗を恐れて動かないことは、死を意味します。

    縦割りが、日本のMaaSをダメにする

    ――今、MaaS(Mobility as a Service)の分野では、多くの企業がしのぎを削っています。西成教授は、現状をどう見ていますか?

    このままでは、どの企業も危ないと思います。MaaSは、ある一部を切り取って単体での成功は難しい。公共交通機関や、タクシー、レンタカー、カーシェアリング、物流、ホテル、そして決済の流れ――こういったもの全てを包含するプラットフォームを協力して作っていかないと、個別最適でそれぞれがガラパゴス化し、結局使われないサービスになってしまいます。

    MaaSって技術先行に見えますが、それだけじゃダメなんです。カオスマップを織りなす企業に求められるのは、競争と協調をうまく線引きし、協調できるところは積極的に組んでいくことです。

    特に、日本の物流業界に対してそう思います。アマゾンは、いまや輸送船や貨物航空機も有しているんですよ。もたもたしていると、アマゾンが全部運びますね。中国のアリババも物流に2兆円近く投資しています。日本企業は二桁少ない。普通に戦って勝てるわけがないです。だったら、まとまるしかないじゃないですか。競っている場合ではない。そこに気づいてほしいんです。

    ――しかし、ライバル企業が協調するのは難しいですよね。

    良い事例があります。味の素、カゴメ、ハウスといった食品会社が「商品は競争、運ぶのは協調」として、共同で物流会社を立ち上げたんです。北海道でも、ビール会社が協力し、JR貨物の同じところに混載して商品を運んでいるんですよ。

    「商品や注文の数は競争だけれど、運ぶのはみんな一緒でいいじゃないか」という時代がきたら物流は変わってきますよね。これ、究極のMaaSですよ。Win-Winなんですよね。

    ――なるほど。企業が垣根を超えて協調するには、どんな工夫が必要でしょうか?

    協調によってメリットが生まれるビジネスモデルを考えることです。例えば、外国人が成田空港に着き、移動して、赤坂のホテルに泊まるとします。スマートフォンで最適なルートが提示され、公共交通機関やタクシーの予約、支払まで一度に行えるようにするには、航空会社、公共交通機関、タクシー会社、ホテル会社などざっと見積もってもそれくらいの会社で利益を配分しないといけませんね。みんなが参加して利益を生み続ける仕組みをつくらないと、「国の補助金でMaaS始めました、補助金なくなりました、さようなら」となってしまいます。

    学会も変わらないといけません。今の学会は分野ごとの縦割りです。歴史ある学問にも新しい流れを動的に取り入れていかないと、社会に必要な人材は輩出できないですよ。我々はこれから日本をどんな国にしていきたいのか――そんな議論あってのMaaSだと思うんですよね。

    筆者は小学生の頃、夏休みにクロオオアリ、ムネアカオオアリの研究をしていました。野生のアリの巣を掘り起こし、自作の透明な飼育ケースで飼っていました。

    アリは非常に社会性のある生き物です。最も驚いたのは、亡くなってしまったアリたちを、食べてしまうでも放置するでもなく、飼育ケースの隅に運び、墓場を作ったことでした。死を悼むという概念があるのかまではわかりませんでしたが、ともに暮らし、働いた仲間の死に特別な感情を抱いているのではないか、どうしてもそう考えてしまう行動でした。

    そんなアリの社会性に着目し、渋滞解消や自動運転技術の進展にまで寄与させた西成先生のお話は、ユニークかつ示唆に富んだものでした。しのぎを削る者同士が「競争ではなく協調」することで、より速く、大きな課題に挑めるのです。その一歩を早急に。恐らく、もうあまり時間はありません。

  • 自動車業界はどこまで変わる?「CASE」を解説

    自動車業界はどこまで変わる?「CASE」を解説

    2016年のパリモーターショーにおいて、ダイムラーAGのCEOを勤めていたディッター・ツェッチェ氏が、同社の世界戦略の柱として提唱した「CASE(ケース)」という造語を、みなさんはご存知でしょうか。

    今回は、自動車業界が進めていくべき4つの次世代トレンドを、分かりやすく示したキーワード「CASE」について、その意味や進められている具体的な取り組みなどを、詳しく解説していきます。

    なぜ今CASEに注目が集まっているのか

     

    CASEというワードを、公の場で始めて用いたダイムラーのツェッチェ氏は、今年5月CEOを勇退されましたが、生みの親が第一線を退いた今、100年ぶりの変革期に突入した言われる自動車業界は苦境を打開するために、こぞってCASE戦略を採用し始めています。

    なぜそこまでCASEに注目が集まるのか、それはこれまで移動手段でしかなかったクルマが、徐々に所有からシェアする時代へと移行しつつあり、自動車を製造・販売する旧態依然の経営戦略では多様化するユーザーニーズに応えられなくなってきたからです。そしてCASEという造語を構成する、それぞれの「アルファベット」が示す要素を絡み合わせ、安全で利便性の高い次世代型モビリティ・サービスを構築することこそ、自動車業界が生き残っていくための戦略であると考えられているのです。

    CASEのC=「Connected(コネクティッド)」

    CASEのCはコネクトを意味します。つまり、IoTを活用して車とドライバー/車とデバイス・サービス/自車と他車をネットワークで接続することを示します。

    そんなのは、GPSカーナビやアプリなど、ずいぶん前の段階で実現しているんじゃないの?と感じる方も多いかもしれませんが、CASEにおける接続とは、ユーザーの操作に依存する「一方通行の接続」ではありません。CASEは、車もしくは車載モバイルがセンサーなどで、ドライブに関するさまざまなデータを感知し、それを人工知能・AIが高次元で分析。ドライバーへ有益な情報をリアルタイムで提供する、「相互接続」の水準に達することを目指しています。

    具体例として、ダイムラー社はボッシュと共同で、車両に搭載したセンサーで運行ルート上の駐車場空き状況を把握し、車載ディスプレイや専用アプリへその情報を送信する、「コネクテッドベースドパーキング」という新サービスを開発しました。これは、現在ほぼすべてのモデルがスマート・ネットワークに接続しているメルセデス・ベンツに搭載される予定のシステムで、駐車の空きスペース探しが人と車の共同作業となり、時間・燃料の節約やストレス軽減に寄与するものと期待されています。

    国内メーカーに目を移すと、トヨタはすでにCASE戦略の一環として、コネクティッドサービスである「T‐Connect」をリリースしています。そして今後、国内で発売するほぼすべての自社生産者にDCMを搭載して、コネクテッド化を進める方針を打ち出しました。

    さらにスバルも、2022年までに8割以上の新車へ「STARLINK」を搭載し、コネクティッドカーにする目標を掲げたほか、日産は離れた場所にいてもスマホでドアロックできるなどといった機能を有する、「Nissan Connect」をマイクロソフトと連携してスタート。加えて、各メーカーは通信キャリアとの協業も進めており、ソフトバンクはホンダと、NTTおよびKDDIはトヨタと連携を強め、プラットフォームの開発促進やインフラの標準化など、自動車メーカーだけではなく、通信機器・半導体メーカーを巻き込む大きな動きが展開されているのです。

    現状はまだ、情報の自動収集とドライバーへの伝達が主体の「一方通行+α」という状態ですが、すべての車とITが完全につながり、汎用性の高いプラットフォームが構築されれば、車は単なる移動手段からサービスそのものへと進化する可能性を秘めています。たとえば、ドライバーの身体状態を感知して空調を調整したり、体調不良を察知した際には車載デバイスやスマホなどと連携・救急通報をしたりするなど、車が人の暮らしをサポートする「走るITデバイス」になるため重要な要素、それがCASEの「C」なのです。

    CASEのA=「Autonomous(自動運転)」

    自動車という呼び名は、英語の「Automobile(自動で動くもの)」に由来していますが、ご存知の通り今の自動車はドライバーの操作に頼ることなく動く乗り物ではありません。一方、CASEにおける「A」が示す「Autonomous」は、「自律型」。つまり、エンジンまたは電動モーターの力で動くハコから、真の意味での「Autonomous・Vehicle」を開発、普及させていこうという取り組みです。

    すでに国内外の自動車メーカーは、自動運転レベル2(部分的運転自動化)の機能の導入と運用を始めており、GMの新型モデル「Cadillac CT 6」やアウディのフラッグシップセダン「A8」などには、レベル3(条件付き運転自動化)相当が搭載されています。国内メーカーでも、トヨタ・日産・ホンダを筆頭にすでにレベル3もしくは、それを凌ぐ自動運転を実現可能な技術開発が進行しているものの、最大のネックである法整備が進まないため、現状レベル2の運用に留まっています。

    自動運転のターニングポイントになりそうなのは、東京オリンピックが開催される2020年です。トヨタ・日産・ホンダは揃ってこの年までに、高速道路を皮切りに自動運転レベル3に運用を始め、同年中に一般道路でも実現すると言っています。ただ、CASEを提唱したダイムラーが目指す「A」は一歩先を進むものであり、同社が開発・世界に向け発信したコンセプトカー「スマート(EQフォーツー)」には、ハンドルもアクセルもブレーキすら存在しません。

    このスマートは自律運転が可能なコネクテッドEVで、特定個人が所有するのではなくカーシェアリングで使用するものです。そして、同社のCASE戦略的柱として今後メルセデス・ベンツが発表する、さまざまな新型車の基本的枠組みとされています。

    さらにダイムラーは、どの位置から減速すればカーブを曲がれるかを人工知能が計算し、人の判断なしにスムーズな運転が可能となる、3Dデジタル地図「HERE」を用いた自動減速技術を開発中とのこと。スマートとこの技術が融合すれば、高度運転自動化であるレベル4を超え、「Autonomous・Vehicle」の完成形・完全運転自動化となるレベル5の実現も、夢物語ではないところまで来ているのです。CASEを高次元で融合させようと動きを強め、国内外の自動車メーカーで先手を取っているのは、やはりダイムラーであると言えるでしょう。

    CASEのS=「Shared&Service(シェアリング&サービス)」

    CASEの中でもっとも認知度と理解度が高く、世界各国で普及が進んでいるシェアリング&サービス。それらを意味する「S」ですが、自動車の共有を進めようとするこの取り組みの存在自体が、自動車業界にとって諸刃の剣となっているよう。理由は、「シェアリングの普及が自動車の販売台数減少に繋がってしまうからで、国内ではトヨタとソフトバンクが、米国のUBER、中国のDidi、シンガポールのGlab、インドのOLAといった、海外大手ライドシェア会社に出資・世界戦略を進めていますが、全体を通して国内自動車メーカーの動きは、「鈍い」と言わざるを得ません。

    別角度から、ライドシェアに期待を寄せているのはタクシー業界です。DidiやUBERが配車アプリを展開したり、DeNAもAIを活用したタクシー配車アプリをリリースしたりするなど、今後タクシー業界では顧客獲得競争が激化していくと予想されます。

    また、国内ロボットベンチャー企業であるZMPは、自社の次世代自動車プラットフォーム「RoboCar(R)」をもとに、ライドシェアと自動運転を組み合わせた「無人タクシー」を開発。2018年には、東京のタクシー事業者「日の丸交通」と共同で、都心部で世界初の自動運転タクシーを用いた公道サービス実証を行い、将来的にはスマホで予約・決裁が可能となる、スマートタクシーサービスの提供を目指しています。

    この分野でも一歩先を行っているのがダイムラーで、同社は必要な時にパソコンやスマホで最寄りに停車しているEVをネット検索、見つけたEVにそのまま乗りこめる画期的なサービス「car2go」を提供しており、すでに200万人以上の登録者がいます。国内経済を長年支え続けた自動車業界が、車の共有へとシフトチェンジしつつある今、ダイムラーが描いているシェアリングの延長線上にある自動運転の普及という、新ビジネスへの展開が期待されます。

    CASEのE=「Electric(電動化)」

    これからの自動車業界を語るうえで、もはやEVは欠かすことのできない存在になりつつありますが、CASEに実現にも自動車のElectric化は「絶対条件」ともいえる要素です。

    まず「C」との関連性、高度なコネクティッドカーを運用する時は多大な電力が必要ですが、ガソリン車の場合は発電・蓄電パーツを高性能・大型化しないと、すぐに電力不足が生じて車は走るITどころか、ただの「鉄の塊」と化します。

    一方EVはエンジンが不要なため、各種センサーやECUなどを置く余裕が生まれ、高精度な電子制御が可能で応答性を高めやすいことから、非常に自動運転と相性が良いのです。では、大きな電力を発生させるHVはどうかと言えば、電力は問題ないもののエンジンとモーターそれに大型バッテリーを積むスペースが必要なうえ、ガソリン車より制御が複雑なため自動運転との相性が悪いのです。さらに、ガソリン・EVはシェアカーとして運用するにあたり、燃料確保をガソリンスタンドに頼ることになりますが、EVの場合は乗り捨てステーションでの待機中に充電することが可能です。

    そして、EVともっとも関連性が強いのが自動運転です。ガソリン車やHVは、アクセルを踏んでから車が走り出すまでに数多くの過程があるため、メカニズム的に完全自動運転化が難しいのですが、EVは極端なたとえをすると「大きなラジコン」のようなもの。構造をシンプルに、サイズをコンパクトにすれば、センサーによる車速・位置・左右のバランスなどといった動態把握や、それをもとにした遠隔操作が容易になる…そう、前述したダイムラーのスマートこそ、「CASEを具現化するために誕生したEV」なのです。

    ただ、CASEの要となり得るEVを作り出すには、ガソリン・HVからの転用ではない、EV専用プラットフォームの構築が必要です。かくいうダイムラーのスマートも専用プラットフォームが採用されているのですが、それには膨大なコストがかかります。まだ発展途上といえるEV 界で専用プラットフォームを用意したダイムラーには、CASE推進に対する本気度の証が見えますが、ライドシェアに慎重な国内自動車メーカーが、追随する激しい動きを見せるか微妙なところです。

    日本版のCASEはトヨタが牽引

    国内のCASEを推進しているトヨタは、過去に小型EVである「e-com」を開発し、それを用いたEV共同使用システム「Crayon(クレヨン)」を展開しています。クレヨンは、駅などに充電スタンド付きe-com専用駐車場を設置し、車内にはVICS対応のカーナビが搭載され、利用者はカギの代わりにICカードを所持し予約や決済をネットで行うシステム。

    CASEそのままというべきシステムを、トヨタは1999年~2006年の7年間にもわたり、実証実験していましたが全国運用されることはありませんでした。今やe-comはトヨタの大型展示ショールームである、「MEGAWEB」でアトラクション的な扱いを受けています。

    トヨタはその後も、数台のEVコンセプトカーを発表。いずれも市販には至っていないようですが、2020年より「C-HR」のEVモデルを中国に、同年にインドにスズキと提携・開発新型EVを投入すると発表しています。

    ちなみに、現在トヨタが進行しているCASE戦略の要である、自動運転が可能なモビリティサービス(MaaS)用車両「e-Palette」もEVです。サイズ感は前述のスマートより大きい箱型バスのようなものですが、同様にハンドルやアクセルはありません。e-Paletteのすごいところは、ライドシェアリングとして利用されるだけではなく、低床・箱型デザインによるフラットで広い車内空間を活かし、時に移動販売、時にはオフィスといった具合に、まるでカラフルなパレットのように用途に応じて姿を変えられるところです。

    「中のビジネスモデルは自由自在」という、新発想をもとにしたBtoB向けサービスであり、車両コントロールや運行、カギの管理、稼働状況などはすべてクラウドサービスで統合管理されるため、利用者はビジネスだけに集中できる仕組みになっています。「International CES2018」において発表されたe-Palette、およびそれを活用したトヨタのCASE戦略は、同社の本気を感じさせる無限の可能性を秘めた、BtoB・EVビジネスモデル構想と言えるでしょう。

    まとめ

    現在市販されている国産EVの中で、最もCASEの推進にマッチしそうな車は、世界初の量産EVである三菱自動車の「i-MiEV」、コンパクトなサイズ感といい小回りの良さといい、日本の市街地でシェアカーとして運用するにはうってつけ。 i-MiEVを販売する三菱は現在、日産グループの一員ですが日産と言えば、高速道路におけるハンズオフ走行を世界で初めて可能にした、「プロパイロット2.0」搭載の新型スカイラインを、今年9月から販売すると発表したばかりです。

    現在国内でCAS推進似ているのは断然トヨタですが、将来もし進化したプロパイロット3,0・4,0が登場し、それが日本の道路事情とマッチするi-MiEVに搭載されたら、国内BtoC向けCASE の主役は、日産と三菱にものになるかも知れません。

  • 【MaaSの基礎】MaaSを0から理解するために読みたい本5冊

    【MaaSの基礎】MaaSを0から理解するために読みたい本5冊

    2019年に入り、各業界でさまざまな取り組みや実証実験が進められ、ますます活況にあるMaaS。

    「ニュースでは話題になっているけど、イマイチその仕組みやメリットがわからない」「MaaSを0から理解したい」という方に向けて、MaaSについてわかりやすく、さまざまな視点から解説された書籍を5冊ご紹介します。

    MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ

    フィンランドを始め、世界中でモビリティ革命が起きている−―国内のMaaSはどこへ向かうべき? なぜ、各業界がこぞって取り組んでいるの?

    そもそもMaaSとは何か。MaaSによってどのようなビジネスインパクトが起きるのか。国内外での違いとは? 来たるモビリティ革命に備え、各産業はどのようにアクションを起こすべきかなど、MaaSの本質からまちづくりや具体的なビジネスへの転換まで、包括的にMaaSを捉えて解説する重厚な一冊。MaaSの先駆者・フィンランドで「Whim」を提供するMaaS GlobalのCEO、Sampo Hietanen氏のインタビュー、国内外におけるMaaSの主要プレイヤーをまとめたカオスマップも収録。しっかり読み込めばMaaSの全体像が把握できるはず。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    序章 MaaSは危機か、それとも輝ける未来か
    1. モビリティ革命「MaaS」の正体
    2. なぜMaaSのコンセプトは生まれたのか
    3. 日本におけるMaaSのインパクト
    4.「新モビリティ経済圏」を制すのは誰か?
    5. プラットフォーム戦略としてのMaaS
    6. テクノロジー戦略としてのMaaS
    7. MaaSで実現する近未来のスマートシティ
    8. 産業別MaaS攻略のアクションプラン
    終章 「日本版MaaS」に向けて

     

    著者:日高洋祐・牧村和彦・井上岳一・井上佳三
    出版社:日経BP社
    書籍ページ:https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/269670/
    Amazonページ:https://amzn.to/2yfO0Ca

    スマートモビリティ革命

    現在のモビリティ革命の背景にある世界の公共交通政策や情報技術の進化について概説しながら、日本でいち早くモビリティサービスを実現した未来シェアの「未来型AI公共交通サービスSAVS(Smart Access Vehicle Service)」について、技術と社会実装の現状を紹介。来たる超高齢化社会により、過疎化が止まらない地方。社会課題を解決するために、MaaSをどのように取り入れるべきか? 国内MaaSを浸透させるために必要なこととは?実際の取り組みから、モビリティ革命に必要な考え方、最適化への課題を浮き彫りにした一冊。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    序章 スマートモビリティ革命へ向けて
    1.世界の公共交通政策とスマートモビリティ革命
    2.未来型AI公共交通サービスSAVS
    3.スマートモビリティを実現する未来技術
    4.都市型デマンド交通とマルチエージェント社会シミュレーション
    5.未来のモビリティデザインと需要分析・予測・設計手法
    6.SAVS実証実験の全国展開と未来型AI公共交通への課題
    7.SAVS実証実験の舞台裏―マルチデマンド配車計算の実装
    8.地域公共交通の現実とモビリティ革命への障壁
    終章 SAVSで未来社会を創る

     

    著者:中島秀之・松原仁・田柳恵美子・スマートシティはこだてラボ+株式会社未来シェア
    出版社:近代科学社
    Amazonページ:https://amzn.to/2GyXSeL

    Mobility 3.0: ディスラプターは誰だ?

    MaaSと共に注目ワードになっているCASE(ケース)。これは、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared / Service(シェアとサービス)、Electric/Electronicのそれぞれの頭文字を組み合わせた略称です。世界最大手の経営コンサルティング会社・アクセンチュアが、100年に一度の変革期真っ只中にある自動車業界において、これらのモビリティサービスがどのようなインパクトを起こすか、自動車業界が生き抜くためにすべきことなどを丁寧に解説しています。アクセンチュアによる最新予測からGoogleとソフトバンク、自動車メーカーそれぞれのアプローチ、CASEから見たクルマの未来など、読み応え抜群の内容です。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    序章 モビリティ3.0の世界で、人々の移動はどう変わるか?
    1. CASEがすべてを変える
    2. CASEからどのようなビジネスが生まれるのか?
    3. CASEによって新たに生まれる事業機会
    4. グーグルの戦い方
    5. ソフトバンクの戦い方
    6. CASE時代における自動車メーカーのモビリティ戦略
    7. モビリティ3.0の世界を創造する

     

    著者:川原英司・北村昌英・矢野裕真
    出版社:東洋経済新報社
    書籍ページ:https://str.toyokeizai.net/books/9784492762493/
    Amazonページ:https://amzn.to/2KccPnW

    モビリティー進化論 自動運転とモビリティサービス、変えるのは誰か

    進化する自動車産業のけん引役は、「自動運転」と「次世代モビリティサービス」-?カーシェアリングが全国に普及し、クルマは所有からシェアする時代に変わりつつあります。著者曰く、将来はこの2つが融合することで自動車産業の姿が大きく変わるのだとか。

    クルマの枠を超えたモビリティの未来を、日本国内だけでなく、米・欧・中などの国々、そして社会情勢や需要、産業、都市環境を踏まえじっくり考察された書籍。具体的なコスト面までもしっかり見据えており、絵空事ではなく現実的な視点で考えられていることがわかります。MaaSによって、日本と世界はどうなるの?をしっかり解決してくれるでしょう。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    1. 交通システムで解決すべき社会的課題・ニーズ
    2. 世界各国の都市構造はこれだけ違う
    3. 各国の普及をけん引するのはどの産業か
    4. 既存の交通サービスはどこに問題があるか
    5. 各国で勃興する新たなモビリティーサービス(前編)
    6. 各国で勃興する新たなモビリティーサービス(後編)
    7. モビリティーサービスとしての物流市場
    8. ユーザーから見たモビリティーシステム変革のニーズ
    9. モビリティーシステムの変革を国や自治体が後押し
    10. 自動運転車開発の「押さえどころ」を考える
    11. 自動運転車の販売価格はこうなる
    12. 自動運転型モビリティーサービスの開発をいかに進めるか
    13. LSVが変える自動車業界
    14. モビリティーサービスと自動運転、2030年の普及シナリオ
    15. 自動車市場への影響とプレーヤーに求められる行動

     

    著者:アーサー・ディ・リトル・ジャパン
    出版社:日経BP社
    書籍ページ:https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/265010/
    Amazonページ:https://amzn.to/32WscJN

     MaaS入門:まちづくりのためのスマートモビリティ戦略

    8月1日に発売予定のホヤホヤの新刊!2019年のバズワードになりつつあるMaaS。国内と世界の動きを紹介しながら、地方と都市をサステナブルな状態にする強力なツールとして、MaaSをどのように活かすべきかを徹底解説した一冊。これからMaaSを学びたいという方、MaaSで地方創生を考えている方にもぴったりのMaaS入門本です。

     

    ざっくり内容を把握する目次欄:

    序章 MaaSは交通まちづくりの最強ツール
    1. フィンランドから世界に広がるMaaS
    2. MaaSの源流になったスマートテクノロジー
    3. フィンランドとヘルシンキの政策
    4. MaaSが生まれた理由
    5. ヘルシンキでMaaSを体感する
    6. 世界で導入が進むMaaS
    7. 自動車メーカーがMaaSに参入する理由
    8. ルーラル地域とMaaS
    9. 日本でのMaaSの取り組み
    10. 日本でMaaSを根付かせるために

     

    著者:森口将之
    出版社:学芸出版社
    書籍ページ:http://book.gakugei-pub.co.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2711-2.htm
    Amazonページ:https://amzn.to/2K8cSRN

  • 【MaaS基礎知識】MaaSにおけるレベルを解説

    【MaaS基礎知識】MaaSにおけるレベルを解説

    「モノづくり」である第2次産業から「サービス」である第3次産業への転換は、すでにあらゆる業界共通の潮流ですが、長きにわたり経済の中心に位置していた自動車業界においても、この動きに追随することが必要となってきました。そのため、自動車メーカーもクルマを作り売っているだけでは生き残れないという現実を理解し、カーシェアリングへの参入やコネクテッドサービスを充実など、業界内外の流れに対応を始めています。

    しかし、MaaSとは本来「クルマ=モビリティ」としない概念です。つまり、クルマとサービスを結び付けるだけの日本版MaaSは、他国と比較して、一歩も二歩も出遅れているのです。

    MaaSレベルとは

    MaaSは新しい概念でもあるため、その定義には多少バラツキが見られますが、提供するサービスの進行状況に応じてレベル0~4の「5段階」で分類されています。このレベル感は、トヨタをはじめとする国内メーカーがMaaSの中核を担うであろうと考えている「自動運転」の進捗レベル構成と酷似しています。

    レベル 説明 該当するサービス
    レベル0 統合なし、つまり移動媒体がそれぞれ独自にサービス提供している、現在の交通システムのこと タクシー、バス、電車、カーシェア、Uber
    レベル1 料金・ダイヤ・所要時間・予約状況などといった、移動に関する一定の情報が統合、アプリやWEBサイトなどによって利用者へ提供されている段階のこと NAVITIME、Google、乗換案内
    レベル2 目的地までに利用する交通機関を、スマホアプリなどによって一括比較でき、予約・発券・決済をワンストップで可能になる段階 滴滴出行(Didi、中国版のUber)、Smile einhuach mobil
    レベル3 事業者の連携が進み、どの交通機関を選択しても目的地までの料金が統一されたり、定額乗り放題サービスができたりするプラットフォームなどが、整備される段階 Whim、UbiGO
    レベル4 事業者レベルを超え、地方自治体や国が都市計画・政策へMaaSの概念を組み込み、連動・協調して推進する最終段階

    RPGゲームであれば、経験値を積むことで着実にレベルアップをしていきますが、MaaSの場合は「ボスキャラ」ともいえる多様な課題をすべてクリアしなければ、次の段階に進むことができません。

    現状はほぼこの段階?~MaaSレベル0~

    MaaSレベル0はすでに生活に浸透しているものである、「現在の国内交通システム」と考えて差し支えありません。自家用車やタクシーをはじめ、二輪車・バス・電車・船舶・航空機など、あらゆるモビリティサービスがありますが、個々に独立したサービスを提供しているので、利用数と同じだけユーザーは配車の手配や乗り継ぎに伴うダイヤの確認、チケット購入と決済を行っています。

    また、米国では一般的となったUberなどのライドシェアが国内に普及したとしても、配車や決済方法が他のモビリティと分離している現状では、「MaaSレベル0」のままだと言えるでしょう。さらに、国内自動車メーカーが心血を注ぐ自動運転が、限定的ながら人を介さない高度自動化である「レベル4」へ到達したとしても、結局のところ以下のような状態のままではMaaSは全くレベルアップしないことになります。

    • 自動運転で最寄り駅へ
    • コインパーキングで代金を現金払いする
    • ICカードを利用して電車で移動
    • 目的地にタクシーを利用して到着

    つまり、日本が現在のMaaSレベル0から脱却するには、シェアリングサービスや自動運転の導入を進める前に、まずは既存モビリティインフラの統合を急ぐ必要があると言えるでしょう。

    現在進行形の段階~MaaSレベル1~

    料金・所要時間・距離など、利用者に対して各モビリティサービスに関するさまざまな情報が一括提供されるようになるとレベル1へ到達します。

    MaaS分野で後れを取っている日本ですが、このレベル1の段階まではシームレス化が進行しており、Googleマップや乗り換え案内、NAVITIMEのような情報統合アプリなどがその具体例です。

    また、自動車メーカーが推し進めている、コネクティッドカーの開発と普及もその1つで、単なる移動手段に過ぎなかった車を「スマホ化」し、道路状況や移動経路などといった情報を、IoTを介し共有・サービス提供する、レベル1段階の取り組みです。

    しかし、いまだ情報共有が進んでいるのは高速道路を管理するNEXCOと公共交通機関(JR・公営バス)、航空各社との間のみであり、私営バス・鉄道やタクシー・レンタカーなどはシームレスな情報共有がなされているとは言い難い状態です。移動手段の選択肢が多く、交通インフラが高水準で整備されている日本ですが、官民が入り交じっているため規模もマチマチである構造上の問題や激しい競合関係がネックとなっているようです。

    ここからが本格的なMaaS~MaaSレベル2~

    「予約・決済方法の統合」が条件のレベル2に到達するには、諸外国と比較し現金に対する信頼度が圧倒的に高い、日本特有の国民性への配慮やキャッシュレス化への変革が重要な要素になってきます。

    予約方法の統合については、レベル1が一般化しつつある今、ほぼ課題はないものだと言えますが、約43兆円もの現金がタンス貯金として眠っているとまで言われる我が国において、クレジットカードや電子マネーによる決済のシームレス化が“当たり前”となることはややハードルが高いと言えるでしょう。事実、消費税増税での景気冷え込み緩和策として、キャッシュレス決済時に最大5%のポイント還元制度が施行される予定ですが、大手スーパーや高額商品を取り扱っている百貨店は対象外となったため、年配層を中心にキャッシュレス化の進行はやや行き止まり感があります。

    しかし、キャッシュレス化を経済全体ではなくMaaSに絞った場合、まったく打開策がないわけではありません。お手本とすべきは先進国フィンランドのヘルシンキで人気が急上昇している、ルートサーチとモバペイを組み合わせたMaaSアプリ「Whim」です。

    同サービスには3つのプランが設けられており、最上級プランの「WhimUnlimited」であれば、指定区域内のバス・電車などの公共交通機関とタクシーがいつ・何度でも乗り放題です。さらに、レンタカーは無条件で乗り放題なため、国内業者の1日辺り料金相場が約7,000円であることを考えると、10日以上利用すれば約63,000円である月額利用料金の元がしっかり取れる計算になります。

    WhimはQRコードを見せるだけで決済可能な利便性と、おトク感のあるインセンティブの高さを併せ持っていたため、爆発的にユーザー数を増やしてきました。前述したWhimUnlimitedはレベル2を飛び越え、すでにレベル3へ達しています。国内のMaaSレベル2や3へと引き上げるには、Whim以上にインセンティブを得られる料金設定をしなければ、5%のポイント還元にビクともしなかったユーザーを振り向かせることが困難であるかもしれません。

    巨大資本提携で見えてきた?~MaaSレベル3~

    2018年10月、トヨタとソフトバンクが大型提携し、自動運転を中心に据えたMaaSスタートアップ新会社「MONET Technologies」を設立しました。2019年3月からはホンダや日野自動車も資金提供しています。新会社は、オンデマンドモビリティサービス・データ解析サービス・自動運転事業を事業の3本柱とし、フィンランドで普及が進んでいるWhimと同様レベル、もしくはそれ以上のMaaSプラットフォーム誕生も近いと、国内外から注目が集まっています。

    また、利用者の需要に合わせジャスト・イン・タイムの配車を行う地域連携型オンデマンド交通と、企業を対象にしたシャトルサービス提供を目指すとしており、実現すれば「サービス提供の統合」が条件のMaaSレベル3へアップすることになります。

    しかし、モビリティ関連企業や政府・自治体の担当機関ならともかく、一般の方々にはMaaSが自分たちの生活にどんな利便性や経済効果をもたらしてくれるのか、あまり理解されていません。大手企業が進めている取り組みスピードに、未来の利用者となる人々の理解度が追いついていないように感じられ、このままだとどれほど優秀なMaaSプラットフォームが完成しても、利用に至るまでのハードルを取っ払う時間がかかる可能性も。

    もちろん、ハード面での整備が進むこと自体は歓迎すべきことですが、併せてMaaSがもたらすメリットについても、関連企業は周知と啓もう活動を積極的に実施すべきでしょう。

    グローバルな連携も不可欠に~MaaSレベル4~

    MaaSは単純にモビリティの利便性を向上させるだけではなく、①都市部における交通渋滞②排気ガス規制などの環境問題③地方を中心とした交通弱者対策といった日本が抱える深刻な問題を解決に導くことが最終目的です。

    レベル4は「政策の統合」が達成条件とされているため、国・自治体が都市計画や政策レベルで協調し、国を上げたプロジェクトとして推進しないことには決してたどり着けない領域です。MaaSの軸となり得る自動運転にしても、海外で広がりを見せているUberにしても、日本国内に普及させるには法改正が不可欠ですが、基幹産業である自動車業界が絡んでいるため、一気に議論が進むとは考えにくいでしょう。

    また、国境を越えた業務提携も不可欠です。最近の例では、乗換案内サービスを手掛けるジョルダン(株)は2019年1月、英国で公共交通チケットサービスを提供しているMasabi社と日本における総代理店契約を締結しています。そこで、従来の経路検索・ダイヤや運行状況情報だけではなく、チケット購入・乗車をスマホだけで完結させる、「モバイルチケットサービス」の本格提供を今年中にも開始すると発表しました。

    さらに、Whimを運営するスタートアップ、MaaS Globalのサンポ・ヒエタネンCEOは、2019年中の日本展開の可能性を口にしており、東京・名古屋・福岡などのほか、外国人居住者や観光客の多い横浜エリアにおいて、パートナーと熱心な交渉を進めているといいます。ただ一部では、国と自治体、そして民間巨大資本が連携を強めず、国産MaaSプラットフォームのリリースと普及が遅れた場合、日本のMaaS市場はWhimに席巻され、国内モビリティは人やモノを運ぶだけの「駒」になると危惧する声も挙がっているのです。

    まとめ

    「黒船」Whimの襲来は、MaaS参入を進める国内企業にとって脅威以外の何物でもないかもしれませんが、2019年10月と噂される日本上陸が実現すれば、一般ユーザーの利便性が向上し、政府が目指す交通問題の緩和に寄与することは確かです。そして、たとえ遅ればせながらでも日本特有の国民性に配慮した、優秀な国産MaaSプラットフォームを生み出すことができれば、世界初の本格MaaSアプリWhimが相手でも、逆転する可能性は大いにあるでしょう。

  • 【対談】MaaSをバズワードで終わらせない。都市モデルをベースに考える国内MaaSのあり方 後編

    【対談】MaaSをバズワードで終わらせない。都市モデルをベースに考える国内MaaSのあり方 後編

    元号が変わり、新たな時代の幕開けとともに加速し始めたMaaSへの取り組み。首都圏や地方など、各地で実証実験が行われたり、新たなサービスが生まれたりと、ユーザーの生活へ浸透する日もそう遠くはないかもしれません。

    そこで今回は前編に引き続き、国内で率先してMaaSに取り組まれている、MaaS Tech Japanの日高洋祐(ひだかようすけ)様にインタビュー。都市部と地方でMaaSを推進するために重要な考え方についてお話しいただきました。

    可能性は無限大。社会問題も解決へと導くMaaS

    北川:「前編とは違う視点でMaaSを考えてみたいと思います。都市とは違い、地方×MaaSはどのような可能性を秘めているでしょうか?」

    日高:「生活行動と密接なつながりが生まれるようなMaaSが有効だと考えています。地方では、人口減少に伴い従来型の商店街の閉鎖や免許返納などを理由に高齢者の買い物弱者が増えています。生活の買い回りや医療機関への通院などお出かけの足が課題となります。スーパーがあっても自宅からは離れているため、高齢の方ほど気軽に買い物へ行くことができません。たとえば、Aさんがジャガイモを買い忘れてスーパーへ行こうか迷っていたので、この機能を利用するとしましょう。そこで移動に関する情報とその生活ニーズの情報が紐づいていれば、その家庭の近くを宅配ルートとする何かしらのドライバーがそのまま届けてくれることも可能になります。自動車やドライバーのシェアリングだけでなく、移動目的自体の解消にもシェアリングの考え方は導入できます。そうするとAさんの往復の2トリップが省略されます。高齢者に負担をかけることなく日用品など必要なものが買えるよう、デイケアセンターに移動販売車を送っている地域もありますが、その販売車の売り上げは非常に良いと伺っています。こうした事実からもわかるように、移動デマンドと購買デマンドの両方がわかれば、買い物弱者に対する社会問題への解決策が見つかるかもしれません。スーパーはスーパーで売り上げも維持できますしね。誰が何を買うのか、移動スーパーはどこに行けばいいのか。それがデータをもとに最適化できれば、買い物弱者と呼ばれる方達は生活が不便だと思うこともなくなるでしょう。

    なので、データは集めたら囲い込まず、データプラットフォームをもとに価値を出した方がいい。事業化のイメージもしやすくなりますしね。」

    北川:「欲しいものを買うという観点では、物流で買い物をフォローするという考え方もありますが、各家庭に一軒一軒お届けにあがっていると、運用コストが膨大になってしまう。」

    日高:「そうですね、便利な宅配サービスが過剰に拡大したサービスとして普及してしまうと逆に都市としての物流効率が悪くなってしまいます。モノを買う側と売る側のどちらの負担もかけないためには、ある程度移動と物流を集約させることが重要になってきます。集約するには、移動デマンドと購買デマンドを踏まえて施策を打ち、効果検証をしてフィードバックを得るという作業が必要です。人が移動してスーパーで買い物をしている間に、スーパーは移動してモノを売る。少子高齢化が急速に進む今、人口が少ない地域や高齢化した地域すべてに必要な手段となってくるでしょう。

    MaaSで交通をより便利に変えていくことも重要なことですが、移動を変えるということはこうした社会問題解決の糸口にもつながっていくのです。」

    都市という単位で考えるには

    北川:「私たちスマートドライブは、移動の最終形態として『移動を移動でなくしたい』という考えを根底に持っており、移動の進化をデータで後押しています。日高さんは、移動と移動によって周辺の都市は今後どうなっていくと思われますか?」

    日高:「私たちも移動社会の基盤を作るという考えを軸に置いています。少し前までは一家に一台、車があったので移動がしやすかったですし、ドライブそのものを楽しんでいました。しかし、今は時代の流れとともに、人々のライフスタイルや車のあり方も変わりつつある変換期にいます。車との付き合い方が変化を遂げる時代の中で、私たちが企業として目標としているのは、移動の(MaaS)レベルを一段階でも引き上げることです。

    これまで、一つの場所に人口が集まり、そこから鉄道のレールが轢かれ、駅が設置され、商業施設が整い、街が活性化してきました。反対に今、人口が減っていくからといって施設を縮小しよう、移動販売を増やそうとダウンサイジングをするのではなく、“ダウンサイジングをできる状態”へ持っていくにはどうすれば良いかを考えなくてはなりません。眼の前で人口が減っているという事実があっても、もしかしたら数年後には急激に人口が増えるかもしれない。目指しているのは、どのような人口の変動にも早急かつ柔軟に対応できる状態を作ることです。

    どのような方向性で対応すべきかを考えるのはその都市の交通事業者や地域の首長さんたちですが、そもそも今はベースとなるソリューションがありません。そこで私たちがまず目指すのが、都市が大きくなったり小さくなったりして人の生活スタイルが変わっても、移動サービス提供者が適応できる状態にすることです。ソリューション部分をカバーできれば、次の領域に進むことができるからです。ユーザーと複数の交通事業者と、その周辺にいる関係者がつながりやすい状態を作るには、システムの構築も事業の作り方のスキームも、どちらも大事な要素です。

    これは、饗庭伸さんの著書、『都市をたたむ 人口減少時代をデザインする都市計画の考え方』にも書かれていて非常に共感した考え方なのですが、都市って、人口によって規模が大きくなったり小さくなったりするじゃないですか。ただ、それを大きい・小さいの議論ではなく、たたむか広げるかという視点で考えていくことが大事だなと。ここで言う”広げる”は、エリアを広げるという意味ではなく、需給ニーズに合わせて拡大したり縮小したりするということです。

    目の前に、一枚の風呂敷があると想像してください。人口が増え、拡大している時は風呂敷を広げる、縮小している時は小さく折りたたむのです。単純に不要な部分を切り取って捨てるのではありません、たためばいいだけです。そうすれば、再び人口が増えたときも風呂敷をサッと広げて拡大できる。こういう概念をベースに、自動車はどのように組み込んで行けばいいかを考えるのです。つまり、現人口に合わせた最適な車両台数にするのではなく、人口減少によって発生した余剰車両は別の輸送手段に活用するなど、別の方法で利用していつでも広げられるよう待機しておく。そうやって、たたむ・広げるがコストをかけずにできるようになると、来年開催されるオリンピックやパラリンピックなどの大規模イベントがあっても問題なく対応できることでしょう。その抽象的な概念をどうテクノロジーとステークホルダー間のアライアンスで実現するかということだと思います。

    公共交通と事業用車両を問わず、利用方法や台数を固定せずに状態や状況によってたたんだり、広げたりが臨機応変にできれば、今後、インバウンドの増減があってもすぐに対策できます。少子高齢化による人口減少やインバウンド対策など、課題は多方面に広がっていますが、トータルで見て都市モデルのあり方を決めていくべきではないでしょうか。いわゆるSaaSモデルのようなイメージで都市のインフラ機能に増減を当てはめて考えられると、スマートシティの土台となってくるかもしれません。将来に向けてそのような絵図を描きながら、その中で移動をどう定義するかを考えていきたいですね。」

    つながりの連鎖でMaaSを推進する

    北川:「さまざまなものをつなげてデータ化したり、可視化したりする部分は私たちスマートドライブが得意なことですし、対応すべき領域です。そして、それを実現してサービス化していくところをMaaS Tech Japan社とともに考えていければと思います。」

    日高:「多少、方向性や扱う領域が異なっていたとしても、抽象的な概念を共有してくれる人、将来的に目指す未来が同じ企業が多ければ多いほど、理想の形へと近づいていきます。私もスマートドライブさんの先進的な取り組みは参考にさせてもらっています。」

    北川:「私たちもそう信じています。最後になりますが、スマートドライブへ期待することや希望、要望は何かございますか?」

    日高:「スマートドライブ社が非常に価値のあることをやってらっしゃることは業界内では周知されていますが、業界外ではなかなか伝わりにくいのかなと。移動データの活用によって事故を減らし、結果として安全運転が広がり保険料も安くなる。これってヒトにも企業にも環境にも優しいことですよね。

    ですので、たとえばスマートドライブ社のソリューションでできることを、他の業界に置き換えたときにこんな可能性があるということをもっとわかりやすく伝えることができれば、より視野の広いモデルで事業展開ができるのではないでしょうか。スタートアップもそうですし、民間企業の新規事業開発にもすごく響くと思うんです。そうして広がっていけばいくほど、サービスやビジョンに共感した人たちやサービス連携したい企業が自然と集まってきます。そういう流れができるとMaaSも急進しますし、海外にも『日本のモビリティ社会はとても魅力的でしょう』と胸を張って伝えることができるはず。ガラパゴスではなく、日本らしさを重視するというか、SaaSモデルを踏まえたうえで人々の生活を作っていければいいですよね。あとは鉄道やバスとの接点を持てるとさらに世界が広がっていくのではないでしょうか。」

    北川:「ありがとうございます。業界の枠を超えてつながりが連鎖し、さらなる可能性を広げていければと思います。」

    日高:「スマートドライブの“ドライブ”が何を意味するのか−− それは論点でもコア事業でもあるけれど、その先にあるのはドライブの最適化ではありませんよね。コーポレートビジョンにも記載されていますが、『移動の進化を後押しする』ということこそが、スマートドライブの核心部になっている。」

    北川:「スマートドライブは直訳だと『かしこい運転』ですが、目指しているのは、『世の中を、かしこくドライブしていこう(=前に進めていこう)』という世界です。じゃあ、どういうドライブをしていくべきなのか、それを今後わかりやすく、しっかりと伝えていきます。ありがとうございました!」

  • 【対談】MaaSをバズワードで終わらせない。都市モデルをベースに考える国内MaaSのあり方 前編

    【対談】MaaSをバズワードで終わらせない。都市モデルをベースに考える国内MaaSのあり方 前編

    サブスクリプションに5G、自動運転にコネクテッドカー、デジタルトランスフォーメーションにIoT…。この数年で数々のバズワードがビジネスの世界で生み出されてきましたが、変革期の最中にあるモビリティ業界でも多くのバズワードが飛び出し、話題をさらっています。その中で、今もっとも注目されているのがMaaS(Mobility as a Service)です。MaaSはモビリティ業界だけでなく、地方や都市全体、観光にまで広がり、人々の生活と利便性を変えようとしています。

    そこで今回は、国内で率先してMaaSに取り組まれている、MaaS Tech Japanの日高洋祐(ひだかようすけ)様をゲストに迎え、国内におけるMaaSをいかにして広げていくか、MaaSを浸透させるために大事なことは何かをお話いただきました。MaaSをバズワードで終わらせないために必要な考え方とは−?

    MaaSへの認知や取り組みを加速したい

    北川:「スマートドライブでは、今まで車両に取り付けるデバイスを開発し提供していましたが、現在、目指しているのはドライブレコーダーや温度センサー、タイヤの空気圧計など、センサーデータのプラットフォーム化です。そして、このプラットフォームを起点に今後、MaaSに関していろんな関わり方ができると思っています。

    まずは、日高さんがMaaSに取り組むようになったきっかけをお伺いできますか。」

    日高:「鉄道会社に入社後、主にICTを活用したスマートフォンアプリの開発や公共交通連携プロジェクト、モビリティ戦略の策定などを行ってきました。たとえば、運行管理システム等から電車の位置情報を取得してユーザーに届けたり、混雑情報等をどのように利用者に提供するかを検討したり、スマートドライブ様が提供しているサービスの“鉄道版”とお考えいただければイメージしやすいかもしれません。

    入社以降輸送業務の現場にいて、2010年からは企業内の研究所で新規サービスの研究開発業務に従事し、2018年6月に立ち上がったMaaSを推進する部門に参画しました。その後独立してMaaS Tech Japanを設立しました。また、2018年にはMaaSやモビリティサービスに関する産官学での知を共有し、技術革新につなげることを目的とした一般社団法人JCoMaaS(ジェイコマース)の設立を行い、MaaSの協調領域を生み出すエコシステムの創出に取り組んでいます。

    MaaS に積極的に取り組むきっかけとなったのは、ITS会議など交通系の海外のカンファレンスでは2016年ごろからMaaS一色といってもよいほどホットなキーワードになっているのに、日本国内ではほとんど話題とならず世界からの遅れに危機感を覚えたからです。そのため、海外で起こっている動きを日本語にして、かつそれは海外の話しだよねとならないよう、交通や都市を良く知った日本人が分析して伝える必要があろうと考えました。その一つとして著書『MaaS  モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』を執筆するなど、日本でMaaSへの認知や取り組みを広げていく活動を始めました。

    MaaSは単純にモビリティに閉じた改善ではなく、都市全体という大きな枠で捉えながら推進していかなくてはなりません。とくに、データの融合が核となってきますので、個別事業者の利益最大化よりも、新しい連携による産業のKPIのほうがMaaSは伸びていくはずです。そういった点でも、『MaaS  モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』の出版は、モビリティ関連の企業の方は外を見るようになり、モビリティの外側にいる方たちもモビリティに目を向けていただくきっかけになりました。」

    MaaSのその先へ

    北川:「前職でMaaS専門の部門が立ち上がったとおっしゃられていましたが、ご自身で起業されたきっかけは何だったのでしょうか。」

    日高:「もっとMaaSを突き詰めたいと思ったこと、『Beyond MaaS』と言っていますが、MaaSが実装された先の社会を創りたいと思い、2018年の11月に会社を立ち上げました。前職の会社もとてもよい会社で、起業への理解もあり今の自分があるのもJR東日本のおかげであるととても感謝しています。けれども、逆にその大きな会社が背景にあると、どこかで安心感が出てしまうため、自分を追い込むためにも一回その大きな看板を外してMaaSの世界に飛び込んでチャレンジしたいと考えました。それを認めてくれた会社にはとても感謝しています。

    MaaS Tech Japanでは、事業者向けと生活者向けに鉄道やバス、タクシーなどあらゆるモビリティサービスを統合したプラットフォームを構築しています。これを基盤に、公共交通やライドシェアなど単体のサービスでなく、ユーザと事業者、事業者と事業者の連携を促進したいと考えています。

    たとえば、オリンピックのときなどあるスタジアムで試合が終了し、何千人、何万人もの人が一斉に移動するとしましょう。移動の際にまず考えるのが、鉄道やバスの運行形態、スタジアム近辺を走るタクシーの台数といったリアルタイムの情報ですが、これだけ多くの人がいっぺんに移動すると大混雑することが予想できます。それぞれの事業者は個別に情報発信をしていますが、ユーザーがすべてを把握したうえで最適な移動手段を考えるには時間も手間もかかってしまう。この場合、スタジアムにいた人数をベースにして帰宅ルートを把握することができれば鉄道やバスの輸送量の割合や、タクシーの状況などコントロールして、人の流れを分散して効率化が可能となります。そのためには、データを一つの場所に集めてモビリティ間の連携を促進すること必要です。壮大な話しのように思えますが、だからこそチャレンジすべき領域です。」

    北川:「現在、日本国内でそうした取り組みはなされているのでしょうか。」

    日高:「同様のアプローチは様々な企業や研究者が取り組まれてきましたが、実際にそれがスケールするところまでは至っていません。技術やコンセプトは出来ているのですが、実装されていない理由として考えられるのが、ユーザーと事業者の関係性の中で実施に至るような共通概念やベネフィットが生まれていないことです。また、そこを弊社では新しいスキームでチャレンジし社会実装まで到達することに貢献したいと考えています。

    MaaSは交通事業者のデータをAPIなどで統合して1つに集め、それをユーザーや都市に提供するというのが基本の概念です。フィンランドのWhimの場合、交通にまつわる情報を集約し、ユーザーにアプリを提供しています。今まで個別で予約・購入していた新幹線のチケットやタクシーの配車がアプリの操作だけで完結するため、ユーザーは移動をシームレスに行うことができるのです。それが、海外で広がっているMaaSですが、国内ではそれだけだと価値が感じられにくいようですので、これらの交通に関する情報を都市に還流させたり交通機関にフィードバックを行ったりすることで、海外とは異なる価値を見出していく必要があります。

    弊社としては、MaaSプラットフォームの考えを拡張させたより利便性の高いサービスを提供したい。そうすれば今後、混雑緩和をしたいプレイヤー(事業者が)が他の交通機関や周辺施設に協力を依頼するなど、事業者連携によってよりスムーズな交通サービスを提供できるようになるし、ユーザーの流れも変わっていくでしょう。」

    MaaSでビジネスモデルも進化する…?

    北川:「MaaSと一言で言っても、さまざまな観点から移動を考えることができますね。」

    日高:「2018年にDeNAさんの『どん兵衛の広告モデルであった0円タクシー』が都内でトライアルされ話題になりましたが、MaaSの中で参考になるビジネスモデルの1つです。広告宣伝費で別のサービスの原資とする−−つまり、第三者の原資をモビリティサービス等に活かして何かをするというというビジネスモデルができれば、より幅広い観点で業界横断のMaaSのビジネスモデルが広がっていくのではないかと考えます。

    現在は、弊社では大都市・中規模の観光エリア・大幅に人口が減っている地域をターゲットにいくつかの実証実験ができるようにプロジェクトを進めています。単体で動くのではなく、多くの企業や人と関係を構築して、そのうえでMaaSを推進していくことが大事です。そのため、先進的な取り組みをされているスマートドライブさんとも連携させていただきたいと思っています。」

    北川:「もちろんです。描いている世界観は近いですが、日高さんの会社はおもに公共交通機関ですし、被るようで被らない領域でもあります。ですので、お互い補いあえる部分は大きいのではないでしょうか。」

    日高:「そうですね、自動車から上がってくる詳細なデータや予測はスマートドライブのお得意な領域であると思います。先ほどからデータプラットフォームと言っていますが、弊社のシステムにすべてを集約するのではなく、外部から入ってきた結果を連携させる疎結合のイメージです。私たちのソリューションもそこに近いですね。」

    都市×MaaSの可能性

    日高:「海外のスタートアップでmiles(マイルズ)というスマートフォンのサービスがあり、そのサービスでは都度ユーザーの交通チケット情報を取らなくても、緯度経度に応じてGPSと速度センサーを使用して、電車を利用している、バスの停留所の地点に三回ほど停まったからなど、あらゆる情報を学習しながらデータを蓄積し、その乗り物にのったかを判定するロジックとなっています。そしてその行動データをベースに、環境に優しい乗り物に乗ると●ポイント、混雑している箇所を避けてくれたら●ポイントなど、ユーザーにポイントとして還元しつつ、交通をうまく分散することができるようになるのです。

    ここで、『じゃあ運賃を安くしたり高くしたりできるようにすればいいんじゃないか』という声も上がってきますが、運賃を変更すると交通機関側でシステムを改変しなくてはならないため、簡単に着手できるものではありません。そのため、運賃とは別軸―ポイントや現金化―で還元できると、ユーザーにもメリットが分かりやすく、他社間とも合意形成がしやすくなります。モビリティサービスが外の世界とつながるうえで一つ有効な手段と考えます。」

    >>後編へ続く

     

  • リバースロジスティクスは物流業界が抱える問題解決のメソッドになるか

    リバースロジスティクスは物流業界が抱える問題解決のメソッドになるか

    環境問題や資源・廃棄物問題を目前にした物流業界にとって、近年その戦略性や経済性に注目が集まっているのが、この記事で解説するリバースロジスティックスという概念です。

    当初、リバースロジスティクスはその名前が示す通り、物流チャネルにおける消費者から製造者への製品逆流、つまり「返品」のことだけを指していました。しかし、サプライチェーン成功のカギを握るこの概念は、年数を経て大きく変貌を遂げているようです。

    リバースロジスティクスとは~概念誕生の経緯と変遷の歴史~

    初期のリバースロジスティックス(以下本文中ではRLと表記)は、損傷・期限切れ・誤配などによって製品が通常のロジスティックスと逆方向に移動する事だけがフォーカスされ、詳しい研究などは行われていませんでした。

    そんなRLへの視座を転換させたきっかけとなったのは、James R.Stock教授が米国ロジスティクス管理協議会の委託研究成果にもとづき1992年に発表した「CLM白書」です。

    同教授は白書の中でRLを単なる製品の逆流と捉えるのではなく、素材の代替・再使用、廃棄物処理方法の見直し、修理による製品の再利用、解体部品の再生による製造などへ視野を拡大し、3R(リデュース・リユース・リサイクル)実現に寄与する、「還流ロジスティックス」として、システム化・運用すべきだと提唱しました。

    これまでサプライチェーンにとってコストがかかるものでしかなかった、製品の返品・回収・再在庫いうプロセスにおいて、単純に処分するのではなく手を加えて様々な2次マーケットで再販売を行う−−つまり、新たな価値を得るための体制の構築・管理・育成を、物流業界全体で進めるべきという考えに変遷してきているのが「現代版RL」なのです。

    リバースロジスティクスの具体的な取り組み事例

    国内の主要業界の中で、もっとも製品の回収・再販システムが確立しているのは自動車業界です。欠陥製品を生産メーカーが大々的に公表し、回収・無料修理するリコール体制の徹底は他のサプライチェーンと比べても圧倒的にですし、中古車の買取・転売・輸出、構成パーツのリビルト(再生部品)、鉄資源の再利用などの2次・3次マーケットが数十年前から張り巡らされているので、まったく再利用されずにそのまま廃棄されてしまう自動車は存在すらしません。

    物流業界に目を移すと、RLへの取り組みが他国より進んでいるのは米国です。世界3大物流会社の一角であるFedExは、2015年、同国屈指のRL企業であった「GENCO ATC」を14億ドルで買収しました。そして現在は年間3億5,800万点にものぼる返品回収や返金サービス、修理・リサイクル・廃棄物処理などリバースロジスティクスプロセスをワンストップ体制で対応しています。

    また、FedExはGENCO ATCを買収する前年に、世界200以上の国と地域で国際EC取引対応ソリューションを提供していた「Bongo」も吸収合併し、14カ月後に「FedEx CrossBorder」と改名した後、サービス提供を始めています。具体的には、電子商取引プラットフォームおよび、プラットフォーム内で機能する、関税・輸入コンプライアンス遵守、安全な支払い処理、多通貨価格設定、クレジットカード詐欺防止などの支援ツールを提供していますが、これによってFedExはグローバル化が進むECビジネスにおいて、参入が難しかった中小EC業者の巨大な受け皿となったのです。

    2つの巨大買収により、FedExにおける「還流ロジスティックス」は完成形に近づき、元々強力だったフォワーディング能力と相まって、単なる3PL企業としてではなく、ロジスティクス関連業務を包括的に取り扱う次世代型物流企業へと進化しつつあります。

    物流企業がリバースロジスティクスに取り組むべき理由

    RLは本来、資源利用削減・廃棄物削減などに対する環境問題への対処に重きが置かれ、誕生した概念です。しかし、前述した現代版RLはその概念を基盤に企業戦略と経済効果が追加されたものであり、FedExにおけるRLへの取り組みはその最たるものだと言えるでしょう。

    なぜ、物流業界のトップランナーであるFedExが莫大な資金を投じてまで、還流ロジスティックシステムの確立を推進しているのでしょうか?それはRLの出発点である「返品」という行動が、「いつ・どこで・どのぐらい」発生するかわからないためです。

    顧客へ製品を届けるフォワーディングは、受注量や納品スケジュールが決まっているため、管理システムの構築が比較的容易ですが、その逆となるRLは予測が難しく、そう簡単にはいきません。ならば、いっそのこと繋げて一括管理してしまった方がいいだろうというのがFedExの発想です。

    BtoBにおけるRLの場合は、ある程度の量をまとめ、すでに依頼している3PL企業を介して輸送することが可能ですが、BtoCでのRLでは荷物を1件ずつ回収したり、郵送してもらったりする必要があるため、対応が遅れるとたちまちユーザーからの支持が下がることになります。

    昨今は、商品に直接触れることなく簡単にモノを購入できるECサイトの普及により、購入後に「思っていたものと違った」からと、返品するケースも増えています。配達量そのものが莫大な数になっているうえ、再配達数さえも減ることを知りません。人材不足にあえぐ国内の物流業界にとっては、不定期・不定量でゲリラ的に発生する「返品・回収」へ対応することは、年々困難になっています。

    一方、国際的EC関連企業を飲み込んだFedExの場合、偶発的に発生するユーザーの返品行動をIoTデバイスでデータを取得・分析しています。そのデータから得られた情報を自社のフォワーディング部門と密に連携し、効率的な配車と人員配置をすることによって、スピーディーなRLとコストカットを可能にしているのです。

    FedExの行っているRL対応は、勢いを増すばかりの「物流」という川へ、自前で巨大なバイパスを通すような大規模工事だと言えるでしょう。

    ただ荷物を配送先に届けるだけではなく、返品や回収といったRLをどのように取り扱い、戦略していくか。消費者や顧客からの返品に関する要望に耳を傾ける円滑なRLシステムは、エンゲージメント向上にも繋がり、しっかりとした戦略を構築することで収益の増加もみこめるようになるでしょう。

    リバースロジスティクスは今後どのように進化していくか

    先進国である米国に比べて、やや対応が遅れている印象の国内の物流業界ですが、大手物流企業の中にはこの取り組みを急ピッチで進めている企業も少なくありません。佐川急便では回収サポートシステム「回収くん」を運用しており、簡単便利なサービス内容によってさまざまな企業で導入されています。

    また、国内ロジスティクスの生産性を高めるべく設立された「日本ロジスティクスシステム協会」では、さまざまなデータの分析やシステムの研究を行い、2000年代初頭からRLについて議論されています。

    しかし、中小業者が乱立しているうえ、分業制であるため、ロジスティクスの各チャネルが細分化・独立した状態です。そのため、RLシステムの構築と適正運用に不可欠な、配車可能台数と稼働できるドライバー数(運送業)、返品数及び余剰在庫数(製造・卸・倉庫管理業)、修理・素材や部品の再生ノウハウ(製造・リビルト・修理専門業)といった情報の共有が、一向に進んでいません。

    FedExと並び、世界3大物流業者と称されているDHLの日本法人では、現場での設備・機器の設置や取外作業と管理、不具合品の受取り・仕分け・検証と修理、初期不良品(リコール)の迅速交換への大規模なRL・ソリューションの提供を始めています。またUPSジャパンにしても、処理の合理化によるゴミや資源の無駄を削減し、既存の商品からの継続的な収益の獲得を実現する、ハイクオリティーかつ広範囲にわたる優秀なエンドツーエンドサービスで荷主をかき集めています。

    このままでは、大手はともかく、国内の中小物流業者は品物を慌ただしく運び、倉庫で管理するだけの存在になりかねませんので、一刻も早く業者間や業種の垣根を超え広く情報を共有し、「現代版RL」に対応したシステムを構築・運用すべでしょう。

    物流業界でRLがうまく進まない理由はもう1つあります。それは企業利益の源が「製品」自体ではなく、運搬・倉庫管理に伴う「作業料」となるため、リサイクル業という大きなビジネスモデルについての意識が薄い傾向にあるということです。そこでお手本とすべきが、RLという概念が登場するはるか前から商品の還流サイクルが確立していた自動車業界です。物流業界と同じく分業制で、部門ごとに中小業者が乱立してはいますが、一定のルールによって運用されている「業者間オークション」が後方で支えていることが大きいでしょう。

    中古車の売買が行われる業者間オークションには、そのままの状態で継続走行できるレベルの車体だけでなく、修理が必要な車体、もはやパーツ取り・資源回収しかできないボロボロの中古車も同じように出品され、日々大量に落札されています。関連する法整備は必要ですが、物流業界も大規模な業者間オークションを開設し、返品理由や不具合箇所などを明記したうえで余剰在庫などを出品、小売・卸・修理・リサイクル業者に落札してもらう、そんな二次マーケットを生み出すことも一つの手だと言えるのではないでしょうか。

    また、荷主からの値下げ要請に応えざるを得ない運送業も、建築業が古くから導入している「入札制」を取り入れることによって、なかなか進まなかった業界再編スピードが増し、外資系に対抗できるような力を得ることができるかもしれません。

    いずれにしても、業者の淘汰を伴う取り組みになると考えられますが、国際的物流企業による日本市場への進出が顕著さを増している昨今、人出不足の解消や働き方改革を一気に進めるような、思い切ったRL改革が必要になってくるでしょう。

     

  • 【対談】後編:サステナブルなまちづくりを — 東急電鉄が目指すMaaSの終着駅

    【対談】後編:サステナブルなまちづくりを — 東急電鉄が目指すMaaSの終着駅

    前編では、スタートアップ企業と進めている連携のお話、東急電鉄が大事にしているMaaSの考え方について語っていただきましたが、後半では現在進めているプロジェクトについて、そしてMaaSの未来について語っていただきました。

    今年に入ってさまざまなMaaSの実証実験を開始している東急電鉄。まちづくりとMaaSの新時代を開拓し続けるお二人の思いとはー?

    前編はこちらから>>

    東急電鉄の根幹にある「まちづくり」への姿勢

    加藤「東急電鉄は、田園都市株式会社というまちづくりの会社から歴史が始まりました。その後、鉄道会社を買収したため結果的に鉄道会社の社名を名乗っていますが、本質はまちづくりであり、鉄道はあくまで街づくりを構成する事業の一つとして考えられていました。そのため、持っていた不動産をデベロッパーと同じように開発してリーシングしたら終わるのではなく、東急百貨店や東急ストア、東急ホテルズ、東急レクリエーションなど、現場オペレーションを回すところまでを対応しているのが特徴です。つまり、東急グループは、場所と交通インフラを持ち、人を運んで施設のオペレーションを回す、総合的なUXを体現できる企業体なのです。

    今後迎える新時代に向けて、お客様が体験するサービス施設や商業施設との連動をはかり、交通オペレーション+αのMaaSを提供していかなくてはなりませんが、そこで必要となるのがそれを体現するための材料です。材料となるデータ、そしてインサイトはスマートドライブとの連携で叶えられるのではないでしょうか。」

    森田「そう、東急電鉄はもともと田園調布の都市開発を行う会社だったんです。1923年、東京に大きな被害をもたらした関東大震災が発生しました。大災害だったにも関わらず、洗足を中心とする田園都市に建てられた住宅は一軒も被害がなかったため、それを知った人たちが多く移り住んできたのです。しかし、そこには都心へ出る手段がない。だったら、電車を開通しよう。鉄道を開通してから街をつくる他の鉄道会社とは主従が違い、このように、まちづくりの手段として電車が取り入れられたんです。」

    北川「面白いですね。場所の活用やまちづくりをするにあたって、購買履歴や人の動きなど、どういったデータをどのように活用されているのでしょうか。」

    森田「グループでは、東急沿線で利用するとお得になる東急カードを発行しており、現在50万人を超えるユーザーがいます。一定エリアではありますが、カードの利用履歴から分析を行っています。
    一方、観光型でいうと例えば伊豆高原に訪れる人の●割が踊り子号に乗って、●割が各駅停車を利用して、●割が車でくるという情報が見える化できれば、その情報に合わせて駅前のロータリーの作り方や駅の案内所の仕組みを変える時に活かすことができますが、そこに個人の情報は必要ありません。

    そして、各人が最寄り駅に着いたら、その先は二次交通を利用してそれぞれの目的地に向かうと思いますが、季節・曜日・時間帯によって駐車場がどの程度利用されるかがわかれば、オペレーションフローを効率化させることができるようになります。データを活用して、早急にそこまで行き着きたいですね。今回、伊豆の実証実験においては、東急グループを核として他社さんを巻き込みながら進めています。

    お客様にとって、移動は単なる手段でしかありませんので、ここにきて各企業が競り合うのは違いますから。そうやってオープンに組めば組むほど、より多くのデータが入ってきます。ただ、一方でこうしたデータをどう活用していくべきかという図式ができないとプレイヤーを増やしていくことができませんので、その点は系列の子会社をハンドリングしながらうまく進めていきたいですね。」

    データ×ピーク分散は相性がいい

    加藤「データ活用は、ピーク分散と非常に相性がいいんです。一時期、とある商業施設にお客様が偏りすぎてしまったことがあるんですが、長時間、混雑して待ち時間が発生するとリピート率を大幅に下げてしまうんです。たとえばそこで、この交通ルートを利用して何時に到着するという情報がわかれば、ゆっくり体験できる時間をお知らせして事前予約していただいたり、サービスプロバイダの価格を調整したりすることができるようになるかもしれません。MaaSで取得できる移動データで予測をしながらサービスオペレーションの価格にも反映していく…それが今後目指していきたい場所ですね。」

    森田「地方での活用でいうと伊豆は135号という国道が通っていて、夏季休暇やGWなどの長期休暇は大変混雑するんですね。伊東から小田原までなら、通常30〜40分程度で到着する距離ですが、渋滞にどハマりすると平気で5時間も6時間もかかってしまう。

    伊豆は二次交通が弱く、8割の方は車でいらっしゃいますが、その8割をバスやタクシーに少しでも振り分けることができれば、渋滞時間を大幅に減らすことができるかもしれません。そうした課題を東急グループで解決していかなければならないと思っています。これは極論かもれませんが、混雑時のマイカー利用が●割以上だったら走行規制をかけてしまうとか、大混雑時に高速を利用する場合はチャージをいくらかのせて、その分、電車での移動を安くするとか。渋滞への疲れや負担を減らすためにも、公共交通で伊豆にきていただく習慣を根付かせて行きたいですね。」

    加藤「そういった新たな交通手段も提案しながら例えばスマートドライブ社のデータを使って、現在一定である首都高速の料金を時間帯や混在具合によってチャージを変えて最適化できるようになると、都市生活がより快適になるのではないでしょうか。そのような世界観を作り出すためにもMaaSは必須の考え方ですが、システムを作り上げた先に重要になってくるのがサービスを連携してUXを統合していくかですね。」

    郊外型MaaSは働き方改革の一手になりうる

    森田「これは郊外型MaaSの話になりますが、インバウンド向けに観光用目的で作ったハイグレードなバスが一台余っていたので、これを活用してたまプラーザから渋谷間で通勤する人を募り、1カ月の実証実験を行ったんです。通常、田園都市線から渋谷までは30分で到着しますが、バスは道路の混雑状況も関係しますので通勤時間はいつもの倍以上になります。

    しかし、座席はゆったりめでフットレストもあるし、Wi-Fiやコンセントも完備している。もちろん、通勤時の混雑を緩和する目的もありますが、通勤時間帯の混雑率が185%もの電車に揺られて心身ともに消耗するより、快適なバスの中で座ってのんびり過ごしたり、仕事のメールを確認したりできた方が有意義なんじゃないでしょうか。

    そこで、この取り組みを働き方改革と組み合わせて、利用者が乗った瞬間から勤務時間が始まるようにすればどうだろうかと。10時にたまプラーザを出ると同時に始業開始時刻にして、11時過ぎにオフィス近くに到着、そのまま勤務を続ける。そして、渋谷に到着して2時間ぐらい休憩を挟んだら、今度は朝型勤務のアーリーワークの人たちが13時ぐらいにオフィスを出て帰宅の手段として利用する。そうすれば働き方改革にもなりますし、移動中の貴重な時間も無駄になりません。動くシェアオフィスみたいなものを実用化できればと思っています。」

    北川「私たちスマートドライブもコーポレートビジョンに『移動の進化を後押しする』という言葉を掲げていますが、突き詰めると、移動を移動ではないものにしたいということなんです。この空間が次の打ち合わせ場所に行ったら、その間の移動って移動だけど移動というものではなくなる。そういう概念を変えていければいいなと思っていて。

    現在展開している事業にフォーカスされると車両管理や保険の割引といった狭いイメージで捉えられてしまうのですが、実際に強みとしているのは、動いているものについているセンサーからデータを集めて解析することで、様々なインサイトを見つける事です。先ほど加藤さんがおっしゃっていたピーク分析も私たちの得意とする分析と相性が良いでしょうし、デバイスにも制限がないのでカメラの映像データなどの他のセンサーデータを活用することも可能です。

    不動産の会社様と住宅用マンションにカーシェアのステーションを置くとどの程度駐車場スペースを減らせるといった人の動きの流れを最適化しようという実験したこともありますし、そうしたことも含めてビジョンは近いところにあるかと思います。」

    森田「田園都市沿線でカーシェアやオンデマンドバス(利用者ニーズに応じた移動サービスを提供するバス)などを試験してわかったことが、そもそも地域ごとにメンタリティが全然違うので、シェアリングは意外とハードルが高いということです。CtoCとBtoCの2つのモデルを作っても、CtoCはヒトとヒトになってくるので浸透しづらいんです。」

    北川「BtoBの場合と違って、倍の時間がかかってもより快適な手段を選びたいという人も少なくはありません。」

    森田:「個人の価値観によって大きく違ってきますから、一筋縄にはいきませんね。」

    コペンハーゲンの衝撃

    北川「さまざまな事業アイデアを出されていますが、すべて社内で起案されているのでしょうか。」

    森田「基本的には社内ですね。もともとは私を含めて4人のチームで立ち上げ、途中で一人増えて今は5人のメンバーで考えています。」

    北川「先にもお話が出ていましたが事業を立ち上げる中で競合となる会社と連携をしたり、スタートアップ企業と持っていないケイパビリティを補完しあったり、そういうマインドで進めてらっしゃるということですね。」

    加藤「はい、ここで非常に重要なポイントが事業者間での連携です。お客様は最終目的地に到着すればいいというシンプルな発想なので、事業者間がそれぞれ連携せずに閉ざしたままだと、囲い込むことはできても人々にとって最適化を図ることはできません。
    ただ、データの連携というのはいささかナイーブな部分もありますので、活用するにあたってその辺りをどうクリアにしていくべきか…。いま頭を悩ませているところです。その点について北川さんにもご意見うかがってみたいなと思っておりまして。」

    北川「直接的な回答ではないかもしれませんが、データを集めてどう付加価値をつけていくかという事業を推進する中で気づいたのは、データはそれ単体では価値が低く、色々なつなげることで価値が倍増するということです。各人が持っているデータをつなげることは希少性は半分になるかもしれませんが、全体の価値が3倍になるから、結果として1.5倍にバリューアップするという考え方です。

    そのあたりの実感値を持っていらっしゃる方はまだまだ少ないので、『つなげてしまうと自社の重要なアセットの希少価値が半減する』というところばかりを意識されてしまうんです。
    当然プライバシーなど今後もっと整備して、ケアしていく必要がある事はたくさんありますが、概念としては希少性が減ったとしてもその分価値が3倍、4倍に膨れ上がれば、結果としては良い方向へと進めますので、事例を提示しながらそこを上手に啓蒙していくことも私たちの役目かなと感じています。」

    森田「2018年9月、ITS世界会議2018でセッションに参加する機会があり、加藤と一緒にコペンハーゲンを訪れました。そこで、現地の空港を見せていただいたのですが、とにかくインパクトがすごかったですね。空港の天井には4,000ほどセンサーが取り付けられていて、どの便のどこ行きの飛行機だとどういう列の並び方になるかみたいなアルゴリズムが組まれているんです。そのため、チェックインカウンターなどすべてを固定せずにフレキシブルに動かすことができ、混雑を回避することができるという。

    また、コペンハーゲン空港に到着した人たちから、タクシーがどれぐらい、団体はどれぐらいといった割合を出していて、タクシーに関するデータはコペンハーゲンで売り上げ上位を占めるタクシー会社三社に売られています。コペンハーゲンでタクシーに乗ると料金メーターとは別のモニターが搭載されていて、、『ターミナル1に行くとこんなお客さんの塊がある』みたいな情報が映し出されています。ドライバーはその情報を確認して、効率的な客周りに役立てているのです。

    日本にはない先進的なコペンハーゲンでの体験を参考に、今後MaaSを広げて行くときは同じように空港までのワンシーンもつなげていきたいと考えています。」

    地方のMaaSは最初の一歩が肝心…?

    北川「いろんなものとつながっていくという意味で、今までまったく接点がなかったような企業やヒトとコラボレーションしているものはありますか。」

    森田「思っているような回答ではないかもしれませんが…ひとつ、それに近いお話をさせてください。
    先ほど、観光型MaaSは地域の住民、とくに高齢者を見据えて進めていかなくてはならないというお話をしましたが、今やろうとしていのは入り口部分を広げることです。

    高齢者の方って、スマホの所有率が本当に低くて。そのため、今度下田市の文化会館で地元の方向けに説明会を行い、『Izuko』の利用方法やオンデマンド交通でスムーズに移動ができるという話をする予定ですが、いずれもスマホを利用するため、持っていないと話にならないんです。そこで会場に携帯電話会社数社にも来てもらい実際にスマホを体験していただいて、同時にスマホを持つ利便性も伝えていければと。

    スマホを触ったことがない人でも、体験すると意外とすぐに操作を覚えてくださいますし、オンデマンド交通で教習したドライバーさんにもご年配の方は多くいましたが、みなさん今はしっかり使いこなしています。はじめは抵抗感があるかもしれませんが、丁寧に、粘り強く取り組んでいけば変えていけるはずです。そうすればMaaSの取り組みも前進します。」

    北川「最後に事業やケイパビリティは違いますが、目指す世界観は重なる部分が大きいですね。最後に、スマートドライブに期待することや希望することなど、コメントを頂戴できればと思いますがいかがでしょうか。」

    加藤「自家用車やバス、物流関連の車両から多くのデータを取得して、それらから何が見えるのかを一緒にブレストしたいですね。
    自家用車の場合、マネタイズのポイントがサービスオペレータ側にある可能性が高いため、データを取得してどの時間帯で需要が高いのかがわかれば、的確な対応ができるようになります。」

    北川「そういう意味では今の時点でも接点を作らせていただけるかもしれません。プラットフォーム事業なので幅広いデータをBtoBだけでなくBtoC向けにもアレンジできます。私たちもその強みを活かしてもっとインサイトを深掘りして改善策を講じていくフェーズにいきたいと思っていますので、積極的に進めていきたい部分です。
    東急さんをよく利用している方がどういう行動をしていて、この先どのようなものを望んでいるのかがわかれば、今後のまちづくりにも大きく活きてくるはずですし。」

    加藤「あと、これは少し局所的な話になってしまいますが、商業施設の駐車場問題をなんとかしたくて。大規模な商業施設の場合、週末はすぐに満車になってしまい、かなりの機会損失が発生しています。需要予測の視点でデータを分析していけば、的確なサービスオペレーションの改善点が見えてくるかもしれません。

    また、今後ぜひとも実現したいのが、事前予約は当然のこと、駐車場の価格をダイナミックプライシングに変えることです。たとえば、スマートドライブの利用でデータをいただいている方に対して、何かしらのインセンティブを返してあげるとか。

    ゆくゆくは、日本の車両すべてにセンサーが取り付けられて、そのデータが分析されて、あらゆるサービスや店舗の中で時間の変動を行っていく…スマートドライブ社が社会的な負荷分散ができる仕組みの基盤となってくれることを期待しています。」

    北川「データ分析と予測は、ダイナミックプライシングやピーク分析と相性が良いですし、是非とも実現したいですね。運転に応じて保険料やリース料を変えるような取り組みはすでに一部始めておりますし、、この考え方を広げて、バランスのとれたサステナブルな社会を作っていきたいと思います。」

    森田「私が期待していることとしては、バスやタクシーのオペレーターがどんどん高齢化し全体的に人が少なくなっている中でデータを使った効率化ですね。東急グループの強みはスムーズなオペレーションへの知識や経験を豊富に持っていることであり、そこにスマートドライブのデータを掛け合わせれば社会的な課題解決への道も近くなると思っています。

    ただ、データを本当に活かすうえでは、各種オペレーションのことも知っていただくことも大事です。だからこそ一緒に取り組める機会があるといいなと思っています。オペレーションを知っていただくことで、持っているデータの価値は大きく跳ね上がるはずですから。」

    北川「スマートドライブも東急電鉄様にお力添えできるところがないか、何かご一緒させて頂いて新しい価値創造ができるように今後とも頑張っていきたいと思います。お二人とも、本日はありがとうございました!」

  • 第二転換期に突入した保険業界がぶつかる壁、そして目指すべき場所とは。

    第二転換期に突入した保険業界がぶつかる壁、そして目指すべき場所とは。

    自動車の機能性・安全性は日々向上し、運転支援技術が満載の新型モデルも数多く登場、モータリゼーションの進行と多様化は年々加速度を増しています。そして、テクノロジー発展の波は自動車保険業界にも押し寄せており、その最たるものが「テレマティクス保険」です。

    今回は、次世代型自動車保険として注目度が上がっているテレマティクス保険の話に触れつつ、現時点における保険業界の動向や課題について解説します。

    なお、テレマティクス保険には大きく走行距離連動型(PAYD)と、運転行動連動型(PHYD)の2種類がありますが、今記事ではより先進的である後者について触れる内容になっています。

    もはや世界基準のテレマティクス保険

    テレマティクスとは、「テレコミュニケーション(通信)」+「インフォマティクス(情報工学)」の造語であり、自動車などの移動体に通信システムを搭載することで、さまざまな情報を送受信できるサービス、また、それによって何らかのサービスを提供することの総称です。

    現時点では、カーナビを通じて渋滞情報や天気予報などを提供するという、一方通行的な利用方法が中心ですが、1994年に設立された「VERTIS(現・ITS Japan)」によって、高速道路並びに一般道における安全運転支援システム、公共車両優先システム、交通需要マネジメントなどのシステム構築や、交通インフラの最適化に寄与すると期待されており、一部ではすでに導入・運用がスタートしています。また、自動車がまるでスマートフォンのように、常時通信端末としてインターネット接続するコネクテッドカーも、テレマティクスの1つの形です。

    そして、車両に取り付けた通信デバイスによって、走行距離やドライバーの運転特性データなどを収集・分析し、結果に応じて決定された「個別リスク」から保険料を算出するのが、世界で市場が拡大しつつある「テレマティクス保険」です。テレマティクス保険の先進国は、アメリカやイギリスなどの欧米諸国で、2016年時点でアメリカでは約500万人が、イギリスでは約50万人がすでに加入しています。テレマティクス保険の有益性や公平性は大きく評価され、加入者は年々増加しています。

    実感はないけど・・テレマティクス保険は日本でも普及されている?

    通常の自動車保険では、次の要素によってあらかじめ保険料の大半が決定し、その後「保険等級」による割引が適用されることになっています。

    • 補償金額・内容
    • ドライバーの年
    • 年間走行距離
    • ゴールド免許の有無
    • 車両の用途

    そのため、極端な話をすれば同じ加入条件・保険等級の場合、普段から急ブレーキや急加速などの操作をせず安全運転を心がけていても、周囲への配慮が足りない乱暴で危険な運転をしても、事故さえ起こさなければ保険料の変動はありません。

    一方、テレマティクス保険は、一定期間における走行データを解析した結果「事故リスクが高い」と判断されれば保険料が上がり、反対に「事故リスクが低い」と評価されれば、保険料が安くなるシステムになっているため、従来の保険の不公平さを緩和するというのが最大のメリットです。非常に合理的なシステムなので、メリットが明確でわかりやすく、受け入れてもらいやすいのかもしれません。また、テレマティクス保険の導入によって加入者の安全運転意識が高まり、結果として重大事故が減少傾向を見せれば、保険会社としても支払保険料削減による、利益率向上を目指すこともできるのです。

    特に、複数車両保有する企業からすれば、車両運用コストにおいて大きなウェイトを占める保険料を削減できるうえ、リアルタイムでの動態管理まで可能なテレマティクス保険は、非常に有益性の高いものになってきます。そして、何より入り口は経済的要因だとしても、テレマティクス保険が普及・浸透していけば、乱暴な運転を起因とする事故の抑止力になり得る、社会的なプラス要素も大いに期待されています。

    テレマティクス普及の壁

    テレマティクス保険では、搭載した通信モバイルから発信される加入車の位置情報を、保険会社がリアルタイムで共有することができます。これは、利用者の視点でいうと、否応なく今・どこにいるのかという情報が筒抜けになってしまうということです。

    そのため、今後さらなる普及を見込む場合、一部では「不特定多数に現在位置を知られたくない」と考えるユーザーもいます。テレマティクス保険は利用者と保険業、どちらにとっても魅力的なサービスですが、国土交通省でも「個人情報保護制度の見直し、個別の取扱い方針等を検討すべきである」と述べています。個人情報漏洩のニュースで消費者も個人情報取扱に関しては非常にセンシティブになっているため、効果やメリット、安全性やセキュアな面についてしっかりと訴えることができなければ普及の拡大は難しいかもしれません。

    保険業界の現況と将来を見据えた課題

    導入によるメリットの大きいテレマティクス保険ですが、欧米諸国と比較すると日本国内での普及スピードは遅いと言わざるを得ません。これは、国内保険業界の閉鎖的な体質が大きく影響していることが考えられます。

    保険企業界では、自動車保険の第1転換期といえる1990年代後半のダイレクト型自動車保険参入時、長らく独占的な立場を保護されていた国内損保各社は軒並み対応が遅れ、外資系にかなり食い込まれるという苦い経験をしました。ウェブやスマホ対応など、デジタル化へのシフトが一歩出遅れたことも理由のひとつとして考えられるでしょう。そして今、稼ぎ手であり消費の担い手でもある生産年齢人口(15歳から64歳の人口)の大幅な減少で、経済活動の鈍化や国際競争力の低下が危惧される、「2030年問題」が目前に迫りつつあります。つまり、保険業界は「第2の転換期」を迎えようとしているのです。

    生産年齢人口は、そのまま自動車保険の主なユーザーにもなるため、国民の3割が65歳以上の「超・超高齢化社会」となる2030年に向かって、保険市場のさらなるレッドオーシャン化が進行すると予測されます。そうなれば、国内外でのユーザー獲得競争が激化の一途をたどることとなりますが、ユーザーが求めるサービスが提供できず、さらには国際競争力を維持・向上できない損保会社は、自然淘汰を余儀なくされるかもしれません。

    そこでまず、自動車保険業界が取り組むべきことは、ネットの普及やITモバイルの進歩に伴い、ユーザーが欲しい情報を欲しい時に受け取れること、合理性への意識が高まるユーザーニーズや購入スタンスの変化を加味した柔軟な保険商品やサービスを提供すること—つまり、マルチボーダレスへの順応です。最近では異業種からの保険業界新規参入も珍しくなくなってきました。

    特にITに強い企業は、顧客の基本情報から行動、趣味・嗜好などのデータを取得・分析し、ニーズを理解した保険サービスを提供しやすくなります。つまり、同じ業界だけが競合ではなく、別軸で強みを持つ業種が一気に顧客の心を奪っていくという、予想だにしなかったことが簡単に起こり得るということです。大手ECサイトで知られる楽天が保険業界へ参入したことも、その傾向の一つと言えるでしょう。

    過去にダイレクト型自動車保険の参入で手痛い経験をしたことを考えると、AIやIoTなどを導入し、データをフル活用した商品や国内外で利用できるグローバルな保険商品の提案、あらゆる購買行動に対応できるシステムを構築することがカギとなるでしょう。データがもたらすのは、「誰もが同じ商品を」ではなく、顧客一人ひとりにあった「パーソナライズされた」商品を提供するのが当たり前となる未来です。テレマティクスはその先駆けになったと言えるのではないでしょうか。

    また、2030年の世界では現在よりさらにHV・EV車の普及が進み、燃料もガソリン・軽油から水素エネルギーへの転換されるようになるなど、リスクのトランスミューテーション(変容)が激しさを増すことも予想されます。そこに、車や関連インフラのIT化という新要素が加わるため、加入条件や走行距離だけで保険料を導き出す「Pay As You Drive」では、目まぐるしく変容するリスクを正確に判断することがより困難になっていくでしょう。つまり、リアルタイムに動態監視を行い、取得した情報を分析、導き出した事故リスクを保険料に反映する「Pay As You Live」へ対応していかなければ、保険会社として生き残っていけない時代が、もうすぐそこまで迫っているのです。

    保険業界が第2転換期を乗り越えるには

    保険業界でなくとも、トレンドの移り変わりが激しい現代。今後日本国内でもテレマティクス保険が一般化されれば、次の転換期に向けてユーザーの行動や傾向を理解し、次の商品を打ち出せる準備をしておかなくては変化の波にのまれてしまうかもしれません。

    そのためには現状の課題を見える化し、データとして分析することが近道です。前半でご紹介したテレマティクスでは、保険業界だけでなくともさまざまな業界で幅広く取り入れられ、数々の成功事例も上がっています。

    「まずは何をすればいいんだろう」とお悩みなら、オススメしたいのが安価で手軽に取り入れることができる、スマートドライブSmartDrive Fleet です。

     

    低コストで高クオリティなのに使い方は簡単。

    車載デバイスをシガーソケットに設置するだけで利用を開始できます。1台につき月額2,480円〜、1週間の無料トライアルもあるので、しっかりとすべての機能をお試しいただけます。

    高精度な安全運転診断機能

    高精度な安全運転診断機能は、危険運転を全て自動蓄積し、蓄積。この診断機能によって、事故が多い箇所やドライバーの傾向を分析することができ、新たなサービス開発につなげることもできるでしょう。

    リアルタイムな位置情報がわかる

    安全運転の可視化とリアルタイムな位置情報によって進化したテレマティクスの提供が可能に。

     

    そのほか、運転日報の自動作成機能やデータの集計機能など、新機能も続々追加しています。少しでも気になりましたら、ぜひこちらから資料請求ください。