投稿者: sasaki

  • 営業活動を底上げする!最新セールステックまとめ

    営業活動を底上げする!最新セールステックまとめ

    さまざまな業種において業績の向上や営業活動、業務効率化などを支援するセールステック。最近では大企業から中小企業まで、新たな営業スタイルには欠かせないツールになっているようです。この記事ではセールステックとはなにか、どのようなツールがあるのかをまとめてご紹介します。

    そもそもセールステックとは?

     

    セールステックとは、営業(Sales)と技術(Technology)を掛け合わせた造語であり、似たような意味を持つものに、金融×技術である「フィンテック」や農業×技術の「アグリテック」、さらに教育×技術となる「エドテック」などが存在します。

    スタートアップやベンチャーキャピタルの最新動向をリポートし、コンサルティングも手掛ける米国・「CB Insights」が公開しているカオスマップによると、セールステック市場は大きく7つの領域にカテゴライズされており、すでに多くの企業が参入しています。

    出典:CB INSIGHTS

    国内でも有名なセールスフォース、マルケト、ベルフェイス、Tableauは、世界中に多くのユーザーを有するセールステックであり、いずれかのカテゴリに特化、あるいはいくつかの領域で複合的にサービス提供しています。

    1.「Sales Enablement & Acceleration(営業最適化・加速ツール)」

    MAツールでマーケティング部門で大量のリード(見込客)を確保したとしても、営業部門との連携がうまくできていなければリードをとりこぼすことになってしまいます。そこで必要となるのが、 MAと顧客管理であるCRMをつなぎ、効率的かつスピーディーな営業アクションを可能にする、Sales Enablement(セールスイネーブルメント) とAcceleration(アクセラレーション)の活用です。

    このうち、営業活動全体の最適化を目指す概念がセールスイネーブルメントであり、2014年頃から海外のビジネスシーンで使われ始めました。現在では以下のようなサービスが存在し、業業態・規模とマッチしたツールを活用すれば、併せて営業加速ツールにもなります。

    セールスフォース・・・世界最高峰のユーザー数を誇るセールステック。日本最大級の不動産・住宅情報サイト、「LIFULL HOME’S」の新プラットフォームなど、国内でも数多く採用されています。全方位的な顧客・見込み客管理から、見積書・請求書管理の最適化、AIによる適切なアドバイスにより、営業力の向上まで狙える優れものです。

    e-セールスマネージャー・・・国内トップシェア誇るセールステックであり、NECやGMOなどそうそうたる大手グループ企業が、営業部門の業務改善のために導入しています。約80%がインサイドセールスといわれる米国と、フィールドワークが主体である国内企業との違いを反映させた、シングルインプット・マルチアウトプットが売りの純国産SFAです。

    UPWORD・・・大手企業の多くが導入し、満足度が高いことでも知られるセールステック。訪問先で得た情報を簡単に更新でき、Salesforce CRMのデータをもとに、それを地図上で可視化できます。また、営業スケジュールやTODO管理、訪問先へのナビゲーション機能など、営業の加速化に役立つコンテンツも満載です。

    2.「Customer Experience(顧客体験)」

    サイトを訪れた顧客に対し訪問回数・頻度・目的に応じて、適切なポップアップを表示させるWeb接客ツールや、疑問・質問に24時間体制で答えるAIチャットツールなどがこの領域に属し、サービス名としてはMA(マーケティングオートメーション)と呼ばれます。ユーザーのオンライン体験をより快適かつ便利なものへと変え、売上を伸ばすこと目的としたツールです。

    国内で提供しているMAは基本的に、ECサイトなどBtoC向けに活用されるのがほとんどですが、世界最大のメルマガ配信サービスである「MailChimp」や、「マルケト」などは、BtoB向けサービスやSaaSなど、あらゆる分野の企業で導入されています。

    マルケト・・・全世界で約6,000社もの企業に導入されている、マーケティングオートメーションツール。メールからウェブ、ソーシャル、広告まで、幅広い顧客との接点を通じ、適切なタイミングで適切なコンテンツを届けることが可能です。
    MAJIN・・・2010年に設立されたマーケティングテクノロジー・ベンチャー、(株)ジーニーが提供。見込み客の行動や反応を点数化する「AIスコアリング 」が、ターゲティングに役立つと評価が高いほか、各SFA・CRMとの連携により、営業のスピードアップを図ることもできます。

    SATORI・・・メールアドレスがわかっている実名リードだけでなく、お問合せ前の匿名リードも管理できるのが持ち味。ユニ・チャームやアデランスなど、約500社以上が導入しています。

    3.「General CRM(顧客関係管理)」

    CRMとは、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント、つまり顧客との関係を管理するプラットフォームのことです。出先での商談や顧客管理、メールトラッキング、パイプライン管理などがこちらに当てはまります。
    世界的にもっとも支持を集めているCRMといえば「セールスフォース」です。カテゴリー1の項目で紹介しましたが、こちらはセールステックのあらゆるカテゴリーを網羅する、統合型営業支援プラットフォームと言えるでしょう。

    カスタマーリングス・・・ECビジネスに特化しLINE配信にも対応しているほか、RFM・LTV分析機能を有しているため、デジタルの先でも顧客をリアルに感じ取り、PDCAの高速化が可能。

    ちきゅう・・・「ちょうどいいCRM」がテーマのサービス。無料トライアルもあり、月額料金もリーズナブル。顧客・TODO管理やデータの見える化、インターフェース内でのディスカッション機能などの基本性能は抑えつつ、シンプルで使いやすいと評判のCRM。

    R-CRM・・・マイクロソフトの認定パートナー、Rグループ(株)がリリースしている提案型CRM。専属のSEがサービス利用企業の業種・規模などに併せ、必要と考えられる機能を組み合わせフル・カスタマイズできるのが特徴。

    4.「Customer Support(カスタマーサポート)」

    この分野は、誰しもが必ず何らかの商品・サービスの「カスタマー」であるため、もっともイメージしやすいものではないでしょうか。顧客の疑問や問題を解決するカスタマーサポートを最適化する領域のことを言います。

    フレッシュデスク・・・ヘルプデスク機能の提供・最適化はもとより、メールをチケットという単位で管理し対応を効率化できるツール。

    ゾーホーデスク・・・TwitterやFacebookと連携し、管理画面からSNS経由で受信メッセージへ返信できる。

    5.「Intelligence and Analytics(インテリジェンス・解析)」

    営業活動で得たデータを最大限活かしきるためのソリューション領域を指します。高度なデータ・マイニング(掘り起こし作業)を自動化したり、各ツールのKPIをダッシュボード化したり、GUIで容易にデータ分析可能なツールがこのカテゴリーに属します。会話内容のデータ化やサマリー作成、成約につながった営業トークを分析してパターンを読み取るなど、営業上のデータ活用を最大化させることでユーザー企業の売上に結びつけることが目的です。

    このインテリジェンス・解析のカテゴリーは、企業規模や業種によって求められる機能が大きく変化するため、数あるサービスの中から自社のビジネスモデルとマッチするものを、適切に選びましょう。

    IBM SPSS Modeler・・・短期間で効果のあるアクションからスタートし、分析結果にもとづくことで高いマーケティング効果を得ることが可能。
    Tableau・・・ビジュアルデータ分析によって、次にとるべきアクションにつながるインサイトを引き出すツール。データ制限なく探索しながらダッシュボードを作成、たった数回のクリックで分析が実行可能。

    6.「Contact & Communication(コンタクト・コミュニケーション)」

    顧客との直接のやり取りや、インバウンド対応の質を向上させるためのソリューション領域で、メール・チャット・電話などマルチチャネルからの問い合わせを一元管理することで、効率的で満足度の高いカスタマーサポートをするツールが該当します。
    カテゴリー4と密接な関係を持っており、支持を集めているものには以下のようなサービスがあります。

    ベルフェイス・・・トークスクリプトや資料共有など、訪問営業で可能なことをオンラインで簡易化するだけではなく、1つのメモを双方で同時に閲覧・編集できる機能や、普段より明るいイメージに映るビューティーモードなど、インサイドセールスをさらに加速する機能が満載。

    オントーク・・・1日当たり933円〜という業界最安クラスの料金設定と、対面営業と全く変わらない営業環境を提供してくれると評判のインサイドセールスツール。マンツーマン営業だけではなく、多人数でのオンラインミーティングにも対応しており、移動コストを削減することも可能です。

    LiveCall・・・マルチデバイス対応でアプリのダウンロードも不要。サイトにボタンやリンクを設置するだけでビデオ通話を開始できるのが魅力。アカウントやデータの連携も可能なため、シームレスなユーザージャーニーを設計することが可能です。

    7.「People Development & Coaching(人材開発・コーチング)」

    数あるセールステックカテゴリの中で、もっとも難しくデリケートなのがこの人材開発・コーチング。IoTツールによって効率化されるのであれば、経営者や人事担当者としては、ありがたい限りではないでしょうか。最終的に人が介入する必要はありますが、以下のようなツールをフル活用すれば、人材に関わる業務を簡素化・効率化することも可能です。

    Teachme Biz・・・普段から使用しているスマホやタブレットから写真を取り込んで簡単にマニュアルを作成できる。更新した際もメールなどで確実に共有できるので、スタッフ間の情報のズレを無くします。
    セレブリックス・・・営業代行会社として、これまで1万商材以上を手掛けてきた「営業のトップセールス集団」が作成した、クラウド型オンライン研修パッケージです。活字や絵図だけでは理解・習得することが難しい営業ノウハウを、語りかけ調の講義アニメーションと実演動画で、誰でも飽きずに学習できるのが特徴。
    TANREN・・・日常的なシチュエーションでの好事例や営業マニュアル、店頭での研修模様などを動画で共有・可視化できるナレッジシェアアプリ。データだけでなく現場を「見える化」することで、営業スタッフのスキルアップ効率化や、管理者による正当な評価などに役立つ。
    Qstream・・・営業マン個人だけでなく、組織としてのパフォーマンスを向上させるため、知識やスキルの強化を図るモバイルラーニングアプリ。営業担当者と管理者とのギャップを無くし、「誰が・だれに・いつ・何を」コーチングすべきかを把握・提供することで、効率の良い人材開発・育成に寄与してくれる。

    8.車両動態管理

     

    車両を日常的に利用するのは運輸業や運送業だけではありません。訪問診療や介護サービス、営業、役員の移動時など、車両はさまざまな業界・用途で利用されているのです。どのようなルートを組めば営業先へ効率的に回ることができるのか。急なヘルプが必要になったが、今・誰が・どこにいるのか。車両動態管理ツールは、車両とドライバーの情報管理だけでなく、リアルタイムの位置情報による適切な指示出し、日常的な配送ルートを把握することでの適切無駄のない配車、ドライバーの労働時間の最適化など、営業効率を大幅に向上させる機能が充実しています。

    さらには、ドライバーの運転情報が取得できるため、個々のドライバーの走行データを安全運転教育に役立てたり、ドライバーの評価へつなげたりすることも可能。実際に導入したことで、売り上げが前年比10%アップという事例もあります。そのうえ、車両の稼働状況が可視化できれば、車両削減によるコストの見直しもはかることができるのです。

     

    スマートドライブが提供するクラウド車両管理サービス「SmartDrive Fleet」は、シガーソケットにデバイスを挿入するだけでリアルタイムな走行状況の把握、運転日報の自動作成、車両情報の一元管理が行える動態管理システムです。安全運転診断機能も搭載されているので、ドライバーの運転のくせや傾向が取得でき、個人にあった適切な安全運転指導も可能に。事故の削減、業務の効率化、車両の関するコストの適正化を図りたいなど、営業に関して多角的な効果を実感できます。ぜひ、最先端なセールステックの一ツールとして、取り入れてみませんか?

  • 社会問題を上空で解決する—福岡発ドローンスタートアップの挑戦 (前編)

    社会問題を上空で解決する—福岡発ドローンスタートアップの挑戦 (前編)

    上空の利用許可を売買する「ソラシェア」

    まずは、株式会社トルビズオンと清水さまの自己紹介をお願いいたします。

    福岡のドローンスタートアップ企業、トルビズオンで取締役COOを務める清水淳史です。僕が参画したのは、ちょうど1年半前、大学に在学中のとき(現在は休学中)。COOとしての業務に加え、九州大学でインターフェースデザインを専攻していることもあり、社内でもWebプラットフォームのUIデザインや資料作成などを担当しています。

    現在のメンバーは6人ですので、経営企画から営業、ファイナンス、資金調達まわりまで、それぞれがマルチに対応している形です。

    トルビズオン自体は、2014年の4月に設立した企業で、代表の増本が一人でドローンの教育やドローンを導入したい企業へのコンサルティングを行ってきました。その経験の中で空の権利の問題に気づき、私と冨田が参画したタイミングで「sora:share(以下、ソラシェア)」という上空シェアリングサービスへとピボットしています。

     

    代表の増本さまと出会ったきっかけはなんだったのでしょうか?

    ちょうど1年半前、「Slush Tokyo」というスタートアップイベントに学生ボランティアとして参加していて、二人に出会いました。その時に、代表からソラシェアのアイデアを聞き、「間違いなく、これは世界を変えるビジネスだ」と。そこから間髪入れずに参画を決めました。

     

    ソラシェアのビジネスモデルについて、詳しく教えていただけますか?

    トルビズオンはドローンの機体を取り扱うメーカーではなく、空域管理をしている企業です。長年、ドローン事業に携わってきた代表が常にぶつかってきた課題が、土地の所有者が日本の民法で上空の権利(専門家の意見では地上300mまで)を持っていることでした。これはつまり、他人の土地の上空ではドローンが飛ばせないということです。

    しかし、人口が減少する中で物流や輸送を変えていく必要が出てきましたし、そのうえで米国で構想されているUberのドローンタクシーやAmazonのドローン宅配を日本でも実現するには、この法規制が非常に大きなハードルになります。ドローンを活用するには、結局のところ他人の土地の上空を飛ばすしか方法がありませんから。その課題を解決するために、土地の所有者が持っている上空の権利のマーケットプレイスを作り、権利の売り買いを促進する場を提供しているのです。

    上空の許可取りは思っている以上に難しい

    今の規制下でドローンを飛ばす場合、事前に許可を取る必要があると思いますが、どのような内容になるのでしょうか。たとえば、「何時何分から何時何分の間、上空何メートルを使用させていただきます」というような。

    そうですね、時間や高さに関してはおっしゃる通りの内容で各所に申告、許可取りをしなくてはなりませんが、実際にはいわゆる“グレーゾーン”の中で飛ばしているユーザーも多くいます。許可を得ずに無断で飛ばすことはもちろんNG。しかし、山で飛ばす場合など、土地の所有者が分からないこともあり、許可取り自体が難航するシーンもあるんです。

     

    許可を取りたくて問合わせをしても、「管理者がいません」と言われてしまうと、動けなくなってしまいますね。

    BtoB向けでも同じ課題にぶつかりますが、ドローンのBtoB世界市場は、すでに何千億円という非常に大きな市場へと成長しており、長期的には10兆円を超えると言われています。だからこそ、弊社としてはこの問題をいち早く解決したいなと。

    私たちのお客さまでもある大手インフラ企業様は、高速道路の橋梁点検をドローンで行っています。今までは足場を組んで、調べて、また崩して…というように、長い時間とコストがかかっていたところ、ドローンを活用することでその手間やコストを大幅に削減することが可能です。人手も時間も必要最低限のみ、現在ドローンがもっとも活躍する分野だと言えますね。

    ただし、日々の点検をドローンで行うにはそれなりの訓練が必要ですし、訓練用の場所が必要になってきます。今までは体育館などを借りていたとのことですが、雨天時、突風時など、天候などに合わせたさまざまなシーンで練習しなくては、実際の現場で通用するスキルに到達できません。そこで私たちのサービスを活用いただき、練習をしていただいております。

     

    体育館ですと風の影響を受けませんし、本番環境とは大きく異なります。とくに点検という重要な業務で使用されるのであれば、本番環境に合わせて訓練することは非常に大事だと思います。ちなみに、ビルの上空でドローンを飛ばす場合、ビルのてっぺんから上空の300メートルという計算になるのでしょうか?

    ビルの上空で飛ばす際は不動産会社が管理をしていますので、もちろん許可申請が必要です。

    また、国土交通省が決めているドローンの高度規制は地表から150メートルの高さまでです。すなわち他人の土地上空でドローンを飛ばす際は土地所有者の許可が必須となります。県道は県が管理していますし、道路も河川もそれぞれまた違う地権者がいますので、ドローンが通る道にはすべて許可取りをしなくてはなりません。

    ソラシェアで築く「空の道」

    現在は土地の所有者と交渉をして、「ソラシェア」にご登録いただいているのでしょうか?

    そうですね。先日プレスリリースを出したばかりですが、まずは森林を大きなターゲットに進めています。森林は、日本国土の3分の2を占めており、その多くが森林組合に管理を委託されています。組合と提携を結び、まずは山口県下関市から森林上空を用いた「空の道」をソラシェアのプラットフォームに掲載しました。今後も森林が次々に追加され、「空の道」が構築されていく予定です。

     

    「空の道」という言葉、とても素敵ですよね。

    ソラシェアのプラットフォームで空の道がどんどんつながっていく。それによって、小口物流などのありかたを変えていきたいのです。

    権利ビジネスになりますので、これからドローンの安全性能が向上するにつれて、法改正が行われるでしょう。そうなると、まずはドローンの道路交通法のようなものができるのではないかと考えられます。たとえば上空100~150メートル間をドローン専用航路として、認められたドローンのみを飛ばせるようにするというような法律ができるとか。

    そうした状況下で、トルビズオンがどのようにマネタイズしていくのか。たとえば、荷物の配送でドローンを利用する場合、「ドローンの空港」が必要となってきます。私たちは、その土地所有者の権利を持っていますので、国によってドローンの空の道が決められた先は、需要に合わせてドローンポートを配置していくビジネスモデルへとシフトしていこうと考えています。

     

    国が認めた移動領域であれば、自由にドローンを飛ばすことができるようになるのでしょうか?

    おそらく、認められた事業者や個人のみがその領域を飛ばせるようになるでしょう。しかし、移動領域の下は、土地所有者の権利が明確化されていますので飛ばすことはできません。ドローンは充電や宅配の際に必ず地上に降りてくる必要がありますので、その際は土地所有者の許可を得る必要があります。

     

    高速道路のように、もう少し自由な幅があるといいですよね。
    ここは国が管理しているので許可がないと使えないけど、ここからここの間は、一般の貨物が使ってもいいみたいな。

    それができたとしても、空の権利や空の資産化は、トルビズオンとしても押し出していきたいですし、ゆくゆくはドローンを使った空の空中広告が出せるようになるなど、空に投資する流れが作れたらいいなと思っています。

     

    >>>後編へつづく

     

  • デジタルマーケティング領域で第一線を走るナイルがモビリティ領域を推進するワケ -後編

    デジタルマーケティング領域で第一線を走るナイルがモビリティ領域を推進するワケ -後編

    ナイルがMaaSミライ研究所をスタートしたワケ

    2019年7月に、モビリティ革命についてさまざまな観点から検討する「MaaSミライ研究所」をnoteでスタートされましたよね。そこにも意外性を感じました。
    もし、CASEで言った場合も、C(コネクテッド)、A(自動化)、S(シェア)、E(電動化)なのでリースが含まれませんし。カーリースはMaaSのどこに位置付けられるのだろうか、なぜMaaSなのかと…。中には、シェアの中にリースの要素が含まれているのか、「カルモ」のどの部分が、MaaSに位置付けられるのか、少し疑問に思う方もいると思います。

    ※MaaS:Mobility as a Service(サービスとしての移動)の略

    CASEという言葉は、ダイムラー社が中長期の経営ヴィジョンとして発表したことで広がったものですが、自動車領域におけるサービス革新や技術革新を考慮したとき、一部で違和感を感じました。というのも、CASEのConnected、AautonomousSharing、Electoric vehicleを表しますが、Sharingという言葉がしっくりこない。今、目の前で起きているモビリティの革命とは、「所有」から「利用」へのシフトです。つまり、「共有」ではなく「利用」であるべきで、CASEのSは、”シェア”ではなくて”サービス”ではないかと。私は、サービスというレイヤーの中にカーリースが入ると考えていますし、さらに厳密にいうと、カーリースはサービスとしての性質は、要はサブスクリプションです。そのため、MaaSの概念を広義で捉えたときに「カルモ」はMaaSにあたり、今後さまざまな付加機能をつけていくことで、よりMaaSに近づいていくと考えています。

    ではなぜ、シェアリングではなくサービスなのか。

    例えば世界で見るとUberやLyftなどのライドシェアはシェアリングを代表するビジネスです。登録すれば、隙間時間でドライバーとして稼ぐことができますよね。これならシェアリングという言葉が腑に落ちますが、自動運転やAIで路線変更するバスは?様々な交通手段をマルチモーダルにつなぐアプリケーションは?と考えると、違うような気がしてしまうのです。”共有”という言葉より、“利用する”という言い方の方が適切といえるモビリティサービスも多いですし、今後もっとモビリティ関連のサービスは増えていくはず。要するに、アセットとして提供するのではなく、サービスとして提供すること−−−この概念が非常に大事であると。

    その上で、CASEのSが、CとAとEを全部従えているのです。Sがあるから、CAEがある。なぜなら、ConnectedもAutoloadusもElectric vehicleも、すべて利用者ニーズに紐付いているからです。サービスとして利用する車、移動手段があるからこそ、自動運転の技術やコネクテッドの情報、給油が不要なErectric vehicleが活かされます。また、情報産業での5G革命・AI革命・IoT革命も、車産業からすると全部Sに紐づいていく、あるいはAに対して寄与していくでしょう。そうした総合的な観点からSはServiceじゃないかなって。

    ナイルが今後実現したいのは、カルモで車を利用している方が、フードデリバリーでその車を利用したり、ご近所さんの買い物代行をしてくれたり、みんながハッピーになる仕組みを作ることです。

    こうした構想をひっくるめて、カルモはよりMaaSに近づいていくという自負があります。そのためには、このMaaS(モビリティ革命)がどれだけ素晴らしいか、面白いかをしっかり世の人に伝えていかなくてはなりませんし、参入する事業者をもっと増やしていかなくてはならないと思ったため、MaaSミライ研究所を立ち上げました。

     

    現代には多様な技術がありますが、技術があるからサービス作るという考えは、順番が逆じゃないかなと思うことも少なくありません。どんな先端技術でも、サービスに紐づかなければ使いものになりませんし、もったいない気がします。
    そこで、MaaSミライ研究所で伝えていきたいのはどんなことでしょうか?

    世の中にあるいろんなMaaSの形を発信して、今まで興味がなかった人にもモビリティ革命にある今を意識していただきないなと思います。自動車産業のゲームチェンジって、こんなにインパクトがあってすごいことなんだって、思ってもらえるといいですね。

     

    ここまできて、ナイルが「カルモ」を始めた理由からMaaSミライ研究所を立ち上げるまでの経緯がすべてつながりました。今後、ナイルとして進みたい方向性について教えてください。

    海外だとライドシェア一強という状況ですが、おそらく車を利用したビジネスは他にもあるはずです。モノを運ぶとか、料理を運ぶとか、情報を運ぶとか、人ではない何かの移動を、カルモの利用者たちと実現できないかと考えています。

    また、車を販売する立場だと、売り切ることだけに注力します。車を売って、あとはお客様の好きなように利用するのはもちろん当たり前のことですが、車って使えば使うほどコストもかかる。そこをコストではなくレベニューにできないかなと。「車の所有=コストがかかる」から持たないのではなく、稼げることだという世界観を作っていきたいんです。つまり、車を売ることと、車を使ってお客様がマネタイズ(収益化)することを同時に提供するというイメージです。

     

    それは、極端に言えば0円で車に乗れるということでしょうか?

    スマートドライブの「Smartdrive Cars」も、取得したデータによって車のコストを下げることができますよね。可能性は無限です。今までにない車の可能性を探っていきたいですね。

     

    ポジティブな機能がユーザーとの接点を増やす

    スマートドライブと共同で「こんなことが実現できそう」というアイデアやイメージはございますか?

    そうですね、たとえば車の万歩計「くる万歩計」とかどうでしょう?笑 

    BtoC向けに見守りサービスや危険運転通知のデバイスを提供している企業がいくつかありますが、注意喚起はユーザーがワクワクできるものではありませんよね。私は普段から健康のためにも万歩計をよく利用しますが、頑張って歩いたなと思った時だけ立ち上げて歩数を確認しているんです。そこで「今日は9,000歩も歩きました。お疲れ様です!」なんて言われると、おお、頑張ったな、楽しいな、と前向きな気分になるんですよ笑

    それと同じで、運転をした日の終わりにアプリを開いて「今日の運転は良かったね」とやんわりフィードバックがもらえる方が、個人的にはいい気がしていて。

    ただ、そこにお金をかける人はなかなかいないので、無料で提供できるようにしなくてはなりませんが、そういうサービスをスマートドライブのデバイスを利用することで出来たら面白いなと思いました。「カルモ」のアプリ立ち上げると、くる万歩計が出てきて、「今日の走行距離は40km、急ブレーキの回数は0回なので、◯◯ポイントです」と表示するとか。そうするとゲーミフィケーションの感覚で安全運転につなげることができるでしょ。あとはすごろくのように、安全運転で60km走ったら6マス進めるとか。楽しくポジティブに利用して欲しいなって思います。

     

    楽しみながら自然と安全運転を意識づけるのは、素晴らしいアイデアですね。
    カルモで車を利用すると、付随していろんなサービスが付いてくるし、個人も稼げる仕組みがあるからと、利用者がより増えそうです。

    保険の契約者向けアプリって、契約後は、殆ど利用されないイメージがあるんですよね。利用する動機がなければ眠ったままだし、そのまま削除されてしまうことも。そこを改善するには、アプリから車のメンテンナンスを申請できたり、例えば先ほどの万歩計みたいな機能も含めたり、定常的に何かしら利用する理由を作ることとコンテンツ的な要素が必要です。そうすることでユーザーがこまめに訪れるようになり、アプリ内のカルモの車で稼ぐ!というオプションを見て「ちょっとやってみようかな」と思う。そうやって自然と利用されるUXが作れたらいいなと思っています。

    未来は現在の延長にあるので、攻めすぎたコンセプトにはしたくない。人の生活に根ざした体験作りをしていくためにも、カジュアルな接し方からスタートできればいいのかなって。

     

    そういう意味では、「アンケートに答えたら◯◯ポイントがもらえる」というわかりやすいしくみでもいいかと思いますが、いかがでしょうか。「カルモ」の場合、契約者が車の運転距離や安全運転度合いに応じてポイントが付与されるとか。

    または物流倉庫系の企業とAPIでつなぎ、荷物の一部を運べる人を募ることもできそうです。カルモの利用者が車での帰宅ついでにラストワンマイルをフォローし、ポイントをもらうとか。

    そういう仕組み作りも考えています。

    最近、実は子どもが生まれたばかりで目が離せないので、スーパーやコンビニの買い物代行サービスを利用するようになりました。200〜300円の配送料をプラスするだけで、自宅まで生鮮食品を届けてくれる、利用者としては大変ありがたいし助かるサービスですが、スーパーとしては殆ど収益になりません。でも、高齢者や小さなお子様がいる主婦の方など、配送のニーズは確実にあるでしょう。そこを、ドライバーが空き時間を活用して補えるようにできたらいいなって。

     

    モノを買う・モノを運ぶニーズはいつでもどこにでもあるものです。

    実は過去に、IKEAで面白いサービスがありました。今でこそ、ECサイトがありますが、昔は現地に行かなければ商品を購入することができなかったんですよね。ただ、IKEAがある場所は限られています。そこでIKEAが独自に開発したのが、商品を買い物をして欲しい人と、その希望商品買ってくる人をマッチングするサービスです。

    「IKEAのあのソファーが欲しいけど、家からは遠いし、車もないし…」
    「私は近くに住んでいるので、代わりに買ってきましょうか。配送も対応しますよ。」

    今はネットショッピングが簡単にできる時代なので、こういうやりとりを見かけなくなりましたが、あってもいいと思うんですよね。

    そうですね。フードデリバリーとか。

     

    Uberも日本では規制の壁をなかなか越えられず、フードデリバリーに舵を切ったように感じます。

    本国のUberも「UberEATS」の取扱高が20%を超えてきています。もしかすると、5年後には「UberEATS」の会社になっているかもしれませんね。

     

    最近ではいろんなプレイヤーがMaaSに参入しているのが非常に面白いなと感じています。

    例えば、自動車業界とは異業種である不動産業界もMaaSを無視できなくなるはずです。交通と住む場所の兼ね合いで、通勤しやすいからと、東京駅圏内から1時間以内のところを選んでも、自動運転が一般化すれば仕事をしながら出勤できるようになりますし。

    通勤を含む移動が習慣化すると、あまりじっくり考えることはありませんが、打ち合わせや商談での電車やバス、車での移動に、人は月々何十時間、年間だと何百時間以上も費やしているわけです。そうなってくると移動時間そのものが無駄なんじゃないかという考え方が生まれてきますし、思いもよらなかった効率化系のサービスが交通系の業界に打撃を与えることもあるでしょう。

    いろんな業界が参入してくれると盛り上がりますし、MaaSの浸透率も上がります。みんながMaaS、MaaSと言えば言うほど、世の中がMaaS色に変わっていく。だからこそ、この流れにうまく乗りつつ、MaaSの本質を伝えていきたいですね。

     

    そうですね。本日は有難うございました。

  • デジタルマーケティング領域で第一線を走るナイルがモビリティ領域を推進するワケ -前編

    デジタルマーケティング領域で第一線を走るナイルがモビリティ領域を推進するワケ -前編

    ナイル、第三の事業の柱はモビリティサービス

     

    まずはナイル株式会社についてご紹介願えますか?

    ナイル株式会社(以下、ナイル)は2007年、私が大学在学中に起業した会社です。私が幼い頃から目標にしていたのは、何十年後も世の中に残るものを作りたいということ。

    そこで「デジタルマーケティングで社会をよくする事業家集団」をビジョンに掲げ、現在は3つ事業を展開しています。1つは、インターネット経由での集客や売り上げの課題を解決するデジタルマーケティングのコンサルティング事業。そして、メディア運営を中心としたスマートフォンメディア事業。この事業では「Appliv(アプリヴ)」というアプリの紹介サイトを主軸に、自社メディアをいくつか展開しています。そして、3つめの柱として始めたのがモビリティサービス事業で、車のサブスクリプションサービス「マイカー賃貸カルモ(以下、カルモ)」の提供です。

     

    SEOを中心としたWeb集客やWebメディアを中心に成長してきたナイル社ですが、なぜ、モビリティサービスの事業を始めることになったのでしょうか?

    もともと、私自身がモビリティの領域に興味を持っていたんです。自動車業界は今、100年に一度の変革期を迎えており、コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化と、さまざまな技術革新やサービス革新が今後10年ほど起こり続ける、非常にホットな市場です。それなのに、自動車をテーマにしたスタートアップ企業は数えるほどしかいない。そこに、インターネット業界にいた当社が技術・ノウハウを使って参入することで、これまでにない新たなサービスを提供することができるのではないか。そう思って、検討をはじめました。

     

    モビリティ関連のスタートアップには、スマートドライブのような車両管理から自動運転、カーシェアなど、多様なサービスがあります。その中でマイカーリースに決めた理由はなんでしょうか?

    まず、最近ニーズが拡大しているシェアリングサービスが選択肢の一つとして考えられました。しかし、カーシェアリングの市場はおおよそ300億円と言われ、車販売の市場は15兆円ほど。所有と共有のレイヤーで見ると、共有の方が高い成長率で成長しているので大きく映りますが、市場としては所有の方が100倍以上も大きいのです。

    都心部は交通インフラが整っているので車を所有する人の方が少ない、しかし地方に目を向ければ車は生活必需品で、所有率も何倍も高くなる。そうした状況を踏まえ、カーシェアリングという共有のレイヤーで戦うよりも、所有というレイヤーでイノベーションを起こした方が大きいインパクトが与えられると考えました。

    データ解析など、コネクテッド的な領域へのサービス展開も考えましたが、ナイルはマーケティングに強みを持つ会社。ですので、大量のビッグデータを解析するBtoB向けのビジネスより、私たちが得意とする、人の心に訴求していくビジネスを考えようと思ったのです。

    経営者としては、カルモの提供に対してどのような思いがあるのでしょうか?

    車を持つ上で、多くの方が、分割払いを利用しています。高額だけど、手持ちの資金を減らさず車に乗りたい。だから分割払いを利用する。これはリースだろうが、ローンだろうが同じことです。しかし、ローンで分割払いを行おうとしても、割と多くの方が審査に通過せず、車の所有を断念せざるを得ない。そこで「カルモ」が自動車金融の商品の裾野を広げ、毎月定額で、キャッシュフローを一定にすることで、経済負担を少なく、出来るだけ希望する車に乗っていただくことで、車の利便性や楽しさを届けていければと強く思っています。

     

    今現在のカルモのフェーズや、今後の展開を伺えますか?

    この一年ぐらいは、PMF(プロダクト・マーケット・フィットの略)に到達するために試行錯誤をしている段階でした。シンプルに新規のお客様の契約を取るにはどれほどのコストが必要かなど、市場全体の中で、顧客のニーズを踏まえ、商品やサイト設計、プロモーションまわりの、チューニングを行ってきました。それが安定して見合うようになってきたのが本年(2019年)の春くらいです。

    最近は積極的にWeb広告にも投資して、事業規模を拡大させるフェーズに入っています。事業の拡大に向けて人材採用にも力を入れていますし。Web広告と合わせマス広告のトライアルも開始しましたので、より多くの方にカルモを知っていただき、利用者数を増やしていきたいと思っています。

    現在のフェーズは非常に重要だと考えており、既存事業の利益と2019年春の調達資金を、このモビリティ事業を中心に注いでいます。

    それは、ナイル株式会社として、今は「カルモ」に大きなパワーバランスをかけているということでしょうか?

    そうですね。まず、ナイルは昔から多角化経営に取り組んできたため各事業の土台がしっかりとできていますし、今はどの事業もバランスが良い状態です。メディア事業で言うと、僕と事業責任者が月に一回食事しながら話をするだけ、という程度には手が離れています。

    既存事業は、各種トライアルをしつつ増収増益を目指してもらい、「カルモ」は、一気に規模を大きくするフェーズに突入したので、そこに対して投資していくという考え方が正しいですね。

     

    >>>後編へつづく

  • アリが自動運転技術を前進させ、縦割りが日本のMaaSをダメにする

    アリが自動運転技術を前進させ、縦割りが日本のMaaSをダメにする

    東京オリンピック・パラリンピックを控える日本では、大会期間中の交通渋滞を避けるため、テレワークや時差出勤、一部区間の交通規制など、さまざまな対策が検討されています。そんな中、「アリの行列は渋滞しない」と提唱する「渋滞学」の教授がいると聞きつけ、東京大学先端科学技術研究センターにやってまいりました。

    アリの行列は渋滞しない

    ――西成教授が取り組む「渋滞学」とはどのような学問なのでしょうか?

    渋滞が起こる原因を調査し、解消に導く学問です。渋滞というと、車の渋滞を思い浮かべる方が多いと思いますが、人の混雑から物流、在庫、工場の生産ラインなど、流れるもの全てが研究対象になり得ます。

    ――なぜ、渋滞に興味を持ったんですか?

    「渋滞学」以前は、水や空気の流れを研究していました。でも、流れの学問自体は古くからあるもので、思いつく疑問は解明しつくされていたんですね。新たな発見のある研究がしたくて悶々としているうちに、30代も半ばに差し掛かろうとしていました。

    そんなとき、ドイツのケルン大学に留学し、卒業研究のサポートをする機会に恵まれました。そこで、「アリくん」というあだ名の学生と出会ったんです。ドイツ語で「アーマイズくん」。彼が、アリの交通について研究したいと言い出して、みんなで爆笑したんだけど、「待てよ、面白いかもしれない」と。彼とともに一年間研究し、「アリは渋滞しない」という論文を書いたんですよ。これが米国物理学会が発行する世界トップジャーナル『Physical Review Letters(フィジカルレビューレターズ)』に認められたんです。だってそんな研究、誰も思いつかない。まず、アリが渋滞しているかどうかなんて、誰も関心を持っていなかったんですよ(笑)。

    ――着眼点の勝利ですね。なぜアリは渋滞しないと気づいたのですか?

    一列になって歩くアリをひたすら観察していたら、「さすがのアリさんも混んでくるとイライラするのかな」なんて、いつの間にかアリに感情移入していたんです。でも、さらに観察していると、ある程度混んできても、アリは前に詰めないことに気づいたんです。混んできたら詰めない――もしかして、アリはそれだけで生きているんじゃないかって思ったんです。

    ――前に詰めないと、どんな効果があるのでしょうか?

    詰めないことで、アリとアリの間に空間ができるので、動きが止まらないんです。人間は、混んでくると早く前に行きたいと思って詰めるから、動けなくなるんですよ。

    この発見がきっかけで、渋滞解消には車間距離をあけることが大事だと考えるようになりました。車間をあけておけば事故も減ります。アリはすごいことを教えてくれました。

    ――アリが渋滞しているか否かは、どのようにして判断するのですか?

    アリの通行量に注目しました。車道の場合も、混んでくると車が動かなくなりますよね。そうすると、ある特定の区間で見たときに、通過していく車の台数が減ります。アリも、特定の区間の通行量が多いか少ないかで渋滞しているかどうかが判定できると考えたんです。

    考え方は、数学の「中間値の定理」と同じです。アリが一匹なら通行量が少ない。逆にありがビターっとくっついていても動かないので通行量は少ない。だから、アリがほとんどいない状態と、ものすごくいる状態は、通行量がほぼゼロなんですよ。

    ゼロを起点としてアリが増えていくと、通行量がどんどん上がってきますよね。そして、どこからかまた減少に転じて、ゼロになる。このピークから先、三角形の頂点を下るところからが渋滞だとピンときまして。私の中で、数学とアリがくっついた瞬間ですね。

    「働かないアリ」はサボっているわけではない

    ――アリを観察していて、他にも何か気づいたことはありますか?

    列からたまに外れるアリがいるんですね。「働きアリのうち、本当に働いているのは全体の8割で、残りの2割はサボっている」なんて言われますが、サボっているように見えるアリも、実は、新しい巣やエサを探す役割を担っているんですよ。

    ――大企業の新規事業部みたいですね。

    そうなんです。全員が同じ事業をやっていては、それが立ち行かなくなったら終わりです。1割2割、うろうろしている社員がいると、飴が落ちているのを見つけるんですよ。

    それから、同じ巣のアリはケンカしないんです。アリは愛に満ち溢れていて、邪なことは考えないんですね。人間も、道路に敵対感が蔓延するとダメなんですよ。譲り合いなんです。

    自動運転で渋滞はなくなるのか

    ――「渋滞のときは車間距離をあけずに詰めたほうがよい」と主張する人もいますね。

    「車間距離をあけたほうが良い」と言うと、批判する人もたくさんいるんですよ。実は、「車間距離あけても、割り込まれたら終わりじゃないか」という投書が山のように来ています。

    道路にいる全員が、「車間をあけたほうが徳だ」と考えてくれれば渋滞は減らせます。しかし、現実はそうじゃないので割り込まれることは確かにある……それが悩ましかったのですが、なんと、自動運転の時代がくるじゃないですか!

    割り込まないようにプログラムしちゃえばいいんです。そうすれば全体の最適化ができるので、渋滞は確実に減りますよ。どう走れば渋滞が減るかは学問的にわかっているので、このぐらいの車間距離のときはこのぐらいの速さとか、ここは隊列走行を組んで交通量を稼いでいるから割り込まないように、といった情報を全てインプットし、AIによる判断に役立てます。自動運転時代は、私にとっても追い風なんです。

    ――自動運転の研究開発もされているんですか?

    大手自動車メーカーと連携して、たくさんやっていますよ。自動運転は、組織の垣根を越えて一緒に取り組むべき課題です。各社が違う規格で自動運転車両を作ったら、車同士が通信しにくくなってしまうでしょう。

     

    自動運転で適切な車間距離を保つ仕組みとは

    ――自動運転では、どのようにして車間距離を制御するのでしょうか?

    電波を使って車両や歩行者を検知する、ミリ波レーダーという技術を活用します。

    目の前の車にミリ波レーダーを発し、返ってくる時間で車間距離を算出します。それに応じて、車間距離が詰まらないように速度調整をするわけです。

    ――自動車メーカーの方にも、アリを用いて説明するんですか?

    そうです。アリだけではなく、イワシの群れや渡り鳥などを参考にしている自動車メーカーもありますよ。車を一種の群れとみなし、通信し合いながら最適な動きをすればよいという発想です。

    生物は偉大です。群れを成す生物って、言葉を交わさずともあれだけ統制をとってやっているわけですから、何かもっとシンプルな方法があると思っています。自動運転は、システムが複雑化すると通信時間かかってダメなんですよ。可能な限りシンプルなほうがいいんです。

    ――5Gの時代になって、そのうえシンプルなプログラムが出来上がったら?

    異次元の世界に突入ですね。人間は、見て判断して行動するまで0.5秒かかると言われていますが、自動運転でミリ波レーダーとAI技術を活用すると、0.2~0.3秒に短縮できると言われているんですよ。5Gになったら、さらに速く通信できるようになるので、より迅速な判断が可能になります。多くの渋滞や事故は、未然に防げるようになるでしょう。

    さらに、昨年、面白い論文が出たんですよ。自動運転だと、前の車から情報をホッピングして受け取ることができるのですが、対向車線の車からホッピングするというアイデアが書かれていました。つまり、対向車線の車から数km先の情報を得られるようになるんですね。感動しました。車同士がコミュニケーションすることで、広い情報を一瞬で手に入れられる。技術の進展によって夢はどんどん膨らんでいきますね。

     

    自動運転にも勝る、究極の渋滞解消法は?

    ――渋滞が改善した国はあるのでしょうか?

    各国がさまざまなアプローチをしているのですが、究極の渋滞解消法は、「休暇分散」なんですよ。実際に、ドイツやフランスでは「休暇分散」が採用されています。「みんなで同時に休んだら、混むに決まってるでしょ」って。わたしも国交省に、関西と関東でGWをずらしましょうと提案したことがありました。結局、当時は非難ごうごうで、実現はしませんでしたが。

    ――それこそ物流が止まってしまうとか、ネガティブな反応だったことを憶えています。

    日本では、「失敗したらどうするんだ」と言われて、私の提案は十中八九潰されていますから(笑)。例えば、オランダは、「やってみてだめだったらそのとき考えよう」というスタンスで、やってから会議するんですよ。日本はやる前に会議して潰すんですよね。この違いは大きい。

    ――失敗だったとしても、やってからのほうが、議論の材料となるデータが多く手に入りますね。

    おっしゃる通り。特に新しい技術に関しては、失敗から学べることのほうが多いですよ。失敗を恐れて動かないことは、死を意味します。

    縦割りが、日本のMaaSをダメにする

    ――今、MaaS(Mobility as a Service)の分野では、多くの企業がしのぎを削っています。西成教授は、現状をどう見ていますか?

    このままでは、どの企業も危ないと思います。MaaSは、ある一部を切り取って単体での成功は難しい。公共交通機関や、タクシー、レンタカー、カーシェアリング、物流、ホテル、そして決済の流れ――こういったもの全てを包含するプラットフォームを協力して作っていかないと、個別最適でそれぞれがガラパゴス化し、結局使われないサービスになってしまいます。

    MaaSって技術先行に見えますが、それだけじゃダメなんです。カオスマップを織りなす企業に求められるのは、競争と協調をうまく線引きし、協調できるところは積極的に組んでいくことです。

    特に、日本の物流業界に対してそう思います。アマゾンは、いまや輸送船や貨物航空機も有しているんですよ。もたもたしていると、アマゾンが全部運びますね。中国のアリババも物流に2兆円近く投資しています。日本企業は二桁少ない。普通に戦って勝てるわけがないです。だったら、まとまるしかないじゃないですか。競っている場合ではない。そこに気づいてほしいんです。

    ――しかし、ライバル企業が協調するのは難しいですよね。

    良い事例があります。味の素、カゴメ、ハウスといった食品会社が「商品は競争、運ぶのは協調」として、共同で物流会社を立ち上げたんです。北海道でも、ビール会社が協力し、JR貨物の同じところに混載して商品を運んでいるんですよ。

    「商品や注文の数は競争だけれど、運ぶのはみんな一緒でいいじゃないか」という時代がきたら物流は変わってきますよね。これ、究極のMaaSですよ。Win-Winなんですよね。

    ――なるほど。企業が垣根を超えて協調するには、どんな工夫が必要でしょうか?

    協調によってメリットが生まれるビジネスモデルを考えることです。例えば、外国人が成田空港に着き、移動して、赤坂のホテルに泊まるとします。スマートフォンで最適なルートが提示され、公共交通機関やタクシーの予約、支払まで一度に行えるようにするには、航空会社、公共交通機関、タクシー会社、ホテル会社などざっと見積もってもそれくらいの会社で利益を配分しないといけませんね。みんなが参加して利益を生み続ける仕組みをつくらないと、「国の補助金でMaaS始めました、補助金なくなりました、さようなら」となってしまいます。

    学会も変わらないといけません。今の学会は分野ごとの縦割りです。歴史ある学問にも新しい流れを動的に取り入れていかないと、社会に必要な人材は輩出できないですよ。我々はこれから日本をどんな国にしていきたいのか――そんな議論あってのMaaSだと思うんですよね。

    筆者は小学生の頃、夏休みにクロオオアリ、ムネアカオオアリの研究をしていました。野生のアリの巣を掘り起こし、自作の透明な飼育ケースで飼っていました。

    アリは非常に社会性のある生き物です。最も驚いたのは、亡くなってしまったアリたちを、食べてしまうでも放置するでもなく、飼育ケースの隅に運び、墓場を作ったことでした。死を悼むという概念があるのかまではわかりませんでしたが、ともに暮らし、働いた仲間の死に特別な感情を抱いているのではないか、どうしてもそう考えてしまう行動でした。

    そんなアリの社会性に着目し、渋滞解消や自動運転技術の進展にまで寄与させた西成先生のお話は、ユニークかつ示唆に富んだものでした。しのぎを削る者同士が「競争ではなく協調」することで、より速く、大きな課題に挑めるのです。その一歩を早急に。恐らく、もうあまり時間はありません。

  • ロジスティクスを0から理解するために読みたい5冊

    ロジスティクスを0から理解するために読みたい5冊

    ロジスティクスという言葉は、物流または倉庫と同じ意味合いに思われがちですが、調達から販売、消耗部品の供給まで、物流的な側面以外の設備メンテナンスの体制や製品のライフサイクルまでの最適化を目指すことを差します。

    とくに近年、社会問題にまで発展している配達員の人手不足解決の糸口として、ロジスティクス3.0やロジスティクス4.0という言葉が注目を集めるようになってきました。この記事では、改めてロジスティクスとは何か、未来のロジスティクスはどうなっていくのかを理解したい人に向けてオススメしたい書籍をピックアップして紹介します。

    ロジスティクス4.0  物流の創造的革新


    労働時間の長時間化、トラックドライバーの高齢化、倉庫内作業員の人員不足…。これらの問題が山積し、「物流危機」という言葉が世間に広がっています。しかし一方では、倉庫内のロボティクス化やAIによる需要予測など、先進技術を取り入れながら、これらの問題を解決するために各プレイヤーが取り組み、物流環境の向上を目指しているのです。

    「ロジスティクス4.0」は、著者である小野塚征志さんが講演やコンサルティングを通じて使用してきた用語ですが、その用語や考え方はそのまま国土交通白書やものづくり白書でも用いられ、一般化しています。ロジスティクスを全体で捉えながら、最新事例から戦略の考え方を具体的にまとめた、「未来の物流を考える人が2019年に読みたい」一冊。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    序章 ロジスティクスにおける革新の変遷
    1. 省人化による革新
    2. 標準化による革新
    3. 物流の装置産業化
    4. 物流会社の勝ち残りの方向性
    5. 物流ビジネスでの新たな事業機会
    6. 未来のロジスティクス

    著者:小野塚征志
    出版社:日本経済新聞出版社
    Amazonページ:https://amzn.to/327vubO

    日本型ロジスティクス4.0 -サービス多様化、物流費上昇、人手不足を一挙解決

    現在のロジスティクスが抱えている、物流費の上昇、人手不足、複雑化する流通への対応といった課題をあげながら、AIやIoTソリューションなど最新テクノロジーの活用でこれらを解決へと導く「ロジスティクス4.0」に向けて、先進企業が取り組んでいる事例をわかりやすく解説。国内ロジスティクスの成長度合いや属人化されているリアルな現場の課題感などを浮き彫りにしつつ、国内でどのように「ロジスティクス4.0」を発展させていくべきかをじっくり考える機会を与えてくれる本と言えそうです。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    1.ロジスティクスの現状と課題
    2.ロジスティクス4.0とはいったい何なのか?
    3.現在=ロジスティクス3.Xの姿とは
    4.ロジスティクス4.0への取り組みと壁
    5.ロジスティクス4.0の今後の展開

    著者:(株)クニエロジスティクスグループ 監修:前田賢二
    出版社:日刊工業新聞社
    Amazonページ:https://amzn.to/2PjH81S

    「物流危機」の正体とその未来 時代の変化を勝ち抜く処方箋

    “今”の物流の現場を非常にわかりやすく具体的に解説し、問題の裏にある原因や解決への対策を記したのが、この一冊。ロジスティクス革命が起きようとしている今、まずは現場と課題に目を向けることが重要です。物流に特化した経験と知識が豊富なコンサルティング会社だからこそ導き出せる危機克服の解決策や、次世代技術の最新動向が徹底解説されています。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    1. 物流危機の正体
    2. 物流危機に立ち向かう行政・経済界の動き
    3. 「運べない危機」克服に乗り出した荷主企業
    4. 変革を迫られる物流業界
    5. 「AI」「IoT」「ロボット」が物流を変える
    6. 無人化を目指す「次世代型物流センター」

    著者:湯浅和夫・内田明美子・芝田稔子
    出版社:生産性出版
    Amazonページ:https://amzn.to/2ML6HXK

    図解入門ビジネス 最新ロジスティクスの基本と実践がよ〜くわかる本

    調達・生産・物流・販売の全体最適化を図るロジスティクスについて、初心者でもよくわかるように知識とノウハウを解説した入門書。はじめてロジスティクスに触れる方にも直感的に理解できるよう、イラストや図が豊富に掲載されてわかりやすいのがポイントです。外資系と日系企業の違いについて書かれたコラムも面白くてオススメ。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    1. ロジスティクスとは
    2. 物流の基本機能
    3. 仕入れ・在庫管理
    4. 国際物流の基本
    5. 在庫改善によるコスト削減10のポイント
    6. 代表的なトラブルとその対策
    7. ロジスティクスの課題と展望

    著者:伊志井 雅博
    出版社:秀和システム
    Amazonページ:https://amzn.to/2ZrCO4A

    これだけ! Logistics –利益を最大化するための戦略的物流デザイン

    モノを受け取る。モノを送る。インターネットでの買い物が一般的になった時代において、関係者でなくとも物流やロジスティクスは身近なものになっています。部分的ではなく、一貫して物流やロジスティクスを理解し、論点・要点を知りたい!という初心者さんが読みやすい書籍です。

    ざっくり内容を把握する目次欄:
    1. なぜロジスティクスが注目されるのか
    2. 物流とロジスティクス、SCMの違い
    3. ロジスティクスは顧客サービスレベルで変わる
    4. ロジスティクスと「在庫」
    5. ロジスティクスの「調達コントロール」
    6. 物流拠点の種類と設置
    7. ロジスティクスの「物流機能」
    8. 業種・業態別ロジスティクスのしくみ
    9. ロジスティクスのキモ−数値化で見える化する

    著者:廣田 幹浩
    出版社:すばる舎
    Amazonページ:https://amzn.to/32cBT5S

  • 「より安心・安全・エコな社会を」運輸業界に変革をもたらすTDBCが伝えたいこと -後編

    「より安心・安全・エコな社会を」運輸業界に変革をもたらすTDBCが伝えたいこと -後編

    ワーキンググループで実現したソリューション

    大里:「ワーキンググループの具体的な実績についてお教えいただけますか?」

    小島:「ワーキンググループの活動は1年サイクルで進めています。キックオフを行い、事業者を中心に課題を発表、整理し、その解決策の仮説を立て、実証実験をして評価し、改善をして、ソリューション化できるものはソリューション化するという流れです。全チームがこの流れで取り組み、1年間の活動成果をTDBC Forum(TDBCフォーラム)で発表します。また、発表資料は全ワーキンググループ分、Webサイトでも公開しております。

    過去には、ドライブレコーダーの管理ソフトウェアを開発・提供する企業と、AIを利用したシステムを開発している企業が連携して、既存のドライブレコーダーの映像をAIが分析し、運転時にスマートフォンでの通話や操作するなどの危険運転があったら、他の急ブレーキや急ハンドルなどのインシデントと同様にリストアップするというソリューションが生まれました。すでに製品化もされています。

    他にも、2017年度のエコドライブのワーキンググループで、エコドライブ実践ハンドブックを作りました。こちらもウェブサイトで公開しております。そして昨年度は、エコドライブにタクシー事業者がチャレンジしたんですね。タクシーの平均実車率は4割程度と言われており、6割は空気を乗せて走っていることになります。どうしても、お客様を拾って乗せることが最優先となってしまい、道路上でお客様を見つけたら急いで止まる。つまり、一般的なエコドライブとは言い難い運転になってしまうわけです。それを昨年、フジタクシーさんがエコドライブに挑戦し、結果として燃費は10%改善し、交通事故件数は直近4ヶ月間では56%も減少しました。これは大きな成果です。」


    大里:「実際に実証実験を行い、トライ&エラーを繰り返しているのは本当に素晴らしいことだと思います。私が参加した前回のフォーラムでも、観光バスに荷物を積めないか(貨客混載)、ワーキングシェアはできないかなど、数々の仮説を立てて実践されていました。中には『規制があって困難を極めた』という事例もありましたが、実際に動いてみないとわからないこともたくさんありますし、動いたからこそ見えてくるものもありますよね。」

    鈴木:「実証実験に協力してくださるサポート企業も多いですしね。大塚製薬株式会社さんやミズノ株式会社さん、ソフトバンク株式会社さん、外資系ではありますが日本ハネウェル株式会社さんなど多くの会員企業が毎回実証実験にご協力いただいています。参加者が多いほど、解決への道のりが近くなるのでありがたいですね。」

    TDBCのビジョンを実現するために〜変化を受け入れる

    大里:「TDBCとして、今後どのような社会を実現したいですか。」

    小島:「現在は実証実験を1年間のサイクルで回していますが、1年というのはかなり短く、解決策が出たところで終わってしまうことも少なくありません。

    TDBCのビジョンは『運輸業界を安心・安全・エコロジーな社会基盤に変革し、業界・社会 に貢献する』こと。実証実験をもとに開発したソリューションで企業の課題が解決できたとしても、社会という括りで見ると解決に辿り着いたとは言い難い。それに社会全体の課題を解決するには、業界全体を変えていく必要があるのです。ただでさえ人材不足なのに、長時間労働や労働環境など、運輸業界はあまり良いイメージを持たれていません。そして、心身ともに乗務員の健康状態が強く影響し、事故の有無にも関わってきます。だからこそ乗務員の健康管理や労働環境を含め、良い環境を構築していくべきなのです。この問題は業界全体で捉え、健康経営に向かって努力し、長く働けるような環境を作らなくてはなりません。

    今年度のワーキンググループの中にMaaSに取り組んでいるグループがありますが、実証実験の前に真っ先にぶつかったのが、日本の法律や規制の壁でした。MaaSは複数の交通手段をシームレスにつなぐものですが、旅行業法に引っかかってしまうのではないかとの心配がありました。そこで、ワーキンググループのメンバー企業と一緒に国土交通省に相談に行き、無事実証実験が問題なく実施できることになりました。国としても、新しい取り組みに対し、規制というよりは積極的に対応していくとのスタンスを感じました。

    さらに、健康面でもう一つ。近年、夏になると熱中症に関する報道が世間の注目を集めますが、乗務員の熱中症も少なくはありません。原因はさまざまありますが、その1つが乗務員が水分補給をするために飲料水などを飲んでいると、一般の方からツイートされてしまうのではとの心配や、乗務員自身も水分を取ることでトイレに行きたくなり、迷惑をかけてしまうのではないかとの配慮から積極的に水分補給をしないということもよく耳にします。健康管理のためにも、水分補給は非常に重要です。我慢をすることで逆に体を悪くしてしまうことにもなりますから。しかし、炎天下にも関わらず、ネットやトラブルを恐れて乗務員が水分を取らなくなってしまうのです。この問題は、社会の理解も必要ですし、至急、相互に意識を変えなければならない問題です。

    再配達問題の場合は社会問題化したため、受け取りをスムーズにする意識が強まり、受け取り方法が多様化しましたよね。社会を変えるためには、まず、課題に対して正しく理解をしてもらわなくてはなりませんので、業界・国・社会を巻き込んで実現していきたいですね。

    標準化、規格化は各種協会、団体との連携を進め、推進や普及においては国や自治体との連携など、ワーキンググループを超えて具体的なアクションを進めて行きたいと思っています。」

    鈴木:「これらを実現するためにはまだまだ多くの仲間が必要です。TDBCの活動に共鳴し、参加いただける仲間は日本全国で常に募集していますし。とくに多くの課題を抱えている運輸関係の事業者さんは積極的に参加していただきたいです。」

    小島:「TDBCは、オープンイノベーションを目的にスタートしたわけではありませんが、課題を持つ人と、解決策を持つ人がより多く集まることで課題解決への実現スピードが早まると実感しています。今までの取り組みで非常に大きな成果を得ることができましたので、TDBCだけではなく、日本国内にある問題を解決する方法の一つとして推進していくべきだと思っています。1対N、N対1はあっても、N対Nはこれまでにほとんどないモデル。N対Nの連携で、社会課題や業界課題の解決を目的とした「オープンイノベーション2.0」を進めていければ。そのためにはまず、TDBCがオープンイノベーション2.0の事例団体として周知されることですね。

    また、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みに関して、日本は遅れていると感じますので、協議会としてもSDGsを推進していきたいと思っています。ビジネスをしながら社会に貢献することは企業として必要なことですので。」

    みんなが集まり、自らが社会を変えていく

    大里:「運輸業界の参加者が増えれば、業界全体を変えていく力が大きくなりそうですね。」

    鈴木:「山積みの課題に追われてしまい、ついつい後ろ向きな考えになり、参加いただけない方も多くいらっしゃいます。しかし、そういう方たちにこそ動いていただき、業界全体を根こそぎ変えていきたいのです。ぜひ、活動の片鱗だけでも見ていただきたいと思います。」

    小島:「業界を変えたいという想いをお持ちの方にはぜひとも参加いただきたいですね。運輸業界を数字で見ると、バス事業者は69.4%が、トラック運送事業者は直近の調査で50%が赤字で、しかも営業利益率が平均0.2%と言われています。だからこそ、共通プラットフォームをできるだけ早く構築して、そしてこれをうまく活用してもらうことで、業務効率と利益率を上げて、次のビジネスを考える余力を作り出していただきたいのです。私たち自身も、そこまでをサポートしなければと思って運営しています。
    具体的に効果が出せるものを提供して、その結果、業界をもっと良くしたいとTDBCに参加してもらえる。そんな循環ができればいいなと。」

    鈴木:「そのために、公益性、中立性も大事にしていきたいと思っています。」

    大里:「TDBCとして、スマートドライブに期待することはございますか。」

    小島:「先述したDXレポートではありませんが、共通プラットフォーム化を実現して、どのサービスも横断的に利活用できる世界を作っていくべきだと思っています。用途や要望に見合ったサービスを選ぶのはユーザーの権利ですが、スマートドライブのサービスを利用していても、他のサービスも受けることができるようにしたいですし、どのサービスを利用していても、データ活用は横断的にできるようにしたい。

    TDBCのオープンな共通プラットフォーム構想に積極的に参加いただくことで、実現が近くなると考えていますので、賛同いただいたうえで技術面のフォロー、そしてAPIをオープンにしていただき、みんなが利用できるよう、ご協力いただけるとうれしいです。

    大里:「ありがとうございました。ぜひとも運輸業界の課題を解決していきましょう!」

  • 「より安心・安全・エコな社会を」運輸業界に変革をもたらすTDBCが伝えたいこと -前編

    「より安心・安全・エコな社会を」運輸業界に変革をもたらすTDBCが伝えたいこと -前編

    インタビュイー
    小島薫(こじま・かおる)様 ウイングアーク1st株式会社
    鈴木久夫(すずき・ひさお)様 ウイングアーク1st株式会社 

    ヒトやモノを運び、社会的インフラとして人々の生活基盤を支えている運輸業。人々の生活に欠かせないものではありますが、そこには社会問題化した再配達や交通事故、少子高齢化によるドライバーの人手不足、長時間労働など、数々の問題が積み重なり、働く人の環境を厳しくしたり、企業の成長を阻害したりしています。

    そうした問題を業界全体で解決すべきだと立ち上がったのが一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)です。今回はTDBCで代表理事を務める小島薫(こじま・かおる)さまと事務局長・理事を務める鈴木久夫(すずき・ひさお)さまにお話を伺いました。

    TDBC設立のきっかけ

    大里:「まずは、お二人のご経歴と運輸デジタルビジネス協議会について伺っていきたいと思います。」

    小島:「私は、2004年にウイングアーク1st株式会社(以下、ウイングアーク)に入社しました。ウイングアークでは当初、技術系の仕事に就き、Dr.Sum(ドクターサム)やMotionBoard(モーションボード)などBIツールの事業責任者を担当。それから、執行役員、CMOに就任し、縁あって運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)の設立に事務局長として参画し、一般社団法人化した際に代表理事に就任、本年5月1日からはほぼ協議会専任として社長直下で活動しています。前職もIT系企業で、同様にマーケティングや技術系の担当執行役員をしておりました。」

    鈴木:「私はIT系の会社で20数年勤務した後、組織コンサルンティングの会社で7年ほど務めていました。その時にTDBCの立ち上げに関わり、そのままウイングアークに転職。現在はTDBCの仕事を中心にしております。」

    大里:「TDBCの設立から何年が経ちましたか?」

    小島:「もとの任意団体は2016年の8月9日に、一般社団法人化したのは2018年の6月8日ですので、ほぼ丸3年になります。」

    大里:「設立前の段階から、TDBCの構想があったと伺っています。」

    小島:「構想と言いますか、設立のおよそ2年前から準備会が発足しています。きっかけは、設立の翌日に亡くなられましたが、名古屋にある株式会社フジタクシーグループ(以下、フジタクシー)の代表取締役会長を勤めていた梅村さんの一言からでした。フジタクシーさんはもともとウイングアークのお客様で、当社のツールを利用してデータを積極的に活用することで、事故の削減や乗務員の数字に対する習慣を確立するなどの成果を上げていただき、事例としても公開させていただきました。弊社は年に一回、WingArc Forum(ウィングアークフォーラム)という大規模なイベントを開催していますが、そこに登壇いただいたことをきっかけに、当時、ウイングアークの代表を務めていた内野と梅村さんのコミュニケーションが始まったのです。

    フジタクシーさんは、タクシー台数500台以上を誇る中堅のタクシー事業者ですので、何か課題があっても自社でのIT投資によって解決することができます。しかし周りを見渡せば、中小零細企業や個人タクシーが山ほどいる。環境の変化や法令の変更といった問題は会社規模に関係なくふりかかってくるものですが、それを1社ごとに解決していては、お金もかかるし非効率です。もともと個人タクシー等の支援もされている方でしたので、この点に課題感を感じられたのでしょう。梅村さんから内野に『中小零細企業も含めて、運輸業界全体の課題をもっと効率的に解決できないだろうか』という相談をいただいたのです。話を聞いた内野は、コンソーシアムという形でみんなが集まって議論し、課題解決をしてはどうかとの話になり、その場にたまたま居合わせた私が事務局を担うことになりました。」

    大里:「そのような経緯で設立されたのですね。」

    小島:「ウイングアークのお客様には、運輸事業者も多くいらっしゃいます。理由は、私たちのビジネスが帳票からスタートしているためですが、運輸業界ではモノと伝票が一緒に動きますので、取引においては伝票が不可欠で、その伝票データにも非常に大きな価値があるのです。ですので、佐川急便株式会社さんや西濃運輸株式会社さんはウイングアークの大規模な事例として公開させていただいており、TDBCにも佐川急便(SGホールディングス)グループのSGシステム株式会社さんには設立以前から参画いただいています。
    このように、ウイングアークと物流業界は切ってもきれない関係ですので、私たちとしても業界をご支援することで、お客様へのご恩返しができるのではないかと思っています。」

     

    業界全体で課題を捉え、解決すること

    大里:「地方の企業や中小企業でもウイングアークのソリューションを導入されている企業様はいらっしゃいますか?」

    小島:「地方も都心も関係なく、比較的中堅以下の企業は紙やエクセル文化がまだ根強く残っています。しかし運輸業界を前進させる第一歩として、まずはこの点を解決すべきです。なぜなら、管理するものが多い業界だからこそ、自動化することで本来の業務に集中すべきだと思っているためです。実際に近年発生した宅配事業者の再配達問題から軽井沢のスキーバス事故まで、運輸業界の問題が一般の方々も巻き込むような社会問題へと発展する可能性もありますから。

    TDBCではテーマごとにワーキンググループを作って活動しており、先ほど挙げた紙やエクセルでの管理方法については、昨年度の活動の中でもWG05A「先端技術による業務の効率化」のワーキングループがテーマに掲げて取り組んでいました。」

    大里:「TDBCの特徴は、グループで課題を解決するところですよね。情報共有して終わりではなく、解決しなければならないビジネス課題と社会課題が目の前にあるからこそ、アクションを伴わなくてはなりません。」

    小島:「基本的な課題解決方法は、問題箇所を専門企業に依頼して解決するという、IT業界でいうところのSIerモデルと同じイメージです。この場合、開発費は1社が負担することになりますが、依頼された会社は自社の強みを活かした提案に偏ってしまいますし、この方法には限界があると思っています。

    課題を議論していても、そこに解決できる人たちがいなければ、情報を共有して、共感して解散して終わりです。TDBCは課題を持つ人たちとともに、さまざまな技術や解決策を持つ人たちも参加しますので、彼らが一箇所に集まって議論すれば、課題に対するさまざまな解決策の仮説を立て、実際に事業者の協力を得て実証実験を行い、それを評価して、具体的に実践可能な解決策に繋げる。それがTDBCなのです。」

    大里:「事業者とサポート企業が一緒に参加するというのは珍しいですよね。参加者が増えると取りまとめが大変だと思うのですが、いかがでしょうか。たとえば『電子化したい』という課題があっても、事業者側によって日報業務、帳票、走行ルート、と電子化したいものが異なるケースもありますし、サポート企業もなるべく自社の技術やツールで解決したいと思うのでは。」

    小島:「競合のベンダーも数多く参加されていますので、企業間の調整や優先しなくてはならないソリューションなど、議論の中で何か別の問題が起きるかもしれないということは私たちも想定していました。しかし、意外なことに、そうした問題は何も起きませんでした。また、事業者側も自社の課題だけではなく、業界全体での課題感を論じるケースが多いと感じています。

    ワーキンググループの中には、テーマをさらに深掘りしていくケースもあります。例えば、「乗務員の健康増進」のテーマですが、睡眠不足やこの業界の職業病と言われています腰痛や眼精疲労やそれに関する疾病など、健康一つとっても非常に幅広いですよね。

    そうした場合はワーキンググループの中でさらにサブチームを作っています。細分化していくとそれぞれの分野で強みを持つ企業がいますので、具体的に課題を持つ運輸事業者との連携で課題解決のために実証実験が進められます。」

    注力すべきは「標準化」と「規格化」

    大里:「以前、鈴木様と話した際に、共通の規格を作っていくべきだという話が出ました。事業者側が共通のしくみやデータ形式にしていかなくては、負担が大きくなってしまいます。」

    小島:「ソリューション提供側が自社の仕様で作ってしまうと、それを使う事業者側はそこに合わせなければならなくなってしまいます。たとえば、A社のデジタコを使っていたけれど、価格的に見るとB社のデジタコの方が安いので変更したい。しかし、A社のデジタコでシステムを構築されているので、B社のデジタコが導入できないとか。また、A社のデジタコからB社のデジタコに乗り換える場合も、データを横断的に使いたいですよね。それが標準化や規格化を統一すべきだということにつながるのです。

    3,4年前からAPIエコノミーやAPIビジネスという言葉が出てきましたが、日本はまだまだ規格化が遅れていると感じます。」

    大里:「大手企業であれば、業務に合わせてSIerと共にスクラッチ開発で作り込むことができますが、中小企業であれば、予算も限られていますし難しいですよね。」

    小島:「標準化や規格化は、最低レベルの効率化にはなると思います。というのも、標準化された規格やAPIを利用して、各社が必要としているアプリケーションを自社1社のためだけに作るのはすごく無駄だからです。

    昨年、経済産業省が『DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜』を昨年9月7日に発表しました。このレポートでは、日本が今後直面する問題について語られています。既存システムが、事業部門ごとに構築されており、さらに過度なカスタマイズがなされていることにより、複雑化・ブラックボックス化している。また、IT予算の8割以上が既存システムの維持・保守業務に費やされている。

    デジタルトランスフォーメーションを実施する以前に、ブラックボックス化してしまっているこの問題を解決すべきだと。そうでなくては、2025年に日本は大変なことになってしまう−−それを『2025年の崖』と表現しているのです。

    これは2025年にSAP社のERP(Enterprise Resource Planningの略。日本語では総合基幹業務システム)がサポート終了になることも大きな要因になっています。SAP ERPは日本国内においても大手企業を中心に、約2,000社で導入されており、その規模も大きい。そこで、経済産業省はDXレポート内で、ITシステムの刷新においては膨大なコストと時間がかかるため、企業の競争力に関わらない協調領域については、個別にシステム開発するのではなく、業界毎や課題ごとに共通プラットフォームを構築し、みんなで利用することで早期かつ安価にシステム刷新につなげることができるとしています。

    また、この共通プラットフォームの検討の進め方の1つとして、「業界団体が共通化を進める旗振り役となって議論を進める方法」を挙げています。

    TDBCは課題解決を行う業界団体ですので、イニシアチブを取りながら推進していきたい。それは国も考えていることですし、物流に関連するどの企業も同じようなことを考えているはずです。ですので、ワーキンググループの中でこれらの問題の解決策、共通プラットフォームを創っていければと考えています。」

     

    >>>後編へつづく

  • 移動の進化を振り返る2~人に速度を与えた馬での移動編

    移動の進化を振り返る2~人に速度を与えた馬での移動編

    = 移動の進化を振り返るシリーズ =
    1:徒歩
    2:
    3:船舶
    4:鉄道
    5:飛行機
    6:MaaS

     

    自動車のエンジン出力を表す「PS」という単位が、ドイツ語で「馬の力」という意味を持つことからもわかる通り、馬は徒歩が主たる移動手段であった人類に、大きな進化をもたらした存在です。馬との出会いによって人類は広範囲を速く移動したり、重い荷物を大量に輸送したりできるようになりました。では、いつから人は馬を移動・輸送手段として活用を始めたのでしょうか…?

    馬の誕生と進化~馬の祖先は森の小動物だった!?〜

     

    馬が地球上に姿を見せたのは約5,500万年前のこと。前足に4本、後ろ足に3本の指を持ち、体高30cmほどのエオヒップスという小動物が起源とされています。

    始まりの馬という意味を込めて、「曙馬(アケボノウマ)」とも呼ばれるこの動物は、森林に住み、木の葉や木の実を食べていたそうですが、氷河期に対応すべく草原地帯に活動の場を移すと草を食べ始め、同時に速く走れるように進化していきます。その後、肉食獣から逃れるために身に付けた速く走る能力は、指の減少と爪の硬化や体格の大型化で磨きがかかり、約350万年前の地層からは体高1m超・各足に1つの大きな「蹄」を持つ、「プリオイップス」の化石が発見されています。

    現在の馬とほぼ同じ大きさ・スタイルに進化した「エクウス」が登場するのは、人類史で言う旧石器時代初期に当たる約100万年前で、長距離を速く移動できる能力を有していたエクウスは世界中に生息地を広げ、シマウマやロバなどの祖先になりました。

    人類と馬との出会い~後期旧石器時代の遺跡で明らかになったこと~

    人間が馬と遭遇した有名な証拠は2つあります。1つ目は30万年前のドイツ・シェーニンゲン遺跡であり、湿地に馬を追い込んで動けなくさせ、木槍で突き殺した跡が見つかっています。2つ目はもっと新しく、フランスで発見された約2万年前のものとされる「ソリュートス遺跡」。こちらからは10万頭を超える馬の骨が発掘されており、この地では馬の群れを崖上から追い落とし肉を得る、集団による大量狩猟法が確立していたとされています。

    さらに、世界的に有名な「ラスコーの洞窟壁画」にも、馬を狩猟する姿が描かれていますが、この絵から分かる通り、当時の人類にとって馬は移動や運搬の原動力ではなく、肉や皮を得るための「狩猟対象」でしかなかったのです。

    家畜化と乗用の開始~なぜ馬が重用されたのか~

    馬が家畜化されるは、他の野生動物同様、新石器時代に入ってからのこと。約5,500年前ごろ中央アジアで家畜化が始まり、初期は食肉用(牡馬)、乳用(牝馬)として飼育されていたようです。

    しかし、次第に馬が持つ優れた身体能力と、従順で御しやすい温厚な性格に目をつけた人類は、牡馬・牝馬ともに荷物を牽引する「馬車」として用いるようになります。そう、数十万年に渡り人類にとって「食糧確保」の対象でしかなかった馬は、この時代に入ってようやく、移動や運搬の「原動力」として価値を見出され、一部地域では馬肉を食べる行為すらタブーとする文化も出始めるのです。

    その後、車輪の発達によって馬は武器として利用されるようになり、紀元前1,500年前後にはヨーロッパ・中東で戦闘用馬車「チャリオット」が登場、長く古代戦の主力を担いました。とはいえ、チャリオットで戦っていたのは、王族や貴族などの一部支配者層にすぎず、維持コストの高さや地形による制約などの理由から、次第にチャリオットは姿を消していきます。

    変わって台頭したのは鞍や鐙を装着し、直接馬に乗って戦場を駆け巡る「軽騎兵」であり、第一次世界大戦中に近代戦車・タンクが登場するまで、軽騎兵は戦場の花形であり続けたのです。しかし、この頃の日常生活に目を移すと、富裕層が移動用や陸上輸送の要として馬車を活用していたようですが、一般の民衆は相変わらず徒歩と人力輸送がほとんどであり、貴重な存在である馬とは従者、または飼育員としてしか接する機会がありませんでした。

    加えて、馬は反芻動物ではないうえ、非常に新陳代謝が高い低燃費の動物であるため、乗用・輸送用・農耕用としては不向き。そのため高度な技術が必要な乗馬用としては利用されませんでした。しかしそこで、機動力に優れた乗馬の文化を生み出し、ヨーロッパや中東に先駆け運用していたのは中央アジアの遊牧民、つまり日本人の源流ともいわれるモンゴル民族です。

    鐙や鞍、そして馬に乗るうえで最大の発明とされているハミなど、馬具一式を生み出したのは中央アジアの遊牧民であり、約4,500年前のものとされるカザフスタン・ボタイ遺跡で発掘された馬歯には、すでにハミが装着されていた跡が確認されていたのだとか。

    人類による馬の家畜化が始まった時期を考慮すると、同地の民は当時文明的に進んでいた他の地域よりかなり早い段階で馬に乗って草原で狩猟したり、ヒツジや牛など他の家畜を引き連れたりして、ユーラシア大陸を大移動していたことになります。

    ではなぜ、中央アジアの民は他の陸上動物ではなく馬を移動手段にしたのか、それは馬が速く走れることと、調教しやすい性格であったことのほかに、2つの大きな理由があったからです。

    理由1「中央アジアの地域性と民の暮らし」

    当時、文明の中心地だったヨーロッパや中東、中国・黄河流域は、いずれも馬産地の中央アジアから馬を輸入し、発明した「車」を牽引させて軍用・陸上輸送を担わせていました。しかし、前述したとおり、馬は支配者や富裕層の所有物でしかなかったのです。

    そして、都市国家間の争いが続いた同地方では、軍事利用されたことによる頭数減少や多くの馬を飼育する場所とエサの確保が困難などの諸事情から、馬を大量繁殖するという文化が根付きませんでした。

    一方、中央アジアには元々野生馬がたくさん存在し、養っていけるだけの広大な草原が広がっていたため、長い年月をかけてこの土地で馬はどんどん頭数を増やしていったのです。

    さらに、当時の中央アジアは部族間の小競り合いこそあったものの、基本的に平和だったため、軍事利用することなく移動手段としての利用が広まった結果、乗馬を可能にする馬具の誕生につながったのです。

    エサとなる牧草を大量に確保・貯蔵できる地域性、そして平穏な遊牧民たちの暮らしという要素が相まって、中央アジアは「乗馬文化発祥の地」になり得たわけです。

    理由2「他の動物にはない身体的特徴」

    人間は歴史上、馬にしか乗らなかったのでしょうか?実はそうではありません。中国やインドでは象、中東ではラクダ、東南アジアの湿地帯では水牛を乗用していたほか、アフリカではダチョウに乗っていた時期もあるのだとか。

    今でも、象やダチョウは観光客用に、水牛は農耕用で活躍し、長期間水なしで生きることができるラクダは砂漠地帯での移動・運搬手段として利用されていますが、馬のようにあらゆる地域で乗り続けられている動物は存在しません。

    象はサイズ的に大きすぎ、ラクダは繁殖が難しいうえスピードが遅く、ダチョウに至ってはそもそも乗りづらいからです。一方、馬の背中は安定して乗りやすく、肉食動物より強靭かつまっすぐな背骨を有します。さらに高速で走ってもほとんど動かないため、乗った人間がバランスを取りやすいのです。乗馬時には鞍を装着することになりますが、馬は呼吸をする際ほぼ胸部が膨らまないため、腹帯をシッカリと締めれば鞍を固定することができるのです。

    加えて、騎手が馬を操るために必要なハミも、馬には前歯と奥歯の間に「歯槽間縁(しそうかんえん)」という歯の生えていない部分があるので、すっぽりと装着することが可能です。この、馬が生まれつき持ち合わせている身体的特徴と、遊牧民が知恵を絞って開発した馬具の登場により、乗馬という文化が爆発的に世界中へ伝播していきました。

    歴史とともに見る日本人と馬との関係性

    その1~弥生時代末期から大化の改新~

    中央アジアの遊牧民たちが、早い段階で馬を主要な移動手段としていたのと異なり、日本人と馬との関係性は、世界に類を見ないほど特殊でした。

    日本に馬が渡来したのは、古くとも弥生時代末期(紀元300年頃)、モンゴルから朝鮮半島を経て、贈答品としてやってきたのがはじめだと言われています。4~5世紀には乗馬の風習も伝わったようで、古墳時代の遺跡からは馬具を装着した馬の埴輪も出土していますが、当時馬を所有し乗っていたのは一族の首長など、限られた立場のものだけでした。軍事利用が主であった点は海外とそれほど変わりませんが、日本における馬は戦闘力としてではなく、国力や主張の権威を示す「飾り」にすぎませんでした。

    また、馬は亡くなった者の魂を浄土へいざなう動物とも考えられており、儀礼・祭事用と考える習慣が長く続いています。お盆に馬や牛を模したなすやきゅうりなどを霊前に備えるのは、その名残であるとの説も。

    日本人と馬との関係が変化し始めるのは、駅馬・伝馬制度が整備された大化の改新以降です。この制度は、人員や物資を運搬する移動インフラではなく、馬が有する優れたスピードを活かした通信システムです。システムを維持するため、8世紀初頭からは国営牧場である官牧や、国衙(律令制下で諸国に置かれた役所)が管轄する国牧も設置され、じわじわ頭数が増加。地方反乱時には軍馬として利用されていたようですが、まだ庶民が乗馬する水準ではありませんでした。

    その2~武士階級の成立以降~

    日本において、馬の立場が特殊になったのは、武家階級の誕生と彼らが長期にわたり政権を担った事に尽きます。

    武士とは元来、平安時代の貴族らが所有する荘園を防衛するため生まれた戦闘を生業とする職能集団を言いますが、平家の台頭と滅亡を経て政権を握った源氏を始めとする武士たちは、帯刀とともに乗馬を特権階級を示すシンボルとして位置づけます。

    その結果、同時代に複数人員を運搬する駅馬車が往来していたヨーロッパや、乗馬の機動力と攻撃力によって瞬く間に白人に征服された中南米と異なり、日本における馬の立ち位置は、戦闘では弥生時代と同じ「飾り」、日常利用は通信手段でしかなかったのです。

    ここで、「ちょっと待って!最強と謳われた武田の騎馬隊はどうなるの?」というツッコミが入りそうですが、その通り、戦国時代を題材にした映像作品では多数の騎馬隊が相手に突撃する様が描かれています。しかし近年の研究によると、確かに数百・数千規模の騎馬隊が編成され、武士は合戦場まで騎乗で移動していたようですが、いざ決戦となると一部の将を除く大多数は下馬し、槍を手に「徒歩」で突撃していたのです。

    戦場を乗馬のまま駆け巡っていたのは、乗馬技術に長けたものから選抜される伝令部隊、「母衣衆」だけで、馬は合戦場までの移動と、敗戦時に将らがいち早く逃れるための移動に利用されていただけでした。

    移動方法に限らず、多くの文化や生活習慣は残念ながら戦争という、悲惨な出来事を機に発展・進化していきますが、戦場が極端に狭い日本においては馬は到底主力と呼べるものではなく、同時に海外で流行した戦闘用馬車も存在しませんでした。そして、馬車の製作技術が伝来してからも、川が多く街道の勾配が激しい日本では馬による陸上輸送ではなく、船による水上輸送の方が重宝されたのです。

    その3~江戸・明治から自動車の普及まで~

    江戸時代に入り太平の世が訪れると、戦国時代のような大規模戦闘はなくなり、役目を失った馬は徐々に庶民たちの重要な輸送手段になってきます。とはいえ馬車はあまり発展せず、荷物を背中に積んだ状態で人が手綱を用い先導する「駄載獣としての使役がほとんどでした。武士でさえ乗馬の機会が激減し、さらには飛脚による通信が普及したことで、馬は荷物を運ぶだけの存在になります。

    また、新田開発が進められた江戸時代は、開拓地帯が湿地帯だったため馬耕は発展しませんでしたが、明治期になると乾田馬耕(明治農法)が発達し、昭和初期までほとんど馬の用途は農耕になっていきます。

    1932年の史料によると、この頃全国で飼養されていた馬の総数は154万頭、うち70%超に当たる約113万頭が農耕用で、残る30万頭程度が「馬車用」だったそうですが、そのほとんどは馬力と称される荷物輸送での利用。結局、日本では一度も庶民の足替わりとして利用されないまま、1950年代に訪れたモータリゼーションの普及により、農耕利用は耕運機から馬力輸送はトラックから、役目を奪われることになるのです。

    まとめ

    軍事利用に伴って馬車文化が早くから定着した地域や、手足のごとく馬を乗りこなした遊牧民とは異なり、日本における馬は権力者たちの力を示す象徴であり、近代に入っても移動手段というより荷物の運搬や農耕などを担う、使役動物という側面が強いと言えます。

    しかし、馬車文化が長く残った海外より自動車の普及が早く進み、日本が世界有数の自動車大国になった背景には、馬が移動手段として定着しなかったことも大きな要因の1つです。また、全国各地で行われる神事・祭事で、馬に乗った神職や鎧・兜を身に付けた武士がよく登場するのは、日本人が馬を神聖で貴重な存在と考えてきた証であり、馬を用いた国際的スポーツの競馬が盛んなことも、皮肉な事実と言えるでしょう。

    = 移動の進化を振り返るシリーズ =
    1:徒歩
    2:
    3:船舶
    4:鉄道
    5:飛行機
    6:MaaS

  • オープンなしくみで日本の物流を変える。グローバルカンパニー・ハネウェルの視線の先にあるもの

    オープンなしくみで日本の物流を変える。グローバルカンパニー・ハネウェルの視線の先にあるもの

    インタビュイー:
    日本ハネウェル株式会社
    代表取締役社長 西巻宏(にしまき・ひろし)さま

    業界を支える、ハネウェル4つの事業

    まずは西巻様のご経歴とハネウェルの事業について、簡単にご紹介いただけますでしょうか。

    私は大学を卒業後、日系の事務機器のメーカーに20年ほど在籍していました。そこで、ヨーロッパに10年、アメリカに4年近く赴任し、日本の事務機器のデジタル化に伴う、販売マーケティングを担当。帰国後は医療機器の販売やマーケティング責任者を務め、2014年の11月にハネウェルに参画しました。

    ハネウェルのビジネスは大きく4つございます。

    1つめは、航空機に関するさまざまな装置や部品、フライトシミュレーションのシステム関係、燃費の効率化が行える運送システムなど、航空宇宙産業向け製品とソリューションを展開する、エアロスペース事業です。防衛用航空機への搭載実績もございますし、最近ではデンソーさんと空飛ぶ車の開発にも取り組んでいます。

    2つめがパフォーマンスマテリアルズという、化学製品関連の商品です。薬品を包むフィルムや、家庭用の害虫駆除スプレーの中身としても使われていますし、セブンイレブンに納品している冷凍冷蔵庫の冷媒については、CO2の削減と燃費が非常に良いという理由で採用いただいております。また、プロセスソリューションという名で、化学工場をはじめ、さまざまな工場で安全や生産性を管理する統合的なシステムも提供しています。これは、「この工場は安全上の問題がある」「生産がストップしている」など、工場に関する情報を一元管理できるシステムです。

    3つめは、ビルに関する安全やセキュリティ、メンテナンスを支援するビルディングテクノジー製品の提供です。

    アメリカのホテルに行くと気付かれると思いますが、温度調整やサーモスタッドに弊社の製品が採用されています。昔から使われていますので、古いホテルにはほとんど採用されています。日本でも国際的なホテルでは、照明や空調にハネウェル指定の製品が使われています。それ以外にも、防犯カメラや入退室のセキュリティーシステム、火事が起きた時や煙が発生した時にビルのどこで火災が発生したかをすぐに感知できる火災システムもございます。

    4つめが、セーフティー&プロダクティビティ ソリューションズです。これは、物流から製造工場まで、作業員の安全と生産性を向上する製品およびサービスを提供するビジネスです。生産性向上の中には、物流、製造、小売流通、ヘルスケアの4つの大きなマーケットがあります。様々な場面で疲れわれているバーコードやQRコードを確実に読み取るスキャナーや業務上厳しい環境で使用されるハンディ端末を提供させていただいております。また安全性向上については有毒ガスが発生する場所———半導体の製造工場や化学工場、製紙工場といった場所は、必ずと言っていいほど有毒ガスが発生しますが、それを感知するシステムを提供しているのが弊社です。また、カメラ付きのヘルメット、防刃手袋など、作業員の方の安全性を高める個人保護具製品も提供しております。

    グローバルカンパニー・ハネウェルの強み

    ハネウェルはフォーチュン100のグローバルカンパニーですので、純粋な日本企業とは少し角度の異なる戦術をお持ちかと思うのですが、日本へのローカライズをしているのでしょうか、それとも日本は単独の戦略を持っているのでしょうか。

    売上の約半分は本拠点があるアメリカが占めていますが、最近では、中国、インド、中近東、中南米あたりがGDPの成長とともに物流や各産業で伸びています。ハネウェル全体としては5%ほど成長しているものの、日本においてはまだまだシェアが低い状態です。

    2000年初頭まで合弁会社でしたが、2005年に独立して100%ハネウェルの資本になったことを機に、ハネウェルが持っているテクノロジーとサービスを日本でも活かしていこうという機運が高まりました。日本の市場はすでに成熟していますので、その市場でいかに他社と差別化を図り、成長に結びつけにいくかを考えなくてはなりません。そういう意味でも日本は重要な拠点なのです。

    日本は独特の文化や言語がございますので、アメリカの製品をそっくりそのまま導入するわけにはいきません。日本語対応はもちろんのこと、お客様に受け入れてもらえるように、その他のサービスもすべて丁寧にローカライズする必要があるのです。そのためにも、さまざまな分野のパートナー企業を交えてエコシステムを作り、提供していきたいと考えています。それに、今は内需が下がってきていますので、日本企業が海外に進出する機会は増えて行くと予想されます。ハネウェルはグローバルカンパニーですし、いくつもの拠点を所有していますから、各地で培った技術面やノウハウ、市場開拓など、多面的なフォローも可能です。

    スマートドライブさんも海外展開をお考えとのことですが、私どもの企業は現地にスタッフがおり、現地でビジネスを展開しておりますので、ビジネスの立ち上がりを迅速にサポートできると思います。

    プロダクトの翻訳は、Google翻訳や機械による翻訳ですと機械的ですし、表現がストレートすぎるものになるため、日本の方だと満足されませんよね。文脈も含めて翻訳して欲しいなど、品質に関してはシビアな印象があります。同じような話で、ハードウェアの品質に対しても日本人にフィットさせるために苦労されたことはございますか。

    欧米ではがっちりとしている、堅牢性が高いものが好まれます。しかし日本では、とくにB2Bの業務系製品ですが、軽い、薄い、見栄えがいいものが好まれる傾向にあります。この時点でも、だいぶ異なりますよね。日本はiPhoneの導入率がもっとも高いと言われていますが、この傾向を明確に表した結果と言ってもいいでしょう。

    ハネウェルでは、そうした国内のニーズを確実に捉え、中国にある企画開発製造部門で日本向けの製品開発をしています。

    世の中のトレンドに合わせたサービスを提供する

    物流倉庫などで使用されている従来のハンドスキャナーと、ハネウェル様のハンドスキャナーとでは思想が大きく違いますよね。

    世の中のトレンドは、「買う」から「使う」へと移行しつつあります。カーシェアに代表されるように、B2C向けのサービスではすでにこの考えが一般化していますよね。この流れは今後B2B向けのサービスにもやってきますし、従来のビジネスモデルもこれから大幅に変化していくでしょう。

    大手企業ですと、要求要件のレベルが非常に高いうえ、きめ細かく、業務が複雑です。しかし資金力があるので、一部をSIerに対応させることもできる。しかし中小企業は、コスト重視でシステムに業務を合わせていく方向性へと変流ではないでしょうか。

     

    「自社の業務にシステムをカスタマイズして欲しい」ではなく、「自社の業務をなるべくシステムに合わせる」。これは、ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)やSFA(セールス・フォース・オートメーション)の導入時に言われていた話と近いものを感じます。

    とくに日本は労働集約型で、人が介在する作業や業務が非常に多い。日本人はどんな作業も器用にこなしてしまうので、合理的な動きがなかなか浸透しづらいと言いますか、きめ細やかな仕事に慣れすぎて気づかないのです。

    欧米ですと、人件費が高い割にすぐやめる、多国籍の人たちが働いているので言語はバラバラ…。そうした環境下で業務の統一性を図るために、システムが必要になるのです。国内でも今後、労働人口が減っていけば、必然的に外国人労働者の採用が増えていきます。ですので、B2B領域においてもシステムに業務を合わせる必要性は高まってくるでしょう。

     

    そうですね、人口が減っていく中で生産性をどのように上げていくかを早急に考えるべきですよね。賃上げは、あくまで一時しのぎにしかなりませんし。
    購入から利用へ変化していくという話がありましたが、ハネウェルのハンディ端末で使用されているOSはAndroidです。ソフトウェアのアップデート費用はかからないということでしょうか?

    その通りです。コストをかけず、広く導入していただきたいと思っております。

     

    利用者にとっては非常にありがたいと思います。ちなみに、この分野で競合はございますか。

    新たなマネタイズの方法やアプリケーションを含めると、まだまだ少ないようです。先ほど申し上げたように、大手企業であれば、SIer独自のシステムをお客様と一緒に要件定義しながら開発しますので、他社も入り込みやすいのですが、中小企業にはあまりフォーカスされていないようです。

    なぜなら、中小企業は大手企業と比べると資金的な余裕もノウハウもないことが多い。ただ、彼らの業務フローを俯瞰して見ると、機能を限定したり、業務をシンプルにしたりできる部分が意外とあります。ここにイノベーションの必要性があるため、私たちは着目しているのです。

    たとえば、100ある機能の中で実際に利用しているのは50だけ、残りはあってもいいけど使わないという場合、機能を50に絞れば、コストも安くなるし、シンプルで使いやすくなるでしょう。そこをしっかり伝え、業務効率を向上する方法を教えてあげるべきなのです。

     

    大手企業は資金的な余裕もあるのでシステム化することができますが、このままでは電子化の流れの中で、中小企業が取り残されてしまうのではないでしょうか。

    タクシーに乗ると、ドライバーさんが手書きで運行記録を記入している姿を目にしませんか。サンバイザーの所にメモ帳とボールペンがあって、信号が止まった時に、何時に乗車して何時に降車した、区間はどこどこで料金はいくらなどの情報を記している、あの作業です。たとえば、この運行記録を自動化して、ドライバーさんには自身の体調や運転の管理に集中させることで、よりお客様の安全を確保していくことができるはずです。そういう部分を私たちがサポートしていくべきだと思っています。

    「業務用のiPhone」というコンセプトで業務効率の改善を推進

    スマートドライブは御社のハンディ端末と連携させていただいておりますが、私たち以外にもパートナー様はいらっしゃるのでしょうか。

    倉庫の在庫管理システムや、食品の賞味期限を管理するシステムとも連携し、棚卸しの業務が簡略化できるようにしています。また、店舗内の導線を管理するシステムとも連携が可能です。

    スマートドライブのデバイスで収集したデータは、ハネウェルのハンディ端末を介してデータ送信できますが、同じように店舗で使用されているさまざまなIoTデータを弊社のスマートデバイスで集約することもできます。

    車にはドラレコやデジタコなど取り付けることができるデバイスがたくさんありますよね。配達中のドライバーはいくつもの端末を腰につけて作業していますが、一つに集約させて情報を一元化すべきです。それが私たちの考える業務用のiPhone」というコンセプトです。個人のみなさまもiPhoneやAndroidに数々のアプリを入れていると思いますが、それを業務用に落とし込みたいのです。

     

    その発想は素晴らしいですね。今後さらに多様なデータを取り扱うようになると、バーコードスキャンには端末A、車両の位置情報には端末B、電子決済をするときは端末Cというように、業務用端末を何個も持つことになってしまいますし。

    そうですね。業務用のアプリを入れておくことで、ハネウェルのスマートデバイス1つですみますから、端末の管理も楽ですし、より作業を効率化させることができます。

    スマートドライブとのパートナーシップで「安全と効率」を実現

    「安全効率」という観点で、今後スマートドライブと取り組めることはございますか。

    タクシー業界や運送業界など、車両を使った事業は交通事故のリスクがつきものです。人命に関わる仕事でもありますし、ドライバーの健康管理や車両管理など、さまざまな課題を一緒に解決してきたいですね。その取り組み方も、AはAじゃないと売れない、BはBだと売れない、でもAとBを合わせてCにすればお客様に価値を提供できるという形で。ハネウェルが持っているソリューションだけでなく、スマートドライブなどのパートナー企業と、お互いの強みを掛け合わせてより大きな価値を提案してきたい。

    ハードウェアビジネスは、新しく良いものがリリースされると、型の古いものの値段が安くなるという宿命があります。新しく出たものが売れれば、見た目も機能も変わらない類似品が出回るようになりますし。ハードウェアはあくまで活用するものです。ですので、その先の価値を提供できなければ、最終的にお客様のメリットには結びつきません。

    スマートドライブは分析にも力を入れているとのことですが、そこが数年後、コアな部分になっていくのではないでしょうか。

    これから先、ビジネスの源流となるのはハードウェアではなくデータです。いかにデータを集め、お客様が必要とする価値に作り上げていくか。そこがビジネスの核心になっていくでしょう。なので、双方で集めたデータを多角的にアウトプットして、お客様に今までにない、多大で貴重な価値を提供していきたい。そのためにも、スマートドライブとの連携を皮切りに、パートナー企業様の共創や協業を積極的に進めていきたいと思います。

    ありがとうございます。集めたデータを組み合わせて、世の中にもっと大きな価値を提供していきましょう!

  • 鉄道の自動運転レベル「GoA0~4」の定義を解説

    鉄道の自動運転レベル「GoA0~4」の定義を解説

    技術開発とともに法改正や整備が不可欠な車の完全自動運転化は、まだ先の話になりそうですが、もう1つの重要な交通網である鉄道は、一部の路線ですでに自動運転システムが実用化されています。

    そして、車と同じように鉄道もGoA (Grades of Automation)と呼ばれる規格が存在し、路線ごと乗務員の人数や運行方法など細かい条件が設けられているのです。この記事では、鉄道の自動運転レベルを詳しく解説していきます。

    鉄道の自動運転レベル「GoA」とは何か

     

    GoAとは、UITP(国際公共交通連合)が定めた鉄道の自動運転水準を示すもので、一般的に0~4までの5段階で分類されています。車速・車線の変化が目まぐるしく、停車・発進や右左折を伴う自動車と比較して、線路という専用走行帯を有する鉄道の自動運転化は、かなり高レベルまで進んでいるようです。

    GoAレベルが高くなるほど、路線全体で必要な乗務員数を減らすことができるため、深刻化する人員不足の解消に寄与するほか、運転士・乗務員育成プロセスの省力化、人的ミスの減少による安全性向上、運転状況の集中管理によるダイア安定など、公共交通の要である鉄道事業を維持するうえで山積する問題の解決策として、国内外で研究・開発と実用化が進められているのが、GoAという概念なのです。

    GoAレベルの基準と実例について

     

    国内外の鉄道は、現状どの程度GoAが運用されているのでしょうか。ここからは、各レベルの基準と実例を解説していきましょう。

    鉄道事業黎明期からの伝統的スタイル「GoAレベル0」

    GoAレベル0は、列車に一切自動運転システムが搭載されていない状態、つまり運転手がすべての運転操作を行い、併せて「車掌(添乗員)」が車内の安全確保やドアの開閉、運行状況のアナウンスや切符販売・確認などを実施する段階を指します。

    しかし、運転士が目視で情報を把握しすべての操作を行うスタイルは、国内で言うならローカル線や都市部の路面電車などわずかに実例が残るのみで、現在運行されている鉄道のほとんどがGoAレベル0から脱却しているようです。

    自動車の安全運転サポートと同じ段階「GoAレベル1」

    発進・停止や速度変更などの操作は運転士が実施しますが、速度超過時の自動減速や事故発生時の自動停止といった、安全運転サポート機能を搭載している段階がGoAレベル1。現在、地上を走行する鉄道の多くに実装されています。

    鉄道はステアリング操作が不要ですので、車で言うところの「自動運転レベル1,5」程度と考えられるでしょうか。自動運転のキモと言えるEV化がほぼ完了している鉄道だからこそ、容易に普及が進んだと考えられます。ただし、運転操作の負担がそれほど軽減されていないため、省人化効果はほとんどないとも言われますが、1~2両編成で乗客数が少ない地方鉄道の場合、レベル1であっても「ワンマン」で運用されているケースも多々あるようです。

    踏切がなく人や車が侵入しない路線が主体「GoAレベル2」

    GoAレベル2から、一部の運転操作が自動化され、基本的に運転士はドアの開閉と発進のみ担当、発進後の速度調整や駅での停車をシステムが実施する段階へ進みます。しかし、トラブルが発生した時は手動運転に切り替わり、運転士が直接停止操作をすることになります。

    車に置き換えると、エンジンを始動すれば、目的地まで勝手に移動してくれると言うイメージですが、特定の場所(鉄道では線路と駅)はシステム、緊急時のみドライバーが操作する「レベル3」が、鉄道ではすでに運用されています。有人自動運転のGoAレベル2が導入されているのは、東京メトロや札幌・横浜・名古屋・大阪・福岡など各市営地下鉄が主ですが、つくばエキスプレス、埼玉高速鉄道、多摩都市モノレールなど、一部もしくは全線で地上を走行する鉄道にも採用されています。

    この段階になると運転業務の負担が大幅に軽減できるため、車掌業務の兼任が可能となり、新幹線や特急など路線範囲が広い一部鉄道を除けば、ほぼすべての路線でワンマン運行できるようになります。さらに、運転操作のほとんどが中央管理であるため、ヒューマンエラーの減少や定時運行体制の確立など、人材不足解消以上の効果を期待できるのです。

    添乗員のみで運行可能な「GoAレベル3」

    GoAレベル3は、列車の発進や緊急時の停車もシステムが自動で実施する段階となり、ドアの開閉と避難誘導を担当する添乗員のみでの運行が可能になります。このレベルは、千葉県のJR東日本舞浜駅と、東京ディズニーリゾートの各施設を連絡する環状モノレール、「舞浜リゾートライン」に導入されていますが、国内外を通してレベル3の段階で足踏みしている事例は特殊です。

    これは、GoAレベル3が実現するまで自動運転システムを構築しているなら、人員を乗車させるメリットがないと思われているためですが、前述した舞浜リゾートラインの場合は、添乗員が車内の安全確保だけでなく、施設を案内する役目も担っています。つまり、運営母体のTDLが接客向上のためレベル3に留めているだけで、一般的な鉄道事業者の場合、最終段階であるGoAレベル4に発展させた方が人員コスト削減をはじめ、ビジネス上で得られるメリットが大きくなってきます。

    完全無人運行の実現「GoAレベル4」

    鉄道従事者が一切乗車しない状態で、乗客を安全かつスムーズに輸送する段階−−つまり鉄道インフラにおける無人自動運転の完成形がGoAレベル4です。

    安全確認と乗務員の運転訓練のため、ごく限られた時間帯に人員が乗車するものの、国内では神戸ポートライナー&六甲ライナー、大阪ニュートラム、東京臨海線ゆりかもめ、金沢シーサイドライン、関西国際空港ウィングシャトル、札幌市営地下鉄東西線など、走行範囲や用途が限定的かつ、人や他の交通インフラに対する安全性を確保しやすい新交通システムや地下鉄6路線がレベル4を達成しています。

    海外でもGoAレベル4の導入は進んでおり、ドバイメトロやシンガポールのMRT、釜山のBGLなどがその代表格です。比較的、アジア諸国の方が積極的にGoAシステムを構築・採用しているようです。一方、鉄道の歴史が古い欧米諸国では、GoAの進捗がやや遅い傾向にあり、世界最速の130km/h運転を行う、米・サンフランシスコのバートでも、ドアの開閉や車内アナウンスをする添乗員が乗車しています。

    GoAが抱える現在の課題と今後の動向

     

    世界を見渡しても、かなり高いGoAレベルを達成している鉄道が多い日本ですが、その背景には列車のEV化と正確な運行ダイヤにより、鉄道の運行を集中管理しやすい土壌にあることが挙げられます。しかし、踏切がある一般的な鉄道では、安全性の面から運転手を必要としないGoAレベル3以上は導入されていません。今後も多くのユーザーが日常の足として利用する、JR在来線のような地上走行鉄道では、レベル3以上が導入されることはあるのでしょうか。

    GoAの課題と動向その1 「自動運転システムのセンシング能力向上」

    陸上走行の在来線に、GoAレベル3以上を導入できない理由は、なんといっても人・車などとの接点となる踏切が存在すること。公道と立体交差する高架化を進めて踏切を無くせば、無人自動運転の実現は難しくはないかもしれません。しかし、既存路線の高架化には莫大なコストが必要なうえ、工事の施行に伴い周辺交通インフラへ通行止めや迂回などといった影響を与えるほか、鉄道事業の運営にも支障が生じるため、全路線を短期間で高架化することは不可能とも言えるもの。

    そこで、この最大にして、最難関の課題をクリアすべく技術革新が進められているのが、カメラやセンサーで前方の情報を察知し、何かしらの障害物を発見した際は安全に停止する、センシング能力です。全方位的に障害物をセンシングして走行を制御する自動車と異なり、鉄道は基本的に前方を確認できれば安全走行ができますが、無人運転技術の開発を遅らせているポイントには圧倒的に長い制動距離が挙げられます。

    時速60kmで走行中の普通車の場合、センサーが障害物を発見・完全停車するまで、50mあれば十分ですが、車両重量が段違いである列車の場合は同じ時速であっても500mが必要となります。国内在来線の最高速度は、駅間隔が長くフラットな路線で時速100km程度のため、計算上18秒前には障害物を発見しないと、衝突を回避できないことになります。(※秒速約27,7mで計算、車は約1,8秒前のブレーキで回避可能。)

    しかし、車載センサーとカメラだけでは対処できないため、踏切並びに人や車が誤って侵入しそうな場所にセンシング機器を設置し、IoTで情報共有しつつ緊急停車するシステムを導入すれば、接触事故防止というGoAが抱える大きな課題も解決の目が出てくるでしょう。

    GoAの課題と動向その2 「完全無人化には法改正が必要?」

    日本では、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」において、自動運転のための装置が規定されており(第58条)、その中で「自動列車制御装置を設けた鉄道であること」と明記されています。

    制御装置さえ備わっていれば有人・無人に関して何ら法的規定は存在しないため、現状レベル2までしか認められていない車の自動運転と異なり、GoAの場合は法改正をしなくとも、在来線への最高レベル4運用に法的なハードルは存在しません。つまり、センシング能力を始めとする自動運転技術さえ搭載できれば、在来線のGoAレベル3以上の到達が可能になるのです。

    今年1月には、JR東日本がドライバーレスによる試験走行を山手線で数回実施されました。この試験走行では、定時運行のみならず、若干の遅延を想定して各駅間の時間を短縮、定時運行へと戻す回復運転パターンをテストしたほか、駒込駅~田端駅間にある山手線内の唯一の踏切では減速走行するように設定。そのすべてが正しく反映されるという成果を上げています。導入も間近かもしれませんね。

    GoAの課題と動向その3 「シーサイドライン事故を教訓にした安全性の徹底」

    JR東日本は、20年後を目処に在来線を無人化する目標を定めています。しかし、2019年6月1日、自動列車運転装置(ATO)で運行が制御されていた横浜の新交通システム「金沢シーサイドライン」において、乗客14名が負傷するという事故が発生しました。同路線の新杉田駅で乗客の乗降後、ドアが閉まると同時に、進行方向と逆に列車が急きょ始動し約25m先にあった車止めに衝突。神奈川県警の発表では負傷した乗客の中には、骨折などの重症者が6名出てしまう事態となりました。

    事故から5日後の6日、同路線を運営する横浜シーサイドラインは、当該車両の指令系装置と、モーターの制御に関する駆動系装置の配線に断線が見つかったと発表。司令系から駆動系への信号が正確に伝わらず、モーター進行方向の切替がうまくできなかった可能性があるほか、逆走時に作動するはずの緊急停止システムが、発見された箇所の断線により機能しなくなるという、システム上の欠陥も指摘されています。

    この事故を受け、石井啓一国土交通大臣は、運営が医者に原因究明と再発防止策の実施を指示、併せて全国の鉄道事業者にも事故の周知や注意喚起を行なったとしつつ、「省力化により生産性の向上に資する自動運転の導入は重要な課題である」とも述べています。

    とはいえ、国内鉄道のGoA進行にダメージを与えたのはたしかなことで、踏切が多数存在する在来線への導入には、高度なセンシング能力と共に非常事態発生時の危機回避能力を有する、さらに安全性の高いシステム構築が必要不可欠といえそうです。

    まとめ

     

    今回解説したGoAレベル分類には、運転士が不在でも緊急時の停車操作を添乗員が行う、レベル2以上3未満の「2,5」という段階が存在します。人や車とニアミスする機会が多い在来線の場合、まずレベル2,5を目指すところからGoAは進行していくとみられます。

    2025年には、車の完全自動運転化も視野に入れられていますが、鉄道と車の自動化を連携させることができれば、よりシームレスな乗り継ぎが可能となり、交通機関全体を最適化することができるでしょう。高レベルのGoA実現には課題もたくさんありますが、1つずつクリアしていけばスマホ操作での配車、駅到着時間と列車発車時間の自動調整、乗車券の手配と決済がワンクリックで完了という未来がやってくるかも

  • STARTUP THAILAND参加企業4社の対談 タイ市場の可能性 - 後編

    STARTUP THAILAND参加企業4社の対談 タイ市場の可能性 - 後編

    STARTUP THAILANDに出展して感じたこと

    坂口:
    今回、スタートアップタイランドに参加して、気になった会社やブースにいらしたお客様と話したことや感じたことを教えてください。

    小林:
    全体的にブースを見たときに、エネルギー系のスタートアップは少なかったと思います。各国から来ているなかで、特に我々のようなハードウェアを作っている企業は無かったんじゃないかと思います。そういうところで、チャレナジーは世界で見ても、スタートアップとしてニッチな部分を攻めているのではないかと、感じました。

    竹田:
    私自身がタイのスタートアップ企業のブースを見ていて、ヘルスケア系のスタートアップで面白い企業を見つけました。やっていることはシンプルで薬局向けに電子処方箋の発行、薬代をeマネーでの決済サービスです。今まで紙で扱っていたデータを電子化して、サービスを一気に広げてから、データの商流を抑える。そのデータを活用し、製薬企業のセールス/マーケティングや患者の予防医療に繋げるといったビジネスは今から沢山でてくると思います。

    日本の場合、ヘルスケア系のデータは特定の企業がデータを商流を抑えてしまっていて、なかなか入り込めないですが、タイやフィリピン、インドネシアではまだまだ、この分野は狙えると感じましたね。タイでデータを持っている人たちと協業したいです。

    伊野:
    SPEEDAのブースに来ていただいた、香港で財閥系のファミリービジネスのビジネス開発を手助けしている投資家の方が印象的でした。その方は個人的なつながりで、タイの財閥系企業に対して情報提供しているので、SPEEDAに興味があるとおっしゃっていました。財閥系はすごいファミリー繋がりのネットワークがあるようで、大手のコンサル会社様との付き合いはあるものの、ファミリーを通して、個人で財閥系企業をサポートしている人がいると驚きました。

    坂口:
    個人コンサルタントが、巨大企業グループをサポートするみたいな感じですか?

    伊野:
    まさにそういう感じなのですが、資金力もあるので、個人ですが法人向けのデータベースサービスを買えちゃうくらいの資金があって、権限もある方ですね。ブルームバーグの金額と弊社の金額を比較して、「あっ、安いのね」という感想を述べられてました。

    坂口:
    それはタイの特徴かもしれないですね。人というかネットワークでビジネスしているというのがあると思います。値段とかではなく、誰から買うか?誰を知っているか?というがポイントになるので、タイでビジネスする際にはとても重要なんですよね。

    柚村:
    ブースでタイだけではなく、近隣国のラオスやカンボジアやベトナムまで手がけている運送業・ロジスティクス関連企業の来場者とたくさん会話できました。そこで「越境輸送はやらないの?」と聞かれまして、我々はまだリソースがないので、そこまでやれないのですが、陸続きの国の場合は隣の国もターゲットエリアになると再認識し、越境輸送でもビジネスができれば、さらにチャンスは広がるなと思いました。

    あとは何より嬉しかったのは、インターナショナルピッチで弊社の北川が優勝できたことです!それを聞きつけた方々が興味を持ってたくさんブースに来てくれました。本当にうれしかったです。

    これから海外展開を目指しているスタートアップ企業へ

     

    坂口:
    最後ですが、貴社の今後の海外展開や、これから海外展開を目指している日本のスタートアップに対して一言いただければと思います。

    小林:
    チャレナジーという会社で働いていて、とても楽しいですし、やりがいを感じています。こういったイベントに参加させていただくと、皆様の取り組みや情熱を知ることができて、勉強にもなりますし、刺激をもらえるのも凄く楽しいです。もし、海外展開を考えているスタートアップの企業であれば、こういったイベントに参加して、まずは横の繋がりからの刺激をもらうのも1つの方法としていいのかな、と思いました。

    竹田:
    ABEJAの中でも海外展開するときには色々とあったみたいでして、ちょうど2年前のシンガポール進出のときですね。社内的には「今、やる必要あるのか?」「役員までを外に出してもやる意味あるのか?」とか、そういった話があったのですが、当時の決断の速さがよかったです。AIのマーケットで動きが早いんですね。たとえば、いまインドネシアのAIマーケットに入ろうとしても、以外とローカルのAIスタートアップも強いですし、タイであっても、中国のAIスタートアップが既に進出してきています。1年差が確実にでかいので、悩んでいるのであれば、早いうちに進出したほうがいいと思います。

    坂口:
    社内で反対意見が出てるくらいの早いタイミングで出るのがいいのかもしれませんね

    竹田:
    ひょっとしたらそうかもしれませんね。若手の社員を実験的に海外進出させるのではなく、役員レベルが投資家にコミットして海外に打って出るくらいの方がいいと思います。

    伊野:
    私もABEJAさんと似ていて、思い切って海外に進出しちゃったほうがいいと思います。弊社もそうですが、日本でリサーチして仮説を立てていても、海外に行かないことには現場感とかチャンスは意外と掴めないです。人脈なんかは特にそうです。コミットして海外に出て、そこに全力をかけるからこそ広がっていく世界があると思っています。弊社も創業者が自ら6年前にシンガポールに乗り込んでいますし、海外にかける想いが強いのであれば、役員レベルの方が自ら行った方がいいと思います。

    柚村:
    弊社の海外展開についてのトッププライオリティはタイです。「必ずここで結果を出す」という想いでやっていきます。その後は、同じアジアの中でインドネシアやベトナムなどのモータリゼーションの大きな国に進出しようと思っています。

    今後の海外展開を考えているスタートアップに対しては、皆様と一緒で。早めに一歩踏み出したほうがいいし、トップ自らが乗り込むのも大事だと思います。

    とはいえ、1人だけだと凄い寂しい世界になってしまいます。今回のイベントでもそうですが、社外にも同じような立場の仲間は沢山いるんだなと思えたことは本当に嬉しかったです。

    ジェトロさんの支援も凄くウェットにサポートしてくれて、本当にジワジワありがたいです。これから海外に乗り込もうと思っている企業様がいれば、やっちゃえばいいし、ウェットにサポートしてくれる人たちが周りに沢山いるんですよ、というのを知っていただければと思います。

    坂口:
    ありがとうございます。ジェトロはスタートアップの支援に力をいれていますので、タイにいらっしゃったら、気軽に情報収集がてらお立ち寄りいただければと思います。スタートアップの皆様の支援をさせていただくのは、凄く楽しいですし、刺激になっています。私たちを仲間だと思ってほしいですね。

    それに、タイを含めて世界23カ国のジェトロ事務所でスタートアップ支援を強化していきますので、何かあれば、ぜひ相談ください。

     

  • 移動の進化を振り返る1〜歩いて移動していた時代・・原始・旧石器・縄文・弥生編

    移動の進化を振り返る1〜歩いて移動していた時代・・原始・旧石器・縄文・弥生編

    = 移動の進化を振り返るシリーズ =
    1:徒歩
    2:
    3:船舶
    4:鉄道
    5:飛行機
    6:MaaS

     

    よく会話や歌の歌詞の中で、新しい文化・流行を作り出すという意図を込め、「ムーブメントを起こそう!」という言葉が使われますが、本来は「移動・運動」という意味を持っています。そして、他の動物に比べ圧倒的に移動能力で劣る人間は、知恵や文明の力によってさまざまな移動手段を手に入れ、そのたびに大きなムーヴメントを起こしてきたのです。

    このシリーズでは、私たち人類が二足歩行で空いた両手に道具を持ち始めた時代から、どのように移動手段が変化してきたのかを解説します。

    原始時代の移動は○○だった!

    諸説ありますが「原始時代」とは、人類がいたって簡易な打製石器を使い始めた約330万年前頃から、最後の氷河期が終わる約1万年前まで続いた「旧石器時代」と、磨製石器が使用されていた「新石器時代(縄文・弥生)」までとされています。

    人類史のほとんどを占める原始時代、当時の人々はどのような生活を営み、そして移動していたのでしょうか?

    旧石器時代の移動方法と生活「初期(400万年前~20万年前)」

    おそらく想像に難くないとは思いますが、旧石器時代における人の移動手段は徒歩のみであり、最初期の人類とされるアウストラロピテクスなどの「猿人」に関しては、まだおぼつかない二足歩行ではなく四足移動をしていました。

    その後、何十万年もかけて二足歩行をマスターした「原人」は、次第に脊椎が伸び頭骨が発達したことで脳の成長が促され、自然石を加工し殺傷能力を高めた打製石器を用い、獲物を追い求めて遊動生活するようになります。また、彼らの身体能力は現在の人類よりかなり高く、簡易石器で動物を狩る優秀なハンターであり、人類による火の使用が最も古い説で約170万年前であることから推察すると、少なくとも200万年あまりの期間、原人は生肉を食べていたと考えられます。

    さらに、この時代は現在まで継続している第4期氷河期に当たり、4万~10万年周期で表土全体が雪と氷で覆われていましたが、原人は獲物を取りつくしては次の場所へ徒歩移動、簡易な住処を構え火で暖を取り生き永らえたのです。

    ちなみに、この頃の日本列島にはまだ人類やその祖先は存在せず、ユーラシア大陸と陸続きだった約500万年前頃やってきた、ナウマンゾウやオオツノジカなどといった、大型動物の楽園でした。

    旧石器時代の移動方法と生活「中期(20万年前~4万年前)」

    旧石器時代も中期に差し掛かると、肉食に伴うたんぱく質摂取量が増加したことからさらに脳の発達が進み、猿人・原人から進化したホモ・エレクトスやネアンデルダール人などといった、知能水準の高い「旧人」たちが登場し始めます。

    彼らもおもに狩猟によって栄養を摂取していましたが、気候の温暖化に伴い氷河が後退、大型動物が北の寒冷地に去ったため、新たに狩りの対象となった猪・シカなどの肉を乾燥・燻製保存する技術や、釣り具を用いた漁などが発達します。また、狩猟のみだったものが山菜・果実・木の実などの採集が加わったことにより、性別による食糧入手の役割分担が始まったのはこの頃からでした。男たちは精巧になった石器を用いて獲物を狩り、女たちは野山で採集した植物を土器で調理するようになります。

    その結果、旧人たちは魚介類を入手しやすい川沿い・海沿いへ移動し始め、遊動生活から徐々に半固定的な生活へと移り変わり、併せて条件の良い土地には少数ながら「集団」が形成されていきます。

    そして、中期終盤に差し掛かると集団の規模は徐々に大きくなり、

    • 海産物を扱う集団
    • 乾し肉・燻製肉を扱う集団
    • 山菜・果物・木の実を扱う集団
    • 革製品を扱う集団
    • 鉱物や希少物資を扱う集団

    と、集団ごとに個性が出始め、物々交換による「集団間貿易」が行われていたという学説まであります。いずれにせよ、保存技術の向上・半固定化・集団の形成という3つの要素が相まって、食糧欠乏期における供給安定性が増したことにより、獲物を求め長距離の徒歩移動をする必要が薄れました。生存率の上昇により総人口も約120万人へ増加しています。

    つまり、旧石器前期と同様に徒歩移動であったことには違いありませんが、人生当たりの総移動距離が格段と短かくなり、男性と女性の歩行距離に差が生じ始めたことで、身体的特徴が現代人とほぼ同じになっていったのがこの時代です。ちなみに、現在世界的定説となっている「アフリカ単一起源説」によると、全人類の祖とされているホモ・サピエンスは、約7万年前頃からアフリカ大陸を飛び出し、世界中に移動していったとされていますが、アジア極東である日本にはまだ人類は渡来していません。

    少し話が脇にそれますが、この時代を舞台にしたコメディアニメ、「はじめ人間ギャートルズ」では、ダチョウの祖先のような陸上動物に木製車両を引かせる乗り物や、石製の巨大貨幣が登場しますが、当然この時代に乗り物や貨幣文化は存在しません。

    旧石器時代の移動方法と生活「初期(4万年前~1万年前)」

    ヨーロッパやアジア、そして遠くはオーストラリアなどで、人類が生活していた証拠が出始めるのがこの時代であり、実は約5万年前あたりにホモ・サピエンスは、東アジアに到達していたと考えられています。

    しかし、何百万年もの間故郷に引きこもっていた人類の祖が、短期間(と言っても数万年規模ですが)で世界中に散らばったのか、その謎を解明するメソッドは2つあり、1つは人口の爆発的な増加です。この旧石器時代後期に入ると総人口は約300万人に膨れ上がり、中期に形成され始めた集団が統合を繰り返して巨大化、集落(邑)や部族ができ始め、それぞれに指導者的な人物が現れるなど、現代に近い社会構造が確立してきます。すると、資源が豊かな土地を中心に共存体制が崩れ縄張り争いが勃発、争いに敗れた部族や平和的な思想を持った指導者たちは、新天地を求めて四方八方に「徒歩」での大移動を始めたのです。

    もう1つの理由は、地球規模の温暖化によって海洋の氷が解け水位が上昇、大陸間は海で隔てられたため、徒歩では帰りたくても帰れなくなったことです。移住先で再び勢力争いに敗れてしまった部族は、さらに遠い土地へ徒歩移動をするしか手段がありませんでした。この縄張り争いと移動が数万年にわたり無限ループしたことが、地球的規模の民族大移動を生み移住地の風土・気候ごとに、独自の文化が芽吹きだしたのもこの時代です。

    さて、日本列島に人類が初めて足を踏み入れたのもこの時代で、調査・分析が進んでいる国内遺跡から判断される渡来時期は、約3万8,000年ごろとされています。

    大陸から日本列島への移動ルートは、

    1. 朝鮮半島から対馬→九州北部
    2. カムチャッカ半島から北海道
    3. 中国大陸から沖縄列島

    という3パターンが考えられ、いずれの場合もこれまで凍結していた海上を徒歩移動してきたと考えられていましたが、近年の研究によって別の説が出ています。

    国立科学博物館の人類史研究長「海部陽介氏」によると、人類が日本へ渡来した当時は今よりも寒く、海水が極地で凍り海面が下がっていたのは事実ながら、“入り口”になった3ルートのうち沖縄ルートに関しては、陸続きではなかった可能性が高いとのこと。じゃあどうやって海を渡ったのかと思われるかもしれませんが、その答えは「船」を製造して海上移動し、日本中に散らばっていったと考えられています。事実、沖縄には旧石器人の存在を示す遺跡が多数発見されています。

    もちろん、カムチャッカ半島ルートの場合、沖縄よりかなり北に位置するため氷上を徒歩移動してきた可能性もあり得ますが、近年の研究で津軽海峡には氷河期の最寒期でも海が残っていたことが明らかになってきたため、遺跡が示している本州全土への拡大は無理なこと。また、朝鮮半島から対馬を経由したルートにしても、九州から沖縄へは船を用いないと移動不可能であることから、この説は俄然現実味を帯びてきています。

    また、加工のしやすさなどから旧石器人が好んで材料にしていた、黒曜石という鉱石がありますが、本州にある約3万7,500年前の遺跡から、伊豆・神津島産の黒曜石が見つかったのです。つまり、日本人の祖先は船によって荒海を乗り越えただけではなく、渡来してすぐに巧みに船を操り豊富な黒曜石を探し出し産出、本州へ海運する高度な経済活動を行っていた可能性が高いという訳です。

    新石器時代その1縄文時代(1万年~紀元前3世紀頃)

    約1万年前に最後の氷期が終焉すると、ナウマンゾウやオオツノシカなど動きがスローな大型動物は姿を消し、動きの素早い小型動物が増殖。そのため、徒歩に頼る狩猟はいよいよ困難になってきます。

    海外では、野生動物を捕らえ飼育し増やすことによって、必要な時に食べられるようにする「牧畜」や、食用植物を選別し栽培する「農耕」が始まり、家畜の解体や土地の開墾に用いられた摩擦石器の別称「新石器」から、この時代を新石器時代と呼びます。同時期の日本は土器の文様から名付けられた縄文時代に差し掛かりますが、海外同様、磨製石器も出土しているため、初期中期には牧畜や農耕がそれほど発達せず、もっぱら魚介類が主食になっていました。

    その一方、海産資源や山林資源が豊かな日本では海外より早く定住化が進み、地面を円形や方形に掘り窪め複数の柱を建て、梁や垂木をつなぎあわせ家の骨組みを作り、その上から土・葦などで屋根を葺いた「竪穴式住居」が登場。約6千年前頃までには定住化が進み、旧石器時代のような長距離にわたる徒歩移動はほとんどなくなっていたのです。中期に差し掛かると集落の規模はさらに大型化し、クリを植林して食糧を確保する農法や、近海・淡水漁業も発展します。また、長年にわたって大量の貝を食べ捨てていたことを示す大型貝塚が海岸沿いで多数見つかっていることからもわかる通り、狩猟に伴う長距離の徒歩移動がめっきり減り、定住地周辺だけで生活を営んでいたのです。

    縄文時代にも旧石器人が日本への渡来で使用した可能性がある、草編み船より丈夫なカヌーの原型が作られていたそうですが、移動手段としてではなく漁具の1つという立ち位置でした。後期・末期には、海や川がない内陸地でも大型貝塚が発見されているため、海岸部や河川沿岸で貝を入手した縄文人が、陸路を徒歩で内陸集落に運び山野資源との物々交換をしていたとみられます。

    新石器時代その2弥生時代(紀元前3世紀~紀元3世紀頃)

     

    日本で言う弥生時代は、約600年余り続きました。何万年単位もの旧石器時代や、約8,000年以上続いた縄文時代と比較するとやや短いこの時代は、日本の移動史が大きく変革するきっかけとなった時代でもあります。

    縄文時代末期、朝鮮半島や中国から青銅器・鉄器といった「金属器」が伝来すると、同時期に伝わり始めていた稲作が一気に広まり、北部九州から西日本一帯へ、現在とほど近い水田農法が300~400年近くかけて普及していきます。

    水田農業に必要な治水、灌漑(かんがい)といった共同作業のために「村」ができ、それを統率する首長があらわれ、村同士は争い統合しながらやがて小国となり「王」が誕生。縄文時代までの集団「邑」は少ない食糧を分け合いながら、つつましく暮らす運命共同体でしたが、この頃から水田の広さや米の備蓄量による貧富の差が生じ、富める者は支配者、貧しいものは支配される側という階級分けが始まるのです。小国の支配者たちは、「輿」のようなもので人力移動していた形跡もあり、船による海運も行われていましたが、依然として日本における移動手段は徒歩。

    この時代、海外ではすでに牛・馬を用いた馬車などが登場しているほか、中央アジアではモンゴル騎馬民族によって「ハミ・鞍」などの馬具が開発され、直接馬に騎乗し大陸を駆け巡っていたことを示す史跡や資料も多数存在します。

    一方、現時点で弥生時代に存在していたことが確認されている家畜は、豚(弥生豚)・鶏。「魏志倭人伝」によると紀元3世紀の段階で、日本には牛・馬がいなかったと記されており、3世紀後半から始まる「古墳時代」に揃ってやってきたと考えられています。

    ポイントとなるのはこの牛・馬が日本にやってきた時期です。すでに数えきれないほどの個体数があったため、食用にされることも多かった他国と異なり、牛や馬は豚・鶏とは比べ物にならないほど貴重な生き物として扱われたのです。

    弥生時代から始まった階級分けは、牛・馬が数十頭単位で伝来したころにはほぼ確立しており、王族に極めて近いような立場でもない限り、触ることはおろかこうした家畜を見たこともない民が大多数でした。さらに、日本は海外より水田稲作が発展し、動物性たんぱく質や塩分・ミネラルなどの摂取も海産物で十分に補える状態だったため、貴重な牛や馬を食べるという習慣が、土着しなかったのです。

    その結果、牛は身分の高いものを運ぶ「牛車」や、富める者が所有する広大な水田を耕す「農耕牛」として使われ、日本では食用ではなく子牛を増やして乳を採取する「酪農」のほうが広まっていきました。牛は役目が終わると民に下され食べられることもありましたが、馬に関しては王の墓である「古墳」から、副葬品である「埴輪馬」が出土していることでもわかる通り、庶民が乗る動物でも、食用にする動物でもありませんでした。

    人類移動の進化を考えるとき一番フューチャーすべきなのは、「食糧確保」という生命維持活動と、食糧を調達するため「移動すべき距離」との関係性です。稲作が急発展した弥生時代のおかげで、日本人は騎馬民族のように獲物を狩るため馬で荒野を駆けまわることも、牧羊民族のように飼葉を求め遊牧することもなく、生活を営むことができたのです。

    つまり、弥生時代に「水田農法」が普及し、それが根付いたことで、「農業・漁業・酪農」を中心とした和食スタイルが確立。その結果、当時の支配者階級は食糧確保という政権維持の大命題を果たすため、牛はともかく馬の飼育を広めませんでした。

    まとめ

    これまでの地球の歴史を1年として考えたら、現代を生きる私たちの歴史はわずか「7時間半」ほどでしかなく、そのほとんどを人類はほぼ徒歩のみで移動していました。

    そして、新石器の終盤になってようやく人類は、馬という移動手段を手にしますが、日本の場合は人類史において「4,4秒」という一瞬に過ぎない、弥生時代での稲作普及によって移動手段としての馬の利用は、長くごく一部に留まることとなります。

    しかし、馬移動が普及しなかったことこそ、現在日本が世界におけるモータリゼーションの中心に位置している大きな理由となっているのです。

    = 移動の進化を振り返るシリーズ =
    1:徒歩
    2:
    3:船舶
    4:鉄道
    5:飛行機
    6:MaaS

  • STARTUP THAILAND参加企業4社の対談 タイ市場の可能性 - 前編

    STARTUP THAILAND参加企業4社の対談 タイ市場の可能性 - 前編

    7月25日から27日にかけて、タイ最大級のスタートアップイベントStartup Thailandが開催されました。今回、官民連携でスタートアップを支援するJ-Startupプログラムの一環として参加した4社と事務局のジェトロが対談を行いました。

    肌で感じたタイマーケットの可能性や、イベントで感じたことなどを紹介します。

    【対談者】
    ジェトロ(日本貿易振興機構)
    坂口 裕得子(さかぐち ゆうこ) 以下:坂口

    株式会社チャレナジー
    小林憲明(こばやし のりあき)  以下:小林

    株式会社ABEJA
    竹田孝紀(たけだ たかのり)   以下:竹田

    Uzabase Asia Pacific Pte.Ltd.

    伊野紗紀(いの さき)      以下:伊野

    株式会社スマートドライブ

    柚村 大輔(ゆむら だいすけ)   以下:柚村

    坂口:
    このスタートアップタイランドのイベントにご参加いただいた4社に話を伺っていきたいと思います。それでは、まず自己紹介からお願いします。

    小林:
    我々はチャレナジーという会社でして、社名はチャレンジとエネルギーをからきています。「エネルギーシフトを起こす」というミッションで、安心安全で再生可能なエネルギーを全人類に届けたいという想いで2014年に創業した会社です。

    私自身はこのチャレナジーに2018年の9月にジョインしまして、その前は南米のエクアドルに6年ほど住んでました。ずっと昔から環境保全に興味があったので、会社のビジョンに共感してチャレナジーに参画しました。

    竹田:
    ABEJA(アベジャ)の竹田と申します。ABEJAは「豊かな社会を実装する」というビジョンを掲げて、今はマシンラーニング、ディープラーニングを使って、世の中に社会構造が変わるようなイノベーションを起こそうとしている会社です。

    私自身は新卒でフロンテオというAIベンチャーで事業開発や新規事業に携わっていました。その後はIT企業のCVCに転職し、東南アジアでスタートアップ向けの投資活動を2年ほど行なっていました。その後、やっぱり自分で事業作る方が楽しいと思い、会社の方向性に共感したABEJAにジョインして、以降はタイの事業開発をずっと担当しています。

    伊野:
    ユーザベースの伊野です。よろしくお願いします。ユーザベースは2008年創業で、今はNeswPicksをはじめ、様々なプロダクトがあるのですが、最初に始めた事業はSPEEDA(スピーダ)です。元々は創業者が徹夜してビジネス情報をかき集めて、情報収集に苦労したということが起業の原点で、ビジネス情報へいかに効率的にアクセスし、アウトプットまでもっていけるか?というところに主眼を置いて開発されたプロダクトです。

    私自身は新卒がジェトロでして。対日投資部で、外国企業を日本に誘致するという仕事をしてました。その頃から調査業務をしていて、情報提供することによってビジネスを拡大するか?ということろにパッションを持っていました。ジェトロを卒業したあとはコンサル会社で働いていました。その頃にSPEEDAに出会って「これから海外展開をしていく」と聞いて、創業メンバーに「海外展開は私がやりたいです」と時間談判して、東南アジア展開のタイミングで、シンガポールに赴任しました。

    柚村:
    スマートドライブの柚村です。事業内容としてはモビリティデータを活用したサービスと、プラットフォームの開発および運営をやっている会社です。具体的なサービスとしては大きく3つありまして、B2Bで法人のお客様向けのクラウド車両管理システムの提供、2つ目は個人のお客様向けにB2C向けのお客様にCRMプラットフォームの開発、3つ目はテレマティクスの保険の開発といったところをやっております。

    創業からもうすぐ6年になるのですが、これまでずっと日本でビジネスをしてきまして、おかげさまで国内では300社以上のお客様に利用されていて、デバイスの出荷ベースでは3万台以上出荷しています。

    私のバックグランドとしては、最初に入ったソニーでは20年ほど働いてまして、事業開発、商品企画に従事し、おもにアジアパシフィック地域の海外マーケティング活動も担当していました。その後、三菱自動車にはいりまして、自動車の事業に携わるようになって、マレーシアのマネジメントをしておりました。そのあとに現職のスマートドライブ に来ました。

    坂口:
    面白いですね。こうやって改めて皆様の話を聞くと、多種多様なバックグランドがあって個性的な方々集まっていると思いました。

    肌で感じたマーケットの可能性

    坂口:
    今回にタイにきて実感したこと、マーケットの可能性や期待感や、課題感など感じたことをお話いただければと思います。

    小林:
    弊社としては初めてのタイでの市場調査でした。なので、事前にリサーチでは「タイはそこまで風力ポテンシャルがない」と仮説を立てていました。しかし、実際にタイの会社様と直接対面で話す機会があって、製造拠点としてのポテンシャルに可能性を感じました。

    坂口:
    風の強さって、地域によって結構変わるのですか?

    小林:
    例えばヨーロッパは偏西風があるので、年中一定の風が吹いています。一方で日本は山があったり、台風があったり、風力ポテンシャルは結構高いのですが活用するのが難しいのです。世界の場所によって、風の条件は変わってきますね。

    また、ヨーロッパには今の段階では参入する予定はなくて、逆にニッチなマーケットとして、熱帯低気圧やサイクロンが来るようなところに風車を設置し、ニッチ市場を押さえてから、将来的には他の地域も、と考えています。

    竹田:
    弊社のタイでの事業開発は、2年前のシンガポール法人設立以降、出張ベースですが、着実に進めておりまして、ポテンシャルを感じています。ここ最近での変化としては、JETROや日本大使館の方々からの支援もあり財閥系の企業へもアプローチできるようになってきて、、もう少しでおもしろい事例が財閥系企業と一緒に作れそうです。

    坂口:
    日本の企業ですと、新しい取り組みが心配な場合、事例が沢山ないと心配で重い腰がなかなか上がらない。というケースがあると思います。これはアジア各国の財閥系企業でも同じような形なのでしょうか?

    竹田:
    層によると思います。エグゼクティブ層や財閥の上の方の人たちは頭がキレる人が多いですね。日本の経営層以上にAIのこと学んでいて、誰でもAIモデルが使える時代がくるからこそのプラットフォーム、という思想に対して共感をいただけることに驚きました。

    中堅層は日本と似ていると思います。事例が必要だったり、しっかりとエデュケートしないと進まないと思います。

    伊野:
    我々の場合、日系企業のマーケットの方が多いです。日本法人やシンガポール法人からの紹介、親会社が使っているから子会社でも使う、といった紹介ベースのサイクルがうまく回っています。

    日系マーケットの方は安定というか、導入はスムーズです。ただ、やはりローカルマーケットの方が市場規模が大きいので、いかにどう攻めていくかが課題であり期待であります。

    タイの企業、とくに財閥系の企業を押さえると、どこの企業が使っている、という実績があるだけで反応が全然違います。一方で、財閥系企業のライトパーソン、ライト部門に入っていくのがすごい難しいので、今回ジェトロさんが繋いでくださったのはすごく感謝しています。

    柚村:
    モビリティのマーケットの可能性は大きいと感じています。調べていくとプレイヤーは沢山いるのはわかりますが、誰がNo1なのかよく分からない手探りな状態です。私は東京をベースにして調査してますが、スマートにかっこよく市場開拓しようと思っても、あまりワークしないのです。

    タイに乗り込んできて1週間いるだけで様々な方に出会えましたし「冷たい対応されるだろうな」と思ってた方が実際に話をするととても興味をもって話を聞いてくれたりもしました。タイの現地にいるからこそ、できることが沢山あるのです。

     

    >>>後編へつづく

  • すべてがスマート化された未来へー「Society5,0」とは

    すべてがスマート化された未来へー「Society5,0」とは

    2019年5月31日に開催された「スマートシティ推進フォーラム 〜Society 5.0時代の都市・地域づくりへ〜」で注目された、ソサエティ5.0という概念。

    これは、「IoT・ロボット・AI」などといった科学技術にもとづく新たな発想・アイデアによって、社会的意義のある価値を見出すことで経済社会に変革をもたらし、日本の成長力を高めようというイノベーション戦略の中核を担うものです。似たようなものとして、ドイツの「インダストリー4,0」や、アメリカの「インダストリアルIT」がありますが、日本が今進めているソサエティ5,0は前者とコンセプト的に、大きく異なる独自概念です。

    そもそもSociety5,0とは

     

    ソサエティ5,0とは、2016年1月、内閣府の第5期科学技術基本計画において、我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されたもので、同年9月に発足した国内イノベーション戦略の司令塔「未来投資会議」でも、成長戦略の1つとなっています。ソサエティとは社会のこと、つまりソサエティ5,0とは簡単に言うと「5番目の社会」を意味しますが、過去に「ソサエティ1,0~4,0」という言葉が存在していたわけではありません。しかし、ソサエティ5,0を提唱・推進していくにあたって、以下のように後付けで定義されています。

    ソサエティ1.0 狩猟社会 動植物を狩猟・採集すべく、少人数で遊動生活を送っていた社会。
    ソサエティ2.0 農耕社会 農業が発展したことで定住化が進み、一定規模の集落が形成されルールや指導者が誕生。争いや合議などによって集落が統合され、中央集権による律令制や階級制が確立する時代。
    ソサエティ3.0 工業社会 明治維新・文明開化によって、階級制(士農工商)が崩壊。産業革命を経て、農業・水産業・林業などの一次産業から、製造業・建設業・鉱業などの二次産業へ、経済の中心が移行した社会。
    ソサエティ4.0 情報社会 戦後の経済発展と石油危機に伴い、不動産業・金融業・運輸通信業など、三次産業が占めるウェイトが増加。情報が鉄・石油等と同等の価値を有する、重要資源として活用される社会。
    ソサエティ5.0 新たな社会

    つまりソサエティ5,0とは、現在進行形であるソサエティ4,0に次ぐ、日本史上5番目となる「新たな社会」を構築しようという概念と取り組みですが、より理解を深めるには2つのポイントを抑える必要があります。

    1.    ソサエティ1,0~4,0とソサエティ5,0への移行に要する「時系列の差」

    日本はなぜ、政府が先頭に立ってソサエティ5,0を推進しているのでしょうか。それは山積する社会問題を解決に導くこの概念を、迅速かつ確実に具現化しなければならないからです。

    ソサエティ1,0は数万年レベル、2,0にしても千年単位でじわじわと移行していきましたが、3,0は「10年ひと昔」というように、主力産業が目まぐるしく変化しました。ましてや、4,0である情報社会に移行してからは、昨年リリースされた新しいIT機器や技術が、今年には使い物にならないことすらあります。

    さらに、今の情報社会ではサイバー空間にあふれる情報を分析・判断する作業が必要ですが、すさまじいIT技術の進化スピードに使用者の「スキル」はまだ追いついていない状態です。2017年の調査によると、今の日本におけるインターネット利用率は約90%。高水準であるように感じられますが、そのほとんどがスマホやパソコンによる一方通行の閲覧・動画視聴などが主体。そのため、クラウドからのデータを入手して分析するような、スキルを伴う高度な活用をしているユーザーはほとんどいないのです。

    また、海外と比較し電子決済に対する不信感や抵抗感が強く、カーシェアリングやライドシェア、オンライン配車サービスなどMaaSへの取り組みが北欧諸国や韓国・中国より遅れている日本は、「スマート化」という分野では後進国になりつつあると言えます。

    そんな日本の現状を打破し、スキルがなくともITを使いこなせる社会を作るという概念がソサエティ5,0であり、内閣府によれば「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義され、実現によりサイバー空間にある情報を誰もが有効活用できる、「次世代型情報社会」が誕生すると各方面から期待が集まっています。

    2.    海外版との「根本的な違い」と「高いハードル」

    もう1つのポイントは、製造業の革新や生産性の向上にのみ焦点が当てられている、インダストリー4,0やインダストリアルITと異なり、ソサエティ5,0はIoTなどのデジタル革新により、社会そのものを変えてしまうのがコンセプトであることです。

    ドイツが官・民・学連携で進めているインダストリー4,0は、工場の設備にセンサーを行き渡らせデータを収集・生産性を向上させると同時に、サプライチェーン管理の効率化を図り、国内製造業全体を1つの「スマート工場」として機能させようとする構想。また、米国のGE社が進めているインダストリアルITは、製品から稼働データなどの収集や分析をIoT化することにより、物・データ・人を結びつけ生産効率や品質管理の向上、さらに稼働状況の最適化を狙う取り組みです。

    一方、ソサエティ5,0はIoT導入を「モノづくり」だけでなくさまざまな分野に広げ、人口減少・超高齢化・環境やエネルギー問題・防災および防犯対策・働き方改革といった日本が今抱える課題を解決し、ひいては新しい価値やサービスが次々と創出される、「超スマートシティ」を世界に先駆けて構築すべく、推進されているものです。

    もちろん海外版同様、国内経済の発展や海外競争力の向上も見込めますが、目指すゴールが「一億総参加社会」という点では格段に規模が大きく、政府は実現に向けて2016年から5年間で、26兆円もの巨額な研究開発投資をする見込みです。実現すれば日本は、人類がまだ見たことのない新しい社会の可能性を切り開く存在になり得ますが、現実的には自治体と企業との連携強化や法整備など、クリアすべきハードルも数々あります。

    政府や専門機関・大学・大企業レベルではなく、中小企業や地元住民との連携も不可欠ですし、年齢・性別・地域性の違いや家族構成・経済状態・職種など、多岐にわたる国民生活事情にマッチした、マクロなITインフラの開発・整備が必要となります。

    Society5,0の仕組み

     

    ソサエティ5,0は、センサーなどにより自動集積したビッグデータをAIが人間を超える電算能力によって高次元に解析し、それらのデータをITモバイル・ロボットやスマートカーなどにフィードバックして指示を送り、それらを遠隔操作する仕組みになっています。

    そして、ソサエティ5,0の仕組みが確立すれば、

    • IoTによる情報・知識の共有
    • AIによる情報探索・分析の負担軽減
    • ドローン・自動走行車による輸送効率化と地域格差の是正
    • 無人ロボットによる労働環境の改善と危険回避

    などのイノベーションにより、最新IT技術がもたらす恩恵を簡単かつ安全に、すべての国民が平等に享受できるようになります。

    Society5,0の実現で社会はどう変わるの?

     

    ソサエティ5,0の実現は、いかにスピードが求められていると言っても一度に進むものではなく、実装しやすい分野から徐々に普及が進むこととなります。その中でも早く、そして多くのユーザーの生活に変化をもたらすのは、AIによるネット活用シーンの変化です。

    AIが主体になると、これまで一方通行だった国内のネット利用がデュアル化し、個人別・世代別・性別の検索履歴やECにおける購入履歴など、サイバー空間にあるビッグデータをもとに、ユーザーの趣味・趣向にマッチした商品やサービスが自動提案されるようになります。すでに具体的な導入事例は存在しており、ハウスマートがリリースした中古マンション提案アプリ「カウル」や、フェブリカコミュニケーションズが提供している中古車価格推奨システム「プライシングサジェスト」など、数多くのAIアプリがそこに該当します。

    また、メガバンクのみずほ銀行とソフトバンクの共同出資で開発された、日本初のスコアレンディングである「J.Score」は、ユーザーの信用力をAIがスコア化することで審査の是非と融資限度額が決まる、次世代型の金融商品として注目されています。

    次に実装が進むと予想されているのはドローン。Amazonでは配送のラスト・ワンマイルにドローンを導入していますし、自然災害発生時の状況把握に一役買っているほか、GPSなどITとの高度な融合が進めば、買い物難民問題が深刻な過疎地域への物資輸送もスマート化できます。さらにドローンは、都市部の総合病院などの専門医によるIT遠隔診断にもとづき、地方の小規模病院で不足しがちな輸血用血液や、貴重なワクチンなどを迅速に届けるという、医療面での活躍も大いに期待されています。

    続いて、主にビジネスシーンで活躍が期待できるのが無人ロボットです。ロボットが受付業務を代行する、その名も「変なホテル」の1号店がハウステンボスに誕生し、今では全国に16店舗が展開され、総ロボット従業員数も240人を超えるほど拡大しています。製造業界では、かなり前から重作業や単純作業にロボットを導入していましたが、ロボット技術の進歩とITとの融合により、人材不足が顕著な介護・サービス業への進出も十分期待できそうです。

    もっとも実装へのハードルが高いと考えられるのが自動運転。IT端末を操作すれば、入力した目的地まで完全に自動で車移動できるようになるのはまだまだ先かもしれません。とはいえ、現段階で各国内メーカーの新型モデルに搭載している、部分的自動運転システムの精度は高く、ソサエティ5,0が計画通り進み、車が移動手段から「走るITモバイル」へと進化すれば、カーナビの入力内容をAIが分析・運転操作を制御することも可能です。

    ここまで進めば、最適なルートへの誘導によって物流・輸送業務の効率向上が図れますし、急ハンドル・急ブレーキ急加速の制限や、法定速度を超えたとき車速をセーブする機能を追加すれば、交通事故ゼロ社会の実現も夢ではありません。

    加えて、農業の分野でも自動運転トラクター導入による労働環境改善や、熟練した技術が求められる栽培ノウハウをICTでデータ化し見える化をすることによって、後継者への技術継承が今よりも容易になるのではないでしょうか。

    まとめ

    ソサエティ5,0が完全に実装されることで、人が行っていた作業もロボットや自動運転車に置き換えられ、最終的には意思決定モジュールであるAIから半ば支配される時代がやってくるのではないか、と警鐘を鳴らす有識者もいます。

    しかし、ソサエティ5,0が目指す未来は技術革新による経済発展と、社会問題の解決を両立した「人間中心の社会」です。私たち一人ひとりがITに頼りきりになるのではなく、人間らしいアナログな思考を保ったうえで、新たな社会の到来を期待を込めて迎えるべきかもしれません。

  • 【対談】ベルフェイスと考える営業効率をあげるコラボレーションとは -後編

    【対談】ベルフェイスと考える営業効率をあげるコラボレーションとは -後編

    Web会議システムと車両管理システムのコラボレーション

    弘中:「『ベルフェイス』と『SmartDrive Fleet』、両者は異なるプロダクトではありますが、移動時間を削減したり短縮したりして効率化するという目的は同じですし、親和性があると思っています。

    弊社サービスの導入事例でもう少し詳しく踏み込んだ説明をしましょう。お問い合わせをいただいたお客さまの中で、電気工事業を営む企業様がいました。同社の社員さんは車両で移動し、各現場で作業を行っているそうですが、基本的には直行直帰を認めていないと言うんです。その理由は、社員が会社に立ち寄らずに直行直帰すると、いつ・どこで働いているかを把握できない、また、ちゃんと働いているのかわからないからということでした。

    そこで、現状を把握するために『SmartDrive Fleet』を導入いただくことに。すると、車両がどこを走り、どこに向かっているのかを把握できるようになり、管理側が社員の行動を信用できるようになったのです。それから直行直帰を許可し、会社に立ち寄るための移動時間を削減。こうして削減された移動時間は顧客訪問の時間に充てることができますので、1日あたり訪問件数が1件増えたと言います。数字だけ見ると大したことの無いように思われるかもしれませんが、社内に営業マンが10名いれば1日あたりの訪問件数がプラス10件増えることになりますので、結構なインパクトです。

    ちなみに、そのお客様がオンライン商談システムを検討していましたので、ベルフェイスを紹介しました。」

    西山:「あの時はご紹介いただき、ありがとうございました(笑)。この事例のような企業様に使っていただけると、ベルフェイスの価値をより感じていただくことができそうです。

    車両に取り付けたIoTデバイスから位置がわかるだけでなく、会社の働き方自体を変えて売上にも貢献できるって、本当にすごいことですよね。」

    弘中:「ありがとうございます。この企業さまは、弊社のサービスを非常にうまくご活用いただいていると思います。このような事例を今後もっと増やしていきたいですね。」

    西山:「これは大手製造業から転職してきた社員に聞いた話ですが、前職の営業所はどこも必ず車両があったそうです。ただ、営業によって車両を使う頻度も違うため、1人1台ではなく、営業所にはミニマムな車両台数しか置かれていない。そのため、できる限りベルフェイスを使ってWeb上で営業しつつ、重要な訪問は車で行く、車が不足している時はレンタカーを利用する。これらの車両管理を社内の営業マンがそれぞれ対応しなければならなかったそうです。当時はその彼が車両管理を担当していたようで、細かい管理に手を焼いたとか。

    このエピソードからもわかるように、車両管理の効率化を図りたいということは、営業の生産性向上を目指すことにもつながりますので、ベルフェイスとスマートドライブの掛け合わせはイメージしやすいんです。今後さらに多くの企業が、自分たちの足を使って(もしくは車両を使って)なんでもかんでも訪問すべき営業だった時代から、最適化していく時代へとシフトしていくでしょうね。

    ベルフェイスの事例はWebサイトにも公開していますので、実際にご覧いただくことでよりイメージがより明確になるかと思います。移動時間を何時間削減できたという具体的な数字も記載していますので、効果によるインパクトも実感いただけるのではないでしょうか。

     

    https://bell-face.com/casestudy/ntt_higashi_nihon/

    移動時間6,600時間削減

    変わっていく移動手段

    弘中:「すべてのビジネスパーソンがベルフェイスや車両管理システムを活用できるようになると、営業の生産性を高めるだけでなく、都心部の渋滞も緩和されるのではないかと期待しています。

    基本的にはオンラインミーティングを活用して、近隣でも遠隔地でも高頻度でお客様とのコミュニケーションを取る。一方で、検討度合いが高まってきたり、商談のフェーズが前進したりするタイミングでは、直接訪問をする。そうすれば、電車や車両で移動するビジネスパーソンも減りますよね。」

    西山:「スマートドライブ社ではシガーソケットに挿すデバイスを販売されていますよね。ですので、社用車が減ってしまうと、収益が減少する心配があると思うのですが…。」

    弘中:「現在は車両データが中心ですが、実はバイクやドローン、船やコンテナなどのデータも取得することが可能です。最終的には『モノの移動すべて』のセンサーデータを収集したいと考えているので、その点は問題視していません。」

    西山:「なるほど、車両はあくまでモビリティにおける最初の起点にすぎないということですね。」

    弘中:「おっしゃる通りです。それに、移動手段自体もこれからどんどん変化していくはずです。現在の移動は、目的地に向かうためにやむを得ずというか、そこへ行かなければならない理由があるため移動する、“受け身”の移動だからです。

    それがたとえば、自動運転で移動するベルフェイスブースが街を走るようになり、直前までお客様とベルフェイスで商談して、顧客のオフィスに到着したら対面の商談に切り替えることができるようになったら…? また、対面の商談が終わったら、またベルフェイスで営業活動をしながら帰社するとか。ただ、これが現実化されると、移動しているのか、商談しているのか区別が分からなくなってしまいますけど。」

    西山:「たしかに。私は移動時間に音楽を聞いたり、ニュースを聞いたりしていますが、インプットはできていても、移動しながらアウトプットするのはまだまだこれからだと感じています。

    移動するベルフェイスブース、やりたいですね〜。また、そこに付随するCSRも一緒に考えていきたいです。」

    弘中:「移動が削減できれば二酸化炭素の排出を削減することになりますので、地球の温暖化対策にもなるし、環境にも優しいんです。たとえば、スマートドライブとベルフェイスが同時に契約している企業様が、商談を受注したら植樹するなんてどうでしょうか。そうしたサステナビリティのある活動が一緒にできたらいいですよね。二社が削減した移動時間に応じて植樹や道路を作る補助金に寄付するなど、日常の中で当たり前になっている移動をもっと意味のあるものにしていきたいです。」

    これからの移動はどのように進化していくのか

    西山:「移動が進化していくと、最終的にどうなると思いますか?」

    弘中:「究極を言うと、ブラックホールを使った移動やテレポーテーションも、いつか可能になるのではないでしょうか。見方を変えると、VRを活用して移動せずに遠隔で作業ができるようになることも、移動の進化だと思います。そうなれば、ベルフェイスの競合はVRを開発している企業になっていくかもれませんね。」

    西山:「今は、電車やタクシーに広告を出していますが、交通媒体に難なく掲載してもらえている時点で私たちもまだまだかな、なんて思っています。ベルフェイスに移動時間を削減されるという理由で、電車やタクシーなどの交通機関から脅威と見られ、広告の出稿が断られてしまうくらいにまで成長していきたいですね。」

    弘中:「御社のCMでも、まるでテレポーテーションのように、営業の方がパソコンに飛び込んで、遠隔地のお客様にプレゼンをしているものがありますよね。それを見て、『これも移動の進化だ!』と思ったんです。

    移動時間が削減して、その分生産性が高くなって、就業時間が1日5時間なんて時代がきたら、西山さんは余った時間で何をしますか?」

    西山:「営業としては、空いた時間で別の商談を進めるというのが模範解答かもしれません。しかし、私個人としては、その時間を利用して今とは180度異なる事業にチャレンジしていると思います。1人1つの仕事人生だったものが、空いた時間で違う仕事人生が歩めるようになることは、その人の可能性を広げるためにも良いことではないでしょうか。」

    弘中:「午前中はベルフェイスに、午後はスマートドライブで働くというように、異なる会社でも同じパフォーマンスで働けるようになればいいですよね。

    最後の質問ですが、ベルフェイスの今後の展開について教えてください。」

    西山:「前編で、ベルフェイスを使った商談が月間で数万件あるとお伝えしましたが、スマートドライブがモビリティデータを取得・分析することで移動の進化を後押しするように、私たちもデータを活用して営業の進化を後押ししていきたいです。」

    弘中:「きれいにまとめていただき、ありがとうございました。ぜひ、それぞれの進化を後押しするコラボレーションを実現させましょう!」

  • 自動車業界はどこまで変わる?「CASE」を解説

    自動車業界はどこまで変わる?「CASE」を解説

    2016年のパリモーターショーにおいて、ダイムラーAGのCEOを勤めていたディッター・ツェッチェ氏が、同社の世界戦略の柱として提唱した「CASE(ケース)」という造語を、みなさんはご存知でしょうか。

    今回は、自動車業界が進めていくべき4つの次世代トレンドを、分かりやすく示したキーワード「CASE」について、その意味や進められている具体的な取り組みなどを、詳しく解説していきます。

    なぜ今CASEに注目が集まっているのか

     

    CASEというワードを、公の場で始めて用いたダイムラーのツェッチェ氏は、今年5月CEOを勇退されましたが、生みの親が第一線を退いた今、100年ぶりの変革期に突入した言われる自動車業界は苦境を打開するために、こぞってCASE戦略を採用し始めています。

    なぜそこまでCASEに注目が集まるのか、それはこれまで移動手段でしかなかったクルマが、徐々に所有からシェアする時代へと移行しつつあり、自動車を製造・販売する旧態依然の経営戦略では多様化するユーザーニーズに応えられなくなってきたからです。そしてCASEという造語を構成する、それぞれの「アルファベット」が示す要素を絡み合わせ、安全で利便性の高い次世代型モビリティ・サービスを構築することこそ、自動車業界が生き残っていくための戦略であると考えられているのです。

    CASEのC=「Connected(コネクティッド)」

    CASEのCはコネクトを意味します。つまり、IoTを活用して車とドライバー/車とデバイス・サービス/自車と他車をネットワークで接続することを示します。

    そんなのは、GPSカーナビやアプリなど、ずいぶん前の段階で実現しているんじゃないの?と感じる方も多いかもしれませんが、CASEにおける接続とは、ユーザーの操作に依存する「一方通行の接続」ではありません。CASEは、車もしくは車載モバイルがセンサーなどで、ドライブに関するさまざまなデータを感知し、それを人工知能・AIが高次元で分析。ドライバーへ有益な情報をリアルタイムで提供する、「相互接続」の水準に達することを目指しています。

    具体例として、ダイムラー社はボッシュと共同で、車両に搭載したセンサーで運行ルート上の駐車場空き状況を把握し、車載ディスプレイや専用アプリへその情報を送信する、「コネクテッドベースドパーキング」という新サービスを開発しました。これは、現在ほぼすべてのモデルがスマート・ネットワークに接続しているメルセデス・ベンツに搭載される予定のシステムで、駐車の空きスペース探しが人と車の共同作業となり、時間・燃料の節約やストレス軽減に寄与するものと期待されています。

    国内メーカーに目を移すと、トヨタはすでにCASE戦略の一環として、コネクティッドサービスである「T‐Connect」をリリースしています。そして今後、国内で発売するほぼすべての自社生産者にDCMを搭載して、コネクテッド化を進める方針を打ち出しました。

    さらにスバルも、2022年までに8割以上の新車へ「STARLINK」を搭載し、コネクティッドカーにする目標を掲げたほか、日産は離れた場所にいてもスマホでドアロックできるなどといった機能を有する、「Nissan Connect」をマイクロソフトと連携してスタート。加えて、各メーカーは通信キャリアとの協業も進めており、ソフトバンクはホンダと、NTTおよびKDDIはトヨタと連携を強め、プラットフォームの開発促進やインフラの標準化など、自動車メーカーだけではなく、通信機器・半導体メーカーを巻き込む大きな動きが展開されているのです。

    現状はまだ、情報の自動収集とドライバーへの伝達が主体の「一方通行+α」という状態ですが、すべての車とITが完全につながり、汎用性の高いプラットフォームが構築されれば、車は単なる移動手段からサービスそのものへと進化する可能性を秘めています。たとえば、ドライバーの身体状態を感知して空調を調整したり、体調不良を察知した際には車載デバイスやスマホなどと連携・救急通報をしたりするなど、車が人の暮らしをサポートする「走るITデバイス」になるため重要な要素、それがCASEの「C」なのです。

    CASEのA=「Autonomous(自動運転)」

    自動車という呼び名は、英語の「Automobile(自動で動くもの)」に由来していますが、ご存知の通り今の自動車はドライバーの操作に頼ることなく動く乗り物ではありません。一方、CASEにおける「A」が示す「Autonomous」は、「自律型」。つまり、エンジンまたは電動モーターの力で動くハコから、真の意味での「Autonomous・Vehicle」を開発、普及させていこうという取り組みです。

    すでに国内外の自動車メーカーは、自動運転レベル2(部分的運転自動化)の機能の導入と運用を始めており、GMの新型モデル「Cadillac CT 6」やアウディのフラッグシップセダン「A8」などには、レベル3(条件付き運転自動化)相当が搭載されています。国内メーカーでも、トヨタ・日産・ホンダを筆頭にすでにレベル3もしくは、それを凌ぐ自動運転を実現可能な技術開発が進行しているものの、最大のネックである法整備が進まないため、現状レベル2の運用に留まっています。

    自動運転のターニングポイントになりそうなのは、東京オリンピックが開催される2020年です。トヨタ・日産・ホンダは揃ってこの年までに、高速道路を皮切りに自動運転レベル3に運用を始め、同年中に一般道路でも実現すると言っています。ただ、CASEを提唱したダイムラーが目指す「A」は一歩先を進むものであり、同社が開発・世界に向け発信したコンセプトカー「スマート(EQフォーツー)」には、ハンドルもアクセルもブレーキすら存在しません。

    このスマートは自律運転が可能なコネクテッドEVで、特定個人が所有するのではなくカーシェアリングで使用するものです。そして、同社のCASE戦略的柱として今後メルセデス・ベンツが発表する、さまざまな新型車の基本的枠組みとされています。

    さらにダイムラーは、どの位置から減速すればカーブを曲がれるかを人工知能が計算し、人の判断なしにスムーズな運転が可能となる、3Dデジタル地図「HERE」を用いた自動減速技術を開発中とのこと。スマートとこの技術が融合すれば、高度運転自動化であるレベル4を超え、「Autonomous・Vehicle」の完成形・完全運転自動化となるレベル5の実現も、夢物語ではないところまで来ているのです。CASEを高次元で融合させようと動きを強め、国内外の自動車メーカーで先手を取っているのは、やはりダイムラーであると言えるでしょう。

    CASEのS=「Shared&Service(シェアリング&サービス)」

    CASEの中でもっとも認知度と理解度が高く、世界各国で普及が進んでいるシェアリング&サービス。それらを意味する「S」ですが、自動車の共有を進めようとするこの取り組みの存在自体が、自動車業界にとって諸刃の剣となっているよう。理由は、「シェアリングの普及が自動車の販売台数減少に繋がってしまうからで、国内ではトヨタとソフトバンクが、米国のUBER、中国のDidi、シンガポールのGlab、インドのOLAといった、海外大手ライドシェア会社に出資・世界戦略を進めていますが、全体を通して国内自動車メーカーの動きは、「鈍い」と言わざるを得ません。

    別角度から、ライドシェアに期待を寄せているのはタクシー業界です。DidiやUBERが配車アプリを展開したり、DeNAもAIを活用したタクシー配車アプリをリリースしたりするなど、今後タクシー業界では顧客獲得競争が激化していくと予想されます。

    また、国内ロボットベンチャー企業であるZMPは、自社の次世代自動車プラットフォーム「RoboCar(R)」をもとに、ライドシェアと自動運転を組み合わせた「無人タクシー」を開発。2018年には、東京のタクシー事業者「日の丸交通」と共同で、都心部で世界初の自動運転タクシーを用いた公道サービス実証を行い、将来的にはスマホで予約・決裁が可能となる、スマートタクシーサービスの提供を目指しています。

    この分野でも一歩先を行っているのがダイムラーで、同社は必要な時にパソコンやスマホで最寄りに停車しているEVをネット検索、見つけたEVにそのまま乗りこめる画期的なサービス「car2go」を提供しており、すでに200万人以上の登録者がいます。国内経済を長年支え続けた自動車業界が、車の共有へとシフトチェンジしつつある今、ダイムラーが描いているシェアリングの延長線上にある自動運転の普及という、新ビジネスへの展開が期待されます。

    CASEのE=「Electric(電動化)」

    これからの自動車業界を語るうえで、もはやEVは欠かすことのできない存在になりつつありますが、CASEに実現にも自動車のElectric化は「絶対条件」ともいえる要素です。

    まず「C」との関連性、高度なコネクティッドカーを運用する時は多大な電力が必要ですが、ガソリン車の場合は発電・蓄電パーツを高性能・大型化しないと、すぐに電力不足が生じて車は走るITどころか、ただの「鉄の塊」と化します。

    一方EVはエンジンが不要なため、各種センサーやECUなどを置く余裕が生まれ、高精度な電子制御が可能で応答性を高めやすいことから、非常に自動運転と相性が良いのです。では、大きな電力を発生させるHVはどうかと言えば、電力は問題ないもののエンジンとモーターそれに大型バッテリーを積むスペースが必要なうえ、ガソリン車より制御が複雑なため自動運転との相性が悪いのです。さらに、ガソリン・EVはシェアカーとして運用するにあたり、燃料確保をガソリンスタンドに頼ることになりますが、EVの場合は乗り捨てステーションでの待機中に充電することが可能です。

    そして、EVともっとも関連性が強いのが自動運転です。ガソリン車やHVは、アクセルを踏んでから車が走り出すまでに数多くの過程があるため、メカニズム的に完全自動運転化が難しいのですが、EVは極端なたとえをすると「大きなラジコン」のようなもの。構造をシンプルに、サイズをコンパクトにすれば、センサーによる車速・位置・左右のバランスなどといった動態把握や、それをもとにした遠隔操作が容易になる…そう、前述したダイムラーのスマートこそ、「CASEを具現化するために誕生したEV」なのです。

    ただ、CASEの要となり得るEVを作り出すには、ガソリン・HVからの転用ではない、EV専用プラットフォームの構築が必要です。かくいうダイムラーのスマートも専用プラットフォームが採用されているのですが、それには膨大なコストがかかります。まだ発展途上といえるEV 界で専用プラットフォームを用意したダイムラーには、CASE推進に対する本気度の証が見えますが、ライドシェアに慎重な国内自動車メーカーが、追随する激しい動きを見せるか微妙なところです。

    日本版のCASEはトヨタが牽引

    国内のCASEを推進しているトヨタは、過去に小型EVである「e-com」を開発し、それを用いたEV共同使用システム「Crayon(クレヨン)」を展開しています。クレヨンは、駅などに充電スタンド付きe-com専用駐車場を設置し、車内にはVICS対応のカーナビが搭載され、利用者はカギの代わりにICカードを所持し予約や決済をネットで行うシステム。

    CASEそのままというべきシステムを、トヨタは1999年~2006年の7年間にもわたり、実証実験していましたが全国運用されることはありませんでした。今やe-comはトヨタの大型展示ショールームである、「MEGAWEB」でアトラクション的な扱いを受けています。

    トヨタはその後も、数台のEVコンセプトカーを発表。いずれも市販には至っていないようですが、2020年より「C-HR」のEVモデルを中国に、同年にインドにスズキと提携・開発新型EVを投入すると発表しています。

    ちなみに、現在トヨタが進行しているCASE戦略の要である、自動運転が可能なモビリティサービス(MaaS)用車両「e-Palette」もEVです。サイズ感は前述のスマートより大きい箱型バスのようなものですが、同様にハンドルやアクセルはありません。e-Paletteのすごいところは、ライドシェアリングとして利用されるだけではなく、低床・箱型デザインによるフラットで広い車内空間を活かし、時に移動販売、時にはオフィスといった具合に、まるでカラフルなパレットのように用途に応じて姿を変えられるところです。

    「中のビジネスモデルは自由自在」という、新発想をもとにしたBtoB向けサービスであり、車両コントロールや運行、カギの管理、稼働状況などはすべてクラウドサービスで統合管理されるため、利用者はビジネスだけに集中できる仕組みになっています。「International CES2018」において発表されたe-Palette、およびそれを活用したトヨタのCASE戦略は、同社の本気を感じさせる無限の可能性を秘めた、BtoB・EVビジネスモデル構想と言えるでしょう。

    まとめ

    現在市販されている国産EVの中で、最もCASEの推進にマッチしそうな車は、世界初の量産EVである三菱自動車の「i-MiEV」、コンパクトなサイズ感といい小回りの良さといい、日本の市街地でシェアカーとして運用するにはうってつけ。 i-MiEVを販売する三菱は現在、日産グループの一員ですが日産と言えば、高速道路におけるハンズオフ走行を世界で初めて可能にした、「プロパイロット2.0」搭載の新型スカイラインを、今年9月から販売すると発表したばかりです。

    現在国内でCAS推進似ているのは断然トヨタですが、将来もし進化したプロパイロット3,0・4,0が登場し、それが日本の道路事情とマッチするi-MiEVに搭載されたら、国内BtoC向けCASE の主役は、日産と三菱にものになるかも知れません。

  • 【対談】ベルフェイスと考える営業効率をあげるコラボレーションとは -前編

    【対談】ベルフェイスと考える営業効率をあげるコラボレーションとは -前編

    営業に特化したWeb会議システムを提供するベルフェイス株式会社。「デスクで営業する時代へ」というフレーズでもお馴染みですが、これまでの常識だった「訪問営業」を「オンライン商談」へと転換することで、ビジネスパーソンの移動時間の削減に挑戦し続けています。この対談では、取締役/インサイドセールス支援事業部長の西山直樹(にしやま・なおき)さまに進化する営業や業務の効率化によって実現できることなど、スマートドライブのレベニューマネージャーである弘中丈巳(ひろなか・たけみ)がお話を伺いました。

    コンセプトから見出したベルフェイスの大いなる可能性

    弘中:「本日はよろしくお願いします。まずは簡単に西山さんのご経歴について伺えますか?」

    西山:「ベルフェイスの前は、新卒で入社した営業のコンサルティングやアウトソーシングを行っている会社に、8年半ほど勤めていました。私の営業先企業の中には、後にベルフェイスの代表となる中島が在籍していた企業もあり、彼とはお客さんとして知り合いました。ある時、中島から食事に誘われ、そこで『現在の会社を離れて、こんな新しいことやろうと思っている』とベルフェイスのコンセプトを初めて聞きます。話を聞きながら、彼のビジョンやコンセプトに可能性を感じ、参画を決めたのです。」

    弘中:「その時のコンセプトと、今のベルフェイスのビジネスモデルは同じですか?」

    西山:「はい、ビジネスモデルは変わっていません。ただ、当時は情熱と構想はあったものの、肝心のプロダクトがまだ形になっていなかったため、お客さまに理解いただくための説明がスムーズだとは言えませんでしたね。競合他社の製品のことすら知りませんでしたし、競合製品との違いを聞かれても、うまく回答ができなかった。」

    弘中:「それでも、ベルフェイスが成長するサービスだと思われた理由は何でしょうか。」

    西山:「前職で、営業支援をしていた際、お客さまからの問い合わせに『訪問せずに営業をするには?』『できる限りインサイドセールスで対応して、フィールド営業に商談をパスするには?』という内容が増えていたからです。新入社員のころは、「営業はとりあえず訪問する」ことが当たり前だと思われていましたが、こうした意見が増えていることで、時代は確実に変わり始めていることを肌で感じました。

    それに、ここで挙げた悩みはすべてベルフェイスのコンセプトで解決できるものでしたので、マーケットのポテンシャルが大きいと思ったんです。」

    弘中:「何年か前に知人からベルフェイスについて教えてもらったことがあるのですが、当時の私にはピンと来なくて。『つまり、これで何をするんですか? Skypeと何が違うんですか?』と何度も質問したことを覚えています。」

    西山:「今でこそ、サービスの認知が広がりましたが、当時はベルフェイスの思想に対してピンとくる人はほとんどいませんでしたね。だからこそ、参入する企業がほとんどいなかったのだと思います。サービスの説明やコンセプトを聞いて誰もが理解できるソリューションだったら、大手企業がたくさん参入しているはずですから。」

    弘中:「たしかに。ベルフェイスの強みは、誰でも簡単に使えることですか。」

    西山:「そうですね。あとはインストールなしで利用できる点も強みです。」

    弘中:「ベルフェイスがこれだけ多くのシェアを占めることができたのは、御社のマーケティング力と営業力が抜きん出ていたからだと思っていますがいかがでしょう。」

    西山:「私は、営業やマーケティングというよりも、プロダクトの力によって成長できたと思っています。ソフトのインストールやアカウント登録が不要なのに、パソコンさえあればその場で瞬時に相手とつながる。実は、このようなプロダクトは意外とありそうで無いんですよ。お客さまには「簡単につながる」ことに価値を感じていただいていますし、それを示すように、今ではベルフェイスを使った商談が月間で数万回も行われています。」

    弘中:「そんなに沢山の訪問営業がベルフェイスに代替えされたことで、移動時間が大幅に削減した。これは従来の訪問営業から考えると、大きな移動の進化と言えるのではないでしょうか。」

    SmartDriveとベルフェイスでさらなる営業効率アップを

    弘中:「スマートドライブでは、動態管理システムの『SmartDrive Fleet』を法人向けに提供していますが、車両削減や事故の削減を目的に導入を検討される企業が一定数いながらも、最近は導入目的が多様化していると感じています。たとえば、車両の位置情報をリアルタイムに把握して無駄を省き、顧客訪問の機会を増やして売上アップを図りたい…つまり、営業活動の効率を高めたいと。

    『SmartDrive Fleet』は走行データを可視化できますので、実際に車両管理を行って『1カ月間でこんなにも移動しているのか』とお客さまから驚きの言葉をいただくことが多々あります。当然ながら、車両を使って移動しなければならないシーンもありますが、ベルフェイスなら移動そのものを削減することもできますよね。移動時間を削減して、スマートドライブとベルフェイスで営業効率を高めていく―― そんな連携ができれば面白そうです。」

    西山:「実は私も、スマートドライブのWebサイトを見て、ベルフェイスと組み合わせて販売することができそうだと思っていたところです(笑)。

    弊社の顧客はIT業界だけでなく、製造業や金融、不動産など多岐に渡りますし、中には社用車を所有している企業もたくさんいらっしゃいます。『SmartDrive Fleet』を活用して無駄な移動を可視化し、車両の移動時間を短縮する。さらにベルフェイスを活用することで、顧客訪問の回数自体を削減できれば、地方の企業の場合、社用車を今の半分ぐらいに減らせるかもしれません。」

    弘中:「そうですね、地方の場合、車で片道1時間もかけて訪問先へ行く企業も多いので、その移動時間をベルフェイスに置き換えて、訪問自体を減らすこともできるのではないでしょうか。とはいえ、顧客訪問そのものが皆無になることはありませんし、重要な局面やクレームが発生した時など、実際に訪問して説明すべきシーンでは、効率のよいルートで移動することが重要になってきます。

    直接訪問せずにオンラインで対応できる営業はベルフェイスで対応する。重要な訪問時に、車両での移動が必要な場合は『SmartDrive Fleet』を活用する。営業アクションの組み合わせを最適化し、効率化していくことで、移動をもっと有効なものへと変えていけるはずです。

    実は他にも、将来的にベルフェイス社と実現したいことがあります。難しい組み立て作業や、複雑なセットアップが必要な商品を運ぶ場合、『SmartDrive Fleet』で最適化された安全なルートで配送して、セットアップを行う時は『ベルフェイス』を使った遠隔サポートでフォローする…というのはどうでしょうか?」

    西山:「いいですね、実現させましょう!」

    後編につづく