投稿者: sasaki

  • 【対談】前編:走行データでここまでわかる!– プリンシプルのアナリストに聞くデータを最大限に活用する方法

    【対談】前編:走行データでここまでわかる!– プリンシプルのアナリストに聞くデータを最大限に活用する方法

    昨今、「ビッグデータ」や「データ解析」など、データにまつわる情報を耳目にする機会が大幅に増えています。政府をはじめ、多方面からデータの重要性が説かれ、データを取得するための手段も増えてきましたが、最大限に活用できている企業はまだまだ少ないようです。

    そこで今回は、Google社からGoogleマーケティング認定パートナーとして認められ、アクセス解析を軸に事業を展開している、株式会社プリンシプルのチーフエバンジェリスト、木田和廣(きだかずひろ)さんに、データの分析結果をどのように読み解き、改善へつなげていくべきか、実際の走行データをもとに解説いただきました。

    ◇           ◇            ◇

    大里:「この記事では、SmartDrive Fleetで取得したデータを、プリンシプル社がコンサルティングする際に活用しているツール『Tableau』を利用して様々な角度から分析を行い、データをどのように活用していくべきか、どのような活用ができるのか、データを最大限に活用するための可能性を探ります。」

    木田:「スマートドライブのデータは、エンジンのスタートからストップまでが1レコード(1行)にまとまっているので、加工しやすく、誰が見てもわかりやすい結果になるよう、まとめることができました。まず、これはすべてにおいて言えることですが、とにかくデータさえ取ればいいという考えでは、先へ進むことはできません。結果だけを見て『可視化したらこうだったんだね』と満足するのではなく、そのデータを分析して、深堀りして、いかに活用するかを考えてこそ、業務改善につなげることができるのです。

    今回いただいたデータからは、さまざまな観点で業務改善に導くインサイトを得ることができました。Tableauをベースに、データはどこからどこまで分析できるのか、そして分析結果をどのように捉えるべきかについて、いち分析者としてお伝えできればと思います。」

    大里:「ありがとうございます。それでは早速分析いただいたデータを一緒に見ていきましょう。」

    【分析で利用したデータ】
    SmartDrive Fleetより取得したもの【データ集計期間】
    1カ月分の走行データ【走行IDとは】
    エンジンを入れてから切るまでを1レコードでまとめたもの。1レコードが1IDとなり、同じドライバーが再度エンジンをかけた場合は新たに走行IDが発番されます。

    木田:「今回は、TableauというBIツール(ビジネスインテリジェンスツール)を用いて、ビジュアル分析を行いました。大まかに年齢・住所などを区分した「従業員データ」、荷台の適正温度などの「車両タイプデータ」、実際の走行状態から取得した「ドライビングデータ(走行データ)」の3つをまとめました。初めに使用するのはドライビングデータです。」

    木田:「まずは上図をご覧ください。これは急加速と急減速の回数を日別にまとめたものです。棒の太さはその日に計測された「走行数」を表し、走行数が少ないと細く、多いと太く表示されます。
    走行回数が多い日は自然と急加速と急減速が多くなっていますが、これは通常の傾向ですので、分析の精度を高めるため1時間毎の割合を出してみましょう。」

    大里:「Tableauは、ニーズによって柔軟な分析ができるのですね。」

     

    木田:「こちらは急加速(赤)、急減速(青)の合計回数をドライバー全員の走行分数で割り、1時間あたりの急加速と急減速の平均の回数を出したものです。分析の世界では、絶対数から何らかの答えを導き出すことが難しいため、ある数値を別の数値で割った指標を利用することが多いです。上の棒グラフも、そのようにして、走行時間の多寡にかかわらずドライバーが60分の走行をした場合、急加速と急減速が平均して何回ほど起きているのかがわかります。」

     

    木田:「次は、曜日別に急加減速数を可視化したデータです。こちらを見ると、『急加速が多い日は急減速が少ない』『急減速が多い日は、急加速が少ない』といった相関があることがわかりますね。」

    大里:「一方通行だけでなく、多角的な視点で見ることが非常に重要ですね。」

    木田:「決定係数が0.80となっていまして、これは1に近ければ近いほど分析精度が高いことを示します。つまり、この結果は相関が高いと言えるでしょう。」

    大里:「なるほど。」

    木田:「こちらの結果では、日曜日は急加速が少ないのに、急減速が多いですよね。平日はバスやタクシー、トラックなど、運転に慣れているプロのドライバーが多いのに対し、日曜日は普段は運転をしない一般の方が車でお出かけするケースが増えます。お休みなので急ぐ心配もなく、急加速をする人は少ないと考えられますが、普段から運転をしていないペーパードライバーがハンドルを握ると、走行慣れしていない道を走る際に不安が起きてブレーキを踏みがちになり、急減速が増えてしまうのかもしれない…というような仮説を立てることができます。そうすると、企業側は「日曜日は週末ドライバーが運転する機会が増えて、全体的に急減速が起きやすくなるため、プロのドライバーはいつもより周りに気をつけながら走行しましょう」ということが言えるようになります。」

    大里:「私もまさに週末ドライバーですので、周りに意識を向け、注意深く走行したいと思います。」

    木田:「次に見ていただきたいのが、出発時間ごとに急加減速数を割り出したデータです。すべての走行には出発開始時間が発生しますが、これはWeb解析で言うセッション開始時間と考えることができますね。

    このグラフからは、たとえばですが、早朝勤務は寝不足でぼんやりすることが多く、結果として急加速や急減速が増えてしまうといった相関関係が可視化できれば、企業としてはドライバーに早朝や深夜は働かせない方がいいという判断ができるようになります。

    早朝や深夜は走行数そのものが少ないので、ちょっとこのグラフから確固たることは言えません。」

    大里:「そうですね。」

    木田:「基本的には8時から走行数が増え、夕方になると走行数が減っているので、ドライバーはしっかり休憩をとり、無理のない勤務体系で就業しているのでしょう。データからは、ドライバーによる運転の良し悪しもわかりますが、会社のオペレーションの良し悪しもわかるということです。

    ですので、今後はスマートドライブ社がお客様にデータを提示しながら「御社の現在のオペレーションはこうです。ここを改善して業務効率を向上させましょう」「早朝出発の日は急加速や急減速が多いようです。もしかしたらドライバーに負担がかかっているかもしれませんので、業務を少し調整してみませんか」というような提案ができるのではないでしょうか。

    大里:「スマートドライブは移動にまつわるデータを大量に所有していますので、早朝走行と深夜走行が中心の会社とを比較して、業務効率や事故の危険度を比較してもいいかもしれません。」

    木田:「そうですね、比較対象がある方が、お客様の理解も深まり、改善案を受け入れてもらいやすくなると思います。」

    大里:「また、全業種の平均値を割り出して、『平均に対して、御社の現在地はここです。今後はここを目標値として〜〜を改善していきましょう』といった提案もできそうですね。」

    木田:「プリンシプルには、業種を問わず、多くのお客様がいらっしゃいます。そのため、それぞれの業種内で平均を割り出すことができます。たとえば、EC事業を展開している企業様の場合、『御社のカート完遂率は●%ですが、同じ規模の競合他社様では●%ほどです』とお客様の現在地についてお伝えすることができるのです。そこを起点に、どう差別化していくか、どこを目標値に設定するかが明確になります。

    ただし、EC事業の場合、カートの完遂率は商品単価によって反比例するんですよ。商品単価が低いと非常に高い確率でカートを完遂しますが、商品単価が高くなればなるほど完遂率が低下します。事業者自身は例えば38%というカート貫通率を少ないと捉えるべきか、多いと捉えるべきか、適性ラインが分かりませんよね。全体の傾向を知り、適正ラインかどうかを見極めることができるのは、私たちが広く深く事業や業界のデータを見ているからできることです。

    スマートドライブ社も広義の意味で、GoogleやFacebookのようなデータを集めているプラットフォーマーですので、いずれ世の中に有益なデータを提供してくれると期待しています。」

    大里:「ありがとうございます!」

     

    木田:「次に、出発地ごとに1時間あたりの急加速、急減速の回数を見ていきましょう。
    この絞り方でデータを見ると、急加速・急減速が多い箇所は出発地点の見通しが悪かったり、起伏が激しかったりするなどして運転しづらい場所になっているかもしれないと推測できます。たとえば、下り坂の途中だったり、小学校が近くにあったり、見通しのよくない交差点があったりするとか。」

    大里:「なるほど。そういう考え方ができるのですね。」

    木田:「とはいえ、これだけでは走行した区域や土地の特性まではわかりません。
    ここでもう一度、データに目を戻しましょう。特定の出発地から2回の走行がありますよね。要は、この地点から出発すると、1時間あたりに急加速と急減速が8回も起きるということがわかります。多少、母数が少なくても、その場所の特性や傾向を理解するには十分なデータです。」

    大里:「おっしゃる通りです。」

    木田:「先ほども説明しましたが、太いグラフは走行数が多いことを示しますので、拠点ではないかと判断できます。Aという拠点に車両が10〜15台ほど停車していて、ここを起点に出発するとIoTデバイスが反応し、走行時間の記録が始まる。そんなイメージです。棒が細いグラフは、走行回数が少ないので出先だと考えられます。
    急加速・急減速回数が多い場所は棒グラフが細くなっていますが、その場所から1〜2回しか走行が開始されてないので異常値とも考えられます。しかしここで同時に、『もしかしたら、拠点から出発した方が危険運転は少なくなるのでは?』という見方もできます。
    拠点では朝礼があったり、運転前にアルコールチェックがあったり、班長さんから注意を受けたりして、自然と安全運転への意識が高まるのかもしれませね。」

    大里:「今回のデータには含めませんでしたが、拠点のデータも一緒に分析できればもっと深いインサイトが得られたかもしれませんね。たとえば、品川拠点から走行がスタートした場合は急加速・急減速が少ないのに、神奈川拠点では急加速・急減速が多いとか。」

    木田:「そうですね。住所だけでなく所属の拠点情報があれば、さらに視野を広げた分析が行えます。拠点間でデータを比較して優秀なドライバーを表彰するとか、また、その拠点で改善の余地がある/無しが客観的な視点で言えるようになりますよね。」

    大里:「実際にそういった取り組みをされている企業様もいらっしゃいます。」

    木田:「ドライバーもモチベーションが上がりますし、素晴らしい取り組みだと思います。改善点が明確になったら改善策を考えて実行し、一カ月や三カ月、半年など期限を決めて、結果を比べることが大事です。
    ここまでは要素ごとのざっくりとした分析でしたが、次回以降はドライバー個人に焦点を当てた分析へと移りましょう。」

    Vol.2へ続く

    【株式会社プリンシプル】
    株式会社プリンシプルはGoogle社からGoogleマーケティング認定パートナーとして認められ、アクセス解析を軸にデジタル広告、SEO、DMP構築、Tableauによるデータビジュアライズなどを支援するデジタルコンサルティングファームです。社員数約70名(アルバイト、インターン含む :2019年3月時点)。
    〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-2-5 トライエッジ御茶ノ水10階

    <Tableauとは>
    米国シアトルに本社を置くTableau Software社のBI製品群。
    デスクトップアプリケーションのTableau Desktopで実現したビジュアル分析結果を、Tableau ServerやTableau Onlineといったクラウドソリューションと連携して、社内の情報共有基盤として利用する。
    データを活用して業績を伸ばしたい企業に多く採用されており、行政、通信、エネルギー、金融、製造、小売、サービス、旅行と採用企業は業界を問わない。
    ガートナー社のマジック・クアドラント(分析とBIプラットフォーム部門)で7年連続のリーダーポジションを獲得。

  • ASEAN地域へのEコマース展開、最重要課題は「物流」にあり!?

    ASEAN地域へのEコマース展開、最重要課題は「物流」にあり!?

    海外進出を積極的に進める日本企業。中でも経済成長著しいアジア市場へのビジネス拡大に向け、さまざまな企業が試行錯誤をしているようです。以前は安い人件費を目的とした製造業の参入が目立っていましたが、近年、ASEAN地域への進出に力を入れているのはEコマース業界です。しかし、破竹の勢いで成長を遂げる国内のEC市場とは異なり、いくつかの課題が障壁となって思惑通りに参入が進んでいないようです。

    チャンスが眠るASEAN

    なぜ新たな市場としてASEAN地域に注目が集まっているのでしょうか。ASEAN(東南アジア諸国連合)は1967年の「バンコク宣言」によって、タイ・インドネシア・シンガポール・フィリピン・マレーシアの5ヵ国で始まり、現在はブルネイ・ベトナム・カンボジア・ミャンマー・ラオスを加えた10ヵ国で構成されています。

    外務省の調査によると、2016年のASEAN加盟国総人口は約6億3,860万人で日本の約5倍、貿易高(輸入+輸出)も約1,8倍の規模を有しますが、GDPで比較すると日本の約50%程度(※1)にすぎません。つまり、単純計算で1人当たりのGDPは日本の約1割程度しかなく、貿易高にしてもEUの約21%、NAFTAの約43%に留まる(※2)など、人口の割に経済規模はまだ小さい地域であると言えます。

    消費者の人口が多いにもかかわらずGDPが低水準、しかしそれは裏返すと大きなポテンシャルを秘めているということでもあります。すでに成熟し、新規市場の開拓が困難な日本ではなく、未成熟なASEAN地域にEコマース業界がビジネスチャンスを見出すのも当然のことかもしれません。

    ※1・・・ASEAN:2,55、日本:4,93(単位:兆USドル)
    ※2・・・ASEAN:2,26、EU:10,63、NAFTA:5,24(単位:兆USドル)

    ASEANで本当にECビジネスは広がりを見せるのか

    いかに大きなポテンシャルを秘めているとはいえ、発展途上国の集まりであるASEANの消費者が、早々にEコマースという新たな商取引を受け入れかどうかについては議論されるところかもしれません。しかし、現在ではかつての出店や屋台、個人商店などを介した伝統的小規模流通形態から、デパート・スーパーマーケット・コンビニチェーンなど、近代的流通形態へと転換が進みつつあります。

    上記は、国土交通省が実施したASEAN 主要国の流通形態推移のデータですが、こういった近代的市場への転換は、今後中間・高所得者層の増加に伴い、加速度的に進むと見られています。しかし、そこで大きな問題となるのが、すでに近代的市場が確立している日本や先進諸国と比較したとき、経済規模が小さいASEANにとって、店舗の新規建設費や維持費・人件費などがいらない無店舗型流通のEコマースが「おあつらえ向き」であるという点です。

    コンビニやスーパー、通販サイトなど、あらゆる買い物手段が整った日本とは異なり、首都圏を除くと日々の買い物すらままならないASEAN 諸国の消費者からすれば、食品をはじめとするあらゆる商品が自宅に届くEコマースの普及は、わざわざ時間をかけて都心部にまで出向く必要もないため、生活の利便性が格段と上げるサービスです。事業者からすれば運営コストをかけることなく、大きなビジネスチャンスをつかめる可能性があり、消費者にとっては利便性が向上する。そんなBtoC間での「WIN-WIN」関係を築く土俵が揃っている地域がASEANです。

    ASEANのEC先進国「タイとシンガポール」

    BtoC向けのEコマースが普及するには、入り口となるインターネット環境が整っていることが大前提ですが、Googleのコンシューマーバロメーター(※3)によると、2017年のシンガポールにおけるスマホ使用率は91%、ネットに毎日アクセスする人の割合は76%に達しています。また、同国はASEAN加盟国で唯一1人当たりのGDPで日本を上回る経済立国であり、東南アジアのAmazonとも呼ばれるモール型ショッピングサイト、「Lazada(ラザダ)」が拠点を置くなど、ASEANにおけるECビジネスの中心的存在です。

    とはいえ、前述した流通形態推移データでもわかる通り、シンガポールはASEAN随一の経済国としてすでに大型外資などによる近代的市場への移行が進んでいるため、同国における小売り全体に占めるEC取引の割合は、わずか2%(※4)にすぎません。

    EC業界にとって宝島とも言えるシンガポールを大手が見逃すはずもなく、2016年4月にはグローバル展開を続ける中国のアリババグループが、前述のLazada経営権を10億ドル(約1,080億円)で獲得しています。また、2017年には、Amazonが商品注文後2時間以内に配送する、「Amazon Prime Now」の展開を始めるなど、シンガポールは越境ECの前線基地になりつつあるのです。

    一方、1人当たりのGDPではシンガポールの1割程度のタイですが、日本貿易振興機構(JETRO)によると、2015年のタイのBtoC向けEC市場規模は前年比15%増、2016年はさらに拡大し7,293億バーツとなり、前年比43%増と年々大きく伸びています。

    タイのEC大手、タラッド・ドットコムの創設者で同国EC協会会長のパウット氏によると、現在同国のネット通販利用者は1,000万~1,500万人、ネット上の販売店数は100万店に上ると言います。タイにおけるEC市場拡大は、スマホ・パソコンなどの普及もさることながら、同国政府が発行する身分証明書(IDカード)を利用した電子決済システム「プロムペイ」の導入が大きな要因です。

    政府主導で2017年1月から稼働したプロムペイは、主要商業銀行がこぞって手数料を撤廃したことが功を奏し、2018年にはなんと登録数4,360万件を突破しています。必然的に国内小売における電子決済が増加し、強くEC市場拡大を後押しする結果となりました。

    ※3・・・Googleが無料提供するネットの一般消費者に対するアンケート調査結果
    ※4・・・シンガポール政府系投資ファンド(SWF)のテマセクと米Googleが2016年6月に発表した調査による

    大きな可能性を感じさせる国「インドネシア」

    シンガポールとタイの次にECビジネス拡大が進行している、もしくは進行する可能性があるのがインドネシアとブルネイです。

    ASEAN随一の人口を誇るインドネシアでは、2013年時点で14%だったスマホ利用率が2017年では60%まで増加。(前項※3による)同年度における日本のスマホ利用率が64%だったことから考えても、インドネシアは東南アジアEC市場の中で最も大きなポテンシャルのある国といえるでしょう。今後の経済発展と合わせ、後述する課題が解消されれば爆発的な市場拡大も期待されます。

    ECビジネスが飛躍するために解決すべき3つの課題

    テレビや固定電話など、情報・通信インフラが整っていなかったASEAN各国において、素早く新鮮な情報にアクセスでき、なおかつ簡単にメッセージや電話ができるスマホが爆発的な普及を見せているのは当然のことかもしれません。

    今後前述した3カ国以外の国でも日本並みに、もしくはそれ以上にネット利用者が増えていくと予想されており、EC市場への「入口確保」は、ほぼ問題ないと言えるでしょう。しかしそこで課題になってくるのは、ネットにアクセスし欲しい商品を見つけた後の過程、つまり下記のような点です。

    1. 実物を見ないで購入・決済を決めるという、今までにはない購入方法への違和感
    2. 決済における詐欺被害への恐怖心
    3. 商品が手元に届くまでの物流インフラの整備不足

    1に関してはASEAN各国が文化的に抱えている課題であり、楽天がタイ進出から撤退した大きな要因でもあります。タイでは、業者側が代金を受け取ったのに商品を納品しなかったり、まったく違う商品を送り付けたり、返品要請にも応じないなどといった被害報告が多く、利用者側もわざと第三者受け取りをしたものの、代金を支払わないなどといった事例が続発したのだとか。

    このような被害は、Eコマースの決済手段を現金、つまり「代金引換」に頼っていたため発生したことであり、タイだけではなく他のASEAN諸国でも発生すると考えられます。しかし、決済手段をクレジット決済や電子化、BtoC間の決済においてサードパーティーが介入・保証・管理をするビジネスモデルを導入し、悪質出店者や購入者の締め出しを徹底すれば、時間は多少かかっても解決することができるでしょう。

    また、2に関しても決済の電子化を政府主導で進めているため、スキミングによるクローン詐欺や情報の不正使用など、クレジット詐欺を撲滅していくことも将来的には可能になりますし、こちらに関してはむしろ日本よりASEANの方が進んでいます。

    つまり、一番大きな課題は、3番目にあげた物流インフラの整備不足によるものです。

    ASEAN地域における物流インフラ問題

    ECサイトで商品を購入・決済すれば、早ければその日のうちに手元に届く日本。しかし、ASEAN各国の物流インフラはまったくと言っていいほど整備されていません。

    どの国も、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵政などのような物流大手がしのぎを削っているわけでもありませんし、都市部では極度の道路渋滞が発生しているのに対し、郊外では道路の舗装すらなされていない状況です。急速な経済成長と比例して、首都近郊の交通渋滞はどの国も世界トップレベルと言えるほど。その半面、郊外は山あり谷ありで道路は凹凸が激しく、地方では待てど暮らせど荷物が届かなかったり、悪路走行による荷痛みが発生することも珍しくはありません。

    商品や代金授受に関するトラブルは、悪意だけではなく物流インフラの未整備にこそ原因があるのではと考えられていますし、楽天がタイEC市場の撤退を決断した本当の理由もここにあったのではないかともみられます。

    また、どの国も雨期に差し掛かると豪雨に見舞われ、ドライバーが危険にさらされる可能性もあるため、配送の人材確保も容易とは言えません。また、高温多湿なその気候から生鮮品を遠方に輸送する場合は、冷蔵・冷凍車を大量に導入する必要も出てきます。

    日本と比べると、現地の荷主や荷物を管理する倉庫業者、そして物流従事者それぞれのプロ意識が低く、発送の段階ですでに商品が破損・腐敗していたり、道中の取り扱いが乱雑である可能性も残念ながら否定できません。もっと極端な話をすると、ASEAN各国の治安は必ずしも良いとは言えませんので、治安が劣悪な地域への配送では、強盗・強奪などといった犯罪に遭遇する可能性も考えられるでしょう。

    このような各問題点から、ASEAN全地域で完璧な物流インフラを整備するのは容易でないと思われますが、そこで勢いを増して拡大しつつあるのがシェアリングエコノミー。うまく活用をすることで、ASEANにおけるEコマース拡大の道が一気に開けるかもしれないのです。

    ASEANで活況を見せるシェアリングエコノミー

    EC市場の拡大に伴う物流の担い手不足は、ASEANに限らず世界的に起きている課題であり、同地域へは米国発のライドシェアリング企業「Uber」や、中国系物流マッチングスタートアップ企業「フルトラック」などが、虎視眈々と参入を狙っています。また、米国最大級のEC企業Amazonは、運送業に従事していない一般ユーザーが自家用車で荷物を運送する、「Amazonフレックス」を同国50都市で展開しており、ASEANへの進出も進めるのではと考えられています。

    とはいえ、ネットワークの構築や法的コンプライアンスの関係上、現時点ではどの企業も規模を拡大しきれていません。一方、現地系企業では香港で誕生したモノ版Uber「ララムーブ」がASEAN各国で積極的な展開を行っており、配送物の重さ・大きさ・形・届け先・使用車両などによって、複雑に変化する配送オペレーションに対応する、オンデマンド型サービスを提供しています。

    さらに、ララムーブと競合し香港・台湾・シンガポールなどで展開する「GoGoVan」をはじめ、シンガポールのGrab社やインドネシアのGO-JEK社といった新興ライドシェア企業も、世界有数のEC市場と化しつつあるASEANへの進出に向け、動き始めているようです。

    まとめ

    文化・経済・気候を鑑みると、ASEAN地域では先進国と同レベルの高度な物流インフラを物理的に整備することは不可能に近いと考えられるため、今後はIoTテクノロジーを駆使したオンデマンド型物流シェアリング・サービスが、より一層注目を集めることになるはずです。そして米国や中国と比較し、法的な問題から物流シェアリングが進んでいない日本がASEAN地域でのEコマース事業拡大を図るのであれば、前述した外資系企業と提携するか、国内巨大資本と手を組んで、新たな物流シェアリングを構築しなくてはならないでしょう。

  • [PR]クラウド車両管理システム SmartDrive Fleetの活用事例 — 株式会社ベルテックス

    [PR]クラウド車両管理システム SmartDrive Fleetの活用事例 — 株式会社ベルテックス

    【会社概要】
    会社名 :株式会社ベルテックス
    業種  :通信業
    業務内容:新築戸建てのアンテナ施工、防犯カメラ設置、各種通信工事など
    人員  :23名

    SmartDriveFleet導入前に抱えていた課題

    — まずは車両管理システムが必要だと思ったきっかけについてお伺いできますか?

    大きくは「残業の削減」と「安全運転の推進」に課題を感じていました。

    1点目の残業の削減ですが、現場のスタッフは会社所有の車で複数の工事現場を回っていて、帰社時間が遅いことが多かったのです。残業を減らしたいという思いはあっても、そもそも効率よく現場を回れているのかもわからない状態でした。

    2点目の安全運転を推進は、ドライバーに対して安全運転の指導を行ったにも関わらず、事故がなかなか減らない状況が続いていました。結果、保険会社から厳しい指導を2回も受け、このままではいけない、なんとかしなくてはと危機感を持っていたのです。

    — 総務や現場スタッフの観点ではどうでしょうか。

    総務は日報管理と車両管理(動産管理)にかなり時間を取られていました。
    日報管理は、月末月初になると紙ベースで全ドライバーの運転日報を取りまとめなくてはならず、県外にいるスタッフにはFAXで送信してもらっていました。紙ベースでの保管も必要でなので、どんどんファイルが増えていきますし、煩雑な作業で時間もかかるのでなんとかしたいと思っていました。
    車両管理(動産管理)については、車検や定期点検、オイル交換などの車両に関する情報の管理、免許書情報の管理など、様々な情報を集約してエクセルで管理していたのです。

    現場スタッフは日報の管理が総務と違う観点で負担になっていました。運転日報は、行き先や、高速道路利用の有無、出発時間、到着時間などを走行ごとに毎回手書きで記入します。この作業が現場スタッフには大きな負担となっていました。

    — なるほど。そういった課題があって、車両管理システムの導入を検討されたんですね。
    そして、SmartDrive Fleetではなく他社様の車両管理システムを導入されたと聞きました。

    はい。そうなんですが、過去に使っていたツールは管理画面の操作方法が分かりにくく、リアルタイムに車両の位置が把握できませんでした。日報管理は楽になったものの、車両管理の機能がなかったため総務の負担はそこまで減らなかったのです。

    — 車両管理システムをSmartDrive Fleetへ変更された理由をお聞かせいただけますか?

    SmartDrive Fleetではリアルタイムに車両の位置情報が把握でき、操作画面も直感的にわかりやすそうだと感じまして、まずは問い合わせしました。ただ、この時点ではSmartDrive Fleetにも車両管理(動産管理)の機能は無かったのですが「車両管理機能を入れることはできませんか?」と相談をしてみました。すると、その後すぐにインタビュー会議を開いてくださり、開発に着手してくださった。「そこまで対応してくれるんだ!」と感激したのを覚えています。他社さんと比較して柔軟な機能改善を対応いただけましたのもSmartDrive Fleetを選んだ理由の1つです。

    また、SmartDriveFleetは機能がどんどんアップデートしていくイメージが伝わりましたし、システムに拡張性があることに非常に興味を持ちました。自動でさまざまなデータを集計し評価をしてくれる、いわゆるAIを使ったようなサービスをきっと実現してくれるだろうと、イメージが湧いたんです。

    さらに、SmartDrive Fleetはシガーソケットに挿すタイプなので、日常的にドライバーも目にすることができますし、それによって今度こそ本当にドライバーの意識改変できると思ったからです。

    導入して良かったこと

    — SmartDrive Fleetを導入してどのような前向きな変化がありましたか?

    リアルタイムでの現場スタッフの位置がわかることで、急なヘルプの手配や突発的な対応が必要になった際に、最寄りの社員を現場に向かわせることができるようになりました。効率的に工事手配することができますので、より多くの現場に向かえるようになりました。
    リアルタイムで車両の位置がわかることによって工事の手配がスムーズになったのは非常にありがたいです。スタッフにその都度「今、どこにいますか?」と連絡する必要がないため、調整にかかっていた無駄な時間が大幅に削減できたのです。

    — 調整にかかる時間が減って、効率良く各現場を回れるようになった。つまり、1日に対応できる案件数が増えたということですね。対応可能な案件数が増えれば、売上の向上にも繋がるのではないでしょうか?

    おっしゃる通りです、売上は昨年対比でなんと10%もアップしました。管理者側の無駄な時間がなくなり、スタッフの動向がくっきりと見えるようになったので、今と同じスタッフ数でもさらなる効率化が目指せるのではないかと思っています。

    — 売上が昨年対比で10%アップは凄いですね!他にも導入して良かった点はございますか?

    現場スタッフの残業時間が減りました。紙の日報に手書きで記入する面倒な作業から解放されて良かったです。残業すればその分、自分自身のプライベート時間も減り、疲労も蓄積されます。逆に、勤務時間が短縮できればしっかり体を休めることができます。万全な体調で運転することは安全運転にも繋がるので勤務時間の削減は重要なポイントです。会社としては、みんなが早く退社することで、光熱費も含めて無駄なコストカットができます。

    さらに、全社的な意識改革もできました。私たちは現場への訪問回数をベースに工数評価をしています。一日の生産性を数値化して管理しており、スタッフには「今後、生産性の高さをボーナスに反映します」と伝えたんですね。すると、社員自身が無駄な動きを削減し、いかに効率良く現場に回るべきかを自分で考えるようになり始めています。それは非常に前向きな変化で、全社的な意識改革できて本当に良かったと思っています。

    — なるほど。安全運転はいかがでしょうか?

    実は過去に車両管理システムの導入によって、車両情報や走行データが管理されること対して抵抗をもった社員もいました。しかし、社員自身でも見れなかったデータが可視化されたことで、自分の運転に対して客観的に捉え、安全運転にも気を配るようなりました。

    さらに安全運転スコアを現場スタッフ同士で競い合うようになって、いい雰囲気ができてきています。安全運転の度合いが数値で表示されるというのは、ドライバー本人への気づきにもなりますしとても良いですよね。単純に急加減速の回数だけだと分かりづらいですし、意識まで変えることができませんから。

    また、SmartDrive Fleetで設定した安全運転スコア(※1)を用いてスタッフの中で上位者には、賞金を出すというベストドライブ賞の運営をこれからはじめようと企画中です。社内全体で、「より効率良く・より安全に」という流れができてきたように感じています。 事故が起きないということは会社だけでなく、本人にとっても良いことです。交通事故は、後々の手続きや身体的、精神的な負担など、起きてもいいことは一つもありません。事故がないというだけでも、本当に大きな成果だと思っています。

    SmartDrive Fleetを活用して目指していきたいこと

    — SmartDrive Fleetを活用して今後改善したいことはございますか。

    SmartDrive Fleetでは急加速と急減速をG-Forceで可視化することができますが、私たちが重視しているのは急加速です。急減速はやむを得ず発生することも考えられますが、急加速は本人の意思によるもの。ゆっくりアクセルを踏んで発進すれば安全運転と安定走行が可能になり、確実に燃費も良くなります。

    ですので、急加速を減らすことに対して一番点数を与えるようにしています。急加速をの回数が減れば、安全運転がエコドライブにつながります。乗り方によって、10%は燃費が変わってきますので、今後さらに意識づけていきたいと思っています。

    — 今後スマートドライブに期待すること、希望されることはありますか?

    アイドリング時間を取得できるようになれば嬉しいです。もしくは、車両が止まっている時間が一定時間以上に達するとアラートが鳴るようにするとか。(※2)

    あとは、ドライバー側のアプリに日常点検機能など、総務側で管理する内容を搭載いただけると非常にありがたいですね。どこの企業様でも大抵、日常点検は紙にチェックを入れて提出するという流れなのですが、アプリから点検やオイルチェック、空気圧のチェックができて、チェックが反映された情報が総務で管理できるようになると総務の業務もさらに減らすことができます。他には事故履歴なんかも記録できる機能が欲しいです。

    スマートドライブ社はしっかりと企業の声を聞き、柔軟でスピーディな対応をしてくれるので、今後も期待しています。

     

    ※1
    安全運転スコアとは急加速・急ブレーキ・急ハンドルなどから弊社の独自ロジックで安全運転度合いを点数化したもの。
    ※2
    アイドリング時間の計測は今後開発予定です。

  • 【対談】後編:サステナブルなまちづくりを — 東急電鉄が目指すMaaSの終着駅

    【対談】後編:サステナブルなまちづくりを — 東急電鉄が目指すMaaSの終着駅

    前編では、スタートアップ企業と進めている連携のお話、東急電鉄が大事にしているMaaSの考え方について語っていただきましたが、後半では現在進めているプロジェクトについて、そしてMaaSの未来について語っていただきました。

    今年に入ってさまざまなMaaSの実証実験を開始している東急電鉄。まちづくりとMaaSの新時代を開拓し続けるお二人の思いとはー?

    前編はこちらから>>

    東急電鉄の根幹にある「まちづくり」への姿勢

    加藤「東急電鉄は、田園都市株式会社というまちづくりの会社から歴史が始まりました。その後、鉄道会社を買収したため結果的に鉄道会社の社名を名乗っていますが、本質はまちづくりであり、鉄道はあくまで街づくりを構成する事業の一つとして考えられていました。そのため、持っていた不動産をデベロッパーと同じように開発してリーシングしたら終わるのではなく、東急百貨店や東急ストア、東急ホテルズ、東急レクリエーションなど、現場オペレーションを回すところまでを対応しているのが特徴です。つまり、東急グループは、場所と交通インフラを持ち、人を運んで施設のオペレーションを回す、総合的なUXを体現できる企業体なのです。

    今後迎える新時代に向けて、お客様が体験するサービス施設や商業施設との連動をはかり、交通オペレーション+αのMaaSを提供していかなくてはなりませんが、そこで必要となるのがそれを体現するための材料です。材料となるデータ、そしてインサイトはスマートドライブとの連携で叶えられるのではないでしょうか。」

    森田「そう、東急電鉄はもともと田園調布の都市開発を行う会社だったんです。1923年、東京に大きな被害をもたらした関東大震災が発生しました。大災害だったにも関わらず、洗足を中心とする田園都市に建てられた住宅は一軒も被害がなかったため、それを知った人たちが多く移り住んできたのです。しかし、そこには都心へ出る手段がない。だったら、電車を開通しよう。鉄道を開通してから街をつくる他の鉄道会社とは主従が違い、このように、まちづくりの手段として電車が取り入れられたんです。」

    北川「面白いですね。場所の活用やまちづくりをするにあたって、購買履歴や人の動きなど、どういったデータをどのように活用されているのでしょうか。」

    森田「グループでは、東急沿線で利用するとお得になる東急カードを発行しており、現在50万人を超えるユーザーがいます。一定エリアではありますが、カードの利用履歴から分析を行っています。
    一方、観光型でいうと例えば伊豆高原に訪れる人の●割が踊り子号に乗って、●割が各駅停車を利用して、●割が車でくるという情報が見える化できれば、その情報に合わせて駅前のロータリーの作り方や駅の案内所の仕組みを変える時に活かすことができますが、そこに個人の情報は必要ありません。

    そして、各人が最寄り駅に着いたら、その先は二次交通を利用してそれぞれの目的地に向かうと思いますが、季節・曜日・時間帯によって駐車場がどの程度利用されるかがわかれば、オペレーションフローを効率化させることができるようになります。データを活用して、早急にそこまで行き着きたいですね。今回、伊豆の実証実験においては、東急グループを核として他社さんを巻き込みながら進めています。

    お客様にとって、移動は単なる手段でしかありませんので、ここにきて各企業が競り合うのは違いますから。そうやってオープンに組めば組むほど、より多くのデータが入ってきます。ただ、一方でこうしたデータをどう活用していくべきかという図式ができないとプレイヤーを増やしていくことができませんので、その点は系列の子会社をハンドリングしながらうまく進めていきたいですね。」

    データ×ピーク分散は相性がいい

    加藤「データ活用は、ピーク分散と非常に相性がいいんです。一時期、とある商業施設にお客様が偏りすぎてしまったことがあるんですが、長時間、混雑して待ち時間が発生するとリピート率を大幅に下げてしまうんです。たとえばそこで、この交通ルートを利用して何時に到着するという情報がわかれば、ゆっくり体験できる時間をお知らせして事前予約していただいたり、サービスプロバイダの価格を調整したりすることができるようになるかもしれません。MaaSで取得できる移動データで予測をしながらサービスオペレーションの価格にも反映していく…それが今後目指していきたい場所ですね。」

    森田「地方での活用でいうと伊豆は135号という国道が通っていて、夏季休暇やGWなどの長期休暇は大変混雑するんですね。伊東から小田原までなら、通常30〜40分程度で到着する距離ですが、渋滞にどハマりすると平気で5時間も6時間もかかってしまう。

    伊豆は二次交通が弱く、8割の方は車でいらっしゃいますが、その8割をバスやタクシーに少しでも振り分けることができれば、渋滞時間を大幅に減らすことができるかもしれません。そうした課題を東急グループで解決していかなければならないと思っています。これは極論かもれませんが、混雑時のマイカー利用が●割以上だったら走行規制をかけてしまうとか、大混雑時に高速を利用する場合はチャージをいくらかのせて、その分、電車での移動を安くするとか。渋滞への疲れや負担を減らすためにも、公共交通で伊豆にきていただく習慣を根付かせて行きたいですね。」

    加藤「そういった新たな交通手段も提案しながら例えばスマートドライブ社のデータを使って、現在一定である首都高速の料金を時間帯や混在具合によってチャージを変えて最適化できるようになると、都市生活がより快適になるのではないでしょうか。そのような世界観を作り出すためにもMaaSは必須の考え方ですが、システムを作り上げた先に重要になってくるのがサービスを連携してUXを統合していくかですね。」

    郊外型MaaSは働き方改革の一手になりうる

    森田「これは郊外型MaaSの話になりますが、インバウンド向けに観光用目的で作ったハイグレードなバスが一台余っていたので、これを活用してたまプラーザから渋谷間で通勤する人を募り、1カ月の実証実験を行ったんです。通常、田園都市線から渋谷までは30分で到着しますが、バスは道路の混雑状況も関係しますので通勤時間はいつもの倍以上になります。

    しかし、座席はゆったりめでフットレストもあるし、Wi-Fiやコンセントも完備している。もちろん、通勤時の混雑を緩和する目的もありますが、通勤時間帯の混雑率が185%もの電車に揺られて心身ともに消耗するより、快適なバスの中で座ってのんびり過ごしたり、仕事のメールを確認したりできた方が有意義なんじゃないでしょうか。

    そこで、この取り組みを働き方改革と組み合わせて、利用者が乗った瞬間から勤務時間が始まるようにすればどうだろうかと。10時にたまプラーザを出ると同時に始業開始時刻にして、11時過ぎにオフィス近くに到着、そのまま勤務を続ける。そして、渋谷に到着して2時間ぐらい休憩を挟んだら、今度は朝型勤務のアーリーワークの人たちが13時ぐらいにオフィスを出て帰宅の手段として利用する。そうすれば働き方改革にもなりますし、移動中の貴重な時間も無駄になりません。動くシェアオフィスみたいなものを実用化できればと思っています。」

    北川「私たちスマートドライブもコーポレートビジョンに『移動の進化を後押しする』という言葉を掲げていますが、突き詰めると、移動を移動ではないものにしたいということなんです。この空間が次の打ち合わせ場所に行ったら、その間の移動って移動だけど移動というものではなくなる。そういう概念を変えていければいいなと思っていて。

    現在展開している事業にフォーカスされると車両管理や保険の割引といった狭いイメージで捉えられてしまうのですが、実際に強みとしているのは、動いているものについているセンサーからデータを集めて解析することで、様々なインサイトを見つける事です。先ほど加藤さんがおっしゃっていたピーク分析も私たちの得意とする分析と相性が良いでしょうし、デバイスにも制限がないのでカメラの映像データなどの他のセンサーデータを活用することも可能です。

    不動産の会社様と住宅用マンションにカーシェアのステーションを置くとどの程度駐車場スペースを減らせるといった人の動きの流れを最適化しようという実験したこともありますし、そうしたことも含めてビジョンは近いところにあるかと思います。」

    森田「田園都市沿線でカーシェアやオンデマンドバス(利用者ニーズに応じた移動サービスを提供するバス)などを試験してわかったことが、そもそも地域ごとにメンタリティが全然違うので、シェアリングは意外とハードルが高いということです。CtoCとBtoCの2つのモデルを作っても、CtoCはヒトとヒトになってくるので浸透しづらいんです。」

    北川「BtoBの場合と違って、倍の時間がかかってもより快適な手段を選びたいという人も少なくはありません。」

    森田:「個人の価値観によって大きく違ってきますから、一筋縄にはいきませんね。」

    コペンハーゲンの衝撃

    北川「さまざまな事業アイデアを出されていますが、すべて社内で起案されているのでしょうか。」

    森田「基本的には社内ですね。もともとは私を含めて4人のチームで立ち上げ、途中で一人増えて今は5人のメンバーで考えています。」

    北川「先にもお話が出ていましたが事業を立ち上げる中で競合となる会社と連携をしたり、スタートアップ企業と持っていないケイパビリティを補完しあったり、そういうマインドで進めてらっしゃるということですね。」

    加藤「はい、ここで非常に重要なポイントが事業者間での連携です。お客様は最終目的地に到着すればいいというシンプルな発想なので、事業者間がそれぞれ連携せずに閉ざしたままだと、囲い込むことはできても人々にとって最適化を図ることはできません。
    ただ、データの連携というのはいささかナイーブな部分もありますので、活用するにあたってその辺りをどうクリアにしていくべきか…。いま頭を悩ませているところです。その点について北川さんにもご意見うかがってみたいなと思っておりまして。」

    北川「直接的な回答ではないかもしれませんが、データを集めてどう付加価値をつけていくかという事業を推進する中で気づいたのは、データはそれ単体では価値が低く、色々なつなげることで価値が倍増するということです。各人が持っているデータをつなげることは希少性は半分になるかもしれませんが、全体の価値が3倍になるから、結果として1.5倍にバリューアップするという考え方です。

    そのあたりの実感値を持っていらっしゃる方はまだまだ少ないので、『つなげてしまうと自社の重要なアセットの希少価値が半減する』というところばかりを意識されてしまうんです。
    当然プライバシーなど今後もっと整備して、ケアしていく必要がある事はたくさんありますが、概念としては希少性が減ったとしてもその分価値が3倍、4倍に膨れ上がれば、結果としては良い方向へと進めますので、事例を提示しながらそこを上手に啓蒙していくことも私たちの役目かなと感じています。」

    森田「2018年9月、ITS世界会議2018でセッションに参加する機会があり、加藤と一緒にコペンハーゲンを訪れました。そこで、現地の空港を見せていただいたのですが、とにかくインパクトがすごかったですね。空港の天井には4,000ほどセンサーが取り付けられていて、どの便のどこ行きの飛行機だとどういう列の並び方になるかみたいなアルゴリズムが組まれているんです。そのため、チェックインカウンターなどすべてを固定せずにフレキシブルに動かすことができ、混雑を回避することができるという。

    また、コペンハーゲン空港に到着した人たちから、タクシーがどれぐらい、団体はどれぐらいといった割合を出していて、タクシーに関するデータはコペンハーゲンで売り上げ上位を占めるタクシー会社三社に売られています。コペンハーゲンでタクシーに乗ると料金メーターとは別のモニターが搭載されていて、、『ターミナル1に行くとこんなお客さんの塊がある』みたいな情報が映し出されています。ドライバーはその情報を確認して、効率的な客周りに役立てているのです。

    日本にはない先進的なコペンハーゲンでの体験を参考に、今後MaaSを広げて行くときは同じように空港までのワンシーンもつなげていきたいと考えています。」

    地方のMaaSは最初の一歩が肝心…?

    北川「いろんなものとつながっていくという意味で、今までまったく接点がなかったような企業やヒトとコラボレーションしているものはありますか。」

    森田「思っているような回答ではないかもしれませんが…ひとつ、それに近いお話をさせてください。
    先ほど、観光型MaaSは地域の住民、とくに高齢者を見据えて進めていかなくてはならないというお話をしましたが、今やろうとしていのは入り口部分を広げることです。

    高齢者の方って、スマホの所有率が本当に低くて。そのため、今度下田市の文化会館で地元の方向けに説明会を行い、『Izuko』の利用方法やオンデマンド交通でスムーズに移動ができるという話をする予定ですが、いずれもスマホを利用するため、持っていないと話にならないんです。そこで会場に携帯電話会社数社にも来てもらい実際にスマホを体験していただいて、同時にスマホを持つ利便性も伝えていければと。

    スマホを触ったことがない人でも、体験すると意外とすぐに操作を覚えてくださいますし、オンデマンド交通で教習したドライバーさんにもご年配の方は多くいましたが、みなさん今はしっかり使いこなしています。はじめは抵抗感があるかもしれませんが、丁寧に、粘り強く取り組んでいけば変えていけるはずです。そうすればMaaSの取り組みも前進します。」

    北川「最後に事業やケイパビリティは違いますが、目指す世界観は重なる部分が大きいですね。最後に、スマートドライブに期待することや希望することなど、コメントを頂戴できればと思いますがいかがでしょうか。」

    加藤「自家用車やバス、物流関連の車両から多くのデータを取得して、それらから何が見えるのかを一緒にブレストしたいですね。
    自家用車の場合、マネタイズのポイントがサービスオペレータ側にある可能性が高いため、データを取得してどの時間帯で需要が高いのかがわかれば、的確な対応ができるようになります。」

    北川「そういう意味では今の時点でも接点を作らせていただけるかもしれません。プラットフォーム事業なので幅広いデータをBtoBだけでなくBtoC向けにもアレンジできます。私たちもその強みを活かしてもっとインサイトを深掘りして改善策を講じていくフェーズにいきたいと思っていますので、積極的に進めていきたい部分です。
    東急さんをよく利用している方がどういう行動をしていて、この先どのようなものを望んでいるのかがわかれば、今後のまちづくりにも大きく活きてくるはずですし。」

    加藤「あと、これは少し局所的な話になってしまいますが、商業施設の駐車場問題をなんとかしたくて。大規模な商業施設の場合、週末はすぐに満車になってしまい、かなりの機会損失が発生しています。需要予測の視点でデータを分析していけば、的確なサービスオペレーションの改善点が見えてくるかもしれません。

    また、今後ぜひとも実現したいのが、事前予約は当然のこと、駐車場の価格をダイナミックプライシングに変えることです。たとえば、スマートドライブの利用でデータをいただいている方に対して、何かしらのインセンティブを返してあげるとか。

    ゆくゆくは、日本の車両すべてにセンサーが取り付けられて、そのデータが分析されて、あらゆるサービスや店舗の中で時間の変動を行っていく…スマートドライブ社が社会的な負荷分散ができる仕組みの基盤となってくれることを期待しています。」

    北川「データ分析と予測は、ダイナミックプライシングやピーク分析と相性が良いですし、是非とも実現したいですね。運転に応じて保険料やリース料を変えるような取り組みはすでに一部始めておりますし、、この考え方を広げて、バランスのとれたサステナブルな社会を作っていきたいと思います。」

    森田「私が期待していることとしては、バスやタクシーのオペレーターがどんどん高齢化し全体的に人が少なくなっている中でデータを使った効率化ですね。東急グループの強みはスムーズなオペレーションへの知識や経験を豊富に持っていることであり、そこにスマートドライブのデータを掛け合わせれば社会的な課題解決への道も近くなると思っています。

    ただ、データを本当に活かすうえでは、各種オペレーションのことも知っていただくことも大事です。だからこそ一緒に取り組める機会があるといいなと思っています。オペレーションを知っていただくことで、持っているデータの価値は大きく跳ね上がるはずですから。」

    北川「スマートドライブも東急電鉄様にお力添えできるところがないか、何かご一緒させて頂いて新しい価値創造ができるように今後とも頑張っていきたいと思います。お二人とも、本日はありがとうございました!」

  • 【対談】前編:サステナブルなまちづくりを — 東急電鉄が目指すMaaSの終着駅

    【対談】前編:サステナブルなまちづくりを — 東急電鉄が目指すMaaSの終着駅

    少子高齢化による過疎化や人口の減少、全業種における人手不足、ライフコースの遅延…。時代が前に進むとともに、国内が抱える課題も多様化しています。そんな中、移動の効率化を推し進めるために広がっているのがMaaSという概念です。

    バスや電車だけでなく、不動産や生活サービス、ホテル・リゾートなど、多角的に人々の暮らしを支えている東急グループは、2019年には伊豆の下田で大規模な実証実験を開始、自社の強みを活かしつつ先頭に立ってMaaSを推進しています。今回の対談では、東京急行電鉄株式会社で事業開発室 プロジェクト推進部 プロジェクトチーム課長である森田創(もりたそう)さま、東急アクセラレートプログラム運営統括の加藤由将(かとうよしまさ)さまをお招きし、東急グループが目指すMaaSの目的地、現在取り組んでいるプロジェクトについてお話を伺いました。

    MaaSの始発駅

    北川:「本日はよろしくお願いします。早速ですが、お二人がMaaSに関する事業に携わるようになったきっかけを教えていただけますか。」

    森田私は1999年に東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)に入社し、初めは海外事業部に所属していました。そこで担当したのは、オーストラリアのパースという約5,000ha(山手線の内側の面積と同じぐらい)の広さの土地で都市開発をする仕事。それから入社3年目に入った頃、自分で新規事業を興しました。今も同じような制度が社内にありますが、自分が立ち上げたい新規事業を書いて目安箱みたいなところに入れると、その企画書が審査されてプレゼンの権利がもらえるんです。その事業案が無事に通り、2002から2005年までは事業責任者を担当していました。

    その後、社内でヒカリエの建設計画が持ち上がった際にプランナーの公募があったので、自ら進んで参画。ヒカリエの中核施設として音楽や演劇を上演するシアターオーブという劇場があるのですが、そこの責任者に就任し、演劇プロデューサーとして5年間、情熱を注ぎ込みました。その後、本社に戻り、2014年から広報課長に就任、2018年4月から事業開発室プロジェクト推進部で新規事業を推進することとなり、現在に至ります。」

    加藤「私は入社から4年ほど経理業務を担当し、次に『東急電鉄 住まいと暮らしのコンシェルジュ』事業の立ち上げを経験しました。その事業をきっかけに、新規事業を興す再現性をアカデミックに捉えたいと考え、自費でMBAを取得し、その後、東急アクセラレートプログラム(以下、TAP)を立ち上げました。当時は都市開発を行っている不動産部門に所属していたこともあり、渋谷の再開発に着目し、ハード以外のソフトの部分で大小さまざまな企業やヒトとのコミュニティをどう築いていくかということ。

    その考えを軸に、東急グループが持っているアセットやリソースを活用してスタートアップの成長支援を行う目的でTAPが始動し、現在、5期目に突入したところです。また、2019年7月にテクノロジーのインプリメンテーションにフォーカスした施設『Shibuya Open Innovation Lab(SOIL)※https://shibuya-soil.com/』を開業し、スタートアップを中心に渋谷のイノベーションエコシステムを強化していきます。」

    スタートアップとの連携でより多角的なまちづくりを

    北川「ちなみに、どのような背景で『TAP』が立ち上げられたのか、また、そこではどんなご実績があるのかを具体的に伺えますか?」

    加藤「TAPは、スタートアップと共にワクワク・ドキドキするまちづくりをしようという大きなコンセプトを基に立ち上げたプロジェクトです。東急グループが持っている事業部門だけですと、どうしても内部リソースに捉われた発想になってしまう部分があって…。より多角的に、いろんな視点と角度からまちづくりの仕組みを作っていきたいという意図から、スタートアップとの連携を検討し始めました。
    スタートアップといっても非常に幅広いサービスの企業様がいらっしゃいますが、TAPでの受賞者は東急グループでは作れないものを提供している企業が多いですね。たとえば、テクノロジーを活用して訪日外国人にどうやってアプローチして、動かしていくシステムや仕組みを持っている企業とか。」

    北川:「なるほど…。事業シナジーがあるかどうかを優先して提携しているということでしょうか。」

    加藤「そうですね、東急は純投資は行っていませんし、東急グループが持っている事業を補完できるサービスかどうかをしっかり理解するために、まずは事業提携をさせていただいています。PoCを繰り返しながら、互いにマッチして関係性を維持することになったら出資するという考え方です。」

    北川「TAPの実績を拝見すると積極的にスタートアップ企業と業務提携などを進めてらっしゃいますが、その中にMaaS関連のスタートアップ企業はいますか?」

    加藤「まだ提携はしていませんが、空の移動を安く利用できるライドシェアサービス企業やタクシーの相乗りサービスを提供している企業、その他には、電動スケーターなどの活用を推し進めている企業などとは現在協議を進めている最中です。」

    東急電鉄が考える二軸のMaaS

    北川「そのようなMaaS関連のスタートアップとの取り組みが実現するとすます人々の生活環境は快適になりそうですね。東急グループとMaaSの関係性を考えると、一見“不動産=動かない/固定された場所”というイメージがあるので直結しづらい印象があるかもしれませんが、私個人としては非常にシナジーがあると感じています。MaaSは個人個人の捉え方や考え方によって見え方が違ってくるため、カチッと定義することがなかなか難しかったりしますが、東急電鉄社はMaaSをどのように捉え、どの領域に興味をお持ちか、教えていただけますか? 」

    森田「それでは広義のMaaSと狭義のMaaSと、二つに分けて説明させていただきますね。そもそものMaaSは、フィンランドや北欧で少子高齢化が進み、人や車が少なくなったことから移動を効率化するために浸透した概念です。フィンランドの場合、通信インフラや無線技術を中心に開発しているノキアによって最先端技術が蓄積されていましたし、総スマート化に向けた政府の思惑とモビリティや人の最大活用という考えがうまくマッチした事例だと言えるでしょう。

    一方で、東急グループは乗り物単体ではなく、まちづくりの会社です。ですので、不動産やリゾート、乗り物など、いくつもグループ企業があるうち鉄道・バスの売り上げは15%ぐらい。つまり、乗り物はまちづくりの一部にしか過ぎず、その街に心地よく住んでいただくために、住みやすい街へと整えることの方が私たちにとって重要なわけです。となると、セキュリティや電力・ガス、ケーブルテレビや学校などが必要不可欠になりますが、それらすべてのコンポーネントを持っていることが東急グループの強みでもあります。そして、その強みを一番活かすことができるのが、沿線におけるMaaSです。

    沿線におけるMaaSの最終目的地は、車が運転できなくなっても、年をいくつ重ねても、安心してこの街に住み続けていられるという世界観を作ること。それを実現するには、モビリティとあらゆる生活サービスをコネクトして、快適な環境を作っていかなくてはなりません。そういう意味で、今まで東急グループが培ってきた資産と私たちが考えるMaaSがうまくフィットしていると思っています。これが広義のMaaSです。

    そして、もうひとつが観光型MaaS。英語で言うとRural MaaS(ルーラル・マース)と言いますが、今年度から、国内外の観光客や駅、空港から二次交通(バス、タクシー、カーシェアリングなど)をスマホで検索・予約・決済し、目的地までシームレスに移動できるという観光型MaaSの実証実験を伊豆で開始しました。これはアジア圏では初の大規模な取り組みです。

    観光という言葉が付いてはいますが、みなさん観光っていうとオープンになってくれるからそうつけているだけで、実は根深い課題があるんです。観光地は人口低下が著しい過疎地が多いのですが、観光地といっても朝早くから夜遅くまで観光客がいるかといったらそういうわけでもない。

    要するに、その地域を支えるのはそこに暮らしている方たちなのです。都心部のように24時間移動手段が必要とまではいきませんが、少子高齢化で人口の減少が加速していても、その地域に住む方たちが問題なく生活できるように必要最低限のインフラを整えなくてはなりません。そこで、少ないドライバーや乗り物をうまく平準化させるために、二毛作ができないだろうかと考えたのです。

    観光型MaaSというと、そこの地域にたくさんの人をおくることだと思われがちですが、定着させるには、そこに住む方たちを巻き込んで、その方たちの移動や暮らしといった根本的な問題を解決していかなくてはなりません。沿線には沿線、その土地にはその土地の課題があるのでアプローチ方法はそれぞれ異なりますが、地域の課題を先端技術で解決して世直しするすべてのプロセス—− それが『IT世直し』であり、イコールMaaSだと思っています。」

    ハード面とソフト面、MaaSでどちらも強化する

    北川「AからBに行くときの手段を最適化するというのが一般的なMaaSですが、それがさらに進むと、『AからB に行くのであれば、Bにあるこの施設に行くともっと楽しいですよ』と案内したり、どこに行こうか迷っている人を特定の施設に誘導したり、ユーザーの行動を予測して変えて行くことが可能になります。そのような文脈ではスマートドライブのリソースを有効的に活用いただけるかもしれません。

    スマートドライブでは、エンジンをかけた瞬間にその人が今日どこに行くのかがある程度推定できますので、たとえばですが、移動の中で近くにある東急の施設へと促すことも可能です。」

    森田「互いにシナジーを生むことは可能だと思います。その際に、重要なことを二つお伝えさせてください。
    MaaSを浸透させるためにはオペレーションを整え、伝えていかなくてはなりませんが、地方ではバスやタクシーのドライバーの平均年齢が65歳だったりしますので、変えるということ自体が容易ではありません。

    現在、伊豆半島で東急グループの子会社含むタクシー会社3社でMaaSを進めていますが、タブレットやスマホが『これはなんだ?どうすればいいんだ?』というところからスタートしました。教習を綿密に行ったおかげで今はオペレーションがスムーズになりましたが、バスにしろタクシーにしろ、一気にモダナイズするのではなく、ステップをしっかり踏んで進めていかなくてはならないと実感しましたね。

    私たちが推進しているMaaSはパブリックトランスポーテーションの延長ですから、事故は絶対に起こしてはいけませんし、オペレーションがしっかり安定してこそ、枝葉として他のことができるようになるんです。この取り組みを長く続けていくためにも、オペレーションを確実に行うことが2019年のファーストプライオリティだと思っています。

    二つ目は、アルゴリズムを構築するにはある程度の母数が必要だということです。
    4月から伊豆エリアをシームレスに移動できる専用アプリ『Izuko(いずこ)』の提供を開始していますが、なるべく多くの方にダウンロードいただければ、そのぶんさまざまなデータが蓄積されるようになっています。

    アプリ内では、スマホの画面を見せるだけで乗車や割引が適用されるデジタルフリーパス(DFP)が購入できますが、これはオンデマンド交通を通常料金よりお得に利用できるだけでなく、水族館や美術館など一部の観光施設で割引を受けられるというチケットです。

    つまり、アプリを利用していただければいただくほど、観光という視点ではどのような動きが多く、どの場所でどのようなユーザーが獲得でき、どのようなニーズがあるのかというデータが蓄積されます。そうすれば効果検証がしやすくなりますし、利用者にとってより良いものへするための改善がしやすくなります。」

    北川「鉄道やバス、タクシー、不動産といったハードのビジネスから、今後は体験を提供するというようなソフトのサービスにシフトしていくイメージでしょうか?」

    森田「今の話の延長になってしまいますが、アルゴリズムが低くなるのが沿線です。普段から観光のようにあちらこちらへと大きな移動をする方はほぼいませんので、7〜8割は日常生活での利用になります。そうすると移動や場所の快適性といったハード面の方が重要になる。一方、観光型では観光開発の要素が強いため、こちらからプッシュしたり開発したりということが重要になる。

    どちらも多角的なアプローチができると思いますし、どちらかではなく、私たちにとっては両方とも重要です。東急グループでは2000年ぐらいから『ストックtoフロー』という言葉を掲げていて、所有する時代から、資産をいかに活用するかを重要視したサービスを展開するように進めています。これはまさしく今の時代にあった考え方かもしれませんね。」

    >>後編へ続く

  • ついに施行開始!働き方改革関連法で何が変わりどんな影響を受けるのか

    ついに施行開始!働き方改革関連法で何が変わりどんな影響を受けるのか

    少子高齢化が急加速で進行し、我が国の総人口は減少の一途をたどっていますが、それにも増して問題視されているのが、15~64歳までの生産年齢人口が右肩下がりの傾向にあることです。

    慢性的な労働力不足に伴い、長時間労働・サービス残業など労働環境悪化に歯止めがかからない中、2018年6月29日に参議院で可決・成立した、「働き方改革関連法」が平成最後の今年度4月1日、ついに施行が開始され、大きな注目が集まっています。この記事では、具体的な働き方改革関連法の内容、施行によって企業や労働者にどのような影響が起こるのかを解説します。

    2019年4月1日から順次施行される「働き方改革関連法」とは

    働き方改革関連法とは、減少する生産年齢人口を鑑み、これまで労働力として活躍の場が少なかった女性や高齢者の方々の就労促進や正規・非正規社員との格差是正、さらに長時間労働の解消などの実現を目指し、下記8つの国内労働法を改正するために成立した法律です。

    1. 労働基準法
    2. 労働安全衛生法
    3. 労働時間等設定改善法
    4. じん肺法
    5. 雇用対策法
    6. 労働契約法
    7. パートタイム労働法
    8. 労働者派遣法

    2015年の通常国会において法案はすでに提出されており、翌年9月には安倍首相を議長とする「働き方改革実現会議」が発足します。衆議院の解散に伴い一度廃案となりましたが、一部修正のうえ衆・参両院を通過し、今回の施行にこぎつけたという経緯があります。廃案になった要因は、初案に盛り込まれていた時間外労働割増賃金の削減や、高度プロフェッショナル制度が、「サービス残業や過労死を助長しかねない」と、野党のみならず与党からも噴出したためです。

    知っておくべき具体的な改正内容について

    経緯はともかく、成立・順次施行されたからには、経営者や人事担当責任者だけでなく働く誰もが働き方改革関連法によって改正される具体的な内容を理解し、対応していかなくてはなりません。

    この項では、働き方改革関連法の基本的な考え方である「3つの柱」を解説し、厚生労働諸王が発表した改正内容・施行時期が一見してわかるよう、下記に一覧を提示します。すでに施行開始しているものについては日にちが赤くなっています。

    第1の柱 「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」

    まずは、働き方改革の基本思想を法的に明確にするため、雇用対策法に職業生活の充実、労働生産性の向上などを促進することが目的規定に加えられ、名称も「労働施策総合推進法」へと改められました。また、国は労働条件の改善や同一労働同一賃金の推進などの施策を講じること、事業主はそれを実現するための環境整備に努めるのが責務であるとする、「基本方針」も盛り込まれています。

    第2の柱 「長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現等」

    働き方改革の基本中の基本となる第1の柱に続いて打ち出されたのは、より実務的な影響を及ぼす「労働基準法・労働安全衛生法・労働時間等設定改善法・じん肺法」の改正という第2の柱。ここでは以下の点がポイントになります。

    • 時間外労働の上限規制の導入・・・年720時間・単月100時間未満・複数月平均80時間を、時間外労働の上限とする。
    • 年次有給休暇の取得義務化・・・事業者に、年5日の有休取得を義務化する。
    • フレックスタイム制の見直し・・・現状1ヵ月のフレックスタイムの清算期間を、3ヵ月に延長。
    • 高度プロフェッショナル制度の創設・・・高度な専門知識を有し、一定水準以上の年収を得ている専門職を、労働時間規制の対象から除外する。(年間104日の休日を確実に取得などが要件)
    • 勤務間インターバル制度導入の努力義務化・・・終業から次の始業までの間に、一定時間の休息を確保する。
    • 産業医・産業保健機能の強化・・・事業者による産業保健業務を適切に行うため、必要な情報を産業医に提供したうえで、産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容を、衛生委員会等に報告する。

    第3の柱 「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」

    派遣社員・アルバイト・パートと正規雇用者との待遇差を無くすため、「労働契約法・パートタイム労働法・労働者派遣法」で以下の点が改正されました。

    • 不合理な待遇差を解消するための規定・・・正規雇用者と非正規雇用者の労働内容が同じであれば、均等な待遇を確保する。(同一労働同一賃金)
    • 派遣労働者を保護する規定・・・派遣先との均等・均衡待遇方式か、一定の要件を満たす労使協定方式どちらかの待遇を確保する。
    • 待遇に関する説明義務の強化・・・非正規雇用者から求められたら、正規雇用者との待遇差の内容・理由を説明しなければならない。
    • 履行確保措置と裁判外紛争解決手続の整備・・・前述の改正内容が速やかにかつ確実に遂行されるよう、行政による整備が行われる。

    「働き方改革関連法」を守らないとどうなる?

    今回の関連法による改正ポイントは、前項で解説したとおり多岐にわたるため、どこから対応を進めていくべきか頭を悩ませている経営者や人事・労務担当者も多くいらっしゃるかもしれません。将来的にはすべての改正内容をクリアし、労使一丸となって働き方改革の最たる目的、「一億総活躍社会」の実現にまい進すべきですが、優先順位を決めるにあたり「罰則がある改正ポイント」から、対応していくというのも1つの手です。

    今回の働き方改革関連法の施行に伴い、新たに罰則規定が設けられた改正ポイントは、以下の5つです。なお、文中で述べる「中小企業」とは、以下で示す条件に当てはまる企業であり、それを超える企業は「大企業」に該当します。こちらもご参考ください。

    ①時間外労働の上限規制

    労働環境の改善が働き方改革関連法の屋台骨ですから、時間外労働の上限規制に違反した場合に罰則規定があるのは当然と言えば当然、前述した上限を超過する労働を強いた事業者には、「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。なお大企業は、働き方関連法の施行開始と同時に罰則が適用されますが、中小企業には1年間の猶予期間が儲けられています。

    ②会社による強制的な有給休暇の時季指定

    働き方改革関連法の施行により、事業者は労働者に最低でも年5日の有給休暇を取得させることが義務化されたのですが、もう1つ労働者が自己意思で消化した日数が5日未満の場合、5日間に達するまで会社は強制的に時季を決め、消化させることも規定されました。

    規定に反し、5日の有休を消化させなかった場合は「30万円以下の罰金」が科せられ、こちらについては会社の規模に関わらず、2019年4月1日から適用となります。

    ③清算期間1カ月超のフレックス制を定める際の労使協定提出義務

    フレックスタイム制とは、会社ではなく労働者が自身の始業時刻と終業時刻を決める制度です。その清算期間は1年間でフレックス制を適用できる期間のことを指し、今回の改正によって1カ月から3カ月に延長されました。

    それに伴い、1カ月を超える清算期間を労使間で定める場合、これまで必要ではなかった労使協定の労働監督署への提出が義務化されました。(1カ月を超えない場合は不要)提出を怠った場合、会社規模に関わらず「30万円以下の罰金」が科せられ、こちらも法改正と同時に対象となります。

    ④高度プロフェッショナル制度適用者の医師の面接・指導義務

    新たに創設された高度プロフェッショナル制度によって、労働時間が一定時間を超える適用者に対し、会社が適時医師面接・健康指導を受けさせることを義務化しました。制度適用者の健康管理が、おろそかになることを防止するための措置であり、義務を怠った場合は「50万円以下の罰金」が科せられ、こちらも企業規模に関わらず法改正と同時の施行となります。

    ⑤月60時間を超える時間外労働への50%割増率違反

    既に大企業には適用されていたこちらですが、長引く不況を鑑み中小企業は猶予措置(50%→25%)が取られていたものの、今回の法施行に伴い2023年4月1日をもって猶予が撤廃されることになりました。猶予撤廃後はたとえ零細企業であっても、50%の割増率を下回った場合は賃金の未払いとみなされ、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられることになります。

    この働き方改革関連法によって影響がある業界

    働き改革関連法の施行に伴う改正ポイントは、労務にかかわるあらゆるジャンルに及んでいるため、影響が出る業界を探すより影響が出ない業界を見つける方が大変です。強く影響が及ぶと考えられるのは、ヒトを対象に業務を行う「介護・福祉・医療・教育業」や、季節や気候によって労働時間・密度が目まぐるしく変化する「農林水産業」「運送業」になってくるでしょう。

    また、制度適用の対象となる「金融証券アナリスト・研究開発員」などを抱える業種や、コンサルティング業を営んでいる方にとっては、高度プロフェッショナル制度を導入するか否かの決断を迫られることにもなるでしょう。

    やはりトラック運送業者への影響が顕著か

    元々労働力が豊富で資金的にも潤沢な大企業であれば、順次対応していくことも可能ですが、人手不足が続く中小企業の場合、なかなかそうもいきません。そのため、従業員数が10人に満たない小規模事業者が半数を占める物流業界、働き方改革を勧めづらい、トラック運送業者へに与えるインパクトは計り知れないものがあります。なぜなら働き方改革関連法の肝であり、改善を目指し罰則まで設けている長時間労働や、労働環境の是正は、物流業界が解決すべき課題そのものだからです。

    厚生労働省の調査によると、2016年度におけるトラックドライバーの年間労働時間は、大型トラック運転者で2,604時間、中小型トラック運転者で2,484時間となっており、全産業平均と比較すると前者は約40時間/月、後者は約30時間/月も長い水準になっています。にもかかわらず、トラックドライバーの年間所得額は、全産業平均と比較して大型トラック運転者で約1割、中小型トラック運転者で約2割低い水準であるとなれば、慢性的な労働不足に陥るのもやむを得ないことなのかもしれません。

    さらに就業者の高齢化が顕著であるうえ、全産業では女性が4割以上も参入しているのに対し、トラックドライバーのうち女性が占める割合は約2,5%と極めて低くなっています。今こそ働き方改革法へ対応する体制構築は重要かつ急務だと言えるでしょう。

    改正法の罰則より行政処分の方が恐ろしい?

    働き方改革関連法での罰則規定は、すべて労働法の範疇にあるため「経営が傾くほど重い」といえるものではなく、一番のネックとなり得る時間外労働時間の上限規制も、運送業者に対しては4年間の猶予期間が設けられています。問題はトラック運送事業者などの過労運転防止や、長時間労働是正を図るべく並行して進んだ行政処分基準引上げの方でしょう。

    拘束時間 ・1日原則13時間以内かつ最大16時間以内(15時間超は週2回以内)

    ・月293時間以内※荷待ち・荷役作業時間も拘束時間に含む

    休息期間 ・継続8時間以上
    運転時間 ・2日平均で日9時間以内

    ・2週平均で週44時間以内

    連続運転時間 ・4時間以内(30分以上の休憩確保)

    従来は、上表で示した「労働時間のルール」を遵守されていなくとも、5件以内であれば警告で済んでいました。しかし、2018年7月からは1件違反しただけでも、即10日/車の使用停止処分が下されることになっています。違反件数が増えれば20日、30日と停止処分期間は延長されますから、万が一業者ぐるみで複数の違反を犯してしまった場合、企業として死活問題に発展するのは必至です。

    働き方改革関連法への対応はともかく、この労働時間のルールについてはすぐさま自社の業務体制を見直し、改善策を講じる必要があるでしょう。

    見えない労働時間を”可視化”するには

    企業が本格的に働き方改革に着手する前に重要なのが、現状をしっかり把握することです。従業員一人ひとりの就業時間は適正ですか?休憩時間は正しく取得できていますか?運送業であれば荷待ち時間がしっかり記録されていますか? とくに事業所外で仕事に従事しているドライバーや営業車両は勤務状態の把握がなかなか難しいことですが、把握しないまま万が一違反が見つかってしまうと罰則や行政処分の対象になってしまいます。

    ですので、ただ改正された内容を反映するだけでなく、現状の課題を洗い出しどこを、何を改善すべきかを理解するところからスタートしましょう。車両のシガーソケットに差し込むだけで利用開始、2,480円〜という価格で手軽に導入できるのが、株式会社スマートドライブが提供している「SmartDrive Fleet」です。  トライアルもあるので、気軽に試していただくことができます。

     

    「SmartDrive Fleet」は働き方改革に取り組む企業様の強い味方です。

    ・勤務時間も休憩時間も荷待ち時間も見える化!

    走行履歴を記録することでドライバーの総業務量を可視化します。長時間労働や私的利用もわかるようになるため、訪問件数や運行ルートの改善、的確な注意を促すことが可能に。

    ・事務的な作業時間をサクッと短縮!

    走行ルートや日報は自動で作成されますので、社員の日報や勤怠に活用することも可能です。今まで手書きで作成していた日報の時間を短縮できるので、ドライバーの負担を軽くします。

    ・GPS機能搭載。リアルタイムで指示出し可能!

    働き方改革で長時間労働の是正が決定しています。そのため、無駄な箇所を把握し、より効率的な配送ルートが必須となりますが、天候や道路状況などにも大きく左右されるため、「多分大丈夫だろう」では解決しづらいものです。リアルタイムでの位置情報がわかれば、ドライバーと連携しながらよりスムーズに業務が行えるはずです。

    ・事故リスクもコストもカット!

    安全運転診断機能が搭載されているため、危険運転を自動検知し、走行毎に管理者へ通知します。事故防止を目指した運転教育に役立てることもできますし、安全運転教育が行き渡ることで車両の燃費も向上。事故のリスクも無駄なコストも減らすことができるのです。すべての従業員の安全を守るのも企業のつとめです。

     

    導入した企業の具体的な活用事例を記した資料も請求できますので、こちらから是非お気軽にお問い合わせください。働き方改革は働き方を根本的に見直し、改善し、生産性向上を目指す施策です。ぜひ、こうしたツールをうまく活用し、自社の働き方改革を前向きな方向へと導いてください。

  • 【解説/テンプレ付】自動車事業に欠かせない日常点検表

    【解説/テンプレ付】自動車事業に欠かせない日常点検表

    お客様の荷物を運ぶ運送トラック、乗客を目的地まで安全に輸送するバス・タクシー…いずれの運輸事業者も、安全は何よりも優先しなければならないものです。そのためにも、毎日のスムーズな運行と事故防止のために欠かせないのが車両の日常点検です。この記事では、日常点検の重要性と車両ごとの違う日常点検のフォームや使い方について詳しく解説します。

    2002年6月、横浜市で発生した大型トラックから脱落したタイヤが、親子3人に直撃して死傷、三菱ふそうの7人が逮捕されるという事件が発生しました。これは、点検の不備ではなく、ハブの構造的欠陥によることが原因の事故でしたが、その事実を隠していたことが一番の問題となりました。大型車のタイヤが万が一外れてしまったら、非常に危険な事故につながります。ついつい気を緩めて日常点検を怠り、ホイールナットの緩みに気付かずに運行してしまったら…タイヤの脱落を招いた場合には、取り返しのつかないことになりかねません。

    トラックやバス、タクシーなどは乗客の大切な荷物や命を預かって移動するため、こうした事件に遭遇すると社会的な影響が計り知れないものとなります。改めて日常点検の重要性を再認識し、違和感に早めに気付くことで思わぬ重大事故を回避してください。

    旅客車貨物車共通の日常点検とは

    日常点検整備は道路運送車両法第47条の2において、「自動車の使用車は、自動車の走行距離運行時の状態等から判断した適切な時期に、国土交通省令で定める技術上の基準により、灯火装置の点灯、制動装置の作動その他の日常的に点検すべき事項について、目視等により自動車を点検しなければならない」と定められています。つまり、1日1回、その日の運行開始前に必ず点検しなければなりません。そして、点検表等の記録は自動車の登録番号ごと1台1台保管し、1年間の保管が義務付けられています。点検表の様式は、登録番号毎にまとまってあれば、1日1枚でも1か月通して1枚でも構わず、様式やフォームも特に決まったものはありません。

    日常点検を実施しないと…

    「昨日、何も問題なく走行できたから今日は点検しなくても大丈夫だろう」と、そのまま運行してしまうのは非常に危険です。道路運送車両法第47条の2に定められていますが、日常点検整備が未実施の場合は法令違反となり、行政処分を受けることになります。

    適用条項 違反行為 初違反 再違反
    車両法第47条の2 未実施回数6回未満 警告 3日車×違反車両数
    未実施回数6回以上15回未満 3日車×違反車両数 6日車×違反車両数
    未実施回数15回以上 5日車×違反車両数 10日車×違反車両数

    違反の「日車」は、その日数分の営業停止(車両停止処分)を意味します。たとえば未実施回数8回で未実施対象台数が3台の場合で初違反の場合、3日車×3で9日車になります。この期間内は、運輸局職員によってナンバープレートが外されますので絶対に使用することができません。そうなると使用できないことによる収益減、運行できなかったことによる信用の損失につながり、その日運行できなかった損失以上の損失が待っています。

    運輸事業に使用する自動車の定期点検サイクル

    トラックやバス、タクシーなどの事業用自動車の点検サイクルは、一般の自家用車より短く、車検も初度登録から1年毎に実施します。通常の自家用乗用車は初度登録から3年後に初回車検、以降は2年毎の車検です。また、事業用自動車は公共性が高く、社会的影響も大きいことから、3カ月ごとの定期点検が義務付けられています。

    定期点検が未実施の場合に受ける処分

    日常点検同様、定期点検が未実施の場合も行政処分の対象となります。道路運送車両法第48条に「点検の時期及び自動車の種別、用途等に応じ国土交通省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない」定められており、定期点検の未実施は法令違反になります。

    適用条項 違反行為 初違反 再違反
    車両法第48条 未実施回数1回 警告 5日車×違反車両数
    未実施回数2回 5日車×違反車両数 10日車×違反車両数
    未実施回数3回以上 10日車×違反車両数 20日車×違反車両数

    もし、すべての車両で定期点検整備が未実施だった場合、局長通達5の事業停止処分関係の(1)により、事前に本省自動車局安全政策課及び貨物課に連絡のうえ、事業停止処分になる可能性が高くなります。

    違反にあたる点検未実施が3回以上で10台、初違反の場合は、10日車×10台で100日車の車両停止処分です。自動車の大きさにより点検費用は異なりますが、点検費用が1回2万円であれば、3回分で6万円、10台分なら60万円の点検費用がかかります。60万円分の点検費用がもったいないと判断して点検を受けず、結果として違反が100日車の車両停止処分を受けることになれば、10日間10台の自動車が使えない分の営業損失と、顧客からの信用損失で今後の会社の存続に多大な影響を与えます。点検しなかった代償は、相当大きなものになるのです。なお、定期点検の記録は、1年間保存しなければなりません。

    日常点検のチェック項目と点検時のポイント

    トラック バス タクシー
    エンジンルーム

     

    キャビンを倒す リヤのエンジンルームを開ける ボンネットを開ける
    エンジンオイル エンジンオイルの量、汚れの確認 タクシーのLPG車は汚れが見えないので注意(LPGはオイルが汚れないため量を守り定期交換を守る)
    ベルト類 張り具合、損傷が無いか確認(ファン、エアコン、パワステ等)
    冷却水 冷却水の量が適当であること
    エンジン始動 エンジンのかかり具合、ふけ上がり具合、異音が無いか確認(バスはメインスイッチを引いてから始動すること)

    エンジンルームをのぞき込み、各種オイルの漏れの確認

    ブレーキ ペダルの踏み代が適当で効き具合か十分であること

    ブレーキ液量が適当であること(バス、トラックのオイルブレーキ車を除く)

    エアブレーキ車 空気圧力の上がり具合が正常であること

    ペダルを戻した時の排気音が正常であること

    なし
    駐車ブレーキ 効き具合、引き代(ノッチ式)が適当であること
    灯火類 ヘッドライト(Lo,Hi)、フォグランプ、ウインカー、尾灯、ストップランプ、車幅灯、後退灯 点灯具合、点滅具合の確認
    サイドマーカー等 路肩灯、方向幕等 行燈等
    計器類 燃料、油圧、水温、回転計、速度計、運行前後の積算距離計の確認、不要な警告灯が点灯していないかどうかも確認
    ワイパー ブレード、ゴムの状態、掃け具合、ウインドウウォッシャー液量と噴射状態
    タイヤの状態 空気圧が適当であるか、摩耗、異物、損傷はないかの確認
    ホイールナットの緩み、ディスクホイールの取付状態確認
    スペアタイヤ 空気圧、取付状態の確認(トラック、バス)
    エアタンク ぎょう水の確認(凍結の可能性あるため冬季禁止) なし
    その他 パワーゲートやウイング、その他装備類の作動確認など 室内灯、氏名札灯、ワンマン機器、運賃表、車内ミラーの照射状態、整理券、カードリーダーの状態、後車ボタン、ドアの作動確認、車いす用スロープの確認など 料金メーター、ドアレバー、自動ドアの作動確認など

    ・ホイールナットの緩み

    トラック、バスのホイールナットの緩み確認や空気圧を確認するには、点検ハンマーを使用します。ホイールナットの下に片手の指を添えて、ナットの締まる方向に点検ハンマーで叩いて緩んでいないかを確認しましょう。緩んでいると鈍い音と共にナットの振動が指に伝わりますのですぐに気づくはず。

    ただし、JIS規格とISO規格で違いがあるため、締まる方向には注意をしてください。ネジは右に回して締まるのが通常ですが、トラック、バスのJIS規格の場合には、右タイヤは締まる方向は右ですが、左タイヤは進行方向の左に締まる逆ネジです。近年(2010年以降目安)では、ISO規格が主流となり、どちらのタイヤも締まる方向は右になっています。

    ・空気圧

    空気圧の確認は音で行いましょう。タイヤのトレッド面(路面接地面)を強めに叩くと「ポンポン」と音がしますが、空気圧が低い、パンクしている場合は、「ボフッ」と鈍い音がします。タイヤのサイド部分を叩く方もみかけますがこれは危険です。タイヤサイド部分はもっとも弱い部分ですので叩かないようにしましょう。

    新入社員への研修の際には、点検ハンマーで正常空気圧のタイヤをポンポン叩くのみではなく、故意にタイヤ空気圧を低くして、空気圧正常時の音と、空気圧低下時の音を聴き比べて、実際の点検時に違和感に気付けるようにしてあげてください。タクシーの場合には、エアゲージ等で指定空気圧であることを確認しましょう。

    今日から使える「日常点検表」テンプレート

    日常点検表はとくに決まったフォームがないため、点検項目が漏れていなければ各社オリジナルのものを利用して構いません。日常点検表に必ず記載しなければならない項目は、道路運送車両法47条の2にある通り以下7つです。

    自動車の走行距離
    ・灯火装置の点灯、点滅具合
    ・制動装置の作動
    ・点検した年月日
    ・運転者名(点検者名)
    ・自動車の登録番号
    ・自動車の車検有効期間(車検切れ運行を防ぐため記載が望ましい)
    ・整備管理者の㊞を押印する箇所

    ここからはいますぐ使える日常点検表のテンプレートをいくつかご紹介します。各トラック協会、バス協会等にてテンプレートが用意されていますので、これをベースに自社で使いやすいフォームにカスタマイズするなどしてご利用ください。

     

    貨物輸送 トラック用

    群馬県トラック協会 「点検関係 エクセルダウンロード 1日用
    長野県トラック協会 「各種帳票類 エクセルダウンロード 1か月用
    北海道トラック協会 「1日用&1カ月用

    旅客輸送 バス用

    広島県バス協会 「帳簿運行管理・整備管理関係 エクセルダウンロード 1カ月用

    SDMGオリジナル「日常点検表 エクセルシート

    旅客輸送 タクシー用

    NPO法人日本福祉タクシー協会 「帳票-6種類の中参照

    連携することでより安全な運行を

    点検を行い、車も万全な状態。しかし、ドライバーによる危険な運転が日常的に起きていると、せっかくの健康状態を損ねてしまうことに…。そうなると車の寿命も短くなるどころか、事故の発生率もぐっと高まります。

    そんな時、車とドライバーの安全を守ることができる強い味方が、スマートドライブの提供するSmartDrive Fleet です。

    SmartDrive Fleetは、どこで待ち時間が発生したのか、ドライバーは安全な運行ができていたのかなど、今までわからなかった情報がすべて”見える化”されるツールです。可視化された情報は安全運転指導や運行ルートの改善に役立てることができますので、ルートの最適化や業務量の見直しなど全体的な業務改善が行えるようになります。

    また、ドライバーとしては手間になる運転日報も自動で作成しますので、ドライバーは本来の業務に集中し、休み時間もしっかり取得することができます。安全運転診断からは苦手な運転箇所もわかるため、運行管理者は適切な指示出しを行えます。労務管理や運行管理をしっかりサポートする機能をたくさん備えていますが金額はデジタコやドラレコより格段と安く月額なんと2,480円〜。

    日常点検で日々の車の体調を、SmartDrive Fleetのようなデバイスでドライバーの状況を確認し、無事故無違反の運転を目指しましょう。

    SmartDrive Fleetの資料は、ぜひこちらから資料請求ください。

  • 介護現場で一番の負荷は送迎計画の作成だった…!?

    介護現場で一番の負荷は送迎計画の作成だった…!?

    3月28日に総務庁が発表した「将来人口特別推計(2017〜2067年)」では、11年後の2030年、国民4人中1人が65歳以上の高齢者になることがわかりました。2067年にはさらに高齢者が増加し、生産年齢人口を大きく上回る時代がやってきます。高齢化社会にある国内で、ここ数年、一気に需要拡大したのが介護関連のサービス。このまま高齢化が急速に進めば、2035年までに介護職員が295万人必要となりますが、2025年では34万人、2035年では68人もの不足人数が予想されています。業務過多、重労働で賃金も安いことから慢性的な人手不足が続いている介護業界。そこにはもっと根深い課題があるようです。

    需要拡大中の成長産業のはずが…介護業界のいま

    介護保険制度の施行後、要介護認定者数は増加し、介護サービス提供に伴い介護職員数も15年間でおよそ3.3倍に、さらに需要が高まっている都心部では有効求人倍率が5倍を超えました。これは、高齢化社会に伴い、介護事業が成長産業と見込まれたため右肩上がりに事業所が増えたためです。

    ところがその成長と相反して、2019年1月11日、東京商工リサーチが発表した「老人福祉・介護事業所(介護サービス事業)の倒産状況」の最新レポートでは、2018年1~12月の老人福祉・介護事業における全国の倒産数が106件と記されていました。

    7年ぶりに前年を下回ったものの、倒産件数は過去三番目に多い件数です。業種別では「訪問介護事業」が45件、次いで「デイサービス関連事業」が41件と続き、全体の8割を占めていました。2018年4月より介護報酬がプラス改定で0.54%引き上げられましたが、現時点ではまだ大きな効果は得られていないようです。

    新規参入企業が一気に増加したにも関わらず介護サービス事業の倒産が増えた背景には、計画性を欠く起業や本業不振のため異業種からの参入など、事前準備や事業計画が甘い事業者が想定していたような業績を上げられなかった結果ではないかと見られています。

    また、介護職員の人手不足がより一層深刻化し、離職を防ぐための人件費上昇が経営を圧迫している原因のひとつになっています。こうした状況を打破するために、政府は2019年10月に実施予定の消費税率引き上げに伴う施設・事業所の出費を補填することを目的に、介護報酬をさらに改定し、全体を0.39%引き上げると決定しました。さらに、人手不足に対応するため出入国管理法を改正し、外国人の新たな在留資格として介護も対象にするなど、次々と施策を推し進めています。

    2018年度の介護報酬改定時、政府が大きく掲げたテーマが「自立支援介護」。これは、要介護になった人をもう一度自立できる状態に引き戻すことを目的とした介護のことです。要介護者で老人ホームに入居している人は全体のわずか15%程度であるため、85%の要介護者は訪問介護や短期入所介護事業などのデイサービスを受けています。こうした政策の動きからも今後デイサービスがさらに重要性を増すことが想定できますが、まずは介護業界の人材不足解消を解決することが優先だといえるでしょう。

     

    業務の中で大きな負担になっている「送迎計画」の作成

    公益財団法人 介護労働安定センターの調査によると、2017年度の介護サービス事業所における人手不足感は(内訳:不足しているまたは大いに不足している)、施設介護職員が35.5%、訪問介護においては52.2%でした。各種介護事業においても人材定着や人材確保の解消に取り組んではいますが、複雑に絡んださまざまな要因によって、改善に至るまでにはまだまだ時間を要しそうです。

    そうしたことから、慢性的な人手不足であっても、在籍しているスタッフだけで業務を回さなくてはなりませんが、訪問介護の業務は多岐にわたるうえ、ヒトとヒトとが関わるコミュニケーションが大事とされるため大幅な効率化は難しいとされています。

    デイサービス介護の業務は、大きく分けて次の4つです。

    直接介護:レクリエーション、更衣手伝い、入浴手伝い、口腔ケア、トイレ誘導、体操、バイタル測定、食事介助、配薬など
    介護準備作業:室内掃除、食器の片付け、昼食準備、洗濯物のたたみ・干し、軽作業の準備、入浴後の掃除、入浴前の準備、帰宅時の荷物準備、昼寝の準備(布団敷き)、下膳、配膳など
    間接業務:記録、請求や収支の管理作業、PC入力、申し送り、ケアマネージャーへの報告書作成など
    送迎:送迎車乗降、送迎

    そして、これら4つの業務割合を示したのが上記の円グラフです。経済産業省の調査(2016年3月)によると、デイサービスの業務の中でも送迎に費やされる労力は大きく、1日の業務の実に約3割を占めているといいます。「間接業務や介護準備作業の方が時間を要するのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、送迎業務の中でも一番時間が割かれるのが送迎計画の作成なのです。

    送迎計画は、訪問すべきお宅の各住所や位置関係を頭に入れたうえで時間に余裕を持ちつつも、なるべく効率よく回ることを考慮しなくてはならないため、誰でも簡単に作成できるものではありません。つまり、特定の熟練したスタッフのみが対応するケースが多く、送迎計画作成のための知識が偏重しているのです。そして、多くの施設では、送迎計画を作成できるスタッフが一名程度、または特定のスタッフのみであるため、負担が集中しています。

    一日に巡回できる時間は限られていますが、要介護度が高い方の場合は業務も多く通常より時間を要したり、独りで暮らしている方の場合は時間的な余裕があったりするなど条件は種々様々であるため、決められた時間やフォーマットでの作成が困難です。巡回の効率性はもちろん、車椅子の必要性やスタッフの配置、施設の運営など、さまざまな条件を加味しながら最適なルートを考案しなくてはならず、属人化しやすく時間がかかりすぎてしまうのです。

    介護現場のヒアリングから生まれたスケジューリング機能

    送迎計画の作成時間が少しでも短縮できれば、業務の効率化が実現し、本来優先すべき介護業務に集中できるようになるのでは———そこでスマートドライブは、実際に介護現場の方からヒアリングを積み重ね、送迎計画の作成や管理を簡単にできる機能を実現しました。それが「Smart Drive Fleet」の送迎計画自動作成機能です。

    送迎希望時間や車椅子の有無、送迎車の指定など、各種条件をもとに、的確なルートをシステムが自動で作成します。そのルートを担当者が修正してすることで、送迎計画を作る時間が大幅に短縮できる最新の機能です。

    送迎時間とルートを地図上で表示し、目で見てしっかりと確認できるので、作成者は無理なく送迎ができるか判断しやすくなります。送迎計画機能を追加するにあたり、とくに注力したのは、IT系のツールに慣れていない方でも使いやすくわかりやすい操作性であること、そして送迎計画を誰でも簡単に確認できることでした。各スタッフや関係者はパソコンから最新の送迎計画表にアクセスでき、変更があった際はひと目で確認できたり、ミス・修正箇所をすぐに編集したりすることもできます。

    今まですべて人頼りで時間がかかっていた送迎計画を誰もが簡単に作成できるようになれば、業務の効率化が叶い、全体的な働き方改革へも繋げられるのではないでしょうか。無料トライアルでお試しいただくこともできますので、是非とも気軽にお問い合わせください。

    また、リアルタイム車両管理サービス「Smart Drive Fleet」とあわせてご利用いただくことで、送迎車両のリアルタイムな位置を把握したり、安全運転診断でドライバーの安全運転を促したり、運転日報を自動作成したりと、さらなる業務効率向上のサポートを行うことができます。介護業界を前進させるためにも、丁寧かつスピード感をもって今後も機能追加やサービスを展開していく予定です。

  • 【対談】膨大なデータが世界を変える、デジタル時代のIoTとその未来 後編

    【対談】膨大なデータが世界を変える、デジタル時代のIoTとその未来 後編

    私たちが生活している空間には、ありとあらゆるデータが溢れています。テクノロジーが以前にも増して勢いよく進化し続けている今、ただの数字としてデータを貯める時代は終わり、高度な解析を経てプロセスやオペレーションの効率化、そして売り上げ向上へと導くために活用されています。

    企業が扱う大量のデータを、リアルタイムで収集・統合するデータマネジメントソリューションを提供しているトレジャーデータ株式会社は、デジタルビジネスの時代で最先端を走る企業です。2018年8月より英Arm社の一員となり、デバイスからデータまでを一貫して管理できるIoTプラットフォームを実現しようとしています。

    今回の対談では、トレジャーデータ株式会社でマーケティングディレクターをされている堀内 健后(ほりうちけんご)さんをゲストに迎え、IoT時代の新たな自動車サービスを展開するスマートドライブとIoTプラットフォームができることやデータの先で描く未来像について語ります。

    >>前編はこちら

    掛け合わせがソリューションを生み出す

    北川:「ペリオンIoTプラットフォームはどのような方向に広げていこうとお考えですか?」

    堀内:「大前提として、私たちが解決しなくてはならないのは顧客の課題です。マーケットが大きくなれば売り上げも伸びますから。広げていくためには、他社と競合するのではなく、手を組んで顧客の課題を解決する方法を模索すべきだと考えています。」

    北川:「これまではデジタルマーケティング領域のDSPソリューションと連携されていましたが、今はIoTにシフトされていたりするのでしょうか。」

    堀内:「もともとどちらもやっていたのですが、デジタルマーケティングの方が速度は速いので一気に成長した感じです。さらに、Armになったことで、デジタルマーケティングを減速させることなくIoTを加速することができるようになりました。

    デジタルマーケティングはサービスがわかりやすいこともあって、デジタルマーケティングツール関連の企業に割とスムーズに受け入れてもらうことができましたが、IoTはその時間軸が異なるだけで、対象となるものの複雑性は変わっていません。」

    北川:「そもそも、日本ではまだまだIoT特化型のサービスって多くないですよね。」

    堀内:「そういう点でも、スタートアップ巡りは欠かせません。たとえば、AIを活用して水処理を行うWOTA(ウォータ)という企業があるんですね。家でも工場でも、水の処理って必要じゃないですか。私たちからすると彼らはアプリケーションであり、組み合わせるとソリューションになります。また、彼らはユーザーでもあるし、パートナーでもあるけど、ある意味、お客さんからするとソリューションにもなる。そういう意味では親和性が高いと思っています。

    スタートアップ企業とともに、IoTを組み合わせたデジタルマーケティングスタックとして組んでソリューション化することで、誰にでも使えるサービス提供を目指しています。そのほうがクラウドAPIエコノミー時代にはあっているはず。デジタルマーケティングでは約300社と一緒にエコシステムを作っていますが、IoT版も同じように作っていきたいと考えています。そうすれば、テーマごとにここと組んだらこうなるね、って新たなシナジーが生まれるかもしれない。

    CSVは所詮、データの記録に過ぎないので、データは分析可能なデータベースに入れ込むことが重要です。私たちは一貫したプラットフォームを提供していて、ログに特化した大量のデータベースをクラウド上でスムーズにストレスなく分析できる点が最大のメリット。どう分析するか、また、分析した結果をどう活用するかはお客様企業次第です。お客様が望むのであれば、私たちとスマートドライブが組んでアルゴリズムを提供するということもできるでしょう。」

    ストーリーとパートナーの重要性

    北川:「御社との関係を料理にたとえると、素材を洗ったり、切ったり調理がしやすいように準備をしてくれるのがトレジャーデータで、実際に調理をするのがスマートドライブです。もっと上等なフレンチやイタリアンにする場合は、専属の料理人がさらに味付けするというイメージですよね。」

    堀内:「〇〇シェフのフレンチ料理、みたいなね。」

    北川:「そこを理解されないと、初めの工程が『取りあえず、AWSに入れておけば調理しやすく準備されるんだろう』と思われてしまう。」

    堀内:「そうですね、お互いのユーザーはそれぞれの持ち味ーどこに強みがあり、何に特化しているかーがわかっていると思うんですけど、何も知らないユーザーにわかりやすく伝えるのはそう簡単なことではありません。」

    北川:「難しいけどすごく大事なことですよね。お客さんの目には出来上がった料理しか映らないので、各々の工程でどんな処理が行われているのかまでは伝わりません。」

    堀内:「そうですね、理解していなくても『美味しい!』って言って食べてくれればこちらとしてはありがたいんですが(笑)、そういうわけにはいきませんからね。仕組みだけ説明しても何に使うのか、何が解決できるのかを100%理解してもらうことはできませんので、ストーリーテリングがすごく重要になってきます。スマートドライブであれば、『この仕組みによって事故を減らすことができます』と言いきることができますよね。」

    北川:「はい、その点では弊社は少しわかりやすいかもしれません。ただ御社の場合、トレジャーデータに素材を渡せば、美味しく調理されて出てくる雰囲気というかブランドを感じます。そういった御社ならではの技術力とブランド力を支える、しっかりお客さんに伝えて活用してもらうためのサポートなども力を入れていますか?」

    堀内:「デジタルマーケティングではコンサルティングチームを作って、導入したけど使いこなせないという人たちをサポートする体制を整えています。今まではマンパワーが足りなくてそこまで手が回せなかったのですが、お客様も増え、ここまで成長してきたこともあり、自社でノウハウをしっかり貯めて、提供していかなくてはならないなと。4人しかいなかったスタッフが今、国内では120人いますし、ケイパビリティも上がっています。その取り組みが自然と伝わっているかもしれませんね。ただ、IoT側はまだこれから。ストーリーとパートナーで頑張って積み上げていきたいと思っています。」

    北川:「前段の世界観(前編のリンク)を実現していくにあたって、トレジャーデータは今後どういう領域まで広げていくのでしょうか。」

    堀内:「データのインフラを広げていくこと自体は今もこれからも変わりません。デジタルマーケティングもIoTもという意味で、データのレイヤーを構築し続けるつもりです。コネクティビティやインターフェイスの部分は業種向けに少しずつ作っていかければ対応できませんので着手すべきところですね。」

    北川:「スマートドライブでは、アルゴリズムをバーティカルで増やしていきたいと思っています。」

    堀内:「アルゴリズム、脳みその部分を増やしていくということですよね。それは今後パートナーシップを組んで行きたいという我々の、スマートドライブへの期待値でもあります。一方、個人情報の流出事故が多発していることによって、人も企業もセンシティブになっているので、個人情報の扱い方をしっかり考えていかなくてはなりません。デジタルマーケティングでは昨年ヨーロッパで義務化されたGDPRが記憶に新しいところですが、IoTもセキュリティ面の強化が必須です。法律的な部分もテクノロジーの部分も含め、セキュリティ強化の対応は相手に安心感を与えることでもありますし、実現可能性のスピードアップにもつながるので、率先してやっていかなくてはならないことです。」

    北川:「そうですね、そのあたりはスマートドライブでも非常に慎重に対応していきたいと思います。」

    堀内:「気にしすぎてしまうと新しいことを生み出せなくなるので、その辺りはトレジャーデータがサポートしていければと。ヨーロッパだと、クッキーまで個人情報扱いですからね。あと、忘れられる権利(※)。オプトアウトしたらすべての情報が『消えました』というログを出せるようにしなくてはならないとか。

    お客様がやるべきは企業特有のことのみであって、それ以外のコモディティ化されたもの、つまり、データをためて分析したり、セキュアに保ったりという部分はトレジャーデータが力を入れてやっていくべきだと思っています。それはプラットフォームを提供する企業としてのミッションでもあります。
    ※インターネット上のプライバシーのあり方について、2006年以降に施行された権利。

    北川:「もちろん、セキュリティに関しては私たちも強化していくつもりです。スマートドライブは、そういった根本的な信頼のもとに、今まで培ってきた車両管理や保険関連の実績を横展開していきながら、車以外のソリューションを作れるように広げていければと考えています。本日はありがとうございました!」

  • 第二転換期に突入した保険業界がぶつかる壁、そして目指すべき場所とは。

    第二転換期に突入した保険業界がぶつかる壁、そして目指すべき場所とは。

    自動車の機能性・安全性は日々向上し、運転支援技術が満載の新型モデルも数多く登場、モータリゼーションの進行と多様化は年々加速度を増しています。そして、テクノロジー発展の波は自動車保険業界にも押し寄せており、その最たるものが「テレマティクス保険」です。

    今回は、次世代型自動車保険として注目度が上がっているテレマティクス保険の話に触れつつ、現時点における保険業界の動向や課題について解説します。

    なお、テレマティクス保険には大きく走行距離連動型(PAYD)と、運転行動連動型(PHYD)の2種類がありますが、今記事ではより先進的である後者について触れる内容になっています。

    もはや世界基準のテレマティクス保険

    テレマティクスとは、「テレコミュニケーション(通信)」+「インフォマティクス(情報工学)」の造語であり、自動車などの移動体に通信システムを搭載することで、さまざまな情報を送受信できるサービス、また、それによって何らかのサービスを提供することの総称です。

    現時点では、カーナビを通じて渋滞情報や天気予報などを提供するという、一方通行的な利用方法が中心ですが、1994年に設立された「VERTIS(現・ITS Japan)」によって、高速道路並びに一般道における安全運転支援システム、公共車両優先システム、交通需要マネジメントなどのシステム構築や、交通インフラの最適化に寄与すると期待されており、一部ではすでに導入・運用がスタートしています。また、自動車がまるでスマートフォンのように、常時通信端末としてインターネット接続するコネクテッドカーも、テレマティクスの1つの形です。

    そして、車両に取り付けた通信デバイスによって、走行距離やドライバーの運転特性データなどを収集・分析し、結果に応じて決定された「個別リスク」から保険料を算出するのが、世界で市場が拡大しつつある「テレマティクス保険」です。テレマティクス保険の先進国は、アメリカやイギリスなどの欧米諸国で、2016年時点でアメリカでは約500万人が、イギリスでは約50万人がすでに加入しています。テレマティクス保険の有益性や公平性は大きく評価され、加入者は年々増加しています。

    実感はないけど・・テレマティクス保険は日本でも普及されている?

    通常の自動車保険では、次の要素によってあらかじめ保険料の大半が決定し、その後「保険等級」による割引が適用されることになっています。

    • 補償金額・内容
    • ドライバーの年
    • 年間走行距離
    • ゴールド免許の有無
    • 車両の用途

    そのため、極端な話をすれば同じ加入条件・保険等級の場合、普段から急ブレーキや急加速などの操作をせず安全運転を心がけていても、周囲への配慮が足りない乱暴で危険な運転をしても、事故さえ起こさなければ保険料の変動はありません。

    一方、テレマティクス保険は、一定期間における走行データを解析した結果「事故リスクが高い」と判断されれば保険料が上がり、反対に「事故リスクが低い」と評価されれば、保険料が安くなるシステムになっているため、従来の保険の不公平さを緩和するというのが最大のメリットです。非常に合理的なシステムなので、メリットが明確でわかりやすく、受け入れてもらいやすいのかもしれません。また、テレマティクス保険の導入によって加入者の安全運転意識が高まり、結果として重大事故が減少傾向を見せれば、保険会社としても支払保険料削減による、利益率向上を目指すこともできるのです。

    特に、複数車両保有する企業からすれば、車両運用コストにおいて大きなウェイトを占める保険料を削減できるうえ、リアルタイムでの動態管理まで可能なテレマティクス保険は、非常に有益性の高いものになってきます。そして、何より入り口は経済的要因だとしても、テレマティクス保険が普及・浸透していけば、乱暴な運転を起因とする事故の抑止力になり得る、社会的なプラス要素も大いに期待されています。

    テレマティクス普及の壁

    テレマティクス保険では、搭載した通信モバイルから発信される加入車の位置情報を、保険会社がリアルタイムで共有することができます。これは、利用者の視点でいうと、否応なく今・どこにいるのかという情報が筒抜けになってしまうということです。

    そのため、今後さらなる普及を見込む場合、一部では「不特定多数に現在位置を知られたくない」と考えるユーザーもいます。テレマティクス保険は利用者と保険業、どちらにとっても魅力的なサービスですが、国土交通省でも「個人情報保護制度の見直し、個別の取扱い方針等を検討すべきである」と述べています。個人情報漏洩のニュースで消費者も個人情報取扱に関しては非常にセンシティブになっているため、効果やメリット、安全性やセキュアな面についてしっかりと訴えることができなければ普及の拡大は難しいかもしれません。

    保険業界の現況と将来を見据えた課題

    導入によるメリットの大きいテレマティクス保険ですが、欧米諸国と比較すると日本国内での普及スピードは遅いと言わざるを得ません。これは、国内保険業界の閉鎖的な体質が大きく影響していることが考えられます。

    保険企業界では、自動車保険の第1転換期といえる1990年代後半のダイレクト型自動車保険参入時、長らく独占的な立場を保護されていた国内損保各社は軒並み対応が遅れ、外資系にかなり食い込まれるという苦い経験をしました。ウェブやスマホ対応など、デジタル化へのシフトが一歩出遅れたことも理由のひとつとして考えられるでしょう。そして今、稼ぎ手であり消費の担い手でもある生産年齢人口(15歳から64歳の人口)の大幅な減少で、経済活動の鈍化や国際競争力の低下が危惧される、「2030年問題」が目前に迫りつつあります。つまり、保険業界は「第2の転換期」を迎えようとしているのです。

    生産年齢人口は、そのまま自動車保険の主なユーザーにもなるため、国民の3割が65歳以上の「超・超高齢化社会」となる2030年に向かって、保険市場のさらなるレッドオーシャン化が進行すると予測されます。そうなれば、国内外でのユーザー獲得競争が激化の一途をたどることとなりますが、ユーザーが求めるサービスが提供できず、さらには国際競争力を維持・向上できない損保会社は、自然淘汰を余儀なくされるかもしれません。

    そこでまず、自動車保険業界が取り組むべきことは、ネットの普及やITモバイルの進歩に伴い、ユーザーが欲しい情報を欲しい時に受け取れること、合理性への意識が高まるユーザーニーズや購入スタンスの変化を加味した柔軟な保険商品やサービスを提供すること—つまり、マルチボーダレスへの順応です。最近では異業種からの保険業界新規参入も珍しくなくなってきました。

    特にITに強い企業は、顧客の基本情報から行動、趣味・嗜好などのデータを取得・分析し、ニーズを理解した保険サービスを提供しやすくなります。つまり、同じ業界だけが競合ではなく、別軸で強みを持つ業種が一気に顧客の心を奪っていくという、予想だにしなかったことが簡単に起こり得るということです。大手ECサイトで知られる楽天が保険業界へ参入したことも、その傾向の一つと言えるでしょう。

    過去にダイレクト型自動車保険の参入で手痛い経験をしたことを考えると、AIやIoTなどを導入し、データをフル活用した商品や国内外で利用できるグローバルな保険商品の提案、あらゆる購買行動に対応できるシステムを構築することがカギとなるでしょう。データがもたらすのは、「誰もが同じ商品を」ではなく、顧客一人ひとりにあった「パーソナライズされた」商品を提供するのが当たり前となる未来です。テレマティクスはその先駆けになったと言えるのではないでしょうか。

    また、2030年の世界では現在よりさらにHV・EV車の普及が進み、燃料もガソリン・軽油から水素エネルギーへの転換されるようになるなど、リスクのトランスミューテーション(変容)が激しさを増すことも予想されます。そこに、車や関連インフラのIT化という新要素が加わるため、加入条件や走行距離だけで保険料を導き出す「Pay As You Drive」では、目まぐるしく変容するリスクを正確に判断することがより困難になっていくでしょう。つまり、リアルタイムに動態監視を行い、取得した情報を分析、導き出した事故リスクを保険料に反映する「Pay As You Live」へ対応していかなければ、保険会社として生き残っていけない時代が、もうすぐそこまで迫っているのです。

    保険業界が第2転換期を乗り越えるには

    保険業界でなくとも、トレンドの移り変わりが激しい現代。今後日本国内でもテレマティクス保険が一般化されれば、次の転換期に向けてユーザーの行動や傾向を理解し、次の商品を打ち出せる準備をしておかなくては変化の波にのまれてしまうかもしれません。

    そのためには現状の課題を見える化し、データとして分析することが近道です。前半でご紹介したテレマティクスでは、保険業界だけでなくともさまざまな業界で幅広く取り入れられ、数々の成功事例も上がっています。

    「まずは何をすればいいんだろう」とお悩みなら、オススメしたいのが安価で手軽に取り入れることができる、スマートドライブSmartDrive Fleet です。

     

    低コストで高クオリティなのに使い方は簡単。

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    高精度な安全運転診断機能

    高精度な安全運転診断機能は、危険運転を全て自動蓄積し、蓄積。この診断機能によって、事故が多い箇所やドライバーの傾向を分析することができ、新たなサービス開発につなげることもできるでしょう。

    リアルタイムな位置情報がわかる

    安全運転の可視化とリアルタイムな位置情報によって進化したテレマティクスの提供が可能に。

     

    そのほか、運転日報の自動作成機能やデータの集計機能など、新機能も続々追加しています。少しでも気になりましたら、ぜひこちらから資料請求ください。

  • 【対談】膨大なデータが世界を変える、デジタル時代のIoTとその未来 前編

    【対談】膨大なデータが世界を変える、デジタル時代のIoTとその未来 前編

    私たちが生活している空間には、ありとあらゆるデータが溢れています。テクノロジーが以前にも増して勢いよく進化し続けている今、ただの数字としてデータを貯める時代は終わり、高度な解析を経てプロセスやオペレーションの効率化、そして売り上げ向上へと導くために活用されています。

    企業が扱う大量のデータを、リアルタイムで収集・統合するデータマネジメントソリューションを提供しているトレジャーデータ株式会社は、デジタルビジネスの時代で最先端を走る企業です。2018年8月より英Arm社の一員となり、デバイスからデータまでを一貫して管理できるIoTプラットフォームを実現しようとしています。

    今回の対談では、トレジャーデータ株式会社でマーケティングディレクターをされている堀内 健后(ほりうちけんご)様をゲストに迎え、IoT時代の新たな自動車サービスを展開するスマートドライブとIoTプラットフォームができることやデータの先で描く未来像について語ります。

    センシングできればすべてがスマート化できる

    堀内:「トレジャーデータは、2011年に3名の日本人によって米国シリコンバレーで設立された会社です。事業としては、大容量のログデータ(Web閲覧データ、各アプリケーション、モバイルログデータ、センサーデータなど)を収集、分析をしてマーケティングツールや各種サービスと連携することによって顧客の購買に関わる行動を理解するためのカスタマーデータプラットフォーム:CDPを提供しております。2018年からはArm社の一員となり、Armが提供する省電力でハイパフォーマンスなプロセッサー技術が搭載された様々なIoTデバイスからデータまで一貫して管理できるソリューションArm Pelionの中で、データの解析プラットフォームを担っています。」

    北川:「スマートドライブでは、ドライブレコーダーやタイヤの空気圧センサーに至るまで、幅広くデータを収集しており、1日の運転を様々なデータの組み合わせによって数十万通りの軸で分析をしています。たとえば、ドライバーの運転状況によって一年後に事故を起こす確率が何%か予測出来るようなものだったり、エンジンをかけた瞬間にどこへ行くのかを推定するようなものだったり、データの収集・分析をしながら様々な用途に活用できるアルゴリズムを構築しています。そのアルゴリズムを活用すれば、今後、実用化されていくであろう自動運転においても必要になる、例えばタイヤの摩耗状況を解析してここまで減ったらメンテナンスしなくてはなりませんよと注意を促す仕組みを作ることも可能です。

    スマートドライブ=“乗り物に関するサービス”というイメージが先行していますが、どちらかというと様々なモビリティサービスに使われるプラットフォームという立ち位置を目指しています。例えばライドシェアに関していえば、ライドシェアサービスに付随するサービス、という軸で何か広げていけるかな、と思っています。

    シンガポールやマレーシアなどの東南アジアで展開しているGrabやGojekは、サービス自体は広がっていますが、新興国なのでそもそも車を購入できないようなドライバーがたくさんいるんです。だけど、GrabやGojekのドライバーになると月収50万円ぐらい稼げますよっていう世界で…。スマートドライブなら、ドライバーの運転を1週間トラッキングすることでその人の大体の報酬が予測して、これまでの仕組みではローンを組めない人にお金を貸したり、安全運転していたら保険を安くサポートしたり、良い運転をしているドライバーさんの運転の評価をエンドユーザーに見せてあげたりすることはできるかもしれません。

    現在はクルマや保険に特化していますが、将来的には、大量のデータと技術を活かして幅広くサービスを展開していきたいと考えています。」

    堀内:「なるほど。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)というよりは、車に関わるサービス部門を執り行うということでしょうか。」

    北川:「そうですね、車に限らず、幅広い観点でセンサーデータのプラットフォームになりたいなと思っています。車であれば、Gセンサー、ドライブレコーダー、タイヤの空気圧計などのデータを一つのプラットフォームに集めて、付加価値をつけた分析を提供することができますし、それがスマートドライブの強みです。」

    堀内:「きっかけはドライブだけど、いまやスマートセンサーになっているということですよね。その裏にはアルゴリズムがたくさんあって、保険やローン、メンテナンスや行動分析にも使える。わかりやすくいうと、センシングできるものがあればすべてがスマート化できるということでしょうか。」

    北川:「はい、そういうことです。あくまで移動にまつわる、という前提付きですが、デバイスも弊社が提供しているもの以外に4〜5社と連携しているので、より幅広く、深いデータを取得することができます。実はクルマだけでなく、コンテナなどでも使えるようになっているんですよ。」

    堀内:「すごいですね。Armでは現在、コネクティビティ管理・デバイス管理・データ管理の機能を持つIoTデータプラットフォーム『Arm Pelion IoT Platform(以下、ペリオンIoTプラットフォーム)』を展開していますが、データプラットフォームとしてスマートドライブと一緒に組めないかなと考えています。そうすればワンパッケージ化できるので、お客様へもより良いサービスが提供できるはずです。」

    Armとトレジャーデータのシナジー

    北川:「英Arm社とトレジャーデータのシナジーはどうでしょうか。」

    堀内:「そうですね、この話についてはArm側の観点でお話ししたほうがわかりやすいかもしれません。Armは30年以上続く歴史ある企業です。Armはコンピューターの頭脳にあたるプロセッサーの設計企業なのでArm自体がセンサーデータを持っているわけではありません。それでも今、世界にはArmが設計したチップが1,300億個以上も出荷されセンサーやデバイスの多くで利用されているし、近い未来には一兆に到達します。その伸びは今後も変わることはありません。そうなれば、すべてのセンサーからデータを取ってアルゴリズムを作ろうという企業が生まれるし、データはどんどん増えていくばかり。そうした将来を見据えた時、今後の売上げ成長を支えるにはデータが重要だと考えたと思うんです。

    その発生していくデータを使って何かをしようというのは、Armのチップを使っている人たちが考える発想です。しかしそれだと、Armとしてはチップの設計情報をばらまくだけですし、そこから生まれるセンサーからデータを扱えるソリューションを持っていたほうが企業の成長につながるはずだという戦略の中で、ストリームテクノロジーズ社とトレジャーデータを買収したんだと思います。

    Armがそこまでのソリューションを作ったので、私たちはそのデータを使ってどう世の中を変えていくか、どう動かなくてはならないかをより深く考えられるようになりました。デジタルマーケティングの時もそうでしたけど、データを集めて綺麗にして分析するためにデータのクレンジングと、プラットフォーム作りにもっとも時間がかかっていたんです。それが今後は一気に圧縮されるというのは心強い。

    デジタルの場合、エッジ端末がスマホやウェブだったからコネクテッドされていた状態だったのでデータがどんどん集まっていました。それがモノに変わると、エッジからデータをどう吸い上げるのか、データが問題なく発生しているのかコントロールする課題をArmが解消できるようになります。」

    モノ×データが導く無限の可能性と課題

    堀内:「データが集まるといった点では昔も今も、最終製品のデータの方が圧倒的に多くて、工場内のデータってなかなか市場に出てこないんですよね。たとえば、冷蔵庫。温度や扉の開閉など、今は多くのセンサーが搭載されていますが、そこへさらに5G(第5世代移動通信システム)が普及されていくと、低コストかつ低消費電力なネットワークシステムの大容量化が実現し、さらなるモノ×データの可能性が広がっていきます。トレジャーデータとスマートドライブが組めば、裏にデータを蓄積する場所を持ち、表はソリューション提供をしながら最適化されていくという世界が提案できるんじゃないでしょうか。」

    北川:「実現できると思います。スマートドライブの強みは、センサーデータに特化した付加価値を生み出すアルゴリズムを突き詰めて作り込んでいるところです。例えば事故リスクの分析など特化しているため精度は非常に高いですし、オープンプラットフォームというポリシーのため、複数の会社からから事故データなどのデータをいただくことができます。」

    堀内:「なかなかそういう立場にいる企業っていませんよね。メーカーと違って中立的な立場でフラットにデータを大量に集めることができる、データが大量に集まれば機械学習の精度も高まります。それがまた、強みになる。」

    北川:「おっしゃる通りです。そのバリューをもっと丁寧に、わかりやすく伝えていければいいのですが…。」

    堀内:「ただ、最近の傾向として、プラットフォームが強大になりすぎると脅威を感じられてしまうというか、強迫観念を抱かれてしまう場合があるんですよね。GAFAみたいに。」

    北川:「そういった傾向はありますね。また、スタートアップ企業単体だと、信用力という面でまだ弱い部分があるので、同じプラットフォーム企業であっても補完関係のある会社とは一緒に組んで信用力と技術的なケイパビリティを補完しています。」

    IoTはさらに進化を遂げる

    北川:「IoTは今後、私たちの生活の中でどのようにつながり、世界を変えていくでしょうか。」

    堀内:「Armが持っている半導体のIPを、現在、機械学習や自動車向けにも改良しています。それによってチップ自体がAI処理の一部を担うようになったうえ、トレジャーデータと同時期にArmがMVNOのSIMを扱っているストリームテクノロジーズという会社を買収したことで、グローバルのオペレーションでローミングができるようになったんです。

    たとえばシッピングでコンテナが東京からヨーロッパに向かうとしましょう。人がいなくても勝手にデータ通信を切り替え、つながった状態が続くようになります。

    さらに5Gが普及すれば、短距離で膨大な数のモノとつながることができるようになります。5Gは低遅延なので、アンテナが二つあった時の切り替えが早い。つまり、高速にダウンロードできるだけではなく、アンテナをスイッチした時の遅延がなくなるので、高速で移動している時でも途切れず、尚且つ大量のデータとつながることができるようになります。そういう世界になっていけばどこからでもデータを拾うことができますし、今後は瞬間的にデータの要不要を判断してアルゴリズムが向上するものだけ貯めるというように、切り分けができるようになるでしょう。品質チェックの際にパッと見て欠陥があれば排除する、そんなイメージですね。」

    北川:「そういう世界観が普及するには、現在、何が足りないと感じますか?」

    堀内:「一番は人のマインドセットです。なんでも初めはそうかも知れませんが、新しいモノが広がりはじめてから人の意識が変わるまでにはおよそ3年程度はかかるなと感じています。しかも、それはその人の心に刺さってから“3年”なので、変わるタイミングはバラバラ。だからとにかく今は広げていくしかないと思うんですよ。

    もう一点は、IoTとITの改善速度が違うと理解すること。ITだとすぐに作ってリリースして、改善してというサイクルが短いですが、IoTはモノを作る速度と同じなので、リリースするまでに何年もかかります。少し前まで、IoTはインターネットの速度で進化していくという期待感を持たれていましたが、IT側の人たちは今マインドが変わりつつあり、その速度感を理解しています。

    三つ目は、データソースとユースケースがバラバラすぎることです。デジタルマーケティングの場合は、ウェブのログとモバイルアプリのログ、広告のログ、購買ログなど、追跡する対象がヒトの行動ログのみです。だから、データソースは数種類だけですし、追跡するのはヒトの心理状態だけで良かったんです。

    それが物流の最適化になると、自動車のデータとモノのデータ、購買データ、温度から湿度と、対象がとにかく広い。また、工場の機械は、同じ会社の同じ型番の機械であっても製造年月日によってデータが異なるといいます。そうした変数のデータを複数のアルゴリズムで解析して、やっとトラック内をどのような環境にすべきか、どのような配送ルートが最適であるかという議論ができるんです。

    しかも、これらのデータは物流関連の会社にしか必要とされません。そうなると汎用性が低くなるのでディールサイズが大きくないとペイしません。そうなると意思決定も長くなりますし、PoCも必要になるしと、どんどん複雑化していきます。そうしたデータの扱いが違うところが、IoTが複雑で非常に時間がかかるものだと思われる所以です。ですので、うまく組み合わせを考えていかなくてはならないんです。」

    北川:「カスタマイズしてくれるAIベンダーのニーズが拡大しているのはそれが理由ですね。」

    堀内:「結局のところ、外販が難しいんですよね。過去に私がコンサルティング会社で担当していたBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)と一緒で、プロセスの全体像をつまびらかに見せて、順番を組み替えたり、業務を見直したり、新たな業務を足したり、細かく検討していかなくてはならないので、ざっくり見てここをこうしようという議論が成り立たないんです。そういう意味ではソースコードに近いかもしれません。」

    >>後編はこちら

  • バイクが売れないのはなぜ? 今後の二輪市場はどうなるのか

    バイクが売れないのはなぜ? 今後の二輪市場はどうなるのか

    自動車運転免許を持っていれば、誰もが50ccの原動機付自転車(以下原付と表記)に乗ることができますが、今まで一度も購入または利用したことがないという方は少なくないかもしれません。

    そんな中、別名・スクーターとも呼ばれる原付を筆頭に、小型・普通・大型バイクの国内販売数は年々減少しているというニュースが耳に入ります。シェアサイクルやライドシェア、カーシェアなどサービスが次々と広がっているいま、バイク市場はどうなっていくのでしょうか?

    この記事では、バイクの国内販売数動向や販売台数減少の原因を探り、バイク業界の現状と反して右肩上がりに成長している二輪ビジネスについて解説します。

    国内のバイク販売台数は約35年で9割減!

    日本自動車工業会(以下自工会)の調査によると、2016年のバイク国内販売台数は33万8,000台に止まっていました。つまり、販売総台数がピークだった1982年の328万5,000台と比べて、市場規模が約1割にまで縮小したことになります。少子高齢化による生産人口減少や軽自動車の品質向上など、今後もバイクのニーズが低下していくであろうことは織り込み済みであり、各メーカーはアジアを中心とした輸出販売に力をシフトしているようです。

    アジア有数のバイク大国、ベトナムのバイクメーカー協会「VAMM」の発表によると、2018年における同協会加盟5社の国内バイク販売打台数は、338万6,097台に達していますが、このうち約75%がホンダベトナム製です。ベトナムだけではなく、世界シェア率を見てもホンダが1位を譲ることなく、販売総台数は1,700万台以上に達していますし、他の3社もトップ5にしっかり食い込んでいます。

    メーカーの技術力や販売力が衰えたわけではなく、国内ユーザーが「バイクはもう必要ない」と感じていることこそ、ここまで販売が冷え込んでしまった最たる原因と言えるのかもしれません。

    なぜ国内でバイクが売れなくなったのか

    国内でバイクが売れなくなった要因を解説する前に、まずはどんなバイクが売れなくなったのかを整理しておく必要があります。一言でバイクといっても、50cc以下の原付、125cc以下の「小型バイク」、400cc以下の「普通バイク」、400㏄以上の「大型バイク」といった排気量ごとの分類、ビックスクーター・ネイキッド・スポーツ・ツアラー・アメリカンなどのオンロード、デュアルパーパス・アドベンチャー・モトクロス・トライアルなどのオフロードなど、用途や構造の異なる多様なタイプが販売されているからです。

    そして、全盛期の1割近くまで国内販売数が落ち込んだと述べましたが、数ある二輪車のうち劇的といえるまで販売台数が減少しているのは、最も手軽で安価な原付です。バイク人気の全盛期だった80年代初頭、足をつけて運転できるスクーターは、通勤・通学・買い物の足替わりとして大流行しました。新聞配達や宅配などの業務用バイクとして普及したホンダのスーパーカブ50と併せて、当時、原付は200万台を軽く超える売上を誇っていたのです。しかし、制限速度が30km/hまでということに加え、以下のような理由や影響によって売り上げが徐々に低迷していきました。

    • 3ない運動・・・高校生による原付免許取得・購入・運転を禁止するため、「免許を取らせない・かわせない・運転させない」をスローガンに、90年代まで展開された運動
    • 排ガス規制・・・1998年の排ガス規制により、低価格製造できる2ストエンジンから、重量や機構が増え製造コストのかさむ4ストエンジンへ、変更せざるを得なくなった
    • 駐車違反取り締まり強化・・・自動車より格段にスペースを取らない原付だが、駐車インフラ整備が遅れているにもかかわらず、駐車違反の対象となっていることに、疑問の声が上がっている

    日本自動車工業会が発表している原付自動二輪車販売台数では、2015年が193,842台だったのに対し、2016年は前年比16%減となる16万2,130台でした。全盛期から、わずか8%にまで販売台数が激減しています。一方、法的に原付2種と区分されている、50cc超~125cc以下のバイクの売れ行きは好調で、同年の調査で前年比6.9%増の101,424台(2015年販売台数94,851台)でした。

    中型・大型バイクも原付ほどの激減は呈していません。バイクの日である2017年の8月19日、ホンダ・ヤマハ・川崎・スズキのバイク大手4社が、毎年恒例で開いている合同記者会見において、ヤマハ・柳社長が「特に原付の売れ行きが厳しい…。」とこぼしたように、原付の販売不振が業界全体の課題になっているようです。

    自転車関連のサービスがバイクを追い上げる

    販売実績が低迷しているバイク業界を尻目に、年々活気を見せているのが自転車市場です。性能が格段とアップし価格もリーズナブルになってきた電動自転車は、街中でもよく見かけるようになりました。また、政府も自転車を安全で安心かつ環境にやさしいモビリティと位置づけ、シェアサイクルと公共交通機関との接続強化や、サイクルポート設置など普及を促進する「自転車活用推進計画」を2018年6月閣議決定し、現在も推し進めています。政府方針に素早く反応した企業は次々にシェアサイクルサービスを展開し、オリンピックを間近に控える東京では、すでに激しいシェア争いが勃発しています。

    ドコモVSソフトバンク東京を手中にするのはどっち?

    現在、都内で激しい争いを繰り広げているのは、携帯キャリア大手ドコモが運営する「ドコモバイクシェア」と、ソフトバンクの社内ベンチャーとして誕生したオープンストリート(株)の「HELLO CYCLING(ハローサイクリング)」です。

    シェアサイクルの普及には、駐輪ポートの設置数と対象エリアの拡大が必要不可欠です。企業間での争いはよく「陣取り合戦」と称されますが、現時点ではポート数で勝り、区をまたいでの返却も可能なドコモが圧勝のよう。HELLOCYCLING側も、セブンイレブンを返却ポートとして設定したり、使いやすいアプリをリリースしたりするなど、ドコモへの対抗策を打ち出してはいますが、都内に張り巡らされたドコモの陣地を切り崩すのは容易なことではなく、埼玉など近郊での進出に今のところ留まっています。

    万博開催に向けての布石?大阪が進めているシェアサイクル事業

    55年ぶりとなる2度目の万博開催が決まった大阪でも、シェアサイクル普及の動きが高まっています。ベイサイドエリアの港区では、官民共同のシェアサイクル事業「ベイクル」の実証実験が今年の3月よりスタートしました。

    今回の実証実験では、築港・天保山エリアに4カ所、大阪メトロ・朝潮橋駅周辺に1カ所の計5カ所に、電動アシスト自転車のシェアサイクルステーションを設置してスタート。しかし実はHELLOCYCLINGとの提携でこの事業は進められているのです。東京では、ドコモに後れを取ったHELLOCYCLINGですが、府内ではすでに約110箇所のステーションを設置済み。自治体との連動がなされたことも手伝って、大阪における陣取り合戦では、ソフトバンク陣営が一歩リードしているようです。

    メルカリ運営のメルチャリは福岡から東京へ逆進出開始

    フリマアプリで有名なメルカリの完全子会社(株)ソウゾウが、2018年2月に福岡で生まれたシェアサイクル「メルチャリ」。今年からは東京都国立市でもそのサービスをスタートさせ話題を集めています。

    他のシェアサイクルサービスと違うメルチャリ最大の特徴は、個人が自宅やお店の軒先をレンタルポートとして提供できることです。都内におけるインフラ整備コストを考えると、もしかしたら爆発的に進出が進む可能性も考えられます。ただし、現在メルチャリで利用できるのは、電動アシスト機能が付いていない自転車のみ。

    実証実験に国立市が選ばれたのも、坂が少なくフラットな地形だからです。港区・文京区・新宿区・千代田区など、経済や文化の中心でもある地区は、急な坂道も少なくありません。ですので、エリアを拡大するなら電動自転車の導入が必須になってくるでしょう。

    二輪市場・業界の未来予想図

    都市部でシェアサイクルが順調に整備されていった場合、いよいよバイクの置かれる立場は危うくなり、販売台数はさらに減少することが予想されます。モビリティにおける、「ラストワンマイル」とも言うべきリーチが、バイクから自転車へそして保有からシェアサイクルへチェンジしていくことを考えると、原付が都市部で活躍する姿を見る機会は大幅に減っていくのかもしれません。

    しかし、AT限定普通二輪免許の技能教習を短縮する道交法施行規則改正案が可決されたことにより、2018年の7月から、普通自動車免許保持者が小型限定普通二輪免許を取得しやすくなりました。125ccはいわゆる「原付2種」と呼ばれるもので、最高速度30km/h規制や第一通行帯の通行義務、二段階右折の規制がないため、通勤や業務などでの都心部の移動手段には非常に便利です。一般的な中型バイクや車と比較してもガソリン代やバイクの駐車場の確保などの負担は軽く、経済性と利便性のバランスが取れ、快適性が高いのが魅力。

    このような成果に便乗し、EVバイクや雨をしのげる屋根付きバイクなど、魅力あふれる新型モデルをメーカーが提供し続ければ、再び売り上げ向上の兆しが見えてくるかもしれません。

    また、コンビニチェーンの宅配サービスやウーバーイーツのようなサービスだけでなく、バイクは物流のラストワンマイルをサポートするという役割も担っています。現在の物流業界では運送会社の人員不足や燃料代の高騰などに加え、再配達に関するコストや手間が負担を大きくしています。そこを解消する手段として、業種を問わず互いに手を組むことができれば、配達の遅延や人材不足、業務の効率化など多くの課題を解決していくことができるのではないでしょうか。

    便利な移動手段、そして運送業界のサポーター、小回りのきく二輪車は、私たちのさまざまなラストワンマイルをカバーしてくれるサービスとして、今後も幅広く活躍してくれることでしょう。

  • 運行管理者試験に合格するための攻略ポイント

    運行管理者試験に合格するための攻略ポイント

    運行管理者は、事業用自動車の安全運行を管理するスペシャリストであり、道路運送法及び貨物自動車運送事業法(貨物)に基づき、事業用自動車の運転者の乗務割(勤務表等)の作成、休憩及び睡眠施設の保守管理、運転者の指導監督、点呼による運転者の健康状態の把握、事業用自動車が安全に運行できるよう管理をするなど、非常に重要な業務を担っています。

    運行管理者試験の合格率は、2018年8月実施分で貨物が28.7%、旅客が31.7%。なかなかの狭き門に見えますが、しっかり学習すれば合格できますので、この記事でポイントを押さえ、合格を目指してください!

    運行管理者になるには2つの方法がある

    運行管理者になるためには、

    ①運行管理者試験に合格する、または
    ②事業用自動車の運行の安全確保に関する業務について一定の実務の経験し、その他の要件を備える、

    という二種類の方法があります。

    ① 運行管理者試験に合格する方法

    この方法では、毎年8月と3月の年に2回開催される運行管理者試験に合格することが必須です。自分が必要とする資格がトラックなどの貨物運送事業であるか、バスやタクシー、ハイヤーの旅客運送事業であるかによって、試験は「貨物」と「旅客」に分かれます。今年度の試験日についてはこちらをご参考ください。いずれも、30問出題され、出題項目の配分は以下のようになっています。

    ・貨物の場合
    貨物自動車運送事業法  8問
    道路運送車両法  4問
    道路交通法   5問
    労働基準法   6問
    その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識・能力  7問  合計 30問

    ・旅客の場合
    道路運送法  8問
    道路運送車両法  4問
    道路交通法   5問
    労働基準法   6問
    その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識・能力  7問  合計 30問

    全部で5つの分野がありますが、「その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識・能力の分野」については最低2問、他の分野では最低1問の正答が必要となり、合計18問以上の正答で合格です。

    受験に際して、事前に運行管理者等基礎講習を受講していることが条件です。各都道府県の独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)で6月前後に3日間実施されます。3月の試験に合わせて12月前後に実施される所もありますので、お近くの講習会場を調べて、事前に確認しておきましょう。運行管理者等基礎講習の受講料は、消費税・テキスト代込で8,700円です。なお、旅客の受験者でバス協会会員の事業所に所属する方は受講料をバス協会が負担する県とバス協会会員でも受講料が必要な県がありますので、あわせてご確認ください。貨物の受験者は必ず受講料が必要です。

    ・運行管理者試験に必要な書類
    1、運行管理者試験受験申請書(写真貼付)
    2、証明書の貼付用紙
    住民票の写し又は運転免許証のコピー、試験の種類に応じた基礎講習修了証書のコピー又は、試験の種類に応じた運行管理者講習手帳の、発行者が記載されたページ及び、受講者の氏名等が記載され写真が貼られたページ、基礎講習を修了したことが証明された箇所の写しが必要です。
    ※運転免許証のコピーと基礎講習修了証書のコピーが一般的です。

    運行管理者試験の受験料は6,000円(非課税)で、ウェブによる電子申請を行う場合はシステム利用料として648円(税込)が必要です。なお、書面での申請の場合は、申請書がトラック協会、バス協会、運行管理者試験センターで1,030円(税込)で販売されています。

    ② 事業用自動車の運行の安全確保に関する業務について一定の実務の経験その他の要件を備える方法

    運行の管理に関して5年以上の実務経験と、運行の管理に関する講習を5回以上受講(初回は、運行管理者等基礎講習を受講)している方であれば、試験に向けての知識を詰め込むことができます。
    運行管理者等基礎講習を一度受講すれば運行管理補助者としての資格が得られ、さらに実務経験を積みながら、毎年一般講習を受講することで5年で運行管理者資格を得る事ができるのです。ただし、運行管理補助者として会社に運行管理者業務を任されなければ実務経験を積むことができません。

    これでバッチリ…!?試験前に押さえるべき6つの攻略ポイント

    攻略ポイント1. 運行管理者等基礎講習を受講後、すぐに試験を受けよう

    運行管理者等基礎講習を受講したら、できるだけ早めに運行管理者試験を受験することが合格の近道です。その理由としては、試験内容が年々難しくなる傾向にあること、運行管理者等基礎講習で学んだことが古くなり、新しく覚えることが増える可能性があるためです。

    攻略ポイント2. NASVAの参考書より、さらに解説のしっかりした参考書を手に入れる

    過去の試験問題や模擬試験集も大切ですが、しっかりと理解するためには間違った問題を放置せず、なぜ間違ったのかを見直すことが重要です。そのためには、一人でも納得と理解を深められるように、自分にとってわかりやすく、しっかりと解説がされている参考書を選びましょう。
    基礎講習の受講時に法令が記載された本も配布されますが、講習時にさらっと確認する程度ですのでご自身で身につけなくてはなりません。法令を覚えるよりも「〇〇は1年」など、項目ごとに暗記して、なぜ自分が間違ったのか、答えられなかったのかを間違った理由を分析してどうすれば覚えられるかを考えましょう。

    攻略ポイント3. 過去の問題集を購入し、試験前の模擬試験を実施する

    ひと通り学習を終えたら力試しをしてみましょう。過去の問題集や模擬試験問題を解き、自分でテストを行います。間違った問題は、なぜ間違ったのか理解することが力をつけるコツです。間違った箇所が正解するまで、何度もテストしましょう。

    攻略ポイント4. 取れる所で点を取る、難しい問題に時間をかけない

    合計、60%の正答率で合格を獲得できます。限られた時間を有効に使うため、難しい問題に時間をかけないようにしましょう。「その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識・能力」については、1ページから2ページ規模の文章問題になっている場合があり、幅広い知識から答えを導かなければなりません。しかし、ここで7問中最低2問は確実に答えてください。

    それ以外の法令からの23問については、しっかり暗記して覚えることで確実に点数が取れます。23問中16問以上の正解(7問中5問不正解として、最大12問不正解から5問引いた数)で合格となりますので、慎重に回答を埋めていきましょう。

    攻略ポイント5. 1日30分で役割や数字を何度も確認

    ドライバーの方であれば、休みの日も勤務中の休憩時間も、しっかりと休息をとって実務に備えることが大事です。しかし、試験を受けるには1日20分でも30分でも、ほんのすこしの隙間時間でも構いませんので、運行管理者と運送事業者の役割、各種期間等の数字を繰り返して覚えられるようにしましょう。

    攻略ポイント6. 正しいか、誤っているか、問題をよく読んで解答すること

    問題には、正しいものを選ぶ問題と誤っているものを選ぶ問題があります。問題をしっかり読んで解答しましょう。不正解の答えを消去して絞り込む消去法を使うと間違えにくく、見直しの際にも役立ちますよ。

    出題項目別!押さえるべきポイントを解説

    貨物自動車運送事業法・道路運送法

    ・運行管理者の業務と運送事業者の業務をしっかり見極める
    ・点呼についてや事故に関する報告書の内容などをしっかり把握する

    転覆、転落、火災の自動車事故、10人以上の負傷者を生じた事故など、自動車事故報告規則第2条に該当する事故の報告は30日以内に当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸管理部長又は運輸支局長を経由して、国土交通大臣に提出しなければならないと決められています。

    さらに、報告の他に事故の速報が必要な事故もあります。貨物では2人以上の死者(旅客では1人以上)が出た事故など、自動車事故報告規則第4条に該当する重大な事故の場合は、24時間以内にできるだけ速やかに、その事故の概要を電話やFAXで当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸管理部長又は運輸支局長に報告しなければなりません。30日以内や2人以上などの数字を把握しておきましょう。

    道路運送車両法

    ・車両の登録に関する変更の申請期限や申請先について、自動車の検査、点検についての内容を保安基準と照らし合わせながらしっかり把握する
    ここは、一番少ない4問の出題ですが、だからといって軽視はせずにしっかり学習し、4問全問正解する気持ちで取り組みましょう。

    道路交通法

    ・過労運転・飲酒運転の禁止について重要な法律を押さえる
    道路交通法は、運転免許取得時の免許センターの試験と近しい内容です。ここでのポイントは、休息時間と飲酒に関わる部分の出題が多いこと。道路交通法に関する内容の振り返りとともに、過労運転に関する法律をしっかり覚えましょう。

    労働基準法

    ・トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイントをしっかり把握する
    労働基準法は労働条件に関する内容が出題されます。1日の拘束時間、運転時間、翌勤務までの休息時間、1週間の拘束時間など細かく決められています。1日の拘束時間は原則13時間までと決められていますが、16時間まで認められる場合もあること、15時間を超えるのは週2回までであること、翌勤務までは8時間以上の休息を確保することなど、それぞれの「時間」をしっかり把握してください。

    また、労働時間の改善基準については、必ず出ると言っても過言ではありません。連続運転時間4時間を超えてはならないこと、連続4時間運転になる前に30分以上の休憩が必要であること、1回の休憩は10分以上であること、10分未満の休憩は休憩に含めないことなど、時間に関する数字は確実に押さえてください。

    拘束時間に関する問題も出題率が高い傾向にあり、各月の拘束時間(最大293時間)と年間拘束時間(最大3,516時間)の表から違反か違反でないかの判断を問う問題も出題されます(貨物の数値例)。労使協定があれば、年間拘束時間内で1か月320時間まで延長が可能ですが、試験には労使協定があるかないかも記載されていますのでしっかり読みましょう。

    運行管理者試験に合格するために

    実際の試験は紛らわしいひっかけ問題も少なくありません。覚えることももちろん大事ですが、過去試験の傾向やテストに出題されやすい問題に慣れることで、当日も落ち着いて受験できるはずです。前日は睡眠をしっかりとり、万全の体調と余裕の心でのぞんでくださいね。

  • 【対談】ヒトもモノもつながることが新たな価値を生む– IoTが描く未来図 後編

    【対談】ヒトもモノもつながることが新たな価値を生む– IoTが描く未来図 後編

    前編に引き続き、今回もゲストは株式会社ローランド・ベルガーで代表取締役社長・工学博士を務める長島聡様です。

    移動の課題を解決し、動きたくなる・動きやすくなる社会を実現するためにローランド・ベルガーが立ち上げた社内ベンチャー、『みんなでうごこう!』。(2018年11月発足)後編では、『みんなでうごこう!』や長島様が大事にされている考え方、そして現在から今後の取り組みについてお話を伺います。

    前編はこちら

    さまざまな都市と人がつながるために

    北川:「前編でお話しされていた翻訳機能は、『みんなでうごこう!』のコンセプトと近いですか?」

    長島:「そうですね、社内ベンチャーでも繋いだり、翻訳したりするという役割に注力していますし、各プロジェクトの中では、『ローランド・ベルガーは何を一番にやるべきか』を常に念頭に置きながら動いています。
    地方への移動増加や観光客の誘致も含め、地方の活性化への取り組みはすでに各地で行われています。ただ、色々な場所で、取り組んでいるため、互いに知らぬ間に起きていることも多いです。要は、ある地方の繁栄を思う100人以上の人が、それぞれ街のために別々に動いているので、いつ・どのエリアで何が行われているか、全然見えないということ。そんな状態なので、『今から3時間後に近くでこんなイベントがあるらしい』という情報が耳に入ることはほとんどありません。そうやって貴重な機会が次々と流れてしまうのは非常にもったいないですし、それをどのように見える化して、人の流れを変えるようなインパクトを作るか。そして、どう繋げていくべきかを考えるのが私たちの使命だと思っています。
    『みんなでうごこう!』では、ひとつの都市だけでなく、10、20のさまざまな都市と色々な形で動き始めています。
    各地域にいるプレイヤーは地域の特色はもちろん、考え方も実施していることも異なりますので、いま何をやっていて、どんな効果があるか。もう一歩良くするためにはどんなことを加えるべきかを整理します。それぞれの取り組みを1つづつカード(ソリューションメニュー)にして集めていきます。これをやっておくと、次の地域に向き合った時に、こことここが繋がらないとか、この部分の密度が足りないとか、このカードを使うと変わるのではないかとか、何をすべきかが見え、どこを足し算・引き算すべきかが明確になっていきます。人がいまやっていることを集めて、つないで、密度を上げていく― それに挑戦しているのが『みんなでうごこう!』です。」



    埋もれた可能性を輝かせるために

    北川:「先日、ある岡山の企業様を訪問したんですが、車両を数多くお持ちのせいか、テレマティクスやIoTに関する知識が非常に高く、自社ですでに様々なサービスを契約して活用したりして、やっていることは都会の企業と変わらないと思ったんです。ただ、お話を伺っていると、もっと手前でこういうことができる、もっとこういうこと発信してくれれば色々紹介できるのに、みたいなことが多くて。素晴らしいアセットやマインドを持っているのに、つながらないから形になりづらい。そうした企業が地方には多いように思います。」

    長島:「インダストリー4.0というコンセプトが広がってきたのは、たしか2014年ぐらいだったでしょうか。そこでは製造業のデジタル化、つまり、インターネットでなんでも繋ぐというような話が出てきました。『みんなでうごこう!』を実行する中で思ったのは、今後、人や会社をインターネットに繋げるようにならないかなと。それらがつながれば、この人はこんな得意技を持っている、この会社はこんな強みがあるという情報がどんどん頭の中に入ってきて、格段と視野が広がります。
    さらに地域のアセットにもつながれば、稼働率も含め、この場所は人口が何人で、どんな人たちが来て、どんな特色を持っていてという情報がすぐわかるようになり、人の移動密度をマネジメントできるようになるんじゃないかと思っているんです。そうすることで、新たなルートを作ったり、イベントを宣伝したり、よりメリハリのついた地方の活性化が可能になりますし、それが一般化して飽きがきたら密度から外れたところをプロデュースすることもできる。そんな、今まではできなかったことが実現できると思うんです。」

    北川:「スマートドライブでも、車だけではなくさまざまなシーンで使えるように色々な取り組みを行っています。移動というテーマは外せませんが、弊社開発のデバイス以外にも様々なデバイスと連携を進めていますし、移動を最適化するための、センサーデータプラットフォームという立ち位置になれればと思っています。IoTのパワーはまだまだ未知数ですよね。」

    「移動」は経済を回す原動力

    長島:「私は、『移動は経済を回す』と信じていまして。移動送料が増える=そこに住む人たちの収入も上がる、少なからずともそういう相関関係はあるはずなんです。
    その一方で、世の中的には、VRもあればチャットもあるしフェイスタイムもあるし、移動しなければお金もかからないし便利だ、みたいな会話がされている。でも、それだと感覚が鈍るし、経済も回らないし、なんか違うんじゃないかって思うんですよ。なので、移動ならではの価値をクローズアップしてもっと訴求していかなければと思っています。」

    北川:「移動は人間の根源的な欲求なので、0になることはないと信じていますが、移動の価値をもっとフィーチャーして効率化できるといいですよね。それは私たちのコンセプトでもあります。」

    長島:「移動は健康とも繋がるじゃないですか。いま、高齢者の間で、座ったままでボールを打ち合う棒サッカーというスポーツが人気なんですけど、座ったままなのに結構、足腰が鍛えられるらしいんですよ。そして何よりもみなさん楽しんでいる。それがもっとも大事なことです。健康寿命が上がれば心身ともに生き生きしてきますし、そういう人がたくさんいる社会って魅力的ですよね。なので、動くことをどうマネージするか、どう増やして行くかを考えていくべきだと思うのです。」

    北川:「スマートドライブは移動体のIoTセンサーデータプラットフォームを目指していますが、移動にフォーカスする中で、移動のデータ分析は色々なものに紐づくと気づきました。事故リスクの予測だけではなく、将来的には移動から派生する様々な予測分析ができるようになると思っています。その実現のためには、ローランド・ベルガー社が触媒となって足元から一緒にプロジェクトを始めることによって、どこと繋がれば実現可能かを一緒に考えられるといいですね。」

    長島:「いま、スマートドライブ社にはとあるプロジェクトでお声かけさせていますよね。それは、そのクライアント様からいただいた2つの依頼がフィットすると感じたからなんです。依頼内容のひとつが、社用車にコストがかかりすぎているし、稼働率が悪いから改善したい。それによって全体的なコストの適正化を行いたいということ。もうひとつは、今までひたすら自走してきたので、他者と交流しながら新しい価値を生み出していきたいということでした。
    そこで私たちは、単純に社用車の台数を減らすだけじゃなく、移動中の付加価値、移動している中で役に立つことを見つけていきませんかと提案しました。それに、せっかくなら、色々な領域の人たちを巻き込んでみんなでやったら楽しいし可能性が広がるんじゃないかと考えたんですよ。そこで、スマートドライブをはじめ、様々な会社に声をかけました。彼らと組めば、部品メーカーが既存の世界から一歩踏み出し、新しいビジネスを考える時の刺激になる、そして乗るたびに何か新たな刺激が降ってくるというような状況が作れるだろうと思ったからです。
    普通だったら専用の画面に情報を入力して、きちんと手順を踏みながら設定するところを、ビジネスのチャット上で配車依頼のスタンプを送るだけで完了する。そんな取り組みを部品メーカーの方と進めて行くと、『そんな方法もあるんですね!』という感嘆の声が上がりますし、刺激を受けて、じゃあこんなこともできるんじゃないかというアイデアも広がる。プロジェクトはどんどん活性化していきます。」

    北川:「面白いですね。いままではSIerに頼んで専用のモノを作る時代でしたが、こうした取り組みによって、今後はモジュール化されたものを組み合わせていくフェーズに移行していくのではないでしょうか。
    スマートドライブ自身は、自社サービスやネームを前面に押し出すのではなく、インテルさんのように気づいたら様々な製品の中にチップとして組み込まれているとか、意外と知らないところで裏側のシステムを支えているとか、移動のカテゴリの中で影の力持ちみたいな存在になれればいいなと思っています。まさに、長島さんがお話しされた組み合わせ中のひとつとして活用いただければ幸いです。」

    長島:「スマートドライブはモジュールとして確立されていますし、続々と機能拡充もされていますので、さまざまなニーズにフィットできる、非常に素晴らしいIoTサービスだと思っています。」

    得意技が企業とヒトを惹きつける

    北川:「ちなみに、スマートドライブのサービスで改善すべきところはありますか。」

    長島:「そうですね…サービス自体は素晴らしいと思っています。ただし、前々から私自身が懸念していることがひとつ。全般的に言えることですが、効率化はGDPを下げる要因になるという問題意識があるんですよね。給料をあげようと世間では言っていても効率化によって人手を減らそうとしていますし、シェアリングが流行っていますが車を減らせば製造する人に影響が及びます。
    状況を変えるには、減らした分を拡大再生産するという感覚を持たねばなりません。たとえば、管理していた車を200台から180台に、20台分を減らしたとしましょう。その20台分にかけていたコストを浮いたままにせず、そこにかけていたコストでより大きい価値を生めば、新たに“生産”されます。」

    北川:「いまだと大企業のほとんどが利益を投資せず、内部留保にされてしまいますもんね。」

    長島:「そうなんです。サプライヤー取引が減ると自社の利益は上がりますが、それは考え方として正しいとは思えません。工程改善をしたら、そこで生まれた余剰分や持ちえる得意技を生かして新しいモノを生み出していくべきです。それが新たな価値となり、次のプロジェクトが立ち上がるきっかけにもなりますので、私たちはモジュールを組み合わせる時にその部分もセットでプロデュースしていかなくてはならないと思っています。」

    北川:「スマートドライブも、一視点だけのソリューションではなく、全体感を見ることができるようにしていきたいです。」

    長島:「得意技があれば次のステージに行って、新たな議論が始まるはずです。ですので、要素技術を突き詰め、さらに磨きをかけていって欲しい。キラリと光る要素技術を持っていれば、それだけで他の要素技術を引き付けますから、自然と繋がりが広がっていきますよ。」

    北川:「私たちスマートドライブも技に磨きをかけて繋がりを増やし、さらなるバリューを生み出していきたいと思います。本日はありがとうございました!」

  • 新3Kで環境は変わる?建設業界が行うべき現場改革とは

    新3Kで環境は変わる?建設業界が行うべき現場改革とは

    そびえたつ高層マンションや商業施設の建設だけではなく、道路・水道・ガスといった各地域のインフラ整備・維持の担い手でもある建設業者。東北や九州、中国地方の自然災害における復興作業、首都圏の再開発など、各地では大規模なプロジェクトが進められており、私たちの生活を便利にするための基盤を作っていると言っても過言ではありません。

    新工法の確立や建築資材の改良によって、以前よりずいぶん従事者の働きやすさが確保されつつありますが、ますます深刻化する人材不足により大きな壁にぶつかっているようです。

    建設業界のイマ

    建設産業に関する実証的な調査・研究を実施している非営利団体、(一財)建設経済研究所が2019年1月公開したレポートによると、2018年度の名目建設投資(官民合計・見通し)は約56兆8,400 億円でした。最低水準だった、2010年度の約40兆円から8年連続で増加しており、この堅調傾向は2020年の東京オリンピック前後まで、継続するものとみられています。

    問題なのは建設業就業者の減少で、1997年の約685万人をピークに2010年には27.3%減となる、約498万人にまで落ち込んでいます。少子高齢化に伴う人材不足は全業界に通じる課題ですが、建設業の場合は不思議なことに、2010年以降は「ピタリ」と就業者の減少が止まっているのです。

    その背景にあるのは、建設業は非常に専門性が高く、重機のオペレーションや各機材の取り扱いなど、経験豊富なベテランが活躍しやすい業種であるため、新規就業者が増加していない半面、年配就業者の離職も少ないということです。

    その結果、建設業就業者の約34%が55歳以上なのに対し、29歳以下は約11%にとどまっており、他業種より際立って「高齢化」が進行しているのが現状です。(全産業平均:55歳以上29.7%・29歳以下16.1%)

    なぜ、他業種より高齢化の進行速度が早いのか

    経験豊かな年配の就業者が業界で長く活躍するというのは素晴らしいことではありますが、先々のことを考えると、彼らが体力的にあと何年現役を続けられるかを見据えつつ、並行して新しいマンパワーを獲得し、技術継承を進めなくてはなりません。2015年には国交省と日本経団連が中心となり、「給料・休日・希望」という「新3K」を提唱し、処遇改善などによる担い手確保に乗り出していますが、現状、建設業界の高齢化に歯止めはかかっていないようです。なかなか拭い去れない「きつい・汚い・危険」の3Kというネガティブイメージの他にも、建設業界が若い世代の就業者を確保できないのには、大きく3つの原因があります。

    1.  時代の移り変わりとともに変化する仕事への価値観

    現在、建設業界で現場の先頭に立ち、取り仕切っているのは、45~50歳代のベテラン技能者や技術者です。彼らが若手として業界に飛び込んだ頃は「親方・監督・棟梁」などが、現場において絶対的な権力を持っていました。そして、慣れない現場でうっかり作業をミスしてしまうと、監督から大きな声で怒鳴られるということも少なくはありませんでした。

    もちろん、これは危険を回避するための注意喚起であり、命を落とし金ない現場で仕事に従事していることを改めて実感させるため行為だったわけですが、今の若い世代には厳しいと受け取られ、あっという間に離職されることも、「パワハラ」として問題化することもあります。

    なぜなら、現在の若い世代は叱られながら仕事を身につけていくのではなく、覚えるのではなく、やりがいや楽しさを求め、人間関係やプライベートを重視するからです。時代や環境とともに価値観は変化していくため、バランスを考えた指導をしつつ、未来の人材育成に力を入れていかなくてはなりません。

    それには、重機・車両などの「GPS誘導」・BIM・CIMを活用した「業務効率化」・作業マニュアル・工程などの「ペーパーレス化」・VRを活用した「危険予知・回避訓練」など、ICTツールを導入した「ハード」の整備、そしてシステム化を柔軟に取り入れ、安全確保をしながら人材育成計画に時間をかけていくべきかもしれません。

    2.  業界特有の給与システム「日給制」による弊害

    建設業就業者における、年代別平均年収のピークは45~49歳ですが、これは他業種の賃金ピークが52~55歳辺りであるのに対し、かなり若い水準であると言えます。このピーク時における建設業就業者全体の平均年収は、全産業を通してみても、トップクラスの高水準にあるため、「じゃあ問題ないじゃないか」と思われるかもしれません。

    しかし、実際のところ建築・土木などといった建設業界の平均年収を引き上げているのは、大手ゼネコンに属する上級社員や設計エンジニア、また、建設会社の経営者などといった、ごく一部の高額所得者です。中小建設業者の場合は、現場を取り仕切る監督者や施工管理者でも、業界全体の平均より年収が少なくなり、測量士や大型建機のオペレーターなどがそれに続きます。では一般の建設作業員、特に駆け出しの新卒者の平均年収は、他業種より低水準なのかと言えば、実はそうでもありません。

    建設業では作業員の給与が月収制ではなく、就業日数に経験や資格などに応じて決められる日給をかけて算出される、「日給制」が採用されていることがほとんどです。そのため、若手の新人であっても休みを減らして頑張れば、他業種の大卒新入社員に負けない年収を稼ぐことが可能ですが、反対に日給制を受け入れることができず、離職する若手就業者も非常に多いのです。

    建設業界の慣習である日給制には、基本的に有給が発生しないため、休めば休んだ分、月収が目減りします。また、ケガや急病などのやむ負えない個人的事情はもちろん、台風や大雨などで工事が中止・延期した場合も、受注数の減少といった会社都合であっても、否応なく出勤日数が左右されます。

    天候条件や会社都合で必要な作業員数が減少した場合、真っ先に出勤シフトから外されるのは若い新卒作業員となるため、月給制と比較すると収入の安定性が落ちてしまいます。加えて、建設業は年収の上昇スピードが非常に鈍く、厚労省の統計によると高卒で就業した若手従業員の平均年収が250万円だとすると、300万円を超えるのは5年以上の就業期間を経てからです。そして、専門的な技能・技術を取得していない限り、20代のうちに400万円を超えるのは稀なようです。

    エンジニアや特殊技能保有者を除く生産労働者の場合、ピークとなる年齢を迎えても業界全体の平均年収に150万円近く及ばない、約500万円あたりが上限年収となってきます。日給制による安定性の低さと、将来的な年収UPに対する不安感、この2つが相まって新卒者の就職率が伸びず離職率ばかり高まっているため、急速な就業者の高齢化が建設業界では進んでいるのです。

    3.  長い労働時間と一向に進まない働き方改革

    厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によれば、対象となった全産業の年間出勤日数が222日であるのに対し、建設業界の年間出勤日数はなんと251日に達していました。(いずれも2017年度の平均日数です)今や常識化した、完全週休2日体制で就業している建設業者は全体の1割にも満たず、労働時間に換算すると実に336時間に達します。その点を考慮すると、早急な労働時間の短縮と休日の確保、つまり「働き方改革」が急務ということです。

    また、同調査では過去の総労働時間水準も確認できますが、全産業の総労働時間が2007年度と比較して約87時間短縮されていたにもかかわらず、建設業界はたったの9時間しか労働時間をカットできていません。取引関係の弱い中小建設業者は、発注企業からの短納期要請や、顧客からの要求などに対応するため、どうしても長時間労働になりやすい点は理解できますが、建設業界では働き方改革の根本である労働時間短縮が、ここ数年ほとんど進んでいないと言えるでしょう。

    施工現場はより問題が複雑?

    オリンピック施設を想像するとよりわかりやすいかもしれませんが、建設現場の施工範囲は簡単に見渡せるような広さではなく、非常に広大です。その広大な範囲の中でキビキビと作業を行わなくてはなりませんし、現場には工事用の資材搬入トラックが逐次到着します。しかし、都心に行けば行くほど交差点や信号が多く、時間帯によっては人の行き交いも増え、道路は混雑を極めます。ドライバーは安全に意識しながらも現場へ急がなくてはなりませんが、こうした状況により、到着時間が数分、数十分とずれ込むことも少なくはありません。建設現場の入り口には安全確保とトラック誘導のための人員が立っていますが、到着時間がわからずにいると待ちぼうけをすることになり、業務に遅延が発生します。

    また、施工現場では、施工管理者や現場監督者をはじめ、多数で多業種の作業者がいます。作業者一人ひとり行動と居場所が把握できれば業務はスムーズに行えるかもしれませんが、現状はそれが難しく、誰がどこで何をしているのかが明確にわからず、スムーズに連携が取れないまま、各々作業に集中している状態です。

    そうしたさまざまな観点から、2016年より、国土交通省は建設現場の生産性向上に向けて、測量・設計から、施工、さらに管理にいたる全プロセスの情報化を前提とした新基準「i-Construction」を導入し、全国で進められています。これによって生産性を高め、建設現場での死亡事故を0にし、賃金水準の向上を図る——— しかし、ICT建機が割高で十分に普及されていないこと、また、ICT土工に対応できる技術者・技能労働者が不足していることにより、i-Constructionが実現化するまでにはまだ時間がかかることが予想されます。

    そうした点においても、人材不足をいかに補っていくべきか、人材を育てるたるための仕組みをどのように構築していくかを早急に考えていくべきかもしれません。

    建設現場の効率化をサポートする安価のITシステム

    建機は割高だからいますぐ導入は難しい。でも、システムを導入しても使いこなせるかわからないし…。そんな心配は一切不要で気軽で手軽に導入できるのが、株式会社スマートドライブが提供している「SmartDrive Fleet」です。

    導入はどのシステムよりも安価な2,480円〜。  トライアルもあるので、気軽に試していただくことができます。

     

    SmartDrive Fleet」が解決できるのは、ドライバーの安全を守ること、そして動態管理によって業務効率をサポートすること、これらによってコスト削減ができることです。

    ・GPSでドライバーの位置がわかる!

    リアルタイムでの位置情報がわかることで、現場担当者との連携がスムーズに。現場指揮者は適切な指示出しができ、非効率だった業務を効率アップへと導きます。

    ・危険運転を検知、安全運転を徹底づける安全運転診断機能

    トラックやダンプには多くの資材が積み込まれています。しかし、もしも人混みの多い中で「急いで到着しなくては」と急加速や急ブレーキなどの危険運転をしていたら、事故の確率も高まってしまいます。デバイスからは、一人ひとりの走行データが収集できますので危険運転を指導したり、場合によってはドライバーが安心して到着できるための余裕を持った配送ルートの作成も可能に。詳細な安全運転診断では運転の癖を可視化させて後ほど管理者とドライバーが確認することができるようになっています。苦手/危険な箇所がわかれば、適切な安全運転指導を実施できますし、事故を未然に防ぐための対策が行えます。

    ・運転日報を自動で作成・集計できる

    長時間労働が多い建設業界にとっては10分でも20分でも労働時間を短縮したいもの。今まで手書きで作成・集計していた運転日報もすべて自動作成しますので、事務作業にかかっていた時間を一気に削減し短縮します。

    今後、労働力不足や技能の継承を早急に解決するには、システム導入による自動化と省力が必須になってきます。導入した企業の具体的な活用事例を記した資料も請求できますので、こちらから是非お気軽にお問い合わせください!

  • 移動の概念が180度変わる –MaaSが秘める移動の可能性とは?

    移動の概念が180度変わる –MaaSが秘める移動の可能性とは?

    MaaSとはMobility as a Serviceを略した言葉で、そのまま直訳すると「サービスとしての移動」という意味になります。ただし、「as」という単語には類似性を示す意味合いも含むため、「人やモノの移動=サービス」と捉える概念こそが、真の意味でのMaaSです。

    今回は、世の中にあふれるあらゆるモビリティ(移動手段)を、1つのサービスへと進化させる新概念「MaaS」について解説します。広がりを見せる国内外のサービス、そしてMaaSの普及にあたって直面する課題とは―?

    MaaSとは何か?従来交通システムとの違い

    2015年にITS世界会議で設立された「MaaS Alliance」によると、MaaSは車やバイクをはじめ、バス・鉄道・航空機・フェリーなどの乗り物を単なる移動手段としてではなく、ユーザーニーズに応じ連動して利用できる「1つのサービスへの統合」と定義されています。

    MaaSの市場規模と進行レベル

    インドに本社を構える、ワイズガイ・リサーチ・コンサルタント社の発表によると、2017年時点で約2兆7,000億円だった世界のMaaS市場が、2025年には約25兆円まで拡大するとされています。この数値で考えると、計算上では毎年130%増という驚異的なスピードでMaaSが成長することになります。ただ、ここでは一括りにMaaSと言っていますが、それぞれのサービスは次のようにレベル0~レベル4の5段階に分けて考えられています。その中で、現在のサービスはまだMaaSレベル0という立ち位置です。

    レベル 説明 該当するサービス
    レベル0 統合なし、つまり移動媒体がそれぞれ独自にサービス提供している、現在の交通システムのこと タクシー、バス、電車、カーシェア、Uber
    レベル1 料金・ダイヤ・所要時間・予約状況などといった、移動に関する一定の情報が統合、アプリやWEBサイトなどによって利用者へ提供されている段階のこと NAVITIME、Google、乗換案内
    レベル2 目的地までに利用する交通機関を、スマホアプリなどによって一括比較でき、予約・発券・決済をワンストップで可能になる段階 滴滴出行(Didi、中国版のUber)、Smile einhuach mobil
    レベル3 事業者の連携が進み、どの交通機関を選択しても目的地までの料金が統一されたり、定額乗り放題サービスができたりするプラットフォームなどが、整備される段階 Whim、UbiGO
    レベル4 事業者レベルを超え、地方自治体や国が都市計画・政策へMaaSの概念を組み込み、連動・協調して推進する最終段階

    MaaSはヒトの移動をこんなに変える

    従来の交通システムは、それぞれに対応している決済手段が異なります。たとえば、車やバイクでの長距離移動をする際には高速道路で料金を、電車やバス、その他の公共交通機関(民間含め)では所定の支払い方法で運賃を支払っています。それをMaaSによって各交通機関を「1つのサービス」に統合することができれば、決済方法や予約が統一され、人やモノの交通手段や支払い方法をシームレスに、そして効率化することができるのです。つまりどういうこと?という方に向けて、より具体的に説明しましょう。

    たとえば、急な出張が入り、自家用車で最寄り駅へ向かい、新幹線で県外へ向かい現地で業務を行う場合。最寄り駅までは自家用車で向かい、現地では駅前レンタカーを借ります。そのまま、高速道路で移動し、移動した先で業務を完了しました。その日は夜遅くまでの作業だったので、そのままホテルで一泊し、翌日同ルートで帰宅。この流れだったら今までは、

    最寄り駅に停めた自家用車の「駐車場代」
    新幹線の「往復乗車料金」
    現地で手配した「レンタカー料金」
    業務中の「高速道路料金」

    と移動サービスごとに個別で予約を入れて手配し、料金を支払ってきました。しかし、今後MaaSがレベル2の段階までスムーズに実施されれば、一つのインターフェイスで、ワンストップで移動手段の予約や決済ができるようになるのです。さらに、レベル3・4へステップアップすれば、移動に関わる費用のみならず、ホテル宿泊料までが定額決済できるようになるかもしれません。

    若者の車離れやシルバー世代の免許返納などによって移動に対する考え方は変わりつつあり、シェアサイクル+公共交通機関を組み合わせたり、レンタカーやシェアリングの利用が増加したりするなど、「モビリティ=自家用車の所有」という時代がフェイドアウトしつつあります。

    簡単にいうと、自転車や車を使いたいときだけ使う、シェアリングエコノミーの中核に位置し、より最適化した移動手段を提供するのがMaaSです。この概念が国内でも一般化されていけば、出発・移動時間や利用者の位置情報を簡単に把握・分析することが可能になり、よりタイムリーな予約・配車サービスにつなげることができるでしょう。

    そして、将来的には交通機関のチケット代や高速料金など、他交通サービスとカーシェアリングとをパッケージングして一括決済・定額利用ができるようにモビリティーの利便性を高め、都市部における交通渋滞の緩和・排気ガス規制などの環境問題・地方を中心とした交通弱者対策といった課題解決への寄与も期待されています。

    MaaS先進国・フィンランドにおける運用事例

    世界に先駆け、交通渋滞や排ガス問題解決のためにMaaSを導入したのは、北欧フィンランドの首都ヘルシンキ。その仕掛け人は同地で立ち上げられた「MaaS Global社」というスタートアップ企業でした。同社が開発したMaaSプラットフォーム「Whim」は、簡単に説明するとモバイルペイメントとルートサーチアプリを組み合わせたようなサービスです。現在地から行きたい場所を選んで経路を検索し、利用後は料金がクレジット決済されるという仕組みになっています。

    Whimユーザーの交通利用状況はサービス開始前、次のような数値でした。

    • 公共交通機関・・・48%
    • 自家用車・・・40%
    • 自転車・・・9%

    これが2016年のサービス開始後、公共交通機関が約26%、タクシー利用が5%増加したのに対し、自家用車は半分の20%にまで減少したと言います。ここまでの説明だけだと、「すでに似たようなアプリがリリースされているんじゃないの?」と思われるかもしれません。そうしたサービスとWhimとの大きな違いは、利用できるモビリティーの範囲が公共交通機関に留まらず、“とにかくあらゆる交通手段”が含まれているということです。

     

    whim

    Whimでは、検索入力した目的地まで電車・バスなどの公共交通機関はもちろん、タクシー・レンタカー・シティバイクなど、あらゆる移動手段を組み合わせた最適ルートと料金が、グーグル・マップ上に表示されます。ユーザーは、その中から移動ルートを選んで料金ボタンをタップ、そしてクレジットカード情報を入れれば(事前登録も可能です)決済は完了です。電車を利用する場合は、車内を巡回している車掌にMaaSアプリ内で表示されたQRコードを見せるだけ。

    料金体系もある程度決まっており、下表で示す3プランが用意されています。そのため、経路検索と決済の利便性だけを求めるなら「WhimToGo」、公共交通機関をよく利用するなら「WhimUrban」、数多くの移動手段を乗り継いでいるユーザーは「WhimUnlimited」といった具合に、ユーザーが個々のニーズに併せて自由に選ぶことができるのです。

    プラン名 月額料金 公共交通機関 タクシー(※1) レンタカー シティーバイク
    WhimToGo 無料 利用分決済 利用分決済 利用分決済 対象外
    WhimUrban 49ユーロ 乗り放題(※2) 10ユーロ/回 49ユーロ/日 乗り放題/30分
    WhimUnlimited 499ユーロ 乗り放題(※2) 乗り放題 乗り放題 乗り放題

    ※1・・・指定区域外への移動は別料金

    ※2・・・5km超の移動は別料金

    最上級プランのWhimUnlimitedは、各交通機関の「定期券」がバンドルされているうえ、レンタカーもタクシーも乗り放題。普段は車に乗らない、または所有していなくても、天気のいい休日にはレンタカーを借りて郊外へドライブをしたい!という希望を叶えることができます。

    すべての移動手段が含まれて約62,000円弱(2018年3月26日時点でのレート)という月額利用料金は、車の維持費を考えると決して高すぎる水準と言えません。「Whimさえあれば自家用車がなくても生活が不便にならない」。ヘルシンキではそんな時代がすでに始まっているのです。

    気になる中国と米国の現状

    フィンランドに続き、MaaSへの取り組みが進んでいるのが中国です。同国のライドシェア大手企業・Didiは、2018年6月、広州省新セン市蛇口エリアで自動運転バスを走行させると発表し、同年7月から試験運用が始まっています。この自動運転バスはオンデマンド化されており、利用ユーザーが手持ちのデバイスから発信した位置情報から最寄りのバス停を知らせ、近隣のバスを向かわせるというシステムです。

    また同時に、MaaSプラットフォーム構築も順調に進めており、中国IT大手Baiduが2017年4月に打ち出した、自動運転のエコシステム構築計画「アポロ計画」には、フォード・ダイムラー・コンチネンタル・インテルなどといった、そうそうたる企業が参画しました。さらに最近では、国内外・業種問わず100を超える企業が参加し、2021年までに一般道・高速道路双方での「完全自立運転」実現を目指しています。

    また、米国はライドシェアで世界一のシェアを誇るウーバー、MaaSプラットフォームの中核を担うGoogleとアップル、さらに自動運転技術開発において一歩先を行くテスラなど、フィンランドに勝るともいえるMaaS先進国です。

    しかし、自動車部品メーカーのAptiveや半導体メーカーのNVIIAと提携して自動運転実験を実施するなど、米国におけるMaaSをけん引してきたウーバーでしたが、2018年4月実験中発生した死亡事故により、一時実験中止命令が出されました。(現在は再開しています)また、ウーバーが起こした死亡事故のわずか数日後、テスラ社の「モデルX」で自動運転モード使用中だったドライバーが車ごと中央分離帯に衝突・炎上し、死亡する事故が起きました。自動運転に関しては、実用化までの道のりはまだまだ先と言えるでしょう。

    また、米国はモビリティーに関する法律やルールが州によって異なるのが大きなネックになっています。関連する先行企業が多いためMaaSプラットフォームの開発は進んでいるものの、決済方法などを統一するハードルは他国より高いと言えるかもしれません。

    日本はどこまでMaaSが進んでいるのか

    日本国内でもっともポピュラーかつ普及されているのがカーシェアリング分野。すでカーステーションは全国展開し、公共交通機関の整った都心部では車を保有しないライフスタイルが定着しています。また、SuicaやPasmoなど、一部の対象外を除けば全国でキャッシュレス決済可能なJR系ICカードも普及し、スマホ上で予約・決済ができるタクシー配車アプリも続々とリリースされています。

    いずれもMaaSの概念から言えばレベル0、もしくはレベル1の段階ですが、国内企業も世界的なMaaS拡大・進化の流れを黙ってみているわけではありません。現在、国内におけるMaaS分野で先行しているのは鉄道業界です。その代表格として挙げられるのが、JR東日本が決済サービス企業と連携し、サービス実現に向けて2兆円もの巨額投資を予定している、「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」です。

    このプラットフォームは、すべてのサービスにおける検索・手配・決済を、suicaでシームレスに行えるようにするというもの。たとえば、自宅から徒歩・タクシー・カーシェアを経て、JR在来線や新幹線を利用し、ホテルにチェックインをするとしても、先ほども述べたように、すべてがひとつのプラットフォームで完結することができるのです。

    将来的には個人間送金や各金融サービスにおける出・入金、デジタルチケット決済やホテルルームキーの認証など、suicaの利用機会を大幅に拡大するシステム構築も目指しているので、実現すれば、本家Whimをしのぐ利便性が期待できるでしょう。

    そのほか、タイムズ24やdocomoバイクシェアなどがシームレスに連携してひとつのサービスとして提供する「小田急MaaS」、トヨタとソフトバンクがタッグを組んで始めた「Autono-MaaS」など、他企業も続々とMaaS事業への取り組みをスタートさせています。時間帯や利用目的など、ユーザーがその日の予定や状況によって利用する車両を自由に変える。移動の効率化と自由化は、未来の移動のカタチとも言えるしょう。

    可能性と課題…MaaSは本当に日本で普及するのか

    ヘルシンキのように、日本でもMaaSのレベルが上がり、サービスが拡大していけば、都市部を中心に自動車から他のモビリティーへと移動手段が分散していくことになります。そうすれば、交通渋滞や環境問題の解決にもつながりますし、全体の交通量が減少すれば必然的に交通事故発生率も低下します。

    また、地方の交通機関では、深刻な人材不足や利用者数の激減による利益減少から廃線・廃業するバスや鉄道も増加しているため、国土交通省や総務省も生産性の向上を図れる「日本版MaaS」の実現と普及に向けて積極的な動きを見せています。プラットフォームを構築するには、データを収集して解析し、ユーザーのニーズに素早く答えられる仕組みが必要になるため、国土交通省や総務省、交通機関だけでなく、IT企業や通信事業者も参画を示し、ますます本格的な普及が目前までやってきているようです。

    本当のシームレス化に必要なものとは

    ただし、公共交通機関と呼ばれつつも、官公庁だけではなく、私営バス・電車が入り乱れている日本国内では、各モビリティーが有する情報共有や決済方法の統一など、現時点ではシームレス化が簡単に行える状態だと言えません。また、MaaSの普及にはさまざまなアプリなどのツールが必要不可欠ですし、こうしたツールを若者でも高齢者でも、誰でもすぐに取り入れることができ、使いやすく理解しやすいシステムにする必要があります。

    現状では、決済方法1つとってもクレジットカードや鉄道ICカード、「xxxペイ」などのアプリ、電子マネーなど多岐にわたるうえ、「これさえあればどこでも利用できる」といえる決済手段は残念ながら現金のみです。日本のキャッシュレス普及率は約20%と先進国の中でも圧倒的に低く、日用品購入費の約80%以上がキャッシュレス決済のフィンランド、約60%の中国、約46%の米国と比較すると、キャッシュレス化が大幅に遅れていると言わざるを得ません。

    つまり、いかに優れたMaaSプラットフォームが誕生しても、決済方法に統一性がなければ宝の持ち腐れになりかねないのです。そうした問題を考慮し、国も2020年をめどにキャッシュレス化の普及率倍増を目指していますが、2019年に入った今でも大きな変化は見られていないようです。

    まとめ

    レベル3以上のMaaSが普及すれば、自動車を保有しなくても「自由に、手軽に、お得に」移動できる時代が到来します。しかし、誰でも使いやすいプラットフォームの構築と、キャッシュレスによる決済方法の統一がなされない限り、日本におけるMaaSはレベル2止まりで立ち往生し、不完全なサービスとして普及する可能性も考えられるでしょう。

    そんな状況の中、今年の10月から実施が予定されている消費税引き上げに伴い、中小の商店でキャッシュレス決済を行った消費者を対象に、2~5%ポイント還元されることがほぼ確定しました。「バラまき」と指摘されることもあるこの政策ですが、消費や景気の冷え込み緩和だけが狙いではなく、主要国の中でも遅れているキャッシュレス化を促進することも目的の1つです。この対策が普及率を大幅に引き上げる起爆剤となり、MaaSをスムーズに普及するカギとなるのか — 今後の動向にもますます目が離せません。

  • 【対談】ヒトもモノもつながることが新たな価値を生む– IoTが描く未来図 前編

    【対談】ヒトもモノもつながることが新たな価値を生む– IoTが描く未来図 前編

    人の価値観、多様化、そしてテクノロジーの急激な進歩により変わってきたビジネスの環境。社会がめまぐるしく変化しつつある時代において、企業も短期間で変化を求められるようになっています。そこに変革をもたらす要素が、IoTやAI、ビッグデータの活用です。今回、ゲストとしてお招きしたのは、数々のプロジェクトにコミットされてきた、株式会社ローランド・ベルガーで代表取締役社長を務める長島 聡樣。ローランド・ベルガーは、1967年にドイツのミュンヘンで設立された製造業に強みをもつ経営戦略のコンサルティングファームです。国内外、さまざまな企業の変曲点に立ち会い、共に歩み、戦略を実行してきた長島様から見た、IoTの可能性とは?

    大事なのはコンセプトの先を描くこと

    北川:「長島さん、本日はお時間ありがとうございます。早速ですが、まずは長島さんのご経歴をお聞かせ頂けますか。」

    長島:「こちらこそ宜しくお願い致します。私は、大学院修了後に早稲田大学理工学部助手を経てローランド・ベルガーに入社をしました。そこで流通業、物流、人流といったサービス業から自動車や機械、化学、医薬品、ハイテクなどの製造業に至るまで、幅広いクライアント様とお仕事をしてきましたが、2010年ごろからだったしょうか。研究開発なども含め、機械や電気など製造業の工場に関する案件がぐっと多くなってきました。さらにデジタル化の波とともに、最近ではものづくり企業の変革の仕事が増え、メーカーが新しい事業に踏み出してそれを事業の柱にするまでを並走させていただいております。私たちのお仕事は、具体的な新規事業の中身からマインドセット、新しい事業を興す際の総合的な支援です。」

    北川:「提供しているサービスは違いますが、お話を伺っているとカバー領域やお客様の業種がスマートドライブと近いですよね。中には『IoTは、つながればなんとかなる』とお客様から思われている場合もありますが、IoTはただつながるだけでは意味がありません。重要なのはお客様と一緒につながった後の未来図を描き、インプリメンテーションしたり、会社のカルチャー自体も変えていくなど、長島さんがお話されたような、その先の実装フェーズが非常に大事であると感じています。」

    長島:「大企業のクライアントでプロジェクトを進める際に注意しているのが、単発の事業アイデアやコンセプトづくりは既存の事業に埋もれてしまう危険性があることです。それを回避するには、細かく分かれたコンセプトを5〜10ほど集めて、ポートフォリオとして束ねた形でプロジェクトを推進していかねばなりません。そうしなければ、砂漠に水を撒いたら一瞬で乾くように、できあがってもすぐに埋もれて、消えてしまうんです。
    ですので、どのプロジェクトでもそれなりにインパクトのある事業性に仕立て、目指すべきお客様価値にフォーカスして進めるようにしていますね。」

    IoTの有効性を”見える化”するために

    北川:「最近は世の中の潮流が変わり、全体的にIoTやインダストリー4.0への興味が高まっています。少し前と比べてそうした会話や情報も増えてきた印象ですがいかがですか。」

    長島:「非常に増えましたよね。当初はとにかく繋ぐことに注力されていましたが、時間とともにさまざまなケーススタディが出てきたことで、目的を持って望むことを実現するには何と何を繋ぐべきかということに焦点があてられるようになりました。データをたくさん取得すればいいという当初の考え方から一転、このデータをこう取得すればこのような価値が生み出せると、一歩先へ踏み出す方が相当数増えています。
    昔はIoTの費用対効果がマイナスだったのですが、今はしっかり効果を生み出せるようになっているのです。これは大きな進歩ですよね。」

    北川:「IoTはものすごく雑に言うと、まずは可視化して、その可視化した情報を活用して、それができたらプロセスを自動化して、その後将来を予測し、最後にそれに基づいて制御する、という5つのフェーズがあると思っています。しかしながら、まだ何もできていないところから、初めから4つ目の予測する、もしくは最後の制御するフェーズを目指される方が多く、導入したけど意外と成果が出ないと言われることがあると思います。
    ほとんどの企業では最初の3つのフェーズで事足りることが多いですし、本当の意味で有効活用していただくためには、技術のレベル感やフェーズ感を意識してお客様のゴール設定を作らなくてはなりませんが、意外とその設計が難しい。その重要な設計部分、世界観をローランド・ベルガー社に作っていただくことによって、スマートドライブとうまくかみ合うのではないかと思っています。」

    長島:「そうですね。最近、私たちが新しい事業やポートフォリオの考え方も含めて大事にしているのが、“あり物(現時点で持っているサービスや技術)”を組み合わせて発進し、すでにある“1”の状態から少しずつステップアップさせるという手法です。
    0から突然大きなものを作るのではなく、今あるものを組み合わせて小さくてもなるべく早く立ち上げる。そして半年後、一年後までに、新しいあり物を加えて最初に出した物を少しずつバージョンアップさせていく。スピード感をもって行動に移す理由は、競争優位性の確立です。いいものを作ることは大事ですが、完璧なものを目指せば目指すほど、あれもこれもと時間だけが無駄に過ぎ去ってしまい、他の誰かが先に行動を起こしてしまうからです。
    メーカーは完璧主義な方が多く、それはもちろん素晴らしいことですが、『ここまでやらないと製品としてリリースはできない』だと、一向にコマは進みません。その殻を打ち破り、とにかくはじめることこそが大事な一歩になるんです。そこから短期間でPDCAをまわし、ニーズと照らし合わせて何が足りないのかを足し算や引き算し進化させれば、自ずと良いものができあがります。そうした流れの中で私たちがやるべきは、ストーリーを設計しつつ、並走すること。並走しながら徐々にマインドセットを変えていき、お客様が少しずつ前に進んでいることを実感できるような演出できたら最高ですね。」

    埋もれた出会いをプロデュースした先で生まれたもの

    北川:「ドイツ企業をはじめ、外資系の企業はそうした演出がとても上手ですが、日系の企業は割と不得手なんじゃないでしょうか。IRに記載されているような、ビシッと揃ってカチっとしたものを作って、いざリリースしたらニーズがないということも少なくはないはずです。長島さんが携わっている案件の中でそのようなギャップを経験されたことはありますか?」

    長島:「ヨーロッパの場合は、決裁権を持っているのがトップの人だけなんですね。トップがスパッと決断し、そのままトップの考えたことが実装されていく。日本は取締役会もそうですが、現場の人たちが考えて決めることが多い気がしますね。ただ、時間を必要以上に長くかけすぎる傾向があって、期限を決めないと時間ばかりが経っていく。もちろん、考える時間が長ければ良いものになる可能性はありますが、考えれば考えるほど完璧すぎるほどの絵柄ができてしまって、いつまで経っても世に出ないということが起きます。どちらも一長一短はあるんです。ドイツは決裁からリリースまでスピード感はあるけど、それに反して現場の人たちが育っている感じがしません。そう考えると、時間を区切って議論をしつくし、収束させるように進めていけば、日本の方がいいものができるんじゃないかと思いますね。」

    北川:「日本人の気質かもしれませんが、車ひとつをとっても細部に至るまでクオリティは高いですよね。日本はまだまだポテンシャルを秘めているので、進め方やマインドを変えるだけで、もっと世界が驚くような素晴らしいものができる気がするんです。」

    長島:「私はドイツも日本もどちらも見てきましたが、ものの突き詰め方や視点はやはり日本の方が高度です。
    たとえ誰もが使えるものでなくとも、価値がわかる人に届けば非常に大きな威力を発揮するものが多い。ただ、そうした要素技術を持っていても、現状では価値の見える化ができていません。こだわりのある人が自分の言葉で話すので、話が難しく聞こえてしまうのです。そういう状態だから流通もせず、長らく使われないままなのに、その裏ではまだ磨いている人がいる…という状態。そういうケースが意外とありますね。
    ニーズがマッチして出会うことができれば、絶対前向きな方向へ変わります。ローランド・ベルガーでは埋もれた出会いをプロデュースすべく、中小企業庁とも一緒にお仕事しています。」

    北川:「スマートドライブでもそのマインドの部分が非常に重要だと認識してはいますが、極めて困難なところでもあります。たとえば、セミナーやイベントでお話しすると、みなさんうっすらと意味は理解していただきつつも、実感値として理解していただけるには結局3年ぐらいかかってしまうんです。
    とはいえ、真の価値を理解してもらうためにも、マインドを変えていくことは一番大事にしなくてはならない部分です。インダストリー4.0のようなコンセプトを作り、いろんな人を巻き込みながらマインドを少しずつ変え、プロジェクトを推進していく。マインドセットの醸成はローランド・ベルガー社の強みでもあり他社にない価値ですよね。」

    長島:「ありがとうございます。私たちも様々な価値の種を提供していきたいと思います。各プロジェクトを進行する中で、最近一番必要な機能になっているのが翻訳機能かも知れません。そもそも、会話ができなければ、それぞれが持っているものが流通しません。たとえば、大学・ベンチャー起業・大企業がいるとしましょう。接点も繋がる場所もなければ、お互いに会話することができませんよね。各々のニーズを理解し、そこを私たちがどうつないでいくか。お互いの置かれた立場を捉え、最初の理解の出発点をどう高めていくかを大事に翻訳しています。」

    北川:「それが社内ベンチャーの発足の背景ということですね。」

    >>後編へ続く

  • 【解説 / テンプレ付】運行指示書の作成方法とポイント

    【解説 / テンプレ付】運行指示書の作成方法とポイント

    トラック輸送を業務としている会社が、2泊3日以上の運行を行うときに必要とされる運行指示書。中間点呼が必要な場合に作成をしなくてはなりませんが、実際に作成するのは手間がかかるし面倒だ…という声も聞こえてきます。この記事では作成ポイントとともに、無料でダウンロードできるテンプレートをいくつかご紹介します。

    運行指示書とは

    「運行指示書」とは、運行予定時刻や経由地、休憩地及び休憩時間、到着予定地及び時間など、運行にあたっての計画が記されたもので、運転者は運行指示書のもとに運行しなければなりません。2003年より、法改正に伴う営業区域の廃止が行われたことで、事業者は全国での営業が可能になりました。そうした背景から、2泊3日以上の長距離輸送が増えることを見込み、運行指示書を作成してドライバーに指導・監督を行うことが義務付けられています。

    2016年1月に発生した軽井沢スキーバス転落事故では、会社がドライバーに渡していた運行指示書には出発地と到着地のみしか記載されておらず、どのルートを走行するか、どこで休憩をとるかなどの行程表が無い杜撰な運行管理が明るみに出て、大きな問題になりました。

    それだけでなく、他のツアーバス会社でも運行指示書の不備が指摘されるなど、運行指示書に関する問題が浮き彫りになり、世間でも注目を集めています。軽井沢スキーバス転落事故の5日後に東京都新宿区の路上で行った該当抜き打ち監査にて、乗客を乗せる前のバス6台中、5台で運行指示書の記載漏れなど合計8件の違反が見つかっています。

    こうした事案からわかることは、ドライバーと乗客の健康と安全を守り、悲しい事故を防ぐためにも運行指示書が必要不可欠であるということです。

    運行指示書が必要なシーン

    貸切バスなどの一般貸切旅客自動車運送事業の場合はすべての運行において必要となり、日帰りであろうと宿泊を伴う運行であろうと全て運行指示書を作成し、運転者に携行させなければなりません。

    貨物自動車運送事業が運行指示書の作成が必要な場面は、48時間を超える中間点呼を必要とする乗務、または、48時間以内でも出発及び到着のいずれも対面点呼ができないというときです。しかし、48時間を超えない貨物運行でも、時間の変更を理由に出発も到着も対面点呼が出来なくなった場合や、運行内容の変更で48時間を超える運行になってしまう場合は、乗務員に連絡したうえで、運行指示書を運行管理者が作成しなくてはなりません。つまり、どんなに急ぎの仕事が入ったとしても48時間を超える運行の乗務する際には、運行指示書が必要だということです。

    運行指示書を携行させないまま、「時間無いから、とりあえず向かってくれ」というのは、ルールに違反することとなりますが、ある程度の行先別のフォームを作成し、基準となる運行指示書がベースとしてあれば、それをコピーして運行指示書の正と副を作成後、ドライバーに携行させることができます。

    運行指示書に必要な項目とポイント

     

    出典:栃木県貨物自動車運送適正化事業実施機関

    運行指示書の記載事項は、貨物自動車運送事業安全規則(運行指示書による指示等)で決められており、第9条3項に運行指示書に記載しなければならない7つの項目が記載されています。

    1、運行の開始及び終了の地点及び日時
    2、乗務員の氏名
    3、運行の経路と主な経由地における発車、到着の日時
    4、運行の際に注意を要する箇所の位置
    5、運行の途中で乗務員に休憩を与える場合は、休憩場所(地点)と休憩時間
    6、乗務員の運転または業務の交代がある場合は、交代する地点
    7、その他運行の安全を確保するために必要な事項

    運行指示書は、正と副の2部を作成しなければなりません。正は乗務員が携行し、副は営業所で保管し、乗務員が運行から戻ってきたら、正と副をひとつにまとめて運行の終了の日から1年間保存します。

    運行途中で経由地の変更等があった場合は、運行管理者の指示のもとで変更し、その内容を運行指示書に記入しなければなりません。また、ドライバーは乗務日報にも変更の旨を記入します。正と副の両方に記入しますが、会社に戻ってから運行指示書の内容が正と副で一致しているか必ず確認しましょう。

    一泊二日の運行予定や日帰りの運行予定が時間等の変更により出発も到着も対面点呼を受けることができなくなったら?

    この場合、運転者は運行指示書を携行していないため、運行管理者が指示書を作成し、運転者に電話等で指示した内容、日時、運行管理者の氏名を運行指示書の正と副に記入します。運転者は乗務記録や日報に同様の内容を記入し、運行終了後に運行指示書正と副に乗務日報をひとつにして保存しましょう。

    運行指示書を作成しよう

    運行指示書を作成するには、次の3つの方法があります。

    ・市販されている運行指示書に手書きで書く
    ・フリーダウンロードが可能なエクセルやPDFを活用する
    ・車両管理や運行管理を行うツールを活用する

    市販されている運行指示書

    出典:東京都トラック運送事業協同組合連合会

    東京都トラック運送事業協同組合連合会で取り扱いのある運行指示書は二枚複写30枚つづりで480円です。記載例も載っているので、手書きの方が慣れている!という方には使いやすいでしょう。

    エクセルやPDFを活用する方法

    出典:長野トラック協会

    ・トラックジャパン 運行指示書(エクセル・PDF・記入例)

    トラックジャパンで提供しているテンプレートはエクセル形式とPDF型式があります。エクセル形式は、ダウンロードして行先別に運行指示書のフォームを作成・保存しておくことで、作成がスムーズに行えます。

    ・長野トラック協会 運行指示書

    運行指示書のみでなく、各種申請・届出関係、運送約款、各種帳票類のテンプレートがダウンロード可能です。

    車両管理や運行管理を行うツールを活用する方法

    運行支援システムのオプションとして備えられているものが多いようです。自社のニーズに合うものを選び、取り入れましょう。

    作成時の注意点:改善基準に注意しよう

    運行指示書は、無理のない運行計画に加えて、労働時間等の改善基準に違反しないように作成してください。一部の例を以下にあげます。

    ・運転者の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長するとしても最大で16時間が上限
    ・15時間を超えるのは週に2日まで
    ・運転時間は2日平均で9時間とされているため、最大9時間を目安にする
    ・勤務から翌勤務までは8時間の休息時間が必要
    ・フェリーを利用する運行の場合には、フェリー乗船中はドライバーの休憩時間とする(たとえば、フェリー乗船時間が10時間の場合、ドライバーは10時間休憩したことになる)

    さらに、3日から4日間と長期的な運行になれば、運行指示書の作成も難易度が上がります。最近では過労運転による事故によって連続運転時間も厳しく決められています。これについてはトラックもバスも共通で、4時間運転する中で必ず30分の休憩をとらなければなりません。

    1回の休憩は10分以上とし、10分未満の場合はノーカウント、つまり休憩したことにならないのです。例として、15分×2回、20分+10分以上はOKです。25分+8分は合計で33分ですが、1回の休憩で8分は認められませんので違反となります。

     

    連続運転時間が守られている例

    8時30分運転開始(運転時間1時間20分)
    9時50分から10時05分まで休憩 (15分)
    10時05分運転再開(運転時間1時間35分)
    11時40分から11時55分まで休憩 (15分)
    ※2時間55分の運転で30分の休憩でクリア
    11時55分運転再開 13時10分目的地到着
    クリア後1時間15分の運転であるため問題ありません

     

    連続運転時間での違反例

    8時30分運転開始 (運転時間1時間20分)
    9時50分から10時15分まで休憩(25分)
    10時15分運転再開 (運転時間1時間40分)
    11時55分から12時00分まで休憩 (5分)
    ※5分の休憩は休憩にカウントされない
    12時00分運転再開 13時10分目的地到着 (運転時間1時間10分)
    運転時間合計4時間10分の中で、休憩がカウントされたのは25分のみのため違反です。

     

    運転時間及び休憩時間が守られていても、実際はサービスエリアが満車で停車できなかったり、時間を忘れて目的地へ急いだりと、改善基準に違反するケースは少なくありません。デジタルタコグラフ装着車であれば、車が動いていない休憩時間をしっかりカウントしますので、正しい乗務時間がしっかりと記録されます。そうすれば、運行管理者は適正な指示出しを行えるようになるのです。

    正しい勤怠を理解すれば、適正な時間を割り当てられる

    営業所からは見ることができないドライバーの正しい休憩時間。長時間・長距離運転をしていると、疲れはさらにたまりますので、しっかりとした休憩時間が取得できなければ、最悪の場合、過労運転になることも…。そうなると、居眠り運転など、事故を起こす可能性も高まります。

    ドライバーの勤怠時間を把握するのも運行管理者の大事な仕事ではありますが、ドラレコやデジタコは導入に金額や手間がかかるし、簡単には決められない。そんな時にオススメしたいのが、スマートドライブの提供するSmartDrive Fleet です。

    どこでどんな運転をしていたのか、どこで待ち時間が発生したのかなど、今までわからなかった情報がすべて”見える”ようになるため、休憩時間の予測や運行ルートの改善に役立てることができます。また、長時間労働が疑わしいドライバーの様子を追っていれば、ルートの最適化や業務量の見直しなど改善が行えるようになります。改善ポイントがわかれば余剰配車もなくなり、結果としてコスト削減にもつながります。

    また、ドライバーとしては手間になる運転日報も自動で作成しますので、ドライバーは本来の業務に集中し、休み時間もしっかり取得することができるのです。安全運転診断からは苦手な箇所もわかるため、運行管理者は適切な指示出しを行えます。労務管理や運行管理をしっかりサポートする機能をたくさん備えていますが、金額はデジタコやドラレコより格段と安く、月額2,480円〜です。

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