投稿者: sasaki

  • スーパーシティとは?スマートシティとの違いを解説

    スーパーシティとは?スマートシティとの違いを解説

    近年、「Society 5.0」の実現に向けた未来投資戦略やスマートシティ構想、税・法令などの規制を緩和した国家戦略特区や、国内全体の活力UPを目的とした地方創生政策など、さまざまなプロジェクトが立ち上がっています。そんな中、2018年秋ごろから新たな未来都市創生プロジェクト、「スーパーシティ構想」が内閣府主導で進められており、先進テクノロジーを活用する点ではスマートシティと共通するものの、後者が抱える課題をクリアする構想として注目が集まっています。

    本記事では、内閣府が2030年の実現を目指しているスーパーシティとはどのようなものなのか、実現によって私たちの生活がどのように変化するのかを検証します。

    スーパーシティとは

    スーパーシティとは、AIやビックデータを活用し、社会のあり方を根本から変える未来都市設計の動きが国際的に進展していることを鑑み、第四次産業革命を体現する世界最先端都市の創生を目指して内閣府が基本コンセプトの取りまとめている構想です。

    先端テクノロジーを実証・実装するだけではなく、数多くの成長戦略プロジェクトを包括的に連動させ、国民にとって「より良い社会生活」を実現する、未来都市の「ショーケース」作りを目指しています。もっと簡単に説明すると、国民の都市生活に必要な数多くのインフラやサービスを効率的かつ合理的に運用できる「共通プラットフォームを作ろう!」という考え方であり、内閣府はすでに以下の4つを基本コンセプトとして掲げ、議論を進めています。

    しかし、所管が異なる様々な規制を一気に緩和し、住民生活全般に最先端技術を導入することで、一から丸ごと未来都市を作ろうというこの構想には、数多くの課題と達成条件が山積しているようです。

    基本コンセプト1「複数領域にまたがる社会『未来像』の先行実現」

    まずは第四次産業革命後の未来、スーパーシティはどんな都市機能を有するべきなのか、明確なビジョン「未来像」を描くことが必要で、内閣府は以下の「10分野」をその構成要素としています。

     

    1. 移動・・・ヒトの自動輸送、IoT・データ活用による交通量・駐車管理など
    2. 物流・・・自動配送・ドローン配達による人材不足解消など
    3. 支払い・・・電子マネー・クレジットカードによるキャッシュレス決済の普及、魅力的なポイント還元制度の拡充など
    4. 行政・・・ワンストップ窓口・ワンスオンリー(情報の再提出不要)・ペーパーレスによる、各手続きの効率化など。
    5. 医療&介護・・・ITを活用した遠隔診療、介護補助ロボットの実装、医療・介護ノウハウのAI分析・見える化による効率的な人材育成、ラストワンマイルの医薬品ドローン配達など。
    6. 教育・・・オンライン教育による人材育成、パーソナルな行政データの活用など。
    7. エネルギー・・・スマートシステムを活用した、上下水・電力・通信インフラの最適管理など。
    8. 環境・ゴミ・・・スマートシステムを活用した、リサイクルの一括管理によるCO²削減、資源保護の徹底など。
    9. 防災&緊急・・・デジタルマップを活用した防災システムの構築、緊急時の自立エネルギー供給、自動運転救護車両・作業ロボットの実装など。
    10. 防犯&安全・・・巡回ロボット、遠隔監視など。

    このうち少なくとも5つの領域以上で、2030年頃に実現される「未来像」をエリア限定ながら完全実施することを目指し、片山さつき・前地方創生担当相の肝いりで2019年に整備法が国会提出されましたが、残念ながら廃案に。しかし、スーパーシティー構想はアベノミクス3本の柱において仕上げに当たる、「民間投資を喚起する成長戦略」に他ならないため、今後も政府及び担当相は整備法の成立に向け、今後も全力を挙げていくと考えられます。

    基本コンセプト2「欧州モデルをもとにした住民参画型都市の創生」

    スーパーシティを実効性ある都市機能として発揮するためには、ベースとなるパーソナルデータの提供・運用を住民から承諾を得る必要があり、日本の場合は「オプトアウト型(※1)」ではなく、「オプトイン型(※2)」の欧州モデルを採用する必要があります。

    ※1オプトアウト型:データ提供拒否を意思表示しなければ許諾されたとみなす。
    ※2オプトイン型:提供者のデータ提供に対する同意、許諾の意思を前提とする。

    スマートシティ構想を先行していたカナダ・トロントは、Googleの兄弟会社である「サイドウォークラボ」が主導し、街に埋め込んだ多数のセンサーやカメラから、交通・騒音・エネルギー消費・人流などのデータを取得・運用しています。つまり、オプアウト型を採用したことで、個人情報の扱いについて住民の反発を受け、よりよい生活環境の充実や効率的な都市運営が難航しているどころか、中にはトロントから離れる住民まで出てしまいました。

    個人情報の取扱いについて慎重な日本人の国民性を考慮すると、事前承諾ありきで各データを取得・運用する、もう一方の先進エリアである欧州モデルを規範とした、オプトイン型・日本版スーパーシティー構築を目指すべきという意見が大多数を占めています。

    そして、内閣府は住民の参画について「市街地再開発:所有者及び借地権者のそれぞれ3分の2以上」「区分所有権建替:区分所有者の5分の4以上」「建築協定:所有者等の全員」など、一定以上の住民・地権者が合意することを都市開発の前提としており、さらには「合意対象事項」として住民が自ら参画し、合意形成を図る仕組みづくりを進めている最中です。

    また、スーパーシティー整備法が2度にわたって国会で廃案になったのも、個人情報を取得する手法を巡り法制局との調整に時間がかかったからで、今後法案を成立させるためには、住民参画型の安全かつ公平な都市構想を打ち出す必要があると考えています。

    基本コンセプト3「地方自治体首長のコミット力強化」

    スーパーシティー整備法が成立した場合、海外から「一周遅れ状態」だった日本の未来都市構想は一気に進展すると考えられます。しかし、最新テクノロジーを駆使した優秀なプラットホームを構築しても、運営はやはりヒトに頼らざるを得ません。そのため、システムを統括する各自治体首長のリーダーシップが貧弱だと、前述した住民の合意・参画を取り付けることができないほか、スーパーシティを形成する企業や医療・学術機関の誘致も困難になります。

    そこで重要になってくるのが内閣府を始めとする国の役割で、域内運営の主体を担う官・民・産・学によって構成された機関いわば「ミニ独立政府」設立を促し、その責任者として各自治体首長へ「強い権限」を付与する必要があります。さらに、都市経営部門にビジネス・アーキテクトを、IT部門にテクノロジー・アーキテクトを首長のサポートチームとして置き、以下の検討を進めることが重要になってきます。

    • 必要インフラの迅速な整備
    • 建築基準法・景観法などの条例による特例措置
    • 先行調査・実証試験・運営継続のための予算確保
    • 第3セクターなど官民連携ファイナンス手法の実施

    基本コンセプト4「最先端テクノロジーを実装可能な企業との協力体制構築」

    理想的なスーパーシティを作り上げるには、住民の参画と合意に加え、首長の強力なコミット力が不可欠と述べましたが、都市運営システムの中核を担うのは、やはりITテクノロジーです。

    そのため、NTTを始めとする大手通信キャリアはもちろんのこと、家電・医療器メーカーから中小のITベンチャーに至るまで業種や規模の垣根を超え、世界最先端のテクノロジー路実装可能なリーダー企業を広く募り、ミニ独立政府との協力体制を構築する必要があるでしょう。また、スーパーシティ構想は「完全自律運転車ありき」ですから、トヨタを始めとする国内自動車メーカーの技術革新と実装に向けた法整備を政府主導で迅速に進めなくてはなりません。

    また、内閣府でも議論されているとは思いますが、スーパーシティがコントロールする領域は多岐にわたり、取り扱うデータとITデバイスは膨大であることから、リーダー企業を据えるとしても、組織は複数企業と学術機関などの集合体が望ましいものです。加えて、複数領域でビックデータを共有・運用するプラットフォームを構築するからには、個人情報漏洩やサイバーテロ対策に万全を期すことも不可欠で、万が一トラブルが発生した時の責任の所在や、損害に対する補償制度の整備も必要でしょう。

    スマートシティとの違いについて

    ここまで、スーパーシティ構想の基本コンセプトと、それぞれの課題・達成条件を整理しましたが、スマートシティ構想とは一体、何がどのように違うのでしょうか。

    2019年2月、有識者懇談会がまとめた最終報告によれば、「スマートシティや近未来技術実証特区は、エネルギー・交通などの個別分野での取組、個別の最先端技術の実証などにとどまっていた。」とされています。そして、エネルギーインフラや道路・公共交通網が発展している日本では、現状の都市機能で十分豊かで便利な生活がある程度確保されているため、都市部への人口集中に歯止めがかからず、高齢化や人口流出など地方が抱える問題解決にも直結しません。その結果、住民目線では「それほど高度な技術が生活に必要なのかな?」と、存在価値と有益性に疑問符をつけざるを得ない取り組みになっているのです。

    一方、スーパーシティ構想は「技術の先進性」を競い合うのではなく、「住民の参画」で浮き彫りとなった「根深い問題」を、早期解決に導くITテクノロジーを「実装」し、地方の生活水準を上げ「脱都市化」を図り、継続的な経済発展を目指していく取り組みです。IT技術の進化という、未来都市創生の手段が「目的化」しつつあるスマートシティ構想と異なり、基本コンセプトが網羅されたスーパーシティが誕生すれば、我々の生活は劇的に変化するでしょう。

    スーパーシティで街はどう変わる?

    スーパーシティが完成した場合どのように街は変わるのか、想像力を働かせ、地方に住むある家族(共働きの夫婦と子供)の生活について、「未来予想図」を描いてみましょう

    家長である父親の一日は、指定日のゴミ出しから始まっていましたが、スーパーシティ化した新たな街では、常時自動回収車が稼働しているため、各家庭の収集ケースにポイと入れるだけ。重いゴミを運ぶことも溜めてしまう心配もなくなりました。また、アプリでスケジューリングした定刻に自動運転車が配車されるため、夫婦は揃って運転することなく出退勤し、監視システムが作動中の中子供たちも安全に学校へ登下校可能なため、「クルマに気を付けて!」と念を押す必要もなくなりました。

    学校では遠隔教育が導入され、海外にいる同年代の子供たちとの交流を通じ、ネイティブな英語を誰しもが努力次第で身に付けることができます。そしてすべての医療・介護が在宅で可能となり、生活に必要な行政手続きや書類入手も個人デバイス1つで完結。

    さらに、決済はすべてキャッシュレス。しかもポイントが還元されて家計を助けてくれるほか、米・飲料・トイレットペーパーなどかさばる生活必需品は、購入履歴・使用頻度をAIが分析し家庭まで自動配送。空を見上げれば宅配ドローンが縦横無尽に飛び回り、好きな時間・場所に必要な荷物が届きます。エネルギーや上下水管理の最適化により、緊急時には通常時プールされたエネルギーが各家庭に供給され、災害が発生すると街全体が防災システムとして機能しているのです。

    住みやすさが向上したことで、生産人口の増加による経済発展・税収がアップ。各都市インフラの人的・物的コストが削減されたため、税金や助成金制度などが一般的な都市より優遇されている…。そんな「夢のような未来」はそう遠くないかもしれません。

    まとめ

    技術的には十分実現可能なスーパーシティ構想。整備法の成立を始めとする各コンセプトの達成条件を満たすため、内閣府は住民に対する利点の周知徹底を行い、広く理解を得ていく必要があります。そして、当事者である住民側も「自分たちには関係ない」と遠目で見るのではなく、いずれ訪れる大きな変化に対する許容し、スーパーシティ構想の進捗状況を見守っていくべきではないでしょうか。

  • コロナウイルスが物流に与える影響とは?物流業界の現状

    コロナウイルスが物流に与える影響とは?物流業界の現状

    首都圏がロックダウン−−
    都心部での感染者が一気に急増し、このようなニュースが新聞やネットでも数多く掲載されています。
    店舗の休業やリモートワークが増え、自宅にいることが多くなった今、再び問題になっているのが買い占めです。各地で「モノが足りない」「輸入がストップしている」という声が上がっている中、物流業界はどのような状況に直面しているのでしょうか。

    マスクが、トイレットペーパーが、食料が…買い占め急増で物流が混乱

     

    マスクがどこにも売っていない。それどころか、ペーパー類、衛生用品、アルコールスプレー類もごくわずかしか棚に並んでいない。スーパーではカップ麺や菓子類、レトルト食品、飲料水が品切れ…少し前まではこんな光景を目にするとは誰もが思わなかったことでしょう。

    2月後半に「トイレットペーパーが不足する」というデマがSNSを中心に広がり、ドラッグストアにはマスク以外にもペーパー類を買い求める客で一時期いっぱいになりました。この騒動を受け、制作元が国内で作っているので不足することがないと発表したものの、海外のロックダウンがニュースで続々と発信され、ガラガラになったスーパーの様子やペーパー不足という言葉を目にしたこと、小池都知事の会見によって人々が不安になったことで、再びスーパー、ドラッグストアでの買い占め行為が加速することに。

    どこの店舗も在庫がわずかになれば必要な人に必要なものが届くよう、モノが売れたら補充すべく、いつもより多めに発注をかけます。そのうえ、何週間にもわたる外出自粛によって、ネットでの買い物も集中。ネットスーパーも活況です。しかしそうなると、いつも以上に稼働が増えるのが配送トラックです。大量の発注により、荷受作業が混雑し、物流センターではトラックが数時間待ちという事態が発生しました。一時的に、いつもの倍のトラックが稼働を必要とされました。

    車両管理システムの導入などによって業務効率化に取り組んでいる企業も増えていますが、生活に必要なトラックドライバーは高齢化が進み、慢性的な人出不足に悩まされている中、追い討ちをかけるかのごとく物流業界への負担が大きくなっているのです。

    【調査により現状を知る】物流への影響はどうなっているのか

     

    出典:日本ロジスティスクシステム協会「新型コロナウイルスの感染拡大による物流への影響について」

    日本ロジスティスクシステム協会が3月18日に公開した「新型コロナウイルスの感染拡大による物流への影響」の調査結果では、「新型コロナウイルスの影響により、物流面で課題が発生したか」という問いに対して、物流企業では「一部で課題が発生した」が43.3%、「全社的な課題が発生した」が14.44%、規模は異なりますがおよそ60%は課題が発生したと答えていました。それぞれの課題においては、次のような回答が上がっています。

    ・品目によって輸送量の増減が発生
    ・入荷の大幅な遅れと急な出荷対応
    ・荷主企業から運転手のマスク着用を義務付けられたが、入手困難のため苦慮している
    ・海外からの輸入・輸出が停滞し、配送業務が一部なくなった
    ・学校休校に伴い、人員調整が必要となった
    ・倉庫内作業や納品現場ではテレワークなどが不可能なため、安全上の配慮が難しい
    ・急遽航空会社の運休により、緊急輸送案件の大変えルート計画に苦慮している

    この調査では、荷主企業および物流企業から次のような要望・意見があげられていました(一部を抜粋)。
    ・大量の受注増の商品については出荷制限を設けてもらう
    ・発熱があった場合、出社させない措置を取っていただきたい。当日の便建てに影響が出た場合、遅延を認めてもらいたい
    ・消費激減による有給インフラ(倉庫、トラック、人材など)の業界内でのシェアリングについて検討してほしい
    ・過剰に反応するのではなく、状況を冷静に判断していただきたい

    このような声が上がる一方で、今後想定される課題として、企業の業績悪化や長期的に経済が悪化することへの懸念、ドライバーの確保、日本発着の乗り入れ航空会社の減少による運賃高騰、パンデミック時の輸送断裂と困難なトラッキングなど、業界としては多くの課題に直面しているのです。

    配送車が増える一方で、苦戦を強いられる路線トラック輸送

    新型コロナウイルス拡大を防止として、工場休止や在宅勤務など、経済活動が急速に低下しつつあります。日本企業の多くが安価に製造・仕入れができるという理由で中国に多くの工場を持ち、輸入を頼っている部分がありました。それだけではなく、世界最大の小麦輸出国のロシアは国内供給を優先し、4~6月の穀物輸出量に制限を設けるなど、他国でも3月半ばより食料輸出規制がかかり、世界の食料貿易に影響を及ぼしています。

    中国からの資材輸入が幅広い分野で激減したことで、配送量が大幅に減少。中国の工場では一部稼働を再開したところもありますが、人員が限られており、日本への輸入までに時間がかかっているのです。このように、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、輸送量が減り、止むを得ず休車となるケースが増えたことで、売り上げが落ちる企業も。

    不特定多数の荷主の荷物を中長距離で運ぶ路線トラック。その最大手であるセイノーホールディングスは2020年3月期の通気業績予想を、売上高6360億円(前期比2.8%増)から6260億円(前期比1.2%増)に、営業利益328億円(同5.1%増)から296億円(前期比5.2%減)に下方修正しました。また、名鉄運輸も2月に業績予想を下方修整しています。これには、コロナウイルス対策で荷動きが急減したこと、昨年10月より実施された消費増税による運賃の値上げに加え、日用品、アパレルの荷物量低下、店舗の営業自粛など、いくつもの原因が重なったことが考えられます。

    ただでさえ人出不足なのに…需要が拡大する物流業界を救うのは

    激動の物流業界ですが、安定した物流を共有すべく、今の状況を打破しようとさまざまな取り組みが進められています。

    貨客混載でドライバー不足を解消する

    佐川急便と山城ヤサカ交通では、宅配事業の生産性向上と地域の交通インフラ活性化を目的に、2018年より乗用タクシーでの貨客混載が開始されています。外出自粛によって人々の移動が制限されているため、最近はタクシーの乗客は激減。しかし、この取り組みが全国にも広がれば、タクシードライバーは職を失うこともありませんし、人手の足りない配送トラック業のフォローができるため、互いに取って課題を解決する良い施策になり得るかもしれません。

    楽天は3月11日より、岡山市と瀬戸市内において、バス路線網を活用した新たな貨客混載輸送と配送を行うと発表。SGホールディングス傘下の佐川急便とJR北海道は、新幹線を使った宅配便が北海道や九州などで実用化の段階に入ったとしています。旅客用車両の空席を活用した貨物を運ぶ貨客混載の形式は、トラックの運転手不足や移動制限による新幹線の乗員数低下を防止する策としても期待されています。

    アメリカではアマゾンが雇用を手助け?

    ネット通販最大手のアマゾンでは、一斉休校やリモートワークの普及により、配送荷物が急増しています。外出禁止とされている各国でも、ネット通販の利用率は急増、今後も伸びていくと言われています。
    3月16日、アマゾン・コムは通販の需要が爆発的に増えていることをあげ、新たに何10万人を雇用すると発表しました。深刻なドライバー不足は日本だけでなく、米国やカナダ、欧州でも同じようで、この発表と同時に最低時給の引き上げも宣言しています。
    国内でも、需要が伸び続ける業界をフォローするためにも、そして何より人々の生活を支え経済を回していくためにも、深刻なドライバー不足を解消する策として早急な賃上げ策が必要なのかもしれません。

    私たちの生活に、物流は欠かせないもの

    もしも、欲しいものが欲しい時に買えなかったら?必要なものが買えなかったら…?
    新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、買い物が制限され、必要なものを購入するのさえ大変な苦労を伴う地域もあります。

    物流業界も今は非常に困難な時かもしれません。しかし、サプライチェーンは需要が増えている商品を24時間体制で増産し、事業継続と製品供給を止めない体制づくりの構築、生産ラインの部品を切らせないように、中国のサプライヤーや物流会社などと日々連絡を取り合いなどして、サプライチェーンを維持しようと努めています。また、運送業や倉庫業は、他者や業者への情報確認をしながら遅延を確認、顧客に配送の多チャネルを提案する、製品出荷の準備を早急に進める、イレギュラーなオーダー、特例需要への積極的な対応を進めるなど、人々の生活を支えるために必死に、協力しあって途絶えないようにしてくれているのです。

    欲しいものを確実に届けてもらえる、そして生活を支えているのは物流が円滑に動いているからということを、私たちも忘れないようにしたいものです。

  • コロナ対策に有効か、否かーー社員のマイカー通勤で気をつけるべきこととは

    コロナ対策に有効か、否かーー社員のマイカー通勤で気をつけるべきこととは

    クラスター発生のリスクを低減するために「密閉空間」「密集場所」「密接場面」、これらの密を避けましょう。これは新型コロナウイルス対策として厚生労働省が掲げているものです。この状態を避けるべく、各企業においても日頃から満員となる電車やバス、公共機関の利用ではなく、マイカー通勤を推奨するケースが増えています。しかし、マイカー通勤には別のリスクが潜んでいるようで…。

    新型コロナウイルス対策でマイカー通勤を導入した事例

    厚生労働省によると、新型コロナウイルスの感染は飛沫感染や接触感染によって起きる確率が高いと言われています。そのため、新型コロナウイルス感染者が電車やバスなどの公共交通機関を利用していると、会話や咳、くしゃみなどによる飛沫感染、またはつり革や手すりに触れることによる接触感染のリスクが一気に高まるのです。これらのリスクを軽減するために、通勤ラッシュを回避した時差通勤やマイカー通勤を推奨する企業も増えています。
    しかし、都心部は交通インフラが整っているため、マイカーを所有していない人も少なくありません。このような状況を考慮し、カーシェアを展開する企業も破格でサービスを提供するなど、車での通勤を支援するキャンペーンを開始しています。会社としては従業員の安全を守ることが第一。企業ではどのような対策が取られているのでしょうか。

    マナラ化粧品―感染拡大を考慮し、テレワーク、時差出勤、マイカー通勤、カーシェア通勤などの対策を実施

    基本はテレワークとするものの、やむを得ず出勤しなくてはならない従業員への対応策として、時差出勤、バス、電車通勤での密閉空間を回避するため、マイカー、自転車通勤、レンタカー、カーシェアでの通勤を許可しています。車の場合は、駐車場代、ガソリン代1000円/日を支給(超える場合は実費精算)、自転車は駐輪代、レンタカー、カーシェアの場合も経費を全額支給します。

    新日本コーポレーション―公共交通機関による通勤を禁止

    名古屋で消防設備点検を行う新日本コーポレーショーン株式会社では、公共交通機関による通勤を禁止し、社用車での乗り合わせ通勤を実施。

    サイバーリンク―公共交通機関を避ける時差出勤とマイカー通勤推奨

    流通業向けクラウドサービスを展開するサイバーリンクでも、通勤ラッシュを回避するため、時差出勤やマイカー通勤を推奨しています。

    このように、新型コロナウイルス対策としてマイカー通勤を推奨しているケースが増えていますが、一方で、安全なマイカー通勤を進めるためには企業としてもいくつか整備しておくことがあります。

    マイカー通勤を導入する前に気をつけるべきこと

    企業がマイカー通勤を導入するには、次の2点を明確にする必要があります。・ガソリンや駐車場代、維持費などの経費計上をどうするか
    ・万が一、マイカーで交通事故が発生した時の会社の責任やフォロー体制

    経費の処理範囲を明確にする

    マイカーであれば、買い物をするため帰宅ルートの途中でスーパーやコンビニに寄る、会社の行きや帰りに送り迎えをするなど、通勤以外の用途にも利用することが考えられます。そのため、正確なガソリン代を把握するのは難しいもの。ひと月に何割を支給するのか、走行距離でガソリン代を決めるのか、自己申告にするのかなど、ルールを明確に決めましょう。また、駐車場など、ガソリン代の他にどこまで会社が負担するかも明示してください。
    国税庁のホームページでは、マイカー・自転車通勤者の通勤手当について、非課税となる1か月当たりの限度額は、片道の通勤距離(通勤経路に沿った長さです。)に応じて、次のように定められています。1か月当たりの非課税となる限度額を超えて通勤手当を支給する場合、超過した分の金額が給与として課税されます。この超える部分の金額は、通勤手当を支給した月の給与の額に上乗せして所得税および復興特別所得税の源泉徴収を行います。

     

    出典:国税庁

    もしもマイカーでの通勤時に交通事故が起きたら?会社の責任を考える

    “新型コロナウイルス対策”としては公共交通機関よりもマイカー利用の方が安心かもしれません。しかし、自動車の運転には常にリスクがつきものです。万が一、通勤中に人身損害を与える事故を起こしてしまったら、会社としてはどのような責任を負わなくてはならないのでしょうか。この場合、社員がマイカー通勤の途上において交通事故(加害事故)を起こした場合の会社の責任は、「使用者責任(民法715条)」と「運行供用者責任(自動車損害賠償保険法3条)」が関係します。

    【使用者責任(民法715条)】
    ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
    2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
    3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

    つまり、「業務上で車を使用していた場合は、会社が相当の注意をしていた場合を除き、会社が事故の責任を負う」ことになります。

    【運行供用者責任(自動車損害賠償保険法3条)】
    自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

    「運転の目的が業務外」であれば本人(運転者)が、「業務上」であれば会社がそれぞれ責任を負うと記されています。

    会社がマイカー通勤を認めていた事例で、使用者責任や運行供用者責任が認められた判例には、会社がマイカー通勤を認め、通勤手当を支給していたため「会社の通勤は業務に密接に関連する」と判断され、使用者責任を認めたケースがあります(福岡地裁 平成10年8月5日)。
    つまり、マイカー通勤中の事故に対して、業務か業務に密接に関連すると判断されて場合、企業責任を問われる可能性が高いということです。加入している保険で損害を補填することができるのか、できないのか、それによって責任の有無が変わってきますので、マイカー通勤を認める場合は、必ずどのような自動車保険や損害保険に入っているかを確認しましょう。

    安心・安全なマイカー通勤を推奨するには

    無事、マイカー通勤のルールが整ったとしても、一斉にマイカー通勤が増えたことで近辺での渋滞が発生し、近隣住人からクレームがくることも考えられます。また、従業員が渋滞にまきこまれた場合、運転中のながら運転は罰則が厳しくなったため、連絡が取れずに、今、どこにいるかわからないというケースも考えられるでしょう。マイカー通勤ひとつとっても、さまざまな課題やリスクが潜んでいますが、そんな時に活躍するのが車両管理システムです。

    マイカー通勤で車両管理システムを活用するメリット

    渋滞や迷惑駐車が出ないよう、リアルタイムの車両と従業員の位置を把握できる

    管理者側はリアルタイムでの位置情報が把握できるため、クレームが来る前に近隣の渋滞を緩和し、適切な車の流れを作ることができます。また、従業員が今、どこにいるのかがわかるため、安否確認ができ、安全な走行を促すことも可能です。

    危険運転を防止!未然に事故を防ぐ

    今回、急にマイカー通勤になったため、数年ぶりの運転だ、という人もいるかもしれません。今までペーパードライバーだった人は特に危険な運転をしがちです。逆に、運転に慣れているからと、無自覚で危険運転をしている従業員がいることも考えられるでしょう。

    いずれの場合も交通事故のリスクは高まりますので、事前に運転スキルを把握したり、適切な安全運転指導をしたり、安全運転への意識を高める教育が必要です。スマートドライブの車両管理システムは高精度な安全運転診断機能を搭載しているため、急加速・急減速など急操作がどこでどれだけ発生したか、各々のドライバーの運転の癖を可視化します。危険な運転が多い箇所は迂回させる、急操作が多い社員には注意を促すなど、適切な指導が行えるのがメリットです。

    移動時間、移動距離、ガソリン代…利用状況がわかることで適正化が可能に!

    申請されたガソリン代などの経費が適切かを判断するためにも車両管理システムが利用できます。通勤だけでなく、商談もマイカーを使って移動する場合は、移動時間、走行距離を全て把握するのが難しいかもしれません。しかし、車両管理システムは従業員がいつ、どのルートで移動をしたのかが可視化できるため、経費を適正化する際のエビデンスとして活用できるのです。

    安全を守りつつ、コストの適正化をはかる。そのために車両管理システムを活用してみてはいかがでしょうか。

  • もし、社内でコロナウイルス感染者がでたら?企業は行動ルートをどのように把握できるか?

    もし、社内でコロナウイルス感染者がでたら?企業は行動ルートをどのように把握できるか?

    今、もっとも世界を騒がせている新型コロナウイルス。感染者数は日に日に増え、国内においても全国各地に感染が広がっています。
    感染拡大が進む一方で問題となっているのが、感染者の行動ルートがつかめず、いつ、どこで感染したのかがわからないことです。行動履歴がわかれば、濃厚接触者を特定して検査をしたり、感染拡大の防止策を講じたりすることができますが、行動履歴がわからないと、今後どこで感染者が発生するのかわかりません。

    本記事では、“もしも”自社の社員が新型コロナウイルスに感染したら?を想定し、どのように行動ルートを追うことが可能であるかを検証しました。

    もしも社員がコロナウイルスに感染したら…を考える

    4月1日17時時点では、感染者数が2259人(クルーズ船を除く)。最近では海外から帰国した人の感染が多く確認されたこと、海外での感染拡大が急速に進んでいることで、外務省は49カ国の感染症危険情報をレベル3に引き上げ、計73カ国への渡航中止勧告を出しました。国内でも社員が出張から戻ってきた際に新型コロナウイルスに感染したというケースが増え、国内出張にも制限がかかるようになりました。これらの事実から、移動を伴えば伴うほど感染リスクが高くなることがわかるでしょう。

    爆発的な感染拡大を防ぐべく、多くの企業ではリモートワークや時差出勤などが推奨されていますが、職種や業種によって、業務内での移動が必要となる人も少なくありません。それぞれどのような職種においてどのような移動パターンが考えられるか。そして、企業はどのように行動を追うことができるのか、ざっくりと分けて検証しました(業務後の行動は含みません)。

     

    内勤が基本のオフィスワーカーの場合

    バスや電車など、公共交通機関を利用してオフィスに到着。打ち合わせや会議でミーティングルームを、昼食時にはランチに出かけることも考えられますが、これらの行動と通勤ルートが特定できれば、ある程度の行動履歴を把握することが可能に。

    外まわりが多い営業職の場合

    公共交通機関を使用する場合と、社用車を使用する場合で行動追跡が変わります。公共交通機関の場合は電車のみ、電車とバス、電車とタクシーなどの組み合わせが考えられるでしょう。
    バスは通常、定時通りに特定のルートを通行しますが、タクシーは同じ目的地でもルートはバラバラ。また、余裕を持って会社を後にし、打ち合わせ前にカフェなどで仕事をしていることも考えられるので、その点もしっかりヒアリングをすべきかもしれません。

    社用車を利用している場合、基本的には訪問先の情報、車に乗ってどのような経路で移動したかがポイントになります。押さえるべきポイントは、オフィスから訪問先への移動ルートでどのような交通機関を利用したのか、どの経路で移動したのか、訪問先、立ち寄ったカフェ、コンビニなど。

    配送など、物流系職種の場合

    配送先、配送ルート、休憩した場所を特定しましょう。配送トラックは物流倉庫への荷積み作業、トラックでの移動、配達先での荷物受け渡し、または補充作業など、多くの人と接触する機会が多い場合も。基本的には常に移動をしており、管理者がすべてを把握することはなかなか困難です。業務の合間や休憩時に立ち寄ったお店も把握してください。

    タクシーや送迎車など、車で人を乗せる職種の場合

    車両に人を乗せ、移動をサポートする職種の方は、密閉された空間で不特定多数の方との接触があるため、感染リスクが高いと想定されます。そこでは、目的地と到着時間、走行ルートをしっかり把握することが重要です。訪問したルート、訪問先、誰とどのようなやり取りがあったかをしっかり聞き取りましょう。バスの場合は到着時間やルートが決まっているのである程度特定がしやすいかもしれませんが、タクシーはお客様の情報をすべて把握することが難しいうえ、行き先も異なり、ルートも一定ではありません。運転日報をつけていたとしても、簡単な詳細に把握することは難しいと言えるでしょう。

    人単体の行動を細かく追うのは難しい。しかし、車両での移動はある程度把握できる?

    業務以外で、休憩やコンビニへの買い物、部署を超えたフロアの移動など、行動は単一的ではないため、人の行動すべてを把握することは非常に難しいものです。本人でさえも、数日前の行動は記憶が曖昧で思い出せないこともあるでしょう。しかし、車両であれば車両管理システムで行動履歴を取得することができるのです。感染前後の移動もすべて記録しているので、本人の記憶とすり合わせて確認することが可能です。

    走行履歴をしっかり記録できる車両管理システムのメリット

    車両管理システムは、ドライバー一人ひとりの走行履歴を自動で記録します。数日前、数週間前の走行ルートも後から確認できるので、うろ覚えや言い間違えではなく、正しい行動履歴の記録として活用できます。走行履歴に関するデータは、誰がいつ、どこを走ったのかを自動的に計測し、クラウドで管理するもののため、管理者もドライバーも面倒な作業は発生しません。また、自動で運転日報を作成できるので、勤怠管理もバッチリ。また、リアルタイムでの位置情報を把握できるため、緊急事態が発生した場合やルート変更、他ドライバーのフォローを指示する際も連携が取りやすくなります。

    リモートワーカーが増える一方、忙しくなっているのが物流・配送業者。忙しいとはいえ、昨今の働き方改革によって残業時間の上限が厳しくなっているため、いかに安全かつ効率よく運用できるかに焦点が当てられています。車両管理システムは走行ルートを可視化できるうえ、配送ルートの策定も簡単に行うことができます。業務量を把握することで、訪問件数や運行ルートを改善・最適化が可能に。

     

    車両を運転する時間が長くなるほど、交通事故のリスクも高まりますが、車両管理システムには安全運転走行を意識づける機能も搭載されています。特許を取得した安全運転診断機能により、ドライバー一人ひとりの運転のクセや危険運転を可視化。危険運転を自動検知すると、走行毎に管理者へ通知することもできますので、事故の防止に役立つのです。一台で、これだけ多くの便利機能を備える車両管理システム。社員の安全を守り、なおかつ業務の効率化を図るためにお役立てください。

     

    まとめ

    業務中はマスクを着用する、手洗いうがいを徹底する、人と人との距離をいつもより多めにとるなど、感染予防を徹底することも大事ですが、8割が軽症で自覚症状がないことから、人に感染させないことの方が重要です。万が一、社員の感染が発覚した場合、その行動を辿り、濃厚接触者を早急に特定し、感染を広げないよう素早く対処することが企業に求められることかもしれません。

     

  • 【対談】たしかな技術と50年の歴史を持つユピテルがスマートドライブと連携!ハイブリッドで高精度なドラレコ誕生秘話

    【対談】たしかな技術と50年の歴史を持つユピテルがスマートドライブと連携!ハイブリッドで高精度なドラレコ誕生秘話

    インタビュイー:
    株式会社ユピテル
    マーケティング部 ゼネラルマネジャー
    石橋 篤(いしばし・あつし)さま

    2019年12月、改正道路交通法の施行により、運転中にスマホを注視したり操作したりする「ながら運転」の厳罰化。重大事故につながり世間を震撼させたあおり運転。車の安全運転性能は年々向上していますが、こうした人的要因による事故は後を絶ちません。

    事故の記録を収めるために、そしてドライバーを危険から守るためにも、個人、法人問わずドライブレコーダーへの関心が強まっています。そこで、安全運転意識の向上と事故防止に対する機能を強化すべく、スマートドライブはユピテル社協力のもと、2020年2月よりLTE 通信型ドライブレコーダー「SmartDrive Fleetドライブレコーダー」の販売を開始しました。

    今回はユピテルでゼネラルマネジャーを務める石橋 篤さまをお招きし、協業に至った背景から今後の展望まで、ドライブレコーダー×車両管理システムを提供する企業の新たな可能性を探りました。

    ユピテル〜50年の歴史と進化を続ける技術

    弘中:まずは、石橋様のご経歴について簡単に伺えますか。

    石橋:もともと広告代理店に務めていましたが、15年ほど前に転職をしてユピテルに入社。マーケティング部のゼネラルマネージャーとして、法人・個人向け両方のプロモーションに携わっています。

    創業は1970年、50年もの歴史を持つユピテルは、ユピテル音楽工業というレコード会社として設立されました。開設当時は今で言う、avexやポニーキャニオン、コロンビアのように、アーティストを抱えるレコード会社だったのです。しかし設立から間も無くカラオケブームが到来し、同じ音楽という枠組みでカラオケセットを中心とした音響機器を手がけるように。そして同じ頃、輸出用にレーダー探知機を作り、アメリカに販売をしていました。

    弘中:お話を聞いていると、もともとメーカーとして始まったわけではありませんので、技術者がいらっしゃらないように感じますが…機器の開発にあたって技術者の採用を強化したのでしょうか。

    石橋:ユピテルが技術者を雇用するようになったのは、カラオケ関連の機器を作り始めてからのこと。ここから、ユピテルの本格的な機器開発の歴史が始まります。とくに、70年代から開発に着手したレーダー探知機はユピテル独自のコア技術であり、技術の集大成ともいえるもの。当時から現在に至るまで、性能を高めるためにさまざまな技術、ノウハウを積み重ねてきました。そのレーダー探知機にはマイクロ波と無線技術が搭載されていますが、この技術を活かして家電やカー用品など製品の幅を広げ、現在ではカー用品をメインに展開しています。

    時代とともに変わるニーズに対応し続ける、ユピテルのドライブレコーダー

    弘中:御社がドライブレコーダー(以下、ドライブレコーダー)の販売を始めたのはいつからでしょうか。

    石橋:2009年からです。

    弘中:御社の歴史から考えると最近のことなのですね。

    石橋そうですね。とはいえドライブレコーダーが生まれたのも2000年代です。現存する個人向けのドライブレコーダーメーカーとしては弊社が最古参です。

    弘中:御社は非常に商品のレパートリーが豊富で、前後2カメラ、全方位720°、夜間に強いスーパーナイトなど、さまざまな種類のドライブレコーダーを提供されていますが、現在は全部で何種類くらい販売されているのでしょうか。

    石橋:そうですね、法人向けと個人向けをすべて合わせると30以上はあるでしょうか。

    弘中:すごいですね、新製品はどれくらいの頻度で発売されているのでしょうか?

    石橋:ラインナップにもよりますが、個人向けの製品は最低でも1年に1回は新しい製品を展開し、法人向けはもう少し長いスパンでサイクルを回しています。

    弘中:法人向けと個人向けの双方のドライブレコーダーに取り組まれてますが、それぞれどのようなニーズがあるのでしょうか?

    石橋:個人向けのドライブレコーダーでは、お客様が一番気にされるのは価格です。安くても高機能・高品質が求められますので、海外である程度の台数を作るようにして価格を抑えるようにしています。

    法人向けでは、価格よりも品質やアフターフォローなど、企業としてのバックアップを期待されることが多いですね。多品種少量生産と短納期を求められるので、鹿児島の自社工場(ユピテル鹿児島)で製造しています。いずれもドライブレコーダーという基本思想は同じですが、細かいスペックに違いがあります。

    弘中:細かなスペックというと、どのような機能が大きく違うのでしょうか?

    石橋:法人向けの製品はデータのフォーマットを変えて、セキュリティをより強化しています。

    弘中:昨今、あおり運転による悲痛な事故のニュースが数多く報道されています。このような事件を受けて、ユーザーから求められる機能は変化してきたのでしょうか。

    石橋:追い抜き車線に止められ、後ろから突っ込んで来たトラックに命を奪われてしまった、東名高速夫婦死亡事故は、世間的に大きな影響を与えました。連日ニュースで取り上げられたことで、多くのドライバーに「煽り運転を避けるためには後方にも注力すべきだ」という意識が芽生え、前後方の2カメラモデルが一気に注目されました。弊社も含め、各メーカーから販売されていますが、今は2カメラモデルが主流となっています。

    また、ここ最近では常磐自動車道で起きたあおり運転暴行事故によって、車内も撮影可能なドライブレコーダーが話題になりました。この事件は、車内で起きた暴行行為が鮮明な映像で記録されていたことで刑事裁判が確定しています。つまり、決定的な証拠としてドライブレコーダーの映像が大いに役立ったと。こうした事件を背景に、今は個人も法人も前後はもちろん、車内も撮影できる機能が求められています。

    弘中:そうなのですね、少し話は変わりますが、我々にはバイクの移動データを分析したいとご依頼いただくことがあります。
    体がむき出しのバイクは簡単に自動車間のすり抜けができますが、車の死角に入りやすく非常に危険です。御社はバイク向けのドライブレコーダーも提供されていますが、引き合いはございますか?

    石橋:そもそもバイクのドライブレコーダーを製造しているメーカーが少ないので、引き合いは多いですね。

    バイクの場合、事故が発生するとライダーが大きな怪我を負う、または亡くなる確率が車より高くなります。ライダーが亡くなると、事故の原因や過失がどこにあるのか、誰もライダー側の立場で証言することができません。そうすると残された遺族の方は当然悔しい思いをしてしまう。しかし、事故前後の映像をしっかりと残すことができればライダーに過失がなかったと証明できますから、命に関わる重要な局面において、ドライブレコーダーの映像が非常に重要な役割を果たしてくれるのです。

    互いの強みを欲していた−−スマートドライブとユピテル、協業への道のり

    弘中:今回SmartDrive Fleetとユピテルのドライブレコーダーを連携させていただくことになりました。貴社のような歴史のある企業様がスマートドライブにお声がけいただけたのは何故だったのでしょうか?

    石橋:ドライブレコーダーのビジネスを継続する中で、かなり前から「今後は通信型のドライブレコーダーが必要になる」と確信していました。

    通信型となると、クラウド上に大容量の映像データがアップされ、膨大な量のデータのやりとりが発生します。そのデータを活用してドライバーや車両の管理ができる高精度なサービスを販売しようと、弊社なりに試行錯誤をしてきましたが、いかんせんモノづくりのメーカーですので、どこからどのように手をつければいいのかわからない。

    それまで、自前主義を貫いていたユピテルは、自社の資源を活用して自社内で考えて作る方針でしたが、移り変わりが早い今の時代において、スピーディーにソフトを作る力が足りなかったのです。着実に実績を残してきましたので、引き合いも少なくありませんでした。一般的なドライブレコーダーも通信型ドライブレコーダーも多彩なラインナップを揃えていましたので、自信を持って対応してきましたが、「ドライブレコーダーで取得したデータを活用したサービスの提案はありますか?」との問いだけには、回答ができず対応に苦慮することも…。今後、確実にニーズが増えていくと感じていたのです。

    しかしこのまま自社のみでサービス部分を開発するとなると、数年はかかってしまうだろう。それに、完成した頃には時代が変わって、異なるニーズが生まれていたり、サービス自体が古いものになっていたりするかもしれない。ならば、すでにサービスを確立している企業と組んだほうがお互いの強みを活かし、双方にメリットがあるのではないかと考え、スマートドライブ社と組むことを決意しました。

    最初のきっかけは、日本経済新聞にスマートドライブと弊社が車のデータ活用というテーマの記事で取り上げられたこと。そこから連絡を取り合うようになり、今に至ります。

    弘中:スマートドライブではお客様から危険運転の発生箇所を動画でも確認したいとの要望を多くいただいており、どのように動画撮影機能を追加すべきか頭を悩ませていました。

    私たちはユピテルさんとは逆で、ものづくりのメーカーではないため、ハード面の開発が得意ではありません。しかしお客様からは、急操作が起きた際の原因や理由が明確に知りたいから、挙動前後の様子をおさめた動画が欲しいとご要望をいただいておりました。
    交差点で信号が黄色になったからなのか、人が急に飛び出してきたからなのか、その原因を把握できなければ、会社としては本当の意味での安全運転は実現できないのではないかと言われてしまって。たしかに、お客様のおっしゃる通りですし、私たちとしても希望に答えたい。そうした理由から、他社のドライブレコーダーと連携ができないかと模索している最中だったのです。

    石橋:お互いの弱点をカバーし合える関係だったので、トントン拍子で話を進めることができたのではないでしょうか。実現できて、本当に良かったと思っています。

    コラボレーションによってもっと高度なサービスを実現

    弘中:今回の協業で、スマートドライブに期待することはなんでしょうか。

    石橋:もっとも期待を寄せているのが、ソフトウェア開発です。私たちが聞いたお客様の声を素早くスマートドライブにフィードバックすることで、充実した機能と利便性の高いサービスを迅速に提供できるようになると考えています。

    弘中:我々は現在ですと月に1度ほどの機能アップデートをしております。
    これからご利用いただくお客様のニーズに応えていくために、ユピテル社だから安心できるという老舗ならではブランド力と、弊社のサービス企画力がうまく連携して互いの長所を引き出しあい、より高価値なサービスを提案できればいいですよね。

    また、今後さらに営業連携も強化できればと思っています。
    静岡からはじまり、最近では大阪への営業活動もご一緒させていただいております。私たちはハードウェアの質問にはなかなか答えられないですし、規格についても詳しくありません。その点においては、まだまだ御社から学ぶことが数多くあります。御社からハードウェアの正しい販売方法を教えていただきながら、強力な拡販体制を作るという部分でも良い連携ができればと。

    石橋:ユピテルは老舗ですがフットワークの軽い会社です。お互いのフットワークの軽さを活かして、一緒に成長していきましょう!

    弘中:現在は静岡拠点を中心に連携させていただいております。

    石橋:静岡は様々なプロモーションを実施していますのでユピテルの認知度が非常に高く、弊社にとって重要な拠点なのです。

    静岡の次としては、九州に着目しています。実は3月から福岡ソフトバンクホークスのオフィシャルスポンサーになりました。福岡は地元意識が非常に高く、地元の球団を応援する方が多いので、ソフトバンクを応援する企業として認知していただき、地元の方々に受け入れてもらえるように努力しているところです。

    弘中:スマートドライブは現在、東京、大阪、東海の3拠点で営業活動をしていますが、対象エリアを拡大している最中ですので九州はもちろん、他のエリアでも是非ご一緒したいですね。

    石橋:そうですね、是非!

    弘中:私自身、さまざまな地域を巡る中で地方のほうが課題も多く、安全運転支援ができるドライブレコーダーへのニーズが大きいことに気づきました。

    私は北海道出身ですが、北海道は雪が降りますし、広大な土地なので車がないとほとんど生活ができません。生活するための移動手段として車が欠かせません。そうなると運転頻度や走行距離、走行時間は都心部より断然地方の方が高くなり、事故が発生する確率も上がります。ですので、さまざまな地域へ足を運んで、サービスの認知度を上げながら安全運転意識の向上と事故削減を実現していきたいと思っています。

    時代に合わせてスピーディかつ柔軟なサービス展開を

    弘中:最後に、スマートドライブへ一言お願いします。

    石橋:スマートドライブとは現在、法人向けサービスを一緒に開発していますが、このサービスをベースとして今後は使いやすく安価な個人向けサービスを提供できればと考えています。通信型のドライブレコーダー自体、まだ一般のお客様には周知されていませんが、今後必要とされる、もしくはお客様が使いたいと思うサービスとして展開できれば、もっと安全運転が広がっていくのではないでしょうか。

    弘中:現在、スマートドライブでは鉄道会社様と共に沿線上にお住まいの方々に安全運転を提供するプロジェクトを進めており、この中でも動画へのニーズが出ています。たとえば、見通しの悪い十字路でどんな危険運転がされているのか、具体的な行動がわかれば事故を未然に防ぐことができるとか。事故が起きやすい道路では、普段からどのような運転をされているのかとか。自治体にドライブレコーダー機能を搭載した車両管理サービスを提供し、近隣の方たちに向けて十字路で急ブレーキを踏んだシチュエーションや子どもの飛びだしが多い道路をリアルタイムにシェアすることで、徹底した安全運転の啓蒙ができるのではないでしょうか。

    個人向けには、ドライブレコーダーを搭載して安全運転していれば、車を買取に出す時に高く売れるサービスとか。さまざまな観点からサービスの展開が考えられそうです。

    石橋:個人の場合、何らかのメリットがないと費用をお支払いいただくわけにはいきませんしね。

    弘中:また、あおり運転防止や安全運転のためだけでなく、ドライブレコーダーがあるから運転が楽しくなるような、ゲーミフィケーションの要素を取り入れれば、今までとは違った角度で運転の楽しさを訴求できそうです。

    石橋:5Gが浸透すれば、今まで実現できなかった多くのことが実現可能になるでしょうね。

    弘中:そうですね、今後も打ち合わせを重ねながら、次々と登場する新たな技術で何かを実現できるよう手を組んでいきましょう。本日はありがとうございました。

  • 自動販売機業界・メーカーの課題と解決策【後編】

    自動販売機業界・メーカーの課題と解決策【後編】

    前編では自販機業界・メーカーの現状と課題、そして大手メーカーが中心となって進めているオペレーションのIT化を紹介しましたが、システムの複雑化によって現場スタッフの精神的・肉体的負担が、かえって増加しているようにも感じられます。そこで後編では、正しいDX(デジタルトランスフォーメーション)について解説し、導入によって得られる効果とコストカットや収益化を目指すポイントを整理することで、具体的な解決策を提案します。

    自販機業界・メーカーが抱える課題を解決に導く「DX」

    DXとは、デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称であり、市場環境のデジタル化に対応するため、企業が行うあらゆる経済活動やビジネスモデル、組織・制度などを包括的に変革していく取り組みを指します。近年、国内デジタル化の遅れを危惧した経産省が必要性を啓もうしていることもあり、民間企業の間でも認知度も上がってきましたが、それはあくまで「広義のDX」にすぎません。大手自販機メーカーが展開を急いでいる「IT自販機」なども、残念ながらその1つだと言えるでしょう。

    なぜ、オペレーションのIT化を推進しているにもかかわらず、課題である労働環境の改善や自販機設置台数・場所の最適化が一向に進まないのでしょうか。それには同業界特有と言える、次の4つの要因が関係すると考えられます。

    1. 多くのオペレーション業務が下請けや傘下企業へ丸投げ状態である
    2. 大規模なDX化に対する現場サイド(=集配ドライバー)の抵抗が強い
    3. オペレーターの労働環境を把握できていないor長時間労働を黙認している
    4. 飲料メーカー各社にドル箱である自販機を削減する気概が乏しい

    このうち4に関しては飲料メーカーの企業努力にかかっていますが、1~3はたとえ中小規模の自販機業者であっても、「ミニマムなDX化」を推進すれば払しょくすることが可能です。そして、ローコストかつ効果を期待できるミニマムなDX化の第一歩として有効なのが、車両管理システムなのです。

    自販機オペレーションにDXを導入する効果1「集配業務の効率化」

    自販機オペレーターが1日の業務で最も長い時間を過ごすのは配送用トラックの中です。そのため、運転および待機時間を短縮できればオペレーターの労働環境は目に見える形で改善するでしょう。DXツールの1つである車両管理システムは、車載デバイスのGPSにより管理者がリアルタイムで走行経路を確認できるうえ、入手データを見える化が可能であるため、交通渋滞多発エリア&工事中の道路などの回避、訪問頻度に合わせた最適な配送ルートの作成、担当エリアの最適化による1人当たりの運転時間標準化などにより、集配業務の効率化を図ることができます。

    事務所にいる管理者と集配スタッフとの情報共有が容易になることで、手の空いた人員に忙しいエリア担当者のフォローを指示できるなど連携力が高まるほか、業務日誌・運行記録の作成も自動化できるため、さらに労働時間を短縮することも可能です。働き方改革関連法案が施行された今、労務管理の徹底と労働基準法の遵守は企業の義務であり、車両保有台数が多いほど車両管理システムは威力を発揮し、コストの割には即効性も高いため、なかなか集配業務の効率化が進まない時は導入を検討すると良いでしょう。

    自販機オペレーションにDXを導入する効果2「不採算自販機のあぶり出し」

    無人で多くの利益を企業にもたらしてくれる自販機は、どのメーカーも削減するどころかむしろ増設したい重要かつ優秀な販売チャネルです。しかし、集配業者にとっては労働環境を悪化させ、ひいては自社の収益力を圧迫する元凶のようなもの。もちろん、各集配業者もメーカーに対し不採算自販機の撤去を求めているとは思いますが、どんなに売り上げが悪くとも「必ず」採算がとれるメーカーは、口だけで説得してもなかなか首を縦に振らないでしょう。

    車両管理システムを活用し、集配時間当たりの人件費とパーマシンのバランスを分析・見える化することで、その自販機が労働環境悪化に直結かつ不採算で経営を圧迫していることが証明できれば、メーカーを説得する大きな材料となりえます。また、メーカーが撤去に乗り出さなくても不採算自販機をあぶり出すことができれば、訪問頻度や補充本数の適切な調整によって、労働時間短縮やトータルの補充本数を減らす、業務改善も実現できるのです。

    DXでコストカット&収益化も!ポイントは「走行データ×在庫データ分析」

    前項で解説した車両管理システムによる綿密な走行データと、各飲料メーカが所有する在庫データを紐付ければ、自販機業界全体のコストカット・収益化を実現する、非常に有益なDXシステムを構築することも可能です。ただし、それにはコストと時間がかかるため、業界全体が一丸となって取り組む必要がありますが、もし実現すれば深刻化する自販機業界の課題を完全に払しょくすることも期待できます。

    ピッキング&商品補充のオートメーション化による労働環境改善

    自販機オペレーションにおいてもっとも過酷な作業は、人の手による連日の品出し・積み下ろしと商品補充です。しかしそれらをAIとロボットで自動化することができれば、一気に労働環境は改善します。

    たとえば、IT自販機から入手した売り上げデータをもとに、AIでよって制御されたロボットが過不足なく正確に車両へ荷物を積み込む。それだけで、腰に負担がかかる積み下ろし作業が格段に緩和されます。

    また、IT自販機と車両管理システムを連動させ、到着するまでの間に補充商品がピックアップされるシステムを開発・導入できれば、労働時間短縮も実現できますし、小型コンベアーを車両に搭載・補充作業を自動化させることができるようになるのではないでしょうか。

    これらを可能にするには膨大なコストがかかりますが、今後さらなる拡大が予想される人材不足を鑑みると、オペレーション業務の抜本的な見直しと大規模な改革を撃ち出さなくては、事業が立ちいかなくなるかもしれません。

    配送エリア別売り上げ状況の把握で商品開発・ラインナップの最適化

    車両管理システムの走行データからエリア別売り上げデータを抽出し、メーカーがマーケティングに活用しているIT自販機からの情報と融合・分析すれば、商品開発や自販機ごとのラインナップを最適化することも可能です。

    そうすれば、現在下降の一途をたどっているパーマシンを上方修正することもできますので、不採算自販機の撤去を迅速に行い、集配オペレーターの労働環境悪化に歯止めをかけることができるでしょう。商品開発コストは飲料メーカーにとって大きなウェイトを占めるものですので、売れ筋商品をピンポイントでリリースできれば一石二鳥です。

    自動運転車の導入による人件費削減と人材不足解消

    GPSやIoTを活用する車両管理システムと自動運転技術は、連携することでさらに大きな効果を生むと予想されます。完全自律運転が実現・普及した場合、オペレーターは運転という煩わしい作業から解放され、本来の業務に集中することができるからです。

    もし実現できれば、車両管理システムによって決定されるルートに沿って、オペレーターは雑務をこなしたり食事をとったりしながらの移動が可能となり、適切な休憩をしっかり確保することができますが、法規制などの問題もあり完全自動運転車の登場はまだまだ先となりそうです。

    しかし、現在リリースされているレベル2相当の自動運転であっても、高度な安全運転支援機能を搭載しているため、交通事故予防に大きく寄与してくれます。運転が労働時間の大半を占める自販機業界・メーカーは、従業員および歩行者保護の観点からも導入を積極的に検討すべきかもしれません。交通事故が減少すれば被害者に対する賠償金の負担も少なくなりますし、車両を修理するコストも不要となり、ケガをした従業員が稼働できない状況を防ぐこともできるなど、企業が得られる経済的メリットも多岐に及ぶからです。

    また、レベル3以上の自動運転が実現・導入すれば、実質労働時間を短縮可能なため人件費をカット可能ですし、労働環境が飛躍的に改善し確保がスムーズになるうえ、他業種への流出を食い止めることも期待できます。

    まとめ

    自販機業界・メーカーが継続的に成長するには、まずは車両管理システムを活用して集配業務を改善するミニマムなDXを進めたうえで、オートメーション化や自動運転の導入など、大規模なイノベーションを生み出していく必要があります。コンビニやスーパーなど、ライバルが乱立している現状において、地道に取り組みを続ければ課題を解決するヒントや、縮小する市場規模の中で生き残っていく道筋が見えてくることでしょう。

  • 自動販売機業界・メーカーの課題と解決策【前編】

    自動販売機業界・メーカーの課題と解決策【前編】

    少し歩けば簡単にドリンクを購入できる、便利な自動販売機。都心でも郊外でもすぐに見つけることができますが、これほど普及しているのは世界広しと言えど、日本ぐらいです。

    しかし、あまりにも設置台数が膨大なため、商品・釣銭の補充や売り上げの回収を担うオペレーターの労働環境は昨今の働き方改革に反して悪化しており、さらには人件費や車両・倉庫の運用・管理コスト増大による収益率の低下に業界各社は頭を悩ませているようです。

    見渡せばすぐそこにある。自販機大国ニッポン

    一般社団法人「日本自動販売システム機械工業会(JVMA)」が公表している、2018年12月末現在のデータによると、缶・ペットボトルの清涼飲料水、及びパック・カップタイプ自販機の国内設置台数は約240万台とのこと。一方、海外での普及台数は米国が290万台超、欧州全体で約300万台と単純な設置数では及ばないものの、人口1人当たりの普及率で言えば日本は世界一の自販機大国であり、年間の売上高も2兆円を超える大きな市場になっています。

    日本で自販機が広く普及したのにはいくつか理由があります。最初のきっかけは、1964年の東京オリンピック開催時に国鉄が券売機を導入し、100円硬貨が大量に流通したことでした。次いで、70年代中盤から世界に先駆け「クール&ホット自販機」が登場し空前の大ヒット。海外と比較して治安が良い日本では、商品や金銭を強奪されたり、自販機そのものを破壊されたりする心配が少ないことも普及に拍車をかけ、技術の先進性においても世界トップクラスの水準を誇ります。

    しかし、海外からの観光客が「来日して驚いたこと」で良く挙げているように、商業施設だけでなく全国津々浦々、屋内外問わずあらゆる場所に設置されているため、日本における自販機市場は飽和状態と言えるでしょう。

    そこで、国内の各メーカーは海外に販路を求め、たとえば「ダイドードリンコ」は2013年からロシアに進出し、現在500台以上の自販機を運用していますが、2018年3月同社が発表した決算報告によれば、純利益25億円(前期比23%減)と苦戦を強いられているようです。同社が思っていたような数字を残せないのは、極寒の地であるロシアでは自販機を路上に設置しづらく、屋内の設置がメインになるため想定通りの売り上げを見込めないほか、年中ドリンクを温める必要があるため、電気代・維持費がかさんだためです。

    さらに、治安の問題から欧米各国への進出も困難と言われており、実用性や利便性よりもコカ・コーラやペプシなどの広告塔としての役割が強いため、最低限の品数しか販売していない米国自販機市場において、数十品目を揃える日本の自販機は無用の長物。ヨーロッパ市場ではそれに加え、歴史的建造物や景勝地が多く景観を損なう場所への自販機設置が認められないこともあるほか、缶やペットボトルのポイ捨てに対する規制・罰則も厳しいため、米国以上に設置企業・事業主を確保できないのです。

    その結果、自販機業界・メーカーは熾烈を極める国内市場において、オペレーション・コストを削減し収益率の維持に尽力していますが、新規自販機の設置と売上高が頭打ちである今、さらにいくつかの課題が浮き彫りになっているようです。

    自販機業界・メーカーが抱えている課題とは?

    自販機のオペレーターの仕事は商品運搬用の中・大型車両を長時間運転し、釣銭と商品を補充するために担当エリア内の自販機を漏れなくチェックしたり、併設しているゴミ箱の容器を回収したりするなど、肉体的にも精神的にも大変な仕事です。日本が世界に誇る自販機ネットワークを維持する、重要かつやりがいのある業界ですが、この項で述べる課題を解決しないことには、今後の成長が鈍化する可能性があります。

    課題その1「労働環境の極端な悪化」

    売上本数や担当台数はまちまちであるものの、仮に1人のオペレーターが1日30台の自販機を回り、それぞれ100本の350mlの缶ジュースを補充したとすると、実に3,000本もの商品を手作業で取り扱うことになります。総重量は1トン超え、これだけでも過酷な重労働だとわかりますが、搬入トラックの駐車場が遠い場合、台車に何十キロもの商品を乗せなくてはなりませんし、商業施設内に設置されている場合は、ケースを抱えて階段を駆け上がることもしばしば。

    清涼飲料水が良く売れる夏場はとくに体力の消耗が激しく、休憩もなかなか取れず運転中パンやおにぎりでお昼を済ませるといった、タイトなスケジュールになってしまうことも。

    街中でも、重たい飲料を運び、忙しく働くオペレーターを見る機会があるかもしれませんが、少子化に伴う人材不足と従事者の高齢化により近年労働環境が極めて悪化しており、2008年の夏にはコカ・コーラ専門の配送下請け会社、「日東フルライン」の若手社員が過労を苦に自殺する事件が発生しています。さらに2010年4月13日、清涼飲料大手「キリンビバレッジ」子会社で自販機への充填作業をしていた社員が、その日14台目の自販機を回ったところで営業所に戻り、倉庫ビル屋上から飛び降り自殺するという、痛ましい事案も起きてしまいました。

    このような状況の中2018年5月3日、サントリーグループの「ジャパンビバレッジ社」の従業員が、違法な長時間労働やサービス残業の改善を会社に求めるため、JR東京駅で大規模なストライキを実施。駅に設置された、「売り切れ」だらけの自販機を撮影したツイートは多くのRTを集めたほか、同社の名前はYahoo!でホットワードランク2位になるなど、SNSやネット上で大きな反響を呼びました。しかし、このストライキをサポートした労組「ブラック企業ユニオン」によれば、他の大手自販機メーカーの従業員からも同様の声が殺到しているのだとか。

    つまり、働き方改革関連法に則って自販機業界全体が労働環境を抜本的に見直し、二度と悲しい過労死・過労自殺が発生しないよう、速やかに改善することこそ最大の課題であると言えるでしょう。

    課題その2「自販機設置数・場所の最適化」

    冒頭で国内の自販機設置台数と売上高が頭打ちだと述べましたが、無人かつ年中無休で商品を販売してくれる自販機は、自販機業界のトップに君臨している大手飲料メーカーにとって、手放すことのできない稼ぎ頭です。その理由は、スーパーやコンビニなど他の販売チャネルでは、商品陳列や商品管理が必要なうえ人件費もかさみ、仕入れ時に買い叩かれ収益が目減りしますが、自販機は売り上げの約4割が半自動的に利益として転がり込んでくるからです。

    場所を確保する営業活動や工事・撤去、そしてオペレーションはすべて下請け・下部組織の自販機業者に依頼できますし、平均月に2,000~3,000円かかる電気代はリースした側の負担となるため、売り上げに関係なく加速度的に自販機は増えていきました。しかしその結果、過剰設置が発生。営業所から遠く離れた自販機へ定期的に向かう手間や、季節の変化や新商品が登場するたびにラインナップやレイアウトを変更する必要もあるため、オペレーターの業務が非効率的になっているのです。

    利益追求は企業の絶対的な命題ですが、パーマシンが〇円以下の場合は撤去するとか、3階建て以上でエレベーターがない場所には設置しないなど、一定のルールを決め設置数・場所を最適化すべきだと言えるでしょう。

    また、空き缶やペットボトルの回収を廃棄物専門業者に委託するのも手ですし、電動台車を大量購入し支給すれば、オペレーターの負担を大幅に軽減できます。もちろん、このような施策を行うにはコストも必要ですが、労働時間を短縮してサービス残業が無くなれば、従業員の流出を食い止めることもできるようになり、業務効率化という面で十分に「費用対効果」を期待できるかもしれません。

    自販機がオンライン化しているって本当?

    労働環境の改善や設置状況の見直しが今後の課題だと述べましたが、自販機業界・メーカーも手をこまねいていたわけではなく、オペレーターの負担を軽減するために自販機のオンライン化を現在急いで進めています。

    キリンビバレッジ オンライン自販機での業務効率化を推進

    飲料大手のキリンビバレッジは、自販機に設置した専用の通信モバイルで在庫状況をタイムリーに把握し、収集したデータで商品補充の効率化を図れるオンライン・システムを、2014年夏から順次導入しています。同社では従来、オペレーターがトラックに商品を大まかに積み込んで自販機の設置場所を回り、到着後に自販機から売り上げデータを取り込み、さらに一旦トラックへ戻って補充する商品を持ち出していました。

    しかし、新システムでは集約データを基に作成された売上表を見ながら、必要な商品・数量だけを正確にピックアップできるため、予備を積み降ろしする労力がかからない上、自販機設置場所を効率的に回るルートも事前に設定されています。また、トラックと自販機を往復する必要も無くなったため、1台当たり平均20分かかっていた作業時間が半分程度まで短縮できたとのことです。

    ダイドードリンコ IoT自販機を約5万台導入

    業界第6位の売上を持つダイドードリンコは、全国に設置している同社の自販機を順次IoT化、2018年時点でブルートゥース機能を備えた約5万台が展開されており、今後も対応台数を拡充していく方針を打ちたてました。

    対応自販機は「スマイルスタンド」と名付けられており、商品の購入後に専用アプリをダウンロードしたスマホを自販機にかざすと、楽天ポイントやAmazonギフト券と交換できるポイントが貯まるというもので、ヘビーユーザーを増やし収益を向上することを目的としています。

    これまで、同社は1週間に1度の補充時に飲料自販機のデータを取得していましたが、スマイルスタンド対応の自販機はモバイル通信によって、日々の在庫状況を把握できるため、迅速かつ精緻なオペレーションが可能になったと言います。週次データでは、オペレーターの勘や経験に頼るしかありませんでしたが、IoT自販機の導入によって誰でも適切な積載量を把握できるようになったため、業務効率化に大きく貢献しているようです。

    まとめ

     

    大手飲料メーカーを中心に大掛かりなITシステムを導入して、労働環境改善と業務効率化を図る取り組みを進めていますが、下請けや中小自販機業者の場合はそこまで膨大なコストを割くわけにもいきません。そこで後編では、ローコストながら自販機業界が抱える課題を、着実にクリアすることも期待できる「車両管理システム」について、具体的な活用例・方法を挙げつつ詳しく解説します。

  • 景気悪化時に企業存続のため、実施すべき対策とは?

    景気悪化時に企業存続のため、実施すべき対策とは?

    連日連夜、世間を騒がせている新型コロナウイルス感染の話題。この数ヶ月で世界中に感染が広がり、一部ではその深刻さから緊急事態宣言によって国境を封鎖したり、入国制限を設けたりする国も出ています。そんな中、さらに警戒感が強まっているのが経済活動です。新型コロナの影響は、体力のある大企業はまだしも、中小企業の経済活動に多大なる景況を与え、「リーマンショックのときと同等か、それ以上かもしれない」とまで言われています。
    今後国内の経済が冷え込むことが予想されていますが、中小企業は企業を存続するためにどのような対策が行えるでしょうか。

    新型コロナウイルスによる中小企業の経済への影響は

     

    「中国に大規模工場があるため、生産ラインがストップしてしまった」「人が移動しなくなり、ものが売れない」「イベントが中止で売り上げが見込めなくなった」など、新型コロナウイルスの影響による企業への打撃は計り知れないものになっています。

    そこで、東京商工リサーチが2月28日に全国の中小企業174社に向けて行った、「新型コロナウイルス」の影響についてヒアリングした調査では、感染の終息が不透明な中で、各企業が深刻な状態に陥っていることを浮き彫りにしました。

    出典:東京商工リサーチ

    新型コロナウイルスの影響を発生事象別に分類すると、「サプライチェーンに支障」がもっとも高く、約4割(構成比39.0%)を占め、次いで「営業や生産活動、イベント中止に伴う受注・売上減」25.8%、「国内消費不振」13.7%という結果に。

    工業製品をはじめ、機械、衣類、食品、雑貨に至るまで、数多くの製品生産を中国に依存する日本企業にとって、中国の生産現場がもたらすサプライチェーンの寸断は想像以上に影響が大きいようです。また、この問題は製造業だけでなく、「中国で建材生産がストップし、メーカーに発注しても入荷せず工事が遅延」(建設業)、「住宅部材の調達難で工事が完工できず、引き渡しができない案件が出ている。顧客との契約で損害金を支払う可能性も」(マンション開発)など、多くの業界に及んでいます。

    新型コロナウイルスが追い打ちをかけ、経営が悪化し、経営破たんをした企業のニュースもパラパラと紹介されるようになりました。そこで、経済産業省は全国の中小企業・小規模事業者の資金繰りが逼迫していることを踏まえ、すでに実施したセーフティネット保証に加えて、危機関連保証を発動すると発表しました。

    経済産業省が提示した3つの対策

     

    経済産業省は3月11日、次の3つを新型コロナウイルス感染症に係る中小企業者対策としてあげています。

    1 資金繰りの支援

    信用保証制度、融資制度の両面から事業者の資金繰りを支援。

    出典:経済産業省

    SN(セーフティネット)保証
    経営の安定に支障が生じている中小企業者を、一般保証(最大2.8億円)とは別枠で保証の対象とする支援制度。
    セーフティネット保証4号:幅広い業種で影響が生じている地域について、一般枠とは別枠 (最大2.8億円)で借入債務の100%を保証。※売上高が前年同月比▲20%以上減少等の場合
    セーフティネット保証5号:特に重大な影響が生じている業種について、一般枠とは別枠(最大2.8億円、4号と同枠)で借入債務の80%を保証。※売上高が前年同月比▲5%以上減少等の場合
    5号に係る認定の概要はこちらにてご確認ください。

    対象となる中小企業は、本社所在地の市区町村にて認定申請を行ったうえで、希望の金融機関、または最寄りの信用保証協会に認定書を持参し、保証付き融資を申し込みます。

    無利子・無担保融資

    日本政策金融公庫などが、新型コロナウイルス感染症による影響を受けて業況が悪化した事業者(事業性のあるフリーランスを含む)に対し、資枠別枠の制度を創設。信用力や担保に依らず一律金利とし、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げを実施しました。

    マル経(小規模事業者経営改善資金融資)融資の金利引き上げ

    新型コロナウイルス感染症の影響により売上が減少した小規模事業者の資金繰支援のため、別枠1,000万円の範囲内で当初3 年間、通常の貸付金利から0.9%引下げします。加えて、据置期 間を運転資金で3年以内、設備資金で4年以内に延長。

     

    このほかにも、衛生環境激変対策特別貸付などの金融支援策が盛り込まれています。また、金融機関に対しては、新型コロナウイルス感染症の影響により、事業者の資金繰りに重大 な支障が生じることがないよう、政府系金融機関などに対して計3回の要請が行われています。

    2 設備投資・販路開拓

    生産性革命推進事業(令和元年度補正予算3,600億円)におい て、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、サプライチェーンの毀 損等に対応するための設備投資や販路開拓、事業継続力強化に資 するテレワークツールの導入に取り組む事業者を優先的に支援。

    ①ものづくり・商業・サービス補助
    部品の調達が困難で自社で部品の内製化を図るために設備投資を行う・感染症の影響を受けている取引先から新たな部品供給要請を受けて生産ラインを新設(増強)する ・中国の自社工場が操業停止し国内に拠点を移転するといった場合は生産プロセス改善のための設備投資を支援。
    補助上限:原則1,000万円 補助率 :中小1/2 小規模2/3

    ②持続化補助
    小規模事業者の販路開拓等のための取組を支援するもの。
    対象 :小規模事業者 等 補助額:~50万円 補助率:2/3

    ③IT導入補助
    事業継続性確保の観点から、ITツール導入による業務効率化等を支援します。
    対象 :中小企業・小規模事業者 等 補助額:30~450万円 補助率:1/2

    3 経営環境の整備

    下請等中小企業に対しての配慮を求める「下請取引配慮要請」や、取引上のお困りごとについてヒアリングを行い、政府の対策に活用する「下請Gメンによる実態把握」などを実施。

    運送業は一時的に需要が拡大している

    日毎に経済への影響が大きくなり、海外からの輸送荷物の激減で稼働が緩んでいる運送会社が一部いる中、需要過多で人手が足りず、悲鳴をあげる運送業者の姿も。

    2月後半に、「国内のトイレットペーパーが不足する」というデマ情報が全国に流れ、ドラッグストアからコンビニにまで人が押し寄せ、一気に在庫が空っぽに。さらにはティッシュやウェットティッシュ、生理用品、飲料、食品にまでその影響がおよびます。いつも利用しているモノが“無い”という状況がさらに人々の不安を煽ってしまったようです。スーパーなどの小売店も在庫を早急に補充しようと発注数を大幅に拡大したことで、業種によっては一時的に発注が増えてトラックの手配が困難な状況になり、納品先の倉庫で荷受けが混乱し、トラックの長時間待機など各種問題が発生。そこへさらに追い打ちをかけたのが、休講やリモートワーク、イベントの自粛などにより、人々の移動が縮小されたことで需要が拡大した、ネットショッピングや宅配サービスの利用です。

    運送業界は輸出入の減少や消費活動の鈍化により、荷動きが悪化していると言われていましたが、消費者の買いだめやネットショップ利用の集中により、一時的に通常の倍のトラックが必要な状況が発生しています。しかし、ただでさえ長時間労働や慢性的な人手不足が課題となっている運送業。このような課題に対応しながら、現況を乗り切るには、①助成金による②ITツールの活用がキーポイントになります。

    リモートワークの対応も、運送業務の効率化も。今こそITツールを活用せよ

     

    経済産業省は、先ほど紹介した「新型コロナウイルス感染症に係る中小企業者対策」の中で、業務効率化などを支援するために各種補助金を交付するとしています。

    一時的にリモートワークを取り入れている企業であれば、遠隔でも商談や会議、ミーティングがスムーズに行えるオンライン会議システム、日々の業務で使用する機能をまとめたグループウェア、作業の進捗を共有するプロジェクト管理ツール、労務管理を行う勤怠管理システムなどがあると、ほとんどの業務が滞りなく進められます。また、物流、とくに運送業や車両を有する企業であれば、車両管理システムが有効です。

    業務効率化をあげつつ、事故防止にも寄与する「車両管理システム」


    業務効率を上げる
    リアルタイムで位置情報が把握できるので、迅速なサービス提供や配送の指示だし、遅延連絡もスムーズ。また、状況によっては近くにいる他車両がサポートに行くよう指示することで適切なフォローも可能に。
    事故を削減する
    業務量が一気に増えると、「急いで向かわなくては」と急操作が発生しやすくなったり、焦りによって安定した走行ができなくなったりします。急ハンドル・急加速・急減速が発生した箇所がわかれば、管理者としても適切なサポート、注意が行え、事故を未然に防ぐことができるのです。
    無駄な移動を削減
    自動的に走行時間、走行距離が集計されるので、利用状況をしっかり把握できます。不要な移動、非効率な移動をあぶり出すことができ、営業活動の最適化につなげます。適正な車両台数もわかるようになるので、場合によってはカーリースやカーシェアへの変更も。維持する台数が削減できれば、維持費と駐車場代がなくなり、大幅なコストカットにも繋がるのです。
    どんなに忙しくても労働環境は守る!
    昨今、働き方改革関連法案の施行により、長時間労働の是正や有給休暇取得の義務化など、限られた時間内での業務を求められています。車両管理システムであれば、走行データにより稼働時間の把握ができるため、乗務回数や乗務時間を見て、最適なリソース配分ができるようにします。

     

    効率を上げながら、無駄をなくす。一時的な繁忙期へ迅速に対応し、経済活動を維持するためにも、運送業界にとっては必要不可欠なツールの一つだと言えるでしょう。

     

  • 働き方改革を進めるため必要なこと【後編】働き方改革を車両管理システムで簡単に進める方法

    働き方改革を進めるため必要なこと【後編】働き方改革を車両管理システムで簡単に進める方法

    全3回にわたるシリーズを締めくくる後編では、働き方改革を推進するため理解すべき「法的知識」を整理した後、具体的な車両管理システムの実践方法について、詳しく段階的に解説します。

    理解すべき「働き方改革関連法の項目」と「優先事項」

     

    企業・組織が働き方改革を推進しながら成長するためには、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返す「PDCAサイクル」に則って、車両管理システムを運用する必要があります。このうち、現在抱えている働き方改革に関する課題をあぶりだし、改善目標を盛り込んだ車両管理計画を立てる段階がP(Plan)であり、そのために理解すべきなのが関連法の項目と優先事項です。

    漏らさずチェック!働き方改革関連法の項目

    まずは、働き方改革関連法施行によって企業が適合すべき項目と、それぞれの概要をまとめてみましたのでご覧ください。

    No. 適合すべき項目 概要 適用開始時期
    1 残業時間の「罰則付き上限規制」 残業時間の上限は原則月45時間かつ年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければ超えてはならない。

    臨時的な特別の事情で労使が合意する場合も、年720時間以内かつ複数月平均80時間以内、単月100時間未満(いずれも休日労働を含む)を超えてはならない。

    原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までとする。

    前出の時間外労働の上限を守らなかった場合、罰則として「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科される恐れがある。

    【大企業】2019年4月~

     

    【中小企業】2020年4月~

    2 5日間の「有給休暇取得の義務化」 年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者(管理監督者を含む)に対し、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることを義務付け。 【全企業】2019年4月~
    3 「勤務間インターバル制度」の努力義務 勤務終了後から次の勤務開始までに、一定時間以上のインターバルを設けることで、労働者の休息時間を確保と実質的長時間労働を抑制する。

    たとえば10時間・11時間など、具体的なリフレッシュタイムを設定し、労働者の疲労蓄積を防ぐべきとする「努力義務」。

    【全企業】2019年4月~
    4 「割増賃金率」の中小企業猶予措置廃止 中小企業には適用が猶予されていた、月の残業時間が60時間を超えた場合、賃金割増率を50%以上にしなければならないという制度が撤廃される。 【大企業】適用済

     

    【中小企業】2023年4月~

    5 「産業医」の機能を強化 1ヶ月あたりの「時間外&休日労働時間」が80時間を超えた、労働者の氏名や勤務内容など、産業医へ健康管理に必要と考えられる情報提供を義務化。

    提供情報に基づく労働者の面接指導や、事業者に対する労務環境改善勧告の実施など、産業医の権限・機能強化。

    【全企業】2019年4月~
    6 「同一労働・同一賃金の原則」の適用 正規雇用者と非正規雇用者(短時間・有期雇用・派遣など)との間で、基本給や賞与など不合理な待遇差を設けることを法的に禁止。 【大企業】2020年4月~

     

    【中小企業】2021年4月~

    7 「高度プロフェッショナル制度」の創設 年収1,075万円以上で、かつ専門知識を持った高度専門職従事者を対象に、労働時間規制や割増賃金支払いの対象外とする制度。(法的手続きの実施と本人の同意が前提条件) 【全企業】2019年4月~
    8 「3ヶ月のフレックスタイム制」が可能 フレックスタイム制の清算期間が最長1ヶ月から3ヵ月に延長されたことで、より流動的かつ柔軟な勤務体制を構築可能になる。 【全企業】2019年4月~

    この一覧表に沿って自社の服務規定および労働環境が全ての項目に適合しているか現状把握し、実現可能な改善目標を設定した「プランニング」からスタートしましょう。

    なお、働き方改革関連法の各項目における、「適用開始時期」は事業規模によって異なり、以下で示す条件に当てはまらない企業は「大企業」に定義されるため、より速やかな対応が必要になります。

    資本金の額、または出資金の総額

    小売業・サービス業 5,000万円以下
    卸売業 1億円以下
    その他 2億円以下

    常時使用する従業員数

    小売業・サービス業 50人以下
    卸売業 100人以下
    その他 300人以下

    「優先事項」に即した計画の立案が必要!

    将来的にはすべての項目に適合すべきですが、次の優先事項を達成することが働き方改革関連法の根幹になっています。2つの優先事項に対し、改善すべき課題を計画に盛り込むことで、初めてPDCAサイクルにおける「Do(実行)」の段階へ進むことができるのです。

    1. 時間外労働の削減・・・項目1・2・3・8への適合により、法律で定められた上限を超える時間外労働を徹底的に排除する。

    改善すべき課題:

    • リアルタイムな勤怠・動態管理による状況把握と適切な業務指示
    • 作業の自動化による工数削減
    • 人的・物的配分の最適化と業務内容の見直しによる生産性向上

    2. 労働時間把握義務・・・労働時間を適正かつ客観的に把握できる勤怠管理システムを導入し、同時に項目4~7へ適合することで公平な待遇体制の整備や、労務環境改善に取り組む。

    改善すべき課題:

    • 従業員・車両の稼働データ取得
    • デジタル・アナログ双方での管理体制構築
    • 取得データの分析によるサマリーレポート作成

    車両管理システムでわかること~何を・どう解決していくかを決定する~

     

    有益な情報を簡単に入手できることが車両管理システムの利点ですが、具体的にどんなことがわかるのか、浮き彫りとなる課題をどう解決するのか、ここでは実践におけるポイントを整理しましょう。

    優先事項1-1 GPSによる車両位置情報の入手とタスク管理

    車両管理システムの基本にして肝と言えるのが、車載GPSによる車両位置情報の機能です。この機能はオフィスのパソコンだけでなく、スマホやタブレットからいつでも確認・管理できるのもメリット。位置情報に加え、以下の関連タスクを一元管理できるシステムを導入すれば、大幅な業務効率化による時間外労働時間の削減も実現できるでしょう。

    • Who(誰が)・・・車両使用者・所属部署
    • When(いつ)・・・出発&到着予定時間・使用期間
    • Where(どこで)・・・目的地・移動ルート
    • Why(なぜ)・・・移動の必要性・優先度
    • What(何を)・・・車種・ナンバー・保険加入状況・同乗人数・積載貨物
    • How(どうする)・・・商品運搬・会議出席・商談

    優先事項1-2、運行日報の自動作成で負荷を軽減する

    現在リリースされている車両管理システムの中には、事前に移動先を登録することで、手間と時間がかかる運行日報を自動作成する機能を有しているサービスもあります。車両保有台数が多い企業の場合は、運行日報の自動作成機能を兼ねたシステムを導入するだけで、管理者の工数削減による業務効率化が図れるほか、アナログ作業で発生しやすい入力ミスやデータの不整合など、ヒューマンエラーを防ぐ効果も期待できます。

    優先事項1-3 データの見える化による業務改善・生産性向上

    車両管理システムでは車載デバイスから送信されたデータをもとに、車両の運行状況が管理画面のマップ上で「見える化」できるため、訪問先に長時間滞在していないか・予定外のルートを走行していないか・渋滞に巻き込まれていないかなど、ドライバーの動態管理や渋滞回避ルートの迅速な指示といった業務改善を実現することが可能です。また、前述した関連タスクを表やグラフによって視覚化することもできますので、

     

    • 車両使用責任の所在
    • 使用頻度の高い従業員への安全運転教育実施
    • 最適な運行スケジュール・ルートの設定
    • 車両導入方法(購入orリースorレンタカーorカーシェア)の決定
    • 稼働状況に基づく車両配置
    • 保険加入状況確認・契約内容の見直し
    • 燃料代の把握・エコドライブの徹底

    など、生産性向上のため重要な「How to(どうやって)」というポイントを盛り込んだ、効率の良い車両業務改善計画を立てることができます。

    優先事項2-1 走行距離・稼働時間データのリアルタイムな取得

    車両管理システムは、走行距離やルートとともに稼働時間をデータとして取得できるため、離れた場所で勤務する従業員の労働時間を、正確に把握・管理することも可能です。

    特に、定時・出勤日に車両が使用されていないか確認できるため、働き方改革関連法の中で最も重要な項目である、残業時間の「罰則付き上限規制」を遵守する上で、無くてはならないツールと言えるでしょう。

    優先事項2-2 自己申告と取得データの整合性UPに伴う車両管理体制の強化

    車両管理システムは、運行日報の自動作成やデータを可視化する非常に便利なツールですが、簡易な手書き日報の提出や従業員へのヒアリングなど、自己申告によるアナログ管理と取得データの整合性を管理者がチェックすることも大切です。その理由は、従業員が抱いている運転の意識と、組織が求める効率的かつ安全な車両管理の考え方には差異があるためです。デジタル管理とアナログ管理を併用し、労使双方のベクトルを揃え、全社を挙げて車両管理体制の強化に取り組みましょう。

    その際、「システムで常に監視されている」という意識を抱かせないよう、従業員の安全確保や労働環境改善が車両管理を強化する目的であることを、経営者や管理担当者はアピールすべきです。

    優先事項2-3 サマリーレポートによる進捗状況・効果の把握

    サマリーレポートとはデータを要約して、数値・表・グラフなどで資料化したものを言います。改善計画の進捗状況や労働時間短縮などの効果を把握するためには、こうしたレポートが必須。車両に関わるデータは膨大ですので、すべてのタスクを網羅したサマリーレポートを作成するには時間・労力・コストがかかりますが、車両管理システムの中には、車両別の稼働日数・稼働時間・稼働率、集計期間別の稼働状況、使用者(従業員)別の労働時間推移などを一目で確認できる、「サマリーレポート作成機能」が備わっているものも多いため、導入すれば「PDCAサイクル」の「Check(評価)・Action(改善)」へスムーズに移行することができます。

    車両管理によって働き方改革を実現するには「PDCAサイクル」を回し続けるべし

     

    自社に必要な機能を備えた車両管理システムを導入し、ここまでに解説してきたポイント抑えてPDCAサイクルを構築できたとしても、それで働き方改革への備えが万全になったとは言えません。なぜなら、少子化に伴う人材不足の悪化など企業を取り巻く環境は日々目まぐるしく変化しているほか、「働き方改革関連法」は

    1. 労働基準法
    2. 労働安全衛生法
    3. 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
    4. じん肺法
    5. 雇用対策法
    6. 労働契約法
    7. 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
    8. 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

    といった8法を改正する法律の通称に過ぎず、今後微調整や追加改正される効能性が高いからです。また、道路交通法や道路運送車両法といった関連性が強い法律の改正もあり得ますので、PDCAサイクルを回し続け、車両管理体制を進化させ続けていきましょう。各メーカーは、環境変化や法改正に適合する車両管理システムをリリースしたり、既存システムのアップデートを実施したりしていますので、経営者や管理担当者は最新情報をチェックし、アップデートができるようにしてください。

    まとめ

     

    今回は、働き方改革を車両管理システムで進める方法について解説しましたが、安全運転意識の高まりによって交通事故が減れば従業員の安全確保だけではなく、企業としての社会的貢献度が向上するメリットも期待できます。働き方改革と生産性向上の両立は大変ですが、実現すれば企業が得られる恩恵は多岐にわたりますから、スムーズにかつスピーディーな業務改善を可能とする、車両管理システムの導入を検討してください。

  • 働き方改革を進めるため必要なこと【中編】~働き方改革を車両管理で推進しよう~

    働き方改革を進めるため必要なこと【中編】~働き方改革を車両管理で推進しよう~

    働き方改革を推進するにあたり、多くの企業がフレックス制やリモートワークなど「時間・場所」の柔軟性を向上する施策に取り組んでいます。しかし、さまざまな施策を実行しても、前編で触れたようにワークライフバランス(WLB)の向上に繋がっていないのが現状です。フレックスタイム制やリモートワークは、従業員に「働き方選択の余地」を与える有効な手段ですが、実施によって発生するメリットに捉われ過ぎデメリット対策を疎かにすると、単なる「絵に描いた餅」になる可能性があります。

    中編では、フレックスタイム制・リモートワークのメリットやデメリットを解説しつつ、デメリット対策として導入すべき「システム」を紹介します。

    働き方改革の一つ。個々に併せたフレックスタイム制・リモートワークとは

     

    フレックスタイム制とは、1987年の労働基準法改正に伴い翌年4月から正式導入が始まった、「変動労働時間制」の一種であり、2の範囲内で「働く時間を自由化」する施策を指します。

     

    1. コアタイム・・・必ず勤務(出勤)しなくてはならない時間帯
    2. フレキシブルタイム・・・勤務(出勤)を労働者が自由に選択できる時間帯

    一方、リモートワークとはITツールの活用よる自宅・レンタルオフィスなどでの遠隔勤務、あるいは社用車を貸与した従業員に営業・取引先への直行や、勤務後の直帰を許可し「働く場所を自由化」する施策です。また、物流・運送業のドライバーや渉外担当者などは、そもそも事業所に滞在する時間が短く、「勤務時間=車両での移動」とされるケースも多いため、移動範囲がある程度決まっているとはいえ、広義で言えばリモートワークに位置付けて対策を講じるべきでしょう。

    フレックスタイム制のメリットとデメリット対策

    フレックスタイム制を導入すれば、柔軟な労働時間配分が可能となるため、労使ともに多くのメリットを期待できます。

    フレックスタイム制のメリット

    • 朝夕の通勤ラッシュを避けることによる通勤・帰宅時間のカット
    • 効率的な時間配分による残業の軽減
    • 勤務自由度・労務環境向上による優秀な人材獲得・定着
    • 夏場の節電対策&残業時間短縮による人件費の節約

    しかし、フレックスタイム制は自主性によって成否が大きく左右する施策であるため、自己管理が苦手で時間にルーズな傾向にある従業員へ適用すると、かえって業務効率が悪化する恐れがあります。また、仕事に対する意識が高く自己管理能力の優れた従業員ばかりだったとしても、

    1. 社内外双方のコミュニケーション能力低下
    2. 非効率的な配分による労働時間の上昇
    3. 早朝・深夜勤務の増加による労働環境悪化
    4. 勤怠管理&労使協定締結プロセスの複雑化

    といったデメリットが発生する可能性があり、厚生労働省が2017年に発表した「就労条件総合調査」よれば、フレックスタイム制の導入率は調査対象全体でわずか「7.9%」程度でした。従業員1,000人以上の大企業では「14%」導入されていますが、30~99人の中小事業所の場合は「2.4%」に留まっていますので、そもそも導入自体を検討していない、もしくは実施したが弊害の方が大きく継続を断念するケースがほとんどだと言えるでしょう。

    フレックスタイム制を働き方改革の一環として正しく機能させるためには、以下のようなデメリット対策を、すべて網羅しなくてはなりません。

    • 労働時間に対する意識向上を目的とした教育・啓もう活動の徹底
    • 業務に支障をきたさないコアタイム・フレキシブルタイムの設定
    • 勤怠管理システムによる総労働時間の把握と適切な調整
    • 制度内容・適用範囲の明確化と細分化
    • 就業規則への記載および労使協定の締結

    所要時間やコストを考えると、全社的にフレックスタイム制を導入するのは現実的ではありませんし、一部の部署だけを適用範囲にすると他の部署から不満が出る可能性も高いほか、当然ながら法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えれば残業が発生します。

    ソフトバンクや味の素など、一部の巨大企業が実施しているコアタイムなしの「スーパー・フレックスタイム制」は中小企業にとってハードルが高く、出・退勤時間(※)を30分~1時間の範囲で自由にする程度の施策の方が取り入れやすいでしょう。

    ※ただし、出勤・退勤いずれかに限定したフレックスタイム制の導入は、労基法で認められていないため注意が必要です。

    リモートワークのメリットとデメリット対策

    ITツールが普及・ネット環境も充実してきた現在、参加者がオフィスに集合する時間をカット可能な「Web会議」を実施している企業が大幅に増えました。また、完全在宅労働で生計を立てる「フリーランス」も、年々、増加傾向にあります。

    テレワーク(Tele=離れた所・Work=働く)とも呼ばれるリモートワークのメリットは、次のように数多く挙げられます。

    • カットした移動時間を業務回すことによる生産性
    • 出産後の職場復帰支援の強化&育児・介護を両立した業務継続
    • 出勤人員・回数の減少による備品費・光熱費・通勤手当などのコスト節約
    • 働く場所の自由化に伴うWLBの改善
    • コミュニケーションの見える化によるハラスメント軽減
    • 出勤範囲にこだわらない人材募集・獲得

    「働く場所の自由化」が主たる目的のリモートワークですが、2016年に行なわれた総務省統計局の調査によると、移動手段をすべて含めた通勤時間の全国平均は「片道約40分」に及ぶのだとか。たとえば、週5日出勤のうち2日を在宅ワークに移行するだけで、「約2,7時間」を業務、もしくは余暇や趣味に充てることができるため、デメリットの多いフレックスタイム制の「進化版」として、企業規模に関わらず導入・運用可能な働き方改革の施策と言えるでしょう。

    しかし、業種によってはリモートワーク導入が困難である場合も多く、次の業種に関しては適合が難しくなります。

     

    • 業務による成果物が「現物」である・・・農林水産業、建設業、製造業の生産ラインなど。
    • 固定された場所での業務自体が「商品・サービス」である・・・小売業、物流・運送業、飲食業、サービス業全般、教育・介護・医療分野など。

    また、どんな業種であっても経理・総務・マーケテイング・企画部門については、一部業務をリモート化することも可能ですが、かえって労働時間超過などの環境悪化や、生産性低下につながりかねないデメリットも存在します。

    1. 勤務とプライベートの線引きが困難
    2. 成果に対する評価基準が曖昧
    3. 生活習慣の乱れによる健康被害発生
    4. 自然災害など緊急事態での初期対応が遅れる
    5. コミュニケーション欠如によるチームワークの低下
    6. プロジェクトの進捗状況が不明瞭

    1・2・3に関しては、リモートワーカーごとに異なる労働条件を細かく設定することができるため、「いつ・誰が・どこで・どんな業務」を行っているか、管理者が一目でリアルタイムにチェックできる「クラウド型勤怠管理システム」を導入し、WLB向上を図りましょう。加えて、4は緊急時の指示系統・連絡手段の確立や地域ごとの非難場所を把握すること、5・6は定期的なアナログ会議・会合の開催、WEB会議やメール交換による情報の共有化に努めれば、デメリットを回避することも可能です。

    問題は時間によって、勤務場所が変化する物流・運送業者や、営業マンなど渉外部門の勤怠管理が困難なこと。見えないぶん、どのように対応すべきかわからないという管理者は、最適な車両管理システムを選択・活用すれば、労使双方に大きなメリットが発生し同時にデメリットを打破することも可能です。

    車両管理システムなら位置情報がわかる

    車両管理とは、企業・組織が所有する車両について、

    • 車種・ナンバー・保有台数
    • 使用を許可している従業員・部署の範囲
    • 導入スタイル(購入・リース・レンタカー・シェアリング)
    • 車検を始めとするメンテナンス
    • 自動車保険加入状況・事故履歴

    といった基本情報を把握し、安全かつ適切に運用できるようマネジメントする業務です。

    多岐にわたる情報をIT活用で一元化することにより、車両管理業務の効率化できるサービスが車両管理システムであり、以下で示す「3つのメリット」が期待されます。

    その1 位置情報・動態把握による適切な勤怠管理・評価体制の確立

    現在、多くのIT関連企業が車両管理システムをリリースしており、そのほとんどがGPSによる車両位置情報の取得と、通信デバイスを経由したリアルタイムな動態管理機能、運行日報の自動作成機能を有しています。

    社用車がどこに止まっているのか、効率的なルートで運用がなされているのかなど、離れて勤務する従業員の行動監視が可能であるため、正確な勤怠管理の材料として活用することができます。また、エコドライブの徹底や安全運転を日頃から心掛けている従業員に対して企業が正当に評価する姿勢をアピールすれば、ドライバーのモチベーションUPによる生産性向上も期待できるでしょう。

    その2 車両管理担当者・部署の工数減少&コスト削減

    車両管理者は車両・コスト・ドライバーなど、多岐にわたる関連情報を漏らすことなく整理し、最適かつ安全な車両運用計画を立てなくてはなりません。そのため、保有車両が増えれば増えるほど、業務韓遂までに長い時間と多大な労力を要します。その点、車両管理システムを導入すれば、あらゆる情報を簡単に検索・確認できるため、

    • 配車・運行スケジュールの設計
    • 期限満了に伴う車検・保険の更新
    • 購入車両の減価償却など財務管理
    • リース車の契約満了に伴う入替申請
    • レンタカー・シェアカーの予約

    など、業務工数を大幅に減らすことが可能なことから、担当者・部署の働き方改革をフォローできるのです。また、コスト面で企業に与えるメリットも多く、

    • 稼働状況の緻密な把握・・・適切な保有台数の調整による維持コスト削減。
    • 運行日報作成の自動化・・・帰社後の作成時間短縮=残業代のカット。
    • エコドライブ&安全運転意識の向上・・・燃料代の節約や、事故に伴う車両修理費・補償発生、保険料値上がりなど。

    サービスの内容や車両に取り付けるデバイスのタイプによって導入コストはまちまちですが、事業規模にマッチしたシステムをチョイスすれば、十分な費用対効果を期待できるでしょう。

    その3 安全運転意識の向上・教育徹底による交通事故の予防

    車両管理システムには、スマホなどの通信モバイルと連動することで危険運転(急ブレーキ・急発進・急ハンドル)を検知し、発生した回数や場所をドライバー・管理者が随時確認できる、「安全運転診断機能」を有しているタイプも数多くリリースされています。ドライバーは自分の運転を振り返ることで安全運転への意識を高めることができますし、管理者は入手した危険運転のデータを、個人ごとの運転特性に合わせた安全教育に生かすことで、会社全体の安全運転意識向上と事故防止を図ることができます。

    まとめ

    フレックスタイムは、企業それぞれの業態・規模に合った適用範囲の設定と、従来の勤怠管理を実施すればある程度の効果を期待できますが、リモートワークはそれが難しいため、「車両管理システム」が威力を発揮します。後編では、多くの企業が実際に導入して働き方改革を推進している車両管理システムの紹介と具体的な運用方法について、詳しく解説しましょう。

  • 働き方改革を行うため必要なこと –人材マネジメントの目的とは【前編】

    働き方改革を行うため必要なこと –人材マネジメントの目的とは【前編】

    労働者が個々の事情に応じた多様かつ柔軟な働き方を自分で選択できるようにする「働き方改革」は、2019年4月1日に関連法案の一部が施行されたことで、大企業だけでなく中小企業にとっても、早急に取り組むべき経営課題だと認知され始めました。

    しかし、働き方改革の入り口に過ぎない労働時間短縮に終始した結果、生産性低下による営業利益の悪化や従業員の収入減など、新たな課題に直面する企業が増えているようです。そこで今回は、全3回にわたるシリーズ第一弾として、曲解されていることも多い働き方改革の「あるべき形」を明らかにしたのち、同改革を推進するうえで不可欠な人材マネジメントの目的と必要性について解説します。

    働き方改革の意識が違う方向へ向かっている?~日本企業が越えるべきハードル~

     

    なぜ、働き方改革を推進しているにもかかわらず、新たな課題が噴出しているのでしょうか。その理由は、国内企業の多くが働き方改革の「本質」を曲解して単なる手段を目的化し、次のような整備の導入で満足している現状があるからです。

    • 有給取得率の向上
    • 残業カット・禁止
    • フレックスタイム・サマータイム導入
    • 産休・育休制度の拡充
    • リモートワークの許可・奨励

    雇用形態・部署・地位に関わらず単純に休日出勤を禁止したり、20時になったらパソコンを強制シャットアウトしたりするなどやや強制的な取り組みだけではいつになっても本当の働き方改革が実現困難です。

    事実、経済協力開発機構(OECD)が公表した2016年の「国別労働時間データ」によれば、ドイツの年間労働時間は日本より約350時間少なく、1日の労働時間を8時間に設定すると小・中学生の夏休みに相当する日数分、ドイツの労働者の方が休んでいる計算になります。ドイツ政府の長時間労働を厳しく取り締まる政策も影響していますが、何より重要なのは同国の民間企業がこぞって、

    1. 売上高だけでなく「収益力」を強く意識
    2. 短時間で最大の成果を上げる社員を「高評価」
    3. 成果が出ないのに残業する社員を「低評価」

    という「3ポイント」を重視した取り組みを平準化させることにとって、世界有数の工業大国であり続けていることです。とはいえ、この3ポイントをおさえた取り組みを打ち出せば良いかと言うと、そう簡単なものではないのです。長年根付いてきた終身雇用制と年功序列の影響などから、働き方改革を実現するには超えるべき高いハードルが存在します。

    ハードルその1 手段の目的化による生産性の低下

    通り一辺倒の手段に過ぎなくとも、比較的容易に労働時間は短縮できるため、多くの企業が率先して取り組む労働時間の短縮化。それによって「目的を果たした」と感じられることが多いのですが、生産力向上を伴わない施策では企業の収益力は低下します。

    このままではいけないと気付いた企業の中には、時短を進めつつ業務効率化による生産性維持・向上へシフトを始めていますが、業種・規模・財務状況など様々な要素にマッチした独自の施策を打ち出さなければ、時短と生産性向上の両立は困難です。

    まずは、生産性を保つためにどうしても人員が必要なのか、はたまた人件費削減分を新システム導入に回し効率化を図るのかなど、部署ごとの稼働状況や重要性に併せて、人・モノ・資金の配分を最適化することから始めるべきだと言えるでしょう。

    ハードルその2 労働時間短縮に対する評価体制の構築

    年俸制やインセンティブ性が浸透している海外と異なり、同業種であれば「労働時間の長さ=月収」につながりやすい国内企業の場合、時短の施策だけでは残業日数・時間短縮による収入低下で従業員のモチベーションが損なわれる可能性が高くなります。

    このハードルを越えるには、従業員自身が時間当たりの生産性を高めるスキルを形成しなくてはなりません。国や企業はスキル形成をサポートする補助金制度などを拡充し、スキル習得者の就職・転職斡旋や賃金・キャリアアップなど、正当な評価体制を構築すべきです。

    ハードルその3 改革を進めるチェレンジ精神の欠如

    改革を進めるには、今までの組織やシステムを見直して再構築する「チャレンジ精神」が不可欠です。日本は諸外国に比べて良くも悪くも経済が長く安定してきたため、リスクを顧みずに改革を巻き起こそうとする気概が残念ながら乏しい傾向にあります。

    それこそが働き方改革の手段が目的化している大きな原因の1つであり、もっとも困難なハードルと言えるでしょう。本格的に働き方改革を推進するには、会社全体に漂う「現状維持でOK」という古い意識を改革すべきですが、そのためには組織構造の抜本的な見直しが必要です。働き方改革を進めている企業は規模に応じ、担当者や推進室を任命・設置しているものの、はそれぞれの配属・配置にあり国内企業においては、概ね以下の4つのパターンに当てはまります。

    1. CEO(最高経営責任者)直下型
    2. CIO(最高情報責任者)直属型
    3. CSO(最高戦略責任者)直属型
    4. CHRO(最高人事責任者)直属型

     

    このうち、「1」に関しては経営トップ直下なので推進力はありますが、現場からすれば「最近いろいろ上から言われるけど関係ないし…」となりかねず、意識改革が思ったように進まない可能性も。「2」はすすんでITツールを導入することに終始した結果、見えない成果の中で投資ばかりが無駄に増えることも考えられます。「3」は戦略を立てることが本職なので計画立案まではうまくいきますが、トップから離れすぎているため運用されずじまい…なんて結末もあり得るでしょう。「4」に至っては、「残業を減らそう!労働環境を改善しよう!」などのスローガンだけが先走ってしまう、つまり働き方改革が進まない最大懸念材料である「手段の目的化」が、一層深刻になるという最悪の結果を生みかねません。

     

    では、どのような組織構造を目指すべきでしょうか。

    まず「1」のように経営トップ直下へ推進室を置き、働き方改革が手段ではなく「全社を挙げての一大プロジェクト」であることを、トップダウン方式で従業員に強くアピールしましょう。そのうえで、IT・人事部門の意見を加味したプランを戦略部門が練り上げ、各部署ごとに配置した「働き方改革エージェント」へ落とし込んで運用する「全社一貫型スタイル」こそが理想です。

    事実、国内有数の外資系コンピューター関連企業である日本IBMは、働き方改革を時短といった手段ではなく「イノベーション(革新)」と捉え、全社一貫型スタイルの導入を社内外問わず広く提唱しています。

    たとえば、2018年に移転した新大阪事業所は社員の新しい働き方を推進するためデザイン、柔軟なチーム編成やコミュニケーションを促進するオフィス環境が整備されており、壁全体がホワイトボードになっていて自由にアイデアを書き込めるようになっています。コラボ・スペースはオープンで、壁に囲まれた会議室での打ち合わせではなく、様々な職種・職位の社員からアジャイルに、貴重な意見やアドバイスを得られるようにするなど、「働き方革新」を進める工夫がちりばめられているのです。

    働き方・働く場所に柔軟性を持たせるだけでは「不十分」?

     

    少々話が前後しますが、働き方改革の進捗度を判断する材料としては「施策の実行により従業員のワーク・ライフ・バランス(以下「WLB」)が向上したか」を指標として考えましょう。

    多くの企業では、時短やフレックスタイム、リモートワークなどの実施で働き方・働く場所(ワーク)に柔軟性を持たせさえすれば、子育て・一家団欒・趣味(ライフ)に避ける時間的・心理的余裕が確保できWLBが向上するというのが通説になっていました。しかし、第一生命(株)が実施した調査によれば、業務内容・勤務時間・勤務場所のいずれについても、柔軟性が高いことが WLB向上に繋がっていないという、通説に反する研究・分析結果が明らかにされています。

     

    出典:第一生命:「柔軟な働き方とワーク・ライフ・バランスの関係の分析結果」

    国内の就労者、とくに正社員の労働時間は長く、果たすべき職務も多岐にわたるため、やみくもに柔軟な働き方だけが拡充されてしまうと「時短やWLB向上が果たせないのは個人のせいだ」と責任転嫁されてしまう危険性まであります。

    従業員の生活安定が義務である企業としては、責任転嫁をせず、人的・物的の最適配分によるさらなる労働時間短縮や、部署の業務・稼働状況に即した手厚いライフ・サポート体制を構築すべきだといえます。そこで大きな威力を発揮するのが勤怠管理です。

    勤怠管理からわかること~重要性と本来の役割~

    勤怠管理とは、タイムカードやICカードといった勤怠管理ツールによって、始業から終業までの時刻や時間外労働・休日出勤、有給休暇の消化状況などを個別に把握し、適切な賃金・時間超過分の支払い及び、人事考査の判断材料とするマネジメント業務を指します。

    労働基準法第108条において次のように定められている勤怠管理は、企業に与えられた重要な責務であり、過剰労働による健康被害や不安・プレッシャーによるメンタル上の問題から従業員を守ることが重要です。

    「使用者は事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省命令で定める事項を、賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。」

    働き方改革関連法の施行に併せて労基法が約70年ぶりに大幅に改正したことで、これまで実質青天井だった時間外労働が「罰則付きで上限規定」されたことが災いし、「残業できないから自宅に持ち帰り仕事をする」なんて、本末転倒な弊害も発生しています。働き方・働く場所の柔軟性がWLB向上に直結しないのはそこに原因があり、まさに責任転嫁の最たるもの。企業は勤怠管理の重要性と本来の役割を再認識、IT活用によってリモートワークまで網羅した、働き方改革時代に即した新しい勤怠管理システムを構築すべきでしょう。

    ITツールを活用した勤怠管理システムは、既に数多くリリースされていますが、

     より綿密な稼働状況把握できる
     勤怠データの見える化・共有が容易になる
     データ分析による人的・物的配分の最適化が可能
     より細やかな社員のヘルスケアに取り組める
     働き方改革関連法に対応済

    などといった多岐にわたる人事管理面での恩恵を企業にもたらすほか、「法順守&企業イメージUP」というメリットも期待できるため、費用対効果を考慮すれば企業規模に応じて導入を検討してください。

    まとめ

    前編では働き方改革の本質とは何か、そして勤怠管理の重要性と本来の役割について解説しましたが、勤怠管理の英訳が「Attendance(出・欠勤)Management」であることからわかるように、海外では「欠勤=怠けている」という概念すら存在しません。

    「精勤こそ善」とする日本古来の美学を全否定するわけではありませんが、働き方改革の本質を見極め、一刻も早く「手段の目的化」から脱却しなければ、世界の潮流からどんどん取り残されてしまうでしょう。まずは、余暇や家族との時間をしっかり確保することで、従業員の時間的・心理的WLBを整えつつ、効率の良く仕事ができる環境を整備して生産性もキープする。これが働き方改革推進の「第一歩」ではないでしょうか。

  • AI搭載レコーダーは危険運転を抑制するソリューション〜Nautoが進める安全運転改革

    AI搭載レコーダーは危険運転を抑制するソリューション〜Nautoが進める安全運転改革

    「少しぐらいスマホを見ても大丈夫…」「自分は危険な運転はしていないだろう」。

    近年、あおり運転やながら運転による事故が後を絶ちませんが、交通事故はこのようなちょっとした意識の持ち方や不注意によって引き起こされるものです。普段から車両を利用する業種であれば、連日、大きなリスクを抱えていることになりますが、企業としてはどのような安全運転対策ができるでしょうか。

    今回はNauto Japanの井田さまをお招きし、ドラレコ本来の役割やAI搭載レコーダーの効果について、ドラレコの見方がガラリと変わるようなお話を伺いました。

    インタビュイー
    Nauto Japan 合同会社 代表
    井田 哲郎さま

    スピーディな動きでイノベーションを起こしたい——大企業からスタートアップへの転身

    井田さんのご経歴とNauto Japanについて教えてください。

    2006年、新卒でトヨタ自動車に入社し、レクサスのブランドをブラジルで立ち上げたり、新興国の戦略車種を決めてローンチしたり、実際に1年ほど駐在して事業企画をしたり、中南米の海外事業を担当していました。しかし、自動車×テクノロジーによる新たな時代への予兆を感じ、当時、テクノロジーの中心地として注目されていたシリコンバレーに心が傾き、2014年に退職を決意。退職後はアメリカの大学でMBAを取得し、2016年に中古車マーケットプレイスを展開するBeepiに参画しました。オンラインで査定から売買までアプリで完結できるサービスを展開するBeepiでは、ほぼゼロの段階から事業とオペレーションの立ち上げを担いますが…。

    同社はユニコーン企業として200億円もの資金を集めましたが、残念ながら事業計画がうまくいかずに倒産へ。ここでの経験から、今後もスタートアップ界でスピード感を持ったままイノベーションを起こし続けていきたいと思い、2017年2月にNautoに入社しました。日本のマーケットはまだまだ大きなポテンシャルを秘めているということで、2017年の6月にNauto Japan立ち上げのために帰国します。

    Nautoはドラレコの会社だと思われがちですが、コンピュータービジョンとAIの技術がコアとする企業です。これらの技術を利用して、安全なトランスポーテーションを確立するというミッションのもと私たちは活動しています。提供しているのは人工知能を搭載したドライブレコーダーですが、自動運転に向けて開発している技術を今日のドライバーの安全を守るために投入しているのです。

    ドラレコの企業という印象がございますが、技術を活かしてドラレコの以外のサービスも提供していきたいということでしょうか。

    今は便宜上、ドラレコと言っていますが、Nautoでは米国でも安全運転支援プラットフォームという認識で提供しています。アルゴリズムをドラレコに載せることで、そこから得られたデータや知見をウェブアプリケーションでドライバーや運行管理者にフィードバックしてご活用いただくプラットフォーム。それが私たちの製品です。

    Nautoのドラレコは今までのドラレコと何がちがう?

    一般的なドライブレコーダーとの違いを教えてください。

    ドライブレコーダーは記録するためのデバイスですが、Nautoは危険リスクをリアルタイムでモニタリングして高精度に事故を予防する、今までにはないドラレコです。

    Nautoの特徴的な機能は2つ。まずは、AIが車内外の映像を瞬時に分析し、ドライバーに警告する「リアルタイム警告」。これは非常に正確なアルゴリズムによって、危険挙動・脇見運転・あおり運転を検知し、リアルタイムで警告を出す機能です。もう少しわかりやすく説明すると、ここ最近、高級車に搭載されている安全運転支援機能がどの車両にも後付けできるというイメージでしょうか。

    もう1つが、管理者向けの「レポート機能」。管理画面上に自動で危険運転動画がリスト化できるうえ、顔認識機能でドライバーと車両の運行履歴を紐づけることができますので、より的確な安全運転指導を行うことができるのです。

    また、弊社はAIが映像解析した8億kmほどの走行データを所有しています。そこから得られた映像をもとにさまざまなラベル付けをしていますので、必要に応じて高精度のアルゴリズムで分析し、OTA(Over The Air)でアップデートすることで、注力したい危険挙動の新たな検出ができるようになっています。

    これは直近の例ですが、2019年11月から車内での喫煙を検出し、運行管理者様に通知できるようにしました。喫煙自体をOKとする企業もありますが、カーシェアやレンタカーの車内では基本的に喫煙はNG。万が一タバコの匂いが残っていたり、タバコの灰を残したりしてしまうと、損害にもつながりますから、多くの企業から喫煙検知の要望をいただいておりました。その機能を実現するべく、ビックデータから喫煙のラベルを付けて蓄積し、喫煙を検出できるようアップデート。iPhoneのように起きたら新しい機能がアップデートされているように、お客様のほうで対応いただくことはありませんので、手間暇もかかりません。

    喫煙を検出したいというニーズはグローバルでも多い?

    多いですね。日本でも海外でも同じような研究結果があるんですが、喫煙者のほうが事故を起こす確率が高いのです。東北大学の研究では、タバコを1日20本以上吸う人は死亡事故を起こす確率が非喫煙者よりも1.5倍高いことが証明されています。これは、タバコを取り出して火をつける、灰を落とすなど、一連の動作の中で脇見運転が増えることが原因。そのため、大手運送会社や営業車では喫煙が禁止されています。

    AIの目で、ドライバーを見守る

    AIと聞くと、人工的なロボットが車に同乗するイメージを想像してしまいます。飛び出しなどの危険予測やドライバーの健康チェックをサポートしてくれたりするのでしょうか?

    究極的に目指しているのはそうした世界です。パーソナライズされた安全の声かけ、プロアクティブな声かけは、社会としても求められています。現時点では、事故に直結しやすい、脇見運転とあおり運転に注力し、人の目で見ているようなイメージでAIが正確に判定して警告を出すようにしています。パーソナライズして声をかける段階にはまだ至りませんが、危険に直結する挙動は人と同じような精度で制御していければと。

    また、AIのドラレコと聞くと、行動を監視されているような気がしてしまうのですが…。

    カメラがあるので監視されていると思う方もいらっしゃるようですが、そこは視点を変えて活用いただくよう、ご案内しています。現存のドラレコは、SDカードを挿入してそこに走行時の映像を収めるものが主流です。これはつまり、すべての運転をくまなく確認できるため、ドライバーのプライバシーがゼロに近いといっても過言ではありません。Nautoのシステムは、AIが危険なシーンだけを判定して抜き出しますので、安全運転であれば何もアップロードされませんし、残ることもありませんので、ドライバーのプライバシーをしっかり守ることができるのです。

    実は、統計を取ると全走行に対してナウトがアップロードする動画は0.1%程度。逆にいうと99.9%が安全運転だということです。弊社のデバイスはSDカードが抜き出せない設計になっていて、見ることができるのは危険挙動のみですから、安全を守ることに特化したポジティブな監視だと捉えていただければと。

    わき見運転は54%減!AI搭載ドラレコの実力

    現在、どのような企業様にご利用いただいていますか。

    車を持っている法人企業は全業種がお客様です。営業車、軽バン、大型トラック、ほぼすべての車種に対応していますので、幅広くご利用いただいています。全体で言うと、安全運転に対して意識が高い、事故が多い、運ぶモノや人への付加価値が高い業界が多いかもしれません。物流はもちろん、付加価値の高い営業をされている企業様も事故が起きた時のリスクが高いため、積極的に導入されています。

    導入後の効果として、お教えいただける事例はありますか。

    導入企業の全体的な統計を取ると、導入後6カ月後にわき見運転が54%減っていることがわかりました。各企業で目的や利用方法など異なりますので、事故削減についてはバラつきがありますが、35%〜70%が導入後の効果として現れています。例えば、フィリップス・ジャパン様では、導入したのちに、衝突事故が6〜7割ほど減少したという実績がでています。

    現在、国内外を含めて何社に導入されているのでしょうか。

    グローバルでは525社以上にご利用いただいております。

    ながら運転・あおり運転をなくすには、意識改革から

    日本での今後の事業展開や展望についてお伺いできますか。

    今はまだ、日本の全物流会社様がNautoを認知している訳ではありませんので、今後は「安全といえばNauto」と想起いただけるよう、安全とNautoが直結するようになりたいですね。そのためにも、まずは日本で展開している法人向けのサービスを加速させていきたいと思っています。先々の展開としては、量産車に弊社のテクノロジーを搭載いただいたり、他社に採用いただいたりということも考えています。

    Nautoでは、オリックス自動車様と共に昨年12月より「STOP! ながら運転・あおり運転キャンペーン」を実施しています(3月31日まで)。本キャンペーンにエントリーいただいた法人企業様には、ながら運転・あおり運転の危険性と安全運転管理のノウハウをまとめたデジタルブック、注意喚起用のステッカーを100枚まで無料で提供しています。昨年の12月からながら運転が厳罰化され、違反点数が3点に引き上げられたことで、免停になるリスクが一気に高まりました。

    国会でも、あおり運転の罰則化が真剣に議論されていますので、車両を保有する企業は各社、戦々恐々としています。Nautoのデバイスでは、ながら運転・あおり運転を注意する機能がありますので、それを強みとしてキャンペーンを実施することになりました。

    このキャンペーンのゴールを教えてください。

    社会的にも「ながら運転・あおり運転は絶対にいけないものだ」と言われていますが、それを抑制するソリューションは今までなかったんです。政府も罰則を強化しましたが、具体的な解決策は出ていません。このままでは意識を変えることはできないと感じ、ドライバーの意識を高めることをゴールに設定しました。社会全体に必要なことは意識変革です。このキャンペーンで意識を変え、当たり前のように安全運転に注意を払うようになってほしい。そのうえで、弊社の製品に興味を持っていただけるようでしたら、ご案内させていただきたいなと思っています。

    スマートドライブとどのようなコラボレーションが可能でしょうか?

    スマートドライブも法人向けにテレマティクスやモビリティプラットフォームを提供されていますが、お客様の中にはドラレコが必要とされる方もいらっしゃるはず。その点に関しては協業できる部分は数多くありますから、引き続き連携していきましょう。

    最後にひとことお願いします。

    ドラレコの本質にあるのは安全運転を推進すること。しかし、管理しづらかったり、SDカードで取得したすべての運転状況を読み解くことができなかったり、安全運転を推進する運行管理者の業務をより複雑にしてしまっているのが現状です。私たちはAIを活用して、運行管理者の業務をもっとスムーズかつ簡単にできるプラットフォームを提供していきたいと思っています。

    興味のある方はぜひ、オンラインでデモも行っていますのでご連絡ください。

     

  • 高齢者に安全運転技能検査を検討?求められる安全運転とは

    高齢者に安全運転技能検査を検討?求められる安全運転とは

    警視庁の有識者会議が昨年12月発表した中間報告において、一部の高齢ドライバーを対象に合格するまで免許の更新を認めない制度を盛り込んだ、「安全運転技能検査」の実施を検討していることがわかりました。今回は、免許更新のハードルを上げる動きから、検討されている安全運転技能検査の概要・目的を解説し、施行に際し自動車関連企業ができることを考察します。

    事故の続発によって注目されている高齢者の危険運転

     

    この項では、近年続発が懸念されている高齢ドライバーの危険運転を起因とした、痛ましい死亡事故をいくつかご紹介。そのうえで、なぜ現行の制度では危険運転が一向に減らないのか、問題点を指摘します。

    東京都池袋・暴走プリウスによる母娘死亡事故

    2019年4月、東京池袋で暴走したプリウスが歩行者などを次々にはね、自転車に乗っていた松永真菜さん(31)と長女の莉子ちゃん(3)が亡くなり、その他9人に重軽傷を負わせるという、もはや事件ともいえるべき大規模な交通事故が発生しました。

    調査の結果、車には不具合が認められず、またドライブレコーダーなどの分析から、「ブレーキとアクセルの踏み間違い」が事故原因とみられており、運転していた飯塚幸三被告(88)は先日2月6日、過失運転致死傷の罪で在宅起訴されました。事故後の報道で流れた、杖をつきよたよたと歩く姿や、発生から約10ヶ月を要した起訴の遅れ、高齢から執行猶予が付くのではないかという予測が広がると、飯塚被告はもちろん往査関係者に対する非難が紛糾。「年齢に関わらず免許は与えられるのに、高齢というだけで刑が軽くなるのはおかしい!」という至ってもっともな意見が多数出ていることも、今回に技術検査導入の動きに少なからず影響を及ぼしていると考えられるでしょう。

    群馬県太田・ショッピングモール駐車場男性死亡事故

    2019年12月25日正午すぎ、群馬県太田市城西町のショッピングモール駐車場で、同市在住の無職・岡田隆司容疑者(86)の運転する乗用車が暴走、駐車場内を歩行していた尾内卓郎さん(71)がはねられる事故が発生しました。過失運転致死で逮捕された岡田容疑者は、「回転数が上がってしまった」と証言しているほか、ブレーキ痕などの現場状況や目撃者の証言から、意図せぬ急発進に慌てた容疑者がアクセルを強く踏み込んだことが事故原因とみられています。この痛ましい事故が報じられるとネットでは、

    「回転数が上がったらアクセルを話せばいいだけ、そんなこともわからない人に運転させちゃダメ!」

    「86歳…、やはり強制的に免許を返納させるべきなのでは?」

    「これからの高齢化社会でどれだけこんな事故が起こるか、考えただけで恐ろしくなる…。」

    など高齢ドライバーと免許の在り方や、自動ブレーキを始めとする安全装備の必要性についての議論が一層活発になりました。

    なぜ今の制度では高齢ドライバーの危険運転を防げないのか

     

    現在、70~74歳のドライバーは運転免許更新に先立ち、座学・運転適性検査・実車講習で構成された約2時間の「高齢者講習①」の受講が必須であり、75歳以上の方は記憶力や判断力を測定する「認知機能検査②」を併せて受けなければなりません。

    このうち、①に関しては受講が必須ではあるものの、適性検査・実車講習ともに合否を判定する試験ではなく、あくまで自らの適性や運転技術に対する認識を深め、安全運転に活かすことを目的としています。一方、②を受けた結果「心配ない」「少し落ちている(※)」と判定された方は①に移りますが、「落ちている」と判定されると臨時適性検査または診断書提出命令がなされ、診断結果で「認知症」と判断された場合は免許停止または取り消し対象となります。

    ※3時間に延長された別講習を受講

    また、2017年からは更新時だけではなく、75歳以上のドライバーが一定の違反をした場合も、「臨時認知機能検査④」を受けなければならないため、高齢者の危険運転による事故防止力を期待できそうですが、問題は「検査内容」と「事故発生原因」にあります。③・④ではいずれも、

    • 時間の見当識・・・検査の実施月月日、曜日及び時間を回答。
    • 手がかり再生・・・イラストを記憶し関係ない課題を行った後、記憶しているイラストをヒントなし、及びヒントをもとに回答。
    • 時計描写・・・時計の文字盤、及び指定された時刻を表す針を文字盤に描写。

    という3つの検査を実施、採点結果に応じて認知機能が判定されるのですが、最低限の記憶力・判断力を測定するに留まり、安全運転に必要な操作技術があることは一切わかりません。

    警察庁が2019年上半期(1~6月)の交通死亡事故原因を分析したところ、75歳以上のドライバーによる事故の34%は、ハンドルやブレーキの「操作ミス」が原因だったことが判明し、この割合は75歳未満の3倍におよぶと言います。前述した悲惨な死亡事故もすべて高齢者の操作ミスが主な原因であることからもわかる通り、③・④をクリアしたからといって、若い世代と同様の技術があるとは限りません。

    つまり、従来の制度だけでは最大の原因を減らすことが困難だと判断した警視庁並びに関係機関は、実車を用いて対象者の運転技術を厳しくチェックする仕組みを進めているのです。

    高齢者の事故防止策として進められている安全運転技能検査とは

     

    現在のところ、安全運転技能検査の対象は、年齢的に「75歳以上または80歳以上」が想定されているほか、過去3年間に特定の違反歴や事故歴があり事故リスクが高いと判断されたドライバーに限定した方向で検討が進んでいます。また、75歳以上が必ず受ける認知機能検査の前に実施し、技能検査をパスしたドライバーは高齢者講習の実車指導が免除されるほか、仮に不合格であっても免許更新期限内であれば、何度でもチャレンジできる救済措置が盛り込まれる予定です。

    検査項目及び採点基準については、現在議論が交わされている最中ですが、検査中に信号無視や大幅な速度超過など、重大事故の原因となる違反を1回でもした場合は、一発で不合格になる可能性が高いと考えられます。その一方で、技術検査の実施が強制的な免許返納にならないよう、安全運転支援機能を備える自動車だけを運転できる、高齢者向けの「限定免許」をつくる方針も打ち出しており、

    1. 技能検査の実施
    2. 危険運転の兆候がないか判断
    3. 兆候なし・・・認知検査をパス&高齢者講習→免許更新
    4. 兆候あり・・・免許返納or限定免許への書き換えを推奨

    という新たな仕組みの構築を目指している模様です。

    来る超高齢化社会に向け、企業は何ができるのか

     

    2018年末時点における、70歳以上の免許保有者は約1,130万人で2008年末の1.7倍に達するなど、ドライバーの高齢化が急速に進行している今、関連企業や公共機関も手をこまねいているわけではありません。

    トヨタを始めとする国内自動車メーカーは、高齢者をターゲットとした安全機能を多数搭載した新型モデルの開発に余念がありませんし、国交省の要請を受け中古車に後付け可能な安全運転支援装置を続々とリリースしています。

    また、国は衝突被害軽減ブレーキ及び、ペダル踏み間違い・急発進等抑制装置が搭載した車の購入費を補助する「サポカー補助金」を、満65歳以上の高齢ドライバーを対象として2020年度補正予算案に盛り込み、昨年12月閣議決定しました。さらに、一部の自治体では現在乗っている自動車に後付けできる、安全運転支援装置の購入及び設置費用を補助する制度(※)を開始しているほか、免許返納後もスムーズに移動できる社会を構築するため、官・民・学が一丸となってMaaS推進に力を入れています。

     

    ※自治体によって実施の有無・条件が異なるため要確認

    しかし、高齢化が顕著であるはずの日本では続発する悲惨な事故に囚われ過ぎ、高齢ドライバーに対する見方が非常に冷ややかなのも事実。単純に「高齢者は免許を返すべきだ」と声高に叫んでいるにすぎず、具体的な取り組みが進んでいるとは言えません。そんな中、世界有数の自動車大国・ドイツでは、「全ドイツ自動車クラブ(ADAC)」が中心となり、高齢ドライバーを社会全体が温かい目で尊重し、安全運転を支援する取り組みを積極的に進めています。

    日本のJAFに相当するADACでは、本業であるロードサービス事業をこなしつつ、高齢者用安全運転パンフレットの作成、高齢者ドライバーに適した車の比較テスト、適性テスト&運転指導、相談窓口の開設など、「生涯安全運転」の実現に向け、社会全体へ高齢ドライバーをサポートする必要性を訴えています。ADAC交通部署副所長ウルリヒ・クラウス・ベッカー氏は、「高齢=事故を起こしやすい」という考えはマスコミによる一方的な報道による偏見と言及。その根拠として以下、ドイツ国内におけるいくつかの統計結果を挙げており、実は日本にも似たような傾向があるのです。

     

    1. 被害が甚大な事故発生率は全年齢層が「7%」であるのに対し、高齢者ドライバーは「14.5%」と低い。
    2. 高齢者ドライバーの飲酒運転率は「5%以下」であり、他の年齢層と比較すると最低水準。
    3. 死亡事故発生件数を年齢層別にみると、最も多いのが18~24歳で「481件」、最も低いのが65~69歳で「87件」、次に低いのが60~64歳で90件、75歳以上のドライバーは2番目に多く「237件」。
    4. 交通事故件数を年齢層別にランク付けすると、ワーストが「18~20歳」で2番目が「75歳以上」、「21~30歳」・「64~74歳」と続き、31~64歳が最も少ない。

     

    事実、警察庁の調べによると今年上半期(1~6月)に発生した、75歳以上の高齢運転者による死亡事故は172件で昨年同期より50件(22.5%)、うち80歳以上による死亡事故は98件で27件(21.6%)といずれも減少。高齢ドライバーによる重大事故が注目された結果、高齢ドライバーの安全意識が高まっているほか、なるべく運転を控える傾向も強まり2019年4月の池袋暴走死亡事故以降、都市部を中心に免許の自主返納件数も急増しています。

    つまり、予定通り安全運転技術検査が実施され、不合格者の免許返納及び限定免許への切り替えがスムーズに進めば、高齢ドライバーによる悲しい死亡事故のさらなる減少を期待できるのです。しかし、死亡事故を「撲滅」するためには、免許更新体制の強化や安全技術の進化に頼り切るのではなく、年齢とともに反応速度や判断力が鈍り、運転技術が低下する高齢ドライバーをサポートする、ドイツのような車社会の構築が不可欠です。

    今後は、報道やネット情報に影響されるのではなく、離れた場所でいつでも車両位置・運行状況がわかり運転診断機能などを有する、ITデバイスを活用した見守りサービスを導入するなど、高齢者の安全運転をサポートする個人的な対策も検討すべきではないでしょうか。

    まとめ

    交通事故は年齢層を問わず発生するものです。必ずしも高齢ドライバーの事故件数が突出して多いわけではなく、ここ10年ではむしろ減少傾向にあります。「若いから大丈夫」「運転に自信があるから」という考えは一旦置いて、高齢者マークを見かけたら幅寄せやあおり運転で不要なプレーシャーを与えないよう注意したり、優先して道を譲ってあげたりするなど、譲りあいを考慮した運転を心がけましょう。

  • カーディーラーが抱える課題は、ドライバーエンゲージメントサービスで解決できるか

    カーディーラーが抱える課題は、ドライバーエンゲージメントサービスで解決できるか

    インタビュイー
    CDK グローバルジャパン株式会社 APAC プロダクトマーケティング
    長島崇(ながしま・たかし)さま

    CDKとDMSとは?

    牧野:まずは、長島さまとCDKの事業について簡単に教えていただけますか。

    長島:CDKグローバルジャパン株式会社でAPACのプロダクトマーケティングを担当しています。

    前職でもIT企業で、ERPやCRM、セキュリティ製品など、おもに企業向けソリューションに携わってきましたが、ハードウェアやコンシューマー製品を担当することもありました。それらの経験が現在の職責にも活きています。今の自動車業界は100年に一度の大転換期にいます。そこで現在は、日本にまだ導入されていない製品のマーケットフィットや、国内のプロジェクトのサポートのために海外の開発部門と連携などを行っています。

    CDKは全世界に拠点を持ち、100カ国以上に顧客を抱え、40年以上前からDMS(Dealer Management System:ディーラー・マネジメント・システムの略)を中心に、自動車業界、とくに自動車ディーラー様向けのITソリューションを提供してきました。私たちは自動車販売を顧客との信頼関係のビジネスと考えています。そのために、私たちは顧客が直接ディーラー様やウェブサイトを訪問するところから始まるカスタマーエクスペリエンスを技術的に支援したいと考えているのです。これは平均的な当社の顧客が20年以上に渡って当社ソリューションを選び続けてくださっていることでも証明されていると思います。

    牧野:DMSはどのような製品ですか?

    長島:通常、自動車は自動車メーカー各社からではなく、ディーラー様経由で購入されます。それに、納車後も点検や修理、車検や消耗品の購入など、ドライバーが受ける車関連のサービスはディーラー様が窓口ですよね。そうした情報を一元管理し、自動車に関する様々なディーラー様のビジネスをサポートするのがDMSと呼ばれるシステムです。

    CDKのDMSの特徴ですが、自動車業界に特化しているため、当社のソリューションで様々なニーズに応えられることです。顧客とのエンゲージメント、支払い、会計などお金の管理、自動車部品の管理、アフターサービスなどを支援する各ソリューションを高いレベルで統合しているので、一貫したシステムとして提供できるのです。一方で、昨今のお客様はすでに何らかのシステムを運用していますが、当社の製品は既存システムともシームレスに統合が可能です。

    自動車業界は、CASEやMaaSと呼ばれるような新しい技術や概念が浸透しています。これらが一般化すれば、自動車はただの乗り物ではなく、より高い安全性、快適性そしてより高いエンゲージメントや運転体験が求められるでしょう。お客様がそれらに対してスムーズに対応できるよう、私たちも戦略的な投資を続けたいと思っています。

    ちなみに、御社のSmartDrive Carsについてもご紹介いただけますか?

    牧野:スマートドライブでは、シガーソケットに挿すだけで車がコネクテッドカーになるIoTデバイスを自社で開発し、デバイスに内蔵されたさまざまなセンサーやGPSのデータから車に関するあらゆるデータを取得しています。

    一般向けに提供しているSmartDrive Carsは、レジャーで遠方に行く人、毎日送り迎えや買い物に車を利用しているママさん、通勤でマイカーを使用している人たちの走行データを取り、安全運転の促進を目的としています。安全運転を見える化してポイント交換できるため、安全運転をすればおトクで生活が便利になると、ポジティブに行動を変えていければと。

    私たちはこれをドライバーエンゲージメントサービスと呼んでいますが、運転する人たちが楽しくなったり、便利になったりする体験を生み出していきたいと考えています。

    ドライバーエンゲージメントサービスの重要性

    長島:なぜ、ドライバーエンゲージメントサービスを開発しようとお考えになったのでしょうか。

    牧野:昨今ではSDGsが着目され、所有から利用へ、車との付き合い方や移動のあり方も変わりつつありますよね。時代が変わると新たな価値観も不便さも出てきますが、そこにマーケットが生まれるでしょうし、車業界や移動に関するマーケティングも進化します。その進化の過程でアプローチをしたり、新たな価値を提供したりできると思い、注目しているのです。

    長島: MaaS関連のサービスは、ライドシェアや決済関連がほとんどですが、SmartDrive Carsは独自性が高いと言うか、今までになかったサービスですよね。安全運転した人を評価するのは素晴らしい仕組みですが、ビジネスを成り立たせるのは難しくありませんか?

    牧野:そこはやはり難しいところで、収益化については日々考えを巡らせているところです。MaaSは効率的な移動にフォーカスした概念で語られることも多いのですが、人は常日頃から移動をしていますし、移動中やお出かけ先での消費行動は経済を回すことにもなる大事なことです。経済が動くということはマネタイズできるビジネスチャンスがあるということ。

    たとえば、安全運転した人に対して、こちらの方面へ行くとあなた専用のクーポンが付与されますとか、このお店に行くと優先的に入れますと言った提案をレコメンドできれば、人の動きや移動を積極的に促すことができるのではないでしょうか。

    長島:人を動かすことでビジネスの活路を見出すことができると。

    牧野:そうですね。ですので、私たち単体で収益を上げるのではなく、既存のビジネスに新しいカー付加サービスを付けたり、私たちをハブとして活用いただいたりするなど、他社とも柔軟につながることが可能な設計にしています。

    長島:当社も含め、SmartDrive Carsの方向性に賛同されている企業様も多くいらっしゃるので、ある意味ではすでに成功しているようなモデルだと思います。

    牧野:一つ事例をあげると自動車保険があります。安全運転だと安くなる、ロードサービスが充実するなど、テレマティクス保険として少しずつ取り組みが始まっています。また、保険にプラスしてクーポンを付与するなど多層的な価値を提供できれば、ユーザーにも企業側にもメリットが生まれると考えています。

    長島:B2B2Cのサービスにおいては、これまでそうしたスマートなモデルを見たことがありません。SmartDrive Carsは他社と上手に連携を取りながらユーザーファーストなサービスを展開されている、素晴らしい例です。

    カーディーラーが持っている課題

    牧野:DMSはカーディーラーがお客様の情報や車両の情報を管理するシステムとのことですが、ディーラーはどのような情報やデータを求めているのでしょうか。

    長島:ディーラー様は車を販売した後も積極的にお客様とのつながりやエンゲージメントを大切にしたいと思われています。しかし、お客さまがメンテナンス費用やディーラー様へのアクセス面を考慮して、点検はガソリンスタンドやその他工場へ持ち込み、部品は他のカー用品店に行くといったケースもみられます。来店いただけば整備や修理のサービスを提供できますので、ディーラー様としてはお店に来てもらえるだけでも嬉しいのですが。ディーラー様は車に関する様々な情報や知識を備えているのにそれがうまく活用できておらず、お客様との接点を持ちづらいことに頭を抱えてらっしゃる。

    さらに、Teslaのように車をメーカー直販で販売するモデルが今後も増えると、ディーラー様が介在しないことが当たり前になってくるかもしれません。そうした面からも、世の中の流れに対して危機感を抱いているようです。

    牧野:そもそも、車の購入方法自体が変わってきたと伺います。今まではディーラーに何度も足を運んで車を購入していたものが、ネットで素早く膨大な量の情報が手に入るようになったため、来店回数が激減しているとか。

    お客様との会話からさまざまな情報を得ることができても、会話以外の方法で顧客が求めているものを把握するのが難しい。それはなぜでしょうか?

    長島:ディーラー様も、情報管理のシステムだけでは限界があると感じているようです。データを上手に使いこなせば、課題解決へと導くことができるはずですが…。

    牧野:SmartDrive Carsがそうした課題を持つ企業様に受け入れられる理由がわかってきました。

    お客様が普段どんな場所へ行き、どのような行動パターンをしているのか。顧客一人ひとりの利用状況がデータで取得できれば、適切なタイミングでレコメンドをすることもできますし、今までにないアプローチをできるかと思います。

    長島:データをどのように活用するのか、有用なデータをどう集めるのかなど、ディーラー様の会話からもデータというキーワードはよく出ますので、データの重要性については十分ご理解いただいているようです。

    とくに日本車は信頼性も安全性も高く、寿命も長い。車をより長く使っていただくためにも、販売した後のサポートは重要です。しかしそのためにはデータが必要となります。

    牧野:SmartDrive Carsは走行データがクラウド上にありますので、車を買い換えてもデータが引き継がれます。ですので、買って、売って、リセットするだけの関係から、データと思い出も引き継ぐサービスへと変えていけるでしょう。

    長島:自動車ビジネスとなると、どうしても車が中心になってしまいますが、SmartDrive Carsは人に重きを置いている。

    一方、CDKのDMSソリューションは車を中心にしたソリューションです。車台番号や法令、リコールの情報など、車に必要不可欠な情報は管理できても、これらは頻繁に利用するものではありません。ですから、日常的に活用できる情報をSmartDrive Carsで補完できると良いなと。話を聞いていてそう思いました。

    ディーラーがエンゲージメントを向上させるには

    牧野:ディーラー様は現状、どのようにしてお客様をロイヤルカスタマーにしようとしているのでしょうか。

    長島:さまざまな施策を考えているようですが…。お客様の要望を先回りするようなコミュニケーションはできていませんね。いまだにコミュニケーションは紙のDMが多いですし、Eメールを使ったコミュニケーションも限られます。これも、お客様の情報を把握しきれていないことが起因していると思います。

    牧野:私は主婦目線で作られたファミリーカーに乗っていますが、アウトドアが好きで海や山へ行くときにも利用しています。これは、メーカーが本来意図した使い方とは違うかもしれませんが、お客様の行動を把握して、私のようなお客様が多いとわかれば、アウトドアグッズのプレゼントキャンペーンを展開したり、アウトドア用品のメーカーとコラボしたり、より幅広い提案ができると思うんです。

    長島:車は、人生の長い時間に関わるものです。何年も先を見据えて、今と未来の活用方法やその魅力にアプローチができれば、もっとエンゲージメントが高まるのではないでしょうか。

    牧野:ドライバーエンゲージメントのヒントとして考えているのが、運転のエンタメ化です。電車の中だと、隙間時間でスマホからメールを送ったり、音楽を聴いたり、ニュースを読んだりできますよね。車はまだ自動運転になっていないのでドライバーが運転し続けなくてはなりませんが、運転中は基本的に他のことができませんので、見方によっては作業時間だと捉えられてしまう。だからこそ、早く、効率よく目的地に着きたいと思わせてしまうのです。移動することがエンタメになって、面白いと思っていただければ、移動がもっと楽しくなるんじゃないでしょうか。

    長島:システムやAIがいくら最短ルートを提示してくれても、無機質で人気のない道だと楽しい気持ちになれませんからね。たまに、「普通の感覚だったらその道は選ばないでしょう」ってルートを提示してくるときがあるじゃないですか。

    SmartDrive Carsの場合は人のパーソナライズされたデータなので、ワクワクするルートを提案してくれるでしょうし、手段としての移動を変えてくれると思っています。

    牧野:テクニカルより、情緒的なメリットを出していきたいですね。

    相互補完でドライバーにさらに良いサービスを提供する

    牧野:CDK様とスマートドライブでどのようなコラボレーションが可能でしょうか。

    長島:持っているデータの種類を含め、お互いの得意分野は違いますが、うまく相互補完ができれば良いですよね。

    牧野:SmartDrive CarsのデータとCDK様のデータを掛け合わせて活用することで、ディーラー様に向けてより大きな価値を提供できるのではないでしょうか。そしてそれがうまくつながって、ドライバーに安全かつ面白い移動体験を提供できるようになれば良いのですが。

    長島:ディーラー様は車に関してもっとも信頼できる場所。そこへSmartDrive Carsの情報が提供できれば、彼らのビジネスチャンスも増えますし、質の高い接客やサービスを提供できる。そうすれば、お客様の満足度も向上し、つながりも構築できますので、地域に根ざしたディーラー様独自のネットワークができるようになるでしょう。

    牧野:ドライバーのエンゲージメントを高めて、よりよい車社会を作れるようにお互い頑張りましょう!

  • 人事、総務担当者必見!車両管理に関するお役立ち記事10選

    人事、総務担当者必見!車両管理に関するお役立ち記事10選

    ドライバーの安全を守り、配車の適正化をはかるために重要な車両管理。会社としてのリスク回避やコスト削減にもつながりますが、多岐にわたる業務が発生するため、手を焼いている担当者さまも少なくはないはず。本記事では、車両管理にまつわるアレコレを解決できる記事をピックアップしてご紹介。新たに車両管理の担当を任された方、現在の車両管理の仕方を見直したい方は必見です。

    リスク回避とコスト削減。何よりも従業員を守るために、車両管理の必然性を理解しよう

     

    「動く資産」社用車を守るための車両管理の方法とは
    車の利用は大なり小なり、つねにリスクが伴うものですが、管理がずさんだと金額面での損害はおろか、企業の信頼を失いかねません。車両管理は企業が従業員を守り、事故によるリスクを減らすためにも必要なもの。企業が車両管理で重要視したい3つのポイントについて解説します。

    車両管理を行う意味って?そもそも何をどう管理すればいいのか理解したい

    リスクマネジメントのために必要不可欠な車両管理
    車両管理で必要なものとは?効率化するにはどうすればいい?そんな疑問や質問を解決できるのが本記事。必要な情報が満載です。

    車両管理で労務管理は行えるってホント?

    ドライバーの労務管理の課題とポイント — 車両管理システムが解決できること
    生産性をあげて残業を減らしたい。働き方改革を進めるために現状の稼働状況を把握したい。そんな悩みも車両管理で解決できるのをご存知でしょうか?普段は社内にいないからドライバーの労務管理が難しい、そんな時でも正確な労働時間を把握し、労働時間の適正化をはかりましょう。

    車両管理に必要な「車両管理規定」。具体的にどうやって作成するの?

    車両管理に必須!車両管理規定の作成の仕方とポイントを解説
    社用車を有する企業が、万が一のリスクに備えて作成すべき車両管理規定。作成することで、「コスト削減・安全の
    確保・リスク回避」という3つのメリットを得ることができるのです。テンプレート付きなので今すぐ作成可能!ぜひ、ご参考くさだい。

    車両管理システムの機能を比較検討したい

    【最新版】目的別・社用車を管理し業務の最適化を担う車両管理システム24選
    車両管理システムを導入しようと思っているけど、現在どんなサービスが提供されていてどんな機能があるのか知りたい。そんな方はこの記事をご参照あれ。現存する車両管理サービスを全網羅し、それぞれの主要機能、メリットをわかりやすく解説しています。

    車両管理の責任者って本当に必要?どんな役割を担うのか知りたい。

    なぜ車両管理は責任者をおくべきなのか
    車両管理が重要なことは理解しているものの、専任ではなく兼任する担当者が多いようです。車両管理は事務的な業務だけでなく、PDCAをまわすことでコストの適正化や業務改善ができるもの。実は非常に重要な役割を担っているのです。

    車両管理には車両管理台帳が必要って言うけど、もっと簡単に作れない?

    【テンプレート付き】車両管理台帳の仕組みと書式を解説
    管理台帳の必須項目は?何をどう記載すればいいの?を解決できる記事です。フリーダウンロードが可能なテンプレートつきなので、ポイントを確認しながらそのまま作成可能です。

    今の配車は本当にベスト?改めて見直してみよう

    料金シミュレーションあり: 適切な車両削減で車に関するコストを見直そう!
    税金、保険、年間のガソリン代、駐車場代、メンテナンスに点検費用など、たった一台であっても社用車の保有はコストがかかるもの。しかし、実際の稼働状況を把握してみると、1日にたった数時間の稼働しかなかったり、未稼働の車両があったり、無駄が明確になります。この記事では料金シミュレーションもできますので、ぜひ、稼働とコストの見直しを!

    業務外で営業車を使用する場合、どのような管理が必要?

    営業車を私的利用する場合の注意点
    業務内容によっては、社用車で直行直帰をしている従業員の方もいるでしょう。しかし、私的利用をしている際に従業員が社用車で事故を起こしてしまったら…?車両管理を行う際は、あらゆるリスクを考慮した上で運用を心がけましょう。

    車両管理の中で、日常的に行うこととは?

    車両管理のキホン!「社用車の日常点検」の必要性
    毎日利用するものだからこそ、車両もドライバーと同じように健康管理が大事です。日常点検は、常に車が適正な状態であるための基本業務。体調が悪くなってからでは事故のリスクが急激に高まりますので、企業のリスク管理の一環としてできるだけ毎日行えるようにしましょう。

  • AECの現状と自動車産業の最前線

    AECの現状と自動車産業の最前線

    ASEAN(東南アジア諸国連合)が、2003年頃から構築を進め2015年12月31日に創設された「AEC」は、アジア各国のみならず世界経済に多大な影響を及ぼす組織ですが、何を目指しどんな取り組みをしているのか、詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、AECの基本情報と現時点での進捗状況、浮き彫りになってきた課題を整理したのち、参加国および関係が深い日本の自動車産業の動きや今後の変化について考察します。

    AECが注目されている理由

     

    AECとは「ASEAN Economic Community」の略称で、日本では「アセアン経済共同体」と呼ばれますが、2002 年に関税を「5%以下」へ削減するという当初目標を実現した、ASEAN 自由貿易地域(AFTA)の次段階にあたる「経済統合組織」です。

    マスタープランである「AEC2015ブループリント(工程表)」では、

    1. 単一の市場と生産基地・・・物品・サービス・投資・熟練労働者の移動自由化など
    2. 競争力のある経済地域・・・インフラ開発・関税撤廃・競争政策・消費者保護など
    3. 公平な経済発展・・・格差是正・新規加盟国支援など
    4. グローバルな経済統合・・・ASEAN域外とのFTA(自由貿易協定)など

    という4つの戦略目標が掲げられており、モノ・ヒト・サービス・資本の移動が自由にすることで国際競争力を高める点はEUと共通しますが、通貨統合や関税同盟などは想定されていません。

    AECが注目されている理由その1「市場規模の大きさ」

    AECを組織したASEANは東南アジア10ヵ国が参加する、巨大な地域協力機構であり総人口は約6.2億人と、域内マーケット規模で言えばNAFTAやEUを上回り、先進国より比較的高齢化が緩やかであるため、将来的な消費市場の伸びしろも大きいとされています。

    また、ASEAN全体のGDPは2014年時点で約2.5兆ドルと、インドを凌ぐ水準にあるものの、1人当たりのGDPは約4,000ドルで中国の4分の1程度。つまり、モノ・サービスを消費・生産していく余力が、先進諸国よりたっぷり残っているということです。すでに、国内市場が飽和状態に近い日・米・EU各国が、そんなASEANに目をつけるのは当たり前の流れであり、AECと密に連携すれば新たな需要を獲得しつつ、労働力の確保や生産・流通プロセスの効率化を図ることも可能です。

    AECが注目されている理由その2「中国の経済成長が頭打ち状態」

    かつて、日本を始めとする先進国が積極的に進出していたのは中国でした。しかし、消費の冷え込みや人件費高騰に伴い撤退する企業も多く、さらには世界的流行が危惧されている「新型コロナウィルス」の影響で、今後より拍車がかかると考えられます。一方、AEC2015が達成した一定の成果によって、インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイといったASEAN主要5ヵ国はもちろん、ブルネイ・ベトナム・ミャンマー・ラオス・カンボジアの後発組も、近年では順調な経済成長を見せています。

    その結果、国内・欧米企業はASEAN各国にビジネスチャンスを見出し、続々と中国から海外拠点のシフトを始めているのですが、同地方ならではと言えるいくつかの問題がネックとなり、なかなかうまく進んでいないようです。

    AECの現状・達成した成果と今後の課題

     

    ASEAN事務局の発表によれば、AEC2015の目標実施率は優先分野を対象にすると「93.9%」と高く、分野別にみると最大の成果は「関税撤廃」であり、 2018年1月にCLMV(※)でも完了したことで、現在の関税撤廃率は「98.6%」と世界的も高レベルに達しています。

    ※CIMV・・・カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナムの4ヵ国を指す略称。

    また、日・中・韓・印・豪・ニュージーランドと、5つの「ASEAN+1FTA」が締結されるなどグローバル経済との統合は進んでいるほか、ASEAN国籍を保有していれば短期滞在・ビジネスビザが必要ないため、ヒトの域内移動自由化も制度としては完了済です。

    さらに、ASEANの一部企業はAECを好機と捉え越境や域内最適化を進めており、例えば域内での直接投資額は2009年時点で100億ドルに過ぎませんでしたが、5年後の2014年には200億ドルを超える規模までに成長しています。しかし、一方で円滑化が遅れている分野もあり、非関税障壁の撤廃は進んでいませんし、サービス貿易や域外資本による投資も自由化されておらず、ヒト・モノの移動を担う交通インフラの整備不足など、AECの成長を阻害する課題も山積しています。

    とはいえASEANも問題点を十分理解しており、AEC2015はあくまでも通過点にすぎず立ちふさがる課題をクリアするため、新たな目標・行動指針を盛り込んだ「AEC2025」を掲げ、日本ではあまり報道されていないものの着実に成果を上げつつあります。

    【AECブループリント2025】

    • 統合され高度に結束した経済
    • 競争力があり革新的でダイナミックなASEAN
    • 連結性強化とセクター別協力体制の構築
    • 強靭で包摂的かつ人が中心にあるASEAN
    • グローバルなASEAN

    AEC2025はAEC2015のマイナーチェンジ版と言え、未達成分野に加え革新・研究開発・規制改革など成長戦略が盛り込まれたほか、中小企業育成など「包摂」が重視され、既にASEAN 電子商取引協定が調印や、新サービス貿易協定(ATISA)交渉も進んでいます。

    また、関税撤廃がほぼ完了したため、AEC2025では域内におけるヒト・モノの移動自由化より域外貿易の円滑化に重点が置かれ、例えば商品国籍を判定する国際貿易上のルールである「原産地規則」は、TPPで採用された完全累積の採用を検討しています。

    一方、③が追加され戦略目標は5本柱となっていますが、統合範囲やレベルについてはAEC2015と大きく変わっておらず、何より「非熟練労働者」の移動自由化が目標に組み込まれていないのが欠点。なぜなら、熟練労働者の移動自由化が進行した結果、最低月給が周辺諸国の約2~3倍であるタイ・バンコクへの出稼ぎ労働者が殺到するなど、ヒト・モノ・カネが給与水準の高い国・都市に集中してしまう可能性があるからです。

    そもそもAECは、加盟諸国の「公平な経済成長」が大命題1つですが、このままでは域内格差が広がりかねず、一刻も早く非熟練労働者の移動自由化にも着手すべきかもしれません。

    AECの自動車産業最前線

     

    熟練労働者の移動自由化による弊害が出始め、前述したバンコクのほかジャカルタ・ハノイ・クアラルンプールなどといった大都市圏では、激しい交通渋滞や排気ガスによる大気汚染が社会問題となっています。さらに、一部では交通インフラが麻痺する事態にまで陥っているようです。一方、ひとたび郊外に出ると道路はスカスカな状態…。移動手段の確保に苦労しているASEAN・AECにおいて、日本の自動車産業メーカーがなすべきことは何でしょうか。

    AEC発足後のASEAN自動車市場の推移

    ASEAN5(インドネシア・タイ・フィリピ ン・ベトナム・マレーシア)における、自動車市場の推移状況を整理すると、2010年代前半までは政府による新車購入優遇措置がなされたタイと、都市部でのモータリゼーション後押しされたインドネシアが爆発的に成長。欧米企業に先駆け、ASEAN自動車市場の開拓を進めてきたかいもありタイでは80%超、インドネシアにおいても90%超のシェアを誇るなど、両国は日系新車メーカーにとって重要な海外市場の1つになりました。

    しかし、AECが設立された2015年における両国の新車販売台数は大幅減少へ転じ、タイは優遇制度の終了と適用車の5年間転売禁止や政情の混乱、インドネシアはルピア安による経済成長鈍化が影響したのですが、近年は横ばい、あるいは回復傾向を示しています。

    一方、経済発展に伴い購買力のある中間所得層が形成されてきた、ベトナム・フィリピンの新車販売台数は堅調に増加しており、政権交代による大きな政策転換や極端な景気悪化がない限り、今後も市場拡大が進んでいくとみられます。

    また、マレーシアに関しては爆発的な拡大とはいかないまでも、安定して成長すると考えられるほか、トラック・バス・ミニバンなどといった、業務利用向け国産中古車に対する輸入ニーズも高いため、大手国内中古車チェーンが販路を拡大中です。みずほ銀行の調査によれば、世界自動車販売台数のうちASEAN5が占める割合はわずか3.2%にすぎず、ピークに比べるとスピードが緩やかになったものの、2021 年までの年平均成長率も4.9%と高い水準を維持すると予想されています。

    出典:みずほ銀行「自動車市場の現状と自動車産業の行方」
    出典:みずほ銀行「自動車市場の現状と自動車産業の行方」

    今後の課題~EVシフトとMaaSへのニーズに対応する~

    交通渋滞の悪化による環境汚染を憂慮したASEAN諸国。「東洋のデトロイト」と称されるタイ政府が2017年3月、EV車生産促進を目的とする投資奨励策(TNGAP)を導入するなど、近年はエコカー普及を推進する政策を次々に実施しています。

    また、同国はTNGAPへの参加を世界中のメーカーに呼び掛け、トヨタ・日産・ホンダ・マツダにはHV、Mercedes-Benz・BMW・SAIC Motor-CPにはPHV、FOMMにはEV生産投資プロジェクトをそれぞれ認可しました。加えて、ライドシェアリングをはじめとした「MaaS」の普及は日本より進んでおり、ASEAN最大の配車サービスである「Grab」は、2018年4月にUberの東南アジア事業を吸収・統合しています。これにはトヨタが10億ドル、現代自グループが2億7,500万ドルを出資しています。

    さらに、同じく配車サービス大手でインドネシアに本拠を構える「GO-JEK」は、Google・Temasek・Tencentから出資を受け、ベトナムやシンガポールへ進出しているほか、高速バス大手「WILLER」はシンガポールで自動運転バスの商用サービスを始めました。

    つまり、ASEANは今Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared & Services(シェアリングとサービス)・Electric(電気自動車)のニーズが年々高まり、「CASE先進地区」へ変貌しつつあるのです。そのため、日本の新車メーカーやサプライヤーは、AECの活動を通じ既存車両や部品の輸出に留まらず、ASEAN諸国へ自社が持つCASEに関する技術と資金を投入、国内より圧倒的に公共交通インフラが劣る現地でMaaS事業を展開し、まずは移動の地域格差を是正。

    その上で、実証データ・運営ノウハウなどを積極的に収集しシステムの正確性・安全性を高め、公共交通インフラが不完全な地域や人材不足が深刻な物流・運送業界にサービス提供する、自動車産業の逆輸入が今後の課題・テーマになるのではないでしょうか。

    まとめ

    AECは、ASEAN各国の経済成長のカギを握っているだけではなく、世界的トレンドとなったMaaSの発展・普及にも寄与する、自動車産業にとって有益な組織・取り組みです。今後、東南アジア、ひいては世界経済の趨勢を左右しかねないとも言えるでしょう。

  • 新型コロナウイルスが自動車業界に及ぼす影響とは?

    新型コロナウイルスが自動車業界に及ぼす影響とは?

    2月25日、日経平均株価の値下がり幅は一時1000円を超えたことがニュースになりました。新型コロナウイルスの感染拡大により、世界各地で経済失速への懸念が高まっています。自動車業界にはどのような影響が考えられるでしょうか。

    「予想を超えた株価の下落」

    25日の東京株式市場での日経平均株価の値下がりを受け、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)の中西会長は、「新型コロナウイルスの感染拡大に対し、株式相場が敏感であることを再認識した。世界的に予想を超えた下げ幅だが、落ち着いて事態を注視するよりほかない。感染拡大による企業収益の悪化は懸念されるが、今年の春季労使交渉における直接的な影響はほとんどないだろう。春季労使交渉の課題は、働き手のやる気を引き出す処遇づくりだ」と今後の対策について述べました。

    新型コロナウイルスによる影響は想定以上に大きく、中国生産拠点の稼働を一部ストップ、国内外の観光客減少などにより商品の供給も鈍化。さらには旅館、食品製造企業の倒産が続くなど、すでに日本経済への影響が深刻化しています。中国は、生産拠点でもあり、世界でもっとも大きなマーケットでもあるため、日本だけでなく海外へも大きな影響を与えているのです。

    生産がスムーズにいかない〜自動車業界への影響

    中国市場において、自動車メーカーは生産と販売に注力してきました。ところが新型コロナウイルスの感染拡大により、次のような影響が見込まれています。

    生産

    新型コロナウイルスが発生した武漢、湖北省は、自動車部品生産の主要な拠点です。そのため、自動車業界は感染拡大長期化による移動制限、操業ストップなどで生産体制を縮小せざるを得なくなっています。2月28日時点では、各自動車メーカーとも徐々に工場の操業を再開しつつあるものの、従業員の出勤状況や部品の調達具合により、通常通りの本格稼働が可能となるのがいつかは見通しがついていないとのこと。日系の自動車メーカーは、中国から調達している部品の他国での代替生産の検討を始めていますが、金型が必要な部品や、生産ラインに認証が必要になるような保安部品は代替生産が難しいため、一時的にサプライチェーンが停止する可能性も。

    神奈川県横浜市に本社を置く大手自動車部品メーカーのヨロズは、生産停止が長期化する場合に備え、メキシコで代替生産する検討を始めています。在庫がない、生産ができない…。収束の目処がつかないままでは、このような生産体制への影響が長期化することが予想されます。

    また、国内だけでなく、海外でも同様の影響が。休業期間をのばしている中国の自動車部品、組立工場に対し2月6日、フィアット・クライスラー・モーターズ(以下、フィアット)が、中国の部品供給業者が操業を再開できない場合、2〜4週間で欧州の工場1箇所の生産を止める可能性があると警告しました。
    国営新華社通信によると、習近平国家主席は「企業再開を積極的に推し進める」ように指示し、中国企業連合会の最新の調査では、製造業大手の97%が業務を再開していますが、移動制限や自宅待機によって従業員の職場復帰率は66%ほど。物流停滞やサプライチェーン(部品供給網)の混乱、コスト上昇、さらに、経営基盤の弱い中小企業については資金繰りの悪化も課題になっています。

    生産体制が通常通りに戻らなければ、供給不足などによって在庫が確保できず、収益を大きく左右することになりかねないかもしれません。

    販売

    中国自動車工業協会(CAAM)の付炳锋副会長は、2020年上半期の自動車販売台数は前年同期比10%以上落ち込むことを予想しており、3月までに新型コロナウイルスの感染が抑制されれば、通年の販売台数は5%程度の減少に抑えられる(2019年の自動車販売台数は約2,577万台、5%は約129万台に相当)としています(「オートモーティブ・ニュース・チャイナ」2月17日)。2019年の中国での新車販売台数が155万台と過去最高を記録したホンダですが、武漢にある3工場の生産が停止したことで、販売面での影響も。ホンダの幹部は「新型肺炎問題が長引いた時の影響をどう抑えるかが課題だ」と話しています。

    「すでに影響が出ている」と回答した企業は66%弱

    東京商工リサーチが2月20日に発表した「新型コロナウイルスに関するアンケート」の調査結果でも、すでに各業界での影響が伺えます。国内企業(1万2,348社)に新型コロナウイルスの影響を聞いたところ、66.4%(8,207社)が「すでに影響が出ている」「今後影響が出る可能性がある」と回答しました。

    産業別で見ると、「すでに出ている」と回答したのは卸売業、運輸業、製造業がそれぞれ3割近くに上ります。「今後出る可能性がある」と答えたのは製造業が51.7%ともっとも多く、卸売業も47.3%と続きました。東京商工リサーチは、世界的なサプライチェーンを築く製造業や、価格競争等で国境をまたいで商品を輸入する卸売業への影響が色濃く出たと分析しています。また、宿泊業や旅行業が含まれるサービス業他は38.3%、観光バスの運行会社が含まれる運輸業は43.4%でした。「新型コロナウイルスの今後の影響について、どのような懸念を持っているか」という問いについては、「中国の消費減速、景気低迷」が5,834社と最も多く、中国の景気が国内企業の受注や業績に影響を与えることを示す結果となりました。

    また、2月13日、未来調達研究所が日本企業(回答者1万2966人)へ新型コロナウィルスに関する緊急アンケートを実施、サプライチェーン・物流・調達関連従業者の実務実態について調査をしています。「新型コロナウイルスの生産・物流・調達への影響は?」という問いに対し、支障なしはわずか12%でした。部品調達の難航、道路閉鎖による物流の遮断、トラックドライバー不足、エアー便集中による取り合い、一時サプライヤーの有する金型を代替国に輸出できないなど、多くの問題が浮き上がっています。この状況は自動車業界も含め、各業界に大きな影響を与えているようです。

    企業はどう対応すべきか

    世界経済に損失をもたらし続ける新型コロナウイルス。
    2月13日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、日本政策金融公庫などに総額5,000億円の緊急貸付・保証枠を設けることを決め、14日に閣議決定しました。また、金融機関に資金繰りへの影響を受けている企業からの返済緩和の要請に対し、柔軟な対応を要請しています。事態の終息が見えない今、企業は政府や自治体との連携、代替生産が可能な体制を整えるなど、見直すべきなのかもしれません。

  • データサイエンティストに聞く!モビリティデータの活用法

    データサイエンティストに聞く!モビリティデータの活用法

    インタビュイー:
    Mobility Data Scientist
    石川 信太朗(いしかわ しんたろう)

    スマートドライブでは、様々な文脈で移動データの分析を行っています。このインタビューでは、具体的にどんなデータを取得し分析しているのか、データからどんなことがわかるのかなどをMobility Data Scientistを務める石川 信太朗(いしかわ しんたろう)さんに伺いました。

    スマートドライブが保持する3種のデータ

    石川さんは普段、データを使ってどのようなことをされているのでしょうか?

    主に移動データを価値に変えるソリューションづくりをしています。SmartDriveのプラットフォームに入ってくる膨大な量のIoTセンサーから取得できるデータに加えて、移動データと相性の良い3rd Partyデータなどを分析基盤に蓄積し、BIツールや機械学習ツールなどを用いて分析しながら、ビジネス課題にマッチするソリューションを日々構築しています。

    スマートドライブが保持するデータの種類を教えてください。

    SmartDriveのプラットフォームは自社製他社製問わず様々なIoTデバイスから取得できるデータが集積されています。デバイスごとに若干の個性はありますが、1秒に1回の頻度で車の位置情報、どの方向にどれだけGがかかっているか、何km/hで走行しているか、などのデータを取得しています。これらデータを用いて、安全運転かどうか、保持車両台数は適正か、複数の車両でヒヤリハットが発生した交差点はどこか、アイドリングが頻発している道路はあるか、渋滞が発生しやすい地域と時間はどこか、業務時間内のうちの移動時間の割合は適正か、収益を最大化する顧客戦略・エリア戦略・ルート取りは何か、など様々な観点で分析・レポーティングを行っています。

    これらのデータを可視化することで、お客様からどのようなフィードバックがありましたか?

    「今まで見てきた分析資料の中でも大変わかりやすい。データを取得できるだけでなく示唆がわかりやすいレポートとして提出してくれるので、管理者側の分析も各担当者への配布物やアナウンスする内容も簡単に作成できている」とのコメントをいただいております。次の項ではどのようなレポートが作成できるのかご説明しましょう。

    走行データから作成できる多様なレポート

    事故削減のための安全運転診断レポート、余剰車両の台数削減レポート、営業生産性改善レポート、働き方改革レポートなど様々な分析テンプレートの中で、今回は最も代表的なレポートとしてよくお出ししている安全運転診断レポートのうちの一部をご紹介します。

    1)安全運転診断

    弊社の独自技術で開発した安全運転診断スコアと1キロメートル走行あたりに発生した急操作の回数をベースに診断を行っています。安全運転だと診断されたドライバーは青色に振り分けられ、危険運転だと診断されたドライバーは赤色に振り分けられています。上記の推移を見ると導入から3ヶ月で安全運転のドライバーが3倍に増加し、危険運転ユーザーが30%減に成功している様子がわかります。結果は拠点ごとやドライバーごとの任意の期間でドリルダウンやフィルターができるようになっているため、みたい情報にすぐアクセスできるようになっています。

    よくある事例としては下記のようなドライバー別の診断結果を見ながら、重点して指導すべきドライバーさんを見つけていただき、個人診断レポートを見ながら指導をしていくケースです。

     

    2)ドライバー別診断レポート

    サマリレポートから「Aさんは危険運転が多い」ことがわかったら、その後どのような安全運転指導をすべきかを考えなくてはなりません。

    ドライバー別レポートでは一人ひとりの運転スコアの推移がわかるので、特定の日にだけ危険運転をしたため平均を引き下げているのか、毎日何かしらの危険運転をしているのか、普段は安全運転なのに直近3日で危険運転が増えてきたなど、個々のドライバーの運転傾向がわかります。

    また、実際に急操作が発生した場所がどこか、速度超過が発生した場所はどこか、地点情報も表示できます。ポイントをクリックするとGoogleMapのストリートビューが表示されますので、どんな現場だったかを確認することができるのです。実際に目にすることで、全く同じ交差点で毎回急操作が発生しているのか、不注意によって急操作が発生したのかなどを判断し、ドライバーへの的確な指示出しが可能になるんです。

     

    SmartDrive Fleetで提供している機能の一つであるG-Force Map(なめらか運転診断)では、ユーザーの運転のクセを可視化することができます。

    強いGがかかると外側の色が濃くなる仕組みになっており、円が内側に小さいほど安全であることを示しています。ヒヤリハットマップやスコアと組合わると、ドライバーAさんは交差点から発信する時にアクセスの踏み込みが強くスコアが低い、Bさんは急操作は少ないが内側の円が濃く細かいGがたくさんかかっていてスコアが低い、Cさんは車庫入れの時にブレーキが強くスコア低い、などの傾向が見えてきます。これらのデータを活用すれば、より具体的に適切な安全運転指導を行うことができます。

    安全運転だけじゃない走行データの利活用

    安全運転の推進による事故削減以外だとどのような分析をされているのでしょうか?

    様々な文脈で走行データの活用に関して相談をいただいてます。例えば、勤怠データと走行データをかけ合わせて残業の多い社員の訪問場所や移動時間の分析を行い残業時間を削減するための示唆出しをお手伝いしたり、営業活動のログと走行データをかけあわせて移動時間を削減するためのエリア戦略の示唆出しやターゲティング戦略のお手伝いをしたりもしました。物流系のお客様だと、渋滞に頻繁にひっかかるのを避けるためにまずはどの車両がどこへ行く時にどれくらい渋滞にひっかかっているか可視化したいといったご相談などもいただきます。弊社としても、移動データをビジネスシーンで課題解決に活かすためならスピーディーに新たなソリューションを提供するといったスタンスでやらせていただいているので、様々な文脈で相談をいただくことは大変うれしいことだと感じています。

    さすがデータサイエンティストですね。データの分析は難しいですか?

    データを分析する際に大事なのはデータを取得してクレンジングするといった分析の前準備です。複数のデータベースに散在しているデータをDWHという統合基盤に集めた上でSQLを書いてデータをジョイン(繋げる)したり、1つのカラムにデータが複数入っている場合は取り出して加工したりと、これらの作業には専門知識が必要です。このような背景もあり、直近で統合分析基盤の構築サービスなども開始しており、移動データの利活用を推進するために着々と足元を整えているところです。

    今後の取り組みについて教えてください。

    今後は移動データ×〇〇の文脈でたくさんのユースケースに対応できるようお客様のお話をじっくり聞いていきたいと考えています。何かお悩みのことがあれば移動データを価値に変える専門家集団であるSmartDriveのデータサイエンスチームにお気軽に相談いただければと思います。